説明

フィレット半径結合部を有する装置

【課題】半導体ウェーハ処理時の過酷な条件に耐えられる半導体ウェーハの保持容器を提供する。
【解決手段】フィレット半径を有するフランジ10を有する結合部20によって、両端がエンドプレート40に結合された複数のロッド30を含むウェーハ保持装置。この装置の構成部品を結合する結合部により、半導体ウェーハ処理チャンバの手動操作並びに過酷な処理条件において安定したウェーハ保持装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体ウェーハを保持する装置に関し、この装置の構成部品はフィレット半径を有するフランジを有する結合部により固定される。さらに詳細には、本発明は、構成部品が、半導体ウェーハ処理の過酷な処理条件に耐えられる、フィレット半径を有するフランジを有する結合部により固定される、半導体ウェーハを保持する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハの処理は、腐食性薬品、1000℃を超える高温、および急速な温度サイクル(RTP)への曝露をはじめとする過酷な条件を含む。このような条件は、特に、例えば接続箇所などの装置の部品が結合される点において、装置を弱体化するといった、ウェーハ保持装置に対する物理的破壊をもたらす可能性がある。結合部の弱体化は典型的に、継ぎ目、特に結合部の構成部品が相互に直角をなす継ぎ目に沿って目に見える亀裂を発生させる。
【0003】
過酷な条件はまた、装置の表面損傷を引き起こす場合があり、この結果、装置から粒子状物体が剥がれ落ち、半導体ウェーハを汚染する可能性がある。装置の表面から剥がれ落ちる粒子に起因する汚染は、珪素または炭化珪素でコーティングされた石英の装置などの、装置の材料とは異なる材料により装置がコーティングされている場合、特に多く見られる。このようなコーティングは、半導体処理の過酷な条件下ではしばしば亀裂が生じるかまたは粒子を形成し、これにより装置の損傷を与え、且つウェーハ並びに処理チャンバを汚染する。コーティングの亀裂は、構成部品が接触する結合部の直角をなす部分において特に多く見られる。粒子状物体はまた、特に結合部が多数の部品を含む場合、装置の結合部の構成要素間の空間に留まる場合がある。
【0004】
ウェーハの粒子による汚染はまた、ウェーハ保持装置が使用後に不適切に洗浄される場合に発生し得る。ウェーハ処理の過程で、ウェーハ並びにウェーハ保持装置は、例えば二酸化珪素、窒化珪素または多結晶シリコンフィルムといった化学物質でコーティングされる。このような物質は装置から除去するのが困難である。洗浄の困難性は、装置が多数の構成部品を有する場合、特に部品が結合されている箇所において増大する。
【0005】
半導体産業では、炭化珪素は半導体処理の過酷な条件に耐えることができ、石英などの材料とは対照的に、ウェーハボートのための優れた材料であることが認識されている。米国特許第6,811,040号は、モノリシックで、化学蒸着された炭化珪素で全体が構成されるウェーハ保持装置を開示している。処理中の半導体ウェーハを保持するボートのロッドは、蟻継手によりエンドプレートに固定される。装置は、例えばボルト、クランプまたはナットといった追加の留め具および部品を使用することなく、装置の構成要素を固定する。場合によって、各結合部は化学蒸着された炭化珪素によりコーティングされ、粒子状物質が結合部品間のいかなる空間にも留まることを防止する。
【0006】
米国特許第6,811,040号に記載されている炭化珪素装置は、多くの他の半導体ウェーハ保持装置より改善されているが、蟻継手装置は、ロッドの長さと同じ面において他の面におけるより、安定性または剛性が劣る。半導体処理中、腐食性薬品および高温への曝露に加えて、半導体ウェーハ処理チャンバの過酷な条件は、ウェーハ保持装置を揺り動かしまたは振動させ得る。これは、典型的に装置の温度が15分〜60分の期間に、室温から1000℃を超える温度に急速に上昇する場合の、初期の加熱中に多く発生する。ウェーハ保持装置はエネルギーを吸収し、熱および例えば振動などの機械エネルギーとしてそれを放散する。このような振動は、装置が最も安定できない面において顕著である。振動は蟻継手とエンドプレートが接合する箇所に剪断力を生じる。連続使用の後、蟻継手は緩められ、この結果ロッドはエンドプレートから分離され得る。振動に加えて、ボートの手動操作も、結合部を時間と共に緩ませることがあり得る。
