説明

フェノール樹脂およびゴム配合物

【課題】 本発明は、フェノール樹脂に脂肪鎖を導入することにより、ゴムに配合した場合、ゴムとの相溶性に優れ、タイヤのウェットグリップ性能および低転がり抵抗性を高度に両立することに貢献するゴム配合用フェノール樹脂を得ることを目的とする。
【解決手段】 芳香環に炭素数2〜10のアルキル鎖を有するアルキルフェノール類をフェノール類全体に対して50モル%以上含むフェノール類と、ジアルデヒド類をアルデヒド類全体に対して50モル%以上含むアルデヒド類との反応によって得られるものであることを特徴とするフェノール樹脂と、このフェノール樹脂を配合してなるゴム配合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール樹脂およびゴム配合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フェノール樹脂は、自動車や航空機用のタイヤへの配合をはじめ、土木・建築用材料、各種工業製品材料、汎用日用品など様々な種類の用途に用いられている。これらの中でも、自動車用タイヤなどに用いられるゴム材料には、原料ゴムに様々な添加剤を加えた複合材料が使用され、要求される耐摩耗性、耐クラック性、耐外傷性、低発熱性など種々の特性向上が試みられている。
例えば、タイヤの主原料であるゴムには、BR(ブタジエンゴム)、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)などの各種合成ゴムや天然ゴムが用いられるが、これらのゴム材料に、タイヤ用途に適した耐摩耗性能や機械的強度を与えるためには、フェノール樹脂のような弾性率の高い熱硬化性樹脂を配合したり、硫黄、加硫促進剤、カーボンブラック等の配合剤を多量に配合したりする方法などが実施されている。
【0003】
近年、自動車の高性能化、ハイスピード化に伴い、安全面への配慮からタイヤに対するグリップ性能の要求が高まってきている。従来、タイヤトレッドゴムにグリップ性を付与する方法として、アルキルフェノール樹脂を配合する手法が知られている(例えば、特許文献1参照。)が、ゴムとの相溶性が不十分で転がり抵抗が増加するなどの問題があり、グリップ性能と低転がり抵抗を両立するのは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−208265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、フェノール樹脂に脂肪鎖を導入することにより、ゴムに配合した場合、ゴムとの相溶性に優れ、タイヤのウェットグリップ性能および低転がり抵抗性を高度に両立することに貢献するフェノール樹脂と、このフェノール樹脂を配合してなるゴム配合物を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、以下の本発明[1]〜[6]により達成される。
[1]芳香環に炭素数2〜10のアルキル鎖を有するアルキルフェノール類をフェノール類全体に対して50モル%以上含むフェノール類と、ジアルデヒド類をアルデヒド類全体に対して50モル%以上含むアルデヒド類との反応によって得られるものであることを特徴とするフェノール樹脂。
[2]上記フェノール類と上記アルデヒド類との反応モル比(アルデヒド類のモル数/フェノール類のモル数)が、0.10〜1.00である上記[1]に記載のフェノール樹脂。
[3]上記ジアルデヒド類の炭素数が2以上5以下である上記[1]又は[2]に記載のフェノール樹脂。
[4]上記フェノール樹脂がゴム配合用である上記[1]ないし[3]のいずれかに記載のフェノール樹脂。
[5]上記フェノール樹脂がタイヤトレッドゴム配合用である上記[1]ないし[4]のいずれかに記載のフェノール樹脂。
[6]上記[1]ないし[5]のいずれかに記載のフェノール樹脂を配合してなるゴム配合物。
【発明の効果】
【0007】
本発明のフェノール樹脂をトレッドゴムに配合することにより、転がり抵抗の増加を招くことなく、ゴム配合物に高いウェットグリップ性能を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明のフェノール樹脂について説明する。
本発明のフェノール樹脂は、芳香環に炭素数2〜10のアルキル鎖を有するアルキルフェノール類をフェノール類全体に対して50モル%以上含むフェノール類と、ジアルデヒド類をアルデヒド類全体に対して50モル%以上含むアルデヒド類との反応によって得られるものであることを特徴とする。
【0009】
本発明のフェノール樹脂において用いられる芳香環に炭素数2〜10のアルキル鎖を有するアルキルフェノール類としては、例えば、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール等のエチルフェノール類、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール等のブチルフェノール類、p−tert−アミルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−クミルフェノール等のアルキルフェノール類などが挙げられる。これらを単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。
