説明

フェノールでブロックされた尿素硬化剤を含有する低温硬化性のエポキシ組成物

【課題】熱硬化性のエポキシ組成物を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂と、エポキシ硬化剤と、該エポキシ硬化剤のための促進剤との接触生成物を含む熱硬化性のエポキシ組成物であって、該硬化剤又は促進剤が、(a)フェノール樹脂と(b)尿素化合物との反応生成物を含み、該尿素化合物が、イソシアネートと、1つの第一級又は第二級アミン及び少なくとも2つの第三級アミンを有する以下の一般式で表されるアルキル化ポリアルキレンポリアミン


(式中、R1、R2、R3、R4及びR5が独立して水素、メチル又はエチルを表し;n及びmが独立して1〜6の整数であり;Xが1〜10の整数である)との反応生成物である熱硬化性のエポキシ組成物。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
エポキシ系接着剤は、自動車、エレクトロニクス、航空宇宙産業の様々な用途において、及び一般産業において用いられている。エポキシ系接着剤は、半田付け、溶接、リベット、くぎ、ねじ、及びボルトなどの従来の結合システムに、これらのシステムと比較したエポキシ系接着剤の利点のために、次第に代わりつつある。これらの利点には、類似の及び非類似の物質をそれらにダメージを与えることなく結合すること、広い領域にわたって応力が良好に分布すること、疲労抵抗、雑音抵抗及び振動抵抗が優れていることが含まれる。
【0002】
一成分形のエポキシ系接着剤系は、混合工程、それを適用するのに要する時間、二成分系と関連する貯蔵及び船舶輸送の際の冷却が省かれるので二成分系よりも好ましい。
【0003】
本発明は、100%固体のエポキシ組成物及び水系組成物、特には一成分形の100%固体のエポキシ組成物を包含するエポキシ樹脂のための潜伏性硬化剤及び促進剤に関する。「潜伏性」硬化剤とは、配合されたエポキシ系の中で、通常の周囲条件下では不活性のままであるが、高温でエポキシ樹脂と直ちに反応する硬化剤である。「促進剤」とは、エポキシ樹脂と硬化剤との間の反応を促進させる材料である。「一成分形」のエポキシ組成物とは、典型的にはエポキシ樹脂、硬化剤、及び任意選択で促進剤、並びに添加剤及び充填剤の混合物である。「100%固体」とは、エポキシ組成物が水又は有機溶媒を含まないことを意味する。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、(a)フェノール樹脂と(b)尿素化合物との反応生成物、及び熱硬化性の一成分形エポキシ樹脂組成物における潜伏性硬化剤としての又は潜伏性硬化剤のための促進剤としての当該反応生成物の使用を提供する。尿素化合物は、イソシアネートとアルキル化ポリアルキレンポリアミンとの反応生成物を含む。一成分形のエポキシ樹脂組成物は、潜伏性硬化剤と、任意選択ではあるが好ましくは当該硬化剤のための促進剤と、エポキシ樹脂との接触生成物を含む。
【0005】
本発明の1つの態様では、潜伏性硬化剤又は促進剤は、(a)フェノール樹脂と(b)尿素化合物との反応生成物を含み、該尿素化合物は、イソシアネートと、少なくとも1つの第一級又は第二級アミン及び少なくとも2つの第三級アミンを有する以下の一般式のアルキル化ポリアルキレンポリアミン、すなわち、
【化1】

式中、R1、R2、R3、R4及びR5が独立して水素、メチル又はエチルを表し;n及びmが独立して1〜6の整数であり;Xが1〜10の整数である、アルキル化ポリアルキレンポリアミンとの反応生成物である。本発明の態様は、フェノール樹脂−尿素化合物の反応生成物それ自体である。
【0006】
本発明の別の態様では、一成分形のエポキシ樹脂組成物は、硬化剤としてのこのようなフェノール樹脂−尿素化合物の反応生成物と、任意選択で当該硬化剤のための促進剤と、エポキシ樹脂とを含む。本発明の別の態様では、一成分形のエポキシ樹脂組成物は、潜伏性硬化剤としてのジシアンジアミド又は酸無水物と、当該硬化剤のための促進剤としてのこのようなフェノール樹脂−尿素化合物の反応生成物と、エポキシ樹脂との接触生成物を含む。
【0007】
ある態様では、本発明は、エポキシ硬化剤としてのこのようなフェノール樹脂−尿素化合物の反応生成物、並びに100%固体の組成物及び水系組成物などの一成分形の熱硬化性エポキシ組成物におけるその使用に関する。
【0008】
さらに別の態様では、本発明は、ジシアンジアミド又は酸無水物などの潜伏性硬化剤のための促進剤としてのこのようなフェノール樹脂−尿素化合物の反応生成物、並びに100%固体の組成物及び水系組成物などの一成分形の熱硬化性エポキシ組成物におけるその使用に関する。