【0007】
ウェーハボートに関連する別の問題は蟻継手の機械加工の難しさである。炭化珪素は、半導体ウェーハ装置に使用される多くの他の種類のセラミック材料と著しく異なり硬質セラミック材料である。ダイヤモンド工具を用いても、機械加工には問題がある。機械加工は、蟻継手のテーパー形側面特徴に起因して、特に難しい。
【特許文献1】米国特許第6,811,040号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
改良された半導体ウェーハ保持装置は存在するが、半導体ウェーハ処理の過酷な条件への向上した耐性を有する結合部であって機械加工がより容易である結合部を有する、半導体ウェーハ保持装置の必要性は依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの態様では、装置は、フィレット半径を有するフランジを有する結合部によって、その両端においてそれぞれのエンドプレートに固定された複数のロッドを含んで提供される。
【0010】
別の態様では、装置は、フィレット半径を有するフランジを有する結合部によって、両端においてそれぞれのエンドプレートに固定された複数のロッドを含み、各ロッド端はほぞを有し、ほぞは、楕円形ポートの円周の周囲にフィレット半径を有するフランジを有する楕円形ポートを通って、各エンドプレートの内側面中に挿入され、各ほぞはロッドの各端部でロッドの肩部と連続し、各肩部は、フィレット半径を有するフランジの上面に接触する平面を有し、肩部の平面とフランジの上面との間の接合部分を形成する。
【0011】
別の態様では、装置はフィレット半径を有する4側面フランジを有する結合部によって、両端においてそれぞれのエンドプレートに固定された複数のロッドを含み、各ロッド端はほぞを有し、ほぞはフィレット半径を有する4側面フランジを有する長方形ポートを通って各エンドプレートの内側面中に挿入され、各ほぞはロッドの各端部でロッドの肩部と連続し、各肩部はフィレット半径を有するフランジの上面に接触する平面を有し、肩部の平面とフランジの上面との間に接合部分を形成する。
【0012】
さらに別の態様では、装置はフィレット半径を有する3側面フランジを有する結合部によって、両端においてそれぞれのエンドプレートに固定された複数のロッドを含み、各ロッド端はほぞを有し、ほぞはエンドプレートの側面のポートに横方向に挿入され、フィレット半径を有する3側面フランジはエンドプレートの内側面にポートを画定し、各ほぞはロッドの各端部でロッドの肩部と連続し、各肩部はフィレット半径を有するフランジの上面に接触する平面を有し、肩部の平面とフランジの上面との間の接合部分を形成する。
【0013】
別の態様では、装置はフィレット半径を有する3側面フランジを有する結合部によって、両端においてそれぞれのエンドプレートに固定された複数のロッドを含み、各ロッドはフィレット半径を有する3側面フランジを有するほぞを有し、各ロッドはエンドプレートの側面のポートに横方向に挿入され、3側面フランジの各側面がポートの側面との接合部分を形成する。
【0014】
フィレット半径を有するフランジを有する結合部により、このような結合部を有さない半導体ウェーハ装置とは著しく異なる増加した強度を有する装置がもたらされる。さらに、コーティングチャンバ内の装置に施されるコーティング作用物質は、相互に鋭角の(例えば直角)構成部品を備えた結合部とは対照的に、フィレット半径を有するフランジを有する結合部を備える装置上に、より厚くより均一なコーティングを形成する。より厚くてより均一なコーティングは全体として、結合部および装置にさらなる強度を増加させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本明細書全体を通して使用される場合、以下の省略形は、特に他に明記しない限り、以下の意味を有する:℃=摂氏度、mm=ミリメートル;cm=センチメートル;m=メートル;2.54cm/インチ;slpm=1分当たりの標準リットル;および、トル(torr)=0℃において水銀1mmを支持するのに必要な圧力。全ての数値範囲は、境界値を含み、且つ、かかる数値範囲が合計で最大100%までに制限されることが理論的である場合を除いて、任意の順で組み合わせることができる。
