説明

フェライト焼結体の製造方法並びにフェライト焼結体およびそれを用いたインダクタンス素子

【課題】配向性の高いフェライト焼結体を簡易な方法で提供する。
【解決手段】磁化容易面を持つ六方晶フェライトを磁性相とするフェライト焼結体2の製造方法であって、前記六方晶フェライトの構成元素を含む素原料とアルカリ金属塩との混合粉を前記アルカリ金属塩が溶融する温度で仮焼して得られた板状の六方晶フェライト粒子を含む第1の粉末と、前記六方晶フェライトの構成元素を含む素原料混合粉または前記素原料混合粉を仮焼して得られた粉末で構成された第2の粉末と、SiOおよびホウ酸とを含む混錬物を、押出し成形にて柱状に成形し、前記押出し成形によって得られた成形体を焼結し、柱状の焼結体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば数MHzから数十GHzまでの高周波帯域において、チョークコイル、ノイズ除去素子、アンテナなどの電子部品や電波吸収体等に使用される六方晶フェライトに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、無線LAN、パソコンなどの信号の高周波化に伴い、装置内部で使用されるインダクタンス素子もまた高周波で使用可能なものが要求されている。このような要求に対し、従来用いられてきたスピネル系フェライトでは高周波帯域においてスネークの限界と呼ばれる周波数限界が存在するため、使用することが困難となる。そこで六方晶系の結晶構造を有する六方晶フェライトが、かかる周波数限界を超える高周波用材料として検討されている。
【0003】
六方晶フェライトの中でも特にCoを含有したZ型フェライトが比較的高い透磁率を有し優れた高周波特性を示すことが知られている。またCoを含有するZ型フェライトは磁化容易面を持つため、成形時に外部から印加される回転磁場により結晶粒子のc軸方向を揃える操作(以下、この操作を面配向と呼び、この操作が行なわれた面を配向面と呼ぶ。)を行うことが可能である。面配向を行うことにより、配向面内の透磁率が向上する。
【0004】
例えば、特許文献1では回転磁界を印加することにより、面配向したZ型フェライトが得られることが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特公昭35−11280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載された、配向した焼結体を量産設備で作製する場合には、湿式磁界中成形を行う必要がある。しかし湿式磁界中成形は脱水に時間がかかるうえに、脱水と磁界印加の両方に係る設備が必要となり、製造コストが高くなってしまう。そこで、本発明は上記問題に鑑み、配向性の高いフェライト焼結体を簡易な方法で提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフェライト焼結体の製造方法は、磁化容易面を持つ六方晶フェライトを磁性相とするフェライト焼結体の製造方法であって、前記六方晶フェライトの構成元素を含む素原料とアルカリ金属塩との混合粉を前記アルカリ金属塩が溶融する温度で仮焼して得られた板状の六方晶フェライト粒子を含む第1の粉末と、前記六方晶フェライトの構成元素を含む素原料混合粉または前記素原料混合粉を仮焼して得られた粉末で構成された第2の粉末と、前記素原料混合粉または前記仮焼して得られた粉末に添加されるSiOおよびホウ酸とを用いて構成された混錬物を、押出し成形にて柱状に成形し、前記押出し成形によって得られた成形体を焼結し、柱状の焼結体を得ることを特徴とする。かかるフェライト焼結体の製造方法によれば、配向性に優れた六方晶フェライト焼結体を得ることが可能となる。
【0008】
また、前記フェライト焼結体の製造方法において、前記第1および第2の粉末はBaを含有し、前記第2の粉末のBa含有量が、前記第1の粉末の前記六方晶フェライトの構成元素を含む素原料中のBa含有量よりも大きいことが好ましい。かかる構成は焼結時の反応促進に有効である。
【0009】
さらに、前記フェライト焼結体の製造方法において、前記アルカリ金属塩として硫酸塩を用いるとともに、前記第1の粉末を水を用いて洗浄して硫黄分を低減することが好ましい。アルカリ金属塩として硫酸塩を使用する場合、残留硫黄分を低減することによって、焼結時の反応を促進することができる。