【0009】
このようなフェノール樹脂−尿素化合物の反応生成物を含む本発明の種々の態様の中には、以下のものがある。
・熱硬化される一成分形のエポキシ組成物のための硬化剤
・熱硬化される一成分形のエポキシ組成物における潜伏性硬化剤のための促進剤
・低温の硬化、及び貯蔵安定性、すなわち、より長い潜伏を提供する、フェノール樹脂−尿素化合物の反応生成物、ジシアンジアミド又は酸無水物などの潜伏性硬化剤、及びエポキシ樹脂を含む一成分形の100%固体のエポキシ組成物
・低温の硬化、及び貯蔵安定性、すなわち、より長い潜伏を提供する、フェノール樹脂−尿素化合物の反応生成物、ジシアンジアミド又は酸無水物などの潜伏性硬化剤、及びエポキシ樹脂を含む一成分形の水系エポキシ組成物
・低温の硬化、及び貯蔵安定性、すなわち、より長い潜伏を提供する、潜伏性硬化剤としてのフェノール樹脂−尿素化合物の反応生成物、任意選択で促進剤、及びエポキシ樹脂を含む一成分形の100%固体のエポキシ組成物
・低温の硬化、及び貯蔵安定性、すなわち、より長い潜伏を提供する、潜伏性硬化剤としてのフェノール樹脂−尿素化合物の反応生成物、任意選択で促進剤、及びエポキシ樹脂を含む一成分形の水系エポキシ組成物
【0010】
本発明のフェノール樹脂−尿素化合物の反応生成物は、低温でエポキシ樹脂組成物を硬化することが見出され、一成分形のエポキシ樹脂組成物において、唯一の硬化剤として又はジシアンジアミド(DICY)若しくは酸無水物などの潜伏性硬化剤のための促進剤として使用することができる。
【0011】
フェノール樹脂−尿素化合物の反応生成物を唯一の硬化剤として又は促進剤として含有するエポキシ組成物は、長いポットライフ、低い活性化温度、良好なガラス転移温度、又はこれらの特性の組み合わせを提供することができる。
【0012】
本明細書に開示される本発明のすべての態様及びすべての実施態様は、本発明の残りのすべての開示される態様及び実施態様と個々に及びそれらの可能性のあるすべての組み合わせにおいて組み合わせられることを意図するものである。
【0013】
「接触生成物」という用語は、成分が、任意の順序で、任意のやり方で及び任意の時間にわたって互いに接触される組成物を説明するのに本明細書で用いられる。例えば、成分は、配合又は混合によって接触させることができる。さらに、任意の成分の接触は、本明細書に記載される組成物の他の任意の成分の存在又は不在下で行うことができる。加えて、成分を互いに接触させる際、2つ以上の成分を反応させて他の成分を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】動的機械分析によって測定される80℃での例A〜Gの組成物に関する粘度の経時変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、特定のフェノール樹脂−尿素化合物の反応生成物組成物、及び硬化性エポキシ樹脂組成物における硬化剤としての又はジシアンジアミド若しくは酸無水物などの潜伏性硬化剤のための促進剤としてのそれらの使用に関する。
【0016】
潜伏性硬化剤及び当該潜伏性硬化剤のための促進剤は、(a)フェノール樹脂と(b)尿素化合物との反応生成物である組成物である。
【0017】
本発明の1つの態様では、フェノール樹脂(a)は、以下の一般式(A)、すなわち、
【化2】

であり、式中、Ra、Rb、Rc、Rdはそれぞれ独立して水素、又は分岐鎖若しくは非分岐鎖のC1〜C17アルキル基であり、nは0〜50の整数である。好ましい態様では、Ra、Rb、Rc、Rdはそれぞれ独立して水素、又は分岐鎖若しくは非分岐鎖のC1〜C10アルキル基であり、nは0〜10の整数である。これらの態様では、好適なアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、及びブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチルのすべての異性体、例えば、2−メチルヘキシル、デシル、及びドデシルが挙げられる。フェノール樹脂の別の実施態様では、Ra〜Rdはそれぞれ水素である。上記の態様及び実施態様のそれぞれの他の態様に関して、Ra〜Rdの置換基は、個々に又は任意の組み合わせにおいて選択される。
【0018】
本発明の1つの態様では、尿素化合物(b)は、イソシアネートと、少なくとも1つの第一級又は第二級アミン及び少なくとも2つの第三級アミンを有する以下の一般式(B)のアルキル化ポリアルキレンポリアミン、すなわち、
