説明

フィルム状活性物質担体

【課題】活性物質が量と質について変更できないように含有し、かつ機械的な安定性を有し、該活性物質が均等に放出し、経口投与用の投与形態として用いられるときには平坦な形状を保持できるフィルム状活性物質担体の提供。
【解決手段】フィルム状活性物質担体2とその担体を覆うフィルム状の層3とが空洞4を形成し、該空洞中には表面に活性物質1を備えた補助のフィルム状要素2’が、水分によりガス発生用のフィルム状補助物質担体5,6と共に備えられており、該水分の受入れによって活性化できるようにするためにフィルム状の層3は、水蒸気拡散性材料を用いて形成されているフィルム状活性物質担体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、活性物質含有基体の粒子を有し、その粒子を表面に適用できるフィルム状活性物質含有担体に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔領域およびその粘膜に適用される投与形態が知られている。
米国特許第3,444,858号は、ゼラチン状材料に基づく薬剤片を開示している。
【0003】
既に1937年に、フィルム状薬剤が“New England Journal of Medicine”第289巻、第533〜535頁に記載されている。
【0004】
ドイツ特許DE−OS2449865号から、それぞれ異なる活性物質と活性物質濃度とを含むフィルム形状の医薬活性物質担体が知られる。
【0005】
ヨーロッパッ特許EP0216762号は、ロールコーティング処理によってコーティングされている澱粉、ゼラチン、グリセリン又はソルビットの水溶性フィルムを開示している。これに関連して記載されているのは、これらの投与形態がまた、化学試薬や調味料などのために作られることである。
【0006】
カナダ特許出願第492040号は、ゼラチン又は寒天、グルテン、カルボキシビニルポリマー、多価アルコール、植物性粘液又はワックスおよび水と共に、活性物質を用いてフィルム状製剤を作る方法を記載している。
【0007】
ヨーロッパ特許EP0460588号は、フィルム状システムの製造に適する処方を開示している。ここでは、20〜60重量%のフィルム形成材、2〜40重量%のゲル形成材、0.1〜35重量%の活性物質および最大40重量%の不活性フィラーという製剤が特に効果的である。他の物質では、ポリビニルアルコールがゲル形成材として記載されている。
【0008】
ドイツ特許DE−OS3630603号によれば、平坦な服用形状を担体材料に適用することが特に効果的であるとされ、それは投与量だけ剥離できるように剥離フィルムとして形成されている。
【0009】
米国特許第4,128,445および4,197,289号は、活性物質を担体材料に装填可能な技術的解決法を記載している。それらは、活性物質を担体層に均一に配分することを意図するか、又は静電気を利用して実行できる、乾燥した環境および湿った環境における装填方法を開示している。
【0010】
米国特許Re31764号は、平坦な基材上に適量の薬剤活性物質を適用する可能性について詳細な説明を開示している。これに関連して、その文献は、電界の助けで活性物質を圧電塗布する機構を記載している。
【0011】
米国特許第5,089,307号は、水溶性多糖類、多価アルコールおよび水に基づく熱封止可能で食用可能なフィルムを記載している。しかしながら、そこには、食品の用途のみが記載され、薬剤の用途は記載されていない。
【0012】
米国特許5,714,007号から、医薬製剤の表面に微粉の活性物質を補充することが知られる。この目的に対して、平坦な層への活性物質の装填が、活性物質粒子を静電的に帯電させることによって実行され、活性物質担体が反対の電荷を有し、装填が電圧、極性又は時間によって制御される。
【0013】
米国特許第4,851,394号は、グルコマンナンとグリセリンに基づく食用フィルムを、ソフトカプセルの被覆として、又消費時に溶解する食品包装として記載している。
【0014】
米国特許第5,232,704号は、経口薬剤の形態を開示しているが、そこでは、液体を受入れることによってガスの発生が引き起こされて生じる揚力が、胃の中での保留時間を引き延ばして作用時間を延期する手段として用いられている。
【0015】
