説明

フェニルイミダゾール誘導体並びに網膜障害治療薬及び/又は予防薬

【課題】網膜障害の治療及び/又は予防に有用な医薬を提供する。
【解決手段】式(I)


(式(I)中、aは、1又は2を表す。Rはアミノ基等を、R〜Rは水素原子等を、Rはアミノ基等を、Rは、置換されたアルキル基を、bは1〜4、dは、0〜3のいずれかの整数を、R又はRはハロゲン原子等を表す。)で表される化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なフェニルイミダゾール誘導体並びにこの誘導体から選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有する網膜障害治療薬及び/又は予防薬に関する。
【背景技術】
【0002】
網膜が外部の光を受けると、そのエネルギーは視細胞内外節にある視物質(ロドプシン)により吸収され、電気信号に転換される。細胞内の視覚伝導経路は視細胞、双極細胞、神経節細胞の順であり、その後、視策路を経て大脳後頭葉の視覚野に伝達され、像として知覚される。
この視物質がある視細胞外節にはドコサヘキサエン酸、アラキドン酸等の高級不飽和脂肪酸が多量に存在していることから、視細胞は変性しやすいとされている。また、視細胞の変性はほぼ不可逆的である為、重篤な視力障害の原因ともなっている。
この視細胞の変性は遺伝的にも生じるが、光(紫外線)、鉄、酸素、放射線等の種々の酸化ストレスによっても生じることが知られている。特に、眼が生涯に渡って受ける光は、網膜における酸化ストレスの代表的なものであり、網膜障害の主要な原因と考えられている。
網膜障害、特に網膜光障害に伴う代表的な網脈絡膜疾患として、加齢黄斑変性(Age−related macular degeneration、以下、「AMD」と表す)がある。AMDは加齢に伴い網膜の黄斑部に変性をきたす疾患であり、高齢化社会の進行に伴い増加の一途をたどっている。特に、欧米では中途失明原因の上位にある。AMDには、脈絡膜から発生する新生血管を伴い、網膜下出血、浮腫、漿液性網膜剥離等を生じる滲出型AMD(以下、「Wet AMD」と表す)と、脈絡膜から発生する新生血管を伴わず、網膜色素上皮細胞や脈絡膜毛細血管の地図状萎縮病巣等を認める萎縮型(以下、「Dry AMD」と表す)がある。Wet AMDは進行が速く、予後不良で、重篤な視力障害を生ずる。一方、Dry AMDは進行が遅いが、病変が黄斑部に広がると高度な視力障害を生ずる。また、どちらも進行性で、両眼性となる場合が多いとされている。
Wet AMDの治療には、光線力学療法、レーザー治療(レーザー光凝固術)、外科的治療(新生血管抜去術、中心窩移動術等)等が用いられるが、予後に種々の課題があり、その治療満足度は極めて低く、また、内科的治療として、VEGF関連の治療薬等も開発されているが、投与経路、副作用等のため、満足な治療効果が挙げられていない。また、Dry AMDに至っては、内科的治療はほとんど行われていない。
【0003】
一方、特許文献1には、優れた抗酸化作用と組織移行性を有するジヒドロベンゾフラン誘導体が記載されている。しかし、これらの誘導体の中には、その化学構造により実際の網膜光障害動物モデルにおいて、治療及び/又は予防効果を奏するものと、奏しないものとが存在する。
【0004】
【特許文献1】WO2007/052794号公開パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、網膜障害の治療及び/又は予防に有用な医薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題を解決すべく、網膜光障害動物モデルを用いて、新規化合物の探索を鋭意検討した。その結果、経口投与により、優れた抗酸化作用と組織移行性を維持しつつ、網膜光障害に対して、治療及び/又は予防効果のある化合物群を見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)式(I)
【化1】

