説明

フェノール樹脂発泡体積層板およびその製造方法

【課題】
本発明は、(i)フェノール樹脂発泡体積層板の製造時において、発泡体と面材との間の爆裂、面材のガス剥がれ等のガス膨れ現象を防止し得る、(ii)製造されたフェノール樹脂発泡体積層板が、外部の湿気雰囲気や水分に接したりしてもフェノール樹脂発泡体の断熱性能を維持し得る、等の利点を有するフェノール樹脂発泡体積層板を提供する。
【解決手段】
フェノール樹脂発泡体の少なくとも一方の主表面に、熱可塑性樹脂フィルム層とポリエステル繊維不織布層とを含む面材を前記熱可塑性樹脂フィルム層がフェノール樹脂発泡体の前記主表面側となるように設けてなることを特徴とするフェノール樹脂発泡体積層板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として土木、建築用に使用されるフェノール樹脂発泡体積層板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フェノール樹脂発泡体積層板は、断熱性、難燃・防火性などに優れることから、断熱材として建築その他の産業分野において使用されている。
このようなフェノール樹脂発泡体積層板としては、ポリエステル繊維またはガラス繊維からなる不織布を面材として用い、これをフェノール樹脂発泡体の主表面に設けたフェノール樹脂発泡体積層板が知られており、また、クラフト紙を面材として用い、これをフェノール樹脂発泡体の主表面に設けたフェノール樹脂発泡体積層板が知られている。
【0003】
しかしながら、フェノール樹脂発泡体の主表面に不織布層からなる面材を設けたフェノール樹脂発泡体積層板の場合、不織布は物理的に水分を浸透し易い構造を有するため、フェノール樹脂発泡体積層板が外部の湿気雰囲気や水分に接すると、不織布層が容易に水分を吸収し、この水分が不織布層を介してフェノール樹脂発泡体に吸着または保持される。そして、水分を吸着または保持したフェノール樹脂発泡体は、その熱伝導率が高くなり、断熱性能が低下してしまう。
【0004】
ところで、フェノール樹脂発泡体積層板は、フェノール樹脂、発泡剤、硬化剤などを含むフェノール樹脂発泡組成物を、走行する面材上に連続的に吐出し、発泡硬化することにより連続的に製造することができるが、面材としてクラフト紙を用いて、この連続的な製造方法によりフェノール樹脂発泡体積層板を得ようとすると、フェノール樹脂発泡組成物の発泡硬化反応により発生する副生水(熱水または熱水蒸気)がクラフト紙層からなる面材に吸収されて透過しにくい為、フェノール樹脂発泡体の硬化反応を阻害するだけでなく、クラフト紙層に吸収された水分は、面材とフェノール樹脂発泡体の間等に滞留して、硬化反応を促進するために系に加えられる熱や硬化反応熱によって、面材のガス剥がれ等のガス膨れ現象を引き起こし易い。また、クラフト紙層からなる面材が水分を吸収することにより、面材の強度が低下したり、フェノール樹脂発泡体が親水性となって水分を吸着し易くなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情のもとで、(i)フェノール樹脂発泡体積層板の製造時において、発泡体と面材との間の爆裂、面材のガス剥がれ等のガス膨れ現象を防止し得る、(ii)製造されたフェノール樹脂発泡体積層板が、外部の湿気雰囲気や水分に接したりしてもフェノール樹脂発泡体の断熱性能を維持し得る、等の利点を有するフェノール樹脂発泡体積層板およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、フェノール樹脂発泡体の少なくとも一方の主表面に、熱可塑性樹脂フィルム層とポリエステル繊維不織布層とを含む面材を熱可塑性樹脂フィルム層がフェノール樹脂発泡体の主表面側となるように設けることによって、上記課題を解決し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)フェノール樹脂発泡体の少なくとも一方の主表面に、熱可塑性樹脂フィルム層とポリエステル繊維不織布層とを含む面材を前記熱可塑性樹脂フィルム層がフェノール樹脂発泡体の前記主表面側となるように設けてなることを特徴とするフェノール樹脂発泡体積層板、
(2)フェノール樹脂発泡体の前記主表面に面材が直接設けられている上記(1)に記載のフェノール樹脂発泡体積層板、
(3)フェノール樹脂発泡体の前記主表面に面材がポリエステル繊維不織布層を介して間接的に設けられている上記(1)または(2)に記載のフェノール樹脂発泡体積層板、
