説明

フィルム状製剤およびその製造方法

【課題】苦味成分のマスキング効果に優れたフィルム状製剤およびその製造方法を提
供すること。
【解決手段】メキタジンまたは塩酸ロペラミドを含む薬物含有層の両面に、直接又は中間層を介して積層された、アセスルファムカリウムまたはスクラロースを含む水膨潤性ゲル形成層を有することを特徴とするフィルム状製剤およびその製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム状製剤およびその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、苦味のある薬物の苦味がマスキングされた経口投与用フィルム状製剤およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
経口投与剤は、薬物の苦味や渋味等による不快感、服薬による嘔気や嘔吐、服薬拒否等によって服薬コンプライアンスが低下する場合がある。たとえば、抗ヒスタミン薬は、強弱の相違はあってもほとんどのものが持続性ある苦味を呈する。抗ヒスタミン作用を有する第3世代の抗アレルギー薬であるメキタジンも、比較的眠気が少ない抗ヒスタミン薬であるが、やはり苦味を有する薬剤である。従来は固形製剤が主流であり、胃内での滞留時間が長く、効果の発現までに時間を要するという問題があった(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
また、塩酸ロペラミドはオピオイドレセプターに作用する下痢止め薬であり、他の下痢止め薬と比較して効果が高いことが知られているが、苦味があるため服用感が悪く、ショ糖や人口甘味料のようなマスキング剤を混ぜた固形製剤やシロップ製剤として用いられている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、これらの製剤においてもマスキング効果は十分ではない。
【0004】
一方、ショ糖、還元麦芽糖水飴等の甘味剤がマスキング剤として汎用されている。しかし、これらの甘味剤を用いると、多量に添加しなければマスキング効果が認められず、相対的に薬効成分の含有比率が低下するため、一回の摂取量(錠剤の数など)を増加しなければならなくなる。
そこで、ショ糖の数百倍の甘味を呈する高甘味成分を使用することも提案されている。たとえば、高甘味成分であるステビアやアセスルファムカリウムを用いて主剤の呈する味を隠蔽し、服用感を向上させた内服液や錠剤が開示されている(例えば、特許文献4、5参照)。しかし、アセスルファムカリウムには、濃度が高いとやや苦い後味を呈するという欠点がある。そのため、過剰に添加すると甘さが長時間残ったり、苦味を感じたりするというデメリットがある。その他の高甘味成分も、それぞれ高い甘味度を示すため特有の性質を有しており、薬剤との組合せによっては十分なマスキング効果を示さなかったり、逆効果となる場合がある。
【0005】
経口投与剤の一般的な剤型としては、錠剤やカプセル剤等の固形製剤がよく用いられている。しかしながら、これらの固形製剤は、そのままでは飲み込み難いため、通常は十分量の水とともに服用しなければならず、十分量の水とともに服用しても、やはり飲み込み難い場合もある。したがって、服薬コンプライアンスの面から不十分である。特に高齢者や幼児においては、固形製剤を飲み込むことができない場合があり、固形製剤を誤って気管に詰まらせてしまう危険性や、固形製剤が食道に貼り付き、その部分に食道腫瘍が形成されてしまう危険性がある。また、寝たきりの患者においては、固形製剤を口腔内に入れた後、ゆっくりと水を与え、しばらくした後、介護者が自らの指で患者の口腔内を探り、固形製剤が残っていないことを確認しなければならず、服用したか否かを確認する作業の負担が大きい。
このような固形製剤の飲み込み難さを改善し、その服用の容易性や安全性を向上させるには、剤型をゼリーのような半固形状とすることが考えられる(例えば、特許文献6、7参照)。しかしながら、ゼリーのような半固形製剤は、水分を多量に含むため、薬物(特に加水分解しやすい薬物)の安定性が低下する、包装コストがかかるという問題点がある。さらに、製造時及び保存時の無菌的取り扱いのため、pHコントロールを必要する薬物においては、さらに安定性の確保が困難となる。
【0006】
このような問題を解決するため、薬物含有層と機能性層(所定の機能を有する層)とを有するフィルム状の経口投与剤が開発されている(特許文献8、9参照)。フィルム状製剤の最外層に設けられた水膨潤性ゲル形成層は、患者の口腔内において唾液等の水分により膨潤してゲル化し、上記経口投与剤は飲み込みやすい大きさ、形状、弾力、粘度等を有する剤型に変化する。これにより患者は上記経口投与剤を容易に服用することができる。また、服用の際、経口投与剤が患者の気管に詰まる危険性が低下するので、患者が老人や乳幼児の場合であっても安全に服用することができる。さらに、上記フィルム状製剤の最外層に水膨潤性ゲル形成層を設けることにより、薬物が患者の舌にある味蕾細胞に直接接することを妨げるため、薬物の味(例えば苦味、渋味)、臭い等をマスキングすることができる。