(式(I)中、aは、1又は2を表す。
は、アミノ基、C1−6アルキル基で置換されたアミノ基、C1−6アルキルカルボニルアミノ基、C1−6アルコキシカルボニルアミノ基、C1−6アルキルスルホニルアミノ基、水酸基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルキルカルボニルオキシ基、C1−6アルコキシカルボニルオキシ基又はC1−6アルキルスルホニルオキシ基を表す。
〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、C1−6アルキル基又はC1−6ハロアルキル基を表す。
は、G又はGで置換されたC1−6アルキル基を表す。
Gはアミノ基、C1−6アルキル基で置換されたアミノ基、C1−6アルキルカルボニルアミノ基、C1−6アルコキシカルボニルアミノ基、C1−6アルキルスルホニルアミノ基、水酸基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルキルカルボニルオキシ基、C1−6アルコキシカルボニルオキシ基又はシアノ基を表す。
は、Gで置換されたC1−6アルキル基を表す。
bは、1〜4のいずれかの整数を表し、bが2以上のときRは、同一又は相異なってもよい。
dは、0〜3のいずれかの整数を表し、dが2以上のときRは、同一又は相異なってもよい。
及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子又はG以外の有機基を表す。
eは、0〜3のいずれかの整数を表し、eが2以上のときRは、同一又は相異なってもよい。ただし、b+e≦4である。
fは、0〜3のいずれかの整数を表し、fが2以上のときRは、同一又は相異なってもよい。ただし、d+f≦3である。)
で表される化合物又はその塩に関する。
【0008】
さらに本発明は、
(2)前記式(I)で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有する、網膜障害治療薬及び/又は予防薬に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明である前記、式(I)で表される化合物又はその塩は、網膜障害、特に網膜光障害を有効に治療及び/又は予防する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
1)式(I)で表される化合物又はその塩
前記、式(I)で表される化合物又はその塩において、aは、1又は2を表す。aが1である場合、2,3−ジヒドロベンゾフラン環であり、2である場合、クロマン環である。好ましくはaが1である、2,3−ジヒドロベンゾフラン環である。
【0011】
は、アミノ基、C1−6アルキル基で置換されたアミノ基、C1−6アルキルカルボニルアミノ基、C1−6アルコキシカルボニルアミノ基、C1−6アルキルスルホニルアミノ基、水酸基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルキルカルボニルオキシ基、C1−6アルコキシカルボニルオキシ基又はC1−6アルキルスルホニルオキシ基を表し、好ましくはアミノ基又は水酸基であり、特に好ましくはアミノ基である。
【0012】
の具体例としては、アミノ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等のC1−6アルキル基で置換されたアミノ基;メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、n−プロピルカルボニルアミノ基、イソプロピルカルボニルアミノ基等のC1−6アルキルカルボニルアミノ基;メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、n−プロポキシカルボニルアミノ基、イソプロポキシカルボニルアミノ基等のC1−6アルコキシカルボニルアミノ基;メタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基等のC1−6アルキルスルホニルアミノ基;水酸基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等のC1−6アルコキシ基;メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基等のC1−6アルキルカルボニルオキシ基;メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n−プロポキシカルボニルオキシ基、イソプロポキシカルボニルオキシ基等のC1−6アルコキシカルボニルオキシ基等が挙げられ、好ましくはアミノ基又は水酸基が挙げられ、特に好ましくはアミノ基が挙げられる。
【0013】
〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、C1−6アルキル基又はC1−6ハロアルキル基を表し、好ましくはC1−6アルキル基を表す。
【0014】
〜RのC1−6アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられ、好ましくはメチル基が挙げられる。
1−6ハロアルキル基の具体例としては、クロロメチル基、フルオロメチル基、ブロモメチル基、ジクロロメチル基、ジフルオロメチル基、ジブロモメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、ブロモジフルオロメチル基、1,1,1−トリフルオロエチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、1−ブロモエチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。
【0015】
前記、式(I)中のベンゼン環上の置換基であるイミダゾール環は、前記、式(I)中のピペラジン環に対してo−位、m−位又はp−位のいずれの位置で置換してもよく、好ましくはm−位における置換である。
イミダゾール環は、ベンゼン環と結合する際、イミダゾール−1−イル、イミダゾール−2−イル、イミダゾール−4−イル又はイミダゾール−5−イルのいずれかの結合であってもよく、好ましくは、イミダゾール−1−イルである。
【0016】
は、G又はGで置換されたC1−6アルキル基を表す。ここで、Gは、アミノ基、C1−6アルキル基で置換されたアミノ基、C1−6アルキルカルボニルアミノ基、C1−6アルコキシカルボニルアミノ基、C1−6アルキルスルホニルアミノ基、水酸基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルキルカルボニルオキシ基、C1−6アルコキシカルボキシ基又はシアノ基を表し、好ましくはアミノ基を表す。
Gの具体例としては、アミノ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等のC1−6アルキル基で置換されたアミノ基;メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、n−プロピルカルボニルアミノ基、イソプロピルカルボニルアミノ基等のC1−6アルキルカルボニルアミノ基;メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、n−プロポキシカルボニルアミノ基、イソプロポキシカルボニルアミノ基等のC1−6アルコキシカルボニルアミノ基;メタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基等のC1−6アルキルスルホニルアミノ基;水酸基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等のC1−6アルコキシ基;メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基等のC1−6アルキルカルボニルオキシ基;メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n−プロポキシカルボニルオキシ基、イソプロポキシカルボニルオキシ基等のC1−6アルコキシカルボニルオキシ基;シアノ基が挙げられ、好ましくはアミノ基が挙げられる。