(4)フェノール樹脂発泡体積層板表面のポリエステル繊維不織布層にエンボス加工を施してなる上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板、および
(5)熱可塑性樹脂フィルム層とポリエステル繊維不織布層とを含む面材を、該面材の熱可塑性樹脂フィルム層が、吐出されたフェノール樹脂発泡組成物と直接または間接的に対面接触するように供給し、フェノール樹脂発泡組成物を硬化させて、フェノール樹脂発泡体と面材とを一体化させることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、(i)フェノール樹脂発泡体積層板の製造時において、発泡体と面材との間の爆裂、面材のガス剥がれ等のガス膨れ現象を防止し得る、(ii)製造されたフェノール樹脂発泡体積層板が、外部の湿気雰囲気や水分に接したりしてもフェノール樹脂発泡体の断熱性能を維持し得る、等の利点を有するフェノール樹脂発泡体積層板およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
先ず、本発明のフェノール樹脂発泡体積層板について説明する。
本発明のフェノール樹脂発泡体積層板は、フェノール樹脂発泡体の少なくとも一方の主表面に、熱可塑性樹脂フィルム層とポリエステル繊維不織布層とを含む面材を前記熱可塑性樹脂フィルム層がフェノール樹脂発泡体の前記主表面側となるように設けてなることを特徴とする。
【0010】
本発明のフェノール樹脂発泡体積層板は、フェノール樹脂発泡体を母材とするものであり、フェノール樹脂発泡体としては、特開平6−93128号公報に記載されているように、フェノール樹脂に酸性硬化剤、整泡剤、発泡剤などを添加したフェノール樹脂発泡組成物を硬化させて得られるものが挙げられる。
【0011】
フェノール樹脂としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール、レゾルシン等のフェノール類(変性物を含む)と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド等のアルデヒド類を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、ヘキサメチレンテトラミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のアルカリ性触媒の存在下に反応させて得られるレゾール型フェノール樹脂が好ましいが、これに限定されるものではない。フェノール類とアルデヒド類の使用割合については特に制限はないが、通常、フェノール類/アルデヒド類のモル比が1/1〜1/3であることが好ましい。
【0012】
酸性硬化剤としては、硫酸、リン酸等の無機酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、フェノールスルホン酸等の有機酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
整泡剤としては、シリコーン系非イオン界面活性剤、変性ひまし油等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
発泡剤としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の低沸点の脂肪族炭化水素、イソプロピルエーテル等のエーテル、塩化メチレン等の塩素化脂肪族炭化水素、トリクロルモノフルオロメタン、トリクロルトリフルオロエタン等の弗素化合物、あるいはこれらの化合物の混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
また、上記フェノール樹脂発泡組成物には、適宜、酸化アルミニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム等の金属粉末、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛等の粉末状塩基性物質等を含有させてもよい。
フェノール樹脂発泡体は、任意の形状とすることができるが、直方体の場合、その2つの主表面間の厚みが0.5〜20cm、特に2〜10cmであることが好ましい。
【0014】
本発明において最も特徴的な点は、フェノール樹脂発泡体の少なくとも一方の主表面に、熱可塑性樹脂フィルム層とポリエステル繊維不織布層とを含む面材が、前記熱可塑性樹脂フィルム層がフェノール樹脂発泡体の前記主表面側となるように設けられる点である。
【0015】
