説明

フェノール樹脂球形粒子の硬化物の製造方法

【課題】 本発明の課題は、製造上の安全性や利便性が高く、重金属などの不純物の含有率が低く、炭化する場合に混在する微粒子との又は球形粒同士の熱融着がなくかつ、ブロッキングが抑制されたフェノール樹脂の球形粒子を提供することある。
【解決手段】
フェノール類、アルデヒド類及びアミン系反応触媒を乳化分散剤の存在下に水に均一に混合乳化分散して常圧下及び/又は1.3kg/cm未満の加圧下に水の沸点以下の温度で加熱縮合反応させ、反応終了後乳化分散剤を水洗除去し、水洗した未硬化の球状フェノール樹脂を高沸点溶媒中に分散し攪拌しつつ高沸点溶媒の沸点まで昇温加熱し完全硬化させることにより球状活性炭及び球状カーボンに適したフェノール樹脂の球形粒子を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬用球状活性炭、球状カーボン、電気二重層キャパシタ用電極、浄水器用活性炭、触媒担持用活性炭、吸着カラム用、の製造原料、ゴム並びにプラスチックフィラー、軽量化材及び造孔材の原料として安全な製造方法によって製造されたフェノール樹脂球形粒子の硬化物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フェノール樹脂球形粒子硬化物の製造方法に関しては、球形フェノール樹脂を粒状に加工又は水中で保護コロイドの存在下にフェノール類とアルデヒド類とを原料に用いて乳化分散法により粒状フェノール樹脂を製造しナウターミキサーなどの加熱攪拌粉体混合機や流動乾燥機中で加熱し硬化させる方法をはじめとして例えば下記のように、これまでに多数の検討がなされている。
特開昭52−141893号(水性分散体から粒子状レゾールを製造する方):水性媒体中フェノール類とアルデヒド類とをヘキサミン触媒を使用しアラビアゴムの如き保護コロイド剤の存在下、常圧で85℃30分間反応させて球状フェノール樹脂を得る。
特公昭53−42077号(粒状ないし粉末状樹脂の製造方法):ヘキサミン触媒の存在下フェノール類とアルデヒド類とを常圧下75℃5分間反応させて得られた縮合物にポリビニルアルコール等の保護コロイド剤を添加して更に長時間反応し球状樹脂を得る二段階反応による製造方法
特開昭57−177011号(粒状ないし粉末状フェノール・ホルムアルデヒド系樹脂及びその製造方法):塩酸等酸性触媒中フェノールに対して大過剰のホルマリンを使用して激しく攪拌することにより微粒状のフェノール樹脂を得る。
特開平11−60664号(感圧自硬化球状フェノール樹脂の製造方法):アルキルアミン化合物触媒を用い、フェノール類とアルデヒド類とを常圧下80℃240分又は90度℃100分加熱縮合する球状フェノール樹脂の製造方法
特許3576433号:水中で縮合触媒及び乳化分散剤の存在下フェノール類とアルデヒド類とを高温高圧化縮合反応させる球状フェノール樹脂の製造方法。
特開2001−288238(フェノール樹脂硬化物及びそれを用いた活性炭):水中で縮合触媒及び乳化分散剤の存在下フェノール類とアルデヒド類とを常圧下、100℃5時間加熱化縮合反応させ、得たフェノール樹脂硬化物を空気中170〜250℃で加熱処理した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来提案されているフェノール樹脂球形粒子の硬化物の製造方法の中で例えば特許3576433号のように高温高圧下で縮合反応を行う方法、また特開2001−288238に記載されているように、常法に従って球状フェノール樹脂を製造した後に加熱空気中で硬化させる方法は工業的には大量製造が可能な完成度の高い製造方法と考えられる。しかしながら、高温高圧という条件は一般的手法ではあるが作業的危険性を伴うものであり、反応容器も圧力容器である必要がある。また安全性の法的規制があり、なおかつ装置も高価なものが多い。更に、反応容器の汚染など、メンテナンスについても労力が高い。
また、未硬化のフェノール樹脂球形粒子を加熱空気中で硬化させる方法では、気相反応であるがゆえに粒子の各単一粒子に熱が均一の加わらない為に硬化状態にむらが起こる可能性もあり、また硬化させるまでに長時間を要すると共に、成型物の強度の低下、透明性の不良、保存時のブロッキングなどの経時変化等が起こりやすくなる等の欠点が避けられない。さらに、特開昭57−177011号のように酸性触媒を用いた急速攪拌による製造方法では粒子径のコントロールが難しく、また一部葡萄房状に凝集しこれの硬化物は耐衝撃性が劣るなどの欠点がある。