【0017】
ここで、Gで置換されたC1−6アルキル基としては、具体的には、アミノメチル基、アミノエチル基、メチルアミノメチル基、ジメチルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、アセチルアミノメチル基、メトキシカルボニルアミノメチル基、メタンスルホニルアミノメチル基、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、メトキシカルボキシメチル基、シアノメチル基等が挙げられる。
【0018】
は、Gで置換されたC1−6アルキル基を表す。Gで置換されたC1−6アルキル基としては、Rにて、例示したものと同様のものが挙げられる。
【0019】
bは、Rの置換数を表し、1〜4のいずれかの整数であり、bが2以上のときRは、同一又は相異なってもよい。
dは、Rの置換数を表し、0〜3のいずれかの整数であり、dが2以上のときRは、同一又は相異なってもよい。
【0020】
又はRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子又はG以外の有機基を表す。ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。
【0021】
G以外の有機基としては、ベンジルアミノ基、フェニルアミノ基、フェニルエチルアミノ基等のアリールアミノ基、好ましくはC6−10アリールアミノ基;ニトロ基;ホルミル基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等のC1−6アルキル基;ビニル基、アリル基等のC2−6アルケニル基;エチニル基、1−プロピニル基、プロパルギル基等のC2−6アルキニル基;ビニルオキシ基、アリルオキシ基等のC2−6アルケニルオキシ基;エチニルオキシ基、プロパルギルオキシ基等のC2−6アルキニルオキシ基;ベンジルオキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、好ましくはC6−10アリールオキシ基;クロロメチル基、フルオロメチル基、ブロモメチル基、ジクロロメチル基、ジフルオロメチル基、ジブロモメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、ブロモジフルオロメチル基、1,1,1−トリフルオロエチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、1−ブロモエチル基、ペンタフルオロエチル基等のC1−6ハロアルキル基;フルオロメトキシ基、クロロメトキシ基、ブロモメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、ジクロロメトキシ基、ジブロモメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、トリクロロメトキシ基、トリブロモメトキシ基、トリフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、ヘプタフルオロn−プロポキシ基等のC1−6ハロアルコキシ基;メチルチオカルボニル基、エチルチオカルボニル基、n−プロピルチオカルボニル基、イソプロピルチオカルボニル基、n−ブチルチオカルボニル基、イソブチルチオカルボニル基、s−ブチルチオカルボニル基、t−ブチルチオカルボニル基等のC1−6アルキルチオカルボニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等のC1−6アルコキシカルボニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の芳香族炭化水素基、好ましくはC6−10芳香族炭化水素基;フラン−2−イル基、フラン−3−イル基、チオフェン−2−イル基、チオフェン−3−イル基、ピロール−2−イル基、ピロール−3−イル基、オキサゾール−2−イル基、オキサゾール−4−イル基、オキサゾール−5−イル基、チアゾール−2−イル基、チアゾール−4−イル基、チアゾール−5−イル基、イソオキサゾール−3−イル基、イソオキサゾール−4−イル基、イソオキサゾール−5−イル基、イソチアゾール−3−イル基、イソチアゾール−4−イル基、イソチアゾール−5−イル基、イミダゾール−1−イル基、イミダゾール−2−イル基、イミダゾール−4−イル基、イミダゾール−5−イル基、ピラゾール−1−イル基、ピラゾール−3−イル基、ピラゾール−4−イル基、ピラゾール−5−イル基、1,3,4−オキサジアゾール−2−イル基、1,3,4−チアジアゾール−2−イル基、1,2,3−トリアゾール−4−イル基、1,2,4−トリアゾール−3−イル基、1,2,4−トリアゾール−5−イル基等の不飽和複素5員環基;ピリジン−2−イル基、ピリジン−3−イル基、ピリジン−4−イル基、ピリダジン−3−イル基、ピリダジン−4−イル基、ピラジン−2−イル基、ピリミジン−2−イル基、ピリミジン−4−イル基、ピリミジン−5−イル基、1,3,5−トリアジン−2−イル基、1,2,4−トリアジン−3−イル基等の不飽和複素6員環基;テトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−4−イル基、ピペリジン−3−イル基、ピロリジン−2−イル基、モルホリノ基、ピペリジノ基、ピペラジノ基等の飽和複素環基、好ましくは5−10員環である飽和複素環基;メチルチオ基、エチルチオ基、t−ブチルチオ基等のC1−6アルキルチオ基;メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、t−ブチルスルホニル基等のC1−6アルキルスルホニル基;アリルスルホニル基等のC2−6アルケニルスルホニル基;プロパルギルスルホニル基等のアルキニルスルホニル基、好ましくはC2−6アルキニルスルホニル基;フェニルスルホニル基等のアリールスルホニル基、好ましくはC6−10アリールスルホニル基;等が挙げられる。
【0022】
eは、Rの置換数を表し、0〜3のいずれかの整数であり、eが2以上のときRは、同一又は相異なってもよい。ただし、b+e≦4である。
fは、Rの置換数を表し、0〜3のいずれかの整数であり、fが2以上のときRは、同一又は相異なってもよい。ただし、d+f≦3である。
【0023】
前記、式(I)で表される化合物の塩としては、医薬として許容される塩であれば、特に制限はない。かかる塩としては、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等の無機酸の塩;酢酸、プロピオン酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸、ニコチン酸、ヘプタグルコン酸等の有機酸の塩;等を挙げることができる。これらは、通常の合成化学的手法により容易に製造することができる。
【0024】
前記、式(I)で表される化合物又はその塩に幾何異性体又は光学異性体が存在する場合は、それらの異性体も本発明の範囲に含まれる。また、式(I)で表される化合物又はその塩は水和物又は溶媒和物の形態をとっていてもよい。
【0025】
前記、式(I)で表される化合物又はその塩にプロトン互変異性が存在する場合には、それらの互変異性体も本発明に含まれる。
【0026】
前記、式(I)で表される化合物又はその塩に結晶多形及び結晶多形群(結晶多形システム)が存在する場合には、それらの結晶多形体及び結晶多形群(結晶多形システム)も本発明に含まれる。ここで、結晶多形群(結晶多形システム)とは、それら結晶の製造、晶出、保存等の条件及び状態(尚、本状態には製剤化した状態も含む)により、結晶形が変化する場合の各段階における個々の結晶形及びその過程全体を意味する。
【0027】
2)製造方法
式(I)で表される化合物でありRがアミノ基である化合物は、例えば、以下に示す方法により製造することができる。
【化2】

