説明

フォークリフトのトランスファー装置

【課題】テンションロッドを備えたフォークリフトにおいて、長尺のテンションロッドを左右の端部を固定した状態で組み付け、あるいは取り外し可能とした、フォークリフトのトランスファー装置を提供する。
【解決手段】第1、第2のアクスルの間をそれぞれ連結するテンションロッドを備えたトランスファー装置において、テンションロッドは、前記第1のアクスルが収納される第1のトランスファーケースに固定される第1のロッドと前記第2のアクスルが収納される第2のトランスファーケースに固定される第2のロッドとを一直線状に設けてなり、前記第1のロッドと第2のロッドとは、両者の軸端部に外装されテンションロッドの軸方向に移動可能な中空ジョイントを軸方向に移動させることにより固定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1のモータにより左前輪を駆動する第1のアクスルと第2のモータにより右前輪を駆動する第2のアクスルとの間をそれぞれ連結するテンションロッドを備えたフォークリフトのトランスファー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図6はバッテリー駆動式フォークリフトの概略側面図である。図6において100はフォークリフト(バッテリー駆動式フォークリフト)、1は車体、2はバッテリー、6はマスト、5は積荷を搭載して前記マスト6に沿って往復動するフォーク、3a,3bは左右の前車輪、4a,4bは左右の後車輪である。90はトランスファー装置である。
【0003】
図7は前記バッテリー駆動式フォークリフトの前輪側トランスファー装置の平面図である。図において、第1のモータ16aにより第1のアクスル10aを介して左前車輪3aが駆動され、第2のモータ16bにより第2のアクスル10bを介して右前車輪3bが駆動されている。前記第1のアクスル10a及び第2のアクスル10bはトランスファーケース8a、8b内に形成されている。
そして、前記第1のアクスル10aに固定された接続部材13aにテンションロッド11の一端が固定され、前記第2のアクスル10bに固定された接続部材13bにテンションロッド11の他端が固定され、該テンションロッド11によって左右のアクスル10a、10bが接続されている。90は前記テンションロッド11を含むトランスファー装置である。
【0004】
また、特許文献1(特開平8−216898号公報)に示されたバッテリー駆動式フォークリフトは、フォークリフトの手動トルク伝達機構を車体の最下部に配し、アクチュエータ、モータ等の電動トルク伝達機構をリヤアクスル内に配する構成とし、バッテリー下部のスペースは僅かなものでよく、従って、バッテリーを車体の下側まで落としこむことができ、大容量のバッテリーの搭載も可能となり、また、通常のバッテリーを載せた場合であっても車体を低くでき、乗り降りが容易であるとともに車高も低くなるという、利点をそなえている。
【0005】
【特許文献1】特開平8−216898号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6及び図7に示されるバッテリー駆動式フォークリフトにおいては、車両の小型化の要求やバッテリー作動油タンク等のレイアウトの制約から、図6〜7に示されるように、前記バッテリー2の前端面2bとマスト6の後面6aとの間のスペース2cが狭くなる傾向にある。
このため、第1、第2のモータ16a,16bが大型化すると、該モータ16a,16bの配置が前記スペース2cの前方のマスト6側に寄り、マストサポート部が左右の前車輪3a,3bの同軸上に形成することに困難を伴う。
【0007】
この場合、前記テンションロッド11は、接続部材13a及び接続部材13bを介して左右のアクスル10a,10bに接続されているが、前記スペース2cの狭さを勘案すると、該テンションロッド11の中心は左右のアクスル10a,10bの中心にほぼ一致して(左右のアクスル10a,10bの中心からオフセットせずに)、設ける必要がある。
さらに、前記テンションロッド11は、左右の固定端が左右のアクスル10a,10bの端面(即ち左右のアクスル10a,10bのトランスファーケースの両端面)に固定する構造であるため、前記長尺のテンションロッド11は左右の端部を固定した状態で組み付けなければならない。
