説明

フェライト積層電子部品の製造方法

【課題】内部導体の周囲のフェライトに残留する応力を低減して、良好な特性を備えたフェライト積層電子部品を効率よく製造することが可能なフェライト積層電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】Fe23粉末およびNiO粉末と、有機バインダーとを含む配合物を用いてグリーンシートを作製し、このグリーンシートを用いて、未焼成の内部導体を内蔵するグリーンシート積層体を形成した後、所定の条件で熱処理して、グリーンシート積層体の脱脂を行い、得られる脱脂後積層体を焼成することによりフェライト積層電子部品を製造するにあたって、Fe23粉末として、平均粒径が0.1〜0.5μm、比表面積が10m2/g以上のFe23粉末を用いる。
脱脂後積層体中の残留カーボン量が、重量基準で550〜1000ppmとなるような条件で脱脂を行う。
上記グリーンシートの作製に用いられる配合物として、仮焼工程を経ていない配合物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造方法に関し、詳しくは、内部導体をフェライト積層体の内部に備えた、積層インダクタなどのフェライト積層電子部品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フェライトなどの磁性体セラミック中に内部導体が配設された構造を有する積層型インダクタなどのフェライト積層電子部品が広く用いられている。
【0003】
そして、これらのフェライト積層電子部品は、通常、表面に内部導体パターンが配設されたフェライトグリーンシートを積層し、得られる積層体を脱脂した後、焼成する工程を経て製造されている。
【0004】
ところで、このようなフェライト積層電子部品の製造方法の1つに、フェライト系のセラミック原料粉末を混合する工程、混合粉末を仮焼して合成粉末を得る工程、仮焼合成粉末をシート化したグリーンシートを用いて、未焼成の内部導体を備えた積層体を形成する工程と、積層体を焼成する工程とを含むセラミック電子部品の製造方法であって、仮焼合成後の粉末中の残留カーボン量を550〜1100ppm(重量比)の範囲となるようにしたセラミック電子部品の製造方法が提案されている。(特許文献1参照)。
【0005】
ところで、特許文献1では、Fe23、NiO、ZnO、およびCuOを主成分とするフェライトの原料粉末、水、ポリカルボン酸アンモニウム系分散剤、分散助剤であるポリビニルアルコール(PVA)をボールミルで湿式混合して分散させた後、乾燥し、600℃〜700℃で仮焼合成して仮焼合成粉末を得る際に、仮焼合成温度、あるいは、PVA添加量を調整することによって、仮焼合成後の粉末に残留するカーボン量を制御するようにしている。
【0006】
仮焼合成後に残留するカーボンは、その後の焼成過程において、800℃以上の高温域で、内部導体とその周囲のフェライトとの接合界面の酸素の一部を奪ってCOあるいはCO2として脱離し、接合界面の接合強度を低下させるように作用する。
【0007】
したがって、この特許文献1の製造方法によれば、上述のように、残留カーボン量を550〜1100ppmの範囲に制御することで、焼成時に、内部導体とセラミック本体との間の接合強度を低減させ、内部導体の幅方向の少なくとも一端における、内部導体とその周囲のセラミックとの間に空隙を設けることが可能になり、セラミックに生じる残存応力を低減して、機械的強度に優れたセラミック電子部品を製造することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−159301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1のセラミック電子部品の製造方法のように、仮焼合成温度、あるいは、PVA添加量を制御することによって、仮焼合成後の粉末に残留するカーボン量を制御するようにした場合、仮焼合成粉末に残存するカーボン量が安定しにくいという問題点がある。
【0010】
また、特許文献1では、フェライトの原料粉末、水、ポリカルボン酸アンモニウム系分散剤、分散助剤であるポリビニルアルコール(PVA)をボールミルで湿式混合して分散させた後、乾燥し、600℃〜700℃で仮焼合成するようにしており、仮焼工程が必須の工程となるため、製造プロセスが複雑化して生産性が低下したり、仮焼工程で消費される熱エネルギーなどによりランニングコストが増大したりするという問題点がある。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するものであり、焼成工程で、内部導体とその周囲のフェライトとの間の接合強度を調整して、残存応力を低減し、機械的強度を確保しつつ、良好な特性を備えたフェライト積層電子部品を効率よく製造することが可能なフェライト積層電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のフェライト積層電子部品の製造方法は、