【0028】
(式中、R〜R、a、b及びd〜fは前記と同じ意味を表す。
〜rは、R〜Rに対応した置換基又は既存の有機化学的変換方法により、R〜Rに誘導可能な置換基を表す。
R’は、水素原子又はアミノ基の保護基を表す。)
【0029】
即ち、式(II)で表される化合物に酸化剤を作用させることによりホルミル化して、式(III)で表される化合物を得ることができる。ここで用いる式(II)で表される化合物は、例えば、国際公開第2004/092153号パンフレットに記載の方法により合成することができる。
【0030】
より具体的には、化合物(III)のt−ブタノール等のアルコール溶媒溶液に、トリエチルアミン、ピリジン、1,8−ジアザバイシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(以下、「DBU」と表す)等のアミン類;炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基類;等の塩基を室温で添加した後、この混合物にn−ヘキサン等の飽和炭化水素と水を加え、さらに過マンガン酸カリウム等の酸化剤及びホウ酸を添加して、−20℃〜+50℃、好ましくは−10℃〜+10℃で全容を撹拌することにより行うことができる。
【0031】
また、式(III)で表される化合物と、式(IV)で表される化合物とを、例えばマイケル付加反応とそれに続く一般的な還元反応により、式(I−1)で表される化合物とすることができる。ここで、式(IV)で表される化合物中のR’は、あらかじめ水素原子とするか、保護基が在る場合は、反応系内で一般的な方法により脱保護すればよい。
【0032】
また、式(I−1)で表される化合物のニトロ基を、水素化触媒の存在下、水素添加反応を行うか又は一般的な還元剤を用いて還元することにより、式(I−2)で表される化合物を得ることができる。
【0033】
水素添加反応に用いる水素化触媒としては、特に制限はなく、パラジウム炭素、水酸化パラジウム、二酸化白金、ラネーニッケル等の公知の水素化触媒が挙げられる。
【0034】
この水素添加反応は適当な溶媒中で行うことができる。用いる溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に制限はない。例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(以下、「THF」と表す)、1,4−ジオキサン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と表す)等のアミド類;ギ酸、酢酸等の有機酸類;酢酸エチル等のエステル類;及びこれら2種以上からなる混合溶媒;等が挙げられる。
【0035】
還元剤を用いる方法としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール溶媒中、塩酸と塩化第一スズを用いて還元する方法;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒と水の混合溶媒中、酢酸と鉄を用いて還元する方法;アルコール又はアルコールと水との混合溶媒中、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム又は酢酸と亜鉛を用いて還元する方法;等が挙げられる。
【0036】
いずれの場合も、反応温度は、0℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲である。
【0037】
得られた式(I−2)で表される化合物は、置換基r〜rを、必要な場合は既存の有機化学的変換方法により、R〜Rに相当する置換基へと誘導することで、本発明の式(I)で表される化合物が得られる。
【0038】
得られる化合物の構造は、赤外分光法、核磁気共鳴法、質量分析法等により、かかるスペクトルを測定することで、同定及び確認することができる。
【0039】
3)網膜障害治療薬及び/又は予防薬
本発明の網膜障害治療薬及び/又は予防薬は、前記、式(I)で表される化合物及び塩(以下、「本発明化合物」と表す)からなる群から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有する。
本発明化合物は、網膜障害治療(好ましくは、網膜光障害)及び/又は予防、網膜障害を伴う網脈絡膜疾患(好ましくは、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、特に好ましくは、加齢黄斑変性)の治療及び/又は予防、網膜障害を伴う眼疾患の治療及び/又は予防に用いることができる。
【0040】
本発明の網膜障害治療薬及び/又は予防薬において、本発明化合物の治療有効量は、年齢、体重、患者の症状、患者の体質、剤形等において適宜選択できる。通常、治療有効1日用量は、体重1kgあたり、本発明化合物0.017mg〜33.3mg/日とすることができ、好ましくは、体重1kgあたり0.17mg〜11.7mg/日、より好ましくは、体重1kgあたり1.7mg〜33mg/日である。例えば、体重60kgのヒトに投与する場合、本発明化合物の用量範囲は、1日1mg〜2.0g、好ましくは、1日10mg〜700mg、より好ましくは、1日100mg〜200mgとなるが、患者の症状、患者の体質、剤形等によってはこの範囲以外の用量とすることもできる。
【0041】
本発明の網膜障害治療薬及び/又は予防薬は、有効成分である本発明化合物のほかに、慣用の医薬用担体又は賦形剤の他、他の薬剤、アジュバント等を他の成分と反応しない範囲で含有する組成物とすることができる。かかる組成物は、投与様式に応じて、有効成分を1〜99重量%、適当な医薬用担体又は賦形剤を99〜1重量%含有するものとすることができ、好ましくは、有効成分を5〜75重量%、残部を適当な医薬用担体又は賦形剤とすることができる。
【0042】
本発明の網膜障害治療薬及び/又は予防薬に用いる賦形剤としては、任意の通常用いられる賦形剤、例えば、医薬用のマニトール、乳糖、デンプン、ゼラチン化デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロースエーテル誘導体、グルコース、ゼラチン、スクロース、クエン酸塩、没食子酸プロピル等を含有させることができる。また、経口用の網膜障害治療薬及び/又は予防薬には、希釈剤として、例えば、乳糖、スクロース、リン酸二カルシウム等を、崩壊剤として、例えば、クロスカルメロースナトリウム又はその誘導体等を、結合剤として、例えば、ステアリン酸マグネシウム等を、滑沢剤として、例えば、デンプン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、セルロースエーテル誘導体等を含有させることができる。