面材は、フェノール樹脂発泡体の少なくとも一方の主表面に設けられ、フェノール樹脂発泡体の複数の主表面に設けられてもよい。フェノール樹脂発泡体が直方体の場合は、1つまたは2つの主表面に面材が設けられる。
また、面材は、面材を構成する熱可塑性樹脂フィルム層がフェノール樹脂発泡体の主表面側となるように(面材を構成するポリエステル繊維不織布層がフェノール樹脂発泡体の主表面から遠い側となるように)設けられる。
【0016】
本発明において、面材の熱可塑性樹脂フィルム層を構成する熱可塑性樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂を常法によりフィルム化して得られるものであるが、この熱可塑性樹脂としては、熱水蒸気を透過し、水を吸収しないものが好ましく用いられ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等のポリエステル樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニール共重合体樹脂等の共重合体樹脂、該共重合体樹脂の部分鹸化物、完全鹸化物等を挙げることができる。具体的には、ハイトレル(ポリエステル樹脂、東レ・デュポン(株)製)、レクスパールET 182G(エチレン−アクリル酸エステル−酸無水物基含有モノマー3次元共重合体樹脂、日本ポレオレフィン(株)製)、ジェレミックスLD JZ788K(低密度ポリエチレン樹脂、日本ポレオレフィン(株)製)等を挙げることができる。
【0017】
本発明において、面材の熱可塑性樹脂フィルム層は、フェノール樹脂発泡組成物の発泡、硬化時に発生する副生水(熱水蒸気)を透過するため、本発明のフェノール樹脂発泡体積層板は、その製造時において、発泡体と面材との間の爆裂、面材のガス剥がれ等のガス膨れ現象を防止することが可能となる。また、熱可塑性樹脂フィルム層は、ポリエステル繊維不織布層を介して外部から浸透してくる水分を吸収しないため、本発明のフェノール樹脂発泡体積層板においては、フェノール樹脂発泡体が水分を吸着または保持することがなくなり、フェノール樹脂発泡体の断熱性能を維持することが可能となる。
【0018】
熱可塑性樹脂フィルム層の厚みは、10〜100μmが好ましく、特に20〜70μmが好ましい。熱可塑性樹脂フィルム層の厚みが10μm未満であると、面材が外部から水分を透過し易くなるため、最終製品のフェノール樹脂発泡体積層板が水分を吸収し易くなり、100μmを超えると、コストアップの要因になるからである。
【0019】
本発明において、面材のポリエステル繊維不織布層を構成するポリエステル繊維不織布は、ポリエステル繊維を常法により不織布化して得られるものであるが、このポリエステル繊維としては、疎水性を有するものであれば特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)等からなる繊維を挙げることができる。
【0020】
上記ポリエステル繊維を原料として得られるポリエステル繊維不織布としては、疎水性を有するとともに、フェノール樹脂発泡組成物の発泡硬化時に発生する副生水(熱水蒸気)を透過する空隙を有するものが好ましいが、得られる不織布の強度、形態、コストを考慮すると、スパンボンド法により得られるポリエステル繊維不織布(スパンボンド)が好ましい。具体的には、マリックス 70505FLV(スパンボンド、ユニチカ(株)製)等を挙げることができる。
【0021】
本発明のポリエステル繊維不織布層は、上述のように空隙を有し、疎水性の不織布からなるので、フェノール樹脂発泡組成物の硬化時に発生する副生水(熱水蒸気)を吸収することなく、透過することができる。
【0022】
ポリエステル繊維不織布層は、その厚みが0.1〜1mm、特に0.2〜0.6mmであることが好ましく、また、その目付は10〜200g/m2、特に30〜150g/m2であることがより好ましい。
【0023】
本発明のフェノール樹脂発泡体積層板において、面材は、フェノール樹脂発泡体の少なくとも一方の主表面に直接設けてもよく、もう一つのポリエステル繊維不織布層を介して間接的に設けてもよい。
このポリエステル繊維不織布層としては、上述した面材を構成するポリエステル繊維不織布層と同様のものを挙げることができる。
【0024】
面材が、ポリエステル繊維不織布層を介して間接的にフェノール樹脂発泡体に設けられている場合、上記ポリエステル繊維不織布層を構成する不織布が表面に空隙を多く含む構造を採ることから、フェノール樹脂発泡組成物が、不織布に浸透した状態で硬化し易く、面材とフェノール樹脂発泡体との接着性をより向上させること(いわゆるアンカー効果)が可能になる。