【0010】
本発明のフェライト焼結体は、磁化容易面を持つ六方晶フェライトを磁性相とするフェライト焼結体であって、前記フェライト焼結体は柱状形状であるとともに、柱軸方向に貫通する貫通孔を有し、前記六方晶フェライトの結晶粒のc軸が該柱状形状の柱軸に垂直な方向に配向しており、フェライト焼結体の柱軸に垂直な断面から得られるX線回折パターンにおいて、六方晶のc軸に垂直な方向を法線に持つ面による回折ピークの内、最大のものの強度をIc⊥-maxと定義し、c軸方向を法線に持つ面による回折ピークの内、最大のものの強度をIc-maxと定義したとき、Ic⊥-max/Ic-maxで定義される配向度が10以上であることを特徴とする。かかる構成によれば、貫通孔の長手方向および周回方向の透磁率が高いフェライト焼結体が提供できる。
【0011】
本発明のインダクタンス素子は、前記フェライト焼結体を用いたことを特徴とする。前記フェライト焼結体を用いることにより、優れた特性を有するインダクタンス素子を提供できる。
【0012】
また、前記インダクタンス素子において、前記フェライト焼結体の前記貫通孔を周回する方向を磁路方向とすることが好ましい。かかる構成とすることで、実効的に六方晶フェライトの透磁率の高い方向が磁路内において優勢となり、高いインダクタンスを発現する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、配向性の高いフェライト焼結体を簡易な方法で提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0015】
本発明に係るフェライト焼結体の製造方法は、磁化容易面を持つ六方晶フェライトを磁性相とするフェライト焼結体の製造方法である。具体的には、前記六方晶フェライトの構成元素を含む素原料とアルカリ金属塩との混合粉を前記アルカリ金属塩が溶融する温度で仮焼して得られた板状の六方晶フェライト粒子を含む第1の粉末と、前記六方晶フェライトの構成元素を含む素原料混合粉または前記素原料混合粉を仮焼して得られた粉末で構成された第2の粉末と、前記素原料混合粉または前記仮焼して得られた粉末に添加されるSiOおよびホウ酸とを用いて構成された混錬物を、押出し成形にて柱状に成形し、前記押出し成形によって得られた成形体を焼結し、柱状の焼結体を得る。磁化容易面を持つ六方晶フェライトとは、例えばZ型フェライト、Y型フェライトなどの軟磁性フェライトである。代表的なZ型フェライトであるCoZ(BaCoFe2441)、CoY(BaCoFe1222)の場合、素原料には例えばBaCO、Co、Feなどを用いる。
【0016】
第1の粉末について説明する。前記素原料にKSO、NaSO、LiSO、KCl、NaCl、LiClなどのアルカリ金属塩を加えて混合し、混合粉をアルカリ金属塩が溶融する温度で仮焼する。仮焼温度は、フェライトの組成、アルカリ金属塩の種類に応じて決めればよいが、例えば1000℃〜1400℃である。アルカリ金属塩が溶融する温度で仮焼することで、板状の六方晶フェライト粒子が得られる。第1の粉末において、六方晶フェライトの組成が化学量論比に近いほど板状の六方晶フェライト粒子を得やすい。したがって六方晶フェライトの組成は化学量論比であることがより好ましい。仮焼後は、水で洗浄してアルカリ金属塩に由来する成分を除去することが好ましい。アルカリ金属塩として硫酸塩を用いる場合、第1の粉末を水を用いて洗浄して硫黄分を低減することが好ましい。硫黄分は後述する粒成長反応を阻害するからである。第1の粉末に含まれる硫黄の含有量は好ましくは0.5wt%以下であり、さらに好ましくは0.4wt%以下である。
【0017】
前記板状の六方晶フェライト粒子は、その板面に垂直な方向がc軸方向であり、板面方向がc面方向である。該c面方向が磁化容易方向である。第1の粉末を用いることによって、湿式磁界中成形を行わなくても、押出し成形にて柱状に成形することで、配向した六方晶フェライト焼結体を得ることが可能となる。これは前記第1の粉体が板状の形態を有しているためである。成形中に、粉体にせん断応力を印加させることのできる押出成形によって、板状粒子の板面と押出方向とが平行になるような配向が生じる。押出成形の場合、板状粒子同士及び押出し成形機の吐出部側面とのせん断応力により、板状面と側面が平行になろうとする配向が生じる。
【0018】
