説明

フィルム貼付装置

【課題】 従来よりもホイールの意匠面の凹形状部分にフィルムを貼付できるフィルム貼付装置の提供。
【解決手段】吸着盤30の下面30aに取付けられており吸着盤30から下方に拡張可能なバッグ部材40を有する。そのため、拡張したバッグ部材40でフィルム1をホイール2の意匠面2aの凹形状部分に強制的に押し付けて貼り付けることができる。そのため、バッグ部材40が設けられていない場合(従来)に比べて、ホイール2の意匠面2aの凹形状部分にフィルム1を貼付できる。また、バッグ部材40であるため、フィルム1をホイール2に押し付けるときにバッグ部材40がホイール2の意匠面2a形状になじみ、確実にホイール2の意匠面2aにフィルム1を貼付することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアを吸い込むことで吸着した円環状のフィルムをホイールの意匠面に貼付する、フィルム貼付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2004−67341号公報は、エアを吸い込むことでフィルムを吸着し該吸着したフィルムをホイールの意匠面に貼付する、フィルム貼付装置を開示している。該公報開示の装置では、円環状のフィルムをホイールの意匠面に貼付するとき、ホイールのリム径よりも小さい外径の吸着プレートでフィルムの内径側をホイールのリムとハブ穴との間の軸方向外側に膨らんだ部分に貼付し、その後、フィルムの周縁部を圧着手段でリムに貼付している。
【0003】
しかし、従来のフィルム貼付装置には、つぎの問題点がある。
吸着プレートの下面が平面状であること、また圧着手段が粘着シート粘着フィルム周縁部のみをホイールリムに圧着するものであるため、ホイール意匠面の凹形状部分にフィルムが貼り付きにくく、粘着シートはホイールリム周縁部のみで粘着することになる。そのため、(i)粘着シート貼付したあと、保管・輸送中に粘着シートが剥がれやすい。また、(ii)フィルムは静電気を帯び易いため、ホイールにフィルムを貼付しフィルム貼付装置をホイールから外すときに、フィルムが吸着プレートから離れず、フィルムの仕損が多く発生するおそれがある(仕損費増)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−67341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来よりもホイールの意匠面の凹形状部分にフィルムを貼付できるフィルム貼付装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) エアを吸い込むことで吸着した円環状のフィルムをホイールの意匠面に貼付する、フィルム貼付装置であって、
エア吸引供給装置と、
エア通路となる孔部を備えており前記エア吸引供給装置でエアを吸い込むことで下面に前記フィルムを吸着可能な吸着盤と、
前記吸着盤の下面に取付けられており該吸着盤から下方に拡張可能なバッグ部材と、
を有するフィルム貼付装置。
(2) 前記吸着盤は、樹脂製の第1の吸着盤要素と、該第1の吸着盤要素の下面に取付けられる円環状のゴム製の第2の吸着盤要素と、を備える、(1)記載のフィルム貼付装置。
(3) 前記バッグ部材は、円環状の前記第2の吸着盤要素より半径方向内側で、前記第1の吸着盤要素の下面に取付けられている、(2)記載のフィルム貼付装置。
(4) 前記吸着盤の孔部は、前記第1の吸着盤要素に設けられる丸孔部と前記第2の吸着盤要素に設けられ前記丸孔部に長手方向の一部で連通するスリット部とで構成される第1の孔部と、前記第1の吸着盤要素に設けられ前記バッグ部材の内部に連通する第2の孔部と、を備える、(3)記載のフィルム貼付装置。
(5) 前記第2の吸着盤要素に設けられるスリット部は、円環状の前記第2の吸着盤要素の半径方向に対して斜めの方向に延びている、(4)記載のフィルム貼付装置。
(6) 前記エア吸引供給装置は、複数のエア系統を備えており、
前記第1の孔部は複数設けられており、
複数の前記第1の孔部の一部は、複数の前記エア系統の一つである第1のエア系統に接続されており、複数の前記第1の孔部の残りは、複数の前記エア系統の一つであり前記第1のエア系統とは異なる第2のエア系統に接続されている、(4)記載のフィルム貼付装置。