【0016】
装置は、半導体ウェーハを処理するための半導体ウェーハ保持装置である。装置は、フィレット半径を有するフランジを有する結合部によって、両端においてそれぞれのエンドプレートに固定された複数のロッドを含む。フィレット半径により、半導体ウェーハ保持装置の多くの従来の結合部とは対照的に、増加した強度を有する結合部がもたらされる。フィレット半径により、ロッドがエンドプレートと接合する結合部の接合部分における鋭角が排除される。鋭角が排除されることにより、鋭角を有する結合部に比べてより均一でより厚いコーティングが装置の結合部上に堆積される。また、結合部上のより均一および厚いコーティングは、結合部を強化する。この結合部はまた、結合部における剪断力を低減または排除する。
【0017】
半導体ウェーハ保持装置の結合部20の円孤状フランジ10のフィレット半径rは、図1に示されている。図はエンドプレート40中に挿入されたロッド30を示し、フランジの表面上の矢印の先端から仮想の十字線の距離により画定されるフランジのフィレット半径rを有する結合部20を形成している。点線の円42は最適の球面を示す。典型的に、フィレット半径は0.25mm〜20mmの範囲である。より典型的には、フィレット半径は1mm〜10mmの範囲である。フィレット半径は、2面が接合する箇所に形成される連続的な曲線の凹面の接合部である。フィレット半径は、フィレット半径の表面の輪郭を決定し、次にこの輪郭に最適な球面を数学的に決定することにより測定される。この最適な球面の半径がフィレット半径である。フィレット半径の面の輪郭は、例えば、接触および非接触プロフィルメーター、光学的コンパレーターまたは輪郭を数学的に決定できる写真により測定される写真といった、任意の技術を利用して測定できる。このような方法は従来技術においてよく知られている。
【0018】
半導体ウェーハを支持するロッドの数は変化し得る。典型的に、半導体ウェーハ保持装置は3または4つのロッドを含む。より典型的には、ロッドの数は3つである。ロッドは、処理中の半導体ウェーハが配置される間隔で隔てられた歯を含む。ロッドの両端においてロッドを固定するエンドプレートは任意の好適な形状であり得る。このような形状としては、長方形、楕円形および三角形が挙げられるが、これらに限定されない。随意に、エンドプレートは、ウェーハの処理中に装置に保持されるウェーハの全域での気体の流れを可能にする開口を含み得る。
【0019】
図2は半導体ウェーハ保持装置の一実施形態を示している。装置50は間隔80により互いに隔てられた複数の歯70をそれぞれ有する3つのロッド60を含む。ロッド60はそれらの両端においてエンドプレート90に結合される。各エンドプレートは半導体処理中のウェーハの端から端まで気体を流すための開口95および97を有する。ロッドはフィレット半径を有する円弧状フランジを有する結合部によりエンドプレートに結合される。図3はエンドプレートに結合されたロッドおよびフィレット半径を有するフランジを示す。
【0020】
図3は図2に示された実施形態の別の図である。図3は3側面のフランジ100を備えるポート内の、ロッド60に結合されたエンドプレート90を備える装置の一端を示す。ロッドとフランジは結合して接合部分105を形成する。フランジはエンドプレート90の内側面110と連続している。
【0021】
ロッドは任意の好適な形状であってもよい。典型的にはロッドは楕円形、長方形または三角形である。ロッドはエンドプレートのポート中に挿入するためのほぞを備えたそれらの両端で終端する。ほぞは、ロッドと連続し、平面を有する肩部が、ほぞがロッドの本体と結合する位置に形成されるようにロッドの本体より小さい直径または幅を有する。一実施形態では、ロッドの肩部は、円弧状のフランジの上面に位置する平面と接合し、ロッドがエンドプレートに結合されると接合部分を形成する。
