説明

フォトマスクの製造方法、パターン転写方法及び表示装置の製造方法

【課題】被加工体に微細なピッチ幅のライン・アンド・スペース・パターンを形成する場合であっても、追加投資を殆ど必要とせずにパターニングを行う。
【解決手段】被加工体をエッチングする際のエッチング条件に基づくサイドエッチング幅αを設定し、膜パターンのライン幅W、スペース幅Wのそれぞれと、サイドエッチング幅αとに基づき、レジストパターンのライン幅Rとスペース幅Rとを設定し、決定したライン幅Rとスペース幅Rをもつレジストパターンに基づき、露光の際の露光条件、及び転写用パターンのライン幅Mとスペース幅Mを決定し、かつ、転写用パターンのライン幅Mは決定したライン幅Rと異なり、転写用パターンのスペース幅Mは決定したスペース幅Rと異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶表示装置等のフラットパネルディスプレイ(Flat Panel Display:以下FPDと呼ぶ)等の製造に用いられるフォトマスクの製造方法、パターン転写方法及び表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、液晶表示装置に採用されている方式として、VA(Vertical Alignment)方式、IPS(In Plane Switching)方式などがある。これらの方式を適用することにより、液晶の反応が速く、十分な視野角を与える優れた動画を提供できる。また、これらの方式を適用した液晶表示装置の画素電極部には、透明導電膜によるライン・アンド・スペースのパターン(ライン・アンド・スペース・パターン)を用いることによって、応答速度、視野角の改善を図ることができる。
【0003】
近年、液晶の応答速度および視野角を更に向上させるために、ライン・アンド・スペース・パターンの線幅(CD(Critical Dimension))を微細化した画素電極のニーズがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−206346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、液晶表示装置の画素部等のパターンを形成するには、フォトリソグラフィ工程が実施されている。フォトリソグラフィ工程では、エッチングされる被加工体上に形成されたレジスト膜に対して、フォトマスクを用いて所定のパターンを転写し、該レジスト膜を現像してレジストパターンを形成した後、該レジストパターンをマスクとして被加工体のエッチングを行う。
【0006】
例えば、上記の液晶表示装置においては、透明導電膜にライン・アンド・スペース・パターンを形成したもの(くし型の画素電極など)を用いる場合があり、これを形成するためのフォトマスクとしては、いわゆるバイナリマスクが用いられている。バイナリマスクは、透明基板上に形成された遮光膜をパターニングすることにより、光を遮光する遮光部(黒)と、光を透過する透光部(白)からなる2階調のフォトマスクである。バイナリマスクを用いてライン・アンド・スペース・パターンを形成する場合には、透明基板上に形成されるラインパターンを遮光部で形成し、スペースパターンを透光部で形成したバイナリマスクを用いる。
【0007】
ところで、こうしたライン・アンド・スペース・パターンのピッチ幅を従来以上に微細に形成したいというニーズがある。例えば、VA方式の液晶表示装置において、透明導電膜による画素電極のピッチ幅を微細化すると、液晶表示装置においては透過率が向上し、バックライトの照度を削減しつつ明るい画像を得ることができるメリットや、画像のコントラスを向上できるメリットが得られる。なお、ピッチ幅はライン幅とスペース幅との合計であるから、ピッチ幅を微細化すると、ライン及び/またはスペースの幅を微細化することとなる。
【0008】
また、VA方式以外、例えばIPS方式においても、微細化するライン・アンド・スペース・パターンを形成できることへの期待は大きい。更に、上記用途以外にも、表示装置の配線パターンなどに、従来以上に微細なライン・アンド・スペース・パターンを用いるニーズは生じている。
【0009】
ところが、フォトマスクに形成するライン・アンド・スペース・パターンのピッチ幅を小さくすることには、以下の課題がある。フォトマスクのライン・アンド・スペース・パターンを介して、被加工体上に形成されたレジスト膜に、フォトマスクの透過光を照射する場合、ピッチ幅が小さいと、これに応じて光が透過するスペース幅が小さいものとなり、更には、光の回折の影響が顕著になってしまう。その結果、レジスト膜に照射される透過光の光強度の明暗の振幅が小さくなり、レジスト膜に照射されるトータルの透過光量も減少してしまう。レジスト膜をポジ型フォトレジストで形成した場合、光があたることにより反応し、該レジスト膜の溶解性が上がり、その部分が現像液によって除去されるのであるが、除去しようとする部分に照射される光量が減少することは、所望のパターン幅が得られないことを意味する。
【0010】
更に、フォトマスクの転写用パターンとして形成するライン・アンド・スペース・パターンの寸法設計には、後述するサイドエッチング幅を考慮する必要がある。すなわち、被加工体をエッチング加工する際に、サイドエッチングによって生じるライン部の寸法減少分を考慮し、この減少分に相当する寸法を、あらかじめフォトマスクのラインパターンに付加しておくことが必要となる(本願では、この付加分をサイドエッチング幅と呼ぶが、詳細は後述する)。特にウェットエッチングを適用する場合に、この寸法変化分は看過できない。
【0011】
なお、このために付加するべき寸法は、ピッチ幅が小さくなっても同等であるから、ライン・アンド・スペース・パターンが微細化してピッチ幅が減少するに従い、転写用パターンの開口面積が減少することになる。すなわち、後述する転写用パターンのライン幅Mに対する、スペース幅Mの割合(M/M)が小さくなる。
【0012】
こうした理由のため、微細なライン・アンド・スペース・パターンを有するフォトマスクを用いて露光すると、被加工体に到達する透過光の光量が低下し、光強度分布が平坦化してしまう。そして、レジスト膜を現像しても、被加工体をエッチングするためのマスクとなるレジストパターンが形成できなくなってしまう。換言すれば、ライン・アンド・スペースのピッチ幅の減少により、十分な解像度が得られないこととなる。
【0013】
この点を図1〜図3を用いて説明する。
【0014】
図1は、フォトマスク100’が備える転写用パターン102p’を例示する平面拡大図である。転写用パターン102p’は、透明基板101’上に形成された例えば遮光膜や半透光膜等の光学膜をパターニングすることで形成されている。図2は、図1に例示するフォトマスク100’を用いた表示装置の製造工程の一工程を示す概略図である。図2において、(a)はフォトマスク100’を介してレジスト膜203に露光光を照射する様子を、(b)は露光されたレジスト膜203を現像してレジストパターン203pを形成する様子を、(c)はレジストパターン203pをマスクとして用い、被加工体(基板201上に形成されたパターニング対象の薄膜)202をウェットエッチングして膜パターン202pを形成する様子を、(d)はレジストパターン203pを剥離した様子をそれぞれ示している。また、図3は、図1に例示する転写用パターン102p’のピッチ幅Pの微細化に伴い、レジスト除去不良が生じる様子を示す概略図である。
