説明

フェンダパネル取付構造

【課題】車両上方からの荷重がフェンダパネルに作用した際、フェンダパネルとの締結部位を充分に下降させて荷重を充分に吸収できるフェンダパネル取付構造を得る。
【解決手段】フロントフェンダパネル12をエプロンアッパメンバ16に取り付けるためのブラケット60は、両脚部72に屈曲部92〜96が形成されており、僅かにジグザグに屈曲している。各屈曲部92〜96の車幅方向外側の端部にたいして車幅方向内側の端部が下方に位置するように傾斜している。このため、車両14の上方からの荷重で両脚部72が各屈曲部92〜96にて更に屈曲すると、フロントフェンダパネル12が締結されたフェンダ保持部74が車幅方向外方へ変位する。これにより、フェンダ保持部74と共にフェンダ保持部74とフロントフェンダパネル12とを締結するボルト80が下降しても、ボルト80の先端がエプロンアッパメンバ16に干渉されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前部のフェンダパネルを車両の骨格部材に取り付けるためのフェンダパネル取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、フェンダパネルが衝撃吸収具を介してフェンダシールドパネルに取り付けられた構成が開示されている。衝撃吸収具はフェンダパネルが締結固定される上面部を備えている。また、衝撃吸収具は車両の前後方向に沿った上面部の両端から車両下方へ向けて脚片が延出されており、この脚片の下端から車両前方又は後方へ延出された延長部がフェンダシールドパネルに締結固定される。上記の脚片には折曲部が設定されており、車両上方からの荷重がフェンダパネルに作用した場合には、折曲部が荷重を吸収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−178953の公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された構成では上面部とフェンダパネルとを締結するボルトは車両上下方向に上面部を貫通しており、このボルトの先端側は上面部よりも車両下方側へ突出している。このため、上記の荷重で折曲部にて脚片が屈曲して上面部が下降しても、ボルトの先端がフェンダシールドパネルに干渉されることで充分に上面部が下降できず、脚片が充分に屈曲できない。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、車両上方からの荷重がフェンダパネルに作用した際、フェンダパネルとの締結部位を充分に下降させて荷重を充分に吸収できるフェンダパネル取付構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明に係るフェンダパネル取付構造は、車両のフェンダパネルが締結固定されるフェンダ保持部と、前記フェンダ保持部における車両前後方向両端から延出されて、下端部が前記車両の骨格部材や補強部材を構成する車体側構成部材に固定された一対の脚部と、を有し、更に、車両上方から前記フェンダ保持部に付与された荷重により、前記車両の左右方向に対して前記車両の上下方向に傾斜した向きに稜線が沿い、前記車体側構成部材に対して前記車両の左右方向側方に前記フェンダ保持部を変位させる屈曲を、前記脚部に誘発させる屈曲誘発部を前記脚部に形成したブラケットを備え、前記ブラケットによって前記フェンダパネルを前記車体側構成部材に取り付けている。
【0007】
請求項1に記載の本発明に係るフェンダパネル取付構造では、ブラケットのフェンダ保持部に車両のフェンダパネルが締結固定される。また、フェンダ保持部における車両前後方向両端からは脚部がそれぞれ延出され、これらの脚部の下端部が車両の骨格部材や補強部材を構成する車体側構成部材に固定される。これにより、フェンダパネルが車体側構成部材に取り付けられる。
【0008】
車両上方から所定の大きさ以上の荷重がフェンダパネルに作用し、更に、この荷重がフェンダパネルを介してブラケットのフェンダ保持部に付与されると、ブラケットの脚部に形成された屈曲誘発部にて屈曲が生じ、これにより、ブラケットの脚部が変形する。このように脚部が変形することによってフェンダ保持部に保持されたフェンダパネルは車両下方へ変位でき、フェンダパネルに作用した荷重の一部がブラケットの脚部の変形に供されて吸収される。
【0009】
