説明

フェソテロジンを含む安定した医薬組成物

【課題】フェソテロジンを含む安定した医薬組成物を提供すること。
【解決手段】フェソテロジンまたは薬学的に許容されるその塩またはその溶媒和物およびキシリトール、ソルビトール、ポリデキストロース、イソマルトおよびデキストロースからなる群から選択される安定剤を含む医薬組成物は、フェソテロジンまたは薬学的に許容されるその塩またはその溶媒和物が安定した医薬組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、フェソテロジンまたはその薬学的に許容される塩または溶媒和物を含む医薬組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェソテロジンとは、2−[(1R)−3−(ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェニルイソブチレートと化学的に記述できる式(I)の化合物の国際一般的名称(INN)である。
【0003】
【化1】

【0004】
フェソテロジンは過活動膀胱、尿失禁および他の尿路機能異常の治療のための革新的な薬物である。とりわけ、3,3−ジフェニルプロピルアミン類の新規の誘導体に関する特許文献1に開示されている。特許文献2は、フマル酸水素フェソテロジンをはじめとする前記の3,3−ジフェニルプロピルアミン類の新規誘導体の安定な塩を開示している。
【0005】
過活動膀胱(OAB)はきわめてよくみられる疾患で、主要な欧州各国の成人の17%が罹患する。OABはあらゆる年齢で男女ともに起こるが、有病率は高齢女性で高い。
【0006】
OABは膀胱の機能異常が起こり、尿失禁の有無を問わず尿意促迫の症状を来たし、通常は尿意頻数が増大し夜間多尿が起こる。この疾患は膀胱の排尿筋の痙攣性収縮によるもので、膀胱内圧が高いまま持続し、尿意が切迫するのである。これは、外傷性または中毒性の神経損傷(腹部外傷、骨盤損傷または手術、膀胱結石、薬の副作用、神経学的疾患(背髄病変、多発性硬化症、パーキンソン病、膀胱内の過剰な神経伝達物質放出など)または筋原性の不安定性(排尿開口部閉塞または尿路感染症に起因する膀胱壁肥厚など)など)といったいくつかの理由によるものである。
【0007】
場合によっては、OABは運動、ペッサリー、インプラント、バイオフィードバックまたは行動療法を用いて、薬物療法を用いずに治療することができる。しかし、大半は薬物療法がよい選択肢である。抗ムスカリン薬はOABを治療するのに特に有効であることが見出されている。通常の排尿時には、副交感神経節後ニューロンから放出されるアセチルコリンが膀胱の排尿平滑筋のムスカリン受容体に働きかけ、収縮を促す。抗ムスカリン薬はこの作用を妨げ、排尿筋の収縮を抑える。しかし、種々の抗ムスカリン薬が利用可能であるといっても、医師および患者は現在の薬物の副作用および/または不十分な有効性に満足してはいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第1077912号公報
【特許文献2】欧州特許第1230209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このため、OABのより有効な治療のため、安全性および有効性に優れた新しい薬物が必要とされている。
【0010】
フェソテロジンは尿失禁の治療に対する能力が当業界で既知である。しかし、フェソテロジンは、多湿の環境や高温といった苛酷条件下では実質的に分解することがある。加水分解および酸化がこの分解の大きな原因であると考えられている。このため、苛酷条件下でも長期にわたって分解に安定なフェソテロジンを含む新しい医薬組成物を開発するのが好ましい。これを受けて、驚くべきことに、現在ではいくつかの医薬賦形剤が苛酷条件下でフェソテロジンの分解を著明に遅延させることができることが明らかにされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、フェソテロジンまたはその薬学的に許容される塩または溶媒和物を含む医薬組成物および薬学的に許容される安定剤を提供する。好適な安定剤は、キシリトール、ソルビトール、ポリデキストロース、イソマルト、デキストロースおよびその組み合わせからなる群から選択することができる。最も好ましいのはキシリトールである。また別の好ましい安定剤はソルビトールである。また別の好ましい安定剤はポリデキストロースである。
【0012】
本発明の医薬組成物は、好ましくは経口投与に好適であるのがよい。本発明の医薬組成物の好適かつ好ましい経口剤形は、錠剤、顆粒およびコーティング錠である。カプセル剤、ロゼンジおよび他の固形の経口剤形も、本発明の適用範囲内に含まれる。
【0013】
また、フェソテロジンまたはその薬学的に許容される塩または溶媒和物を含む上記で定義する医薬組成物、上記で定義する薬学的に許容される安定剤および、さらに少なくとも1つの賦形剤、好ましくは少なくとも1種類のヒドロキシプロピルメチルセルロースを開示する。
【0014】
また別の本発明の側面は、好適な賦形剤、好ましくはキシリトール、ソルビトール、ポリデキストロース、イソマルトおよびデキストロース、最も好ましくはキシリトールでフェソテロジンを造粒によって得られる、フェソテロジンまたはその薬学的に許容される塩または溶媒和物の経口投与のための医薬組成物に関する。この顆粒はその後少なくともさらに1種類の賦形剤、好ましくは少なくとも1種類のヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび場合により他の賦形剤と混合することができる。
【0015】
また別の側面において、フェソテロジンまたはその薬学的に許容される塩または溶媒和物を含む医薬組成物であって、その医薬組成物が固形であり経口投与に好適な医薬組成物を開示する。フェソテロジンまたはその塩は、少なくとも1種類のセルロースエステルまたはエーテルなどの水膨潤性の徐放製剤によって、好ましくは少なくとも1種類のヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)によって形成され、場合によりさらなる賦形剤によって形成されるゲルマトリックスに包埋することができる。より好ましくは、フェソテロジンおよび安定剤は、少なくとも1種類のヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)および場合によりさらなる賦形剤によって形成されるゲルマトリックスに包埋することができる。
【0016】
特定の実施形態において、フェソテロジン塩は多塩基酸の塩であることができ、好ましくは水中の自身のpHが約3〜5(25℃の水中で1wt%濃度において計測)であるのがよい。実施例は、硫酸およびリン酸などの多塩基の無機酸または多塩基の有機酸群から選択することができる。好ましい実施例は、マレイン酸フェソテロジン、シュウ酸フェソテロジン、クエン酸フェソテロジン、フタル酸フェソテロジン、フマル酸フェソテロジン、コハク酸フェソテロジン、酒石酸フェソテロジン、マロン酸フェソテロジン、リンゴ酸フェソテロジンなどのジまたはトリカルボン酸の塩である。特定の実施形態において、フェソテロジン塩は、部分的に加水分解されたジまたはトリカルボン酸塩であり、特に自身のpHが3〜5、特に3〜4、より好ましくはフマル酸水素またはマレイン酸水素のように3.25〜3.75であるのがよい。特に好ましい塩はフマル酸水素フェソテロジンである。
【0017】
また別の側面において、薬学的に許容される塩としてフマル酸フェソテロジン、好ましくはフマル酸水素フェソテロジンを含む、上述の医薬組成物を開示する。
【0018】
また別の側面において、薬学的に許容される塩としてフマル酸水素フェソテロジンを、1剤形につき0.5〜28または0.5〜20mg、好ましくは約1〜16mg、より好ましくは約1〜12mg、さらに好ましくは約1〜8mg、特に好ましくは約2、4または8mg(フェソテロジンまたはその塩、例えばフマル酸水素フェソテロジンの内容量に基づく)含む、上述の医薬組成物を開示する。
【0019】
また、過活動膀胱を来たし、尿失禁、特に急迫性尿失禁、尿意切迫および/または尿意頻数の増加などの症状を有する患者を、本明細書に記載のいずれかの化合物の治療有効量を投与することによって治療する方法を開示する。特に、尿失禁、急迫性尿失禁、尿意切迫および/または尿意頻数の増加といった症状を来すことのある過活動膀胱を有する患者を、本明細書に記載のフェソテロジン組成物の単位剤形を投与することによって治療する方法を開示する。単位剤形は、1剤形につき約0.5〜28または0.5〜20mgのフェソテロジン、好ましくは約1〜16mg、より好ましくは約1〜12mg、さらに好ましくは約1〜8mg、特に好ましくは約2、4または8mg(フェソテロジンまたはその塩、例えばフマル酸水素フェソテロジンの内容量に基づく)を含有することができる。この単位剤形は、患者に1日1回投与することができ、必要によっては1日1回以上投与できる場合もある。
【0020】
さらに、本出願は、上述のようなフェソテロジンまたはその薬学的に許容される塩および薬学的に許容される安定剤の混合物を製造することを含む、上述のような医薬組成物の製造方法を開示する。これらの構成要素はその後、少なくとも1種類のヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび場合により他の賦形剤と混合することができる。場合により、結果得られた組成物を圧縮して錠剤にし、コーティングすることができる。
【0021】
フェソテロジンを含有する医薬組成物のある好ましい製造方法は、上述のようなフェソテロジンまたはその薬学的に許容される塩および薬学的に許容される安定剤を含有する組成物を造粒し、その後そうして形成した顆粒を少なくとも1種類のヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび場合により他の賦形剤と混合することを含む。結果得られた組成物はその後圧縮して錠剤にし、コーティングすることができる。
【0022】
この造粒工程は、液体を添加しない乾式造粒手順で、好ましくは水などの液体の存在下で(「湿式造粒法」)で実施することができる。湿式造粒法では、例えば、上記で定義したフェソテロジンまたはその薬学的に許容される塩および安定剤を水の存在下で混合することができる。その後顆粒を乾燥する。乾燥した顆粒を少なくともさらにもう1種類の賦形剤、好ましくは少なくとも1種類のヒドロキシプロピルメチルセルロース、および場合により他の賦形剤と混合することができる。
【0023】
驚くべきことに、湿式造粒法は、エステル結合の加水分解に起因するフェソテロジンの分解を増大させることなく達成することができることが見出されている。同じ理由で、フェソテロジンが、乾式造粒(第9表などを参照)または乾燥混合および賦形剤圧縮(第8表を参照)によって製造した組成物よりも、水の存在下で例えば湿式造粒法によって製造された組成物においてより安定であることはさらに驚くべきことであった。
【0024】
また別のより一般的な側面において、本発明は、フェソテロジンまたはその薬学的に許容される塩または溶媒和物および薬学的に許容される安定剤を含む医薬組成物に関し、この安定剤は以下の工程を含む方法によって同定することが可能である。
質量の1割がフェソテロジン、質量の9割が安定剤の二成分顆粒を製造し、前記顆粒を以下の3つの条件
a)25℃および相対湿度65%で密封バイアル内で6週間
b)40℃および相対湿度75%で密封バイアル内で6週間
c)40℃および相対湿度75%で開封バイアル内で6週間で保管し、
面積百分率法を用いてHPLCにより式(II)の活性代謝物の量を測定し、
【化2】