【0015】
図1には、転写用パターン102p’として形成されたピッチ幅Pが8μmであるライン・アンド・スペース・パターンの平面拡大図を例示している。ここでは、サイドエッチング幅αを0.8μmとしている。すなわち、図2(b)から図2(c)にかけて被加工体202をウェットエッチングする際、被加工体202は、エッチングマスクとなるレジストパターン203pの側面側からもエッチング液と接触し、いわゆるサイドエッチングを受けるが、これによる寸法変化分を0.8μm(片側0.4μmずつ)としている。すなわち、エッチングプロセスにおいて、0.8μm分のライン幅の減少を織り込み、予め、レジストパターンのライン幅を0.8μm分付加しておく(片側0.4μmずつ)。サイドエッチング幅αの量は、適用するエッチング条件によって変動するが、エッチング条件を固定すれば、サイドエッチング幅αは、転写用パターン102p’のピッチ幅Pには概ね影響されない。
【0016】
図1に例示する転写用パターン102p’を有するフォトマスク100’を用い、大型フォトマスク露光装置(図示しない)により、被加工体202上のレジスト膜203に露光光を照射し(図2(a))、現像したときに得られるレジストパターン203p(図2(b))の断面形状を評価した。図3は、シミュレーションにより形成したレジストパターン203pの断面形状を示している。シミュレーション条件としては、転写用パターン102p’を構成する遮光膜の光学濃度を3.0以上とし、露光装置の光学系の開口数NAを0.08とし、光学系のσ(照明光学系のNAと投影光学系のNAとの比)を0.8とし、g線/h線/i線の露光波長強度比を1:1:1とし、基板201の材料をSiOとし、レジスト膜203の材料をポジ型レジストとし、レジスト膜203の膜厚を1.5μmとした。また、転写用パターン102p’のピッチ幅Pを8μmから4μmまで1μm刻みに次第に減少させてシミュレーションを行った。なお、サイドエッチング幅を0.8μmとしたため、転写用パターン102p’のライン幅MはP/2+0.8μm、スペース幅MはP/2−0.8μmとなっている。尚、上記シミュレーション条件としては、標準的なLCD(LCD:Liquid Crystal Display)用露光機が備える性能を考慮して設定される。例えば、開口数NAは0.06〜0.10、σは0.5〜1.0の範囲とすることができる。こうした露光機は、一般に、3μm程度を解像限界としている。より広く露光機をカバーするなら、NAが0.06〜0.14、又は0.06〜0.15の範囲とすることができる。NA0.08を超える、高解像度の露光機も提案されている。
【0017】
図3においては、ピッチ幅Pを次第に小さくしていったとき(8μmから4μmまで1μm刻みに次第に減少させたとき)のレジストパターン203p形状の変化を、上から下に順に配列している。ピッチ幅Pの減少とともに、露光による光反応で生じたレジスト膜203の除去量が減少し、レジストパターン203pの起伏がなだらかになる様子が分かる。そして、ピッチ幅Pが6μm以下となったときに、レジスト除去不良が顕著となり、レジストパターン203pの隣接するライン部が互いに連結してしまっていることが分かる。この場合、係るレジストパターン203pをマスクとして用い、被加工体202をウェットエッチングしても、所望のライン・アンド・スペース・パターンを有する膜パターン202pを形成することは困難となる。これは、ピッチ幅Pを小さくすることで、転写用パターン102p’のライン幅Mに対するスペース幅Mの割合(M/M)が小さくなり、フォトマスク100’を透過してレジスト膜203に到達する露光光の照射光量が不足してしまうことが大きな一原因と考えられる。
【0018】
ところで、露光時の解像度を上げ、より微細なパターニングを行うには、従来のLSI製造用の技術等として開発されてきた種々の手段を適用することが考えられる。例えば、露光装置が備える光学系の開口数拡大、露光光の短波長化、露光光の単一波長化、フォトマスクの位相シフトマスク化などの手段を採用することが考えられる。しかし、これらの手法を採用するには、莫大な投資が必要となり、市場に望まれる製品価格との整合性がとれなくなるばかりでなく、表示装置で用いる大面積の被加工体にそのまま適用することは技術的な点でも不都合や不合理がある。
【0019】
なお、微細化したライン・アンド・スペース・パターンの転写において、上記したような透過光量の減少が問題となることに対し、例えば、フォトリソグラフィ工程における露光量を従来以上に更に増加させ、透過光の強度を増加させることも考えられるかもしれない。しかしながら、露光量を増加させるには、露光装置の光源の出力を上げたり、又は照射時間を増やしたりする必要があり、更なる設備投資や消費エネルギーの増大を招いてしまい、また、生産効率の低下の点でも不利である。
【0020】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、被加工体に微細なピッチ幅のライン・アンド・スペース・パターンを形成する場合であっても、追加投資を殆ど必要とせずにパターニングを行うことができるフォトマスクの製造方法、パターン転写方法及び表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の第1の態様は、
透明基板上に、ピッチ幅Pのライン・アンド・スペース・パターンを含む転写用パターンを有するフォトマスクの製造方法であって、
前記フォトマスクを用いた露光により、被加工体上に形成されたポジ型のレジスト膜に前記転写用パターンが転写されてレジストパターンが形成され、前記レジストパターンをマスクとして用いたエッチングにより、前記被加工体に、ライン幅W、スペース幅Wであるライン・アンド・スペースの膜パターンが形成されるフォトマスクの製造方法において、
前記被加工体をエッチングする際のエッチング条件に基づくサイドエッチング幅αを設定し、
前記膜パターンのライン幅W、スペース幅Wのそれぞれと、前記サイドエッチング幅αとに基づき、前記レジストパターンのライン幅Rとスペース幅Rとを設定し、
前記決定したライン幅Rとスペース幅Rをもつレジストパターンに基づき、前記露光の際の露光条件、及び前記転写用パターンのライン幅Mとスペース幅Mを決定し、
かつ、前記転写用パターンのライン幅Mは前記決定したライン幅Rと異なり、前記転写用パターンのスペース幅Mは前記決定したスペース幅Rと異なるフォトマスクの製造方法である。
【0022】
本発明の第2の態様は、
前記露光条件の決定に基づき、前記転写用パターンのライン幅Mとスペース幅Mとを決定する第1の態様に記載のフォトマスクの製造方法である。