【0043】
本発明の網膜障害治療薬及び/又は予防薬は、前記疾病の医薬として、任意の様式で投与することができる。
例えば、経口、経鼻、非経口、局所、経皮又は経直腸で投与することができ、その形態も、固体、半固体、凍結乾燥粉末又は液体の剤形、例えば、錠剤、坐薬、丸薬、軟質カプセル、硬質カプセル、散薬、液剤、注射剤、懸濁剤、エアゾル剤、持続放出製剤等とすることができ、正確な投与量を処方でき、かつ、簡便に投与することができる適当な剤形とすることができる。
【0044】
このような製剤は、通常の方法、例えば、レミントン・ファルマスーテイカル・サイエンス(Remington’s Pharmaceutical Sciences)第18版、マック・パブリシング・カンパニー、イーストン、ペンシルバニア(Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania)1990年刊等に教示される記載に従って製造することができる。
【0045】
注射剤としては、無菌の、水性の溶液剤、非水性の溶液剤、懸濁剤、乳濁剤等を含有させることができる。水性の溶液剤、懸濁剤の希釈剤の具体例としては、注射剤用蒸留水、生理食塩水等が挙げられる。非水溶性の溶液剤、懸濁剤の希釈剤の具体例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油;エタノール等のアルコール類;ポリソルベート(商品名);等が挙げられる。これらの組成物は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤(例えば、ラクトース)、可溶剤、溶解補助剤等の添加剤を含有することができる。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解して使用することもできる。
【0046】
本発明の網膜障害治療薬及び/又は予防薬を坐剤とする場合には、担体として体内で徐々に溶解する担体、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリエチレングリコール(以下、「PEG」と表す)、具体的には、PEG1000(96%)又はPEG4000(4%)を使用し、かかる担体に本発明化合物0.5〜50重量%を分散したものを挙げることができる。
【0047】
本発明の網膜障害治療薬及び/又は予防薬を液剤とする場合は、担体として水、食塩水、デキストロース水溶液、グリセロール、エタノール等を使用し、かかる担体に本発明化合物0.5〜50重量%と共に、任意の医薬アジュバントを溶解、分散させる等の処理を行い、溶液又は懸濁液としたものが好ましい。
本発明化合物は、有効成分と反応しない他の網膜酸化障害抑制薬の1種又は2種以上を適宜加えてもよく、また、前記の他に、他の薬効を有する成分を適宜含有させてもよい。
【0048】
本発明化合物を点眼剤とする場合は、本発明化合物の1種又は2種以上を通常使用される基剤溶媒に加えて水溶液又は懸濁液とし、pHを4〜10、好ましくは5〜9に調整することができる。点眼剤は無菌製品とするため滅菌処理を行なうことが好ましく、かかる滅菌処理は製造工程のいずれの段階においても行うことができる。
【0049】
点眼剤中における本発明化合物の濃度は、0.0001〜10%(W/V)、好ましくは0.001〜3%(W/V)、特に好ましくは0.01〜1%(W/V)であり、投与量も患者の症状、患者の体質等により1日1回又は数回に分けて各数滴等とすることができる。前記投与量は目安であり、この範囲を超えて投与することもできる。
【0050】
前記、点眼剤には、本発明化合物と反応しない範囲の、緩衝剤、等張化剤、防腐剤、pH調整剤、増粘剤、キレート剤、可溶化剤等の各種添加剤を適宜、添加してもよい。
【0051】
緩衝剤の具体例としては、クエン酸塩緩衝剤、酒石酸緩衝剤、酢酸塩緩衝剤、アミノ酸等が挙げられる。等張化剤の具体例としては、ソルビトール、グルコース、マンニトール等の糖類;グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類;塩化ナトリウム等の塩類;等が挙げられる。防腐剤の具体例としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル等のパラオキシ安息香酸エステル類;ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等のアリールアルキルアルコール類;ソルピン酸又はその塩等;等が挙げられる。pH調整剤の具体例としては、リン酸、水酸化ナトリウム等が挙げられる。増粘剤の具体例としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースやそれらの塩等が挙げられる。キレート剤の具体例としては、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、縮合リン酸ナトリウム等が挙げられる。可溶化剤の具体例としては、エタノール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0052】
本発明化合物を眼軟膏剤とする場合、本発明化合物の1種又は2種以上を通常使用される眼軟膏基剤、例えば、精製ラノリン、白色ワセリン、マクロゴール、プラスチベース、流動パラフィン等と混合したものとすることができ、無菌製品とするため滅菌処理をしたものが好ましい。
眼軟膏剤における本発明化合物の濃度は、0.0001〜10%(W/W)、好ましくは0.001〜3%(W/W)、特に好ましくは0.01〜1%(W/W)であり、投与量も患者の症状、患者の体質等により1日1回又は数回とすることができる。前記投与量は目安であり、この範囲を超えて投与することもできる。
【0053】
4)実施の形態
【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
4−(5−アミノ−2,2,6,7−テトラメチル−2,3−ジヒドロベンゾフラン−4−イルメチル)−1−〔4−アミノ−3−イミダゾール−1−イルフェニル〕ピペラジンの製造(化合物番号1−1)
【0056】
工程1:2−イミダゾール−1−イル−4−フルオロニトロベンゼンの製造
【0057】
【化3】