米国特許第5,047,244号は、フィルム状システムを記載しているが、そのシステムは、好適に、水膨張層と水不溶性バリヤー層の2層構造を有する。その文献は、ポリエチレングリコールのようなポリマーの使用、コロイド状のシリカ、生体接着剤、例えばカルボキシル基官能のポリマー、ポリビニルアルコールおよび他の補助物質の使用について報告している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記製剤は、最初に述べた種類の薬剤の投与形態についての下記に列挙した要求を満たさないか、もしくは、これらの要求をきわめて不満足にしか満たさない。その要求は次のものからなる。
【0017】
・完成した投与形態は、活性物質を量と質について変更できないように含有しなければならず、それは所望の機械的な安定性を有することである。
【0018】
・投与形態は、活性物質を有機体に所定の方法で、即座にではなく、制御不能にではなく、引き延ばされた時間にわたって、均等に放出しなければならない。
【0019】
・経口投与の場合には、胃の中での保留時間が、所望の作用期間により増大されなければならない。
・低可溶性活性物質の溶解速度は増大させるべきである。
【0020】
・フィルム片は、経口投与用の完成した投与形態として用いられるとき、平坦な形状を保持し、カールすることを避けるべきである。そのようなカールは、キャストフィルムの場合に生じやすい現象である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
これらの要求は、前述の従来技術のシステムや処方によって満足に満たされるものではない。結果的に、この発明は、請求項1の導入部分に記載された種類のフィルム状活性物質担体を提供するという目的を有し、その担体は、正確な、かつ、正確に再現可能な活性物質の投与および所定放出速度による正確な、かつ、正確に再現可能な活性物質の放出を可能にし、早まって離脱させないように機械的に安定したフィルム状活性物質担体に活性物質を含有する。
【0022】
この目的は、活性物質含有基体の粒子がその基体に定着して結合されるという点で、最初に述べた種類のフィルム状活性物質担体においてこの発明により達成される。
【0023】
この発明の1つの実施態様は、粒子を溶剤の助けによって基体に固定させる。この場合、粒子の担体フィルム上への固定は、湿気や溶剤蒸気による予備相互作用により、あるいは、圧力および/又は温度の作用下で行われる。
【0024】
この発明の効果的な1つの実施態様は、別のフィルム状層を適用することによって薬物粒子を包み込むということを利用している。この追加の層の適用は、溶剤又は熱を使用するか、又はそれらを使用しないカレンダー処理によって行われる。活性物質含有製剤の可溶性粒子を用いることにより、担体層への粒子の接着が最適に実現されるということも利点である。
【0025】
フィルム状活性物質担体のこの実施態様において、その別のフィルム状層が水蒸気拡散性であることが、この発明に関して本質的に重要である。ここでは、第2のフィルム状層が担体表面に適用した粒子を付加的に保護するために設けられ、適当なフィルムを選択すると、活性物質の放出速度が制御されるが、それは、活性物質の放出特性を調整することができ、その特性は処理中に特に遅延するように予め設定されるという事実による。
【0026】
この方法において、積層用に用いられる2枚のフィルムが、それらの輪郭縁において互いに封止されるとき、例えば水性環境でガス発生成分を用いることにより、その積層体を、胃の中におけるガスが充満した浮揚性の袋として、胃の貯留システムとして使用することが可能になる。
【0027】
活性物質の放出をさらに遅延させることは、この発明の特別な実施態様によって行うことができる。その実施態様では少なくとも1つの他のフィルム状物が活性物質担体の空間に挿入され、その空間がガスの発生により膨張し、その表面にはその物体に定着して結合された活性物質含有粒子が存在する。
【0028】
さらに、追加のフィルム状物体は、ガス発生用の補助物質担体として適用され、活性物質担体の空洞の中に存在してもよい。
フィルム状活性物質担体の使用は、化粧用の、薬剤の、又は食品技術の製品のための投与形態として提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明によるフィルム状活性物質担体の異なるが類似した実施態様の断面および側面図である。
【図2】この発明によるフィルム状活性物質担体の異なるが類似した実施態様の断面および側面図である。
【図3】この発明によるフィルム状活性物質担体の異なるが類似した実施態様の断面および側面図である。
【図4】この発明によるフィルム状活性物質担体の異なるが類似した実施態様の断面および側面図である。
【図5】この発明によるフィルム状活性物質担体の異なるが類似した実施態様の断面および側面図である。