【0023】
本発明の第3の態様は、
前記転写用パターンのライン幅Mとスペース幅Mとの決定に基づき、前記露光条件を決定する第1の態様に記載のフォトマスクの製造方法である。
【0024】
本発明の第4の態様は、
前記転写用パターンのライン幅Mが前記レジストパターンのライン幅Rより小さく、
前記転写用パターンのスペース幅Mが前記レジストパターンのスペース幅Rより大きい第1〜第3のいずれかの態様に記載のフォトマスクの製造方法である。
【0025】
本発明の第5の態様は、
前記転写用パターンのピッチ幅P(μm)は、前記露光に用いる光の波長の中央値をλ(nm)、前記露光に用いる露光装置の光学系の開口数をNAとしたとき、
P≦2R
を満たす(但し、R=0.61(λ/NA)×1/1000)第1〜4のいずれかの態様に記載のフォトマスクの製造方法である。
【0026】
本発明の第6の態様は、
前記ピッチ幅Pは6μm以下である第1〜5のいずれかの態様に記載のフォトマスクの製造方法である。
【0027】
本発明の第7の態様は、
前記転写用パターンは遮光膜をパターニングしてなる第1〜6のいずれかの態様に記載のフォトマスクの製造方法である。
【0028】
本発明の第8の態様は、
前記転写用パターンは半透光膜をパターニングしてなる第1〜6のいずれかの態様に記載のフォトマスクの製造方法である。
【0029】
本発明の第9の態様は、
前記転写用パターンは半透光膜をパターニングしてなり、
前記透明基板を透過する露光光と、前記透明基板及び前記転写用パターンを透過する露光光との位相差が90度以下である第1〜6のいずれかの態様に記載のフォトマスクの製造方法である。
【0030】
本発明の第10の態様は、
前記透明基板上に形成された遮光膜或いは半透光膜をフォトリソグラフィ法によりパターニングし、前記決定されたライン幅M、スペース幅Mの前記転写用パターンを形成する工程を有する第1〜9のいずれかの態様に記載のフォトマスクの製造方法である。
【0031】
本発明の第11の態様は、
第10の態様に記載の製造方法によるフォトマスクを介し、前記ポジ型のレジスト膜にi線〜g線の波長域を有する露光光を照射するパターン転写方法である。
【0032】
本発明の第12の態様は、
第10の態様に記載の製造方法によるフォトマスクを介し、前記ポジ型のレジスト膜にi線〜g線の波長域を有する露光光を照射して前記転写用パターンを転写し、前記被加工体上に前記レジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンをマスクとして用いたエッチングにより、前記被加工体に、ライン幅W、スペース幅Wであるライン・アンド・スペースの前記膜パターンを形成する工程と、を有する表示装置の製造方法である。
【0033】
本発明の第13の態様は、
ライン幅M、スペース幅M、ピッチ幅Pのライン・アンド・スペースの転写用パターンをもつフォトマスクを用い、ライン幅R、スペース幅R(ここで、R>M、R<M)、ピッチ幅Pのライン・アンド・スペースのレジストパターンを形成し、前記レジストパターンをマスクとしたエッチングを行うことにより、被加工体にライン・アンド・スペース・パターンを形成する表示装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係るフォトマスクの製造方法、パターン転写方法及び表示装置の製造方法によれば、被加工体に微細なピッチ幅のライン・アンド・スペース・パターンを形成する場合であっても、追加投資を殆ど必要とせずにパターニングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】フォトマスクが備える転写用パターンを例示する平面拡大図である。
【図2】図1に例示するフォトマスクを用いた表示装置の製造工程の一工程を示す概略図である。
【図3】図1に例示する転写用パターンのピッチの微細化に伴い、レジスト除去不良が生じる様子を示す概略図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るフォトマスクを用いた表示装置の製造工程の一工程を示すフロー図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係るフォトマスクを用いた表示装置の製造工程の一工程を示すフロー図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るフォトマスクの製造工程を示すフロー図である。
【図7】本発明の実施例1を比較例と共に示す図である。
【図8】本発明の実施例2を比較例と共に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
上記をふまえ、フォトマスクを用いた露光により、被加工体上に形成されたポジ型のレジスト膜に転写用パターンを転写してレジストパターンを形成し、レジストパターンをマスクとして用いたエッチングにより、被加工体に、ライン幅W、スペース幅Wであるライン・アンド・スペースの膜パターンを形成する工程例について説明する。
【0037】
図4は、本実施形態に係るフォトマスク100を用いた表示装置の製造工程の一工程を示すフロー図である。図4において、(a)はフォトマスク100を介してレジスト膜203に露光光を照射する様子を、(b)は露光されたレジスト膜203を現像してレジストパターン203pを形成する様子を、(c)はレジストパターン203pをマスクとして用い、被加工体(基板201上に形成されたパターニング対象の薄膜)202をウェットエッチングして膜パターン202pを形成する様子を、(d)はレジストパターン203pを剥離した様子をそれぞれ示している。
【0038】
なお、このとき、使用するフォトマスク100の転写用パターン102pのライン幅をM、スペース幅をMとし、さらに、該フォトマスク100を使用して被加工体202上に形成するレジストパターン203pのライン幅をRとし、スペース幅をRとする。以下の工程により、どのようなR、Rを用いれば、被加工体202に所望のライン・アンド・スペース・パターンを得られるか、そのためには、どのようなM、Mをもつ転写用パターン102pを用意すれば良いかを決定すればよい。
【0039】
ウェットエッチングを使用する限り、被加工体(エッチング対象の透明導電膜などの薄膜)202のライン幅はサイドエッチングの影響を受けるため、レジストパターンのライン幅Rよりも寸法が小さくなる。この寸法減少分が必ず存在するので、被加工体202がパターニングされてなる膜パターン202pにおけるライン幅Wは、レジストパターン203pのライン幅Rより小さくなる。また、膜パターン202pにおけるスペース幅Wは、レジストパターン203pのスペース幅Rより大きくなる(図4(c)参照)。
【0040】
ここで、サイドエッチングによる寸法変化分をサイドエッチング幅αとすると、以下のようになる。
膜パターン202pのライン幅W<レジストパターン203pのライン幅R(=W+α)、
