説明

フェイスダウン型半導体装置及びその製造方法

【課題】半導体素子の交換が容易に行えるフェイスダウン型半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基板電極21が設けられた配線基板2と、基板電極21上に搭載された半導体素子1と、半導体素子1と配線基板2との間を充填するアンダーフィル樹脂4と、配線基板2上にアンダーフィル樹脂4に埋め込まれて配置されたレベル表示パッド5と、を有するフェイスダウン型半導体装置6を製造する。レベル表示パッド5は、2層からなり、配線基板2の基板電極21と同時に形成された金属層5aの上にめっきによって形成された第1層である金属層5bと、第1層である金属層5bの上に形成され有機溶剤によって除去される材質からなる第2層5cからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェイスダウン型半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェイスダウン型半導体装置において、半導体素子を配線基板に取り付けた後に半導体素子に不良が発見された場合等、半導体素子を交換する必要性が生じることがある。図4は従来のフェイスダウン型半導体装置における半導体素子の交換方法を示す模式図である。図4に示すように、半導体素子1は、配線基板2上のパッド21とはんだバンプ3を介して接合されている。また、はんだバンプ3の接合信頼性を向上させるため、半導体素子1、配線基板2及びはんだバンプ3の間の隙間はアンダーフィル樹脂4で充填されている。この実装構造における半導体素子1の交換方法は以下の通りである。
【0003】
まず、図4のステップ1(a)に示すように、半導体素子1を除去するために、はんだバンプ3が溶融する温度まで加熱して半導体素子1を取り外す。又は、半導体素子1のリペアを必要としない場合は、ステップ1(b)に示すように、エンドミル等の工具7を使用して半導体素子1を削り、配線基板2から半導体素子1を除去することもできる(例えば特許文献1参照)。
【0004】
次に、エンドミル等の工具7を使用して配線基板2上に残留したアンダーフィル樹脂4の大部分を除去する(ステップ2)。次に、有機溶剤等を含ませた綿棒8を使用して、工具7で除去しきれずに配線基板2上に残留したアンダーフィル樹脂4をクリーニングする(ステップ3)。ステップ2において、残留しているアンダーフィル樹脂4の厚さを約20μm以下にしておかなければ、ステップ3におけるクリーニング作業が難しくなる。
【0005】
クリーニングが完了した配線基板2上に新たな半導体素子1をはんだバンプ3によって接合し(ステップ4乃至5)、半導体素子1、配線基板2及びはんだバンプ3の間の隙間にアンダーフィル樹脂4を充填し、アンダーフィル樹脂4を加熱して硬化させ、封止する(ステップ6)。以上の工程によって、半導体素子1を交換する。
【0006】
【特許文献1】特開平11−186330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の実装構造を有するフェイスダウン型半導体装置6の半導体素子1の交換においては、図5に示すように、作業者が目視で確認しながらアンダーフィル樹脂4をエンドミル等の工具7で除去する際に、配線基板2上に残留しているアンダーフィル樹脂4の厚さを判断することが難しく、そのためエンドミル等の工具7の切り込み深さの設定が難しく、作業効率が悪いという問題点がある。また、配線基板2には約20μm以下の反り及びうねりが存在するため、アンダーフィル樹脂4と共に配線基板2の表面を削ってしまうという問題点もある。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、半導体素子の交換が容易に行えるフェイスダウン型半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るフェイスダウン型半導体装置は、基板電極が設けられた配線基板と、前記基板電極上に搭載された半導体素子と、前記半導体素子と前記配線基板との間を充填するアンダーフィル樹脂と、前記配線基板上に前記アンダーフィル樹脂に埋め込まれて配置されたレベル表示パッドと、を有することを特徴とする。このレベル表示パッドは、半導体素子の交換のためにアンダーフィル樹脂を除去する際に、アンダーフィル樹脂の残留厚さの目安にすることができる。
【0010】
前記レベル表示パッドは、2層からなることが好ましい。
【0011】
また、前記2層からなるレベル表示パッドは、前記配線基板の基板電極と同時に形成された金属層の上にめっきによって形成された第1層である金属層と、前記第1層である金属層の上に形成され有機溶剤によって除去される材質からなる第2層からなることが好ましい。この構成を有するレベル表示パッドによって、目視により作業者がアンダーフィル樹脂の残留厚さを判断できるため、エンドミル等の工具によってアンダーフィル樹脂を除去する際に、切り込み深さの設定を容易に行うことができ、配線基板を削ってしまうという問題点を解決することができる。
【0012】