上述の少なくとも2つの保管条件下で保管する間に、式(II)の活性代謝物の生成を以下
i)保管条件a)において約1質量%以下
ii)保管条件b)において約2質量%以下
iii)保管条件c)において約2質量%以下
のように制限することのできる安定剤を選択し、
好ましくは、こうした安定剤はポリオール類、糖類または糖アルコール類から選択するのがよい。最も好ましくは、この安定剤はキシリトール、ソルビトール、ポリデキストロース、イソマルト、デキストロースまたはその組み合わせであり、さらに好ましくはキシリトール、ソルビトールまたはポリデキストロースである。安定剤を含有する組成物は、好ましくは自身の水中でのpHが3〜5であるフェソテロジン塩を含むのがよい。自身のpHとは、1質量%のフェソテロジン塩を25℃の水に溶解して測定できるpH値である。
図面の簡単な説明
【0025】
図1は、フェソテロジン含有医薬組成物を4mg錠にした場合のin vitroの溶解プロファイルである。
図2は、フェソテロジン含有医薬組成物を8mg錠にした場合のin vitroの溶解プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本出願の最も一般的な側面において、フェソテロジンまたはその薬学的に許容される塩および薬学的に許容される安定剤を含む医薬組成物が提供される。
【0027】
フェソテロジン
特に記載がない限り、本明細書で用いる用語「フェソテロジン」は、2−[(1R)−3−(ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェニルイソブチレート(式I)の薬学的に許容される溶媒和物、特にフェソテロジンの水和物を含む。また、「フェソテロジン」は、2−[(1R)−3−(ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェニルイソブチレート(式I)の薬学的に許容される塩、特にフマル酸水素塩ならびに遊離塩基も含む。
【0028】
本出願において指示する量は、遊離塩基または塩のいずれかの形態で使用されるフェソテロジンに関する。
【0029】
フェソテロジンは、in vivoでの投与後ならびに苛酷条件下での保管時に加水分解されやすく、主要産物として、本明細書で「活性代謝物」と呼び、以下の構造を有する(2−[(1R)−3−(ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェノール)(式II)を形成しやすいエステルである。
【化3】

【0030】
本出願において、用語「加水分解産物」は式IIの活性代謝物を指す。フェソテロジンの代謝および/または分解により、他の分解産物も生じることがある。本明細書で使用する場合、「完全分解産物」は少なくとも部分的には加水分解産物を含む。
【0031】
非分解のフェソテロジン量ならびに、加水分解産物および所定の総分解産物の相対量は、面積百分率法を用いてHPLCにより測定することができる。この面積百分率法では、非分解のフェソテロジンの比率は、フェソテロジンおよびその加水分解および/または分解産物に対応するそれぞれのHPLCピーク面積を、HPLCプロファイルのすべてのシグナルの総面積と比較することによって決定する。
【0032】
安定剤
「薬学的に許容される」安定剤は、生物学的または別の意味で望ましくないことのない安定剤である。すなわち、この安定剤は、望ましくない著明な生物学的作用を引き起こさないか、それが含有される組成物のいずれの構成要素にも有害に干渉することなく、個人に投与することが可能である。
【0033】
本明細書で使用する用語「安定剤」とは、特定の条件下でその物質が不在であるフェソテロジンに比して、フェソテロジンの分解を阻害、予防、遅延または抑制する物質、特に薬学的に許容される賦形剤を意味する。本明細書で使用する場合、用語「安定剤」は、本発明に基づく2種類以上の安定剤の組み合わせも含む。例えば、キシリトールとソルビトールの組み合わせまたはキシリトール、ソルビトールおよびポリデキストロースの組み合わせまたはキシリトールおよびポリデキストロースの組み合わせを挙げることができる。
【0034】
いずれの特定の賦形剤が、本発明に基づく安定剤として好適であるかは、例えば以下の方法によって決定することができる。
【0035】
最初に顆粒を製造する。
−1等量のフェソテロジンまたはその塩、好ましくはフマル酸水素フェソテロジンおよび9等量の賦形剤を個別に秤量する。賦形剤が凝集する場合は、篩過しなければならない(1.5mm)。
−フェソテロジンおよび賦形剤を篩過する(0.8mm)。
−フェソテロジンおよび賦形剤を、約35℃未満で好適な顆粒製造機(例えば、Loedige社製造のType Diosna P1/6などの高剪断混合顆粒製造機)に移し、1分間混合する。
−攪拌しながら、約5.5質量%の精製水を乾燥混合物に添加する。
−混合物をチョッパーで約90〜120秒攪拌する。
−混合機を空にし、内容物を篩過器に移して、湿潤顆粒を形成し、それを篩または網に通す(4.0mm)。
−篩過した顆粒をトレイに乗せ、約45℃で少なくとも8時間、乾燥チャンバー/オーブンで水分が約0.5%未満になるまで乾燥する。
−乾燥した顆粒を篩過する(0.5〜1.0mm)。
−乾燥した顆粒を5分間混合する(速度約8rpm)。
−最初の加水分解および分解産物の量を測定するため、顆粒の一部を試験に用い、残りを上述のように開封バイアルで保管して、その後、試験に用い、最終的な加水分解および分解産物の量を測定する。
【0036】
この顆粒のバッチをそれぞれ下記の3つの条件下で保管する。
a)25℃および相対湿度65%で密封バイアル内で6週間
b)40℃および相対湿度75%で密封バイアル内で6週間
c)40℃および相対湿度75%で開封バイアル内で6週間
式(II)の活性代謝物の量を面積百分率法を用いてHPLCにより測定する。この面積百分率法では、活性代謝物の量は、フェソテロジンおよびその加水分解および/または分解産物に対応するそれぞれのHPLCピーク面積を、HPLCプロファイルのすべてのシグナルの総面積と比較することによって決定する。
本発明によれば、ある物質は、それが上記の条件a)、b)およびc)のうち少なくとも2つの条件下において、保管中に式(II)の活性代謝物の生成を以下
a)約1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.36質量%以下
b)約2質量%以下、好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下
c)約2質量%以下、好ましくは1.5質量%以下、特に好ましくは0.58質量%以下のように抑えれば、安定剤である。
【0037】
本発明に基づく安定剤は、上記の基準に合致する例えば特定の糖類、糖アルコール類、ポリオール類またはその誘導体から選択することができる。特に好ましい安定剤は、キシリトール、ソルビトール、ポリデキストロース、イソマルトおよびデキストロースから選択される。キシリトールは好ましい安定剤である。これらの物質は、フェソテロジンの式(II)の活性代謝物への加水分解を、阻害、予防、遅延または抑制することができ、そのために安定剤として働く。このため、本発明は、フェソテロジンが種々の苛酷条件下で加水分解から保護される、フェソテロジンおよびキシリトール、ソルビトール、ポリデキストロース、イソマルトおよびデキストロースから選択される、最も好ましくはキシリトールの安定剤を含む医薬組成物に関する(例えば第6表および第7表を参照)。
【0038】
また、安定剤として好ましいのは、ラクトースなどの特定の他の賦形剤がフェソテロジンに及ぼす不安定化作用を抑えることのできる物質である。
【0039】
本発明の安定剤は、加水分解されやすい更なるエステル化合物の分解を阻害、予防、遅延または抑制することもできる。特に、本発明の安定剤は、式IIのフェソテロジンの活性代謝物のエステル類を安定化させるのに有用である。
【0040】
このように、本発明のまた別の側面は、活性成分として加水分解されやすいエステル化合物、特に式(II)の活性代謝物のエステル、好ましくは下記のようなエステルを含む医薬組成物またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物を安定化させる、キシリトール、ソルビトール、ポリデキストロース、イソマルトおよびデキストロースからなる群から選択される物質の使用に関する。
【0041】
この方法で安定化される式IIのフェソテロジンの活性代謝物のエステル類には、以下の化合物が含まれる。
a)式IIIのフェノール酸モノエステル類
【化4】


[式中、
R1は、C1−C6アルキルまたはフェニル]の化合物。
b)式IVの同一のジエステル類
【化5】


[式中、
各R1は、上記で定義する通りである]の化合物。
c)式Vの混合ジエステル類
【化6】


[式中、
R1は、上記で定義する通りであり、
R2は、水素、
C1−C6は、アルキルまたはフェニルであって、
R1およびR2が異なることを条件とする]の化合物。
d)式VIのベンジルモノエステル類
【化7】