【0007】
【特許文献1】特開平10−167954号公報
【特許文献2】特開平11−209305号公報
【特許文献3】特開平9−30969号公報
【特許文献4】特開2002−60339号公報
【特許文献5】特開2003−231647号公報
【特許文献6】特開平10−7565号公報
【特許文献7】特開2006−131625号公報
【特許文献8】国際公開WO02/087622号公報
【特許文献9】特開2006−160617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、薬物含有層中に含まれる薬物の種類によっては、マスキング効果が感じられず、服用に適さない場合がある(比較例、試験例を参照)。
従って、本発明の課題は、特定の苦味成分が、特定の高甘味剤により服用に適するようにマスキングされ、携帯性に優れ、かつ、服用の容易なフィルム状製剤およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、前記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、メキタジンまたは塩酸ロペラミドを含む薬物含有層と特定の高甘味成分を含む水膨潤性ゲル形成層からなるフィルム状製剤により、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)メキタジンまたは塩酸ロペラミド(苦味成分)を含む薬物含有層の両面に、直接又は中間層を介して積層された、アセスルファムカリウムまたはスクラロース(高甘味成分)を含む水膨潤性ゲル形成層を有することを特徴とするフィルム状製剤;
(2)前記高甘味成分の含有量が水膨潤性ゲル形成層中0.5〜25質量%である上記(1)に記載のフィルム状製剤;
(3)フィルム状製剤全体に含まれる苦味成分の含有量をA[質量%]、フィルム状製剤全体に含まれる高甘味成分の含有量をB[質量%]としたとき、これらの成分比A/Bが、1/0.01〜1/2の範囲である上記(1)または(2)に記載のフィルム状製剤;
(4)メキタジンまたは塩酸ロペラミドを含む薬物含有層の両面に、アセスルファムカリウムまたはスクラロースを含む水膨潤性ゲル形成層を直接又は中間層を介して積層することを特徴とするフィルム状製剤の製造方法;および
(5)アセスルファムカリウムまたはスクラロースを含む水膨潤性ゲル形成層にメキタジンまたは塩酸ロペラミドを含む薬物含有層を直接又は中間層を介して積層し、次いで得られた積層体2枚の薬物含有層同士を貼付することを特徴とするフィルム状製剤の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、特定の苦味成分が特定の高甘味成分含む水膨潤性ゲル形成層によりマスキングされ、携帯性に優れ、さらに服用の容易なフィルム状製剤およびその製造方法が提供される。
さらに本発明により、特定の苦味成分である塩酸ロペラミドまたはメキタジンが、少量の特定の高甘味成分を含む水膨潤性ゲル形成層によっても、苦味や甘味の程度、痺れの程度、服用感の観点から、十分に服用可能な程度にマスキングされたフィルム状製剤およびその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明で用いられる有効成分である苦味成分はメキタジン(抗ヒスタミン薬)または塩酸ロペラミド(止瀉薬)から選ばれるいずれか一つである(以下、苦味成分という)。
【0013】
上記苦味成分は基剤等に保持されて薬物含有層を形成する。
苦味成分を保持するために用いられる基剤としては、特に限定されず、適宜選択することができる。基剤の具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル−ビニルピロリドンコポリマー、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース等のセルロース及びその誘導体又はそれらの薬学的に許容される塩(例えばナトリウム塩);α−デンプン、酸化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、デキストリン、デキストラン等のデンプン及びそれらの誘導体;白糖、麦芽糖、乳糖、ブドウ糖、果糖、プルラン、キサンタンガム、シクロデキストリン等の糖類;キシリトール、マンニトール、ソルビトール等の糖アルコール類;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル・(メタ)アクリル酸コポリマー、(メタ)アクリル酸・アクリル酸エチルコポリマー、(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸メチルコポリマー、(メタ)アクリル酸エチル・(メタ)アクリル酸塩化トリメチルアンモニウムコポリマー、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル・(メタ)アクリル酸塩化メチルコポリマー、(メタ)アクリル酸・アクリル酸塩化エチルコポリマー等のアクリル酸誘導体;シエラック;ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート;ポリ酢酸ビニル;アラビアゴム、トラガカントゴム等の天然ゴム類;キチン、キトサン等のポリグルコサミン類;ゼラチン、カゼイン、ダイズ蛋白等の蛋白質;酸化チタン;リン酸一水素カルシウム;炭酸カルシウム;タルク;ステアリン酸塩;メタケイ酸アルミン酸マグネシウム;ケイ酸マグネシウム;無水ケイ酸等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