【化3】

式中、R1、R2、R3、R4及びR5が独立して水素、メチル又はエチルを表し;n及びmが独立して1〜6の整数であり;Xが1〜10の整数である、アルキル化ポリアルキレンポリアミンとの反応生成物である。好ましい態様では、R1は水素又はメチルを表し、R2及びR4はメチルを表し、R3及びR5は水素又はメチルを表し、すなわち、メチル化ポリアルキレンポリアミンである。
【0019】
上記の態様及び実施態様のそれぞれの他の態様に関して、R1〜R5の置換基は、アミン分子が1つの第一級又は第二級アミン及び少なくとも2つの第三級アミンを有するという条件で、個々に又は任意の組み合わせにおいて選択される。
【0020】
なお、上記の態様及び実施態様のそれぞれの他の態様において、整数m、n及びXは、それぞれについて上で述べた範囲で個々に又は互いに任意の組み合わせにおいて選択され、幾つかの態様では、m及びnが2又は3そしてXが1〜7であり;m及びnが3そしてXが1であり;m及びnが3そしてXが1〜7である。
【0021】
ポリアルキレンポリアミンとの反応に有用なイソシアネートは、脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート、及びイソシアネート官能基−NCOが芳香族環に直接結合している芳香族イソシアネートのいずれかである。好適なイソシアネートとしては、フェニルイソシアネート、トルエンジイソシアネート(TDI)、例えば、2,4−TDI、2,6−TDI及び2,4/2,6−TDI、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、例えば、そのポリメチレンポリフェニレンポリ(イソシアネート)高分子同族体、すなわち、高分子MDIが挙げられる。
【0022】
本明細書に開示される本発明のすべての態様及びすべての実施態様は、本発明の残りのすべての開示される態様及び実施態様と個々に及びそれらの可能性のあるすべての組み合わせにおいて組み合わせられることを意図するものである。
【0023】
本発明の尿素化合物は、化学者に周知の反応によって調製することができ、Jerry MarchによるAdvanced Organic Chemistry,Willey−Interscience,第4版,第1299頁などの文献において報告されている。基本的には、イソシアネートとポリアミンは、ポリアミン:イソシアネートの当量比が1つの第一級又は第二級アミンを有するポリアミンと1つのNCO基を有するイソシアネートに関して1:1、合計で2つの第一級及び/又は第二級アミンを有するポリアミンと1つのNCO基を有するイソシアネートに関して1:2、1つの第一級又は第二級アミンを有するポリアミンと2つのNCO基を有するイソシアネートに関して2:1において、任意選択でトルエンなどの溶媒中で、不活性雰囲気下50〜100℃の高温、周囲圧力において反応される。加えて、尿素化合物は、シグマ・アルドリッチ、エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ社、CVCスペシャルティ・ケミカルズ、及びアルケムから商業的に入手可能である。
【0024】
本発明の態様では、イソシアネートとの反応に好適なポリアルキレンポリアミンとしては、N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−N,N−ジメチルプロパン−1,3−ジアミンとしても知られ、エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ社からPolycat(登録商標)15触媒として入手可能な3,3’−イミノビス(N,N−ジメチルプロピルアミン)、及びその調製及び構造が米国特許出願公開第2008−0194776号明細書において教示されており、その開示がその参照により本明細書に含められるポリ−N−メチル−アゼチジンが挙げられる。この態様は、本発明の他のすべての開示される態様及び実施態様と組み合わせられることを意図するものである。
【0025】
本発明の態様では、フェノール樹脂は、ノボラック樹脂であり、フェノールとアルデヒド、特にはホルムアルデヒドとの縮合によって形成される化合物である。ノボラック樹脂は、モノアルデヒド又はジアルデヒド、最も一般的にはホルムアルデヒドと、モノフェノール又はポリフェノール材料との反応生成物である。使用することができるモノフェノール材料の例としては、フェノール、クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、他のアルキル及びフェニル置換フェノールが挙げられる。ポリフェノール材料としては、ビスフェノール−A及びビスフェノール−Fを含む種々のジフェノールが挙げられる。ノボラックに利用されるアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、グリオキサル、及び約C4までの高級アルデヒドが挙げられる。ノボラックは、典型的には様々なヒドロキシル官能価を有する複合混合物である。