【0022】
ほぞはロッドの長に対して垂直な、ほぞ全体を貫通する穴を含んでもよい。別の実施形態では、エンドプレートの側面は、エンドプレートを貫通し、ほぞがエンドプレートに挿入される位置のポートのチャネル(channel)に通じる、穴を有する。エンドプレートの側面の上記穴の反対側の第2穴は、ポートのチャネルに通じる。ほぞは、ポートに挿入され、これによりほぞの穴はエンドプレートの側面の穴およびチャネルに通じる第2穴と連続する。エンドプレートとほぞの間に形成される連続的なチャネルにより、ピンは連続的なチャネルに挿入でき、エンドプレートにロッドをさらに固定できる。
【0023】
図4はエンドプレートにロッドを固定するためのピンを含む一実施形態を示す。円形ロッド115はロッドの本体120およびほぞ125を含む。ほぞは肩部130においてロッドの本体に結合する。ほぞ125は肩部130と連続する。ほぞはピン140を挿入するための穴135を含む。穴135は、ほぞ125を貫通する。エンドプレート160の内側面155上のポート150の円周の周囲のフランジ145は、円弧状でフィレット半径を有する側面165を有する。ロッドのほぞは、ポート150に挿入されると、ロッドの肩部130がフランジの上面170と接合し、穴135がエンドプレートの側面の穴175および穴175の反対側の、ポート150に開口したエンドプレート180の第2穴と連続的なチャネルを形成する。ピン140は連続的なチャネル中に挿入され、ポート内にロッドをさらに固定する。
【0024】
図5は結合部190を形成する組み立てられた構成部品を示す。円形ロッド115はポートに挿入され、ロッドとフランジ145の上面が接合して結合部を形成する接合部分195を形成する。図5に示されているとおり、結合部190は、直角などの如何なる鋭角も有さない。フィレット半径を有する円弧状フランジにより鋭角を排除し、増加した強度を有する結合部を提供する。
【0025】
図6は、ロッドをエンドプレートにさらに固定するためにピンが使用される、別の実施形態を示す。長方形ロッド200はロッドの本体205および4側面を有する長方形のほぞ210を含む。ほぞは、4側面を有する肩部215でロッドの本体に結合する。ほぞ210は肩部215と連続する。ほぞはピン225を挿入するための穴220を含む。穴220はほぞ210を貫通する。長方形フランジ225はエンドプレート240の内側面235上にポート230の境界を画定し、及び円弧状でフィレット半径を有する側面245を有する。ポートは4つの内面247を有する。ロッドの肩部215がフランジの表面250と接合して接合部分を形成するように、ロッドのほぞがポート230中に挿入され、ロッドの肩部215はフランジの表面250と接合して、接合部分を形成し、穴220は、穴255の反対側の内側面から、ポート230と、ポート230に開口しているエンドプレートの第2穴260とに通じるエンドプレートの側面における穴255と連続的なチャネルを形成する。
穴220は、ポート230と、ポート230内に通じるエンドプレートの第2穴260とに通じる、エンドプレートの側面で穴255と連続的なチャネルを形成する。ピン225は連続的なチャネルに挿入され、ロッドをポートにさらに固定する。
【0026】
図7は、エンドプレートにロッドをさらに固定するためにピンが使用される別の実施形態を示す。この実施形態では、ロッドはエンドプレートのポート内に横方向に挿入される。エンドプレートのポートはエンドプレートの側面で開いている。長方形ロッド300はロッドの本体305およびほぞ310を含む。ほぞは肩部315でロッドの本体に結合する。肩部は3つの表面を有する。ほぞ310は肩部315と連続する。ほぞはピン325を挿入するための穴320を含む。穴320はほぞ310を貫通する。ポート335の境界を画定する3側面フランジ330は、円弧状の、フィレット半径を有する側面340を有する。フランジはエンドプレートの内側面345上に存在する。ロッドのほぞはポート335に横方向に挿入され、これによりロッドの肩部315はフランジの面350と接合して接合部分を形成する。ポート335は3つの内面355を有する。穴320は、ポート335に開口している第2穴360と連続的なチャネルを形成する。ピン325は穴320および第2穴360により形成される連続的なチャネルに挿入され、ロッドをポートにさらに固定する。