また、基剤が可食性高分子化合物であることも好ましい態様の一つである。可食性高分子化合物は、合成高分子化合物及び天然高分子化合物のいずれであってよく、その種類は特に限定されるものではない。可食性高分子化合物は、胃溶性高分子化合物または腸溶性高分子化合物が好ましい。
可食性高分子化合物のうち、好ましいものとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース及びその誘導体又はそれらの薬学的に許容される塩、酢酸ビニル−ビニルピロリドンコポリマー、ポリ酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(コ)ポリマー等が挙げられ、特に好ましいものとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0015】
薬物含有層における基剤の含有量は、層を形成することが可能となる量であり、その量は基剤の種類等に応じて適宜調節し得るが、薬物含有層中の通常10質量%以上である。基剤を10質量%以上とすることにより薬物含有層の形成が可能である。なお、薬物含有層における基剤の含有量の上限値は、100質量%から薬物含有層に含有される苦味成分の最小含有量を差し引いた値であり、苦味成分の種類等に応じて適宜設定される。
【0016】
薬物含有層における苦味成分の含有量は、苦味成分の効能・効果/用法・用量および製剤サイズに応じて適宜調節することができるが、薬物含有層中の通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下である。苦味成分の含有量を50質量%以下とすることによりフィルム状製剤のフィルム強度の低下を防止できる。なお、薬物含有層中の苦味成分の含有量下限値は、薬物含有層に含有させる苦味成分の種類に応じて適宜設定され、通常は0.001質量%程度である。
【0017】
薬物含有層の坪量(単位面積あたりの質量)は、フィルム状製剤を経口投与することが可能な範囲内において適宜調節することができる。当該坪量は0.1〜1000g/m2であることが好ましく、10〜200g/m2であることがさらに好ましい。薬物含有層の坪量を0.1g/m2以上とすることにより精度よくフィルム化することができる(0.1g/m2より少ないと薬物含有層中の苦味成分含有量にバラツキが生じる)。一方、薬物含有層の坪量を1000g/m2以下とすることにより、フィルムのコシが強くなり過ぎて服用し難くなるのを防止できる。
【0018】
薬物含有層には、適度な柔軟性を付与して加工し易くし、薬物含有層の割れや欠けを防止するために、可塑剤を含ませることができる。可塑剤としては、可食性のもの、具体的にはグリセリン、プロピレングリコール、グリセリントリアセテート、ポリエチレングリコール、ソルビトール、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル、ラウリル酸、ショ糖等が挙げられ、これらのうち1種類又は2種類以上を選択して使用することができる。
薬物含有層に含有される可塑剤の量は、基剤の種類に応じて適宜調節することができるが、通常、薬物と基剤の合計量100質量部に対して40質量部以下、好ましくは35質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。可塑剤の含有量を40質量部以下とすることにより経口投与剤であるフィルム状製剤の端部から薬物含有層の染み出しが生じにくくなる。本発明のフィルム状製剤においては、後記する水膨潤性ゲル形成層中の高甘味成分等がマスキング作用を発揮するわけであるが、薬物含有層には、機能を損なわない範囲で、薬学的に許容され通常用いられているマスキング剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、着色剤、酸化チタンのような無機フィラー等の添加剤を含ませることができる。
例えばマスキング剤としては、クエン酸、酒石酸、フマル酸等の酸味を与えるもの、サッカリン、グリチルリチン酸、白糖、果糖、マンニトール等の甘味料、メントール、ハッカ油、ペパーミント、スペアミント等の清涼化剤、天然又は合成の香料等が挙げられ、これらのうち1種類又は2種類を選択して使用することができる。
【0019】
本発明のフィルム状製剤における水膨潤性ゲル形成層中の高甘味成分はアセスルファムカリウム(甘味度200程度)またはスクラロース(甘味度600程度)であり、いずれも極めて高い甘味度を有しており、前記苦味成分に対してマスキング作用を発揮する。