【発明の効果】
【0007】
上記(1)のフィルム貼付装置によれば、つぎの効果を得ることができる。
吸着盤の下面に取付けられており吸着盤から下方に拡張可能なバッグ部材を有するため、拡張したバッグ部材でフィルムをホイールの意匠面の凹形状部分に強制的に押し付けて貼り付けることができる。そのため、バッグ部材が設けられていない場合(従来)に比べて、ホイールの意匠面の凹形状部分にフィルムを貼付できる。
また、バッグ部材であるため、フィルムをホイールに押し付けるときにバッグ部材がホイールの意匠面形状になじみ、確実にホイールの意匠面にフィルムを貼付することができる。
【0008】
上記(2)のフィルム貼付装置によれば、つぎの効果を得ることができる。
吸着盤が、樹脂製の第1の吸着盤要素と、第1の吸着盤要素の下面に取付けられる円環状のゴム製の第2の吸着盤要素と、を備えるため、吸着盤自体が吸着盤の面直方向に撓むことができる。そのため、吸着盤が金属製等の剛性の高い材料で構成される場合に比べて、吸着盤をホイールの意匠面形状になじませることができる。
また、吸着盤が金属製である場合に比べて、吸着盤の軽量化(フィルム貼付装置の軽量化)を図ることができる。
【0009】
上記(3)のフィルム貼付装置によれば、バッグ部材が、円環状の第2の吸着盤要素より半径方向内側で、第1の吸着盤要素の下面に取付けられているため、つぎの効果を得ることができる。
ホイール意匠面の形状が、ホイール外周部よりもホイール半径方向中心付近がホイール軸方向に凹んでいる形状であっても、その凹んでいる部分にバッグ部材を用いて効果的にフィルムを貼付できる。
【0010】
上記(4)のフィルム貼付装置によれば、つぎの効果を得ることができる。
吸着盤の第1の孔部が、第1の吸着盤要素に設けられる丸孔部と第2の吸着盤要素に設けられ丸孔部に長手方向の一部で連通するスリット部とで構成されるため、第1の吸着盤要素に設けられる孔が丸孔であっても、吸着盤によるフィルムの吸着口面積および吹き出し口面積を大にすることができる。
また、吹出し口面積を大にできるため、フィルムをホイールに貼付するときに吸着盤とフィルムとの間に空気の層を作りやすく、静電気によりフィルムが吸着盤に貼り付いてしまうことを抑制できる。
また、吸着盤の孔部が、第1の吸着盤要素に設けられバッグ部材の内部に連通する第2の孔部を備えるため、吸着盤に設けられる孔部の一部を利用してバッグ部材を拡張させることができ、バッグ部材を拡張させるための部材を別途設ける場合に比べて、部品点数を削減できコスト低減できる。
【0011】
上記(5)のフィルム貼付装置によれば、第2の吸着盤要素に設けられるスリット部が、円環状の第2の吸着盤要素の半径方向に対して斜めの方向に延びているため、つぎの効果を得ることができる。
第2の吸着盤要素に設けられるスリット部が円環状の第2の吸着盤要素の半径方向に延びている場合に比べて、スリット部が第2の吸着盤要素の半径方向内側または外側の空間に連通してしまうことを抑制できる。
【0012】
上記(6)のフィルム貼付装置によれば、エア吸引供給装置が複数のエア系統を備えており、複数の第1の孔部の一部が、複数のエア系統の一つである第1のエア系統に接続されており、複数の第1の孔部の残りが、複数のエア系統の一つであり第1のエア系統とは異なる第2のエア系統に接続されているため、つぎの効果を得ることができる。
第1、第2のエア系統の一方にトラブル(目詰まり、外気に連通等)が発生しても、第1、第2のエア系統の他方でフィルムの貼付作業を継続して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明実施例のフィルム貼付装置の、吸着盤にフィルムを吸着しているときの、部分断面図である。
【図2】本発明実施例のフィルム貼付装置の、吸着盤に吸着しているフィルムをエアを吹き出して吸着盤から剥がしホイールに貼付しているときの、部分断面図である。
【図3】本発明実施例のフィルム貼付装置の、吸着盤の第1の吸着盤要素の底面図である。
【図4】本発明実施例のフィルム貼付装置の、吸着盤の第2の吸着盤要素の底面図である。
【図5】本発明実施例のフィルム貼付装置の、ブロック図である。
【図6】本発明実施例のフィルム貼付装置の、エア吸引供給装置の吸い込み(吸気)と吹き出し(排気)のタイミングを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明実施例のフィルム貼付装置を、図1〜図6を参照して、説明する。