【0027】
別の実施形態では、フィレット半径を有するフランジは、ポートの境界を画定する代わりに、ロッドのほぞ上に存在する。図8はこの実施形態を示す。長方形ロッド400はロッドの本体405およびほぞ410を含む。ほぞは4側面417を備えるフランジ415と、円弧状の、フィレット半径を有する3つの上面420を含む。ロッドのほぞはエンドプレート430の側面に開くポート425に横方向に挿入される。ほぞは、ほぞ410を貫通する穴435を含む。ロッドのほぞはポート425に挿入され、これによりほぞの3つの側面417がポート425の対応する3つの側面445と接合して、ほぞの3つの側面とポートの3つの側面との間に接合部分を形成する。穴435の反対側のエンドプレートのポートの側面にある第2穴450は、ロッドがポートに挿入されると、ポート425に通じて、ロッドのほぞの穴435と連続的なチャネルを形成する。ピン455は連続的なチャネルに挿入され、ロッドをポートにさらに固定する。
【0028】
装置の部品は、任意の好適な種類の炭化珪素から構成されてもよい。典型的に、部品は化学蒸着された炭化珪素から構成される。より典型的には、装置の部品は、化学蒸着された立方晶炭化珪素から構成され、最も典型的には部品は化学蒸着された立方β結晶構造炭化珪素から構成される。立方晶系炭化珪素は、立方晶炭化珪素の熱膨張および熱伝導性が等方性であり(すべての方向で同じである)、その結果、加熱または冷却時の装置における熱応力を低減する理由から、本出願の場合に最も適している。熱応力は、装置の変形を引き起こして処理中のウェーハに損傷を与える可能性があり、深刻な場合、応力が極めて大きく、装置の故障(破損)を引き起こすことがある。
【0029】
炭化珪素は典型的に、耐酸化性、耐薬品性および耐熱衝撃性であるため、モノリシック(monolithic)である。さらに、このようなモノリシック炭化珪素はいかなるコーティングをも有する必要がなく、この結果、粒子が半導体ウェーハ処理中に剥がれ落ち、ウェーハを汚染する可能性を排除する。モノリシックの用語は、炭化珪素が一様な構成要素(solid piece)であることを意味する。このような炭化珪素は通常化学蒸着により形成され、この化学蒸着では、一様な構成要素がマンドレルと一般に呼ばれる基体上に炭化珪素を堆積することによって、分子ごとに形成される。次に、単一の構成要素は通常の手段によりマンドレルから除去され、所望のサイズおよび形状に機械加工される。このようなモノリシック化学蒸着炭化珪素を形成する方法は当該技術においてよく知られている。このような方法の例は米国特許第5,354,580号に開示されている。
【0030】
最小限の機械加工が、半導体ウェーハ保持装置の構成部品の生成において採用される。結合部の部品およびロッドの溝ならびにエンドプレートを成形することは、多くの単一構成要素の炭化珪素半導体ウェーハ保持装置の機械加工より時間が短く複雑性は少ない。さらに、結合部は、追加の機械的構成要素または望ましくない化学シール剤を必要とすることなく装置の構成部品を固定する。
【0031】
場合によっては、結合部をさらに強化するために、装置の結合部を炭化珪素でコーティングしてもよい。典型的に結合部は1mm〜5mmの炭化珪素でコーティングされる。炭化珪素は、例えば物理的蒸着または化学蒸着といった当技術分野でよく知られた通常の方法により結合部上に堆積させることができる。フィレット半径を有するフランジを有する結合部は、構成部品が例えば直角で接合する、鋭角を有する結合部に比べて、結合部上により均一でより厚いコーティングを提供する。より均一でより厚いコーティングは装置の強度をさらに増す。例えば、炭化珪素を製造するのに使用される大規模な化学蒸着(CVD)処理においては、CVD反応器は物質移動律速条件で操作され、この条件では、構成要素の表面全体にわたる化学作用物質の流れがコーティングの均一性に重大な影響を与える。結合部における鋭角(例えば直角など)は、不十分な流れの領域をもたらし、この結果、結合部における作用物質の流れの低減およびコーティング堆積の低減を引き起こす。結合部におけるより鋭角を排除することにより、作用物質の流れは改善されて、より均一なコーティングの堆積、およびより厚いコーティングを実現する。
