説明

フィン材およびそれを用いた熱交換器

【課題】 薄肉化および軽量化が可能な熱交換器に用いられるフィンを提供することを目的とする。また、このフィンを用いた熱交換器を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のフィン材は、例えば一対のヘッダータンクと、該ヘッダータンクの間に設けられた複数のチューブと、該複数のチューブの間に設けられたフィンと、が具備されてなる熱交換器に使用される前記フィンであって、該フィンがアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる芯材と、該芯材の一方の面のみに形成されたろう材とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に使用されるフィン材に係り、特に、フィンの薄肉化および軽量化に関するものである。また、このフィンを用いた熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車にはラジエータ、カーエアコン、インタークーラ用などの種々の熱交換器が用いられている。
このような熱交換器の一例として、以下の特許文献1には、アルミニウム製熱交換器が開示されている。図5(a)に示すように、このアルミニウム製熱交換器20は、一対の中空ヘッダー23,24と、この中空ヘッダー23,24間に平行配置された複数の熱交換チューブ21と、隣接するチューブ21間に配置されたフィン22とからなる熱交換器本体25を基本構成とし、さらに、この熱交換器本体25には取付用ブラケット26が設けられている。また、一方のヘッダー23には冷媒供給口27が設けられ、他方のヘッダー24には冷媒排出口28が設けられている。
フィン22、ヘッダー23,24およびブラケット26は、いずれも芯材29の表面にライナー材30をクラッドしたアルミニウムブレージングシート31を所定の形状に加工して製造されており、ライナー材30を介して相互の部材が強固にろう付されている。図5(b)に示すように、このフィン22は、芯材29の両面にライナー材30を形成した構造を有しており、図5(c)に示すようにコルゲート状に形成されて使用されている。
【0003】
このアルミニウム製熱交換器20を組立・製造する場合には、上記のように製造されたフィン22、ヘッダー23,24およびブラケット26と、別途に製造した熱交換チューブ21とを用いて、図5(a)に示すように各部材を組み立てた後、組み立て物を窒素雰囲気中において、例えば600℃で10分間加熱する。これにより、各部材の接合部のライナー材30を溶融して各部材が接合され、アルミニウム製熱交換器30が製造される。
【0004】
ところで、最近では、自動車の快適性や省燃費が強く求められており、それに伴って、自動車に搭載される熱交換器に対する小型化や高性能化の要求は強まる一方である。特に、軽量化の観点から、熱交換器の構成部材の薄肉化が求められている。
【特許文献1】特開平6−134568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のアルミニウム製熱交換器20においては、芯材29となるアルミニウム材の両面にろう材層であるライナー材30がクラッドされてなるアルミニウムブレージングシートを用いてフィン22、ヘッダー23,24およびブラケット26が製造されているため、各部材が厚肉になる傾向があった。
特にコルゲート状に形成されたフィン22は、隣接された熱交換チューブ21同士の間に配置されてその両面が熱交換チューブ21に接続されるためフィン22の両面がろう材に覆われている必要があり、厚肉になる原因となっていた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、薄肉化および軽量化が可能な熱交換器に用いられるフィン材を提供することを目的とする。また、このフィンを用いた熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明のフィン材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる芯材と、該芯材の一方の面のみに形成されたろう材とからなることを特徴とする。
かかる構成によれば、芯材の一方の面のみにろう材が形成されているので、フィンを薄肉化および軽量化することができる。
【0008】
本発明のフィン材は、前記フィン材の厚さが40〜80μmであり、前記ろう材の厚みが4μm以上であり、クラッド率が5〜40%であることを特徴とする。
かかる構成によれば、ろう材が形成された芯材の一方の面を外側にしてフィンを螺旋形状に形成すると、このフィンの外面はろう材が形成された面となり、フィンの内面はろう材が形成されていない面となる。そのため、チューブが取り付けられるフィンの外面にはろう材が形成されているので、フィンとチューブとの接続が可能となり、一方、チューブが接続されないフィンの内面にはろう材が形成されていないので、フィンが厚肉にならない。したがって、フィンを薄肉化および軽量化することができる。
また、このフィンを用いて熱交換器を構成すると、チューブとフィンとの接合力を十分に確保できるとともにフィンの強度を十分に確保できる。そのため、このフィンを用いて構成した熱交換器の強度を十分に確保できる。