内部導体をフェライト積層体の内部に備えたフェライト積層電子部品の製造方法であって、
フェライト原料であるFe23粉末およびNiO粉末と、有機バインダーとを含む配合物を用いてグリーンシートを作製するグリーンシート作製工程と、
前記グリーンシートを用いて、未焼成の内部導体を内蔵するグリーンシート積層体を形成する積層工程と、
所定の条件で熱処理して、前記グリーンシート積層体の脱脂を行う脱脂工程と、
前記グリーンシート積層体を脱脂することにより得られる脱脂後積層体を焼成する焼成工程と
を具備するとともに、
前記Fe23粉末として、平均粒径が0.1〜0.5μm、比表面積が10m2/g以上のFe23粉末を用いること
を特徴としている。
【0013】
また、本発明のフェライト積層電子部品の製造方法においては、前記脱脂工程において、前記脱脂後積層体中の残留カーボン量が、重量基準で550〜1000ppmとなるように脱脂を行うことが好ましい。
【0014】
また、本発明のフェライト積層電子部品の製造方法においては、前記グリーンシートの作製に用いられる前記配合物として、仮焼工程を経ていない配合物を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のフェライト積層電子部品の製造方法は、フェライト原料であるFe23粉末として、平均粒径が0.1〜0.5μm、比表面積が10m2/g以上のFe23粉末を用いている。この平均粒径が0.1〜0.5μm、比表面積が10m2/g以上という要件を満たすFe23粉末は、粒子表面に凹凸を有する比表面積の大きいものであることから、脱脂工程で、凹凸のあるFe23粒子内に有機バインダーに由来するカーボンが閉じ込められ、このカーボンが焼成工程において、フェライトが焼成される温度域で放出されることから、内部導体とその周囲のフェライトとの接合の強さが和らげられることになる。その結果、内部導体の周囲のフェライトに残留する応力が緩和され、特性の良好なフェライト積層電子部品を得ることが可能になる。
【0016】
また、脱脂後積層体中の残留カーボン量が重量基準で550〜1000ppmとなるように脱脂を行うことにより、内部導体とその周囲のフェライトとの接合強度を適度に和らげて、内部導体の周囲のフェライトに残留する応力を緩和し、必要な機械的強度を確保しつつ、良好な特性を備えたフェライト積層電子部品を得ることが可能になる。
【0017】
また、グリーンシートの作製に用いられる配合物として、仮焼工程を経ていない配合物を用いることにより、グリーンシートの作製に用いられる配合物を得るのに、上述の特許文献1の方法の場合には必須であった仮焼工程を不要にすることが可能になり、生産性を向上させることができる。
【0018】
なお、本発明では、Fe23粉末として、平均粒径が0.1〜0.5μm、比表面積が10m2/g以上のFe23粉末を用いているので、特に仮焼工程を経ていない配合物を用いた場合にも、脱脂工程でFe23粒子内に確実に有機バインダーに由来するカーボンが閉じ込められることになり、焼成工程において十分な残留応力の緩和効果を得ることができる。
【0019】
すなわち、本発明によれば、特許文献1の方法の場合には必須であったフェライト原料の仮焼工程を必要とせずに、グリーンシートを作製する際に成形のための必要性からフェライト原料に添加される有機バインダーを残留カーボン源として利用することが可能になり、効率よく、必要な機械的強度と、良好な特性を備えたフェライト積層電子部品を製造することができる。
【0020】
なお、本発明において用いられているFe23粉末は、比表面積が大きくて反応性が高いことから、脱脂工程で取り込まれた残留カーボンが、焼成工程で十分に放出されるとともに、その温度域で焼結することから、十分な応力緩和を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例において、脱脂後積層体(表2の試料番号1および2の各試料)についてTG−MS法(熱重量−質量分析法)を用いて、200〜1000℃の温度範囲で離脱するカーボンの量を測定した結果を示す図である。
【図2】表1のNo.2のFe23粉末のSEM写真を示す図である。
【図3】本発明の実施例において作製した積層型インダクタの構成を示す断面図である。