[式中、
R1は、上記で定義する通りである]の化合物。
e)式VIIおよびVIIIの分子内の環状ジエステル類
【化8】


[式中、
oおよびpは、同一または異なり、メチレン単位(CH2)の数を表し、0〜6であることができる]化合物。
f)(±)−安息香酸2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−スルホオキシメチル−フェニルエステルなど無機エステル類、
および生理学的に許容可能な酸、その遊離塩基とともにそれらの塩および、化合物が光学異性体の形態をとる場合は、ラセミ混合物および個々のエナンチオマー。
【0042】
また別の側面において、本出願は、上記で定義するようなエステルなどを含む医薬組成物またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物および薬学的に許容される安定剤も含み、前記安定剤は、キシリトール、ソルビトール、ポリデキストロース、イソマルト、デキストロースおよびその組み合わせからなる群から選択される。
【0043】
好ましい医薬組成物は、(a)上記で定義するような式(III)のフェノール酸モノエステル、特に好ましくはR1が直鎖または分岐鎖C3−C6アルキルであるフェノール酸モノエステルまたは薬学的に許容されるその塩または溶媒和物および、(b)前記安定剤がキシリトール、ソルビトール、ポリデキストロース、イソマルト、デキストロースおよびその組み合わせからなる群から選択される薬学的に許容される安定剤を含むものであるのがよい。
【0044】
本発明のある側面において、上述のようなエステル、好ましくは式(III)のフェノール酸モノエステルを含む医薬組成物および安定剤は、前記エステルを塩、好ましくはジまたはトリカルボン酸または部分的に水素化されたジまたはトリカルボン酸の塩の形態で含有し、前記エステルの前記塩の水中での自身のpHは、各エステルの最適なpH安定性に近い、例えば約3〜5である。
【0045】
医薬組成物の例
種々の安定化した組成物の例示目的の限定的例を以下に記述する。
【0046】
上記で定義するようなフェソテロジンおよび安定剤を含む医薬組成物では、フェソテロジンは約40℃、相対湿度75%で開封バイアル内で保管した場合に分解せずに安定であって、約40℃、相対湿度75%で開封バイアル内で約12週間保管した後に、その医薬組成物は少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%または約90%のフェソテロジンを含有する。より好ましくは、こうした医薬組成物はかかる条件下で保管した後に少なくとも約89%のフェソテロジンを含有するのがよい。
【0047】
上記で定義するようなフェソテロジンおよび安定剤を含む医薬組成物では、フェソテロジンは約40℃、相対湿度75%で開封バイアル内で保管した場合に分解せずに安定であって、約40℃、相対湿度75%で開封バイアル内で約6週間保管した後に、その医薬組成物は約7%、6%、5%、4.9%、4.8%、4.7%、4.6%、4.5%または4.4%以下の式(II)の活性代謝物を含有する。
【0048】
上記で定義するようなフェソテロジンおよび安定剤を含む医薬組成物では、フェソテロジンは約40℃、相対湿度75%で密封バイアル内で保管した場合に分解せずに安定であって、約40℃、相対湿度75%で密封バイアル内で約6週間保管した後に、その医薬組成物は約2.5%、2.2%、2.1%、2%、1.9%、1.8%、1.7%、1.6%、1.5%、1.4%、1.3%、1.2%、1.1%または1%以下の式(II)の活性代謝物を含有する。より好ましくは、こうした医薬組成物はかかる条件下で保管した後に、約1.09%以下の式(II)の活性代謝物を含有するのがよい。
【0049】
上記で定義するようなフェソテロジンおよび安定剤を含む医薬組成物では、フェソテロジンは約25℃、相対湿度60%で密封バイアル内で保管した場合に分解せずに安定であって、約25℃、相対湿度60%で密封バイアル内で約6週間保管した後に、その医薬組成物は約1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%または0.1%以下の活性代謝物を含有する。より好ましくは、こうした医薬組成物はかかる条件下で保管した後に、約0.18%以下の式(II)の活性代謝物を含有するのがよい。
【0050】
好ましい実施形態において、フェソテロジンを含む医薬組成物に用いる安定剤は、ポリデキストロース、ソルビトールであり、特に好ましくはキシリトールである。
【0051】
顆粒
上述の通り、本発明の医薬組成物は顆粒の形態をとることができる。顆粒は、場合により少なくとも1種類のさらなる賦形剤を含有することができる。フェソテロジンそれ自体は開封バイアル内で約40℃、相対湿度75%で約12週間保管した後に、約50%が非分解のままという程度まで分解することが見出されているが、フェソテロジンとキシリトールの顆粒は、同条件下で約12週間後にもともとのフェソテロジン量の約93%が分解されないことが見出された。
【0052】
このため、フェソテロジン顆粒の例示目的の限定的な例を提供する。
【0053】
上記で定義するようなフェソテロジンおよび安定剤の顆粒では、顆粒中のフェソテロジンは約40℃、相対湿度75%で開封バイアル内で保管した場合に分解せずに安定であって、約40℃、相対湿度75%で開封バイアル内で約6週間保管した後に、その顆粒は質量にして約2%、1.5%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%または0.5%以下の式(II)の活性代謝物を含有する。より好ましくは、こうした顆粒はかかる条件下で保管した後に、約0.58%以下の式(II)の活性代謝物を含有するのがよい。
【0054】
上記で定義するようなフェソテロジンおよび安定剤の顆粒では、顆粒中のフェソテロジンは約40℃、相対湿度75%で密封バイアル内で保管した場合に分解せずに安定であって、約40℃、相対湿度75%で密封バイアル内で約6週間保管した後に、その顆粒は約2%、1.5%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%または0.2%以下の式(II)の活性代謝物を含有する。より好ましくは、こうした顆粒はかかる条件下で保管した後に、約0.23%以下の式(II)の活性代謝物を含有するのがよい。
【0055】
上記で定義するようなフェソテロジンおよび安定剤の顆粒では、顆粒中のフェソテロジンは約25℃、相対湿度60%で密封バイアル内で保管した場合に分解せずに安定であって、約25℃、相対湿度60%で密封バイアル内で約6週間保管した後に、その顆粒は約1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%または0.1%以下の式(II)の活性代謝物を含有する。より好ましくは、こうした顆粒はかかる条件下で保管した後に、約0.36%、より好ましくは0.12%以下の式(II)の活性代謝物を含有するのがよい。
【0056】
好ましい実施形態において、顆粒はポリデキストロース、ソルビトールまたは特に好ましくはキシリトールを安定剤として含む。
【0057】
さらに、上記で定義するような安定剤のような好適な賦形剤とともに、好ましくは湿式造粒法といった造粒工程によって形成したフェソテロジンの顆粒を供給する。
【0058】
かかる造粒段階によって製造した顆粒は、好ましくは安定剤に対するフェソテロジンの比率が約1〜30質量%、より好ましくは約1〜20質量%、さらに好ましくは約3〜15質量%、さらに好ましくは約5〜10質量%であるのがよい。特に好ましい実施形態において、顆粒のキシリトールまたはソルビトールに対するフェソテロジンの比率は、約1〜30質量%、より好ましくは約1〜20質量%、さらに好ましくは約3〜15質量%、さらに好ましくは約5〜10質量%であるのがよい。
【0059】
顆粒の平均粒径は、篩過または製粉といった通常の技術によって制御することができ、典型的には約4mm未満、好ましくは約2mm未満、より好ましくは約1mm未満、さらに好ましくは約0.75mm、例えば約0.5mmである。
【0060】
本明細書に記載のフェソテロジン顆粒は、特に湿式造粒工程で製造する場合は、多湿の苛酷条件下で驚くほど安定である。顆粒をさらに加工して医薬組成物に組み込み、それも驚くほど安定にすることができる。
【0061】
さらに、驚くべきことに、キシリトールまたはソルビトールのいずれかと造粒したフェソテロジンは、マンニトールまたはマルチトールのいずれかと造粒したフェソテロジンに比して、造粒工程における安定性が高いことが明らかにされている。フェソテロジンをこれら4種類の糖アルコールと個別に造粒し、造粒工程で起こる加水分解または総分解の量を測定した場合、キシリトールまたはソルビトールとの顆粒における分解産物は、マンニトールまたはマルチトールとの顆粒よりも少ないことが明らかになった。キシリトールまたはソルビトールと造粒すると、加水分解産物および総分解産物は約0.06〜約0.07%しか形成されないのに対し、マンニトールまたはマルチトールと造粒すると、加水分解産物および総分解産物は約0.42〜約0.73%形成された(第7表参照)。
【0062】
キシリトールまたはソルビトールを含むフェソテロジン顆粒を用いて医薬組成物を製造した場合も、キシリトールまたはソルビトールとの造粒により驚くほど優れた結果が得られた。キシリトールまたはソルビトールを含めたフェソテロジンの顆粒で製造した錠剤の形態をとる医薬組成物は、マンニトールまたはマルチトールを含有するフェソテロジン顆粒で製造した錠剤に比して、加水分解産物量および総分解産物量がはるかに少なかった(約1.1〜1.7%に対して約0.06〜0.11%)(第8表参照)。
【0063】
ソルビトールおよびマンニトールは互いに異性体である糖アルコールであることから、この差は特に驚くべきものである。
【0064】
また別の実施形態において、本発明は、尿失禁、特に急迫性尿失禁、尿意切迫および/または尿意頻数の増加の治療のための、フェソテロジンおよび安定剤を含む本明細書に記載の顆粒の使用、ならびにこうした症状を治療する薬剤の製造を提供する。好ましくは、この薬剤(錠剤など)を製造するのに用いる顆粒は、糖、糖アルコール、ポリオールまたはその誘導体(キシリトール、ソルビトール、ポリデキストロース、イソマルトまたはデキストロースなど)を含むのがよい。この薬剤は、例えば顆粒、カプセル剤、錠剤またはコーティング錠の形態をとることができる。
【0065】
徐放製剤
さらなる実施形態において、本明細書に記載の顆粒と少なくとも1種類のさらなる賦形剤、好ましくは少なくとも1種類のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などの徐放剤および場合により他の賦形剤とを混合することによって得られる、フェソテロジンまたは薬学的に許容されるその塩または溶媒和物、好ましくはフマル酸水素フェソテロジンの経口投与用の固形の医薬組成物が提供される。
【0066】
また別の側面において、活性成分(フェソテロジンまたは薬学的に許容されるその塩)を、本明細書に後述する徐放剤によって形成されたゲルマトリックスに包埋する。好ましくはゲルマトリックスは、少なくとも1種類のセルロースエステルまたはエーテルなどの水膨潤性の徐放剤、好ましくは少なくとも1種類のHPMCによって形成されるのがよい。
【0067】
より好ましくは、活性成分(フェソテロジンまたは薬学的に許容されるその塩)を含む顆粒および上記で定義するような安定剤を、少なくとも1種類のHPLCで形成されたゲルマトリックスに包埋する。フェソテロジン、安定剤および少なくとも1種類のHPMCで形成されたゲルマトリックスを含む製剤は、好ましくは長期間にわたってフェソテロジンを放出し、好ましくは1日1回の経口投与を可能にするべく設計されるのがよい。
【0068】
好適には、かかる1日1回投与する製剤は、製剤の総質量に対して質量にして少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約25%(w/w)、例えば25〜65%、さらに好ましくは少なくとも約30%(w/w)、例えば30〜65%、特に好ましくは少なくとも約35%(w/w)、例えば35〜55%のHPMCを含有する。
【0069】
本発明の特に好ましい製剤、例えば本出願の実験部分の第1表および第2表に示す製剤「A」、「B」、「C」、「D」、「E」、「F」、「G」および「H」は、臨床試験および/または生物学的等価試験において、ヒトにおいて1日1回の投与が有効であることが明らかになった。これらはすべて、in vitro溶出試験において特殊なフェソテロジン放出プロファイルを示す。これらの製剤および各自の溶解プロファイルを示す他の製剤は、本発明の別の実施形態を形成する。
【0070】
フェソテロジンを含む特に好ましい医薬組成物は、USP711に基づくin vitro溶出試験(pH6.8の37℃のリン酸緩衝液で75rpm)において、以下
−約5〜約30%、好ましくは約6〜約26%のフェソテロジンが1時間後に放出される
−約15〜約40%、好ましくは約18〜約38%のフェソテロジンが2時間後に放出される
−約35〜約65%、好ましくは約36〜約56%のフェソテロジンが4時間後に放出される
−少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約80%のフェソテロジンが16時間後に放出される
のようにフェソテロジンの放出量が累積する(製剤中のフェソテロジンの理論量に基づく質量%)。
【0071】
フェソテロジンを放出するゲルマトリックスは、組成物全体の約20〜80質量%、好ましくは約25〜65%、より好ましくは約30〜65%、さらに好ましくは約35〜55質量%の量の、好ましくは徐放剤、特に水と接触して膨潤することのできる徐放剤によって形成されるのがよい。
【0072】
マトリックスは場合によりさらなる成分を含有することができる。特に、ラクトースおよび/または微晶質セルロースなどの充填剤もマトリックス内に包埋することができる。
【0073】
また別の実施形態において、固形のフェソテロジン組成物は、少なくとも2種類のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む。この2種類のHPMCは、標準的な条件下で水に溶解した場合に化学的に同一で異なる粘度となることができる。あるいは、化学的に異なる2種類のHPMCを用いることもできる。
【0074】
約2質量%の濃度で約22℃の水に溶解した場合に、1種類のHPMCの公称粘度が約100,000mPa・s(すなわち、100,000±20,000mPa・s)であり、もう1種類の公称粘度が約4,000mPa・s(すなわち、4,000±1000mPa・s)である場合に、特に有益な組成物が得られる。
【0075】
ある好ましい実施形態において、フェソテロジンまたは医薬的に活性を有するその塩または溶媒和物とHPMCの比は、約1:80〜約1:5[w/w]である。さらに好ましい質量比は、約1:70〜約1:10[w/w]、さらに好ましくは約1:40〜約1:15[w/w]である。
【0076】
また別の好ましい実施形態は、約0.25〜約10質量%のフェソテロジンまたは意訳的に許容可能なその塩または溶媒和物を含む固形の医薬組成物である。最も好ましい組成物は、約0.5〜約4質量%のフェソテロジンを含む。好ましい組成物はさらに、1つ以上の追加の賦形剤、例えば1つ以上の充填剤、結合剤および/または滑沢剤などを含有することができ、そのなかでもラクトース、微晶質セルロース、タルクおよびグリセロールジベヘナートが特に好ましい。
【0077】
医薬組成物の構成要素