【0026】
ノボラック樹脂は、フェノール又は置換フェノールと、アルデヒド、特にはホルムアルデヒドを酸又は塩基の存在下で反応させることによって調製することができる。ノボラック樹脂はまた、シテック・スペシャルティ・ケミカルズからAlnovol(商標)のもと商業的に入手可能である。
【0027】
フェノール樹脂は、120〜180℃の高温で尿素化合物と反応される。尿素組成物中の第三級アミン官能基の実質的にすべてをブロックするのに十分な量のフェノール樹脂が反応される。一般に、尿素化合物に基づいて約25wt%〜60wt%のフェノール樹脂が添加され、尿素組成物と反応される。十分な量のフェノール樹脂が添加されないと、得られる生成物は粘着性がありそして凝集する。添加しすぎると、エポキシ樹脂を硬化するための活性化温度が高くなりすぎてしまう。
【0028】
フェノール樹脂−尿素化合物の反応生成物は、接着剤、粉末コーティングを含む装飾及び保護コーティング、フィラメント・ワインディング、プリント基板、及び他のエポキシ用途などの一成分形及び二成分形のエポキシ組成物においてエポキシ硬化剤として使用することができる。典型的には、エポキシ組成物において、エポキシ樹脂100質量部(pbw)あたり0.5〜10pbwのフェノール樹脂−尿素化合物の反応生成物、好ましくは2〜6pbwのフェノール樹脂−尿素化合物の反応生成物が用いられる。
【0029】
フェノール樹脂−尿素化合物の反応生成物はまた、接着剤、粉末コーティングを含む装飾及び保護コーティング、フィラメント・ワインディング、プリント基板、及び同様のエポキシ用途などの一成分形及び二成分形のエポキシ組成物において、ジシアンジアミド及び無水酢酸のような酸無水物などの硬化剤のための促進剤として使用することもできる。典型的には、エポキシ組成物において、エポキシ樹脂100質量部(pbw)あたり0.5〜10pbwの硬化剤、好ましくは2〜6pbwの硬化剤が用いられ、そしてエポキシ組成物において、エポキシ樹脂100質量部(pbw)あたり0.5〜10pbwのフェノール樹脂−尿素化合物の反応生成物、好ましくは2〜6pbwのフェノール樹脂−尿素化合物の反応生成物が促進剤として用いられる。
【0030】
硬化剤としてのフェノール樹脂−尿素化合物の反応生成物、又は硬化剤とともに用いられる促進剤としてのフェノール樹脂−尿素化合物の反応生成物は、1分子あたり2以上の1,2−エポキシ基を含むポリエポキシ化合物であるエポキシ樹脂とともに組み合わせられる。このようなエポキシドは、エポキシの技術分野で周知であり、Y.Tanakaによる「Synthesis and Characteristics of Epoxides」、C.A.May編、Epoxy Resins Chemistry and Technology(Marcel Dekker、1988)において記載されている。例としては、その参照により本明細書に含められる米国特許第5,599,855号明細書(第5列第6行から第6列第20行)において開示されているエポキシドが挙げられる。好ましいポリエポキシ化合物は、ビスフェノール−Aのジグリシジルエーテル、ビスフェノール−Aの鎖伸長された(advanced)ジグリシジルエーテル、ビスフェノール−Fのジグリシジルエーテル、及びエポキシノボラック樹脂である。好適には、液体エポキシ樹脂と固体エポキシ樹脂の両方が一成分形のエポキシ組成物において用いられる。粉末コーティング組成物は、固体のエポキシ樹脂、尿素化合物、及びジシアンジアミドを含む。
【0031】
フェノール樹脂−尿素化合物の反応生成物及びエポキシ樹脂を含むエポキシ組成物は、コーティング形成の当業者に周知の種々の成分、例えば、溶媒、充填剤、顔料、顔料分散剤、レオロジー調整剤、チキソトロープ(thixotrope)、流動助剤、レベリング助剤、及び消泡剤とともに配合することができる。
【0032】
1〜90wt%の有機溶媒を含む一成分形のエポキシ組成物、又は100wt%固体のエポキシ組成物、又は20〜80wt%の固体を含有する水系すなわち水性のエポキシ組成物を使用することができるが、好ましくはエポキシ組成物は100wt%固体である。
【0033】