ちなみに、後記する比較例において使用している、高甘味成分として著名なステビア(甘味度150〜300程度)、ソーマチン(甘味度3000〜5000程度)およびアスパルテーム(甘味度200程度)は上記2種類の高甘味成分のような前記苦味成分に対するマスキング作用を示さない。
これら高甘味成分の含有量は、通常、水膨潤性ゲル形成層中0.5〜25質量%、好ましくは0.5〜20質量%、さらに好ましくは0.5〜1.0質量%である。0.5質量%以上とすることにより、苦味成分に対してマスキング作用を充分に発揮させることができ、25質量%以下とすることにより、フィルム状製剤の服用者が快適で適度な甘味を感じるようにすることができる。
【0020】
さらには、フィルム状製剤全体に含まれる苦味成分の含有量をA[質量%]、フィルム状製剤全体に含まれる高甘味成分の含有量をB[質量%]としたとき、苦味成分と高甘味成分の成分比A/Bが、1/0.01〜1/2の範囲であることが好ましく、1/0.01〜1/1の範囲であることがより好ましく、1/0.01〜1/0.03の範囲であることが特に好ましい。また、フィルム状製剤全体に含まれる高甘味成分の含有量Bは、通常、0.01〜10質量%、好ましくは0.01〜6質量%、さらに好ましくは0.01〜0.25質量%である。これにより、上述した効果がより顕著に発揮される。
上記のように、苦味成分と高甘味成分の比A/Bを1/2以下とすることにより、フィルム化ができなくなるのを防止でき、1/0.01以上とすることにより、マスキング効果が低下するのを防止できるため、特に好ましい。
苦味を有する薬物を用いて他の剤型に変更する際には、マスキングされた従来の薬剤における苦味成分と高甘味成分の混合比率を基準にして、適宜調製するのが通常である。本発明においては、後で述べる実施例で示した通り、マスキングされた従来の薬剤から予測されるよりもかなり少ない量、たとえば、上記範囲における下限値付近でも十分マスキング効果が発揮されることがわかった。
【0021】
本発明のフィルム状製剤において、水膨潤性ゲル形成層中の上記高甘味成分を保持するためのゲル形成剤としては、特に限定されず、添加目的に応じて適宜選択することができる。
具体的には、水分により膨潤してゲルを形成し得る限り、その種類は特に限定されるものではなく、架橋されたものであっても架橋されていないものであってもよい。例えば、カルボキシビニルポリマー、デンプン及びその誘導体、寒天、アルギン酸、アラビノガラクタン、ガラクトマンナン、セルロース及びその誘導体、カラゲーン、デキストラン、トラガカント、ゼラチン、ペクチン、ヒアルロン酸、ジェランガム、コラーゲン、カゼイン、キサンタンガム等が挙げられ、これらのうち1種類又は2種類以上を選択して使用することができる。
【0022】
水膨潤性ゲル形成層に含有されるゲル形成剤は、その強度を向上させるという観点で、多価金属イオンと反応し得るイオン性官能基を有していることが好ましい。多価金属イオンと反応し得るイオン性官能基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、フェノール性水酸基等が挙げられる。
多価金属イオンと反応し得るイオン性官能基を有しているゲル形成剤の具体例としては、カルボキシビニルポリマーが挙げられ、上記高甘味成分を保持するためには、架橋化カルボキシビニルポリマーが好ましく、架橋化ポリアクリル酸が特に好ましい。架橋化カルボキシビニルポリマー、特に架橋化ポリアクリル酸は、フィルム形成能に悪影響を及ぼさず、膨潤時に程よいゲル強度を示すことができるためである。
架橋化は、架橋されるゲル形成剤の種類に応じた架橋剤によって行なうことができる。カルボキシビニルポリマーは、例えば、多価金属化合物によって架橋することができる。このような多価金属化合物の具体例としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、カリミョウバン、塩化鉄ミョウバン、アンモニウムミョウバン、硫酸第二鉄、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、クエン酸鉄、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、硫酸亜鉛等が挙げられ、これらの1種類又は2種類以上を選択して使用することができる。
【0023】
水膨潤性ゲル形成層にはフィルム形成性を向上させるために、フィルム形成剤を含有させることが好ましい。
フィルム形成剤は、フィルム形成能を有する限り、その種類は特に限定されるものではない。フィルム形成剤の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニルフタレート、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース)、アルキルセルロース(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース)、カルボキシアルキルセルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)、(メタ)アクリル酸及びそのエステル、キサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸等が挙げられ、これらの1種類又は2種類以上を選択して使用することができる。