組成物は好ましくは単位剤形に賦形剤するのがよい。各単位剤形は、約0.5〜20mg、好ましくは約1〜8mg、より好ましくは約2、4または8mgのフェソテロジンまたは薬学的に許容されるその塩、例えばフマル酸水素塩を含有することができる。用語「単位剤形」は、ヒトまたは他の哺乳動物に対する単一の剤形として好適な物理的に個別の単位を指し、各単位は、所望の治療効果を生じさせるべく計算された所定量のフェソテロジンまたはその塩とともに好適な医薬的賦形剤を含有する。最も好ましいのは、所望の治療効果を得るために患者に1日1回の投与のみ必要する固形の投与剤形(錠剤、コーティング錠、顆粒およびカプセル剤など)である。
【0078】
本明細書に記載の組成物中に存在することのできる医薬的賦形剤は、徐放(「SR」)剤、崩壊剤、充填剤および滑沢剤を含む。他の賦形剤も含むことができる。
【0079】
徐放(「SR」)剤
本発明の医薬組成物が徐放製剤である場合、それは通常1つ以上の徐放剤を含有する。好適な徐放剤は好ましくは、ポリビニルピロリドン、プレゼラチン化デンプン、ポリメタクリレート、ポリビニルアセテート、デキストラン、デンプン、セルロースおよびセルロースエーテルおよび、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースなどのエステル類またはその混合物といった、水と接触して膨潤するものであるのがよい。
【0080】
徐放剤の好ましい例は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)または種々のHPMCの混合物である。HPMCは、結合剤としても徐放剤としても機能する。HPMCは好ましくは、活性成分がそこから徐々に放出されるゲルマトリックスの形成を可能にする量で存在するのがよい。
【0081】
好ましい実施形態においては、粘度の異なる2種類のヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いる。これらの混合物では、片方のHPMCの粘度が高く、もう一方のHPMCが粘度が低い。
【0082】
「高粘度HPMC」は、(約2質量%で)水に溶解した場合、(22℃で)公称粘度が(ウベローデ粘度計で)約70,000〜約150,000、好ましくは約100,000(すなわち、100,000±20,000)mPa・sである。「低粘度HPMC」は、(約2質量%で)水に溶解した場合、室温で公称粘度が約3,000〜約20,000、好ましくは約4,000(例えば4,000±1,000)mPa・sである。好ましくは、使用するHPMCのメトキシル基の置換率は、約15〜約35%であり、特に好ましくは約18〜約30%であり、ヒドロキシプロポキシ基の置換率は好ましくは約5〜約14%、より好ましくは約7〜約12%である。好適な品質は、例えばDow Chemical社から入手できるMETHOCEL(登録商標) E4M、METHOCEL(登録商標) K4M、METHOCEL(登録商標) K15MおよびMETHOCEL(登録商標) K100Mに見出される。
【0083】
特に好ましい商品は、公称粘度が約100,000mPa・sのMETHOCEL(登録商標) K100Mおよび公称粘度が約4,000mPa・sのMETHOCEL(登録商標) K4Mである。本明細書に記載する組成物および製剤に使用するMETHOCEL(登録商標) K100MとK4Mの質量比は、約20:1〜約1:2、好ましくは約10:1〜約1:1.5、さらに好ましくは約7:1〜約1:1.3であることができる。
【0084】
ある実施形態においては、例えば公称粘度が約50,000〜約120,000mPa・sのHPMCなど、1種類の特殊なHPMCを使用することができるが、粘度が約50,000〜約100,000mPa・sのHPMCが好ましい。
【0085】
崩壊剤
さらに、本明細書に記載の組成物および製剤は、プレゼラチン化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、微晶質セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)、架橋CMC−Na、ポラクリリンカリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースまたはその混合物といった崩壊剤も含有することができる。本明細書に記載の組成物および製剤中の崩壊剤の存在は必要ではないが所望されることがある。
【0086】
充填剤/結合剤
本明細書に記載の医薬組成物は、さらに、微晶質セルロース、粉末セルロース、圧縮糖、デンプン(トウモロコシデンプンまたはジャガイモデンプンなど)、プレゼラチン化デンプン、果糖、ショ糖、デキストロース、デキストラン類、サッカロース、シリコーン処理微晶質セルロース、リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム二水和物、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸三カルシウム、乳酸カルシウムといった他の糖類またはその混合物などの充填剤および/または結合剤を含むことができる。
【0087】
好ましくは、賦形剤は、微晶質セルロースおよびラクトース一水和物から選択される少なくとも1つの充填剤を含むのがよい。より好ましくは、ラクトースおよび微晶質セルロースの約1:1〜約3:1[w/w]の比率での混合物を賦形剤として用いるのがよい。特に好ましい賦形剤は、いずれも薬局方品質を有し、同時の噴霧乾燥によって製造されたラクトース一水和物および微晶質セルロースを、3:1の比率で同時に加工し混合した製品であるMICROCELAC(登録商標)100である。ラクトースの充填剤としての特性および微晶質セルロースの結合能の両方が相乗的にこの1つの賦形剤に加工され、組成物に優れた流動性および打錠能とを付与する。
【0088】
本明細書に記載の組成物は、セルロース誘導体(メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムなど)、ゼラチン、グルコース、ラクトース、ショ糖、ポリエチレングリコール、ポリメタクリレート類、ヒドロキシプロピルセルロース、糖アルコール類、プレゼラチン化デンプンおよびアルギン酸ナトリウムなどの結合剤も含むことができる。これらは、顆粒を形成するのに有用である。キシリトールおよびソルビトールなどの好ましい安定剤のいくつかは、結合特性も有する。
【0089】
結合剤を用いて顆粒を形成する場合、これらは好ましくは平均粒径約1〜300μm、より好ましくは約1〜200μm、さらに好ましくは約5〜100μmで用いることができるのがよい。最も好ましくは、結合剤の粒径は約1mm未満である必要がある。
【0090】
例えば、キシリトールを用いて顆粒を形成する場合、好適な品質はXYLITAB(登録商標)300またはXYLITOL(登録商標)CM50(いずれもフィンランド、KotkaのXyrofinにより製造、Daniscoにより販売)およびXYLITOL90(ドイツ、Roquette GmbH製)によって得られる。
【0091】
滑沢剤
本明細書に開示される組成物および製剤は、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、水素化植物油、水素化ヒマシ油、フマル酸ステアリルナトリウム、マクロゴール類、グリセロールジベヘナート、タルク、トウモロコシデンプン、二酸化ケイ素またはその混合物などの滑沢剤、固結防止剤および/または流動促進剤も含むことができる。
【0092】
好ましい滑沢剤はタルクおよびグリセロールジベヘナートである。
【0093】
本明細書で使用する用語「グリセロールジベヘナート」は、「グリセリルベヘナート」と同義語としてみなされる。
【0094】
コーティング剤
場合により、コア/錠剤をはじめとする本明細書に記載の組成物および製剤は、例えばGraham Coleが編集した1995年のPharmaceutical Coating Technologyに記載のような、フィルムコーティングに用いる従来の材料でコーティングすることができる。フィルムコーティング組成物は通常、以下の構成要素を含有する:ポリマー、可塑剤、着色剤/乳白剤、充填剤。フィルムコーティング用の溶液または懸濁液には、微量の風味剤、界面活性剤およびワックスも使用することができる。フィルムコーティングに使用するポリマーの大半は、セルロースエーテル類などのセルロース誘導体またはアクリルポリマー類およびコポリマー類のいずれかである。場合によっては高分子量ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールおよびワックス状の材料も検討する。
【0095】
典型的なセルロースエーテル類は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびメチルセルロースである。アクリルポリマーは、多様な官能基を有する合成ポリマーの群を含む。そのうちのいくつかはさらに修飾して膨潤性を高め、水溶性セルロースエーテル類およびデンプン類などの材料を組み込むことによって完全にフィルムを崩壊/溶解させるべく透過性を高めることができる。
【0096】
広く用いられる可塑剤は三つの群に分けることができる。ポリオール類(グリセロール、プロピレングリコール、マクロゴール類)、有機エステル類(フタル酸エステル類、塩基性酢酸ジブチル、クエン酸エステル類、トリアセチン)、油/グリセリド類(ヒマシ油、アセチル化モノグリセリド類、分画ココナツ油)。
【0097】
着色剤/乳白剤は、いくつかの群に分けられる。有機染料およびそのレーキ、無機着色料、天然着色料である。各群の種々の材料を規定の比率で組み合わせることもできる。
【0098】
コーティング懸濁液のある好適な組成物は以下
−質量にして約1〜99%のポリマー、好ましくは約1〜95%のポリマー
−質量にして約1〜50%の可塑剤、好ましくは約1〜40%の可塑剤
−約0.1〜20%の着色剤/乳白剤、好ましくは約0.1〜10%の着色剤/乳白剤を含む(乾燥材料で計算)。
【0099】
フィルムコートは、市販の既製品から製造することができる。ある好ましいフィルムコート材料は、6つの構成要素、すなわちポリビニルアルコール(フィルム形成剤)、PEG(可塑剤)、レシチン(柔軟剤)、タルク(滑沢剤)、二酸化チタン(白色色素)、インジゴカルミンアルミニウムレーキ(染料)の混合物である、OPADRY(登録商標)、特にOPADRY(登録商標)blueである。所望の不透明性により、コーティングに好ましい量は錠剤の約4〜6質量%、好ましくは約4.5質量%である。
【0100】
フィルムコーティング用の分散液または懸濁液は、種々の溶媒(水、アルコール、ケトン、エステル、塩素化炭化水素)を用いて製造することができるが、水が好ましい。
【0101】
コーティングは主として製剤からの活性成分の放出を改変するために使用することができるが、本発明の医薬製剤のコーティングは好ましくはフェソテロジンの放出プロファイルを改変しないか、著明に改変しないのがよい。好ましくは、患者の利便性のため、すなわち取り扱いやすくし、最終錠剤の外観を向上させるためのみに、フェソテロジン製剤にコーティングを適用するのがよい。
【0102】
成分の好ましい量
固形の医薬組成物の好ましい例示目的の非限定的な例を記載していく。すべての百分率は、特に記載がない限り、組成物の総質量に対する質量に基づくものである[w/w]。
【0103】
実施形態は、以下
−約0.3〜5.0質量%のフェソテロジンまたはその塩、好ましくはフマル酸水素フェソテロジン。
−約5〜25質量%の安定剤、例えばキシリトール、ソルビトール、ポリデキストロース、イソマルトまたはデキストロース。安定剤の平均粒径は好ましくは約0.001〜0.30mmである
−約20〜40質量%の、ラクトース一水和物および微晶質セルロースなどの充填剤および/または結合剤。
−約20〜65質量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース、好ましくは約25〜65%、より好ましくは30〜65%、さらに好ましくは約35〜55質量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース。
−約1〜10質量%のグリセロールジベヘナートおよび/またはタルクなどの滑沢剤を含む医薬組成物に関する。
【0104】
より好ましいのは、以下
−約0.3〜5.0質量%のフェソテロジンまたはその塩、好ましくはフマル酸水素フェソテロジン。
−約5〜25質量%の安定剤、例えばキシリトール、ソルビトール、ポリデキストロース、イソマルトまたはデキストロース(好ましくは平均粒径が0.001〜0.30mm)。
−約20〜40質量%の混合物。この混合物は約45〜80%、好ましくは約75質量%のラクトース一水和物および約55〜20%、好ましくは約25質量%の微晶質セルロースを含む。
−約20〜65%、好ましくは約25〜65%、より好ましくは30〜65%、さらに好ましくは約35〜55質量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース。
−約1〜10質量%のグリセロールジベヘナートおよび/またはタルクなどの滑沢剤を含む医薬組成物である。
【0105】
また別の特定の実施形態において、医薬組成物は以下
−約0.5〜4.0質量%のフマル酸水素フェソテロジン。
−約5〜25質量%の安定剤、例えばキシリトール、ソルビトール、ポリデキストロース、イソマルトまたはデキストロース(好ましくは平均粒径が約0.001〜0.30mm)。
−約20〜40質量%の混合物。この混合物は約45〜80%、好ましくは約75質量%のラクトース一水和物および約55〜20%、好ましくは約25質量%の微晶質セルロースを含む。
−約15〜55%、好ましくは約15〜40質量%の高粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。
−約5〜30%、好ましくは約5〜25質量%の低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロース。
−約1〜5質量%のグリセロールジベヘナート。
−約1〜5質量%のタルク。
【0106】
かかる組成物に場合によりコーティングを施すことができる。フィルムコーティングに好ましい材料の一つはOPADRY(登録商標)であるが、他のコーティング剤も既知である。
【0107】
また別の実施形態は、以下を含む医薬組成物に関する。
−約0.1〜10%、好ましくは約0.2〜7%、より好ましくは0.3〜5%、さらに好ましくは約0.5〜4.0%のフェソテロジンまたはその塩、好ましくはフマル酸水素塩。
−約20〜65%、好ましくは約25〜65%、より好ましくは約30〜65%、さらに好ましくは約35〜55%のHPMC。HPMCは、高粘度HPMC(METHOCEL(登録商標)K100Mなど)および低粘度HPMC(METHOCEL(登録商標)K4Mなど)などの2種類以上を含むことができる。低粘度HPMCに対する高粘度HPMCの比率は、約20:1〜約1:2[w/w]、好ましくは約10:1〜約1:1.5[w/w]、さらに好ましくは約7:1〜約1:1.3[w/w]であることができる。
−約1〜45%、好ましくは約2〜35%、より好ましくは5〜25%の安定剤、例えばキシリトール、ソルビトール、ポリデキストロース、イソマルトまたはデキストロース。
−約10〜70%、好ましくは約15〜50%、より好ましくは約20〜40%の充填剤。
−約0.5〜10%、好ましくは約1〜8%、より好ましくは約2〜7%の滑沢剤。
【0108】
特に好ましい固形の医薬組成物は、
約0.5〜4.0%のフマル酸水素フェソテロジン、
約5〜25%のキシリトール、