本発明のエポキシ組成物は、任意の多くの技術、例えば、スプレー、ブラシ、ローラー、ペイントミット(paint mitt)などによってコーティングとして適用することができる。多くの基材が、当技術分野で十分理解されているように、適切な表面処理とともに本発明のコーティングの適用に適している。このような基材としては、特に限定されないが、多くの種類の金属、特には鋼及びアルミニウム、並びにコンクリートが挙げられる。
【0034】
本発明の一成分形のエポキシ組成物は、約80℃〜約240℃の高温で硬化することができ、好ましい硬化温度は120℃〜160℃である。本発明の二成分形のエポキシ組成物は、約80℃〜約240℃の温度で硬化することができ、好ましい硬化温度は80℃〜160℃である。
【0035】
以下の例において用いられる材料は、次のとおりである。
N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−N,N−ジメチルプロパン−1,3−ジアミン、すなわち、エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ社からのPolycat(登録商標)15触媒
シグマ・アルドリッチからのトルエンジイソシアネート
シグマ・アルドリッチからのフェニルイソシアネート
ハンツマンからの高分子(メチレンジフェニルジイソシアネート)
シテック・スペシャルティ・ケミカルズからのフェノール樹脂(AlNovol PN320)
【実施例】
【0036】
[例A]
N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−N,N−ジメチルプロパン−1,3−ジアミン220.3gとトルエン50gの混合物を、空気駆動式のメカニカルスターラー、熱電対、水循環浴を有する加熱ジャケット、及び窒素パージを備えた1Lの四つ口ガラス容器に入れた。容器を窒素下で60〜70℃に加熱した。温度が安定した後、トルエン50g中にトルエンジイソシアネート104.9gを45〜60分間かけて計り入れた。添加が完了した後、この混合物を70℃で1時間保持した。温度を40℃まで下げ、反応器の粗液体生成物をロータリー・エバポレーターに入れてトルエンをすべて除去した。泡立ちを防ぐために温度及び真空をゆっくりと適用した。蒸留のための最終的な条件は、10〜20mmHg及び80℃における15分間の保持であった。次いで、取り出した生成物をメカニカルスターラー、熱電対、電気加熱マントル、及び窒素パージを備えた三つ口フラスコに入れた。容器を140〜160℃で安定化させ、フェノール樹脂174.8gを30〜60分間かけて添加した。混合物をさらに1時間攪拌しながら160℃で保持した。この温度で生成物を反応器から出し、周囲温度まで冷却した後、生成物を砕いた。
【0037】
[例B]
N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−N,N−ジメチルプロパン−1,3−ジアミン149.6gを、空気駆動式のメカニカルスターラー、熱電対、水循環浴を有する加熱ジャケット、及び窒素パージを備えた1Lの四つ口ガラス容器に入れた。容器を窒素下で60〜70℃に加熱した。温度が安定した後、フェニルイソシアネート95.2gを温度を70〜80℃に維持しながら1.5時間かけて計り入れた。添加が完了した後、この混合物をその温度で1時間保持した。容器を130〜160℃で安定化させ、フェノール樹脂240gを30〜60分間かけて添加した。混合物をさらに1時間攪拌しながら160℃で保持した。この温度で生成物を反応器から出し、周囲温度まで冷却した後、生成物を砕いた。
【0038】
[例C]
N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−N,N−ジメチルプロパン−1,3−ジアミン252gを、空気駆動式のメカニカルスターラー、熱電対、水循環浴を有する加熱ジャケット、及び窒素パージを備えた1Lの四つ口ガラス容器に入れた。容器を窒素下で60〜80℃に加熱した。温度が安定した後、高分子メチレンジフェニルジイソシアネート200gを温度を70〜80℃に維持しながら2時間かけて計り入れた。添加が完了した後、この混合物を80℃で1時間保持した。容器を130〜160℃で安定化させ、フェノール樹脂88gを30〜60分間かけて添加した。混合物をさらに1時間攪拌しながら160℃で保持した。この温度で生成物を反応器から出し、周囲温度まで冷却した後、生成物を砕いた。
【0039】
例D:商業的に入手可能な3−[4−[[4(ジメチルカルバモイルアミノ)フェニル]メチル]フェニル]−1,1−ジメチル尿素