加えて、上記の製造方法の例では、水による洗浄精製の工程を十分に確保しにくいので、フェノール樹脂球形粒子を球形活性炭の原料として用いる場合、フェノール樹脂球形粒子中に含まれる可能性のある低分子不純物、中でも特に重金属などが炭化処理後も活性炭中に残留する可能性がある。
以上の背景を踏まえて本発明者らは、非高温高圧下に、加熱空気で硬化させることなく均一に硬化する製造方法について鋭意考察し検討した。本発明の課題は製造上の安全性や利便性が高く、重金属などの不純物の含有率が低く、炭化する場合に混在する微粒子との又は球形粒同士の熱融着がなくかつ、ブロッキングが抑制されたフェノール樹脂の球形粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決する手段について検討した結果、フェノール類とアルデヒド類とを、乳化分散剤とアミン系反応触媒の共存下に加熱攪拌釜中で水と混合し、攪拌下に乳化分散して常圧下及び/又は1.3kg/cm未満の加圧下に加熱縮合させ、得られた未硬化のフェノール樹脂球形粒子を水洗して付着している乳化分散剤を除去した後に高沸点溶媒中に分散させ、攪拌下に加熱して完全硬化させることにより、球状を保持したまま炭化する特性を持ち、表面硬度が大きく、また炭素化する場合に混在する微粒子との又は球同士の熱融着がなく、ブロッキングが抑制された、更に、洗浄される機会がより多いことによって重金属などの不純物の含有率が低いフェノール樹脂の球形粒子が安全性が高い環境下に経済的に得られることを見出した。
【0005】
より具体的な本発明の製造工程の手順は例えば下記のとおりである。
▲1▼乳化分散剤の水溶液を予製する。
▲2▼例えばリボン型かきあげ混合羽根を装着した反応釜にフェノールとホルマリンを秤量して仕込み、常圧下及び/又は1.3kg/cm未満の加圧下で攪拌しながら▲1▼の乳化分散剤水溶液を添加し、更に水を添加して全量を調整し、約40℃で15分間、30rpmの速度で攪拌し混合する。
▲3▼次に30℃近辺に冷却する。
▲4▼冷却後にアミン系縮合反応触媒を例えば30〜33℃程度の温度に保ちながら30rpmの攪拌速度で攪拌しつつ滴下により添加する。その後回転数は20rpmで60分間攪拌する。
▲5▼次に、例えば60℃に昇温し60分間、20rpmの速度で攪拌する。
▲6▼次に例えば95℃に昇温し6時間、20rpmの速度で攪拌する。この時釜は密閉状態を保つ。
▲7▼次に40℃程度に冷却し、得られた未硬化のフェノール樹脂球形粒子を釜から取り出して、温水(メタノール少量添加)を用いて付着している乳化分散剤などの原料に起因した不純物を十分に洗浄して除去する。
▲8▼洗浄した未硬化のフェノール樹脂球形粒子を乾燥機で乾燥する。この際、例えば工業的には、濾過装置としてはヌッチェフィルターが、乾燥装置としてはプレートドライヤーなどを用いる。
▲9▼乾燥した未硬化のフェノール樹脂球形粒子を加熱攪拌釜に例えば約1重量部の未硬化のフェノール樹脂球形粒子を秤量して仕込み、これに高沸点の溶媒、例えばキシレンの約2重量部を加えて分散し、釜内の温度を徐々に上昇させる。この際、攪拌条件は樹脂が沈殿しない程度の例えば40〜60rpmとし、攪拌は2時間持続させる。この過程で、釜内を観察すると、昇温に伴って95℃近辺の温度に達する時点から樹脂に付着していた水がキシレンと共沸し始めるのが観察され、さらに125℃近辺から樹脂の縮合が始まることにより縮合水が共沸してくるのが観察される。この共沸水を釜の外に留去する。更にキシレンの沸点近辺温度で加熱攪拌を2時間持続し、樹脂の硬化反応を進行させ、反応後、ろ過により硬化処理が施されたフェノール樹脂球形粒子を取り出す。
▲10▼硬化処理が施されたフェノール樹脂球形粒子熱風循環オーブンを用いて、例えば135℃近辺で2時間かけて乾燥する。
【0006】
本発明のフェノール樹脂球形粒子の硬化物の製造に用いるフェノール類としては、フェノール、アルキルフェノール塁、スチレン化フェノール、ビスフェノール類、o−、m−、又はp−クレゾール、オキソクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール、p−フェニルフェノール、カテコール、ピロガロール、キシレノール、レゾルシノール、レゾルシンであり、これらを各々単独に又は2種以上を併用して製造される。
【0007】