これらの中でも、ゴムとの相溶性に優れたp−tert−オクチルフェノール、p−ノニルフェノールなどのアルキルフェノール類を用いることが好ましい。これらのアルキルフェノール類を、フェノール類全体に対して50モル%以上用いることで、ゴムとの相溶性が高いフェノール樹脂を得ることができる。
【0010】
また、上記アルキルフェノール類と併用することができるフェノール類としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等のクレゾール類、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール等のキシレノール類、フルオロフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、ヨードフェノール等のハロゲン化フェノール類、p−フェニルフェノール、アミノフェノール、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール等の1価フェノール置換体、及び、1−ナフトール、2−ナフトール等の1価のフェノール類、レゾルシン、ピロガロール、カテコール、ハイドロキノン、フロログルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシナフタリン等の多価フェノール類などが挙げられる。これらを単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。
これらの中でも、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等のクレゾール類、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール等のキシレノール類を用いると、さらにゴムとの相溶性に優れたものとすることができる。
【0011】
本発明のフェノール樹脂に用いられる上記アルキルフェノール類が有するアルキル鎖の炭素数は、2以上10以下である。さらに好ましくは3以上9以下である。これにより、ゴムとの相溶性が高いフェノール樹脂を得ることができる。炭素数が10を超えるものは反応性が悪くなるため、好ましくない。
【0012】
本発明のフェノール樹脂において用いられるジアルデヒド類としては、例えば、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ビフェニルジアルデヒドなどが挙げられる。これらを単独
あるいは2種以上を混合して使用することができる。
これらの中でも、ゴムとの相溶性に優れたグリオキザール、グルタルアルデヒドなどを用いることが好ましい。これらのジアルデヒド類を、アルデヒド類全体に対して50モル%以上用いることで、ゴムとの相溶性が高いフェノール樹脂を得ることができる。
【0013】
また、上記ジアルデヒド類と併用することができるアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒドなどが挙げられる。これらを単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。
これらの中でも、フェノール類との反応性に優れるホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドが好ましい。
【0014】
本発明のフェノール樹脂に用いられる上記ジアルデヒド類の炭素数は、2以上5以下であることが好ましい。これにより、ゴムとの相溶性に優れたものとすることができる。炭素数が5より多いと反応性が悪くなり、樹脂化できない可能性がある。
【0015】
次に、本発明のフェノール樹脂の製造方法について説明する。
本発明のフェノール樹脂の製造方法は、上述したフェノール類、アルデヒド類を酸性触媒の存在下で反応させることを特徴とする。
【0016】
ここで用いられる酸性触媒としては、例えば、蓚酸、塩酸、硫酸、ジエチル硫酸、パラトルエンスルホン酸等の酸類、酢酸亜鉛等の金属塩類を単独または2種類以上併せて使用できる。
上記酸性触媒の使用量としては、フェノール類1モルに対して、通常、0.001〜0.1モルとすることができる。
【0017】
本発明のフェノール樹脂の製造において、フェノール類とアルデヒド類との反応モル比(アルデヒド類のモル数/フェノール類のモル数=F/P)としては、0.10〜1.00とすることが好ましい。さらに好ましくは、0.35〜0.90である。
上記モル比が上記下限値未満であると、固形のフェノール樹脂が得られない場合があり、上記上限値を超えるとゲル化物を生成する可能性がある。
【0018】