【0032】
半導体ウェーハ処理中に、装置中のウェーハと共にウェーハ保持装置は、最初に、15分〜60分の期間にわたって室温から1000℃を超える温度への急速な温度上昇に曝される。典型的には、温度は20分〜45分の期間にわたって室温から1450℃に上昇する。このような急速な温度上昇は、はやい速度でウェーハ保持装置内のエネルギーの増加を引き起こす。増加したエネルギーは、熱および例えば振動などの機械エネルギーの形で装置から放散される。このような振動は典型的に、装置の最も弱いまたは最も安定性のない平面に沿って装置に発生する。典型的に、これは平面またはロッドの長さ方向に沿っている。本発明の結合部は、他の複数の平面または複数の方向に組まれているロッドの、平面における安定性のある結合部を提供し、振動または動きを低減または排除する。
【0033】
本発明の結合部は、溝内に置かれる半導体ウェーハの重さによってたわまないような、装置に対して十分な強度および支持を提供する。したがって、本発明の装置を使用して、水平処理に関連する問題を心配することなく、水平処理により多数のウェーハを処理できる。さらに、炭化珪素構成要素により、装置は多数の半導体ウェーハが処理され得る垂直の装置内に配置することができる。これに加えて、ウェーハ保持装置のサイズは、採用される半導体ウェーハ処理チャンバのサイズによってのみ制限される。
【0034】
以下の例は本発明を説明することを意図し、本発明の範囲を制限することを意図したものではない。
【実施例】
【0035】
結合部の強度を試験するための標準試験方法を用いて強度を試験するために、化学蒸着された炭化珪素の3つの結合部を準備した。各結合部は、長さ76mm×幅76mm×厚さ6.4mmの寸法を有する化学蒸着された炭化珪素エンドプレート部分を含んでいた。
【0036】
エンドプレートは、通常のパラメータを使用する通常の化学蒸着方法を用いて作られた。条件は、6つの三角形のボックス生成炉に対して最適化された。炭化珪素は、不活性水素(H)およびアルゴン(Ar)環境内でメチルトリクロロシラン(MTS)から生成された。炉の各ボックス内の炭化珪素の堆積条件は下記の表の通りである。
【0037】
【表1】

【0038】
炭化珪素は長方形のグラファイト・マンドレル上に堆積された。蒸着後、蒸着物はマンドレルから除去され、220グリットダイヤモンド含侵砥石車および工具を用いて機械加工して、1ÅRMS未満に研摩され、上述の寸法を有するエンドプレートを形成した。
【0039】
3つの炭化珪素レールビーム(rail beam)はまた、表1に記載された条件を用いてエンドプレートに対して使用された、通常の化学蒸着方法を用いて作られた。蒸着後、蒸着物はグラファイト・マンドレルから除去された。レールビームは長さ64mm、幅14mmおよび高さ20mmであった。これらはエンドプレートと同じ方法および工具により機械加工および研摩された。
【0040】
レールビームはエンドプレートを備えた結合部を形成するために組み合わされた。1つのレールビームはエンドプレートに結合され、直角を有する結合部を形成した。結合部は2.3mmの化学蒸着された炭化珪素でコーティングされた。他の2つの結合部は3mmのフィレット半径を有する結合部であった。1つは、図7に示されている開いた背面の半径結合部を有し、第2の結合部はフィレット半径を有し、図6に示されている閉じた背面の半径結合部を有していた。両方の結合部はピンで固定され、2.3mmの化学蒸着された炭化珪素でコーティングされた。化学蒸着は1.5mの炉内で行われた。蒸着条件を下記の表に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