【0008】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、テンションロッドを備えたフォークリフトにおいて、長尺のテンションロッドを左右の端部を固定した状態で組み付け、あるいは取り外し可能とした、フォークリフトのトランスファー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はかかる目的を達成するもので、第1のモータにより左前輪を駆動する第1のアクスルと、第2のモータにより右前輪を駆動する第2のアクスルと、前記第1、第2のアクスルの間をそれぞれ連結するテンションロッドとを備えたトランスファー装置において、前記テンションロッドは、前記第1のアクスルが収納される第1のトランスファーケースに固定される第1のロッドと前記第2のアクスルが収納される第2のトランスファーケースに固定される第2のロッドとを一直線状に設けてなり、前記第1のロッドと第2のロッドとは、両者の軸端部に外装されテンションロッドの軸方向に移動可能な中空ジョイントを介して、該中空ジョイントによる該第1のロッドと第2のロッドとの間の半径方向ガタの吸収及び軸方向の相対移動による該第1のロッドと第2のロッドのずれの吸収により固定されることを特徴とする(請求項1)。
【0010】
かかる発明において、好ましくは、次のように構成する。
(1)前記中空ジョイントは、前記第1のロッドあるいは第2のロッドのいずれかに嵌合され、前記テンションロッドの軸方向に移動して相手部材に螺合されることにより前記第1のロッドと第2のロッドとを結合する(請求項2)。
(2)中空ジョイントによる、前記第1のロッドあるいは第2のロッドと相手部材との螺合を解除することにより、前記テンションロッドが第1のロッド側と第2のロッド側との2つに分離可能に構成する(請求項3)。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、テンションロッドは、第1のアクスル用の第1のトランスファーケースに固定される第1のロッドと前記第2のアクスル用の第2のトランスファーケースに固定される第2のロッドとを一直線状に設けてなり、前記第1のロッドと第2のロッドとは、両者の軸端部に外装されテンションロッドの軸方向に移動可能な中空ジョイントを介して、該中空ジョイントによる該第1のロッドと第2のロッドとの間の半径方向ガタの吸収、及び軸方向の相対移動による該第1のロッドと第2のロッドのずれの吸収により固定されるので(請求項1)、前記中空ジョイントによる該第1のロッドと第2のロッドとの間の半径方向ガタの吸収及び軸方向の相対移動による該第1のロッドと第2のロッドのずれの吸収により、結果として、第1のロッド側に連結される第1のアクスル側と、第2のロッド側に連結される第2のアクスル側とを、前記半径方向ガタの吸収及び軸方向のずれの吸収により、両者の寸法にずれがあっても、かかる半径方向ガタの吸収及び軸方向のずれの吸収により、円滑に接続することができる。
【0012】
また、前記中空ジョイントを移動させて、第1のロッドあるいは第2のロッドと相手部材との螺合を解除すれば(請求項3)、前記中空ジョイントの移動のみで、前記テンションロッドを簡単に分解することが可能となる。
【0013】
これにより、前記バッテリーの前端面とマストの後面との間のスペースの狭さを勘案すると、該テンションロッドの中心は、左右のアクスルの中心にほぼ一致して(左右のアクスルの中心からオフセットせずに)設ける必要があるが、本発明においては、前記のように、中空ジョイントによる該第1のロッドと第2のロッドとの間の半径方向ガタの吸収及び軸方向の相対移動による該第1のロッドと第2のロッドのずれの吸収により、テンションロッドを、左右の端部を固定した状態で一直線状に簡単に組み立て及び分解することができる。
これにより、狭いスペースであっても、テンションロッドを収納でき、車両の小型化の要求やバッテリー作動油タンク等のレイアウトの制約に対しても、またモータの大型化の要求に対しても、マストサポート部を左右の前車輪の同軸上に形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0015】
図1は本発明の実施例に係るバッテリー駆動式フォークリフトの前輪側テンションロッド装置の平面図である。図2〜図5は前記テンションロッド装置の組立て順序を示す平面図で組立て順にその1〜その5を示す。
【0016】
図1において、90はトランスファー装置で下記により構成される。
前記トランスファー装置90は、図6に示すように、バッテリー2の前端面2bとマスト6の後面6aとの間のスペース2cに設置される。
前記トランスファー装置90の概要は、図7と同様であり、第1のモータ16aにより第1のアクスル10aを介して左前車輪3aが駆動され、第2のモータ16bにより第2のアクスル10bを介して右前車輪3bが駆動されている。前記第1のアクスル10a及び第2のアクスル10bはトランスファーケース8a,8b内に形成されている。
【0017】
次に、図1を参照して本発明にかかるトランスファー装置90を構成するテンションロッド装置の詳細について説明する。