【0058】
2,4−ジフルオロニトロベンゼン4.00g、イミダゾール1.71g及び炭酸カリウム3.82gをジメチルホルムアミド40mlに懸濁し、室温で1日間撹拌した。この反応液に水を加え、クロロホルムで3回抽出し、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:酢酸エチル=1:1(体積比))で精製して、目的物を3.87g得た。
【0059】
工程2:2−イミダゾール−1−イル−4−(4−アセチルピペラジン−1−イル)ニトロベンゼンの製造
【0060】
【化4】

【0061】
2−イミダゾール−1−イル−4−フルオロニトロベンゼン3.87g、1−アセチルピペラジン2.64g及び炭酸カリウム3.36gをジメチルスルホキシド9mlに懸濁し、100℃で2時間撹拌した。この反応液に水を加え、析出した結晶をろ別し、水、エーテルで順次洗浄した。得られた固体にクロロホルム、メタノールを加え、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=9:1(体積比))で精製して、目的物を5.78g得た。
【0062】
工程3:2−イミダゾール−1−イル−4−ピペラジン−1−イルニトロベンゼンの製造
【0063】
【化5】

【0064】
2−イミダゾール−1−イル−4−(4−アセチルピペラジン−1−イル)ニトロベンゼン2.75gを濃塩酸44mlに溶解し、加熱還流下8.5時間撹拌した。反応後冷却し、水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、クロロホルム−メタノール混合溶液で3回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去し、目的物を2.09g得た。
【0065】
工程4:4−(5−ニトロ−2,2,6,7−テトラメチル−2,3−ジヒドロベンゾフラン−4−イルメチル)−1−〔4−ニトロ−3−イミダゾール−1−イルフェニル〕ピペラジンの製造
【0066】
【化6】