【0025】
本発明のフェノール樹脂発泡体積層板は、フェノール樹脂発泡体積層板表面のポリエステル繊維不織布層にエンボス加工を施していてもよい。
エンボス加工は、面材を構成するポリエステル不織布層において、全面的または部分的に施すことができるが、特に所定の幅を有するエンボス部と平滑部が、所定の間隔をおいて長手方向に交互に平行して並び縞模様を形成するように施すことが好ましい。
フェノール樹脂発泡体積層板表面のポリエステル繊維不織布層にエンボス加工を施すことにより、フェノール樹脂発泡体積層板に意匠性を付与し、また、フェノール樹脂発泡体積層板表面に皴が生じにくくなり、さらに、フェノール樹脂発泡体積層板表面の傷が目立たなくなることにより、フェノール樹脂発泡体積層板の保管・運搬・施工時の取り扱いが容易となる。
【0026】
次に、本発明のフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法について説明する。
本発明のフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法は、熱可塑性樹脂フィルム層とポリエステル繊維不織布層とを含む面材を、該面材の熱可塑性樹脂フィルム層が、吐出されたフェノール樹脂発泡組成物と直接または間接的に対面接触するように供給し、フェノール樹脂発泡組成物を硬化させて、フェノール樹脂発泡体と面材とを一体化させることを特徴とする。
【0027】
本発明の方法によれば、先ず、熱可塑性樹脂フィルム層とポリエステル繊維不織布層とを含む面材を用意する。
面材の製造方法としては、例えば、熱可塑性樹脂からなるペレットを溶融してポリエステル繊維不織布上にラミネート塗布した後、この熱可塑性樹脂を塗布したポリエステル繊維不織布を一対のローラに挟んで圧着することにより熱可塑性樹脂フィルム層とポリエステル繊維不織布層からなる面材を得る方法を挙げることができる。
【0028】
また、面材とフェノール樹脂発泡体の間にポリエステル繊維不織布層を介在させる場合は、例えば、予め面材とポリエステル繊維不織布層とを一体成形したものを用意することもでき、このような面材とポリエステル繊維不織布層との一体化物は、2枚のポリエステル繊維不織布間に溶融した熱可塑性樹脂を介在させ、これを一対のローラで圧着することにより得ることができる。
【0029】
また、フェノール樹脂発泡体積層板表面のポリエステル繊維不織布層にエンボス加工を施す場合には、面材を構成するポリエステル繊維不織布層に予めエンボス加工を施すことができ、エンボス加工を施す方法としては、例えば、ロールから排出され走行するポリエステル繊維不織布の少なくとも一方の面にエンボスローラを機械的に押し当ててエンボス加工を施した後、面材を製造する方法、あるいは一旦面材を製造した後、面材を構成するポリエステル繊維不織布層表面にエンボスローラを押し当ててエンボス加工を施す方法等を採用することができる。
【0030】
エンボスローラとしては、例えば、ローラ上に等間隔で交互に凹凸が設けられたものを用いることができる。エンボスローラの凸部表面にエンボス模様が施されている場合は、ローラの凸部に施された模様が不織布層に転写されて、不織布層に、縞模様等のエンボス加工が施される。また、エンボスローラ上の凸部および凹部表面が平滑でエンボス模様が施されていない場合であっても、不織布にエンボスローラを押し当てた際に、不織布が、エンボスローラの凸部とエンボスローラの対面側に位置する対面ローラに押さえつけられると、不織布面の粗密構造のために、不織布面上に縞状の細かい凹凸模様を形成することができる。
【0031】
本発明の方法によれば、このようにして得られた面材を、面材の熱可塑性樹脂フィルム層が、吐出されたフェノール樹脂発泡組成物と直接または間接的に対面接触するように供給し、フェノール樹脂発泡組成物を硬化させて、フェノール樹脂発泡体と面材とを一体化させることにより、フェノール樹脂発泡体積層板を得ることができる。
【0032】
例えば、キャリア上を連続的に移動する面材に対し、面材の熱可塑性樹脂フィルム層と対面接触するようにフェノール樹脂発泡組成物を吐出し、この面材と吐出物を加熱ゾーン(硬化炉)を通過させてフェノール樹脂発泡組成物を発泡硬化させると共に成形して、所望のフェノール樹脂発泡体積層板を作製することができる。硬化条件は、50〜70℃で2〜5分間程度である。硬化炉から出たフェノール樹脂発泡体積層板は所定の長さに切断される。
【0033】
以下に、フェノール樹脂発泡体の2つの主表面に面材が設けられたフェノール樹脂発泡体積層板の製造例を図1に基いて具体的に説明する。