ここで、屈曲誘発部にて生じる屈曲は、その稜線が車両の左右方向に対して車両の上下方向に傾いており、これにより、脚部の屈曲に伴い、フェンダ保持部は下降しつつ車両の左右方向に沿った車体側構成部材の側方へフェンダ保持部が変位する。このように、ブラケットが変形した際に車体側構成部材の側方へフェンダ保持部が変位することでフェンダ保持部とフェンダパネルとを締結するための締結手段(例えば、ボルト)が車体側構成部材に干渉されないため、車両上方からフェンダパネルに付与された荷重によりフェンダ保持部は充分に下降でき、ブラケットの脚部は充分に変形できる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係るフェンダパネル取付構造は、車両上方からの荷重がフェンダパネルに作用した際、フェンダパネルとの締結部位を充分に下降させて荷重を充分に吸収できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態に係るフェンダパネル取付構造を適用した車両の要部を拡大した斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るフェンダパネル取付構造を適用した車両の要部を拡大した正面断面図である。
【図3】車両上方からの荷重でブラケットが変形している状態を示す図1に対応した斜視図である。
【図4】車両上方からの荷重でブラケットが変形した状態を示す図3に対応した斜視図である。
【図5】車両上方からの荷重でブラケットが変形した状態を示す図2に対応した正面断面図である。
【図6】ブラケットの展開図である。
【図7】ブラケットと車両構成部材の関係を示す概略的な平面図で、(A)はブラケットを車両構成部材に取り付けた状態を示し、(B)はブラケットが変形した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本実施の形態の構成>
図1には、本発明の一実施の形態に係るフェンダパネル取付構造を適用してフロントフェンダパネル12を組み付けた車両14の要部の構成の拡大斜視図が示されている。また、図2には、本発明の一実施の形態に係るフェンダパネル取付構造を適用してフロントフェンダパネル12を組み付けた車両14の要部の構成の拡大正面断面が示されている。なお、図1及び図2を含む各図において矢印FRは車両14の前後方向前方、矢印FRは車両14の上下方向上方、矢印OUTは車両14の幅(左右)方向外方をそれぞれ示している。
【0013】
図1及び図2に示されるように、車両14はエプロンアッパメンバ16を備えている。エプロンアッパメンバ16は上壁部20と内壁部22とを含めて構成されたアッパメンバ18を備えている。アッパメンバ18の上壁部20は長手方向が車両14の前後方向に沿い幅方向が車両14の幅(車両14の左右)方向に沿った平板状に形成されている。これに対してアッパメンバ18の内壁部22は長手方向が車両14の前後方向に沿い幅方向が車両14の上下方向に沿った平板状に形成され、その幅方向上端部は上壁部20の車両14の幅方向内方側の端部に繋がり、アッパメンバ18は全体的に正面視で鉤状に屈曲した板状とされている。
【0014】
また、エプロンアッパメンバ16は下壁部26と外壁部28とを含めて構成されたロアメンバ24を備えている。ロアメンバ24の下壁部26は長手方向が車両14の前後方向に沿い幅方向が車両14の幅(車両14の左右)方向に沿った平板状に形成されている。これに対してロアメンバ24の外壁部28は長手方向が車両14の前後方向に沿い幅方向が車両14の上下方向に沿った平板状に形成され、その幅方向下端部は下壁部26の車両14の幅方向外方側の端部に繋がり、ロアメンバ24は全体的に正面視で鉤状に屈曲した板状とされている。
【0015】
また、車両14の幅方向に沿った内方側の下壁部26の端部からは車両14の下方へ向けてフランジ部30が延出されている。フランジ部30は、車両14の幅方向に沿った内壁部22の外側で、内壁部22の下端部近傍に隣接するように配置される。また、車両14の上下方向に上方側の下壁部26の端部からは車両14の幅方向外方へ向けてフランジ部32が延出されている。フランジ部32は、車両14の上下方向に沿った上壁部20の下側で上壁部20の幅方向外側端部近傍に隣接するように配置される。上記の内壁部22の下端部近傍とフランジ部30とは車両14の前後方向に沿った適宜位置で溶接されて一体に結合され、上記の上壁部20の幅方向外側端部近傍とフランジ部32とは車両14の前後方向に沿った適宜位置で溶接されて一体に結合される。これにより、エプロンアッパメンバ16の断面形状は閉じた矩形(長方形)状となっている。
【0016】
このエプロンアッパメンバ16の車幅方向外方には上記のフロントフェンダパネル12が配置されている。フロントフェンダパネル12は外側縦壁部42を備えている。外側縦壁部42はその表面が車両14の意匠面を形成する。外側縦壁部42の上端側は、車両14のエンジンルームを上方から覆うエンジンフード44(図2参照)の外周部(車両14の幅方向外側のエンジンフード44の端部)に接近するように車両14のへ幅方向内方側向けて湾曲している。