【0040】
例E:商業的に入手可能な1,1−ジメチル−3−フェニル尿素
【0041】
例F:商業的に入手可能なN,N−ジメチル,N’−3,4−ジクロロフェニル尿素
【0042】
例G:商業的に入手可能な3−[5−(ジメチルカルバモイルアミノ)−2−メチルフェニル]−1,1−ジメチル尿素
【0043】
例D〜Gの商業的に入手可能なジメチルアミン−イソシアネート付加物、及び例A〜Cのフェノール樹脂−尿素の反応生成物を、エポキシ硬化剤としてのそれらの硬化プロファイルに関して示差走査熱量計(DSC)によって調べた。エポキシ配合物は、ビスフェノールA樹脂のポリグリシジルエーテル(Epon 828)と、促進剤としての例A〜Gを5phr、3phr及び1phr(樹脂100質量部あたりの質量部)と、硬化剤としてのジシアンジアミドを6phrと、1%のヒュームドシリカとを含んでいた。得られた混合物は、高せん断カウルスブレードミキサーを用いて2分間にわたり十分に混合した。調製後直ちに混合物をDSCによって調べ、開始温度及びガラス転移温度(Tg)を決定した。DSC分析は、約10〜15mgの試料材料について10℃/分のランプ加熱速度によって実施した。得られたデータを表1に与える。これらのデータは、例A〜Cのフェノール樹脂とN’−(3−ジメチルアミノプロピル)−N,N−ジメチルプロパン−1,3−ジアミンに基づく尿素との反応生成物は、より高い充填量では、ジメチルアミンに基づく生成物よりも低い活性化温度と高いTgを与えることを示している。
【0044】
【表1】

【0045】
促進剤としての例A、C、D、E、F及びGの潜伏性又はポットライフを、ビスフェノールA樹脂のポリグリシジルエーテル(Epon 828)と、2phrの促進剤と、硬化剤としての6phrのジシアンジアミドと、1%のヒュームドシリカとを含むエポキシ配合物を用いて40℃で調べた。得られた混合物を高せん断カウルスブレードミキサーを用いて2分間にわたり十分に混合して25℃まで冷却し、初期粘度をブルックフィールド粘度計によって測定した。試料を140℃のオーブンにおいて保管し、25℃に冷却して粘度の変化を時間とともに測定した。得られたデータを表2に与える。これらのデータは、例A及びCのフェノール樹脂でブロックされた尿素が40℃でより優れた安定性を与えることを示している。
【0046】
【表2】

【0047】
例A〜Gの潜伏性又はポットライフを、ビスフェノールA樹脂のポリグリシジルエーテル(Epon 828)と、5phrの促進剤と、硬化剤としての6phrのジシアンジアミドと、1%のヒュームドシリカとを含むエポキシ配合物を用いて80℃で調べた。得られた混合物を高せん断カウルスブレードミキサーを用いて2分間にわたり十分に混合した。粘度の経時変化を動的機械分析(DMA)によって測定した。試料をティー・エイ・インスツルメントのRDAIII歪制御式レオメータによって分析した。25mmの使い捨てのアルミニウムの平行なプレートを試験のために使用した。オーブンの熱電対を用いて温度を50℃に制御し、プレートのギャップをゼロにした。プレート間に十分な量の試料を加え、約1mmのギャップを確保してオーブンを閉じた。実験は、以下の温度プログラムを用いて開始した。50℃の初期温度を10℃/分で80℃まで上げた。温度は80℃で少なくとも1000分間保持した。動的測定を50%の初期歪み速度で60秒ごとに行い、1g−cmの最小トルク値を維持するように最大300%まで自動的に調整した。先に測定した歪み速度を各測定点で最大50%変化させた。得られたデータを図1に示す。このデータは、フェノール樹脂でブロックされた尿素が80℃でより優れた安定性を与えることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)フェノール樹脂と(b)尿素化合物との反応生成物を含む組成物であって、該尿素化合物が、イソシアネートと、少なくとも1つの第一級又は第二級アミン及び少なくとも2つの第三級アミンを有する以下の一般式のアルキル化ポリアルキレンポリアミン、すなわち、
【化1】

式中、R1、R2、R3、R4及びR5が独立して水素、メチル又はエチルを表し;n及びmが独立して1〜6の整数であり;Xが1〜10の整数である、アルキル化ポリアルキレンポリアミンとの反応生成物である、組成物。
【請求項2】
1が水素又はメチルを表し、R2及びR4がメチルを表し、R3及びR5が独立して水素又はメチルを表し、n及びmが独立して1〜6の整数であり;Xが1〜10の整数である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記フェノール樹脂がノボラック樹脂である、請求項1に記載の反応生成物組成物。