【0009】
本発明の熱交換器は、一対のヘッダータンクと、該ヘッダータンクの間に設けられた複数のチューブと、該複数のチューブの間に設けられたフィンと、が具備されてなる熱交換器であって、前記フィンがアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる芯材と、該芯材の一方の面のみに形成されたろう材とからなり、前記ろう材が形成された面を外側にして前記フィンが螺旋形状に形成されてなることを特徴とする。
かかる構成によれば、ろう材が形成された芯材の一方の面を外側にしてフィンを螺旋形状に形成すると、このフィンの外面はろう材が形成された面となり、フィンの内面はろう材が形成されていない面となる。そのため、チューブが取り付けられるフィンの外面にはろう材が形成されているので、フィンとチューブとの接続が可能となり、一方、チューブが接続されないフィンの内面にはろう材が形成されていないので、フィンが厚肉にならない。したがって、このフィンを用いて構成した熱交換器は、薄肉化および軽量化されたものとなる。
【発明の効果】
【0010】
以上に説明したように、本発明のフィン材によれば、芯材の一方の面のみにろう材が形成されているので、フィンを薄肉化および軽量化することができる。
また、本発明の熱交換器によれば、薄肉化および軽量化されたフィンを用いて熱交換器が構成されているので、熱交換器を薄肉化および軽量化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する
図1に、本発明の実施形態の熱交換器を示す。この熱交換器11は、対向して配置された一対のヘッダータンク12と、これらのヘッダータンク12の間に互いに並行に間隔をあけて設けられたアルミニウム合金製の複数の偏平型のチューブ13と、これらのチューブ13の間に設けられるフィン14とから概略構成されている。また、一対のヘッダータンク12には、その両端を接続するように図示略のヘッダープレートが取り付けられている。
【0012】
熱交換器11において前記ヘッダータンク12とチューブ13は、ヘッダータンク12の側面に複数整列形成された図示略のスロット(差込孔)に各チューブ13の端部を差し込み、差込部分の周りに配置したろう材を用いて両者を相互にろう付けするとともに、チューブ13とフィン14は、フィン14に形成されたろう材層を用いて両者を相互にろう付けすることによって組み立てられている。
この構造の熱交換器11は、チューブ13の内部に複数形成された流通孔とヘッダータンク12の内部空間を介して冷媒を循環させ、フィン14を介して効率よく熱交換ができるように構成されている。
【0013】
図2に示すように、フィン材15は、アルミニウム合金からなる芯材16の一方の面にAl−Siからなるろう材17が被覆されたものを平板状に形成したものである。
芯材16としては、アルミニウムあるいは一般的なアルミニウム合金が使用できるが、JIS3003合金が好適に使用できる。また、ろう材17としては、一般的なAl−Si合金が使用できるが、JIS4045合金が好適に使用できる。
【0014】
このフィン材15としては、ろう材17のクラッド率を5〜40%の範囲にすることが好ましい。ろう材17のクラッド率が5%未満の場合には、ろう材が不足するため、フィン14とチューブ13との接合を十分に行うことができない。また、ろう材17のクラッド率が40%を超える場合には、フィン材の強度が低下するため、フィンとしての使用に適さない。
芯材16およびろう材17からなるフィン材15の厚さは、40〜80μmであることが好ましい。フィン材15の厚さが40μm未満では、フィン材の強度が低下するため、フィンとしての使用に適さない。フィン材15の厚さが80μmを超えると、フィン材15が厚くなり、薄肉化および軽量化に適さない。
尚、芯材クラッド率とは、フィン材の厚さに対する芯材の厚さの割合であり、ろう材クラッド率とは、フィン材の厚さに対するろう材の厚さの割合である。
【0015】
図3に示すように、本実施形態のフィン14は、ろう材17が形成されている面を外側にしてフィン材15を螺旋形状に形成したものである。すなわち、螺旋形状に形成された状態において、フィン14の外面はろう材17が形成された面てあり、内面はろう材17が形成されていない面である。なお、螺旋の断面は円形に限定されず、楕円形、方形等、成形が可能であればどのような形でもよい。
また、図4に示すように、凹凸形状からなるルーバー18を幅方向に設けたフィン材15を用いてフィン14を形成してもよい。なお、ルーバー18は、縦方向に設けてもよい。ルーバー18を設けることによって、フィン14の周囲の外気とフィン14との接触面積が増加するので、より熱交換の効率が向上する。
【0016】
本発明の熱交換器11を組み立てる場合には、一対のヘッダータンク12の間に複数のチューブ13を設けるとともに、複数のチューブ13の間に上記のように形成したフィン14を配置する。このように構成した組立体にフラックス等を塗布した上で窒素雰囲気中において所定温度に加熱することによって、各部材の接合部のろう材17を溶融して各部材を接合し、熱交換器11を製造することができる。
【実施例】
【0017】
以下に実施例を示して、本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