【0017】
外側縦壁部42の上端部からは車両14の下方へ向けて垂下部46が延出されている。この垂下部46の下端部からは車両14の幅方向内方側へ向けて取付部48が延出されている。取付部48はその厚さ方向が概ね車両14の上下方向に沿った板状に形成されており、車両14の上下方向に沿って上記の上壁部20と対向している。
【0018】
このフロントフェンダパネル12の取付部48とアッパメンバ18(エプロンアッパメンバ16)の上壁部20との間にはブラケット60が設けられている。ブラケット60は一対の車体側固定片62を備えている。車体側固定片62は厚さ方向が車両14の上下方向に沿った平板状に形成されており、車両14の前後方向に沿って所定の間隔をおいて上壁部20上に配置されている。
【0019】
図6の展開図に示されるように、車体側固定片62の各々にはその厚さ方向に貫通した円孔64が形成されており、この円孔64を締結手段としてのボルト66が貫通している。ボルト66は上壁部20に形成された円孔(図示省略)を通過して、上壁部20の車体側固定片62とは反対側で上壁部20の円孔に対応して上壁部20に設けられたウエルドナット70(図1及び図2参照)に締結固定されている。これにより、両車体側固定片62が上壁部20に対して一体的に固定されている。
【0020】
図1及び図2に示されるように、車両14の前後方向に沿って両車体側固定片62の互いに対向する側の端部からは脚部72が概ね車両14の上方へ向けて立設されている。この脚部72の上端部は平板状に形成されたフェンダ保持部74により繋がっている。フェンダ保持部74は厚さ方向が概ね車両14の上下方向に沿った平板状に形成されており、その厚さ方向上面は取付部48(フロントフェンダパネル12)の下面に隣接した状態で対向している。このため、車両14の幅方向に沿って見たブラケット60の全体形状は、車両14の下方へ向けて開口したハット形状となっている。
【0021】
図6に示されるように、車両14の前後方向及び幅方向の各々に沿ったフェンダ保持部74の略中央には円孔76が形成されている。図2に示されるように、円孔76に対応してフロントフェンダパネル12の取付部48には円孔78が形成されている。取付部48のフェンダ保持部74とは反対側(すなわち、取付部48の上方)からは締結手段としてのボルト80が円孔78を貫通している。円孔78を貫通したボルト80は円孔76を貫通して、その先端側がフェンダ保持部74の下方へ突出している。フェンダ保持部74の下方へ突出したボルト80にはナット82が螺合しており、これにより、フロントフェンダパネル12がブラケット60に締結固定され、ひいては、エプロンアッパメンバ16に固定されている。
【0022】
図2に示されるように、上記のブラケット60はその厚さ方向に沿って見た形状が、エプロンアッパメンバ16の前後方向に長手方向が沿う長方形の平板により形成されており、更に、ブラケット60を構成する車体側固定片62や脚部72、フェンダ保持部74の各々も長方形状とされ、車体側固定片62と脚部72との境界部分及び脚部72とフェンダ保持部74との境界部分の各々でブラケット60の幅方向を軸方向とする軸周りに平板状のブラケット60を屈曲させることで上記のようなハット形状に形成されている。
【0023】
さらに、図1及び図2に示されるように、脚部72には屈曲誘発部としての屈曲部92、94、96が形成されている。屈曲部92〜96の各々は脚部72の長手方向(すなわち、ブラケット60の長手方向で、ブラケット60が上壁部20に固定された状態では車両14の上下方向)に沿った脚部72の中間部で、脚部72の長手方向に所定の間隔をおいて形成されており、両脚部72は屈曲部92〜96において僅かに屈曲されている。
【0024】
また、屈曲部92及び屈曲部96においては、車両14の前後方向に沿ったブラケット60の外方に張り出すように脚部72が屈曲しており、これらの屈曲部92と屈曲部96との間の屈曲部94においては、車両14の前後方向に沿ったブラケット60の内方に張り出すように脚部72が屈曲している。このため、脚部72の幅方向に脚部72を見ると、脚部72が僅かにジグザグに屈曲している。
【0025】
また、図6に示されるように、ブラケット60の展開状態で屈曲部92〜96の各々は、脚部72の幅方向一方の側(すなわち、ブラケット60が上壁部20に固定された状態では車両14の幅方向外側)の端部に対し、他方の側(すなわち、ブラケット60が上壁部20に固定された状態では車両14の幅方向内側)の端部がブラケット60の長手方向外側に傾斜している。このため、図1及び図2に示されるように、ブラケット60が上壁部20に固定された状態で屈曲部92〜96の各々は、幅方向一端側に対して幅方向他端側が車両14の下方側へ傾斜している。