膜パターン202pのスペース幅W>レジストパターンのスペース幅R(=W−α)
【0041】
そこで、フォトマスク100は、レジスト膜203に、ライン幅R、スペース幅Rをもつライン・アンド・スペースのレジストパターン203pを形成しなければならない。このとき、従来のフォトマスク100’と同様に、転写用パターン102pが備えるライン・アンド・スペース・パターンのライン幅M、スペース幅Mを、それぞれ、レジストパターン203pが備えるライン・アンド・スペース・パターンのライン幅R、スペース幅Rと同じに設定することも考えられる。
【0042】
すなわち、
転写用パターン102pのライン幅M=レジストパターン203pのライン幅R
転写用パターン102pのスペース幅M=レジストパターン203pのスペース幅R
とすることも考えられる。なお、ピッチ幅Pは、フォトマスク100の転写用パターン102p、レジストパターン203p、被加工体202が加工されてなる膜パターン202pのいずれにおいても一定である。
【0043】
ここで、得ようとする膜パターン202pのライン・アンド・スペース・パターンのピッチ幅P(すなわち、フォトマスク100の転写用パターン102pのピッチ幅P、レジストパターン203pのピッチ幅P)を微細化していくことを考える。このとき、得ようとする膜パターン202pのライン幅Wが小さくなっても、エッチング条件が一定であれば、サイドエッチング幅αの寸法は変化しない。従って、ピッチ幅Pを微細化しようとすると、レジストパターン203pのライン幅Rの寸法減少に比べて、スペース幅Rの寸法が急速に小さくなる。結果として、フォトマスク100の転写用パターン102pとして、非常にスペース幅Mの小さいライン・アンド・スペース・パターンを形成しなければならなくなる。
【0044】
ところで、フォトマスク100の転写用パターン102pは、フォトマスク100が備える透明基板101上に形成された遮光膜(例えば、露光光のi線〜g線に対して光学濃度ODが3.0以上をもつ膜)等をパターニングして形成することができるが、微細なスペース幅Mを形成することは必ずしも容易ではない。描画装置の解像限界寸法(例えば、0.5〜1.0μm)に近づき、或いは下回ってしまうからである。
【0045】
また、仮に描画装置の問題を解決し、転写用パターン102pとして、スペース幅Mが微細な(例えば1μmを下回る)ライン・アンド・スペース・パターンを形成し得たとしても、そのフォトマスク100を用いて、転写用パターン102pと同じ寸法のレジストパターン203pを形成することは非常に困難である。なぜなら、フォトマスク100のもつスペース幅Mの寸法が小さく、露光波長(一般的にはi線〜g線)にスペース幅Mが近づいてしまうため、微細スリットによる光の回折の影響が顕著になり、レジスト膜203を感光させるだけの十分な光量が透過しなくなるからである。
【0046】
結局、膜パターン202pとして得ようとするライン・アンド・スペースが微細化していくと、フォトマスク100に形成する転写用パターン102pも微細化されるため、フォトマスク100を用いた膜パターン202pの形成ができなくなってしまう。
【0047】
そこで、本発明者は、そのような微細なピッチ幅Pのライン・アンド・スペース・パターンを被加工体202に形成することができるようなフォトマスクの製造方法、パターン転写方法及び表示装置の製造方法についても、鋭意検討を行った。
【0048】
その結果、サイドエッチング幅αの存在が避けられない状況下、フォトマスク100の転写用パターン102pにおけるライン・アンド・スペース・パターン(ライン幅M、スペース幅M)を用いて、これとは異なる寸法のレジストパターン(ライン幅R、スペース幅R)203pを形成することで、上述の課題を解決可能との知見を得た。
【0049】
すなわち、
転写用パターンのライン幅M=レジストパターンのライン幅R+マスクバイアスβ
転写用パターンのスペース幅M=レジストパターンのスペース幅R−マスクバイアスβとし、
このマスクバイアスβを例えば負の値とすれば、
たとえピッチ幅Pの小さいライン・アンド・スペース・パターンを形成する場合であっても、フォトマスク100のもつ転写用パターン102pにおけるスペース幅Mを制御(例えば拡大)することができ、スペース部を透過する透過光量の低下を抑制することが可能となり、これにより上述の課題を解決可能との知見を得た。なお、マスクバイアスβとは、転写用パターン102pとレジストパターン203pとの寸法差をいい、正の値でも負の値でも良いが本発明によればゼロではない値とする。マスクバイアスβの値は、例えば露光時の照射光量(露光光の照度と照射時間との積)を調整することで制御できる。すなわち、図4においては、転写用パターン102pに遮光膜を用いた場合において、マスクバイアスβ≠0として、所望のラインアンドスペースパターンを形成できることを示す。
【0050】
以下に、上述の知見に基づいてなされた本願発明の種々の態様を示す。
【0051】
(第1の態様)
本発明の第1の態様は、
透明基板101上に、ピッチ幅Pのライン・アンド・スペース・パターンを含む転写用パターン102pを有するフォトマスク100の製造方法であって、
フォトマスク100を用いた露光により、被加工体202上に形成されたポジ型のレジスト膜203に転写用パターン102pが転写されてレジストパターン203pが形成され、レジストパターン203pをマスクとして用いたエッチングにより、被加工体202に、ライン幅W、スペース幅Wであるライン・アンド・スペースの膜パターン202pが形成されるフォトマスク100の製造方法において、
被加工体202をエッチングする際のエッチング条件に基づくサイドエッチング幅αを設定し、
膜パターン202pのライン幅W、スペース幅Wのそれぞれと、サイドエッチング幅αとに基づき、レジストパターン203pのライン幅Rとスペース幅Rとを設定し、
決定したライン幅Rとスペース幅Rをもつレジストパターン203pに基づき、露光の際の露光条件、及び転写用パターン102pのライン幅Mとスペース幅Mを決定し、
かつ、転写用パターン102pのライン幅Mは前記決定したライン幅Rと異なり、前記転写用パターンのスペース幅Mは前記決定したスペース幅Rと異なる
フォトマスクの製造方法である。
【0052】
上記において、エッチングはウェットエッチングを適用することが好ましい。そして、以下においてサイドエッチング幅αは正の値(α>0)となる。
【0053】
なお、ピッチ幅Pについては以下となる。
ピッチ幅P=膜パターンのライン幅W+スペース幅W
=レジストパターンのライン幅R+スペース幅R
=転写用パターンのライン幅M+スペース幅M
【0054】
ピッチ幅Pが例えば6μm以下となったとき、本態様による効果が顕著となる。
【0055】
(第2の態様)
サイドエッチング幅αが決定されると、これに基づき、レジストパターン203pのライン幅Rとスペース幅Rの値をどのようにする必要があるかが決定される。そして、該ライン幅Rとスペース幅Rをもつレジストパターン203pを形成するための露光条件、及び、転写用パターン102pの寸法が決定される。