水膨潤性ゲル形成層に含まれるフィルム形成剤の量は、その種類等に応じて適宜調節することができるが、好ましくは水膨潤性ゲル形成層の30〜85質量%である。
フィルム形成剤の量を30質量%以上とすることにより、水膨潤性ゲル形成層がフィルム形成能を有し、前記高甘味成分によるマスキング作用を補強し、85質量%以下とすることにより、ゲル形成剤によるゲル形成能が低下するのを防止する。
【0024】
水膨潤性ゲル形成層に含有されるフィルム形成剤は水溶性であることが好ましい。
フィルム形成剤が水溶性であると、水膨潤性ゲル形成層に水分が浸入しやすくなり、腔内において水膨潤性ゲル形成層の膨潤及びゲル形成を速やかに生じさせることができる。
水溶性のフィルム形成剤としては、例えば、ポリビニルアルコール;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース;ポリビニルピロリドン;キサンタンガム;カラギーナン;アルギン酸等が挙げられ、これらの1種類又は2種類以上を選択して使用することができる。
【0025】
水膨潤性ゲル形成層には、水膨潤性ゲル形成層に適度な柔軟性を付与するために、可塑剤を含有させてもよい。可塑剤としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、グリセリントリアセテート、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル、ラウリル酸、ショ糖等が挙げられ、これらのうち1種類又は2種類を選択して使用することができる。
可塑剤の量は、ゲル形成剤やフィルム形成剤の種類に応じて適宜調節することができるが、通常、ゲル形成剤とフィルム形成剤の合計量100質量部に対して2〜25質量部、好ましくは4〜21質量部、さらに好ましくは6〜17質量部である。可塑剤の含有量を25質量部以下とすることにより水膨潤性ゲル形成層のコシの強さを保持し、2質量部以上とすることにより可塑剤としての作用を十分に発揮させることができる。
【0026】
水膨潤性ゲル形成層の坪量は、フィルム状製剤を経口投与することが可能な範囲内において適宜調節することができる。当該坪量は0.1〜1000g/m2であることが好ましく、10〜200g/m2であることがさらに好ましい。水膨潤性ゲル形成層の坪量を0.1g/m2以上とすることにより精度よくフィルム化することができる(0.1g/m2より少ないと水膨潤性ゲル形成層中の高甘味成分含有量にバラツキが生じる)。一方、水膨潤性ゲル形成層の坪量を1000g/m2以下とすることにより、フィルムのコシが強くなり過ぎて服用し難くなるのを防止できる。
【0027】
水膨潤性ゲル形成層中のゲル形成剤や高甘味成分等は程度の差はあるもののいずれもマスキング作用を示すが、さらに、前記薬物含有層に含有される前記苦味成分をマスキングするため、通常用いられているマスキング剤を水膨潤性ゲル形成層中に含有させてもよい。水膨潤性ゲル形成層がマスキング剤を含有することによって、水膨潤性ゲル形成層による前記苦味成分のマスキング作用を向上させることができる。通常用いられているマスキング剤としては、例えば、クエン酸、酒石酸、フマル酸等の酸味を与えるもの、サッカリン、グリチルリチン酸、白糖、果糖、マンニトール等の甘味剤、メントール、ハッカ油、ペパーミント、スペアミント等の清涼化剤、天然又は合成の香料等が挙げられ、これらの1種類又は2種類以上を選択して使用することができる。
【0028】
水膨潤性ゲル形成層がポリビニルアルコールのような前記フィルム形成剤を含有する場合、前記高甘味成分とともに、これらのフィルム形成剤もマスキング剤としての役割も果たすことができる。このようにマスキング作用を有するフィルム形成剤を使用することが好ましい。
【0029】
水膨潤性ゲル形成層には、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル等の防腐剤および食用レーキ着色剤等の添加剤を含有させてもよい。水膨潤性ゲル形成層への添加剤の混入は、一般的に、水膨潤性ゲル形成層の強度を減少させるので、水膨潤性ゲル形成層に水分が浸入しやすくなり、水膨潤性ゲル形成層に浸入した水分によりゲル形成剤の膨潤及びゲル形成が生じやすくなるので好ましい。
水膨潤性ゲル形成層には、機能を損なわない範囲で、さらに薬学的に許容される賦形剤、結合剤、崩壊剤、着色剤等の添加剤を含ませることができる。
【0030】