【請求項4】
前記フェノール樹脂が、以下の一般式(A)、すなわち、
【化2】

であり、式中、Ra、Rb、Rc、Rdがそれぞれ独立して水素、又は分岐鎖若しくは非分岐鎖のC1〜C17アルキル基であり、nが0〜50の整数である、請求項1に記載の反応生成物組成物。
【請求項5】
n及びmが独立して2又は3である、請求項2に記載の反応生成物組成物。
【請求項6】
Xが1〜7である、請求項2に記載の反応生成物組成物。
【請求項7】
前記ポリアミンが、N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−N,N−ジメチルプロパン−1,3−ジアミンである、請求項1に記載の反応生成物組成物。
【請求項8】
前記イソシアネートが、フェニルイソシアネート、トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、及び高分子MDIから選択される、請求項1に記載の反応生成物組成物。
【請求項9】
エポキシ樹脂と、エポキシ硬化剤と、該エポキシ硬化剤のための促進剤との接触生成物を含み、該促進剤が請求項1に記載の反応生成物組成物を含む、熱硬化性のエポキシ組成物。
【請求項10】
前記硬化剤が、ジシアンジアミド又は酸無水物である、請求項9に記載のエポキシ組成物。
【請求項11】
100%固体のエポキシ組成物である、請求項9に記載のエポキシ組成物。
【請求項12】
20〜80wt%が固体の水性の固体エポキシ組成物である、請求項9に記載のエポキシ組成物。
【請求項13】
前記エポキシ樹脂が、ビスフェノール−Aのジグリシジルエーテル、ビスフェノール−Aの鎖伸長された(advanced)ジグリシジルエーテル、ビスフェノール−Fのジグリシジルエーテル、又はエポキシノボラック樹脂である、請求項9に記載のエポキシ組成物。
【請求項14】
前記フェノール樹脂がノボラック樹脂であり、前記イソシアネートが、フェニルイソシアネート、トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、及び高分子MDIから選択され、前記ポリアミンが、N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−N,N−ジメチルプロパン−1,3−ジアミンであり、前記エポキシ樹脂が、ビスフェノール−Aのジグリシジルエーテル、ビスフェノール−Aの鎖伸長された(advanced)ジグリシジルエーテル、ビスフェノール−Fのジグリシジルエーテル、又はエポキシノボラック樹脂である、請求項9に記載のエポキシ組成物。
【請求項15】
n及びmが独立して2又は3である、請求項9に記載のエポキシ組成物。
【請求項16】
Xが1〜7である、請求項9に記載のエポキシ組成物。
【請求項17】
前記ポリアミンが、N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−N,N−ジメチルプロパン−1,3−ジアミンである、請求項9に記載のエポキシ組成物。
【請求項18】
前記イソシアネートが、フェニルイソシアネート、トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、及び高分子MDIから選択される、請求項9に記載のエポキシ組成物。
【請求項19】
前記エポキシ樹脂が、ビスフェノール−Aのジグリシジルエーテル、ビスフェノール−Aの鎖伸長された(advanced)ジグリシジルエーテル、ビスフェノール−Fのジグリシジルエーテル、及びエポキシノボラック樹脂である、請求項9に記載のエポキシ組成物。
【請求項20】
エポキシ樹脂と、エポキシ硬化剤と、任意選択で該エポキシ硬化剤のための促進剤との接触生成物を含み、該硬化剤が請求項1に記載の反応生成物組成物を含む、熱硬化性のエポキシ組成物。
【請求項21】
100%固体のエポキシ組成物である、請求項20に記載のエポキシ組成物。
【請求項22】
20〜80wt%が固体の水性の固体エポキシ組成物である、請求項20に記載のエポキシ組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−57984(P2011−57984A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−203069(P2010−203069)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】