【0056】
第2の態様においては、露光条件の決定に基づき、転写用パターンのライン幅Mとスペース幅Mとを決定する。すなわち、先ずは所望の露光条件(照射光量及び照射時間)を定め、その条件下で適切な転写用パターンを決定する。
【0057】
なお、露光条件が決定されると、これによりマスクバイアスβ(β≠0)が決定されることになる。マスクバイアスβは、露光シミュレーションにより見積もることができる。または、複数の露光条件を適用し、転写用パターンのライン幅M、スペース幅Mを有する複数のフォトマスク100によって転写テストを行い、得られたレジストパターン203pのライン幅R、スペース幅Rを求めることによって、相互の相関を解析しても良い。
【0058】
尚、後述するように、転写用パターン102pは、遮光膜により形成されていてもよく、半透光膜により形成されていても良い。いずれを用いるかについて、及び半透光膜により形成する場合にはその透過率について予め決定しておくことができる。そして、上記露光シミュレーションにおいては、該決定した透過率を使用することができる。
【0059】
(第3の態様)
第2の態様とは逆に、転写用パターン102pのライン幅Mとスペース幅Mとの決定に基づき、露光条件を決定することもできる。すなわち、先ずは適切な転写用パターンを決定し、その条件下で所望の露光条件(照射光量又は照射時間)を決定することもできる。尚、この際、転写用パターン102pがもつ透過率についても勘案することは、上記第2の態様と同様である。
【0060】
ここで、露光条件とは照射光量を含む。この照射光量は、露光装置による光源の照度と照射時間の積によるものである。照射時間は、照射面全体に対する走査露光の所要時間と相関する。露光装置が照射可能な照度を決定し、これに基づいて、照射時間(そして、走査露光の所要時間)を決定することができる。または、所望の照射時間に基づいて、照度を決定することもできる。
【0061】
(第4の態様)
マスクバイアスβを決定する露光条件として、上述したように例えば照射光量が挙げられる。照射光量は、照度と照射時間との積によるものである。表示装置のように、被加工体202が大面積をもち、該大面積への光照射を必要とする工程においては、主として走査露光を行うことが有利である。この場合、照射時間は、光源と被加工体202との相対的な移動速度と相関する。したがって、マスクバイアスβの値を負にして、照射光量を増大させれば、走査露光の所要時間が減少できる。これは、量産上極めて有利なことである。
【0062】
従って、
転写用パターン102pのライン幅Mは、レジストパターン103pのライン幅Rより小さく(M<R))、
転写用パターン102pのスペース幅Mは、レジストパターン103pのスペース幅Rより大きい(M>R
ことが好ましい。つまり、マスクバイアスβを負の値とすることが好ましい。
【0063】
ここで、マスクバイアスβを決定する際には露光条件を決定する必要がある。このときは、露光装置が照射可能な照度を決定し、これに基づいて、照射時間(そして、走査露光の所要時間)を決定することができる。または、所望の照射時間に基づいて、照度を決定することもできる。
【0064】
(第5の態様)
本実施形態では、従来方法において形成することが困難な程度の微細なピッチ幅Pを実現しようとするときに、顕著な効果を得られる。すなわち、微細パターンの解像限界となる寸法は、Rayleighの式により得られることから、以下のように考えることができる。
【0065】
転写用パターン102pのピッチ幅P(μm)は、露光に用いる光の波長の中央値をλ(nm)、露光に用いる露光装置の光学系の開口数をNAとしたとき、
P≦2R
(但しR=k×(λ/NA)×1/1000)
を満たすときに、顕著な効果が得られる。なお、kは0.61(Rayleighの解像限界より)であり、波長λは露光光波長(365〜436nm)である。ここでは露光光波長の中央値を用い、例えば400nmとすることができる。開口数NAは0.06〜0.14の範囲であって例えば0.08とすることができる。ここで、ピッチ幅をR(=k×(λ/NA)×1/1000)の「2倍」以下とするのは、ピッチ幅Pがライン幅Mとスペース幅Mとの合計値であることによる。
【0066】
(第6の態様)
一般に用いられる露光装置の波長域が365〜436nm(中央値400nm)であり、また光学系のNAが0.08であることを考慮すると、ピッチ幅P≦6μmの微細パターンを実現しようとするときに、顕著な効果が得られる。更には、ピッチ幅P≦5μmの微細パターンを実現しようとするときに、更に顕著な効果が得られる。
【0067】
(第7の態様)
フォトマスク100に形成する転写用パターン102pの光学特性には自由度があるが、例えば、転写用パターン102pは遮光性を有するものとすることができる。すなわち、転写用パターン102pは、透明基板101上に形成した遮光膜をフォトリソグラフィ法によってパターニングして形成することができる。
【0068】
ここで、遮光性とは、露光光を実質的に透過しないことを意味し、例えば露光光の代表波長i線について、光学濃度ODが3.0以上であることを意味する。
【0069】
なお、遮光膜は、例えば実質的にクロム(Cr)からなる材料等により形成することができる。このとき、遮光膜の表面にCr化合物(CrO、CrC,CrN等)を積層すれば、転写用パターン102pの表面に反射抑制機能を持たせることが出来る。
【0070】
(第8の態様)
転写用パターン102pは、上述のように遮光性を有するものである場合に限らず、半透光性を有するものであってもよい。すなわち、転写用パターン102pは、透明基板101上に形成した半透光性の膜(半透光膜)を、フォトリソグラフィ法によってパターニングして形成することもできる。
【0071】
ここで、半透光性とは、露光光の一部分が透過することを意味する。例えば露光光の代表波長i線について透過率が1〜30%することが好ましく、より好ましくは、1〜20%であり、更に好ましくは、2〜10%である。このような光透過率範囲であるとき、被加工体202上に形成されるレジストパターン203pの側面形状が過度に傾斜せず、エッチングの際の線幅制御が行い易くなる。
【0072】
なお、半透光膜は、クロム(Cr)を含む材料、例えば窒化クロム(CrN)、酸化クロム(CrO)、酸窒化クロム(CrON)、フッ化クロム(CrF)等のクロム化合物等、又は金属シリサイド(MoSix,MoSiO,MoSiN、MoSiON、TaSixなど)により形成することができる。
【0073】
(第9の態様)
転写用パターン102pを半透光性を有するものとする場合には、該半透光膜の、露光光の位相シフト量が90度以下であることが好ましい。すなわち、透明基板101を透過する露光光と、透明基板101及び転写用パターン102pを透過する露光光と、の位相差が、90度以下であることが好ましい。例えば、露光光の代表波長をi線としたとき、上記位相差が、90度以下であることが好ましく、60度以下とすることがより好ましい。