フィルム状製剤を構成する層間(例えば、水膨潤性ゲル形成層と水膨潤性ゲル形成層との間、薬物含有層と水膨潤性ゲル形成層との間、薬物含有層と薬物含有層との間)には中間層を設けることができ、中間層の成分は目的に応じて適宜選択し得る。例えば、層と層との接着を目的として中間層を設ける場合には、薬学的に許容され得る接着剤が含有される。このような接着剤のうち、溶媒を含んだ状態で用いることによって接着性を示す接着剤の具体例としては、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸又はその薬学的に許容される非毒性塩、アクリル酸共重合体又はその薬学的に許容される塩、カルボキシメチルセルロース及びナトリウム塩等の親水性セルロース誘導体、プルラン、ポビドン、カラヤガム、ペクチン、キサンタンガム、トラガント、アルギン酸、アラビアゴム、酸性多糖類又はその誘導体若しくはその薬学的に許容される塩等が挙げられ、加熱によって接着性を示す(すなわち熱融着可能な)接着剤の具体例としては、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニルとビニルピロリドンとのコポリマー等が挙げられ、これらのうちの1種類又は2種類以上を選択して使用することができる。
【0031】
本発明のフィルム状製剤は、以下の手順に従って製造することができる。
<保持基材面に水膨潤性ゲル形成層、次いで薬物含有層が積層された積層体の製造>
シリコーン樹脂剥離剤等で剥離処理したプラスチックフィルムまたは台紙のような保持基材面に、上記高甘味成分、ゲル形成剤、および必要に応じて使用されるフィルム形成剤等を含有する塗工液(溶液または懸濁液、溶媒は、例えば精製水)を塗布または噴霧した後、これを乾燥させて水膨潤性ゲル形成層を形成させ、保持基材面に水膨潤性ゲル形成層が積層された積層体1を製造する。
次いで、積層体1の水膨潤性ゲル形成層の面に、上記苦味成分、基剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤等の添加剤を含有する塗工液(溶液または分散液、溶媒は、例えばエタノール)を塗布または噴霧等により積層した後、これを乾燥させて薬物含有層を形成させる。薬物含有層の形成方法は上記方法に限定されるものではなく、例えば、スクリーン印刷法等の原理を応用した公知の方法を利用した印刷により、薬物含有層を水膨潤性ゲル形成層の上面に形成させることもできる。このようにして、保持基材の上面に水膨潤性ゲル形成層及び薬物含有層が順次積層された積層体2が調製される。
【0032】
<フィルム状製剤の製造方法1>
前記のように製造した積層体2の薬物含有層上に、前記積層体1を製造する際に使用した高甘味成分を含む塗工液を塗布または噴霧して積層した後、これを乾燥させて水膨潤性ゲル形成層を形成させ、薬物含有層の両面に水膨潤性ゲル形成層が積層された積層体3が製造される。得られるフィルム状製剤の品質保持および生産性の観点から、乾燥は60〜130℃程度で、20〜900秒の間で行なうのが好ましい。以下の製造方法2以降においても同様である。
このようにして調製された積層体3から保持基材を剥離することにより本発明のフィルム状製剤を調製することができる。
【0033】
<フィルム状製剤の製造方法2>
前記のように製造した2枚の積層体2の薬物含有層同士を、例えば60〜120℃、1〜5kgf/cm2、0.1〜10秒間の条件で熱融着させ、次いで、両側の保持基材を剥離することにより本発明のフィルム状製剤を調製することができる。
【0034】
<フィルム状製剤の製造方法3>
2枚の積層体2の薬物含有層同士を、例えば60〜120℃、1〜5kgf/cm、0.1〜10秒間の条件で熱融着させることにより積層体4が得られる。この積層体4から2枚の保持基材を剥離し、露出した水膨潤性ゲル形成層に前記積層体1の水膨潤性ゲル形成層の面を、前記の条件で熱融着させることにより積層体5が得られる。
積層体5から保持基材を剥離することにより、肉厚の水膨潤性ゲル形成層を薬物含有層の両面に有する本発明のフィルム状製剤を調製することができる。
【0035】
<フィルム状製剤の製造方法4>
前記積層体1の水膨潤性ゲル形成層の上に接着性成分を含む中間層を形成するための塗工液を塗布または噴霧して積層した後、これを乾燥させて中間層を形成させ、保持基材の上面に水膨潤性ゲル形成層及び中間層が順次積層された積層体6が得られる。
前記積層体4から2枚の保持基材を剥離し、露出した水膨潤性ゲル形成層にそれぞれ前記積層体6の中間層の面を、前記の条件で熱融着させることにより積層体7が得られる。
積層体7から保持基材を剥離することにより、薬物含有層の両面に水膨潤性ゲル形成層を有し、さらにその外側に中間層を介して積層された水膨潤性ゲル形成層を有する本発明のフィルム状製剤を調製することができる。
【0036】
上記フィルム状製剤の製造方法3および4におけるように、水膨潤性ゲル形成層を肉厚にすることにより、苦味に対するマスキング作用をさらに向上させることができる。
【0037】
上記のフィルム状製剤の製造方法において熱融着する替わりに接着剤を用いても良い。ただし、用いられる接着剤は薬学的に許容され得るものでなければならない。薬学的に許容され得る接着剤としては、前述した中間層と同様の成分を用いることができる。