【図4】表2の試料番号1および2の脱脂後積層体(試料)を焼成することにより得た、焼成済みの試料1および2のインピーダンス特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施例を示して、本発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0023】
フェライトの出発原料として、SEM観察により求めた平均粒子径が0.1〜0.5μmで、表1に示すように、比表面積が6.2〜19.2m2/gのFe23粉末(表1のNo.1〜4のFe23粉末)を用意した。なお、表1のNo.1のFe23粉末は、平均粒径は0.1〜0.5μmであるが、比表面積が6.2m2/gと小さい、本発明の要件を備えていない比較用のFe23粉末であり、No.2〜4のFe23粉末は、平均粒径が0.1〜0.5μm、比表面積が10m2/g以上という本発明の要件を備えているFe23粉末である。また、平均粒子径はSEM画像を画像解析し、円相当径の平均値を求め、これを平均粒子径とした。また、比表面積は、マウンテック社のBET計にて測定した。
【0024】
【表1】

【0025】
また、フェライトの他の出発原料として、ZnO、NiO、CuOの各粉末もそれぞれ用意した。
【0026】
それから、これらの原料粉末を、
Fe23=49.0mol%、
ZnO =29.0mol%、
NiO =14.0mol%、
CuO =8.0mol%、
となるように秤量した。
【0027】
次に、秤量物を、粉砕媒体としての直径1mmのPSZメディアとともにボールミルに投入し、さらに所定量の分散剤と、溶剤(分散媒)としての純水とを添加した後、ボールミルを所定時間回転させ、原料を十分に混合、粉砕した。
それから、得られたスラリーを排出し、スプレー乾燥機で乾燥することにより、フェライト原料粉末(生調合原料)を得た。
【0028】
得られたフェライト原料粉末を、再び直径1mmのPSZメディアとともにボールミルに投入し、さらに所定量のポリビニルブチラール(バインダー)と、ジブチルフタレート(可塑剤)と、ポリカルボン酸アンモニウム塩(分散剤)と、エタノール(溶媒)とを加えて混合することにより、フェライト原料スラリーを得た。
【0029】
次に、ドクターブレード法を用いて、厚さが50μmとなるようにフェライト原料スラリーをシート状に成形し、これを50mm×50mmの大きさに打ち抜くことにより、グリーンシート(フェライトグリーンシート)を作製した。バインダーは、脱脂後に残留するカーボンの原料となるものであり、その添加量は12〜18重量%の範囲とすることが好ましい。ただし、シート成形が可能な範囲であることが必要となる。
【0030】
それから、内部導体を形成するための導電ペーストとして、所定量のエチルセルロース樹脂をテルピネオールに溶解させて有機ビヒクルを作製し、これに所定量のAg粒子を加え、3本ロールミルで混練することにより、Agペーストを作製した。
【0031】
そして、レーザ加工機を用いて、上述のフェライトグリーンシートの所定位置にビアホールを形成した後、Agペーストをスクリーン印刷することにより、ビアホールにAgペーストを充填して、ビアホール導体を形成するとともに、フェライトグリーンシートの表面に所定形状の内部導体パターン(コイル用導体パターン)を形成した。なお、このコイル用導体パターンおよびビアホール導体は積層後に内部導体となる。
【0032】
次いで、コイル用導体パターンおよびビアホール導体の形成されたフェライトグリーンシートと、それらの形成されていないフェライトグリーンシートとを所定の順序で積層することにより、コイル用導体パターンおよびビアホール導体の形成されたフェライトグリーンシートが所定枚数積層され、その上下両主面側にコイルパターンの形成されていないフェライトグリーンシートが配設された構造を有する未焼成の積層体を形成した。
【0033】
それから、上記未焼成の積層体を、温度60℃、圧力100MPaの条件で圧着し、圧着ブロックを作製した。
【0034】
そして、この圧着ブロックを所定のサイズに切断することにより、表1におけるNo.1〜4の各Fe23粉末を用いたグリーンシート積層体を作製した。
【0035】
[脱脂および脱脂後の試料の残留カーボン量の測定]
それから、作製した生のグリーンシート積層体を、大気中400℃で4時間保持して脱脂した。そして、得られた脱脂後積層体(表2の試料番号1および2の各試料試料)について、TG−MS法(熱重量−質量分析法)を用いて、200〜1000℃の温度範囲で離脱するカーボン(残留カーボン)の量を測定した。その結果を、表2および図1に示す。なお、表2の試料番号1の試料は、本発明の要件を備えていない、表1のNo.1のFe23粉末を用いた試料であり、試料番号2〜4は、本発明の要件を備えている、表1のNo.2〜4のFe23粉末を用いた試料である。