本発明実施例のフィルム貼付装置(以下、単に装置ともいう)10は、図2に示すように、図示略のタイヤを自動車用のホイール2に装着した後出荷する前に、ホイール2の意匠面2aにほこりや傷等が付くことや、自動車本体に取付た状態で輸送する場合にブレーキディスクローター等に錆が発生することを防止するために、ホイール2の意匠面2aに円環状のフィルム1を貼り付ける装置である。
装置10は、エアを吸い込むことで図示略のフィルム取り出し装置上の図示略のロール離形紙に貼り付いているフィルム1を吸着し、その状態のままホイールディスク上にフィルム貼付装置10を移載し、エアを吹き出すことで吸着しているフィルム1を剥がしてホイール2の意匠面2aに貼付する。
【0015】
ホイール2は、図1に示すように、リム3と、ハブ孔4aを備えるディスク4と、を有する。ホイール2は、リム3とディスク4とを別々に製造して溶接などで一体化したホイールであってもよく、図示例のようにリム3とディスク4とを一体に成形したホイールであってもよい。
ホイール2に図示略のタイヤを装着した際の、ホイール2の意匠面(ホイール軸方向外側面、ディスク4の意匠面)2aは、ホイール2の外周部よりもホイール半径方向中心付近(ハブ孔4a付近)がホイール軸方向に凹む形状になっている。
【0016】
装置10は、図5に示すように、エア吸引供給装置20と、図1に示すように、吸着盤30と、バッグ部材40と、位置決め部材(センターコーン)50と、を有する。
【0017】
エア吸引供給装置20は、図5に示すように、エア元21と、エア元21と吸着盤30の上面とを接続するエア系統(エアダクト)22と、を備える。
エア系統22は、複数設けられており、たとえば、それぞれ異なる第1〜第3のエア系統22a、22b、22cの3系統ある。第1〜第3のエア系統22a、22b、22cのエア元21側端は合流し元圧ソレノイドバルブ23が設けられる単一のエア系統22dとなって単一のエア元21に接続されている。
【0018】
第1〜第3のエア系統22a、22b、22cのそれぞれには、真空ソレノイドバルブ24と、吹出流量調整弁25と、真空ソレノイドバルブ24側のエア流れと吹出流量調整弁25側のエア流れとを切り替える切替ソレノイドバルブ26と、が設けられている。
元圧ソレノイドバルブ23と第1〜第3のエア系統22a、22b、22cの各切替ソレノイドバルブ26は、図示略の切替スイッチを押圧操作することで操作可能となっている。
【0019】
吸着盤30は円環状である。吸着盤30は、図2に示すように、樹脂製(例えばポリカーボネート製)の円環状の第1の吸着盤要素31と、第1の吸着盤要素31の下面に接着等にて取付けられる円環状のゴム製の第2の吸着盤要素32と、孔部33と、を備える。
【0020】
第1の吸着盤要素31の外径は、ホイール2の外径よりも大である。第1の吸着盤要素31の内径は、ホイール2の内径(ハブ孔4aの径)と同一または略同一である。第2の吸着盤要素32の外径は、ホイール2の外径よりも大である。第1の吸着盤要素31の内径は、ホイール2の外径よりも小でホイール2の内径(ハブ孔4aの径)よりも大である。
【0021】
孔部33は、吸着盤30を上下方向(板厚方向)に貫通しており、吸着盤30内のエア通路を構成している。
孔部33は、第1の吸着盤要素31に設けられる丸孔部33aと第2の吸着盤要素32に設けられ丸孔部33aに長手方向の一部で連通するスリット部33bとで構成される第1の孔部33cと、第1の吸着盤要素31に設けられバッグ部材40の内部に連通する第2の孔部33dと、を備える。
【0022】
第1の孔部33cは、図3、図4に示すように、複数設けられている。複数の第1の孔部33cの一部(半分)は、第1のエア系統22aに接続されており、複数の第1の孔部33cの残り(半分)は、第2のエア系統22bに接続されている。第1の孔部33cのうち、第1のエア系統22aに接続される第1の孔部33cと第2のエア系統22aに接続される第1の孔部33cとは、吸着盤30の周方向に交互に設けられている。第1の孔部33cが、第1、第2のエア系統22a、22bに接続されているため、図1に示すようにエア吸引供給装置20でエアを吸い込むことで吸着盤30の下面30aにホイール貼付前のフィルム1を吸着可能であり、図2に示すようにエア吸引供給装置20でエアを吹き出すことで吸着しているフィルム1を吸着盤30の下面30aから下方に剥がすことができる。なお、吸着盤30の下面30aは、第2の吸着盤要素32が設けられている部位では第2の吸着盤要素32の下面であり、第2の吸着盤要素32が設けられていない部位では第1の吸着盤要素31の下面である。