本発明のフェノール樹脂球形粒子の硬化物の製造に用いるアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド、フルフラールであり、その反応系における仕込み量はフェノール類1モルに対してアルデヒド類が1〜4モル、より好ましくは1〜3モル更に好ましくは1〜2.5モルの範囲で製造される。
【0008】
本発明のフェノール樹脂球形粒子の硬化物の製造に用いるアミン系反応触媒はポリアルキレンポリアミン、例えばアミノエチルプロパノ−ルアミンのN−(2−アミノエチル)プロパノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、アミノエチルエタノールアミンのN−(2−アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン及びヘキサミンであり、これらを各々単独に又は2種以上を併用し、その仕込み量はフェノール類の仕込み量100重量部に対し0.5〜50重量部、より好ましくは2〜20重量部、更に好ましくは2〜20重量部で製造される。
【0009】
更に、本発明のフェノール樹脂球形粒子の硬化物の製造に用いる乳化分散剤はヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースカチオン化物等の水溶性セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、アルギン酸、グアガム及びアラビアガムであり、これらを各々単独に又は2種以上を併用し、その仕込み量がフェノール類の仕込み量100重量部に対し0.2〜10、より好ましくは0.3〜5重量部で製造される。
【0010】
本発明のフェノール樹脂球形粒子の硬化物の製造に用いる高沸点溶媒は流動パラフィン、ジメチルシリコン、トルエン、キシレンであり、これらを各々単独に又は2種以上を併用して製造される。
【0011】
本発明のフェノール樹脂球形粒子の硬化物の製造においては、水の沸点以下の温度、例えば約90℃以上の加熱で縮合反応を行い、更に縮合生成した樹脂を高沸点溶媒に分散して約120℃以上に加熱し硬化を促進する。
【0012】
本発明のフェノール樹脂球形粒子の硬化物の粒子径は、医薬用球状活性炭、球状カーボン、電気二重層キャパシタ用電極、浄水器用活性炭、触媒担持用活性炭、吸着カラム、ゴム並びにプラスチックフィラー、軽量化材及び造孔材の原料用など利用目的によって微細なものから粗大なものまで種々に調整する必要があるので特に限定されない。
【実施例】
【0013】
以下、実施例及び試験例を参照して、本発明をさらに詳細に説明するが、これらにより本発明の範囲が限定されることはない。
【0014】
実施例1
撹拌機、温度計及び還流冷却器を付帯した容量350リットルの反応釜に90%フェノ−ル73.3kg(700モル)、37%ホルマリン103kg(1260モル)及びヒドロキシエチルセルロースの2重量%水溶液14.2kg(予め予製しておく)及び水20kgを仕込み40℃で15分間、30rpmで攪拌加熱攪拌して均一な混合溶液となし30℃に冷却する。次に温度30〜33℃に保ち、回転数20rpmで攪拌しながらトリエチレンテトラミン6kgと水6kgの混合溶液を約15分間かけて滴下する。滴下終了後、60℃に昇温し回転数20rpmで60分間攪拌する。次に、釜を密閉状態に保ちつつ常圧下で95℃に昇温し回転数20rpmで6時間攪拌する。次に約40℃に冷却し、生成した樹脂を釜出ししてろ過する。ろ過時には各100リットルの温水(メタノール少量添加)でろ過水の濁りが消失するまで各3回洗浄する。洗浄した樹脂を風乾後熱風循環式オーブン中100℃で1時間乾燥し、未硬化のフェノール樹脂球形粒子を得る。乾燥した未硬化のフェノール樹脂球形粒子の約1重量部及びキシレンの約2重量部を攪拌釜に込み徐々に昇温する。攪拌条件は樹脂が沈殿しない程度の40〜60rpmで2時間攪拌する。昇温95℃近辺から樹脂に付着していた水が共沸してくる。さらに125℃近辺から樹脂の縮合が始まり縮合水が共沸してくる。これらの水を溜去しながらキシレンの沸点近辺温度135℃〜140℃で2時間加熱し樹脂の硬化反応を行う。次に冷却し釜出ししてろ過する。この際、温水(メタノール少量添加)でろ過水の濁りが消失するまで洗浄する。洗浄した樹脂を風乾後熱風循環式オーブン中135℃で2時間乾燥する。
【0015】
実施例2