【0026】
しかも、図6に示される脚部72の幅方向に対する屈曲部92の傾斜角度θと、脚部72の幅方向に対する屈曲部96の傾斜角度θとの和は、脚部72の幅方向に対する屈曲部94の傾斜角度θに等しくなるように屈曲部92〜96の各々の傾斜角度θ〜θが設定されている。
【0027】
さらに、車体側固定片62の脚部72側の端部における車体側固定片62の幅方向一端部から屈曲部92の幅方向一端部までの長さをL、屈曲部92の幅方向一端部から屈曲部94の幅方向一端部までの長さをL、屈曲部94の幅方向一端部から屈曲部96の幅方向一端部までの長さをLとした場合、屈曲部96の幅方向一端部からフェンダ保持部74の脚部72側の端部におけるフェンダ保持部74の幅方向一端部までの長さをLは以下の式(1)を満足するように各寸法L〜Lが設定されている。
【0028】
=L−L・cos2θ+L・cos2θ・・・(1)
また、図6に示されるフェンダ保持部74の幅方向に沿ったフェンダ保持部74の幅方向他方の側(すなわち、ブラケット60が上壁部20に固定された状態では車両14の幅方向内側)の端部からボルト80の中心までの長さをW、図7の(A)に示される上壁部20にブラケット60を固定した状態でのフェンダ保持部74の幅方向他端部から上壁部20の幅方向他端部(すなわち、車両14の幅方向外方側の上壁部20の端部)までの長さをW、図6に示されるボルト80の直径寸法をRとした場合、以下の式(2)を満足するように上記の各傾斜角度θ及びθと、寸法L、Lとが設定されている。
【0029】
−W+(R/2)≦L・sin2θ+L・sin2θ・・・(2)
<本実施の形態の作用、効果>
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0030】
本実施の形態では、上記のようにブラケット60の各車体側固定片62がボルト66によってアッパメンバ18(エプロンアッパメンバ16)の上壁部20に締結固定され、フロントフェンダパネル12の取付部48がボルト80によってブラケット60のフェンダ保持部74に締結固定される。これによって、フロントフェンダパネル12がエプロンアッパメンバ16に取り付けられる。
【0031】
一方、エプロンアッパメンバ16に取り付けられたフロントフェンダパネル12に対して車両14の上方側から所定の大きさ以上の荷重が作用すると、脚部72において予め僅かに屈曲されている屈曲部92〜96に応力が集中し、図3に示されるように、これらの屈曲部92〜96において脚部72が更に屈曲する。このようにして脚部72が屈曲することで、フェンダ保持部74はエプロンアッパメンバ16の上壁部20に接近するように下降でき、しかも、屈曲部92〜96における脚部72の更なる屈曲に上記の荷重の一部が供される。これにより、上記の荷重の一部を吸収できる。
【0032】
ところで、上壁部20にブラケット60が取り付けられた状態で、屈曲部92〜96の各々は、車両14の幅方向外方側よりも内方側が車両14の下方に位置するように傾斜している。このため、屈曲部92において脚部72が更に屈曲すると、屈曲部92よりも車体側固定片62側に対して屈曲部92よりも屈曲部94側が、車両14の前後方向に対して車両14の幅方向外方へ傾斜する。
【0033】
また、同様に屈曲部94及び屈曲部96において脚部72が更に屈曲すると、屈曲部94よりも屈曲部92側に対して屈曲部94よりも屈曲部96側が、車両14の前後方向に対して車両14の幅方向外方へ傾斜し、屈曲部96よりも屈曲部94側に対して屈曲部96よりもフェンダ保持部74側が、車両14の前後方向に対して車両14の幅方向外方へ傾斜する。
【0034】
以上のような屈曲部92〜96での屈曲が脚部72に生じることで、フェンダ保持部74は車両14の幅方向外方へ漸次変位する。ここで、本実施の形態では、上記の各寸法L〜L及び各傾斜角度θ〜θの各々が、上記の式(2)を満足するように設定されている。このため、脚部72において屈曲部92〜96の各々を境とする両側が互いの厚さ方向に沿って重なるように脚部72が屈曲部92〜96の各々で屈曲すると、フェンダ保持部74に形成された円孔78が、車両14の幅方向外方側の上壁部20の端部よりも更に車両14の幅方向外方側に移動する。
【0035】
このように、円孔78の位置が上壁部20よりも車両14の幅方向外側に変位することで、図4、図5、図7(B)に示されるように、脚部72にて上記の屈曲が生じ、円孔78を貫通したボルト80の先端部がフェンダ保持部74と共に下降しても、ボルト80の先端部が上壁部20に干渉されない。したがって、フェンダ保持部74は充分に下降でき、脚部72は屈曲部92〜96において充分に屈曲できる。これにより、上記の荷重が作用することでフロントフェンダパネル12が下方へ変位するように変形した際の変形ストロークを充分に確保できると共に、屈曲部92〜96において脚部72が屈曲することによる荷重の吸収を充分に確保できる。