【0036】
【表2】

【0037】
表2に示すように、試料番号1の本発明の要件を満たしていない、表1のNo.1のFe23粉末を用いた試料番号1の試料(脱脂後積層体)の残留カーボン量は50ppmであるのに対し、試料番号2〜4の、本発明の要件を満たす、表1のNo.2〜4のFe23粉末を用いた試料番号2〜4の試料(脱脂後積層体)の場合、残留カーボン量は550〜980ppmと多くなっている。
【0038】
また、本発明の要件を満たす、表1のNo.2のFe23粉末を用いた試料番号2の試料の場合、図1に示すように、約700℃付近から急激にカーボンが離脱することが確認された。なお、試料番号3および4の試料についても、同様の挙動を示すことを確認している。
【0039】
一方、本発明の要件を満たさない、表1のNo.1のFe23粉末を用いた試料番号1の試料の場合、図1に示すように、約700℃付近からのカーボンの離脱現象はほとんど認められなかった。これは、表1のNo.1のFe23粉末を用いた試料番号1の試料(脱脂後積層体)の場合、カーボンがFe23粒子内にほとんど閉じ込められていないため、約700℃以上に加熱した場合にもカーボンの離脱現象がほとんど認められなかったものと考えられる。
なお、表1のNo.2のFe23粉末(すなわち、比表面積が10.2m2/gであるFe23粉末)のSEM写真を図2に示す。
【0040】
試料番号2〜4の試料において用いた、表1のNo.2〜4のFe23粉末は、Fe23粒子の表面に凹凸を有する、比表面積が10m2/g以上のFe23粉末である。そして、これらのNo.2〜4のFe23粉末を用いた試料番号2〜4の試料においては、Fe23粒子表面の凹凸が400℃付近でネッキングを起こし、Fe23粒子表面が平滑化する際に、バインダーに由来するカーボンがFe23粒子内に閉じ込められる。そして、このようにしてFe23粒子内にと閉じ込められた残留カーボンは、後述の焼成工程における700℃を超える温度で放出される。その結果、内部導体とその周囲のフェライトとの接合強度を低下させて、十分な応力緩和を行うことが可能になる。
【0041】
一方、試料番号1の試料において用いたNo.1のFe23粉末は、比表面積が6.2m2/gと小さく、Fe23粒子表面に十分な凹凸を有していないことから、カーボンがほとんど閉じ込められず、したがって、後述の焼成工程で700℃を超える高温に加熱されてもほとんどカーボンが放出されることがないため、内部導体とその周囲のフェライトとの接合強度を低下させる効果はほとんど得られず、十分な応力緩和が行われることは期待できない。
【0042】
以上の結果から、平均粒子径が0.1〜0.5μmで、かつ比表面積が10m2/g以上のFe23粉末を用いることにより、脱脂時にバインダーに由来するカーボンをFe23粉末内に閉じ込めることが可能になるとともに、後述の焼成工程における700℃を超えた高温で、Fe23粉末内に閉じ込められたカーボンを効率よく放出させることが可能になり、十分な応力緩和を図ることが可能になることがわかる。
【0043】
なお、Fe23粉末の比表面積については特に上限はないが、20m2/gを超えると、シート成形時に粉末粒子の結合が十分でなくなり、シート強度が低下するので、上限は20m2/g程度とすることが好ましい。
【0044】
[脱脂後積層体の焼成および焼成後の試料の電気的特性]
上述のようにして脱脂することにより得た脱脂後積層体を、焼成炉に入れ、900℃で2時間保持して焼成した。得られた焼成済みの積層体の端面にAgを主成分とする外部電極形成用のペーストを塗布して、乾燥させた後、750℃で焼きつけて外部電極を形成することにより、図3に示すような構造を有する積層型インダクタ(試料)を得た。
【0045】
なお、この図3の積層型インダクタ10は、複数の磁性体セラミック層1と、磁性体セラミック層1を介して積層された複数の内部導体(コイル導体)2とが、ビアホール導体(図示せず)により層間接続されることにより形成されたコイル4が、積層体(チップ素子)5の内部に配設され、かつ、積層体(チップ素子)5の両端部には、コイル4の両端部4a,4bと導通するように一対の外部電極6a,6bが配設された構造を有している。
【0046】
それから、外部電極を形成した後の試料について、インピーダンスアナライザ(アジレント・テクノロジー社製、HP4291A)を用いてインピーダンス特性を測定した。
【0047】