本発明のフェノール樹脂の製造方法としては、例えば、反応装置にフェノール類全体を酸性触媒とともに仕込み、ここにアルデヒド類を逐次添加して反応させる方法、反応装置にアルキルフェノール類と酸性触媒とを仕込み、ここにアルデヒド類を逐次添加して、ある程度反応させた後、残りのフェノール類を逐次添加してさらに反応させる方法、などが挙げられる。
【0019】
本発明のフェノール樹脂の数平均分子量は200〜2000であることが好ましく、300〜1800がより好ましい。これにより、ゴムとの相溶性に優れ、ゴムと混合した時に加工性に優れたものとすることができる。
上記数平均分子量の測定方法である液体クロマトグラフィー法は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いたものであり、テトラヒドロフランを溶出溶媒として使用し、流量1.0ml/分、カラム温度40℃の条件で、示差屈折計を検出器として測定し、分子量は標準ポリスチレンより換算した。使用した装置は以下のものである。・本体:TOSOH社製・「HLC−8120」
・分析用カラム:TOSOH社製・「G1000HXL」1本、「G2000HXL」2
本、「G3000HXL」1本
【0020】
本発明のフェノール樹脂は、種々の用途において使用することができるが、特に、ゴム配合用として好適に用いることができる。
本発明のフェノール樹脂はゴムとの相溶性に優れ、特に、タイヤトレッドゴムに配合することによりタイヤのウェットグリップ性能および低転がり抵抗性を高度に両立することができる。
【0021】
従来、タイヤトレッドゴムにグリップ性を付与する方法として、アルキルフェノール樹脂を配合する手法が知られているが、ゴムとの相溶性が不十分で転がり抵抗が増加するなどの問題があり、グリップ性能と低転がり抵抗を両立するのは困難であった。
本発明では、アルキルフェノール類とジアルデヒド類を併用することにより、骨格中のアルキル鎖の割合が増加してゴムとの相溶性が改善され、ゴム配合物、特にタイヤトレッドゴムに配合することによりグリップ性能と低転がり抵抗を高度に両立することができた。
【0022】
次に、本発明のゴム配合物について説明する。
本発明のゴム配合物は、上記本発明のフェノール樹脂を配合してなることを特徴とする。
本発明に係るゴム配合物には、ゴム及び本発明のフェノール樹脂に加えて、その他の補強剤(フィラー)、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用、その他一般ゴム用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、係る添加剤は一般的な方法で混練して配合物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。
【実施例】
【0023】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
ここに記載されている「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を示す。
【0024】
(実施例1)
撹拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応装置に、フェノール100部、ノニルフェノール2107部(フェノール/ノニルフェノール(モル比)=1/9)、蓚酸17部を仕込み、100℃に昇温後、濃度37%のホルムアルデヒド水溶液73部、濃度50%のグルタルアルデヒド水溶液1627部(ホルムアルデヒド/グルタルアルデヒド(モル比)=1/9)(F/P比=0.85)の混合物を1時間かけて逐次添加し、さらに3時間反応させた。次いで、常圧下で脱水を行いながら、系内の温度が150℃に昇温した後、650mmHgの減圧下で脱水を行いながら、系内の温度が180℃に昇温したところで反応装置より取り出して軟化点85℃、数平均分子量1479の樹脂2883部を得た。
【0025】
(実施例2)
実施例1においてノニルフェノール2107部をp−tert−オクチルフェノール1973部(フェノール/p−tert−オクチルフェノール(モル比)=1/9)に変えた以外は、実施例1と同様に反応を行い、軟化点82℃、数平均分子量1277の樹脂2709部を得た。
【0026】
(実施例3)
実施例1において、濃度50%のグルタルアルデヒド水溶液1627部を濃度40%のグリオキザール水溶液1179部(ホルムアルデヒド/グリオキザール(モル比)=1/9)に変えた以外は、実施例1と同様に反応を行い、軟化点78℃、数平均分子量112
1の樹脂2535部を得た。
【0027】
(実施例4)
実施例1において、フェノール100部、ノニルフェノール2107部(フェノール/ノニルフェノール(モル比)=1/9)をフェノール400部、ノニルフェノール1404部(フェノール/ノニルフェノール(モル比)=4/6)に変えた以外は、実施例1と同様に反応を行い、軟化点89℃、数平均分子量1452の樹脂2446部を得た。
【0028】
(実施例5)