【0036】
さらに、本実施の形態では、傾斜角度θと傾斜角度θとの和が傾斜角度θに等しくなるように各傾斜角度θ〜θが設定されているので、上記のように脚部72が屈曲しても、フェンダ保持部74の長手方向が車体側固定片62の長手方向、すなわち、車両14の前後方向に沿う。しかも、上記の各寸法L〜L及び各傾斜角度θ〜θの各々が、上記の式(1)を満足するように設定されているため、上記の屈曲が生じた際に、フェンダ保持部74の長手方向両側方で寸法的な過不足が生じない。このため、屈曲部92〜96における脚部72の屈曲を円滑に生じさせることができる。
【0037】
なお、本実施の形態では、屈曲部92〜96にて脚部72が更に屈曲することでフェンダ保持部74が車両14の幅方向外方側に移動する構成である。しかしながら、本発明は、脚部72が屈曲してフェンダ保持部74が下降した際に、円孔78を貫通したボルト80の先端部が上壁部20に干渉されなければよい。したがって、この観点からすれば、屈曲部92〜96にて脚部72が更に屈曲することでフェンダ保持部74が車両14の幅方向内方側に移動する構成であってもよい。
【0038】
因みに、このように、フェンダ保持部74が車両14の幅方向内方側に移動させるように脚部72を屈曲させるには、各屈曲部92〜96における脚部72の幅方向一方の側(すなわち、ブラケット60が上壁部20に固定された状態では車両14の幅方向外側)を、他方の側(すなわち、ブラケット60が上壁部20に固定された状態では車両14の幅方向内側)をブラケット60の長手方向内側に傾斜させる。すなわち、ブラケット60が上壁部20に固定された状態で屈曲部92〜96の幅方向一端側に対して幅方向他端側が車両14の上方側へ傾斜するように屈曲部92〜96を設定すればよい。
【0039】
また、本実施の形態では、脚部72に3箇所の屈曲部92〜96を設定した構成であったが、脚部72に設定される屈曲部92〜96のような屈曲部の数に関しては何ら限定されるものではなく、したがって、例えば、屈曲部の数は4本以上であってもよい。
【0040】
さらに、本実施の形態では、車両14の上方からの荷重がフロントフェンダパネル12に作用する前の状態において、屈曲部92〜96の各々で脚部72が僅かに屈曲しており、これにより、上記の荷重が作用した場合に屈曲部92〜96にて脚部72に屈曲を生じさせる構成である。
【0041】
しかしながら、本発明の観点からすれば、上記の荷重が作用した場合にこれまでに説明したような屈曲が脚部72に生じさえすればよい。したがって、車両14の上方からの荷重がフロントフェンダパネル12に作用する前の状態で屈曲部92〜96の各々で脚部72が僅かに屈曲していなくても、上記の荷重が作用した場合に屈曲部92〜96の各々に対応する箇所で脚部72に屈曲が生じるように、屈曲部92〜96の各々に対応する箇所で脚部72に機械的強度を低く設定してもよい。
【符号の説明】
【0042】
12 フロントフェンダパネル
14 車両
16 エプロンアッパメンバ(車体構成部材)
60 ブラケット
72 脚部
74 フェンダ保持部
92 屈曲部(屈曲誘発部)
94 屈曲部(屈曲誘発部)
96 屈曲部(屈曲誘発部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフェンダパネルが締結固定されるフェンダ保持部と、
前記フェンダ保持部における車両前後方向両端から延出されて、下端部が前記車両の骨格部材や補強部材を構成する車体側構成部材に固定された一対の脚部と、
を有し、更に、車両上方から前記フェンダ保持部に付与された荷重により、前記車両の左右方向に対して前記車両の上下方向に傾斜した向きに稜線が沿い、前記車体側構成部材に対して前記車両の左右方向側方に前記フェンダ保持部を変位させる屈曲を、前記脚部に誘発させる屈曲誘発部を前記脚部に形成したブラケットを備え、
前記ブラケットによって前記フェンダパネルを前記車体側構成部材に取り付けたフェンダパネル取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−195193(P2010−195193A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42406(P2009−42406)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】