【0023】
第2の孔部33dは、図3に示すように、複数設けられている。複数の第2の孔部33dは、第3のエア系統22cに接続されている。バッグ部材40の内部空間に連通する第2の孔部33dが第3のエア系統22cに接続されているため、図1に示すようにエア吸引供給装置20でエアを吸い込むことで拡張(展開膨張)したバッグ部材40を拡張する前の折り畳んだ状態(収縮した状態)に戻すことができ、図2に示すようにエア吸引供給装置20でエアを吹き出すことで折り畳んだ状態(収縮した状態)にあるバッグ部材40を拡張(展開膨張)させることができる。
【0024】
第2の吸着盤要素32に設けられるスリット部33bは、図4に示すように、円環状の第2の吸着盤要素32の半径方向に対して斜めの方向に延びている。
【0025】
バッグ部材40(風船)は、図2に示すように、円環状であり、1つのみ設けられており、吸着盤30の下面30aに上端部で取付けられている。バッグ部材40は、円環状の第2の吸着盤要素32より半径方向内側で、第1の吸着盤要素31の下面に周方向に連続して取付けられている。バッグ部材40の半径方向中心は、第1、第2の吸着盤要素31,32の半径方向中心(吸着盤30の半径方向中心)と一致している。
【0026】
バッグ部材40は、吸着盤30から下方に拡張可能である。バッグ部材40は、可撓性材料で作製されており、たとえば布製である。このため、バッグ部材40は、拡張していないときには、図1に示すように装置10のコンパクト化を図るためにたとえば蛇腹状に上方に折り畳むことができ、下方に拡張したときには、図2に示すように下面がホイール2の意匠面形状に倣う(形状がなじむ)ことができるようになっている。バッグ部材40が折り畳まれているとき(収縮した状態にあるとき)、バッグ部材40の厚みは、図1に示すように、第2の吸着盤要素32の厚みと同じかそれより小とされている。なお、バッグ部材40が折り畳まれているときのバッグ部材40の上下方向厚みは、具体的にはたとえば3mm程度であり、バッグ部材40が拡張したときの上下方向厚み(長さ)は、具体的にはたとえば40mm程度である。
【0027】
位置決め部材50は、吸着盤30の半径方向中央部に配置されている。位置決め部材50は、吸着盤30の上面に設けられるガイド34に沿って、吸着盤30に上下方向(軸方向)に可動に支持されている。
位置決め部材50は、装置10で図示略のフィルム取り出し装置上の図示略のロール離形紙に貼り付いているフィルム1を吸着盤30に吸着するとき、少なくとも1つの円環状フィルム1が現れるように、フィルム面を上にしてテーブル状に広げたロール離形紙の上に装置10を円環状フィルム1の中心と一致するように乗せる。この時位置決め部材50はテーブル上のロール離形紙に当たり、上方に押し上げられるため邪魔にならない。また、位置決め部材50は、吸着盤30に吸着したフィルム1をホイール2の意匠面2aに貼付するとき、自重により吸着盤30から下方へ突出しており、ホイール2のハブ孔4aに上方から挿入(嵌入)されることで、吸着盤30の中心をホイール2の半径方向中心に合わせ、装置10をホイール2に対して吸着盤30半径方向に位置決めする。
【0028】
ここで、図5、図6を用いて、本発明実施例の作動を説明する。
【0029】
(a)装置10で図示略のフィルム取り出し装置上の図示略のロール離形紙に貼り付いているフィルム1を吸着盤30に吸着するとき、装置10を図示略のフィルム取り出し装置上に配置した(乗せた)状態で図示略の切替スイッチを押すと、元圧ソレノイドバルブ23が開く。また、第1〜第3のエア系統22a、22b、22cの各切替ソレノイドバルブ26によって、第1〜第3のエア系統22a、22b、22cがそれぞれ真空ソレノイドバルブ24側になる。その結果、第1、第2のエア系統22a、22bによってフィルム1が吸着盤30に吸着され、バッグ部材40が折り畳まれた状態(収縮状態)になる。
【0030】