約20〜40%のMICROCELAC(登録商標)100、
約15〜40%のHPMC(高粘度)、
約5〜25%のHPMC(低粘度)、
約1〜5%のグリセロールジベヘナート、
約1〜5%のタルク
および場合により薬学的に許容されるコーティング剤[w/w]を含む。この特に好ましい実施形態において、キシリトールの好ましい平均粒径は約1〜300μm、より好ましくは約1〜200μm、さらに好ましくは約5〜100μmである。最も好ましい実施形態において、すべての粒子は好ましくは1mm未満である必要がある。同じ一般的かつ好ましい粒径は同様に、本発明に基づく他の安定剤にも適用される。
【0109】
また別の好ましい実施形態は、
約4.0mgのフマル酸水素フェソテロジン、
約32〜40mgのキシリトール(好ましくは平均粒径が約0.001〜0.30mm)、
約115〜130mgのMICROCELAC(登録商標)100、
約65〜75mgの水に溶解した場合(約2質量%)の公称粘度が約100,000mPa・sのHPMC、好ましくはMETHOCEL(登録商標)K100M、
約65〜75mgの水に溶解した場合(約2質量%)の公称粘度が約4,000mPa・sのHPMC、好ましくはMETHOCEL(登録商標)K4M、
約8〜12mgのグリセロールジベヘナート、
約7〜10mgのタルク、
およびコーティング剤、好ましくはOPADRY(登録商標)を好ましくは約10〜20mgの量で、より好ましくは約15mgのOPADRY(登録商標)
を含むコアを含むコーティング錠である。
【0110】
また別の好ましい実施形態は、
約4.0mgのフマル酸水素フェソテロジン、
約36.0mgのキシリトール(好ましくは平均粒径が約0.001〜0.30mm)、
約121.5mgのMICROCELAC(登録商標)100、
約70.0mgの水に溶解した場合(約2質量%)の公称粘度が約100,000mPa・sのHPMC、好ましくはMETHOCEL(登録商標)K100M、
約70.0mgの水に溶解した場合(約2質量%)の公称粘度が約4,000mPa・sのHPMC、好ましくはMETHOCEL(登録商標)K4M、
約10.0mgのグリセロールジベヘナート、
約8.5mgのタルク、
およびコーティング剤、好ましくはOPADRY(登録商標)を好ましくは約10〜20mgの量で、より好ましくは約15mgのOPADRY(登録商標)
をさらに含むコアを含むコーティング錠である。
【0111】
また、この医薬組成物はさらに、微量(質量にして約3%未満、より好ましくは約1%未満)の不純物を含有することができる。さらに、組成物は好ましくは、質量にして約5%以下の水分を含有するのがよく、これは製造工程中に使用されることができる。
【0112】
また別の実施形態は、
約8.0mgのフマル酸水素フェソテロジン、
約65〜80mgのキシリトール(好ましくは平均粒径が約0.001〜0.20mm)、
約70〜85mgのMICROCELAC(登録商標)100、
約110〜130mgの水に溶解した場合(約2質量%)の公称粘度が約100,000mPa・sのHPMC、好ましくはMETHOCEL(登録商標)K100M、
約20〜30mgの水に溶解した場合(約2質量%)の公称粘度が約4,000mPa・sのHPMC、好ましくはMETHOCEL(登録商標)K4M、
約8〜12mgのグリセロールジベヘナート、
約7〜10mgのタルク、
およびコーティング剤、好ましくはOPADRY(登録商標)を好ましくは約10〜20mgの量で、より好ましくは約15mgのOPADRY(登録商標)
を含むコアを含むコーティング錠である。
【0113】
また別の実施形態は、
約8.0mgのフマル酸水素フェソテロジン、
約72.0mgのキシリトール(好ましくは平均粒径が約0.001〜0.20mm)、
約77.5mgのMICROCELAC(登録商標)100、
約120.0mgの水に溶解した場合(約2質量%)の公称粘度が約100,000mPa・sのHPMC、好ましくはMETHOCEL(登録商標)K100M、
約24.0mgの水に溶解した場合(約2質量%)の公称粘度が約4,000mPa・sのHPMC、好ましくはMETHOCEL(登録商標)K4M、
約10.0mgのグリセロールジベヘナート、
約8.5mgのタルク、
およびコーティング剤、好ましくはOPADRY(登録商標)を好ましくは約10〜20mgの量で、より好ましくは約15mgのOPADRY(登録商標)
を含むコアを含むコーティング錠である。
【0114】
製造工程
本医薬組成物は、例えば圧縮または造粒といった既知の手順で製造することができる。医薬組成物の製造において、通常はフェソテロジンまたは薬学的に許容されるその塩または溶媒和物を賦形剤または賦形剤の混合物と混合するか、賦形剤または賦形剤の混合物で希釈するか、賦形剤または賦形剤の混合物のなかに封入することができる。
【0115】
フェソテロジンまたは薬学的に許容されるその塩または溶媒和物を含む顆粒は、例えば乾式造粒または好ましくは湿式造粒などの造粒によって製造することができる。湿式造粒は、通常水などの液体を活性成分(すなわち、フェソテロジンまたはその塩または溶媒和物)さらには賦形剤(ソルビトールおよびキシリトールから選択される糖アルコールなど)の混合物に添加し、顆粒を形成し、その後その湿潤混合物を造粒によって実施される。
【0116】
ある実施形態において、フェソテロジンおよびソルビトールまたはキシリトールの混合物の湿潤は、高剪断混合機(Loedige MGT250など)または流動床噴霧乾燥器(Glatt GPCG60/90など)などの従来の造粒装置において、エタノール、イソプロパノール、エタノールまたはイソプロパノールの水溶液または好ましくは水または水性造粒液などの液体を、フェソテロジンおよびキシリトールまたはソルビトールの混合物に、従来の医薬的技術によって噴霧することによって実施することができる。また、湿潤は、高剪断混合造粒装置などのしかるべき混合機における混合作業中に、水または水性造粒液などの液体を上記の混合物に直接添加することによって実施することもできる。用語「水性造粒液」は、液体としての精製水または脱塩水(Ph.Eur.)および、その液体に分散させるか、懸濁させるか、溶解させる固形物質を含有する水性分散液を指す。
【0117】
賦形剤単独またはフェソテロジンとの混合は、粉末の混合に使用される、例えばモーションレス(パッシブ)ミキサー、流動床、拡散、バイコニック拡散、バイコニック、タービュラー、キュービック、プラネタリー、Y−、V−型または高剪断混合機などの従来の装置において実施することができる。
【0118】
この湿潤顆粒を乾燥させるには、流動床乾燥器または乾燥チャンバーなどの従来の乾燥システムを使用することができる。
【0119】
上述のような工程において、特に錠剤に関しては、製薬業界で使用される装置の種々の製造元の自動回転打錠機を用いて、圧縮を実施することができる。
【0120】
Driacoater1200コーティングシステムまたは製薬業界で使用する他の従来のコーティングパンなどの従来の装置を用いてフィルムコーティングを施すことができる。
【0121】
医薬組成物を製造する工程は、湿式または乾式造粒工程または直接圧縮工程として実施することができる。
【0122】
驚くべきことに、フェソテロジンは、液体好ましくは水の存在下で製造した医薬組成物において、フェソテロジンを含む医薬組成物を湿式造粒工程で製造する場合に、特に好ましくは湿式造粒工程で液体として水を使用する場合に特に安定であることが明らかにされている。
【0123】
フェソテロジンはエステル官能基を含有するため、フェソテロジンを水に暴露すると、フェソテロジンを水に暴露しない場合よりもそのエステルが加水分解されると考えられていた。このため、申請者の試験前には、乾式造粒工程よりも湿式造粒工程で、加水分解量は多くなると考えられていた。しかし、驚くべきことに、例えば錠剤の形態をとったフェソテロジンおよびキシリトールの医薬組成物を、湿式造粒法を含む工程によって製造し、密封バイアル内で40℃および相対湿度75%で6週間保管し、安定性を試験した場合、含有される加水分解産物(すなわち、活性代謝物など)がわずかに約0.5%であり、総分解産物がわずかに約0.7%であることが見出された(第8表参照)。これに対し、フェソテロジンおよびキシリトールを包含し、直接圧縮(すなわち、湿式造粒を含まない工程)によって製造された錠剤を同条件下で保管した場合は、含有される加水分解産物(活性代謝物など)が約1.3%であり、総分解産物が約2.1%であることが見出された(第8表参照)。
【0124】
したがって、本明細書が提供するまた別の実施形態は、フェソテロジンおよびキシリトールを含む医薬組成物であり、その医薬組成物は密封バイアル内で約40℃、相対湿度75%で6週間保管した後に、約0.5%以下(特に約0.48%以下)の加水分解産物(すなわち、活性代謝物)および約0.7%以下(特に約0.68%以下)の総分解産物を含有する。
【0125】
錠剤の形態をとったフェソテロジンおよびキシリトールの医薬組成物を、湿式造粒法を含む工程によって製造し、密封バイアル内で室温で6ヵ月間保管し、安定性を試験した場合、含有される加水分解産物(活性代謝物など)がわずかに約0.2%であり(質量でフェソテロジンと比較して)、総分解産物がわずかに約1.3%であることが見出された(第9表参照)。これに対し、フェソテロジンおよびキシリトールを包含し、乾式造粒によって製造された錠剤を同条件下で保管した場合は、含有される加水分解産物(すなわち、活性代謝物)が約0.8%であり、総分解産物が約1.7%(質量でフェソテロジンと比較して)であることが見出された(第9表参照)。
【0126】
したがって、本明細書が提供するのは、フェソテロジンおよびキシリトールを含む医薬組成物であり、その医薬組成物は密封バイアル内で室温で6ヵ月間保管した後に、約0.2%以下(特に約0.27%以下)の加水分解産物(すなわち、活性代謝物)および約1.3%以下(特に約1.33%以下)の総分解産物を含有する。
【0127】
また、提供するのは、フェソテロジンおよび安定剤の湿式造粒法の工程を含む、上記で定義するようなフェソテロジンおよび安定剤の顆粒の優れた製造工程である。同様に、提供するのは、上記で定義するようなフェソテロジンおよび安定剤の湿式造粒工程を含む工程によって入手できるか製造される、上記で定義するようなフェソテロジンおよび安定剤の顆粒である。好ましい実施形態において、湿式造粒には水を用いる。
【0128】
湿式造粒工程は以下を含む。
(a)上記で定義するようなフェソテロジンおよび安定剤の混合物を提供する
(b)水をこの混合物に添加して湿潤混合物を形成する
(c)この湿潤混合物を造粒する
段階(a)の混合物におけるフェソテロジン:安定剤の比は、約1:1〜約1:20、より好ましくは約1:1〜約1:10であってよい。
【0129】
好ましい実施形態において、水を用いる湿式造粒工程は以下を含む。
−場合により微粉にしたフェソテロジンまたは薬学的に許容されるその塩または溶媒和物を提供する
−前記フェソテロジンまたは前記その塩または溶媒和物を、例えば上記で定義するような安定剤などの好適な賦形剤とともに、水または水を主成分とする分散液を造粒液として用いて造粒し、顆粒を得る
−上記を場合によりHPMCおよび/または他の賦形剤と混合して、圧縮混合物を得る
−圧縮混合物を所望の形態に圧縮する
−場合によりコーティングを施す。
【0130】
また別の実施形態において、フェソテロジンまたは薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物は以下によって製造される。
(a)フェソテロジンおよび、好ましくはキシリトール、ソルビトール、ポリデキストロース、イソマルトおよびデキストロースから選択される糖、糖アルコール、ポリオールまたはその誘導体の乾燥混合物を提供する
(b)液体、好ましくは水を、(a)で得られた混合物に添加し、湿潤混合物を形成する
(c)湿潤混合物を造粒する
(d)顆粒を乾燥する
(e)少なくとももう1種類の賦形剤、好ましくは少なくとも1種類のヒドロキシプロピルメチルセルロースと顆粒を混合し、顆粒と少なくとももう1種類の賦形剤、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースの混合物を形成し、場合によりさらなる賦形剤を添加する
(f)顆粒と少なくとももう1種類の賦形剤、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースの混合物を圧迫して錠剤にする
(g)錠剤をコーティングする
本明細書に記載の錠剤または場合によりコーティング錠の形態をとる医薬組成物は、驚くべきことに苛酷条件下(40℃、相対湿度75%)で安定である。好ましい組成物の室温における保存期間は2年であることができる。
【0131】
実施例
1. 湿式造粒による顆粒の製造
−フマル酸水素フェソテロジン6.4kgおよびキシリトール57.6kgを個別に秤量した。キシリトールが凝集していたら、篩過した(1.5mm)。
−フマル酸水素フェソテロジンおよびキシリトールを篩過した(0.8mm)。
−材料を好適な高剪断混合顆粒製造機(例えば、Loedige Diosna V25またはLoedige Diosna P1/6)に移し、1分間混合した。
−攪拌しながら精製水3.6Lを乾燥混合物に添加した。
−混合物をチョッパーで90〜120秒攪拌する。
−混合機を空にし、内容物を篩過器に移した。湿潤顆粒を篩または網に通した(4.0mm)。
−篩過した顆粒をトレイに乗せ、45℃で少なくとも8時間、乾燥チャンバー/オーブンで水分が約0.5%以下になるまで乾燥した。
−乾燥した顆粒を篩過した(0.5〜1.0mm)。
−5分間混合した(速度:8rpm)。
【0132】
2. 圧縮用混合物の製造
2.1. 4mgSR錠
−顆粒16.0kgおよびMICROCELAC(登録商標)100 48.6kgを篩過し(0.5〜1.0mm)(FREWITTなど)、混合容器に移し、10分間混合した(速度:8rpm)。
−ヒプロメロース(METHOCEL(登録商標)K100Mなど)28.0kg、ヒプロメロース(METHOCEL(登録商標)K4Mなど)28.0kg、グリセロールジベヘナート4.0kgおよびタルク3.4kgを、前記の混合物に添加し、1分間混合した(速度:8rpm)。
−混合物を篩過し(0.5〜1.0mm)(FREWITTなど)、混合容器に移した。
−10〜30分間混合した(速度:8rpm)。
2.2. 8mgSR錠
−顆粒32.0kgおよびMICROCELAC(登録商標)100 31.0kgを篩過し(0.5〜1.0mm)(FREWITTなど)、混合容器に移し、10分間混合した(速度:8rpm)。
−ヒプロメロース(METHOCEL(登録商標)K100Mなど)48.0kg、ヒプロメロース(METHOCEL(登録商標)K4Mなど)9.6kg、グリセロールジベヘナート4.0kgおよびタルク3.4kgを、前記の混合物に添加し、1分間混合した(速度:8rpm)。
−混合物を篩過し(0.5〜1.0mm)(FREWITTなど)、混合容器に移した。
−10〜30分間混合した(速度:8rpm)。
【0133】
3. 打錠
最終圧縮用混合物を回転打錠機に移し、楕円形の両凸錠剤へと圧縮した。
【0134】
4. コーティング
OPADRY(登録商標)および精製水を攪拌しながら容器に入れた。この混合物を少なくとも1時間攪拌した。その後、懸濁液を好適なサイズ(300μmなど)の篩で篩過し、コーティングパン(Driacoater1200など)の溶液タンクに移した。この懸濁液を絶えず攪拌しながら、コーティング錠1錠の質量が335mgになるまでフィルムコーティングをコアに施した。
【0135】
5. 徐放組成物の例示的組成物
第1表:フェソテロジン4mgSR錠の組成
【表1】