80はテンションロッドで、前記第1のアクスル10aと一体の保持部25aにテンションロッド80の一端側が固定され、前記第2のアクスル10bにと一体の保持部25bにテンションロッド80の他端側が固定されている。従って、前記テンションロッド80によって左右のアクスル10a,10bが接続されることとなる。
【0018】
前記テンションロッド80の一端側の保持部25aには、テンションロッド80の第1のロッド21が接続部材24aを介してナット23により固定され、前記テンションロッド80の他端側の保持部25bには、テンションロッド80の第2のロッド22が接続部材24bを介してナット30により固定されている。
図1(B)のように、前記第1のロッド21の中心25cと前記保持部25aの中心25dとは距離Tだけ偏心し、前記第2のロッド22の中心25cと前記保持部25bの中心25dとは前記距離Tだけ偏心して取り付けられている。
これにより、図1(B)のように、グリース供給孔40aとグリース孔40cとを、グリース連絡孔40bにて連通させている。
【0019】
次に、前記第1のロッド21の他端部と第2のロッド22の他端部とは、中空ジョイント28を備えた軸継手20を介して連結されている。
前記軸継手20は、次のように構成されている。
第1のロッド21の他端部の外周にスペーサ27が嵌挿され、該スペーサ27は第1のロッド21の他端部のストッパ21aとナット26との間に締め付けられ、該スペーサ27の内周は、第1のロッド21の外周に対してバカ孔27uとなっている。
一方、第2のロッド22の他端部の外周には中空ジョイント28が嵌挿され、該中空ジョイント28の第2のロッド22側は該第2のロッド22の他端部のストッパ22aとナット29との間に嵌挿されて締め付けられるとともに、前記第1のロッド21側を内周がバカ孔27uに形成され外周がネジ27sに形成された前記スペーサ27に、中空ジョイント28がネジ27sにてネジ結合されている。
【0020】
次に、前記テンションロッド80の組立て方法について説明する。
図2において、先ず前記第1のロッド21の一端側が接続部材24aを介してナット23により、一端側の保持部25aに固定される。前記第1のロッド21の他端部の外周にスペーサ27がバカ孔27uにて嵌挿され、該スペーサ27は第1のロッド21の他端部のストッパ21aとナット26との間に締め付けられるようになっている。前記他端側は前記保持部25bが一直線31上に配置され第2のロッド22は組みつけられていない。
【0021】
次に、図3において、前記テンションロッド80の他端側の保持部25bには、テンションロッド80の第2のロッド22が、保持部25bと第1のロッド21の他端部のストッパ21aとの間に位置する図3の矢印Zで示すように平行移動されて、接続部材24bを介してナット30により固定される。
一方、第2のロッド22の一端側にはナット29が挿入されており、該第2のロッド22の他端部22aの外周には中空ジョイント28が嵌挿される。
【0022】
次に、図3、4において、前記中空ジョイント28を図の左方に移動して、前記スペーサ27の外周のネジ27sに中空ジョイント28の左方のネジ28sをネジ込む。
この場合、前記第1のロッド21と第2のロッド22は、前記中空ジョイント28による該第1のロッド21と第2のロッド22との間の半径方向ガタの吸収、及び軸方向の相対移動による該第1のロッド21と第2のロッド22のずれの吸収により固定される。
即ち、前記中空ジョイント28による該第1のロッド21と第2のロッド22との間の半径方向ガタの吸収は前記中空ジョイント28とスペーサ27のバカ孔27uで行い、中空ジョイント28と第2のロッド22側との関係は前記バカ穴28t部で吸収するにより行う。また軸方向の相対移動による該第1のロッド21と第2のロッド22のずれの吸収も行う。
従って、結果として、第1のロッド21側に連結される第1のアクスル10a側と、第2のロッド22側に連結される第2のアクスル側10bとを、前記バカ孔27u及びバカ穴28tにより半径方向ガタの吸収ができ、前記軸方向のずれの吸収により、両者の寸法にずれがあっても、かかる半径方向ガタの吸収及び軸方向のずれの吸収により、円滑に接続することができる。
【0023】
従って、前記のように中空ジョイント28をテンションロッド80の半径方向及び軸方向に微動させて、第1のロッド21と第2のロッド22とを連結することにより、第1のアクスル用の第1のロッド21と第2のアクスル用の第2のロッド22とを中空ジョイント28に組み付けることで、両者の寸法にずれがあっても、前記半径方向ガタの吸収及び軸方向のずれの吸収により、テンションロッド80を中空ジョイント28の移動のみで一直線状に簡単に組み立てることができる。
【0024】