【0067】
1−〔4−ニトロ−3−イミダゾール−1−イルフェニル〕ピペラジン1.05g及び2,2,6,7−テトラメチル−5−ニトロ−2,3−ジヒドロベンゾフラン−4−アルデヒド1.05gを塩化メチレン33mlに溶解した。この溶液に酢酸0.48mlを添加し、室温で2時間攪拌した。この反応液に、ナトリウムトリアセトキシボロハイドライド1.63gを添加し、全容を室温で1晩攪拌した。反応液を1規定水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、クロロホルムで抽出した。有機層に2規定塩酸を加え水層に逆抽出した後、水層を1規定水酸化ナトリウム水溶液で中和し、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=20:1(体積比))で精製して、目的物を1.71g得た。
【0068】
工程5:4−(5−アミノ−2,2,6,7−テトラメチル−2,3−ジヒドロベンゾフラン−4−イルメチル)−1−〔4−アミノ−3−イミダゾール−1−イルフェニル〕ピペラジンの製造
【0069】
【化7】

【0070】
4−(5−ニトロ−2,2,6,7−テトラメチル−2,3−ジヒドロベンゾフラン−4−イルメチル)−1−〔4−ニトロ−3−イミダゾール−1−イルフェニル〕ピペラジン1.71gを酢酸57mlに溶解し、氷浴で冷却しながら亜鉛粉末4.42gを徐々に添加した。添加後、全容を室温で50分間撹拌した。反応終了後、反応液を濾過し、固体をクロロホルムで洗浄した後、濾液から溶媒を減圧留去した。得られた残渣にクロロホルムを加え、2規定水酸化ナトリウム水溶液、次いで飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=20:1(体積比))で精製して、目的物を1.13g得た。
融点:205−207℃
【0071】
(参考例1)
2,2,6,7−テトラメチル−5−ニトロ−2,3−ジヒドロベンゾフラン−4−アルデヒドの製造
t−ブタノール50mlに60%水素化ナトリウム0.4gを加え、室温で10分間撹拌した。そこへ、t−ブタノール80mlに溶解した2,2,6,7−テトラメチル−4−ニトロメチル−5−ニトロ−2,3−ジヒドロベンゾフラン0.80gを加え、室温で20分間撹拌した。この溶液に、n−ヘキサン1200ml及び水50mlに過マンガン酸カリウム0.80g及びホウ酸0.63gを溶解した溶液を加え、全容を室温で10分間撹拌した。反応液にチオ硫酸ナトリウムを加え、反応液の色が無色になるまで撹拌した。得られた反応処理液をn−ヘキサンで抽出し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去して、目的物を粗生成物として0.71g得た。
【0072】
前記実施例記載の化合物を含め、本発明化合物の実施例を以下の表に示す。
なお、表中、Meはメチル基を、Etはエチル基を、n−Prはn−プロピル基を、iPrはイソプロピル基を、n−Buはn−ブチル基を、Acはアセチル基を表す。
【0073】
【表1】


【0074】
【表2】


【0075】
【表3】


【0076】
【表4】


【0077】
化合物1−25のH−NMR(CDCl、δppm)
1.5(s, 6H), 2.06(s, 3H), 2.08(s, 3H), 2.7(br, 4H), 2.9(s, 2H), 3.1(br, 4H), 3.6(s, 2H), 6.6(d, 1H), 6.7(d, 1H), 6.9(dd, 1H), 7.1(s, 1H), 7.2(s, 1H), 7.6(s, 1H)
【0078】
(製剤の調製)
本発明化合物を含有する製剤を以下の方法により調製した。
製剤実施例1 経口剤(有効成分10mg錠)の調製