なお、前記レベル表示パッドは、前記基板電極が配置された領域を囲む配線基板の表面の縁部及び前記配線基板の表面における前記基板電極の間の位置に複数個配置することもできる。これによって、アンダーフィル樹脂の残留厚さをより正確に判断することができる。
【0013】
本発明に係るフェイスダウン型半導体装置の製造方法は、配線基板上に基板電極とレベル表示パッド形成用の金属層とを同時に形成する工程と、前記金属層の上に前記レベル表示パッドの第1層である金属層をめっきによって形成する工程と、前記第1層である金属層の上に有機溶剤によって除去される材質からなる第2層を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明においては、前記工程の後に、例えば、半導体素子をその下面の素子電極と前記配線基板の前記基板電極とが接続されるように前記配線基板上に搭載する工程と、前記半導体素子と前記配線基板との間にアンダーフィル樹脂を充填する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るフェイスダウン型半導体装置及びその配線基板の形成方法によれば、作業者がレベル表示パッドを目視することによってアンダーフィル樹脂の残留厚さを判断することができ、エンドミル等の工具を使用して、効率良く、且つ配線基板表面まで削ってしまうことなくアンダーフィル樹脂を除去できる。これにより、フェイスダウン型半導体装置の半導体素子の交換が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1(a)は、本発明の第1実施形態に係るフェイスダウン型半導体装置の断面を示す模式図、図1(b)は図1(a)のA−Aを結ぶ直線における断面を上面から見た模式図である。配線基板2の表面に設けられたパッド(配線基板電極)21と、半導体素子1(半導体チップ)の下面のはんだバンプ3とが接合されて半導体素子1が配線基板2上に搭載されている。また、はんだバンプ3の接合信頼性を向上させるため、半導体素子1と配線基板2との間の隙間はアンダーフィル樹脂4で充填されて封止されており、これにより、はんだバンプ3はアンダーフィル樹脂4内に埋め込まれている。レベル表示パッド5は、配線基板2上の複数のパッド21を取り囲む縁部及び隣り合うパッド21の間を含む複数の位置に複配置されており、例えば第1層5a及び第2層5bの2層構造からなる円筒形状を有する。
【0017】
レベル表示パッド5は、例えば、配線基板2の表面にパッド21を形成する際に、同時に金属層22を形成しておき、パッド21の形成後、金属層22の上にめっきによってレベル表示パッドの第1層5aを形成し、この第1層5aの上に印刷によって第2層5bを形成することにより設けることができる。このレベル表示パッド5も、アンダーフィル樹脂4によって半導体素子と共に封止されている。
【0018】
次に、本発明の第1実施形態に係るフェイスダウン型半導体装置の製造方法について説明する。図2は本実施形態に係るフェイスダウン型半導体装置の製造方法を示す模式図である。まず、配線基板2のパッド21を形成する際に、同時にレベル表示パッド用の金属層22を形成する。この金属層22の上に、例えば、無電解ニッケル金めっき等を施すことによってレベル表示パッドの第1層5aを形成する(ステップ1)。
【0019】
次に、レベル表示パッドの第1層5aの上に有機溶剤で容易に除去される材質によって第2層5bを形成する。例えば、シルク印刷等を施すことによってレベル表示パッドの第2層5bを形成することができる(ステップ2)。
【0020】
次に、配線基板2の表面に設けられたパッド21に半導体素子1の下面のはんだバンプ3を目合わせし、はんだバンプ3が溶融する温度まで加熱して半導体素子1を配線基板2に搭載し(ステップ3)、半導体素子1と配線基板2との隙間にアンダーフィル樹脂4を充填し、加熱してアンダーフィル樹脂4を硬化させることによって、フェイスダウン型半導体装置6が完成する(ステップ4)。
【0021】
次に、本実施形態に係るフェイスダウン型半導体装置の製造方法及び半導体素子の交換方法について説明する。配線基板2のパッド21を形成する際に、同時にレベル表示パッド用の金属層22を形成する。この金属層22の上に、20μm程度の厚さのニッケル金メッキを施し、第1層5aを形成する(図2、ステップ1)。次に、レベル表示パッドの第1層5aの上に、白色を有するシルク印刷を50μm程度の厚さで施し、第2層5bを形成する(図2、ステップ2)。
【0022】
次に、配線基板2の表面に設けられたパッド21に半導体素子1の下面のはんだバンプ3を目合わせし、はんだバンプ3が溶融する温度まで加熱して半導体素子1を配線基板2に搭載し(図2、ステップ3)、半導体素子1と配線基板2との隙間にアンダーフィル樹脂4を充填し、加熱してアンダーフィル樹脂4を硬化させることによって、フェイスダウン型半導体装置6が完成する(図2、ステップ4)。
【0023】