表2の試料番号1の試料(脱脂後積層体)を焼成することにより得た、焼成済みの試料(積層型インダクタA)および、表2の試料番号2の試料(脱脂後積層体)を焼成することにより得た試料(積層型インダクタB)のインピーダンス特性を図4に示す。
【0048】
図4に示すように、本発明の実施例にかかる積層型インダクタ(フェライト積層電子部品)Bの場合、十分な応力緩和がなされており、高いインピーダンスが得られることが確認された。
【0049】
一方、本願発明の要件を満たさない積層型インダクタ(フェライト積層電子部品)Aの場合、十分な応力緩和がなされておらず、本発明の要件を満たす試料2に比べて、低いインピーダンスしか得られないことが確認された。
【0050】
なお、図4には特に示していないが、表2の試料番号3および4の脱脂後積層体を焼成することにより得た試料(積層型インダクタ)についても同様の方法でインピーダンス特性を測定したが、上記の試料2の場合に準じるインピーダンス特性が得られることが確認されている。
【0051】
上記実施例により、本発明のフェライト積層電子部品の製造方法のように、Fe23粉末として、平均粒径が0.1〜0.5μm、比表面積が10m2/g以上の、粒子表面に凹凸を有する比表面積の大きなFe23を用いるようにした場合、脱脂工程で、Fe23粒子内に確実に、有機バインダーに由来するカーボンを取り込み、その後の焼成工程での、フェライトが焼成される高い温度域でカーボンを放出させることが可能になり、ひいては、内部導体とその周囲のフェライトとの接合強度を和らげて、応力を緩和し、良好な特性を備えた積層型インダクタ(フェライト積層電子部品)が得られることが確認された。
【0052】
また、上記実施例の方法によれば、グリーンシート(フェライトグリーンシート)の作製に用いられる配合物として、仮焼工程を経ていない、Fe23粉末およびNiO粉末と、有機バインダーとを含む配合物を用いているので、グリーンシートの作製に用いられる配合物を作製するにあたって、従来技術(上述の特許文献1の方法)では必須であった仮焼工程を不要にすることが可能になり、生産性を向上させることができる。
【0053】
なお、この実施例では、積層型インダクタを例にとって説明したが、本発明は、積層型インダクタに限らず、積層型トランス、積層型LC複合部品、積層型コモンモードチョークコイルなどの種々のフェライト積層電子部品に適用することが可能である。
【0054】
本発明はその他の点においても上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 磁性体セラミック層
2 内部導体(コイル導体)
4 コイル
5 積層体(チップ素子)
4a,4b コイルの両端部
6a,6b 外部電極
10 積層型インダクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部導体をフェライト積層体の内部に備えたフェライト積層電子部品の製造方法であって、
フェライト原料であるFe23粉末およびNiO粉末と、有機バインダーとを含む配合物を用いてグリーンシートを作製するグリーンシート作製工程と、
前記グリーンシートを用いて、未焼成の内部導体を内蔵するグリーンシート積層体を形成する積層工程と、
所定の条件で熱処理して、前記グリーンシート積層体の脱脂を行う脱脂工程と、
前記グリーンシート積層体を脱脂することにより得られる脱脂後積層体を焼成する焼成工程と
を具備するとともに、
前記Fe23粉末として、平均粒径が0.1〜0.5μm、比表面積が10m2/g以上のFe23粉末を用いること
を特徴とフェライト積層電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記脱脂工程において、前記脱脂後積層体中の残留カーボン量が、重量基準で550〜1000ppmとなるように脱脂を行うことを特徴とする請求項1記載のフェライト積層電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記グリーンシートの作製に用いられる前記配合物として、仮焼工程を経ていない配合物を用いることを特徴とする請求項1または2記載のフェライト積層電子部品の製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−79913(P2012−79913A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223480(P2010−223480)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】