【0136】
q.s.=quantum satis=必要量
*湿潤顆粒の乾燥中またはフィルムコーティング中に除去し、残留水分の合計を約2.5〜3.5%にする
数字はミリグラム単位である。
【0137】
第2表:フェソテロジン8mgSR錠の組成
【表2】

【0138】
q.s.=quantum satis=必要量
*湿潤顆粒の乾燥中またはフィルムコーティング中に除去し、残留水分の合計を約2.5〜3.0%にする
数字はミリグラム単位である。
【0139】
6. 安定性試験
a)密封容器での錠剤の保管
フマル酸水素フェソテロジン4、8および8mgをそれぞれ含有する実施例A、FおよびGの錠剤組成物の安定性を試験した。結果を第3表に示す。
【0140】
錠剤内の非分解のフェソテロジン量を以下のHPLC条件下で測定し、安定性の指標とした。
−カラム:Prontosil Spheribond CN、5μm、250mm×4mmまたは同等物
−構成要素A:水/トリフルオロ酢酸1000/1(v/v)
−構成要素B:アセトニトリル/トリフルオロ酢酸1000/1(v/v)
−勾配プロファイル:
時間(分) %A %B
0.0 75 25
10.0 75 25
10.1 50 50
19.0 50 50
−流量:1.2mL/分
−カラム温度:35℃
−注入量:75μL
−検出波長:220nm
活性代謝物の保持時間は約4.7分であり、反応係数は1.5であった。
【0141】
HPLCの結果は、面積百分率法で評価した。
【0142】
密封容器(プラスチックのキャップおよびパラフィン密封で乾燥剤なしの25mL容量の褐色ガラス瓶)で25℃、相対湿度60%で保管した後の、加水分解または分解産物(質量%)の平均量を、組成物毎に第3表に示す。
【0143】
第3表
【表3】