上述の製造方法によって得られるフェイスダウン型半導体装置6の半導体素子1の交換方法を、図3を参照して以下に説明する。まず、半導体素子1を除去するために、はんだバンプ3が溶融する温度まで加熱して半導体素子1を取り外す。又は、半導体素子1のリペアを必要としない場合は、工具7を使用して半導体素子1を削り、配線基板2から半導体素子1を除去することもできる。このとき、レベル表示パッド5は、アンダーフィル樹脂4に封止された状態である(ステップ1)。
【0024】
次に、エンドミル等の工具7を使用して、レベル表示パッド5を目視によって確認しながら配線基板2上に残留したアンダーフィル樹脂4を除去する。第2層5bは白色を有し、第1層5aは金色を有しているため、白色が目視で確認できない段階においては、エンドミルの切り込み深さを50μmに設定できる。また、白色の層(第2層5b)が現れても、金色の層(第1層5a)が目視できない間は、第2層5bを削っている段階、即ちアンダーフィル樹脂4が20μm以上残留していることが容易に判断できる(ステップ2)。
【0025】
金色の層(第1層5a)が目視できるようになった段階で、エンドミル等の工具7による除去作業を止める(ステップ3)。この段階において、アンダーフィル樹脂4が20μm程度残留しているため、配線基板2に20μm以下の反り及びうねりが存在していても、配線基板2の表面を削ってしまうことがない。
【0026】
次に、有機溶剤を含ませた綿棒を使用して、エンドミル等の工具7で除去しきれずに配線基板2上に残留したアンダーフィル樹脂4をクリーニングする。
【0027】
クリーニングが完了した配線基板2上に新たな半導体素子1の下面のはんだバンプ3を目合わせし、はんだバンプ3が溶融する温度まで加熱して半導体素子1を配線基板2に搭載し、半導体素子1と配線基板2との隙間にアンダーフィル樹脂4を充填し、加熱してアンダーフィル樹脂4を硬化させる。以上の工程によって、フェイスダウン型半導体装置6の半導体素子1の交換を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態に係るフェイスダウン型半導体装置の断面を示す模式図、(b)は(a)のA−Aを結ぶ直線における断面を上面から見た模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るフェイスダウン型半導体装置の製造方法を示す模式図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るフェイスダウン型半導体装置の半導体素子1の交換方法を示す模式図である。
【図4】従来のフェイスダウン型半導体装置の半導体素子の交換方法を示す模式図である。
【図5】従来のフェイスダウン型半導体装置のアンダーフィル樹脂の切削工程を示す模式図である。
【符号の説明】
【0029】
1 ;半導体素子
2 ;配線基板
21;パッド
22;レベル表示パッド用金属層
3 ;はんだバンプ
4 ;アンダーフィル樹脂
5 ;レベル表示パッド
5a;レベル表示パッドの第1層
5b;レベル表示パッドの第2層
6 ;フェイスダウン型半導体装置
7 ;工具
8 ;綿棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板電極が設けられた配線基板と、前記基板電極上に搭載された半導体素子と、前記半導体素子と前記配線基板との間を充填するアンダーフィル樹脂と、前記配線基板上に前記アンダーフィル樹脂に埋め込まれて配置されたレベル表示パッドと、を有することを特徴とするフェイスダウン型半導体装置。
【請求項2】
前記レベル表示パッドは、2層からなることを特徴とする請求項1に記載のフェイスダウン型半導体装置。
【請求項3】
前記2層からなるレベル表示パッドは、前記配線基板の基板電極と同時に形成された金属層の上にめっきによって形成された第1層である金属層と、前記第1層である金属層の上に形成され有機溶剤によって除去される材質からなる第2層からなることを特徴とする請求項2に記載のフェイスダウン型半導体装置。
【請求項4】
前記レベル表示パッドは、前記基板電極が配置された領域を囲む配線基板の表面の縁部及び前記配線基板の表面における前記基板電極の間の位置に複数個配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のフェイスダウン型半導体装置。
【請求項5】
配線基板上に基板電極とレベル表示パッド形成用の金属層とを同時に形成する工程と、前記金属層の上に前記レベル表示パッドの第1層である金属層をめっきによって形成する工程と、前記第1層である金属層の上に有機溶剤によって除去される材質からなる第2層を形成する工程と、を有することを特徴とするフェイスダウン型半導体装置の製造方法。
【請求項6】
半導体素子をその下面の素子電極と前記配線基板の前記基板電極とが接続されるように前記配線基板上に搭載する工程と、前記半導体素子と前記配線基板との間にアンダーフィル樹脂を充填する工程と、を有することを特徴とする請求項5に記載のフェイスダウン型半導体装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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