【0074】
これは、転写用パターン102pを透過する露光光と、透明基板101を透過する露光光との位相差が90度を超えて例えば180度に近づくときに、被加工体202上に形成されるレジストパターン203pの形状は必ずしも良化せず、むしろパターンが連結した非解像の状態に近づく可能性があるという発明者の検討結果に基づくものである。これは、半透光膜の位相シフト効果が、レジスト膜203に届く光を増加させるメリットを低減させるためであると考えられる。
【0075】
(第10の態様)
転写用パターン102pのライン幅M、スペース幅Mを設定する設計工程を実施した後は、フォトリソグラフィー工程を実施することで、上述のフォトマスク100を製造することができる。図6は、本実施形態に係るフォトマスクの製造工程を示すフロー図である。
【0076】
まず、透明基板101上に、光学膜(上述の遮光膜或いは半透光膜)102とレジスト膜103とが順に積層されたフォトマスク用ブランク100bを準備する。そして、フォトマスク用ブランク100bに対して、レーザ描画機等により描画を行い、レジスト膜103を部分的に感光させる(図6(a))。そして、レジスト膜103に現像液を供給して現像を施し、転写用パターン102pのライン部の形成予定領域を覆うレジストパターン103pを形成する(図6(b))。そして、形成したレジストパターン103pをマスクとして、光学膜102をエッチングして転写用パターン102pを形成する(図6(c))。そして、レジストパターン103pを除去し、本実施形態に係るフォトマスク100の製造を完了する(図6(c))。
【0077】
なお、透明基板101は、例えば石英(SiO)ガラスや、SiO,Al,B,RO(Rはアルカリ土類金属),RO(Rはアルカリ金属)等を含む低膨張ガラス等からなる平板として構成されている。透明基板101の主面(表面及び裏面)は、研磨されるなどして平坦且つ平滑に構成されている。透明基板101は、例えば一辺が500mm〜1300mm程度の方形とすることができる。透明基板101の厚さは例えば3mm〜13mm程度とすることができる。
【0078】
また、レジスト膜103は、ポジ型フォトレジストにより形成することができる。その際、例えばスリットコータやスピンコータ等の手法を用いることができる。
【0079】
(第11の態様)
図4及び図5に示すように、遮光性或いは半透光性の転写用パターン102pを有するフォトマスク100を用いることで、被加工体202上のレジスト膜203に転写用パターン102pを転写し、レジストパターン203pを形成することができる。図4は転写用パターン102pが遮光性膜により形成された場合を、図5は転写用パターン102pが半透光膜により形成された場合を示す。
【0080】
このとき、上述の遮光性あるいは半透光性の転写用パターンを備えたフォトマスク100を介し、ポジ型のレジスト膜203にi線〜g線の波長域を有する露光光を照射して転写用パターン102pを転写し(図4(a)、図5(a))、レジスト膜203を現像して被加工体202上にレジストパターン203pを形成する(図4(b)、図5(b))工程を実施する。
【0081】
なお、レジスト膜203に露光する際には、照度或いは照射時間の少なくともいずれかを制御することで、レジストパターン203pのライン幅Rが転写用パターン102pのライン幅Mより大きく、レジストパターン203pのスペース幅Rが転写用パターン102pのスペース幅Mより小さくなるようにする。
【0082】
(第12の態様)
図4及び図5に示すように、遮光性或いは半透光性の転写用パターン102pを有するフォトマスク100を用いることで、被加工体202を所望の形状の膜パターン202pに加工することができる。
【0083】
このとき、上述の遮光性あるいは半透光性のフォトマスク100を介し、ポジ型のレジスト膜203にi線〜g線の波長域を有する露光光を照射して転写用パターン102pを転写し(図4(a)、図5(a))、レジスト膜203を現像して被加工体202上にレジストパターン203pを形成する(図4(b)、図5(b))工程と、
レジストパターン203pをマスクとして用いたエッチングにより、被加工体202に、ライン幅W、スペース幅Wであるライン・アンド・スペースの膜パターン202pを形成する工程(図4(c)、図5(c))と、
レジストパターン203pを剥離する工程(図4(d)、図5(d))と、を実施する。
【0084】
なお、レジスト膜203に露光する際には、照射光量を制御することで、レジストパターン203pのライン幅Rが転写用パターン102pのライン幅Mより大きく、レジストパターン203pのスペース幅Rが転写用パターン102pのスペース幅Mより小さくなるようにする。照射光量の調節は、照度と照射時間の選択によって行うことができる。
【0085】
尚、図5に示す、半透光膜により形成された転写用パターンを適用する場合には、レジスト膜203に到達する光の量を、露光装置の照射光量、転写用パターンの寸法に加えて、半透光膜の透過率によって制御ができる点で、フォトマスクの設計自由度が広がり、有利である。
【0086】
(第13の態様)
図4及び図5に示すように、ライン幅M、スペース幅M、ピッチ幅Pのライン・アンド・スペースの転写用パターン102pをもつフォトマスク100を用い、ライン幅R、スペース幅R(ここで、R>M、R<M)、ピッチ幅Pのライン・アンド・スペースのレジストパターン203pを形成し、レジストパターン203pをマスクとしたエッチングを行うことにより、被加工体202にライン・アンド・スペース・パターン(すなわち膜パターン202p)を形成することができる。
【0087】
なお、上述の第1〜13の態様に記載した種々の方法は、好ましくは、表示装置の画素電極を製造する場合に用いることができる。該画素電極は、ITOやIZOからなる透明導電膜をパターニングしてなるものであることができる。
【実施例】
【0088】
(実施例1)
本実施例では、マスクバイアスβ(β<0)が設定され、光学濃度3.0以上の遮光膜パターンを有するフォトマスク(第7の態様のフォトマスク)を用い、被加工体上に形成されたポジ型のレジスト膜に転写用パターンを転写してレジストパターンを形成した。また、比較例として、マスクバイアスβが設定されず(β=0)、光学濃度3.0以上の遮光膜パターンを有する従来のフォトマスクを用いて、被加工体上に形成されたポジ型のレジスト膜に転写用パターンを転写してレジストパターンを形成した。
【0089】
図7(a)〜(c)は、比較例にかかる測定結果である。図7(a)〜(c)では、ピッチ幅Pをそれぞれ10.0μm、8.0μm、5.0μmとした。また、エッチングバイアスαは0.8μm(一定)とし、マスクバイアスβは0μm(設定なし)とした。このときの露光装置による照射光量Eopを100.0mJ/cmとした。図7(a)〜(c)によれば、ピッチ幅Pが8.0μm以上の場合(図7(a)及び図7(b))には、レジスト除去不良は生じずに十分な解像度が得られていることが分かる。しかしながら、ピッチ幅Pが5.0μmと微細になると(図7(c))、レジスト除去不良が顕著となり、レジストパターンの隣接するライン部が互いに連結してしまっていることが分かる。これは、マスクバイアスβを設定しない比較例では、転写用パターンのライン幅Mに対するスペース幅Mの割合(M/M)が小さくなり、レジスト膜に到達する露光光の照射光量が不足してしまっているためと考えられる。