しかし板状の六方晶フェライト粒子だけでは望ましい焼結体を得ることは難しい。これは板状の粒子のみを用いると、その形状に起因して粉体の成形性が悪く、焼結を行っても反応が充分進まず、内部に大きな空隙が残留し、密度が上がらないためである。そこで配向させる板状粒子の周辺に、焼結時の反応性が良い第2の粉末に係る粒子を配し、焼結時に板状粒子を起点とした粒成長を誘起させる反応を利用する。本反応により成形体時点で配向していた板状粒子が大きく成長し、全体として高い配向性を有する焼結体を得ることができる。押出し成形で作製した成形体は、金型に接する外周面および内周面側において結晶粒の配向が顕著になる。したがって、かかる配向に倣って粒成長させれば、柱軸に垂直な方向から観察した時、フェライト焼結体の内部よりも外周表面において平均結晶粒径を大きくすることができる。
【0019】
第2の粉末について説明する。第2の粉末には、六方晶フェライトの構成元素を含む素原料混合粉または前記素原料混合粉を仮焼して得られた粉末を用いる。これらを組み合わせて用いてもよい。アルカリ金属塩を用いないで通常の仮焼プロセスで仮焼した第2の粉末は、板状の第1の粉末と異なり、粒状を呈する。また、第2の粉末として素原料混合粉を用いる場合も、これらの各素原料粉は板状ではない。したがって、これらの粉末を第2の粉末として用いることによって、成形性が上がり、粒成長反応も進むようになる。第1および第2の粉末がBaを含有する場合、第2の粉末のBa含有量が、第1の粉末の、アルカリ金属塩以外の、六方晶フェライトの構成元素を含む素原料中のBa含有量よりも大きくすることが好ましい。例えば化学量論比よりもBaリッチな組成にすると反応性が上がるため、第2の粉末にかかるBaリッチな組成を用いると焼結の際の粒成長も、より促進される。
【0020】
また、本発明のフェライト焼結体の製造方法においては、第1の粉末と第2の粉末に、さらにSiOおよびホウ酸を添加する。SiOおよびホウ酸を添加することによって、配向性向上のための粒成長が著しく促進される。SiOの添加量は第2の粉末の総重量(100重量部)に対し、好ましくは0.1〜1.0重量部である。また、ホウ酸の添加量は好ましくは0.02〜0.4重量部である。なお、SiOおよびホウ酸は第2の粉末に添加してもよいし、第1の粉末と第2の粉末を混合する際に添加してもよい。また、第2の粉末を仮焼粉で構成する場合に、仮焼前の素原料混合粉に添加してもよい。
【0021】
第1の粉末、第2の粉末およびSiOおよびホウ酸に水および結合材を添加して可塑性を持つ状態(混錬物)にし、上述のように押出し成形を行う。押出し成形において、吐出部が広く、吐き出し部側面と中央部との距離が大きい場合には、せん断応力はその効果が弱くなる。そこで、押出成形時に、吐き出し部中央に心棒を配置して、柱状の中空構造を有する成形体とする。このように心棒を用いることで内部にも側面を作ることができ、中央部にも配向した領域を設けることができる。このようにして得られた成形体を焼結することで、柱状形状であるとともに、柱軸方向に貫通する貫通孔を有する焼結体が得られる。板状の第1の粉末形状に倣って効率よく粒成長させるためには、1300℃以上で焼結することが好ましい。さらに焼結後適宜切断してもよい。貫通孔を用いて巻線をするだけで容易にインダクタンス素子や磁性体アンテナを構成することができる。第2の粉末には、反応促進のためにさらにLi,V,Bi,SiまたはInを含む粉末のうち少なくとも1種以上を添加してもよい。
【0022】
本発明に係るフェライト焼結体は磁化容易面を持つ六方晶フェライトを磁性相とするため、上記のように押出し成形を用いて作製することで、以下の構成を実現することが可能である。すなわち、前記フェライト焼結体は柱状形状であるとともに、柱軸方向に貫通する貫通孔を有する。該貫通孔は押出し成形時の心棒に対応して形成される。さらにフェライト焼結体において、六方晶フェライトの結晶粒のc軸が柱状形状の柱軸に垂直な方向に配向しており、フェライト焼結体の柱軸に垂直な断面から得られるX線回折パターンにおいて、六方晶のc軸に垂直な方向を法線に持つ面による回折ピークの内、最大のものの強度をIc⊥-maxと定義し、c軸方向を法線に持つ面による回折ピークの内、最大のものの強度をIc-maxと定義したとき、Ic⊥-max/Ic-maxで定義される配向度が10以上である。押出し成形で作製されたフェライト焼結体では、外周側、内周側において柱軸を周回する方向にc面が配向する。