その後、3つの結合部のすべてが亀裂に対して視覚検査された。どの結合部も可視の亀裂または割れを示さなかった。しかし、エンドプレートに対して直角のレールを備えた結合部は、図9Aの写真に示されているとおり不充分な炭化珪素蒸着を示した。対照的に、フィレット半径を有する結合部は、図9Bの写真に示されているとおり完全な炭化珪素被覆範囲を示した。
【0043】
その後、各結合部は標準のInstron Mechanical Tester(商標)内に置かれ、各結合部が破壊前に耐えられる負荷量を試験した。結合部のエンドプレートは固定具に固定され、エンドプレートから、負荷(力)が加えられるレール上の点までの距離が2.5インチになるように、レールが固定具から水平に突出する状態にエンドプレートを保持した。次に、Instron Mechanical Tester(商標)のヘッド(ロードセル)が、レール部分を押し下げて、0.02インチ/分の速度で動くように設定された。ポンドでの負荷値および負荷速度(インチ/分)は通常のチャート式記録計に記録され、結合部が割れた点はチャート式記録計において識別され、割れを生じるレール上の負荷(力)を決定するために使用された。
【0044】
エンドプレートに対して直角のレールビームを備え、不充分な炭化珪素蒸着を有する通常の結合部は、負荷158ポンドを加えたのちに割れた。対照的に、開いた背面およびフィレット半径を有し、完全な炭化珪素蒸着被覆範囲を有する結合部は、158ポンドで、割れず、またはいかなる割れ目をも示さなかった。
【0045】
開いた背面およびフィレット半径を有し、完全な炭化珪素蒸着被覆範囲を有する結合部は、加えられる負荷が189ポンドに到達するまで壊れなかった。閉じた背面およびフィレット半径を有し、完全な炭化珪素被覆範囲を有する結合部は、適用される負荷が183ポンドに到達するまで故障を生じなかった。したがって、フィレット半径を有する結合部は、レールビームがエンドプレートに対して直角であり、不充分な炭化珪素被覆範囲を有する従来の結合部に比べてより強固であった。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】フィレット半径を有する結合部の側面の概略図である。
【図2】半導体ウェーハ保持装置の一実施形態であって、歯およびエンドプレートを備えたロッドを示す。
【図3】半導体ウェーハ保持装置の一実施形態であって、エンドプレートに結合されたロッドおよび各結合部におけるフィレット半径を示す。
【図4】結合部が、フィレット半径を有する楕円形フランジを有する楕円形ポートと、ロッドのほぞとを有する実施形態を示す。
【図5】ロッドが楕円形ポート内に固定され、ポートの円周の周囲にフィレット半径を有する実施形態を示す。
【図6】結合部が、フィレット半径を有するフランジを有する長方形の4側面のポートおよびロッドのほぞを有する実施形態を示す。
【図7】結合部が、フィレット半径を有する3側面フランジを有する3側面のポートおよびポートに横方向に挿入されるほぞを有する実施形態を示す。
【図8】フィレット半径を有するフランジがロッドのほぞ上にあり、ロッドが横方向に3側面のポートに挿入される実施形態を示す。
【図9A】図9Aはロッドが直角でエンドプレートに結合されている、炭化珪素でコーティングされた結合部の写真である。
【図9B】図9Bはロッドがフィレット半径を有するフランジを有するポートを備えるエンドプレートに固定されている、炭化珪素でコーティングされた結合部の写真である。
【符号の説明】
【0047】
10 円孤状フランジ
20 結合部
30 ロッド
40 エンドプレート
42 最適の球面
50 装置
60 ロッド
70 歯
80 間隔
90 エンドプレート
95 気体を流すための気体を流すための開口
97 開口
100 3側面のフランジ
105 接合部分
110 エンドプレートの内側面
115 円形ロッド
120 ロッドの本体
125 ほぞ
130 肩部
135 穴
140 ピン
145 フランジ
150 ポート
155 エンドプレートの内側面