【0090】
図7(d)〜(g)は、実施例1にかかる測定結果である。図7(d)〜(g)では、ピッチ幅Pをそれぞれ5.0μm(一定)とし、サイドエッチング幅αは0.8μm(一定)とした。そして、マスクバイアスβは−0.2μm〜−0.8μmの範囲内で変化させた。また、露光装置による照射光量Eopも126.55〜84.55mJ/cmの範囲内で変化させた。図7(d)〜(g)によれば、ピッチ幅Pを5.0μmとした場合であっても、マスクバイアスβを例えば−0.2μm〜−0.8μmの範囲内で設定することにより、レジスト除去不良が生じ難くなり、十分な解像度が得られることが分かる。これは、負の値を有するマスクバイアスβを設定した実施例では、転写用パターンのライン幅Mに対するスペース幅Mの割合(M/M)を大きくすることができ、レジスト膜に到達する露光光の照射光量を十分に確保できているためと考えられる。
【0091】
なお、マスクバイアスβを小さく(絶対値を大きく)設定することで、露光装置による照射光量Eopを低下させても(例えば図7(g)の場合にはEopを15%低下させている)、十分な解像度が得られることが分かる。すなわち、マスクバイアスβを小さく(絶対値を大きく)設定した実施例では、露光装置の光源の出力を低下させたり、照射時間を短縮させたりできることが分かる。これは、大面積の露光が必要な表示装置製造の工程において、特に大きな意義をもつ。
【0092】
(実施例2)
本実施例では、マスクバイアスβ(β<0)が設定され、透過率がi線に対して5%、位相差が40度である半透光性を有するフォトマスク(第8の態様のフォトマスク)を用い、被加工体上に形成されたポジ型のレジスト膜に転写用パターンを転写してレジストパターンを形成した。また、比較例として、マスクバイアスβが設定されず(β=0)、透過率がi線に対して5%(位相差は上記と同じ40度)である半透光性を有する従来のフォトマスクを用いて、被加工体上に形成されたポジ型のレジスト膜に転写用パターンを転写してレジストパターンを形成した。
【0093】
図8(a)〜(c)は、比較例にかかる測定結果である。図8(a)〜(c)では、ピッチ幅Pをそれぞれ10.0μm、8.0μm、5.0μmとした。また、エッチングバイアスαは0.8μm(一定)とし、マスクバイアスβは0μm(設定なし)とし、露光装置による照射光量Eopを100.0mJ/cmとした。図8(a)〜(c)によれば、ピッチ幅Pが8.0μm以上の場合(図8(a)及び(b))にはレジスト除去不良は生じずに十分な解像度が得られているものの、ピッチ幅Pが5.0μmになると(図8(c))、レジスト除去不良が顕著となり、レジストパターンの隣接するライン部が互いに連結してしまっていることが分かる。これは、マスクバイアスβを設定しない比較例では、転写用パターンのライン幅Mに対するスペース幅Mの割合(M/M)が小さくなり、レジスト膜に到達する露光光の照射光量が不足してしまっているためと考えられる。
【0094】
図8(d)〜(g)は、実施例2にかかる測定結果である。図8(d)〜(g)では、ピッチ幅Pをそれぞれ5.0μm(一定)とし、サイドエッチング幅αは0.8μm(一定)とした。そして、マスクバイアスβは−0.2μm〜−0.8μmの範囲内で変化させた。また、露光装置による照射光量Eopも102.0〜74.8mJ/cmの範囲内で変化させた。図8(d)〜(g)によれば、ピッチ幅Pを5.0μmとした場合であっても、マスクバイアスβを例えば−0.2μm〜−0.8μmの範囲内で設定することにより、レジスト除去不良が生じ難くなり、十分な解像度が得られることが分かる。これは、負の値を有するマスクバイアスβを設定した実施例では、転写用パターンのライン幅Mに対するスペース幅Mの割合(M/M)を大きくすることができ、レジスト膜に到達する露光光の照射光量を十分に確保できているためと考えられる。
【0095】
なお、マスクバイアスβを小さく(絶対値を大きく)設定することで、露光装置による照射光量Eopを低下させても(図8(g)の場合は25%低下させている)、照射光量Eopを低下させない場合と同様に、十分な解像度が得られることが分かる。すなわち、マスクバイアスβを小さく(絶対値を大きく)設定した実施例では、露光装置の光源の出力を低下させたり、照射時間を短縮させたりできることが分かる。これは、大面積の露光が必要な表示装置製造の工程において、特に大きな意義をもつ。
【0096】
尚、図8(d’)に、図8(d)に用いた半透光膜の透過率はそのままで、半透光膜を透過する露光光と透明基板を透過する露光光との位相差を40度から180度に変更した場合のレジストパターン形状を示す。この場合、ピッチ5μmのパターンに対する良好な解像を得ることができるが、必要な照射光量Eopは、図8(d)と比べて相当に増加する。同様に図8(f’)には、図8(f)に用いた半透光膜の透過率はそのままで、半透光膜を透過する露光光と、透明基板を透過する露光光との位相差を180度とした場合のレジストパターン形状を示す。この場合も、必要な照射光量Eopが、図8(f)と比べて相当に増加する。
【0097】
また、半透光性を有するフォトマスクを用いた実施例2では、実施例1と比較した場合、露光装置による照射光量Eopを更に低下できることが分かる。すなわち、半透光性を有するフォトマスクを用いることで、露光装置の光源の出力を更に低下させたり、照射時間を更に短縮させたりできることが分かる。これは、フォトマスクの転写用パターンに半透光性を与えることで、レジスト膜に到達する露光光の照射光量を更に大きくできるためと考えられる。これも、大面積の露光が必要な表示装置製造の工程において、特に大きな意義をもつ。
【0098】
<本発明の他の実施態様>
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0099】
例えば、本発明は、透明基板上に形成した半透光膜をパターニングすることにより形成した透光部と半透光部とからなる転写用パターンを備えたフォトマスクの製造方法であって、被転写体上のレジスト膜に、レジスト残膜のある部分とレジスト残膜のない部分とを形成するフォトマスクの製造方法に対して好適に適用可能である。具体的には、被加工体上に、ピッチ幅Pが6μm以下のライン・アンド・スペース・パターンを形成する場合に有利に適用できる。係る場合、透光部に対応して、被転写体上に、レジスト残膜のない部分が形成され、半透光部に対応して、レジスト残膜のある部分が形成される。
【0100】
また例えば、本発明は、被転写体上のレジスト膜がポジ型レジストにより形成される場合に限らず、ネガ型レジストによって形成される場合にも好適に適用可能である。但し、レジスト膜はポジ型レジストにより形成することが好ましい。