図1において、フェノール樹脂発泡体積層板の製造装置10は、フェノール樹脂発泡体の厚み程度の間隔を開けて対向配置された上下一対のコンベア11、11を備えている。これらの上、下部コンベア11、11は、無端のスチールベルト13が複数のローラ14に巻架されて成る無端スチールベルトコンベアであり、搬送速度が同期されて駆動される。
【0034】
この製造装置10は、面材3、3をロール状に巻回すると共に回転可能に支持される支持部15、15を上、下部コンベア11、11に対応して各々備え、上、下部コンベア11、11が駆動されることで、支持部15、15に巻回された面材3、3を、各面材の熱可塑性樹脂層同士が対面するように各々繰り出し、上、下部コンベア11、11の搬送面に沿って搬送すると共に、ミキサー17で混合されたフェノール樹脂発泡組成物18を、一対の面材3、3間に供給すべく、ガイド管19を介して、下部コンベア11上の面材3に対して、フェノール樹脂発泡組成物18と面材3の熱可塑性樹脂フィルム層とが直接対面接触するように供給する。また、製造装置10は、一対の面材3、3間に供給され下流に搬送されるフェノール樹脂発泡組成物18を熱硬化させるための加熱装置20を備えている。
【0035】
さらに、製造装置10は、上下一対のコンベア11、11により搬送される一対の面材3、3の搬送方向に沿った縁部3a、3aを両側(図面手前側と向こう側;図では手前側のみ図示)において、搬送途中で繋ぎ合わせて閉じるための閉塞手段21を備えている。この閉塞手段21は、一対の面材3、3の縁部3a、3aを縫合するためのミシンのような縫合装置であっても、接着部材により接着するための接着装置であっても、融着装置であっても良い。この閉塞手段21に対しては、一対の面材3、3の縁部3a、3aを、当該閉塞手段21に向かって上流側から案内するためのガイド部材22が付設されている。
【0036】
このような製造装置10によれば、上、下部コンベア11、11の駆動が開始されると、支持部15、15が回転し、面材3、3が繰り出されて搬送されると共に、ミキサー17からのフェノール樹脂発泡組成物18が、下部の面材3を介して、搬送される一対の面材3、3間に供給される。この時、当該一対の面材3、3の搬送方向に沿った縁部3a、3aは、ガイド部材22により案内されて閉塞手段21に送られ、この閉塞手段21により縫合または接着または融着されて、一対の面材3、3間に閉空間が形成され、この閉空間内でフェノール樹脂発泡組成物18が発泡し加熱装置20により熱硬化されてフェノール樹脂発泡体2が形成されると同時に当該フェノール樹脂発泡体2の両面に面材3、3が積層されて搬送され、最後に、繋ぎ合わされて閉じている縁部3a、3aが取り除かれることで、フェノール樹脂発泡体積層板1が得られる。
【0037】
このようなフェノール樹脂発泡体積層板1の製造方法によれば、面材3、3を上下に並べて連続的に走行させると共に、この走行する面材3、3間にフェノール樹脂発泡組成物18を供給して発泡硬化させることで、当該発泡硬化したフェノール樹脂発泡体2の両面に面材3、3を連続的に一体に積層するように製造しているため、フェノール樹脂発泡体積層板1が簡易に得られ、製造コストの低減が図られる。
【実施例】
【0038】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、以下の各実施例および比較例で得られたフェノール樹脂発泡体積層板の各物性は、測定試料として、各実施例および比較例で得られたフェノール樹脂発泡体積層板から縦100mm、横100mm、厚さ35mmの直方体状試料をそれぞれ5個づつ切り出したものを用い、以下の(1)〜(3)に示す方法に従って、各試料の平均的な数値または状態を測定することによって求めた。
(1)フェノール樹脂発泡体積層板の吸水量
JIS A 9511吸水量試験法に従って測定した。
(2)ガス膨れ
フェノール樹脂発泡体積層板におけるガス膨れ現象の生成状況を評価するために、製造したフェノール樹脂発泡体積層板の外観を以下の指標に従って目視で評価した。
○:フェノール樹脂発泡体中またはフェノール樹脂発泡体と面材との間において、爆裂や面材のガス剥がれ等のガス膨れ現象は見られなかった。
×:フェノール樹脂発泡体中またはフェノール樹脂発泡体と面材との間において、爆裂や面材のガス剥がれ等のガス膨れ現象が見られた。
(3)表面性状
フェノール樹脂発泡体積層板の表面性状を、以下の指標に従って目視で評価した。
◎:フェノール樹脂発泡体積層板の表面に傷や皴が全く目立たない。