160 エンドプレート
165 フィレット半径を有する側面
170 フランジの上面
175 エンドプレートの側面の穴
180 エンドプレート
190 結合部
195 接合部分
200 長方形ロッド
205 ロッドの本体
210 4側面を有する長方形のほぞ
215 4側面を有する肩部
220 穴
225 ピン/フランジ
230 ポート
235 エンドプレートの内側面
240 エンドプレート
245 フィレット半径を有する側面
247 内面
250 フランジの表面
255 穴
260 第2穴
300 長方形ロッド
305 ロッドの本体
310 ほぞ
315 肩部
320 ピンを挿入するための穴
325 ピン
330 境界を画定する3側面フランジ
335 ポート
340 フィレット半径を有する側面
345 エンドプレートの内側面
350 フランジの面
355 内面
360 第2穴
400 長方形ロッド
405 ロッドの本体
410 ほぞ
415 4側面を備えるフランジ
417 4側面
420 フィレット半径を有する3つの上面
425 ポート
430 エンドプレート
435 ほぞ410を貫通する穴
445 3つの側面
450 第2穴
455 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィレット半径を有するフランジを有する結合部によって、両端においてそれぞれのエンドプレートに固定された複数のロッドを含む装置。
【請求項2】
結合部が炭化珪素でコーティングされている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
フィレット半径を有するフランジを有する結合部によって、両端においてそれぞれのエンドプレートに固定された複数のロッドを含み、
各ロッド端はほぞを有し、該ほぞは、フィレット半径を有するフランジを楕円形のポートの円周の周囲に有する楕円形のポートを通って各エンドプレートの内側面中に挿入され、各ほぞはロッドの各端部でロッドの肩部と連続し、各肩部は、フィレットを有する前記フランジの上面に接触する平面を有し、肩部の平面とフランジの上面との間に接合部分を形成する、装置。
【請求項4】
フィレット半径を有する4側面フランジを有する結合部によって、両端においてそれぞれのエンドプレートに固定された複数のロッドを含み、
各ロッド端はほぞを有し、該ほぞは、フィレット半径を有する4側面フランジを有する長方形のポートを通って各エンドプレートの内側面中に挿入され、各ほぞはロッドの各端部でロッドの肩部と連続し、各肩部はフィレット半径を有するフランジの上面に接触する平面を有し、肩部の平面とフランジの上面との間に接合部分を形成する、装置。
【請求項5】
フィレット半径を有する3側面フランジを有する結合部によって、両端においてそれぞれのエンドプレートに固定された複数のロッドを備え、
各ロッドはほぞを有し、該ほぞはエンドプレートの側面においてポート中に挿入され、フィレット半径を有する3側面フランジはエンドプレートの内側面上にポートを画定し、各ほぞはロッドの各端部でロッドの肩部と連続し、各肩部はフィレット半径を有するフランジの上面に接触する平面を有し、肩部の平面とフランジの上面との間に接合部分を形成する、装置。
【請求項6】
フィレット半径を有する3側面フランジを有する結合部によって、両端においてそれぞれのエンドプレートに固定された複数のロッドを含み、
各ロッドは前記フィレット半径を有する前記3側面フランジを備えるほぞを有し、各ロッドは前記エンドプレートの側面においてポート中に挿入され、これにより前記3側面フランジの各側面は前記ポートの側面と接合部分を形成する、装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【公開番号】特開2007−329476(P2007−329476A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−146671(P2007−146671)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】