【0101】
また例えば、上述の実施形態では、マスクバイアスβを負の値とすることにしたが、マスクバイアスβの値を正の値としてもよい。
【0102】
上述したように、本発明のフォトマスクは、例えばi線〜g線の波長域をもつ露光装置によって露光を行う時に特に好適に適用可能である。また、露光装置としては、例えばプロジェクション露光機を好適に用いることができる。但し、本発明のフォトマスクは、これらの形態に限定されず、他の波長域をもつ露光装置によって露光を行う時にも好適に適用可能である。
【0103】
上述したように、本発明のフォトマスクは、例えば、VA方式、IPS方式の液晶表示装置に使用される画素電極用のライン・アンド・スペース・パターンを形成する時に好適に適用可能である。但し、他の方式の液晶表示装置や、表示装置以外の装置をフォトリソグラフィー技術を用いて製造する際にも好適に適用可能である。
【0104】
上述の実施形態においては、得ようとするライン・アンド・スペース・パターンの具体的なライン幅Wと、スペース幅Wの値に制限は無いが、例えば0.8W≦W≦1.2Wとすることが好ましい。描画時の線幅制御や、サイドエッチング幅α、マスクバイアスβの設定自由度の観点から、ライン幅とスペース幅の寸法が、極端に乖離しない方が好ましい。
【0105】
以上から明らかなとおり、本発明によれば、標準的なLCD用露光装置に搭載される光学系を用い、i線〜g線の露光光を使用して、かつ、露光照射量を特に増大させる必要なく、生産効率を低下させることなく、従来解像できなかった微細なラインアンドスペースパターンを被加工体上に形成することができる。
【符号の説明】
【0106】
100 フォトマスク
102p 転写用パターン
202 被加工体
202p 膜パターン
203 レジスト膜
203p レジストパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に、ピッチ幅Pのライン・アンド・スペース・パターンを含む転写用パターンを有するフォトマスクの製造方法であって、
前記フォトマスクを用いた露光により、被加工体上に形成されたポジ型のレジスト膜に前記転写用パターンが転写されてレジストパターンが形成され、前記レジストパターンをマスクとして用いたエッチングにより、前記被加工体に、ライン幅W、スペース幅Wであるライン・アンド・スペースの膜パターンが形成されるフォトマスクの製造方法において、
前記被加工体をエッチングする際のエッチング条件に基づくサイドエッチング幅αを設定し、
前記膜パターンのライン幅W、スペース幅Wのそれぞれと、前記サイドエッチング幅αとに基づき、前記レジストパターンのライン幅Rとスペース幅Rとを設定し、
前記決定したライン幅Rとスペース幅Rをもつレジストパターンに基づき、前記露光の際の露光条件、及び前記転写用パターンのライン幅Mとスペース幅Mを決定し、
かつ、前記転写用パターンのライン幅Mは前記決定したライン幅Rと異なり、前記転写用パターンのスペース幅Mは前記決定したスペース幅Rと異なる
ことを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項2】
前記露光条件の決定に基づき、前記転写用パターンのライン幅Mとスペース幅Mとを決定する
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項3】
前記転写用パターンのライン幅Mとスペース幅Mとの決定に基づき、前記露光条件を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項4】
前記転写用パターンのライン幅Mが前記レジストパターンのライン幅Rより小さく、
前記転写用パターンのスペース幅Mが前記レジストパターンのスペース幅Rより大きい
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項5】
前記転写用パターンのピッチ幅P(μm)は、前記露光に用いる光の波長の中央値をλ(nm)、前記露光に用いる露光装置の光学系の開口数をNAとしたとき、
P≦2R
を満たす(但し、R=0.61(λ/NA)×1/1000)
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項6】
前記ピッチ幅Pは6μm以下である
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項7】
前記転写用パターンは遮光膜をパターニングしてなる
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項8】
前記転写用パターンは半透光膜をパターニングしてなる
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項9】
前記転写用パターンは半透光膜をパターニングしてなり、
前記透明基板を透過する露光光と、前記透明基板及び前記転写用パターンを透過する露光光との位相差が90度以下である
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項10】
前記透明基板上に形成された遮光膜或いは半透光膜をフォトリソグラフィ法によりパターニングし、前記決定されたライン幅M、スペース幅Mの前記転写用パターンを形成する工程を有する
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の製造方法によるフォトマスクを介し、前記ポジ型のレジスト膜にi線〜g線の波長域を有する露光光を照射する
ことを特徴とするパターン転写方法。
【請求項12】
請求項10に記載の製造方法によるフォトマスクを介し、前記ポジ型のレジスト膜にi線〜g線の波長域を有する露光光を照射して前記転写用パターンを転写し、前記被加工体上に前記レジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンをマスクとして用いたエッチングにより、前記被加工体に、ライン幅W、スペース幅Wであるライン・アンド・スペースの前記膜パターンを形成する工程と、を有する
ことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項13】
ライン幅M、スペース幅M、ピッチ幅Pのライン・アンド・スペースの転写用パターンをもつフォトマスクを用い、ライン幅R、スペース幅R(ここで、R>M、R<M)、ピッチ幅Pのライン・アンド・スペースのレジストパターンを形成し、前記レジストパターンをマスクとしたエッチングを行うことにより、被加工体にライン・アンド・スペース・パターンを形成する
ことを特徴とする表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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