(b)上記(a)の状態のまま、フィルム1から離形紙を剥がし、装置10をホイール2上にセットする。
【0031】
(c)吸着盤30に吸着しているフィルム1をホイール2に貼付するとき、再度図示略の切替スイッチを押すと、元圧ソレノイドバルブ23が開いたまま、第1〜第3のエア系統22a、22b、22cの各切替ソレノイドバルブ26によって、第1〜第3のエア系統22a、22b、22cがそれぞれ真空ソレノイドバルブ24側から吹出流量調整弁25側に切り替わる。その結果、第1、第2のエア系統22a、22bによってフィルム1が吸着盤30から下方に剥がされ、バッグ部材40が下方に拡張し、フィルム1がホイール2の意匠面2aに貼付される。
【0032】
(d)上記(c)の所定時間経過後、第3のエア系統22cの切替ソレノイドバルブ26のみが吹出流量調整弁25側から真空ソレノイドバルブ24側に自動的に切り替わり、拡張したバッグ部材40が収縮する。
【0033】
(e)フィルム1をホイール2に貼付した後、上記(d)の状態のまま装置10をホイール2上から外す。
【0034】
(f)上記(e)でホイール2上から装置10を外した後、再度図示略の切替スイッチを押すと、元圧ソレノイドバルブ23が閉じ、第1〜第3のエア系統22a、22b、22cが停止状態になる。その状態で、装置10を、図示略のフィルム取り出し装置上の図示略のロール離形紙に貼り付いている次のフィルム1を吸着盤30に吸着するために、該図示略のフィルム取り出し装置上に配置する(乗せる)。
【0035】
つぎに、本発明実施例の作用を説明する。
本発明実施例では、次の効果を得ることができる。
(A)吸着盤30の下面30aに取付けられており吸着盤30から下方に拡張可能なバッグ部材40を有するため、拡張したバッグ部材40でフィルム1をホイール2の意匠面2aの凹形状部分に強制的に押し付けて貼り付けることができる。そのため、バッグ部材40が設けられていない場合(従来)に比べて、ホイール2の意匠面2aの凹形状部分にもフィルム1を貼付できる。その結果、保管・輸送中のフィルム1の剥がれを減少させ、静電気によるフィルム1の貼り付け不良仕損費を削減でき、生産性を向上させることができる。
【0036】
(B)バッグ部材40であるため、フィルム1をホイール2に押し付ける(貼付する)ときにバッグ部材40がホイール2の意匠面2aの形状になじみ、確実にホイール2の意匠面2aにフィルム1を貼付することができる。
【0037】
(C)バッグ部材40であるため、図示略のフィルタ取り出し装置からフィルタ1を吸着するときなど拡張していないとき折り畳むことができる。そのため、バッグ部材40が設けられていても装置10が大型化することを抑制できる。
【0038】
(D)吸着盤30が、樹脂製の第1の吸着盤要素31と、第1の吸着盤要素31の下面に取付けられる円環状のゴム製の第2の吸着盤要素32と、を備えるため、吸着盤30自体が撓むことができる。そのため、吸着盤30が金属製等の剛性の高い材料で構成される場合に比べて、吸着盤30をホイール2の意匠面2aの形状になじませることができる。
【0039】
(E)吸着盤30が、樹脂製の第1の吸着盤要素31と、第1の吸着盤要素31の下面に取付けられる円環状のゴム製の第2の吸着盤要素32と、を備えるため、吸着盤30が金属製である場合に比べて、吸着盤30の軽量化(装置10の軽量化)を図ることができる。
【0040】
(F)バッグ部材40が、円環状の第2の吸着盤要素32より半径方向内側で、第1の吸着盤要素31の下面に取付けられているため、ホイール意匠面2aの形状がホイール外周部よりもホイール半径方向中心付近がホイール軸方向に凹んでいる形状であっても、その凹んでいる部分にバッグ部材40を用いて効果的にフィルム1を貼付できる。
【0041】
(G)吸着盤30の第1の孔部33cが、第1の吸着盤要素31に設けられる丸孔部33aと第2の吸着盤要素32に設けられ丸孔部33aに長手方向の一部で連通するスリット部33bとで構成されるため、第1の吸着盤要素31に設けられる孔が丸孔であっても、吸着盤30によるフィルム1の吸着口面積および吹出し口面積を大にすることができる。
また、吹出し口面積を大にできるため、フィルム1を吸着盤30から剥がしてホイール2に貼付するときに、吸着盤30とフィルム1との間に空気の層を作りやすく、静電気によりフィルム1が吸着盤30に貼り付いてしまうことを抑制できる。