すなわち、六方晶フェライトの結晶粒のc軸が、柱軸(貫通孔の貫通方向)に垂直な方向に配向している。その配向度が10以上であるとき、柱軸を周回する方向の透磁率が高くなり、該方向を磁路として利用するインダクタンス素子の特性が向上する。前記配向度はさらに望ましくは13以上である。更なる配向度の向上は高特性のインダクタンス素子を設計するのに有効である。配向した焼結体を用いてインダクタンス素子を作製することで等方性の焼結体を使用する場合に比べ高いインダクタンスを示す素子を作製することが可能となる。例えば、貫通孔を用いて巻線することで、フェライト焼結体の前記貫通孔を周回する方向を磁路方向とした高インダクタンスのインダクタンス素子を作製することができる。インダクタンス素子としては、例えばチョークコイル、ノイズ除去素子、アンテナなどである。
【実施例】
【0023】
第1の粉末は主成分としてFeが70.6mol%、BaO(但しBaCOを使用)が17.7mol%、残部CoOの割合となるように、素原料Fe、BaCO及びCoOを秤量して以下のように作製した。前記素原料を湿式ボールミルにて16時間混合した。混合後、乾燥した混合粉とKSOが1:1の重量割合となるよう混合し、1320℃において酸素中で5時間仮焼した。得られた仮焼体を解砕した後、100℃の純水中で攪拌しては上水を除去する工程を5回繰り返し、その後、乾燥し、板状の六方晶Z型フェライトの粒子を含む第1の粉末を作製した。かかる操作によりS含有量を0.5wt%以下とした。
【0024】
前記、第2の粉末は下記に示す3種類を作製した。それぞれ第2の粉末A、第2の粉末Bおよび第2の粉末Cと呼ぶ。第2の粉末Aは主成分としてFeが65.9mol%、BaO(但しBaCOを使用)が19.1mol%、MnOが5.0mol%、残部CoOの割合となるように、素原料Fe、BaCO、MnOおよびCoOを秤量して以下のように作製した。第2の粉末の主成分100重量部に対し、0.3重量部のSiOおよび0.1重量部のホウ酸(HBO)添加し、湿式ボールミルにて16時間混合を行った。混合後、1320℃において酸素中の条件にて3時間仮焼した。得られた仮焼粉を湿式ボールミルにて24時間粉砕した後、乾燥し、第2の粉末を得た。第2の粉末Bは、主成分のモル比は第2の粉末Aと同じとし、SiOおよびホウ酸を添加せず上記の仮焼、粉砕を行い作製した。第2の粉末Cは主成分のモル比は第2の粉末Aと同じとし、更に第2の粉末の主成分100重量部に対し、0.3重量部のSiO、0.1重量部のホウ酸(HBO)および0.1重量部のVを添加し、湿式ボールミルにて16時間混合を行った。混合後、混合粉は乾燥し、第2の粉末とした。すなわち第2の粉末Cは仮焼および粉砕を行わなかった。
【0025】
上記の第1の粉末、第2の粉末をそれぞれ1:9の重量比となるよう秤量し、湿式ボールミルにて4時間混合した。混合後のスラリーを乾燥させ、バインダを添加し、混練を行い混練物(押出用杯土)を得た。上記のように得られた押出用杯土を、2.4mm×1.5mmの長方形の口金に1.4mm×0.5mmとなる心棒を挿入した金型を用いて押出成形した。口金および心棒の角には0.2mmのRが設けられている。得られた成形体を80℃で乾燥させた後、1320℃または1340℃で3時間、酸素中で焼結した。焼結体の外観を図1に示す。図1に示すフェライト焼結体2は貫通孔1を中心部分に備えた略直方体形状である。焼結後の外形寸法は1.9mm×1.2mm、貫通孔は1.1mm×0.4mmであった。また比較例として第2の粉末に第1の粉末を加えずに上記のように混練、押出成形、焼結を行った試料も作製した。
【0026】
上記のように作製した焼結体の配向度、インダクタンス値を評価した。配向度は押出方向に垂直な断面でX線回折パターンを取得し、Z型フェライトの(1 1 0)からの回折ピーク強度をZ型フェライトの(0 0 18)からの回折ピーク強度で除した値を採用した。また焼結体を押出方向の厚みが1.2mmとなるように加工し、10ターンの巻線を施した時のインダクタンスの値を評価した。これらの結果を表1にまとめて示した。
【0027】
【表1】

【0028】