【0144】
%Hydr=フェソテロジンの加水分解産物(活性代謝物)[質量%]
%Degr=フェソテロジンの総分解産物[質量%]
【0145】
b)開封バイアルでの保管
フマル酸水素フェソテロジン、フマル酸水素フェソテロジンおよびキシリトールを質量比にして10:90で含有する顆粒、ならびにフマル酸水素フェソテロジンおよびキシリトールを含む組成物を、開封バイアル(25mL容量の褐色ガラス瓶)で40℃、相対湿度75%で12週間保管した。結果を第4表に示す。
【0146】
フェソテロジンの分解量をHPLCで測定した。以下の条件を用いて、フマル酸水素フェソテロジンの安定性試験における分解産物を測定した。
−カラム:Polaris C18−Ether、3μm、250mm×4.6mm
−溶離剤A:水/メタンスルホン酸1000:0.5(v/v)
−溶離剤B:アセトニトリル/メタンスルホン酸1000:0.5(v/v)
−典型的な勾配プロファイル:
時間(分) %A %B
0.0 67 33
16.0 38 62
18.0 0 100
−カラム温度:35℃
−流量:1.2mL/分
−検出波長:220nm
−注入量:20μL
活性代謝物の保持時間は約4.1分であり(rrt=0.50)、反応係数は1.4であった。
【0147】
HPLCの結果は、面積百分率法で評価した。
【0148】
第4表で、苛酷条件下で開封で保管した後の、フェソテロジン含有顆粒および相当する組成物の非分解のフェソテロジンの平均量を、純粋なフェソテロジン量と比較する。値は、種々の時点で残留するフマル酸水素フェソテロジンの比率(%)として示す。
【0149】
第4表
【表4】

【0150】
c)フェソテロジンと糖アルコール類の混合物の安定性
フマル酸水素フェソテロジンと、キシリトール、ソルビトール、マンニトールおよびマルチトールとの混合物を、密封バイアルで25℃および相対湿度60%、密封バイアルで40℃および相対湿度75%、開封バイアルで40℃および相対湿度75%で、それぞれ6週間および3ヵ月間保管した後、非分解のフェソテロジンの比率を測定することによって安定性を試験した。この混合物におけるフェソテロジンの最初の非分解の比率は99.7%であった。
【0151】
第5a表は、フェソテロジンがキシリトールまたはソルビトールと混合した場合、開封バイアルで分解に対する安定性が高いのに対し、マンニトールおよびマルチトールと混合した場合はより迅速に分解することを示す。
【0152】
第5a表:6週間および3ヵ月間それぞれ保管した後の混合物における非分解のフェソテロジン
【表5】

【0153】
第5b表は、ラクトースがフェソテロジンを不安定化させるのに対し、キシリトールはラクトースの不安定化作用を抑制することができることを示す。
【0154】
第5b表:6週間および3ヵ月間保管した後の混合物における非分解のフェソテロジン
【表6】

【0155】
d)顆粒製造中のフェソテロジンの分解
種々の糖類、糖アルコール類、ポリオール類またはその誘導体とフェソテロジンの顆粒を実施例1に記載の通りに製造した。顆粒の製造後および種々の条件下でそれぞれ6週間および3ヵ月間保管した後に、顆粒中のフェソテロジンの分解量を測定した。第6表に結果を示す。
【0156】
第6表:種々の顆粒中のフェソテロジンの分解量
【表7】

【0157】
%Hydr=フェソテロジンの加水分解産物(活性代謝物)[質量%]
%Degr=フェソテロジンの総分解産物[質量%]
nd=測定せず
*=30℃、相対湿度65%で測定
【0158】
e)錠剤製造中のフェソテロジンの分解
フェソテロジンと種々の糖類および糖アルコール類との顆粒を、実施例1に記載の通りに製造した。その後、これらの顆粒を用いて、実施例2.1に基づき、第1表に「実施例C」として記載されている組成物を用い、キシリトールをマンニトール、マルチトール、ソルビトールまたはラクトースと置換した4mg錠を製造した。錠剤製造後および種々の条件下でそれぞれ6週間および3ヵ月間保管した後に、非分解フェソテロジンの比率を測定することによってフェソテロジンの分解量を測定した。第7表に結果を示す。
【0159】
第7表:種々の糖および糖アルコール顆粒と製造した錠剤におけるフェソテロジンの分解
【表8】

【0160】
%Hydr=フェソテロジンの加水分解産物(活性代謝物)[質量%]
%Degr=フェソテロジンの総分解産物[質量%]
【0161】
f)湿式造粒法または直接圧縮法により製造した錠剤におけるフェソテロジンの安定性
第1表の「実施例C」の組成物を用いた錠剤を、(a)実施例1および2.1.すなわちフェソテロジンおよびキシリトールの湿式造粒法に基づく工程によって、または(b)すべての賦形剤の直接圧縮法によってのいずれかで得た。その後、その錠剤を密閉バイアルで40℃、相対湿度75%でそれぞれ6週間および3ヵ月間保管した場合の安定性試験を行った。結果を第8表に示す。
【0162】
第8表:キシリトールの存在下で(a)湿式造粒法または(b)直接圧縮法により製造した錠剤における、6週間および3ヵ月の苛酷条件下でのフェソテロジンの安定性の比較
【表9】

【0163】
質量にみる加水分解量とは、活性代謝物の質量%を指す。
【0164】
質量にみる総分解量とは、フェソテロジンの総分解産物の質量%を指す。
【0165】
g)乾式造粒により製造した錠剤におけるフェソテロジンの安定性
第1表の「実施例C」の組成物を用いた錠剤を以下のように製造した。
【0166】
フマル酸水素フェソテロジン3.5kgをキシリトール31.5kgと混合し、0.032′′の篩で篩過した。混合物を1250psiで回転圧縮機にて乾燥圧縮した。圧縮したリボンを、振動顆粒製造機にて20メッシュスクリーンで造粒した。さらにこの材料を0.040′′おろし金スクリーンで篩過した。MICROCELAC(登録商標)100 33.91kgおよびヒプロメロースK100M 15.09kgを添加して混合した。0.040′′以上で篩過した後、混合物を700psiで乾燥圧縮した。圧縮後、材料を16メッシュ振動篩にて造粒し、最後に0.062′′おろし金スクリーンで篩過した。ヒプロメロースK100M 37.41kg、ヒプロメロースK4M 0.5kgおよびタルク3.72kgを添加し、混合し、その混合物を0.062′′おろし金スクリーンで篩過した。その後混合し、グリセリルベヘナート4.38kgを添加し、その混合物を混合して圧縮用混合物にした。最終の圧縮用混合物を回転打錠機に移し、楕円形の両凸錠剤へと圧縮した。
【0167】
OPADRY(登録商標)および精製水を攪拌しながら容器に入れた。この混合物を少なくとも1時間攪拌した。その後、懸濁液を好適なサイズ(300μmなど)の篩で篩過し、コーティングパン(driacoater1200など)の溶液タンクに移した。この懸濁液を絶えず攪拌しながら、コーティング錠1錠の質量が335mgになるまでフィルムコーティングをコアに施した。
【0168】
この錠剤を密封バイアル内で室温で6ヵ月間保管した後に、安定性試験を実施した。
【0169】
第9表は、乾式造粒で製造した組成物を、実施例1に基づき湿式造粒法で製造した組成物と比較した安定性試験の結果を示す。
【0170】
第9表
【表10】

【0171】
質量にみる加水分解量とは、活性代謝物の質量%を指す。質量にみる総分解量とは、フェソテロジンの総分解産物の質量%を指す。
【0172】
7. 種々の量のHPMCを含有する医薬組成物のin vitro溶解プロファイル
種々のHPMC量を用いたフェソテロジン錠のin vitro溶解プロファイルを測定した。錠剤の組成を下の第10表に示す。
【0173】
第10表
【表11】

【0174】
以下の分析方法により、in vitro溶解プロファイルを測定した。
【0175】
フェソテロジンSR4mgおよび8mg錠の薬物放出試験
溶解パラメータ
溶解試験機:Erweka DT800など
溶解方法:USP<711>薬物放出、補遺2
温度:37℃±0.5℃
RPM:75
試料容量:5mL(各サンプリングの後媒質を戻す)
シンカー:あり
溶媒:pH6.8リン酸緩衝液
クロマトグラフィー条件
カラム:Spherisorb CN、5μm、250mm×4mm
移動相:アセトニトリル/水/トリフルオロ酢酸 550:450:1(v/v/v)
流量:0.8mL/分
オーブン温度:35℃
オートサンプラー温度:20℃
注入量:50μL
検出:220nmのUV
保持時間:フマル酸水素フェソテロジン約4.4分
活性代謝物約4.0分
ランタイム:6.5分
溶解結果を下の第11a表および第11b表、図1および2に示す。
【0176】
【表12】

【0177】
数字はフマル酸水素フェソテロジンの放出率を示す。錠剤中のフマル酸水素フェソテロジンの総量は4mgであった。
【0178】
これらの溶解プロファイルに基づけば、HPMC量が30%を超える調合例(製剤「I」および「L」)が特に好ましい。最も好ましい溶解プロファイルに適合するもう一つの製剤は、下の第11c表に示す製剤「O」である。
【0179】
【表13】