撹拌機、温度計及び還流冷却器を付帯した容量350リットルの反応釜に90%フェノ−ル73.3kg、37%ホルマリン103kg及びアルギン酸水溶液14.2kg(予め予製しておく)及び水20kgを仕込み40℃で15分間、30rpmで攪拌加熱攪拌して均一な混合溶液とする。次に温度40℃に保ち、回転数20rpmで攪拌しながらエチレンジアミン32kgと水32kgの混合溶液を約1時間かけて滴下する。滴下終了後、60℃に昇温し回転数20rpmで60分間攪拌する。次に、釜を密閉状態に保ちつつ1.2kg/cmの加圧下で95℃に昇温し回転数20rpmで5時間攪拌する。次に約40℃に冷却し、生成した樹脂を釜出し
【0016】
してろ過する。この際、温水(メタノール少量添加)でろ過水の濁りが消失するまで洗浄する。洗浄した樹脂を風乾後熱風循環式オーブン中135℃で2時間乾燥する。
実施例3
乳化分散剤のヒドロキシエチルセルロースをグアーガム、アミン系反応触媒のトリエチレンテトラミンをテトラエチレンペンタミンに変更する以外は、実施例1と同様に製造しフェノール樹脂球形粒子の硬化物を得る。
【0017】
実施例4
テトラエチレンペンタミンの滴下時の温度を80℃にする以外は実施例3と同様に製造しフェノール樹脂球形粒子の硬化物を得る。
【0018】
実施例5
アミン系反応触媒のテトラエチレンペンタミンをジエチレントリアミンにする以外は実施例3と同様に製造しフェノール樹脂球形粒子の硬化物を得る。
【0019】
実施例6
アミン系反応触媒のテトラエチレンペンタミンをエチレンジアミンに変更する以外は実施例3と同様に製造しフェノール樹脂球形粒子の硬化物を得る。
【0020】
実施例7
アミン系反応触媒のテトラエチレンペンタミンをトリエチレンテトラミンに変更する以外は実施例3と同様に製造しフェノール樹脂球形粒子の硬化物を得る。
【0021】
実施例8
アミン系反応触媒のテトラエチレンペンタミンをペンタエチレンヘキサミンに変更する以外は実施例3と同様に製造しフェノール樹脂球形粒子の硬化物を得る。
【0022】
比較例1
特許3576433号において記載された製造方法に準じてフェノール樹脂球形粒子の硬化物を得る。即ち、温度計、攪拌機を装着した5リットルオートクレーブに、90%フェノール1222g、37%ホルマリン1071g、トリエチレンテトラミン99g、予めヒドロキシエチルセルロース11gを溶解した水溶液550g、水660gを仕込み、密封130℃、500rpmで1.0時間反応させる。次いで40℃以下に冷却し、ヌッチェ上でろ過水が透明かつ泡立ちがなくなるまで5回洗浄する。球状樹脂は風乾後熱風循環式オーブン中135℃で2時間乾燥する。
【0023】
比較例2
特開昭53−42077において記載された製造方法に準じてフェノール樹脂球形粒子を得る。即ち、温度計、攪拌機を装着した5リットル反応釜に、90重量%フェノール555g、37%ホルマリン430gを仕込み、攪拌しながらヘキサメチレンテトラミン50gを添加して90℃に昇温し100分間反応させル。次いで部分ケン化ポリビニルアルコールの5重量%水溶液100gを添加し温度を80℃に低下させて240分間反応させる。次いで40℃以下に冷却し、ヌッチェ上でろ過水が透明かつ泡立ちがなくなるまで5回洗浄する。次いで減圧乾燥機中40℃で24時間乾燥する。
【発明の効果】
【0024】
1.走査電子類微鏡画像
電子線マイクロアナライザー(EPMA−1400,島津製作所)を用いて撮影した。その結果、本発明実施例1のしフェノール樹脂球形粒子の硬化物は比較例1及び2と比較して粒子径の分布が均一であった。

2.重金属の混在
フェノール樹脂球形粒子の硬化物を灰化塩酸処理し、ICP発光分光分析装置(SPS4000:S11)を用いて主要元素を定量した。その結果、本発明実施例1、2及び3の球状フェノール樹脂は比較例1及び2と比較して重金属の含量が低く、重金属の混在が抑制されていることが認められた。

3.炭化・賦活化品の比表面積値及び活性炭粒子同士の融着の比較
本発明実施例1、比較例1及び比較例2で得たフェノール樹脂球形粒子の硬化物を350℃に熱した電気炉中に入れ、9℃/分の速度で昇温しつつ1.5時間加熱して炭化させる。次に炭化品をロータリーキルンに入れ、水蒸気を流しながら900℃に加熱して賦活化させて得られた球形吸着炭の比表面積を窒素ガス吸着法(日本ベル(株)製・BELSORP28型)によって測定した。その結果、本発明実施例1は比較例1及び2と比較して比表面積値が大きく、吸着能がより良好であることが示唆された。また、本発明実施例1は比較例1及び2と比較して活性炭粒子同士の融着が少なく、ブロッキングが抑制されている。

4.総括
本発明実施例の製造方法で得たフェノール樹脂球形粒子の硬化物は比較例1及び2と比較して、粒子径の分布が均一であり、重金属の含量が低く、比表面積値が大きく、吸着能がより良好であることが示唆された。また、本発明実施例1は比較例1及び2と比較して活性炭粒子同士の融着が少なく、ブロッキングが抑制されている。