第1の粉末を含まず、SiOおよびホウ酸も含まない比較例1の試料では、配向度が10未満と低く、インダクタンスも低い。これに対して実施例1の試料では、配向度は10以上となり、インダクタンスも大きく向上している。すなわち、第1の粉末を使用せずに作製した比較例2と実施例1を比較すると、同一条件で焼結したにもかかわらず、配向度は実施例1の方が約4倍高く、インダクタンス値も10%以上高いという結果となった。このことから配向度・インダクタンス値の向上には第1の粉末を添加することが有効であることが確かめられた。また、SiOおよびホウ酸は添加されているものの第1の粉末を含まない比較例2も配向度が10未満と低く、インダクタンスも低い。すなわち、配向度向上にはSiOおよびホウ酸の添加が効果的であることがわかる。また、実施例1と同様にして作製した成形体を1340℃で焼結したところ、Z型フェライトの(0018)のピークがほとんど観測されず、実施例1に比べて焼結温度の上昇に伴い配向度が向上していることもわかった。
【0029】
また、実施例2に示したように仮焼、粉砕を行わなかった第2の粉末Cを使用しても20以上の高い配向度および大きなインダクタンスが得られた。このことから第2の粉末を作製するにあたり、仮焼・粉砕という工程が必ずしも必要でなく、素原料およびSiOおよびホウ酸などの反応促進添加物に直接第1の粉末を混合し、混練・押出成形することで配向度・特性向上の効果があることが確かめられた。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るフェライト焼結体の一実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1:貫通孔
2:フェライト焼結体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁化容易面を持つ六方晶フェライトを磁性相とするフェライト焼結体の製造方法であって、
前記六方晶フェライトの構成元素を含む素原料とアルカリ金属塩との混合粉を前記アルカリ金属塩が溶融する温度で仮焼して得られた板状の六方晶フェライト粒子を含む第1の粉末と、前記六方晶フェライトの構成元素を含む素原料混合粉または前記素原料混合粉を仮焼して得られた粉末を含む第2の粉末と、前記素原料混合粉または前記仮焼して得られた粉末に添加されるSiOおよびホウ酸とを用いて構成された混錬物を、押出し成形にて柱状に成形し、前記押出し成形によって得られた成形体を焼結し、柱状の焼結体を得ることを特徴とするフェライト焼結体の製造方法。
【請求項2】
前記第1および第2の粉末はBaを含有し、前記第2の粉末のBa含有量が、前記第1の粉末の前記六方晶フェライトの構成元素を含む素原料中のBa含有量よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のフェライト焼結体の製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ金属塩として硫酸塩を用いるとともに、前記第1の粉末を水を用いて洗浄して硫黄分を低減することを特徴とする請求項1または2に記載のフェライト焼結体の製造方法。
【請求項4】
磁化容易面を持つ六方晶フェライトを磁性相とするフェライト焼結体であって、
前記フェライト焼結体は柱状形状であるとともに、柱軸方向に貫通する貫通孔を有し、
前記六方晶フェライトの結晶粒のc軸が該柱状形状の柱軸に垂直な方向に配向しており、
フェライト焼結体の柱軸に垂直な断面から得られるX線回折パターンにおいて、六方晶のc軸に垂直な方向を法線に持つ面による回折ピークの内、最大のものの強度をIc⊥-maxと定義し、c軸方向を法線に持つ面による回折ピークの内、最大のものの強度をIc-maxと定義したとき、Ic⊥-max/Ic-maxで定義される配向度が10以上であることを特徴とするフェライト焼結体。
【請求項5】
請求項4に記載のフェライト焼結体を用いたインダクタンス素子。
【請求項6】
前記フェライト焼結体の前記貫通孔を周回する方向を磁路方向とすることを特徴とする請求項5に記載のインダクタンス素子。

【図1】
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【公開番号】特開2010−143772(P2010−143772A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319983(P2008−319983)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】