△:フェノール樹脂発泡体積層板の表面に若干の皴が認められる。
×:フェノール樹脂発泡体積層板の表面に傷や皴が目立つ。
【0039】
実施例1(フェノール樹脂発泡体の主表面に面材が直接設けられた例)
熱可塑性樹脂フィルムの原料として、ペレット状のハイトレル(ポリエステル樹脂、東レ・デュポン(株)製)を用い、これをラミネートダイを備えたラミネート装置に投入し、溶融した後、ポリエステル繊維不織布である、マリックス 70505FLV(スパンボンド、ユニチカ(株)製、目付70g/m2、繊度3.1デニール、厚さ0.21mm)上に押し出しラミネート塗布し、次いで、上記熱可塑性樹脂を塗布したポリエステル繊維不織布を一対のローラで挟んで圧着することにより、熱可塑性樹脂フィルム層の厚さが50μm、ポリエステル繊維不織布層の厚さが0.21mmである面材を得た。
一方、フェノール樹脂の原料として、フェノール84重量部、37%ホルマリン558重量部、水酸化ナトリウム11.1重量部を用い、これ等の原料をフラスコに投入し、90℃で60分間等温反応させた後、反応液のPHが7.0〜7.3になるように蓚酸を添加して反応液を中和し、減圧下80℃で脱水することにより、遊離フェノール3.0重量%、遊離ホルマリン1.9重量%を含むレゾール型フェノール樹脂を得た。
上記レゾール型フェノール樹脂に酸性硬化剤としてフェノールスルホン酸を20重量部、発泡剤として塩化メチレンを7重量部加え、攪拌して、レゾール型フェノール樹脂発泡組成物を得た。
得られたレゾール型フェノール樹脂発泡組成物と上記面材を、面材の熱可塑性樹脂フィルム層とフェノール樹脂発泡組成物とが直接対面接触するように図1に示す製造装置に供給し、2つの主表面にそれぞれ面材を設けた、厚さ50mmのフェノール樹脂発泡体積層板を製造した。
【0040】
実施例2(フェノール樹脂発泡体の主表面に面材を間接的に設けた例)
熱可塑性樹脂フィルムの原料として、ペレット状のハイトレル(ポリエステル樹脂、東レ・デュポン(株)製)を用い、これをラミネートダイを備えたラミネート装置に投入し、溶融した後、この熱可塑性樹脂をポリエステル繊維不織布である、2枚のマリックス 70505FLV(スパンボンド、ユニチカ(株)製、目付70g/m2、繊度3.1デニール、厚さ0.21mm)間に押し出しラミネート塗布した。次いで、上記熱可塑性樹脂を介して一体化した2枚のポリエステル繊維不織布を一対のローラで挟んで圧着することにより、ポリエステル繊維不織布層と熱可塑性樹脂フィルム層からなる面材とポリエステル繊維不織布層との一体化物を得た。この一体化物において、面材を構成する熱可塑性樹脂フィルム層およびポリエステル繊維不織布層の厚さは、それぞれ50μmおよび0.21mmであり、もう一つのポリエステル繊維不織布層の厚さは0.21mmであった。
上記一体化物を用いた以外は実施例1と同様にして、レゾール型フェノール樹脂発泡組成物と上記一体化物を、面材の熱可塑性樹脂フィルム層がポリエステル繊維不織布層を介してフェノール樹脂発泡組成物と間接的に対面接触するように、図1に示す製造装置に供給し、2つの主表面にそれぞれ面材を設けた、厚さ50mmのフェノール樹脂発泡体積層板を製造した。
【0041】
実施例3(フェノール樹脂発泡体積層板表面のポリエステル繊維不織布層にエンボス加工を施した例)
表面が平滑な凹凸を等間隔で交互に設けたエンボスローラを、実施例1で得られた面材のポリエステル繊維不織布層側に押し当てて、面材の長手方向に、エンボス模様として5mm幅の縞状のエンボス模様を施した面材を得た。
このエンボス化面材を、エンボス模様が表面に施された面材として用いた以外は、実施例1と同様にして、2つの主表面にそれぞれエンボス化面材を設けた、厚さ50mmのフェノール樹脂発泡体積層板を製造した。
【0042】
比較例1(面材としてガラス繊維不織布層を用いた例)
実施例1で用いた面材の代わりに、ガラス繊維不織布であるWXT100C8(オリベスト(株)製、厚さ0.3μm)からなる面材を用いた以外は、実施例1と同様にして、2つの主表面にそれぞれ面材を設けた、厚さ50mmのフェノール樹脂発泡体積層板を製造した。
【0043】
比較例2(面材としてクラフト紙を用いた例)
実施例1で用いた面材の代わりに、JIS P3401に規定されたクラフト紙である市販の硬質クラフト紙からなる面材を用いた以外は、実施例1と同様にして、2つの主表面にそれぞれ面材を設けた、厚さ50mmのフェノール樹脂発泡体積層板を製造した。
実施例1〜3および比較例1〜2で得られたフェノール樹脂発泡体積層板の各物性を以下の表1に示す。
【0044】
【表1】