【0180】
8. フマル酸水素フェソテロジン製剤およびトルテロジン製剤の有効性、忍容性および安全性の比較
成人男性および女性を対象としプラセボと他の有効成分を用いた無作為化二重盲検ダブルダミー比較臨床試験を実施した。過活動膀胱の患者にフマル酸水素フェソテロジン4mgおよび8mgを1日1回経口投与し、プラセボおよび他の有効成分(トルテロジンER(徐放)4mg/日)と比較した。
【0181】
使用したフェソテロジン製剤は以下の通りである。
4mg:本明細書に記載の第1表に基づく実施例A
8mg:本明細書に記載の第2表に基づく実施例FおよびG
【0182】
臨床試験は19ヶ国で実施した。合計1135例の被験者を無作為化し、1103例をフル・アナリシス・セットに含めた。内訳は279例がプラセボ群、265例が4mgフェソテロジン群、276例が8mgフェソテロジン群、283例が4mgトルテロジンER群である。被験者の平均年齢は57歳であった。合計して81%が女性、97%が白人であった。性別、人種、年齢または体重/BMIに関して群間に著明差はなかった。
【0183】
有効性の結果は、米国食品医薬品局(24時間毎の排尿の平均回数の変化および24時間毎の急迫性尿失禁エピソードの平均回数の変化)および欧州規制当局(24時間毎の排尿の平均回数の変化および4分類治療効果スケールにみる治療反応(はい/いいえ変数))の両方によって必要とされる主要な変数において、プラセボに比して投与終了時に統計学的に有意な改善が認められた(すべてp≦0.001)。フェソテロジン8mg/日群および4mg/日群における24時間毎の排尿回数および急迫性尿失禁エピソードの回数の減少率は、プラセボ群に比して有意に高かった。治療反応率も、投与終了時において両方のフェソテロジン投与群はプラセボ群に比して高かった。トルテロジンERは、上記の主要な変数について投与終了時にプラセボ群に比して統計学的に有意な改善を示した(すべてp≦0.008)。すべての主要な変数について、フェソテロジン4mg/日はトルテロジンERよりも、プラセボ群に比してわずかに大きな数字的変化を示した。この数字の差は、フェソテロジン8mg/日においてより顕著であった。
【0184】
合計1132例を安全性解析対象集団に含めた。内訳は283例がプラセボ群、272例がフェソテロジン4mg/日群、287例がフェソテロジン8mg/日群、290例がトルテロジンER4mg/日群である。最もよくみられた有害事象は、市販の抗ムスカリン作用薬を服用した場合に典型的に認められるものであった。口渇が、プラセボ投与群に比してフェソテロジンおよびトルテロジン投与群でより高い頻度で認められた(フェソテロジン4mg/日群で22%、フェソテロジン8mg/日群で34%、トルテロジン4mg/日群で17%、プラセボ群で7%)。便秘が、プラセボ投与群に比してフェソテロジンおよびトルテロジン投与群でより高い頻度で認められた(フェソテロジン4mg/日群で3%、フェソテロジン8mg/日群で5%、トルテロジン4mg/日群で3%、プラセボ群で1%)。乾性角結膜炎が、プラセボ投与群に比してフェソテロジンおよびトルテロジン投与群でより高い頻度で認められた(フェソテロジン4mg/日群で2%、フェソテロジン8mg/日群で4%、トルテロジン4mg/日群で1%、プラセボ群で0%)。喉の渇きの発現率はすべての投与群で低く(フェソテロジン4mg/日群で1%、フェソテロジン8mg/日群で3%、トルテロジン4mg/日群で1%、プラセボ群で0%)、尿貯留(フェソテロジン4mg/日群で1%、フェソテロジン8mg/日群で1%、トルテロジン4mg/日群で0%、プラセボ群で0%)および霧視(フェソテロジン4mg/日群で1%、フェソテロジン8mg/日群で1%、トルテロジン4mg/日群で1%、プラセボ群で2%)も低かった。
【0185】
閉手順の結果の要約を第12表に示す。
【0186】
第12表
閉手順を用いた有効性の主要変数の統計学的解析の要約(SP583におけるLOCFを用いたFAS)
【表14】

【0187】
FAS=フル・アナリシス・セット、LOCF=時系列データの欠測に最直前のデータを補完する方法
a 投与内容、地域およびベースライン値を共変量として用いるANCOVAモデルを用いて解析した排尿および急迫性尿失禁エピソードの回数。治療反応は、バイナリ・データ用の通常の近似法を用いて解析する。
b 閉手順に基づき有意である。各段階は両側0.05(片側0.025)で検定する。結果がある段階で有意でなければ、その後のすべての段階を統計学的に有意でないとみなす。
c 閉手順に基づき有意である。段階1の両方のp値が両側0.05(片側0.025)未満であれば、8mgの結果は統計学的に有意である。段階1が統計学的に有意であり、段階2の両方のp値が両側0.05(片側0.025)未満であれば、4mgの結果は統計学的に有意である。
注:すべての結果は投与終了時のものであり、欠損値についてはLOCFを用いる。
【0188】
米国食品医薬品局解析については、閉手順の4つすべてのp値が0.05未満であった。したがって、フェソテロジン両投与群(4mgおよび8mg/日)は、排尿および急迫性尿失禁の変数に関して投与終了時にプラセボ群に比して統計学的に有意な改善をもたらすことが明らかになった。
【0189】
同様に、欧州規制当局解析についても、閉手順の4つすべてのp値が0.05未満であった。したがって、フェソテロジン両投与群(4mgおよび8mg/日)は、排尿および治療反応の変数に関して投与終了時にプラセボ群に比して統計学的に有意な改善をもたらすことが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェソテロジンまたは薬学的に許容されるその塩または溶媒和物および薬学的に許容される安定剤を含む医薬組成物であって、前記安定剤がキシリトール、ソルビトール、ポリデキストロース、イソマルト、デキストロースおよびその組み合わせからなる群から選択される医薬組成物。
【請求項2】
前記安定剤がキシリトール、ソルビトールまたはポリデキストロースである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記安定剤がキシリトールである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
フェソテロジン/安定剤の比率が1〜20質量%である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
自身の水中のpHが3〜5であるフェソテロジンの塩を含む、請求項1から4までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
フェソテロジン塩がジまたはトリカルボン酸または部分的に水素化したジまたはトリカルボン酸の塩である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
フマル酸水素フェソテロジンを含む、請求項1から6までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
単位剤形の形態をとり、フマル酸水素フェソテロジンが単位剤形につき0.5〜12mgの量で存在することを特徴とする、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
少なくとも1つの造粒段階を含む方法によって得ることができる、請求項1から8までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
造粒が湿式造粒法である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
造粒が水の存在下で実施される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
医薬組成物がさらに徐放剤を含む、請求項1から11までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
徐放剤がセルロースエーテルまたはエステルまたはその混合物である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
徐放剤がヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
徐放剤が組成物の合計に対して約20〜80質量%、好ましくは約25〜65質量%、より好ましくは30〜65質量%、さらに好ましくは約35〜55質量%の量で含有される、請求項12から14までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
USP711に基づくin vitro溶出試験(pH6.8の37℃のリン酸緩衝液で75rpm)において、
−約5〜約30%、好ましくは約6〜約26%のフェソテロジンが1時間後に放出される
−約15〜約40%、好ましくは約18〜約38%のフェソテロジンが2時間後に放出される
−約35〜約65%、好ましくは約36〜約56%のフェソテロジンが4時間後に放出される
−少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約80%のフェソテロジンが16時間後に放出される
ように、フェソテロジンの放出量が累積する(製剤中のフェソテロジンの理論量に基づく質量%)、請求項12から15までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
(a)0.3〜5.0質量%のフマル酸水素フェソテロジン、
(b)5〜25質量%のソルビトールまたはキシリトール、
(c)20〜40質量%の、45〜80質量%のラクトース一水和物および55〜20質量%の微晶質セルロースを含む混合物、
(d)20〜65%のヒドロキシプロピルメチルセルロース、
(e)1〜5質量%のグリセロールジベヘナートおよび
(f)1〜5質量%のタルク
を含む医薬組成物。
【請求項18】
(a)約4.0mgのフマル酸水素フェソテロジン、
(b)約32〜40mgの平均粒径が約0.001〜0.30mmのキシリトール、
(c)約115〜130mgのMICROCELAC(登録商標)100、
(d)約65〜75mgの水に溶解した場合(約2質量%)の公称粘度が約100,000mPa・sのHPMC、
(e)約65〜75mgの水に溶解した場合(約2質量%)の公称粘度が約4,000mPa・sのHPMC、
(f)約8〜12mgのグリセロールジベヘナート、
(g)約7〜10mgのタルクおよび、場合により、
(h)コーティング剤
を含む、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
(a)約8.0mgのフマル酸水素フェソテロジン、
(b)約65〜80mgの平均粒径が約0.001〜0.30mmのキシリトール、
(c)約70〜85mgのMICROCELAC(登録商標)100、
(d)約110〜130mgの水に溶解した場合(約2質量%)の公称粘度が約100,000mPa・sのHPMC、
(e)約20〜30mgの水に溶解した場合(約2質量%)の公称粘度が約4,000mPa・sのHPMC、
(f)約8〜12mgのグリセロールジベヘナート、
(g)約7〜10mgのタルクおよび、場合により、
(h)コーティング剤
を含む、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項20】
請求項1から19までのいずれか1項に記載の医薬組成物の治療的有効量を投与することにより、過活動膀胱の患者を治療する方法。
【請求項21】
尿失禁、急迫性尿失禁、尿意切迫および/または尿意頻数の増加からなる群から選択される症状を患者が来す、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
フェソテロジンまたは薬学的に許容されるその塩または溶媒和物を含む医薬組成物の安定化を目的とした、キシリトール、ソルビトール、ポリデキストロース、イソマルトおよびデキストロースからなる群から選択される物質の使用。
【請求項23】
フェソテロジンまたは薬学的に許容されるその塩または溶媒和物と、キシリトール、ソルビトール、ポリデキストロース、イソマルト、デキストロースおよびその組み合わせからなる群から選択される安定剤を混合することを含む、請求項1から19までのいずれか1項に記載の医薬組成物を製造する方法。
【請求項24】
さらに造粒工程を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
造粒が湿式造粒法である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
−水の存在下で、フェソテロジンまたは薬学的に許容されるその塩または溶媒和物を、キシリトール、ソルビトール、ポリデキストロース、イソマルト、デキストロースおよびその組み合わせからなる群から選択される安定剤とともに造粒する工程、
−顆粒を乾燥する工程、
−乾燥顆粒を少なくとももう1種類の賦形剤と混合して、圧縮用混合物を得る工程、
−圧縮用混合物を圧縮して所望の形態にする工程、
−場合によりコーティングを施す工程、
を含む、請求項23から25までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
フェソテロジンまたは薬学的に許容されるその塩または溶媒和物および薬学的に許容される安定剤を含む医薬組成物であって、前記安定剤を、ポリオール類、糖類および糖アルコール類の群からなる薬理学的に許容可能な賦形剤から、
質量の1割がフェソテロジン、質量の9割がポリオール類、糖類および糖アルコール類の二成分顆粒を製造し、前記顆粒を以下の3つの条件で保管する段階、
a)25℃および相対湿度60%で密封バイアル内で6週間
b)40℃および相対湿度75%で密封バイアル内で6週間
c)40℃および相対湿度75%で開封バイアル内で6週間
面積百分率法を用いてHPLCにより式(II)
【化1】


の活性代謝物の量を測定する段階、
および上述の少なくとも2つの保管条件下で保管する間に、式(II)の活性代謝物の生成を以下
i)保管条件a)において約1質量%未満
ii)保管条件b)において約2質量%未満
iii)保管条件c)において約2質量%未満
のように制限することのできる安定剤を選択する段階を含む方法によって同定することが可能である医薬組成物。
【請求項28】
自身の水中のpHが3〜5であるフェソテロジンの塩を含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
ジまたはトリカルボン酸または部分的に水素化したジまたはトリカルボン酸のフェソテロジン塩を含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項30】
フマル酸水素フェソテロジンを含む、請求項27に記載の医薬組成物。

【公開番号】特開2011−140498(P2011−140498A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41842(P2011−41842)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【分割の表示】特願2009−513691(P2009−513691)の分割
【原出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(591071997)ウーツェーベー ファルマ ゲーエムベーハー (39)
【氏名又は名称原語表記】UCB PHARMA GMBH
【住所又は居所原語表記】Alfred−Nobel−Strasse 10, D−40789 Monheim, Germany
【Fターム(参考)】