実施例1において、濃度37%のホルムアルデヒド水溶液73部、濃度50%のグルタルアルデヒド水溶液1627部(ホルムアルデヒド/グルタルアルデヒド(モル比)=1/9)を濃度37%のホルムアルデヒド水溶液293部、濃度50%のグルタルアルデヒド水溶液1085部(ホルムアルデヒド/グルタルアルデヒド(モル比)=4/6)に変えた以外は、実施例1と同様に反応を行い、軟化点83℃、数平均分子量1249の樹脂2675部を得た。
【0029】
(実施例6)
実施例1において、フェノール100部、ノニルフェノール2107部(フェノール/ノニルフェノール(モル比)=1/9)をフェノール400部、ノニルフェノール1404部(フェノール/ノニルフェノール(モル比)=4/6)に、濃度37%のホルムアルデヒド水溶液73部、濃度50%のグルタルアルデヒド水溶液1627部(ホルムアルデヒド/グルタルアルデヒド(モル比)=1/9)を濃度37%ホルムアルデヒド水溶液293部、濃度50%のグルタルアルデヒド水溶液1085部(ホルムアルデヒド/グルタルアルデヒド(モル比)=4/6)に変えた以外は実施例1と同様に反応を行い、軟化点75℃、数平均分子量982の樹脂2356部を得た。
【0030】
(実施例7)
実施例1において、濃度37%のホルムアルデヒド水溶液73部、濃度50%のグルタルアルデヒド水溶液1627部(ホルムアルデヒド/グルタルアルデヒド(モル比)=1/9)を濃度37%のホルムアルデヒド水溶液60部、濃度50%のグルタルアルデヒド水溶液1340部(ホルムアルデヒド/グルタルアルデヒド(モル比)=1/9)(F/P比=0.70)に変えた以外は、実施例1と同様に反応を行い、軟化点80℃、数平均分子量1297の樹脂2807部を得た。
【0031】
(比較例1)
実施例1と同様の反応装置に、ノニルフェノール2000部、蓚酸8部を加え、100℃に昇温後、濃度37%のホルムアルデヒド水溶液463部を1時間かけて逐次添加し(F/P比=0.85)、さらに3時間反応させた。次いで、常圧下で脱水を行いながら、系内の温度が150℃に昇温した後、650mmHgの減圧下で脱水を行いながら、系内の温度が180℃に昇温したところで反応装置より取り出して軟化点81℃、数平均分子量1323の樹脂2020部を得た。
【0032】
(比較例2)
実施例1と同様の反応装置に、フェノール1000部、蓚酸10部を加え、100℃に昇温後、濃度50%のグルタルアルデヒド水溶液1809部を1時間かけて逐次添加し(F/P比=0.85)、さらに3時間反応させた。次いで、常圧下で脱水を行いながら、系内の温度が150℃に昇温した後、650mmHgの減圧下で脱水を行いながら、系内の温度が180℃に昇温したところで反応装置より取り出して軟化点76℃、数平均分子量1023の樹脂2162部を得た
【0033】
(比較例3)
実施例1において、フェノール100部、ノニルフェノール2107部(フェノール/ノニルフェノール(モル比)=1/9)をフェノール700部、ノニルフェノール702部(フェノール/ノニルフェノール(モル比)=7/3)に、濃度37%のホルムアルデヒド水溶液73部、濃度50%のグルタルアルデヒド水溶液1627部(ホルムアルデヒド/グルタルアルデヒド(モル比)=1/9)を濃度37%ホルムアルデヒド水溶液513部、濃度50%のグルタルアルデヒド水溶液542部(ホルムアルデヒド/グルタルアルデヒド(モル比)=7/3)に変えた以外は実施例1と同様に反応を行い、軟化点90℃、数平均分子量1502の樹脂1765部を得た。
【0034】
実施例1〜7の本発明のフェノール樹脂と、比較例1〜3のフェノール樹脂について、表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
<ゴム配合物の製造>
上記実施例、比較例で得られたフェノール樹脂の特性を確認するため、ゴム配合物を調製し物性の評価を行った。
【0037】
(実施例11)
実施例1で得られたフェノール樹脂を用い、表2に示す配合(重量部)で100℃で加熱混練したゴム配合物を油圧プレス装置にて160℃、20分間加硫して、厚さ2mmの加硫ゴムシートを作製した。
【0038】
(実施例12)
実施例2で得られたフェノール樹脂を用いた以外は、実施例11と同様にして加硫ゴムシートを作製した。
【0039】
(実施例13)
実施例3で得られたフェノール樹脂を用いた以外は、実施例11と同様にして加硫ゴムシートを作製した。
【0040】
(実施例14)
実施例4で得られたフェノール樹脂を用いた以外は、実施例11と同様にして加硫ゴムシートを作製した。
【0041】
(実施例15)
実施例5で得られたフェノール樹脂を用いた以外は、実施例11と同様にして加硫ゴムシートを作製した。
【0042】
(実施例16)
実施例6で得られたフェノール樹脂を用いた以外は、実施例11と同様にして加硫ゴムシートを作製した。
【0043】
(実施例17)
実施例7で得られたフェノール樹脂を用いた以外は、実施例11と同様にして加硫ゴムシートを作製した。
【0044】
(比較例11)
比較例1で得られたフェノール樹脂を用いた以外は、実施例11と同様にして加硫ゴムシートを作製した。
【0045】
(比較例12)
比較例2で得られたフェノール樹脂を用いた以外は、実施例11と同様にして加硫ゴムシートを作製した。