即ち、熱熔融型球状フェノール樹脂の製造方法のように懸濁重合に次いで未硬化の球状フェノール樹脂を加熱空気で硬化させる従来の製造方法とは異なり、本発明の製造方法では非高温高圧下、加熱空気で硬化させることなく高沸点溶媒中に均一に分散させて硬化するので、得られたフェノール樹脂球形粒子の硬化物は、粒子の各一粒一粒とに熱が均一の加わる為に硬化状態にむらが起こりにくく、活性炭粒子同士の熱融着が少なく、ブロッキングが抑制され、なおかつ重金属の含有率が低い純度がより良好となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール類とアルデヒド類とを、乳化分散剤とアミン系反応触媒の共存下に水と混合し、攪拌下に乳化分散して常圧下及び/又は1.3kg/cm未満の加圧下に加熱し、得られた未硬化の球状フェノール樹脂を高沸点溶媒中に分散させ、攪拌下に加熱して硬化させることを特長とするフェノール樹脂球形粒子の硬化物の製造方法。
【請求項2】
前記のフェノール類とアルデヒド類の反応系における仕込量の比率が、フェノール類1モルに対してアルデヒド類が1〜4モル、より好ましくは1〜3モル更に好ましくは1〜2.5モル、の範囲であることを特長とする請求項1のフェノール樹脂球形粒子の硬化物の製造方法。
【請求項3】
前記のフェノール類がフェノール、アルキルフェノール塁、スチレン化フェノール、ビスフェノール類、o−、m−、又はp−クレゾール、オキソクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール、p−フェニルフェノール、カテコール、ピロガロール、キシレノール、レゾルシノール、レゾルシンであり、これらを各々単独に又は2種以上を併用して製造されることを特長とする請求項1のフェノール樹脂球形粒子の硬化物の製造方法。
【請求項4】
前記のアルデヒド類がホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド、フルフラールであり、これらを各々単独に又は2種以上を併用して製造されることを特長とする請求項1のフェノール樹脂球形粒子の硬化物の製造方法。
【請求項5】
前記のアミン系反応触媒がポリアルキレンポリアミン、例えばアミノエチルプロパノ−ルアミンのN−(2−アミノエチル)プロパノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、アミノエチルエタノールアミンのN−(2−アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、及び、ヘキサミンであり、これらを各々単独に又は2種以上を併用し、その仕込み量がフェノール類の仕込み量100重量部に対し2〜20重量部で製造されることを特長とする請求項1のフェノール樹脂球形粒子の硬化物の製造方法。
【請求項6】
前記の乳化分散剤がヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースカチオン化物等の水溶(1
性セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、アルギン酸、グアガム及びアラビアガムであり、これらを各々単独に又は2種以上を併用し、その仕込み量がフェノール類の仕込み量100重量部に対し0.2〜10重量部、より好ましくは0.3〜5重量部で製造されることを特長とする請求項1のフェノール樹脂球形粒子の硬化物の製造方法。
【請求項7】
高沸点溶媒が流動パラフィン、ジメチルシリコン、トルエン、キシレンであり、これらを各々単独に又は2種以上を併用して製造されることを特長とする請求項1のフェノール樹脂球形粒子の硬化物の製造方法。
【請求項8】
水性媒体中の縮合反応を水の沸点以下の温度が85〜99℃、高沸点溶媒中での完全硬化反応温度が110〜200℃の範囲で製造されることを特長とする請求項1のフェノール樹脂球形粒子の硬化物の製造方法。

【公開番号】特開2010−70738(P2010−70738A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270299(P2008−270299)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(508313378)
【Fターム(参考)】