上記のようにして調製された本発明のフィルム状製剤は5〜20mm程度の円形、楕円形、多角形等に打ち抜いて服用できる形態に加工され、ラミネートフィルム等で封入されて出荷される。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の例になんら限定されるものではない。
【0039】
調製例1−1〔高甘味成分等を含有するゲル形成層用塗工液の調製〕
水膨潤性ゲル形成層のための高甘味成分等を含有する塗工液を以下のように調製した。各成分の配合比率(質量基準)を表1〜2に示す。
ガラス製容器に精製水[日本薬局方精製水(小堺製薬社)、以下同じ]を供給し、その中に塩化カルシウムを添加して室温で10分間攪拌して溶解し、これにポリアクリル酸[カーボポール974P(Noveon,Inc.製)、以下同じ]を加え、室温で約1時間攪拌して完全に溶解させて溶液を得た。次いで、この溶液を撹拌しながらポリビニルアルコール[ゴセノールEG−05T(日本合成社製)、ケン化度86.5〜89.0、以下同じ]を添加し、70℃に加温して約2時間攪拌して完全に溶解させた。室温に冷却した後、高甘味成分およびグリセリン[日本薬局方濃グリセリン(旭電化社製)、以下同じ]を添加して10分間攪拌して溶解し、水膨潤性ゲル形成層のための塗工液を得た。なお、ポリアクリル酸は多価金属イオン(塩化カルシウム)により架橋され得るゲル形成剤、ポリビニルアルコールはフィルム形成剤、そしてグリセリンは可塑剤である。
【0040】
調製例1−2〔比較例におけるゲル形成層用塗工液の調製〕
高甘味成分を含まない以外は上記調製例1−1と同様の手順で塗工液を調製した。
【0041】
薬物含有層を形成させるための苦味成分等を含有する塗工液を以下のように調製した。各成分の添加量は表1および2に示されている通りである。
【0042】
調製例2−1〔メキタジンまたは塩酸ロペラミドを含む塗工液の調製〕
ガラス製容器に精製水を供給し、その中にグリセリンを室温下、充分攪拌しながら添加し、室温で10分間攪拌して溶解させ、この中に苦味成分(メキタジンまたは塩酸ロペラミド)を添加して分散させた。これにポリビニルピロリドンを添加して室温で約1時間攪拌して溶解させて薬物含有層を形成させるための塗工液を調製した。
【0043】
調製例2−2〔参考例における塩酸ジフェンヒドラミンを含む塗工液の調製〕
苦味成分として塩酸ジフェンヒドラミンを用いた以外は上記調製例2−1と同様の手順で塗工液を調製した。
【0044】
調製例3〔保持基材面上への水膨潤性ゲル形成層の形成〕
調製例1−1または調製例1−2で調製した塗工液を十分に脱泡した後、乾燥後の塗布量が所定の坪量(メキタジン製剤用は18g/m2、塩酸ロペラミド製剤用は5g/m2、参考例の塩酸ジフェンヒドラミン製剤用は18g/m2)となるようにギャップを調整したアプリケーターを用いて、保持基材であるポリエチレンテレフタレート製剥離フィルム(リンテック株式会社製、製品名:SP−PET3801)のシリコーン樹脂剥離剤処理面の反対面上に展延塗布し、80℃の温風で6分間乾燥させ、保持基材面に水膨潤性ゲル形成層を有する積層体Aを得た。
【0045】
調製例4〔水膨潤性ゲル形成層への薬物含有層の形成〕
調製例2−1または調製例2−2で調製した塗工液を十分に脱泡した後、乾燥後の塗布量が所定の坪量(メキタジン製剤用は52.5g/m2、塩酸ロペラミド製剤用は50g/m2、参考例の塩酸ジフェンヒドラミン製剤用は105g/m2)となるようにギャップを調整したアプリケーターを用いて、調製例3で調製された積層体Aの水膨潤性ゲル形成層上に展延塗布し、80℃の温風で6分間乾燥させ、薬物含有層を形成させて積層体Bを得た。
【0046】
実施例1〜8、比較例1〜8および参考例1、2
調製例4で得られた積層体Bを2枚準備して、その薬物含有層同士を圧着して100℃で2秒間熱融着した後、保持基材であるポリエチレンテレフタレートフィルム2枚を剥離することにより、苦味成分を含む薬物含有層の両面に高甘味成分を含む水膨潤性ゲル形成層を有する本発明のフィルム状製剤が得られた。これから15mmφの打ち抜き型を用いて打ち抜いた。苦味成分を含む薬物含有層の両面に高甘味成分を含む水膨潤性ゲル形成層を有する積層体が得られ、これから15mmφの打ち抜き型を用いて打ち抜くことにより本発明のフィルム状製剤が得られた。(実施例1〜4:苦味成分がメキタジン(1錠あたり2mg含有)、実施例5〜8:苦味成分が塩酸ロペラミド(1錠あたり0.5mg含有))
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
上記の表からも明らかなように、比較例1〜8は、苦味成分としてメキタジンまたは塩酸ロペラミドを使用して水膨潤性ゲル形成層が高甘味成分を含んでいないか、または高甘味成分としてステビア、ソーマチンまたはアスパルテームを含んでいる場合である。
参考例1、2は、水膨潤性ゲル形成層に高甘味成分としてアセスルファムカリウムまたはスクラロースを含み、薬物含有層に苦味成分として塩酸ジフェンヒドラミン(抗ヒスタミン薬、1錠あたり25mg含有)を含んでいる場合である。
【0050】
官能試験
上記で得られた実施例1〜8、比較例1〜8、参考例1、2のフィルム状製剤を用いて製剤開発者5名のパネリストによる以下のような官能評価試験を行なった。