【図6】この発明によるフィルム状活性物質担体の異なるが類似した実施態様の断面および側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
この発明の他の詳細な利点は、図面に概略的に示されたいくつかの実施態様の例の次の説明により、明らかになる。
図1は、活性物質含有基体の粒子(1)を備えたフィルム状活性物質担体(2)の断面図であり、その粒子は担体上に確実に固定されている。可溶性の低い活性物質を用いる場合には、50μm未満、好ましくは5μm未満の粒度の微粉状活性物をその表面に一様に付着する、つまり凝集しないように表面に活性物質を固定するという方法を用いることが、ここでは可能である。この場合、そのフィルム状薬物担体として、水に溶けやすい基体が選択される。
【0031】
図2は、フィルム状活性物質担体の他の実施態様を示し、それは、活性物質(1)、フィルム状担体(2)およびその上に積層された他のフィルム状担体(3)を備える。
【0032】
図3は、フィルム状活性物質担体(2)の異なる実施態様を示し、活性物質粒子(1)がその表面に固定され、その活性物質担体(2)はフィルム状の層(3)で覆われ又は包まれて、空洞(4)を形成している。
【0033】
図4によれば、フィルム状活性物質担体(2)とその担体を覆うフィルム状の層(3)が空洞(4)を形成し、その中には、表面に活性物質(1)を備えた補助のフィルム状要素(2’)が挿入されている。空洞(4)の中には、ガス発生用のフィルム状補助物質担体(5,6)が備えられている。後者を水分の受入れによって活性化できるようにするために、フィルム状の層(3)は、水蒸気拡散性材料を用いて形成される。活性物質担体(2)は、その表面に固定される活性物質粒子を備えることができる。
【0034】
図5に示すように、この発明の装置のさらに他の実施態様は、フィルム状活性物質担体(2)と水蒸気拡散層(3)を備え、空洞(4)を形成し、フィルム状活性物質担体(5,6)を包含する。活性物質粒子(1)は層(2,3)の内面に固定される。
【0035】
図6は、層(2,3)を有し活性物質粒子を備えるストランドの分割装置7を用いた分離を示す。図1〜図6に示す薬物担体(2,2')はフィルム形成材のフィルムからなり、そのフィルム形成材は、例えばポリビニルアルコールであり、好ましくは部分的に加水分解された形のものであり、セルローズ誘導体,ゼラチン,プルーラン(pullulan)又は他の糖類,植物性がムおよびポリビニルピロリドンのヒドロキシル基の好ましくは1〜20%、特に好ましくは12%をアセチル基で置換したものである。さらに、砂糖、グルコース、ソルビット、ポリエチレングリコールおよび他の水溶性添加剤を添加することにより、その溶解特性を効果的に調整できる。30重量%までの界面活性剤を添加することによって活性物質含有粒子(1)の濡れ性を改良することができる。40重量%までのフィラーを添加することは、この発明の効果を損なわないので、溶解特性を変えるためには、同様に適当である。
【0036】
この目的に適する物質はシリカ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、燐酸カルシウム、タルク、又はこれらの物質の混合物である。受容性を改良するために、その層の中に水滴形の内部相を効果的に形成する香味料を加えることも可能である。
【0037】
さらに、サッカリンナトリウム、他の甘味料、塩又は砂糖誘導体のようなフレーバー強化物質を、例えば低分子有機酸、リンゴ酸、アジピン酸、又はクエン酸に対する味感をよくするために用いることができる。さらに、酸化防止剤のような安定剤によって、接着性活性物質粒子の寿命が延びる。これらは、フィルムそれ自体の上記基体成分からなるが、さらに親油性の、例えばワックス又は樹脂のような部分からなってもよい。
【0038】
熱可塑性樹脂成分は、ポリエチレンのような水溶性ポリマーと同様に、担体フィルムに適用させた後に埋め込むのに適している。一般に活性物質は、そのまま、場合によっては微粉化して担体に付着できる。フィルム状物質つまり初期段階の製品は、20〜300μmの厚みを有することが好ましく、そのサイズは0.5〜8cm2であることが好ましい。
【0039】
第2フィルム状層(3)を活性物質担体にこの発明によって適用することにより、その表面に付着した粒子を包んで保護することが可能になる。基体の材料および熱感受性によっては、これは熱カレンダー処理、溶剤による接着又は当業者に公知の方法により行うことができる。
【0040】