【0079】
前記組成となるように、本発明化合物50g、乳糖407g及びコンスターチ100gを、流動造粒コーティング装置(大川原製作所(株)製)を使用して、均一に混合した。これに、10%ヒドロキシプロピルセルロース水溶液200gを噴霧して造粒した。乾燥後、20メッシュの篩を通し、これに、カルボキシメチルセルロースカルシウム20g、ステアリン酸マグネシウム3gを加え、ロータリー打錠機(畑鉄工所(株)製)で7mm×8.4Rの臼杵を使用して、一錠当たり120mgの錠剤を得た。
【0080】
(網膜光障害モデル試験)
網膜光障害モデルとして汎用されるマウス網膜光障害モデル(ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)2001;276:23000−23008に準ずる)を用いて、本発明化合物の有用性(網膜光障害に対する改善率)を評価した。ここで、網膜光障害に対する改善率は、網膜電図におけるb波の挙動に基づき算出した。
尚、網膜電図とは、網膜に光を照射した時に記録される電位変化であり、網膜機能を電気生理学的に評価する場合に使用する。
この網膜電図の基本形は、光照射により最初に生じる負の電位変動(a波)、次に、鋭く立ち上がった後に急降下する大きな正の電位変動(b波)、さらに緩やかに増大する正の電位変動(c波)に、分類され、網膜機能の判定、網膜障害及びそれに伴う網脈酪膜疾患の診断に使用される。この網膜電図における各波の電位の減弱は網膜機能低下を意味する。すなわち、種々の疾患等により、網膜に何らかの障害が出れば、網膜電図上の各波の振幅に低下等の変動が見られる。
尚、本試験において、基剤のみを投与した光照射群のb波の振幅は、通常光群の約20%にまで低下していた。
【0081】
1.被験化合物溶液の調製
被験化合物は、溶媒(1%(w/v)メチルセルロース水溶液)に懸濁させ、0.6%(w/v)、2%(w/v)及び/又は6%(w/v)の被験化合物懸濁液を調製した。
【0082】
2.試験及び測定方法
1)被験化合物群:
8週令のBALB/c系の雄マウス(体重約25g)を24時間暗所で飼育した後、被験化合物懸濁液を経口投与(3〜30mg/kg)し、その1時間後に白色光5000ルックスを2時間連続照射した。その後、22時間暗順応させた後、ポータブルERG&VEP LE−3000(トーメーコーポレーション社製)又はNEC SYNAX ER1100(NEC三栄社製)を使用して、網膜電位を測定した。
2) 光照射群:
被験化合物懸濁液の代わりに、溶媒のみを経口投与し、それ以外は、被験化合物群と同様の操作を行った。
3)通常光群:
被験化合物懸濁液の代わりに、溶媒のみを経口投与し、光照射を実施せず、22時間暗順応からは、被験化合物群と同様の操作を行った。
【0083】
3.b波改善率(%)の計算式
【数1】

【0084】
4.試験結果
試験結果の一例として、被験化合物として、本発明化合物1−1、本発明化合物1−13及び参考化合物A[(WO2007/052794)記載の化合物]を使用した時のb波改善率を[表5]に示す。
【0085】
【化8】

【0086】
【表5】

【0087】
本発明化合物は、網膜光障害動物モデルにおける、b波の振幅の低下を抑制した。すなわち、本発明化合物は網膜光障害動物モデルにおいて、網膜光障害の治療及び/又は予防効果を示した。
また、その化学構造及びその作用効果が類似する参考化合物Aにおいては、高用量においてもb波の振幅の低下を抑制効果は認められなかった。
【0088】
以上より、本発明化合物は網膜障害治療薬及び/又は予防薬、特に網膜光障害を伴う網脈絡膜疾患の治療薬及び/又は予防薬として有用であることが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

(式(I)中、aは、1又は2を表す。
は、アミノ基、C1−6アルキル基で置換されたアミノ基、C1−6アルキルカルボニルアミノ基、C1−6アルコキシカルボニルアミノ基、C1−6アルキルスルホニルアミノ基、水酸基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルキルカルボニルオキシ基、C1−6アルコキシカルボニルオキシ基又はC1−6アルキルスルホニルオキシ基を表す。
〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、C1−6アルキル基又はC1−6ハロアルキル基を表す。
は、G又はGで置換されたC1−6アルキル基を表す。
Gはアミノ基、C1−6アルキル基で置換されたアミノ基、C1−6アルキルカルボニルアミノ基、C1−6アルコキシカルボニルアミノ基、C1−6アルキルスルホニルアミノ基、水酸基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルキルカルボニルオキシ基、C1−6アルコキシカルボニルオキシ基又はシアノ基を表す。
は、Gで置換されたC1−6アルキル基を表す。
bは、1〜4のいずれかの整数を表し、bが2以上のときRは、同一又は相異なってもよい。
dは、0〜3のいずれかの整数を表し、dが2以上のときRは、同一又は相異なってもよい。
及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子又はG以外の有機基を表す。
eは、0〜3のいずれかの整数を表し、eが2以上のときRは、同一又は相異なってもよい。ただし、b+e≦4である。
fは、0〜3のいずれかの整数を表し、fが2以上のときRは、同一又は相異なってもよい。ただし、d+f≦3である。)
で表される化合物又はその塩。
【請求項2】
前記式(I)で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有する、網膜障害治療薬及び/又は予防薬。

【公開番号】特開2011−148704(P2011−148704A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119524(P2008−119524)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【出願人】(000177634)参天製薬株式会社 (177)
【Fターム(参考)】