各例のフィルム状製剤サンプルを口中に入れ、それを20秒間口中で膨潤させ嚥下した後、下記に示す評価基準に従い、苦味の程度、甘味の程度、痺れの程度(嚥下後10分後における舌の痺れの程度)、服用感および総合評価を行い、製品としての問題の有無を判定した。その結果を表3および4に示した。
【0051】
[評価基準]
1.苦味の程度
◎:苦味を感じない
○:苦味をやや感じるが製品として問題のない程度である
×:苦味を感じる
2.甘味の程度
◎:甘味のバランスが良い(適当な甘味である)
○:甘味がやや残るが許容の範囲である
×:甘味のバランスが悪い(後味に甘味が残るまたは甘味が不足している)
3.痺れの程度(嚥下後10分後における舌の痺れの程度)
◎:舌の痺れが残らない
○:舌の痺れがやや残るが、製品として問題のない程度である
×:舌に痺れが残る
4.服用感(美味しさ)
◎:美味しい
○:美味しいが、やや苦味あるいは甘味が残る(製品として問題はない程度)
×:美味しくない
【0052】
5.総合評価
前記の1〜4に示した評価をもとに、マスキング不足から感じる苦味、あるいは高甘味度甘味剤の添加過剰から感じる甘味が、服用時に不快であるか否かを総合評価し、不快でなければ製品として問題がなく、不快であれば製品として問題であると判定した。
○:製品として問題がない
×:製品として問題がある
【0053】
【表3】

【0054】
【表4】

【0055】
表3および4に示されている結果より明らかなように、苦味を有する薬物であるメキタジンや塩酸ロペラミドに高甘味成分としてアセスルファムカリウムまたはスクラロースを添加した本発明のフィルム状製剤は、苦味の程度、甘味の程度、痺れの程度、服用感のいずれの評価においても優れ、総合評価として服用に適するフィルム状製剤となった。さらに、従来の薬剤から予測されるよりもかなり少ない量の甘味剤でもマスキング効果は十分であった。
これに対し、他の高甘味成分では、苦味の程度、甘味の程度、痺れの程度、服用感が十分ではなく、フィルム状製剤として不十分であった。
また、他の苦味を有する薬物である塩酸ジフェンヒドラミンについては、アセスルファムカリウムを用いてマスキングしたとしても、全ての評価項目において問題があり、薬効用量を有する薬物を含有する製品とはならないことがわかる。
【0056】
本発明における効果を、例えば、前記の特許文献3と比較してみると以下のようになる。特許文献3に記載された液剤の場合、塩酸ロペラミド0.5mgに対しステビア7.5mgを混合することが記載されている。
これをステビア(甘味度150〜300)とアセスルファムカリウム(甘味度200)の甘味度を考慮して予測される量を算出してみると、塩酸ロペラミド0.5mgに対し、アセスルファムカリウムを5.6〜11.25mg程度添加すればよいこととなる。しかし、上記試験例からも明らかな通り、塩酸ロペラミド0.5mgに対してアセスルファムカリウムはわずか0.01〜0.35mgでも十分に塩酸ロペラミドに対するマスキング効果が示されている。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のフィルム状製剤は水を必要としない経口投与剤の分野で好適に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メキタジンまたは塩酸ロペラミドを含む薬物含有層の両面に、直接又は中間層を介して積層された、アセスルファムカリウムまたはスクラロースを含む水膨潤性ゲル形成層を有することを特徴とするフィルム状製剤。
【請求項2】
アセスルファムカリウムまたはスクラロースの含有量が水膨潤性ゲル形成層中0.5〜25質量%である請求項1に記載のフィルム状製剤。
【請求項3】
フィルム状製剤全体に含まれるメキタジンまたは塩酸ロペラミドの含有量をA[質量%]、フィルム状製剤全体に含まれるアセスルファムカリウムまたはスクラロースの含有量をB[質量%]としたとき、これらの成分比A/Bが、1/0.01〜1/2の範囲である請求項1または2に記載のフィルム状製剤。
【請求項4】
メキタジンまたは塩酸ロペラミドを含む薬物含有層の両面に、アセスルファムカリウムまたはスクラロースを含む水膨潤性ゲル形成層を直接又は中間層を介して積層することを特徴とするフィルム状製剤の製造方法。
【請求項5】
アセスルファムカリウムまたはスクラロースを含む水膨潤性ゲル形成層にメキタジンまたは塩酸ロペラミドを含む薬物含有層を直接又は中間層を介して積層し、次いで得られた積層体2枚の薬物含有層同士を貼付することを特徴とするフィルム状製剤の製造方法。

【公開番号】特開2009−7310(P2009−7310A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171817(P2007−171817)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【出願人】(000108339)ゼリア新薬工業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】