実施例1〜3と比較例1〜2との比較により、面材として熱可塑性樹脂フィルム層とポリエステル繊維不織布層とを含む面材を用いた場合(実施例1〜3)は、吸水量が2.2〜2.5g/100cm2であったのに対し、面材としてガラス繊維不織布やクラフト紙からなる面材を用いた場合(比較例1〜2)は、吸水量が5.0〜5.1g/100cm2であった。
【0045】
また、面材として熱可塑性樹脂フィルム層とポリエステル繊維不織布層とを含む面材を用いた場合(実施例1〜3)は、フェノール樹脂発泡体中またはフェノール樹脂発泡体と面材との間において、爆裂や面材のガス剥がれ等のガス膨れ現象は見られなかったのに対し、面材としてクラフト紙を用いた場合(比較例2)は、クラフト紙とフェノール樹脂発泡体の間で5試料中4試料に、ひび割れ(爆裂)が見られた。以上の結果より、本発明のフェノール樹脂発泡体積層板を用いることにより、フェノール樹脂発泡体積層板の吸水性が改善されることが分かる。
【0046】
さらに、面材として熱可塑性樹脂フィルム層とポリエステル繊維不織布層とを含む面材を用いた場合は、フェノール樹脂発泡体積層板の表面に若干の皴が認められる(実施例1〜2)か、傷や皴が全く目立たなかった(実施例3)のに対し、面材としてガラス繊維不織布を用いた場合(比較例1)は、フェノール樹脂発泡体積層板の表面に皴や傷が目立ったことから、本発明のフェノール樹脂発泡体積層板を用いることにより、フェノール樹脂発泡体積層板の表面性状が改善されることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、(i)フェノール樹脂発泡体積層板の製造時において、発泡体と面材との間の爆裂、面材のガス剥がれ等のガス膨れ現象を防止し得る、(ii)製造されたフェノール樹脂発泡体積層板が、外部の湿気雰囲気や水分に接したりしてもフェノール樹脂発泡体の断熱性能を維持し得る、等の利点を有するフェノール樹脂発泡体積層板およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】フェノール樹脂発泡体積層板の製造装置の概略図である。
【符号の説明】
【0049】
1…フェノール樹脂発泡体積層板、3…面材、3a…面材の縁部、10…製造装置、11…コンベア、13…無端スチールベルト、14…複数個のローラ、15…表面材支持部、17…ミキサー、18…フェノール樹脂発泡組成物、19…ガイド管、20…加熱装置、21…閉塞手段、22…ガイド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール樹脂発泡体の少なくとも一方の主表面に、熱可塑性樹脂フィルム層とポリエステル繊維不織布層とを含む面材を前記熱可塑性樹脂フィルム層がフェノール樹脂発泡体の前記主表面側となるように設けてなることを特徴とするフェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項2】
フェノール樹脂発泡体の前記主表面に面材が直接設けられている請求項1に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項3】
フェノール樹脂発泡体の前記主表面に面材がポリエステル繊維不織布層を介して間接的に設けられている請求項1または2に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項4】
フェノール樹脂発泡体積層板表面のポリエステル繊維不織布層にエンボス加工を施してなる請求項1〜3のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項5】
熱可塑性樹脂フィルム層とポリエステル繊維不織布層とを含む面材を、該面材の熱可塑性樹脂フィルム層が、吐出されたフェノール樹脂発泡組成物と直接または間接的に対面接触するように供給し、フェノール樹脂発泡組成物を硬化させて、フェノール樹脂発泡体と面材とを一体化させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法。








【図1】
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【公開番号】特開2006−110829(P2006−110829A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299836(P2004−299836)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【Fターム(参考)】