【0046】
(比較例13)
比較例3で得られたフェノール樹脂を用いた以外は、実施例11と同様にして加硫ゴムシートを作製した。
【0047】
(比較例14)
表2に示した配合において、フェノール樹脂を添加しないこと以外は、実施例11と同様にして加硫ゴムシートを作製した。
【0048】
【表2】

【0049】
<評価>
1.実施例及び比較例で得られた樹脂の数平均分子量
液体クロマトグラフィー法により測定した。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、テトラヒドロフランを溶出溶媒として使用し、流量1.0ml/分、カラム温度40℃の条件で、示差屈折計を検出器として測定し、分子量は標準ポリスチレンより換算した。使用した装置は以下のものである。
・本体:TOSOH社製・「HLC−8120」
・分析用カラム:TOSOH社製・「G1000HXL」1本、「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本
【0050】
2.ゴムシートの評価
(1)デュロメータ硬さ(タイプA)/JIS K6253に準拠して、東洋精機社製デュロメーターを用いて測定した。
(2)切断時伸び/JIS K6251に準拠して、東洋精機社製ストログラフを用い、引張速度50mm/分で測定した。
(3)損失正接[tanδ(0℃)](ウェットグリップ性能)/JIS K6394に準拠して、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製DMS6100を用い、測定条件は引張りで、10Hzで0℃において測定した。結果は、比較例11のtanδを100として指数表示した。指数の値が大きいほど、ウェットグリップ性能が良好である。
(4)損失正接[tanδ(60℃)](低転がり抵抗)/JIS K6394に準拠して、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製DMS6100を用い、測定条件は引張りで、10Hzで60℃において測定した。結果は、比較例11のtanδの逆数を100として指数表示した。指数の値が大きいほど低転がり抵抗性が良好である。
測定結果を表3に示す。
【0051】
【表3】

【0052】
表3の結果から明らかなように、実施例1〜7で得られた本発明のフェノール樹脂は、アルキルフェノール類を所定比率以上含むフェノール類とジアルデヒド類を所定比率以上含むアルデヒド類とを反応させてなるものであり、これを配合したゴム配合物(実施例11〜17)は、比較例1〜3で得られた、アルデヒド類としてジアルデヒド類を用いなかったもの、フェノール類としてアルキルフェノール類を用いなかったもの、及び、アルキルフェノール類やジアルデヒド類の比率が低いものを配合したゴム配合物(比較例11〜13)と比較して、ウェットグリップ性能が向上した。一方、転がり抵抗も実質的に損なわれておらず、低転がり抵抗性と高度に両立できていた。また、切断時伸びも実質的に同等ないしそれ以上であった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のゴム配合物は、アルキルフェノール類を所定比率以上含むフェノール類とジアルデヒド類を所定比率以上含むアルデヒド類とを反応させてなる本発明のフェノール樹脂を含有することを特徴とするものであり、ゴム、特に非極性のゴムに対して相溶性が向上するためウェットグリップ性能が向上し、低転がり抵抗性とも高度に両立することができる。従って、高性能タイヤのトレッドとして好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香環に炭素数2〜10のアルキル鎖を有するアルキルフェノール類をフェノール類全体に対して50モル%以上含むフェノール類と、ジアルデヒド類をアルデヒド類全体に対して50モル%以上含むアルデヒド類との反応によって得られるものであることを特徴とするフェノール樹脂。
【請求項2】
前記フェノール類と前記アルデヒド類との反応モル比(アルデヒド類のモル数/フェノール類のモル数)が、0.10〜1.00である請求項1に記載のフェノール樹脂。
【請求項3】
前記ジアルデヒド類の炭素数が2以上5以下である請求項1又は2に記載のフェノール樹脂。
【請求項4】
前記フェノール樹脂がゴム配合用である請求項1ないし3のいずれかに記載のフェノール樹脂。
【請求項5】
前記フェノール樹脂がタイヤトレッドゴム配合用である請求項1ないし4のいずれかに記載のフェノール樹脂。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のフェノール樹脂を配合してなるゴム配合物。

【公開番号】特開2011−195647(P2011−195647A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61744(P2010−61744)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】