【0042】
(H)吸着盤30の孔部33が、第1の吸着盤要素31に設けられバッグ部材40の内部に連通する第2の孔部33dを備えるため、吸着盤30に設けられる孔部33の一部を利用してバッグ部材40を拡張させることができる。そのため、バッグ部材40を拡張させるための部材を別途設ける場合に比べて、部品点数を削減できコスト低減できる。
【0043】
(I)第2の吸着盤要素32に設けられるスリット部33bが、円環状の第2の吸着盤要素32の半径方向に対して斜めの方向に延びているため、スリット部33bが円環状の第2の吸着盤要素32の半径方向に延びている場合に比べて、スリット部33bが第2の吸着盤要素32の半径方向内側または外側の空間に連通してしまうことを抑制できる。
【0044】
(J)エア吸引供給装置20が複数のエア系統22a〜22cを備えており、複数の第1の孔部33cの一部が、複数のエア系統の一つである第1のエア系統22aに接続されており、複数の第1の孔部33cの残りが、複数のエア系統の一つであり第1のエア系統22aとは異なる第2のエア系統22bに接続されているため、第1、第2のエア系統22a、22bの一方にトラブル(目詰まり、外気に連通等)が発生しても、第1、第2のエア系統22a、22bの他方でフィルム1の貼付作業を継続して行うことができる。
【符号の説明】
【0045】
1 フィルム
2 ホイール
2a ホイールの意匠面
3 リム
4 ディスク
4a ハブ孔
10 フィルム貼付装置
20 エア吸引供給装置
21 エア元
22 エア系統
22a 第1のエア系統
22b 第2のエア系統
22c 第3のエア系統
23 元圧ソレノイドバルブ
24 真空ソレノイドバルブ
25 吹出流量調整弁
26 切替ソレノイドバルブ
27 切替スイッチ
30 吸着盤
30a 吸着盤の下面
31 第1の吸着盤要素
32 第2の吸着盤要素
33 孔部
33a 丸孔部
33b スリット部
33c 第1の孔部
33d 第2の孔部
34 ガイド
40 バッグ部材
50 位置決め部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアを吸い込むことで吸着した円環状のフィルムをホイールの意匠面に貼付する、フィルム貼付装置であって、
エア吸引供給装置と、
エア通路となる孔部を備えており前記エア吸引供給装置でエアを吸い込むことで下面に前記フィルムを吸着可能な吸着盤と、
前記吸着盤の下面に取付けられており該吸着盤から下方に拡張可能なバッグ部材と、
を有するフィルム貼付装置。
【請求項2】
前記吸着盤は、樹脂製の第1の吸着盤要素と、該第1の吸着盤要素の下面に取付けられる円環状のゴム製の第2の吸着盤要素と、を備える、請求項1記載のフィルム貼付装置。
【請求項3】
前記バッグ部材は、円環状の前記第2の吸着盤要素より半径方向内側で、前記第1の吸着盤要素の下面に取付けられている、請求項2記載のフィルム貼付装置。
【請求項4】
前記吸着盤の孔部は、前記第1の吸着盤要素に設けられる丸孔部と前記第2の吸着盤要素に設けられ前記丸孔部に長手方向の一部で連通するスリット部とで構成される第1の孔部と、前記第1の吸着盤要素に設けられ前記バッグ部材の内部に連通する第2の孔部と、を備える、請求項3記載のフィルム貼付装置。
【請求項5】
前記第2の吸着盤要素に設けられるスリット部は、円環状の前記第2の吸着盤要素の半径方向に対して斜めの方向に延びている、請求項4記載のフィルム貼付装置。
【請求項6】
前記エア吸引供給装置は、複数のエア系統を備えており、
前記第1の孔部は複数設けられており、
複数の前記第1の孔部の一部は、複数の前記エア系統の一つである第1のエア系統に接続されており、複数の前記第1の孔部の残りは、複数の前記エア系統の一つであり前記第1のエア系統とは異なる第2のエア系統に接続されている、請求項4記載のフィルム貼付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−240895(P2010−240895A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89679(P2009−89679)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【Fターム(参考)】