他の処理により、例えば、輪郭ロール又は類似の型取り装置により、フィルムの積層体は所望の幾何学的輪郭、例えばカプセルに充填するにふさわしい形状を得ることができる。このようにして、例えば、著しく遅延した活性物質の放出特性を得ることが可能になる。もし、積層される2枚のフィルムが互いに輪郭縁で封止されるならば、それによってさらに特別の効果を達成することが可能になる。
【0041】
一方、それによって活性物質の放出速度を極めて遅くすることができ、他方、その積層体は、袋のような形をして水蒸気拡散性の層を有するこの発明の装置の内部空間にガス発生要素を用いることにより、胃又は腸道の中の胃貯留治療製品として使用できる。
【0042】
この発明によるフィルム状活性物質担体は、広い適用範囲を有し、興行的な製造方法で大量生産、低価格で製造され、最初に述べた課題を最適な方法で解決するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御された活性物質放出用のフィルム状活性物質担体であって、表面に活性物質粒子が定着して結合されるか、又は表面に前記粒子が埋設される担体フィルム(2)と、前記担体フィルムを覆うフィルム状層とを備え、前記担体フィルムには活性物質粒子(1)がちりばめられ、前記フィルム状層は水蒸気拡散性であり、前記担体フィルムとフィルム状層とがその縁輪郭において互いの先端で密封されて前記フィルム状活性物質担体が袋状に形成され、その内部空間にはガス形成要素が存在し、
前記内部空間には少なくとも1つのフィルム状部材がさらに含まれ、そのフィルム状部材(2’)の表面には前記フィルム状部材に定着して結合された活性物質粒子が設置されること、およ
記内部空間には追加のフィルム状部材が存在し、追加のフィルム部材はガス生成用の活性物質担体として形成されること、
を特徴とするフィルム状活性物質担体。
【請求項2】
活性物質粒子として、50μm未満の粒子サイズを有する活性物質粒子が適用されることを特徴とする請求項1記載のフィルム状活性物質担体。
【請求項3】
活性物質粒子として、5μm未満の粒子サイズを有する活性物質の粒子が適用されることを特徴とする請求項1記載のフィルム状活性物質担体。
【請求項4】
制御された活性物質放出用のフィルム状活性物質担体の製造方法であって、フィルム状活性物質担体は、表面に活性物質粒子が定着して結合されるか、又は表面に前記粒子が埋設される担体フィルムと、水蒸気拡散性で前記担体フィルムを覆うフィルム状層とを備え、前記担体フィルムには活性物質粒子がちりばめられ、前記粒子は前記フィルム状活性物質担体の表面に定着して結合されるか、又はその表面に埋没され、圧力および/又は熱の作用によって前記担体フィルムに固定され、前記担体フィルムとフィルム状層とがその縁輪郭において互いの先端で密封され、前記フィルム状活性物質担体が袋の形状に形成され、ガス形成要素が袋状に形成された前記活性物質担体の内部空間に導入され、表面に定着して結合された活性物質粒子を有する少なくとも1つのフィルム状部材およびガス生成用活性物質担体として形成される追加フィルム状部材が、袋状に形成された前記活性物質担体の内部空間に導入されることを特徴とする、製造方法。
【請求項5】
活性物質粒子として、50μm未満の粒子サイズを有する活性物質粒子が適用されることを特徴とする請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
活性物質粒子として、5μm未満の粒子サイズを有する活性物質粒子が適用されることを特徴とする請求項4記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載のフィルム状活性物質担体の、化粧用の製品又は食品技術の製品としての使用、または請求項4に記載の方法によって製造された活性物質担体の、化粧用の製品又は食品技術の製品としての使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−280679(P2010−280679A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164089(P2010−164089)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【分割の表示】特願2000−565861(P2000−565861)の分割
【原出願日】平成11年7月31日(1999.7.31)
【出願人】(501001599)エルテーエス ローマン テラピー−ジステーム アーゲー (1)
【氏名又は名称原語表記】LTS LOHMANN THERAPIE−SYSTEME AG
【住所又は居所原語表記】Lohmannstrasse 2,D−56626 Andernach GERMANY
【Fターム(参考)】