また、前記中空ジョイント28を図の右方に移動させて、第1のロッド21あるいは第2のロッド22と相手部材との螺合を解除すれば、前記中空ジョイント28の移動のみで、前記テンションロッド80を簡単に分解することが可能となる。
【0025】
これにより、図7において、バッテリー2の前端面2bとマスト6の後面6aとの間のスペース2cの狭さを勘案すると、該テンションロッド80の中心は、左右のアクスル10a,10bの中心にほぼ一致して(左右のアクスル10a,10bの中心からオフセットせずに)設ける必要があるが、かかる実施例においては、前記のように中空ジョイント28をテンションロッド80の軸方向に移動させるのみで、該テンションロッド80を、左右の端部を左右のアクスル10a,10bに固定した状態で一直線状に簡単に組み立てることができる。
これにより、狭いスペースであっても、テンションロッド80を収納でき、車両の小型化の要求やバッテリー作動油タンク等のレイアウトの制約に対しても、またモータ16a、16bの大型化の要求に対しても、マストサポート部を左右の前車輪3a、3bの同軸上に形成することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、テンションロッドを備えたフォークリフトにおいて、長尺のテンションロッドを左右の端部を固定した状態で組み付け、あるいは取り外し可能とした、フォークリフトのトランスファー装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(A)は本発明の実施例に係るバッテリー駆動式フォークリフトの前輪側テンションロッド装置の平面図である。(B)はZ部の拡大図である。
【図2】前記テンションロッド装置の組立て順序を示す平面図(その1)である。
【図3】前記テンションロッド装置の組立て順序を示す平面図(その2)である。
【図4】前記テンションロッド装置の組立て順序を示す平面図(その3)である。
【図5】前記テンションロッド装置の組立て順序を示す平面図(その4)である。
【図6】バッテリー駆動式フォークリフトの概略側面図である。
【図7】前記バッテリー駆動式フォークリフトの前輪側トランスファー装置の平面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 車体
2 バッテリー
2b 前端面
2c スペース
3a、3b 前車輪
4a、4b 後車輪
5 フォーク
6 マスト
6a 後面
90 トランスファー装置
8a、8b トランスファーケース
10a 第1のアクスル
10b 第2のアクスル
16a 第1のモータ
16b 第2のモータ
80 テンションロッド
20 軸継手
21 第1のロッド
22 第2のロッド
28 中空ジョイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のモータにより左前輪を駆動する第1のアクスルと、第2のモータにより右前輪を駆動する第2のアクスルと、前記第1、第2のアクスルの間をそれぞれ連結するテンションロッドとを備えたトランスファー装置において、前記テンションロッドは、前記第1のアクスルが収納される第1のトランスファーケースに固定される第1のロッドと前記第2のアクスルが収納される第2のトランスファーケースに固定される第2のロッドとを一直線状に設けてなり、前記第1のロッドと第2のロッドとは、両者の軸端部に外装されテンションロッドの軸方向に移動可能な中空ジョイントを介して、該中空ジョイントによる該第1のロッドと第2のロッドとの間の半径方向ガタの吸収及び軸方向の相対移動による該第1のロッドと第2のロッドのずれの吸収により固定されることを特徴とするフォークリフトのトランスファー装置。
【請求項2】
前記中空ジョイントは、前記第1のロッドあるいは第2のロッドのいずれかに嵌合され、前記テンションロッドの軸方向に移動して相手部材に螺合されることにより前記第1のロッドと第2のロッドとを結合することを特徴とする請求項1記載のフォークリフトのトランスファー装置。
【請求項3】
前記中空ジョイントによる、前記第1のロッドあるいは第2のロッドと相手部材との螺合を解除することにより、前記テンションロッドが第1のロッド側と第2のロッド側との2つに分離可能に構成することを特徴とする請求項1記載のフォークリフトのトランスファー装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−115260(P2009−115260A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−290770(P2007−290770)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】