アルミニウム合金製のヘッダータンク12,12とチューブ13とフィン14とを用意し、概略構成が図1のような熱交換器11を製造した。ヘッダータンク材としては、JIS3003/4343のクラッド材(クラッド率が10%)を使用し、ろう材面が外側になるように筒状に電縫溶接した。チューブ13としては、JIS1050からなる押出扁平チューブを使用した。
フィン材15としては、芯材16となるJIS3003合金の一方の面にろう材17となるJIS4045合金を被覆したクラッド材を使用した。芯材クラッド率は90%とし、ろう材クラッド率は10%とし、厚さは70μmとした。フィン材15を幅3mmの薄板状に製造し、図3に示すように、螺旋形状に形成した。形成したフィン14の半径は3mm、ピッチ間距離は4mmとした。
【0018】
上記のようなヘッダータンク12、チューブ13およびフィン14を所定の構造に組立てた後、組立体を窒素雰囲気中において600℃で3分間の条件で加熱し、ろう材を溶かして各部材を接合し、熱交換器11を製造した。得られた熱交換器11のフィン14とチューブ13との接合部の接合状態をフィン接合率とろう付性(耐ろう侵食性)の評価項目を用いて評価した。
フィン14とチューブ13の設置面積に対してろう材17が形成されている面積をフィン接合率とし、98%以上の場合を良(○印)、95%以上の場合を可(△印)、95%未満の場合を不可(×)として評価した。
また、熱交換器11の組立体を加熱すると、フィン14の芯材16からろう材17が拡散していき、フィン14の芯材表面のろう材17の厚さが減少する。すなわち、ろう材17が拡散していくことにより、芯材16とろう材17からなるフィン14は薄膜化する。そこで、ろう付処理後の熱交換器について、フィン/チューブ接合部断面を観察し、フィン材粒界へのろう侵食深さが、元の芯材板厚に対して30%未満のものを○、30%以上50%未満のものを△、50%以上のものを×として評価した。評価結果を表1に示す。
【0019】
【表1】

【0020】
(実施例2〜7)
フィン材15の厚さおよびクラッド率を変えた以外は実施例1と同様に熱交換器を製造した。これらの熱交換器において、実施例1と同様にフィン接合率とろう付性(耐ろう侵食性)を評価した。評価結果を表1に示す。
【0021】
(比較例1)
比較例として、図5(b)に示すように、フィン材としては、芯材となるJIS3003合金の両面にろう材となる4045合金を形成したクラッド材を使用した。
芯材の厚さを63μmとし、芯材の両面に厚さ3.5μmのろう材を形成し、厚さ70μmのフィン材を形成した。次に、図5(c)に示すように、このフィン材をコルゲート状に形成した。このように形成したフィンを用いた以外は実施例1と同様に熱交換器を製造し、実施例1と同様にフィン接合率とろう付性(耐ろう侵食性)を評価した。評価結果を表1に示す。
【0022】
(比較例2)
フィン材のクラッド率を変えた以外は、比較例1と同様に熱交換器を製造し、フィン接合率とろう付性(耐ろう侵食性)を評価した。評価結果を表1に示す。
【0023】
表1に示したように、実施例1〜7においては、コア接合率およびろう付性(耐ろう侵食性)において良好な結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の熱交換器の正面図である。
【図2】本発明のフィン材の断面図である。
【図3】本発明のフィンの正面図である。
【図4】本発明のフィンの変形例を示す正面図である。
【図5】(a)は従来の熱交換器を示す正面図、(b)は従来のフィン材を示す断面図、(c)は従来のフィンの正面図である。
【符号の説明】
【0025】
11・・・熱交換器、12・・・ヘッダータンク、13・・・チューブ、14・・・フィン、15・・・フィン材、16・・・芯材、17・・・ろう材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる芯材と、該芯材の一方の面のみに形成されたろう材とからなることを特徴とするフィン材。
【請求項2】
前記フィン材の厚さが40〜80μmであり、前記ろう材の厚みが4μm以上であり、クラッド率が5〜40%であることを特徴とする請求項1に記載のフィン材。
【請求項3】
一対のヘッダータンクと、該ヘッダータンクの間に設けられた複数のチューブと、該複数のチューブの間に設けられたフィンと、が具備されてなる熱交換器であって、前記フィンがアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる芯材と、該芯材の一方の面のみに形成されたろう材とからなり、前記ろう材が形成された面を外側にして前記フィンが螺旋形状に形成されてなることを特徴とする熱交換器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−349268(P2006−349268A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176524(P2005−176524)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000176707)三菱アルミニウム株式会社 (446)
【Fターム(参考)】