説明

フォークリフトの安全装置

【課題】フォークが前方の障害物に衝突することを防止できるフォークリフトの安全装置
を提供する。
【解決手段】フォーク固定用ブラケット2bに下方に出退可能に取付けられた昇降ブラケ
ット5と、この昇降ブラケット5を突出させた状態においてフォーク2a間の下端部分の
前方にある障害物4bを測定可能な位置に取付けられた非接触測定器6と、前記フォーク
2aの上昇時に前記昇降ブラケット5をフォーク固定用ブラケット2bから下方に所定長
さだけ突出させる一方、フォーク2a下降時においては前記非接触測定器6が床に接触し
ない程度に前記昇降ブラケット5を後退させる出退機構7と、運転席から確認できる位置
に設置されて前記非接触測定器6によって測定された前方の障害物4bを通知させる通知
手段8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフトの安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より出荷場では、荷物の整理にフォークリフトを用いている。つまり、フォークリ
フトを用いて、荷物を種類別に3〜4段に積み上げて整理した状態で保管し、トレーラ等
の搬送車両に積み込む荷役作業を行っている。
【0003】
また、特許文献1にはフォークの根本付近に取付けたセンサを用いて、物体や人などの
障害物までの距離を測定して、予め設定した距離でフォークリフトの前進機能に制動をか
けることが記載されており、これによってフォークリフトの先端が障害物に接触すること
を防止している。このセンサはフォークが物体や人物に衝突することを防止するために、
フォークと同じ高さまたはフォークよりも少し高い位置における障害物を測定する。この
ように構成されたフォークリフトではフォークの前方に障害物があるときにフォークリフ
トの前進が抑制されるので、事故の発生を未然に防ぐことができる。
【0004】
ところで、図9に示すように、出荷場でフォークリフトを用いた荷物90の整理をして
いるときには、荷物90a,90b,90c,90dの製品に位置ズレが発生すると、荷
崩れを起こす恐れがあるという問題がある。このような位置ズレは荷物90a,90bの
高さHa,Hbに差Dhが発生していることに起因する。また、位置ズレが発生した荷物
90a,90bは、これらをトレーラ等の搬送車両に積み込んだ場合に、走行中に荷崩れ
を起こす原因となることがある。
【0005】
このため、図10に示すように、作業者は製品にズレが生じている荷物90a〜90d
をフォークリフト91で一旦降ろし、製品のズレを直して再び荷物90a〜90dをフォ
ークリフト91で持ち上げて、荷物90a〜90dの上段に積み上げる整理作業を行うが
、このとき作業者の視界が、フォークリフト91の荷物90eによって遮られ、前方の荷
物90aが確認不能となり、背の高い棚の上に荷物90eを移動させる作業中にフォーク
の爪やパレットなどが前方の製品90aに接触して製品90aを傷つける等の不都合が発
生する可能性があった。
【0006】
そこで、フォークリフト91の操作を行う運搬作業者は、車体より大きく身を乗り出し
て前方を確認しながらフォークリフト91を前進させて荷物を上段に積み上げる作業を行
っている。このとき作業者は車体から放り出されないように十分に注意しながら、車体か
ら身体を乗り出した状態で操作することにより、ハンドル操作やアクセル、ブレーキなど
のペダル操作の操作が安定せず、操作ミスを誘発することが考えられる。
【0007】
あるいは、作業者が荷役作業を行うときには別の補助作業者を伴って、この補助作業者
が荷物の監視を行うことにより、容易には崩れないようにまっすぐに積み上げることが行
われている。同様に、荷役作業をする際にも補助作業者が付くことにより、補助作業者の
指示により荷物を上段に積み上げる作業を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−16202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、荷役作業のそれぞれに補助作業者を配置することにより、作業に多くの人手
を必要としており、これがコストの引き上げをまねくという問題がある。また、フォーク
リフトの場合フォークが床面すれすれに位置する状態でフォークを前進させることがある
ため、このフォークの下面にセンサなど配置して障害物を検知することが難しいため、従
来のようにフォークの上面つまりパレット上面またはフォークと同じ高さにおける障害物
の検知しかできなかった。
【0010】
このため、フォークにパレットや荷物を載せている状態では障害物の検知を行なうこと
ができず、フォークに荷物を載せた荷役作業中での視界不良という問題は解消されなかっ
た。
【0011】
本発明は上述の事柄を考慮に入れてなされたものであり、フォークに荷物を載せた状態
でフォークの下面の前方における障害物の有無を確認してフォークリフトが荷物をフォー
クリフトの安全装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、第1発明は、フォーク固定用ブラケットに下方に出退可能に
取付けられた昇降ブラケットと、この昇降ブラケットを突出させた状態においてフォーク
間の下端部分の前方にある障害物を測定可能な位置に取付けられた非接触測定器と、前記
フォークの上昇時に前記昇降ブラケットをフォーク固定用ブラケットから下方に所定長さ
だけ突出させる一方、フォーク下降時においては前記非接触測定器が床に接触しない程度
に前記昇降ブラケットを後退させる出退機構と、運転席から確認できる位置に設置されて
前記非接触測定器によって測定された前方の障害物を通知させる通知手段とを備えること
を特徴とするフォークリフトの安全装置を提供する(請求項1)。
【0013】
第2発明は、フォーク固定用ブラケットに出退可能に取付けられた昇降ブラケットと、
この昇降ブラケットを突出させた状態において各フォークの下端部分の前方にある障害物
をそれぞれ測定可能な位置に取付けられた非接触測定器と、前記フォークの上昇時に前記
昇降ブラケットをフォーク固定用ブラケットから下方に所定長さだけ突出させる一方、フ
ォーク下降時においては前記非接触測定器が床に接触しない程度に前記昇降ブラケットを
後退させる出退機構と、運転席から確認できる位置に設置されて前記非接触測定器によっ
て測定された前方の障害物を通知させる通知手段とを備えることを特徴とするフォークリ
フトの安全装置を提供する(請求項2)。
【0014】
請求項1,請求項2に示す前記昇降ブラケットは出退機構によってフォーク固定用ブラ
ケットの下方に出退可能に取付けられているので、この昇降ブラケットに設けた非接触測
定器はフォークリフトの間のフォーク前方にある障害物を非接触測定器によって測定する
ことができる。また、出退機構が前記フォークの上昇時に前記昇降ブラケットをフォーク
固定用ブラケットから下方に所定長さだけ突出させる一方、フォーク下降時においては前
記非接触測定器が床に接触しない程度に前記昇降ブラケットを後退させるものであるから
、昇降ブラケットに取付けられた非接触測定器が床面に衝突することはない。前記出退機
構はフォークの動作にあわせてフォークが下端部に位置するときのみ昇降ブラケットを後
退させるシリンダを用いてもよい。前記通知手段は運転席から確認できる位置において前
記非接触測定器によって測定された前方の障害物を通知するので、作業者はこの通知手段
を用いて障害物の有無を確認できる。
【0015】
したがって、作業者は運搬中の荷物によって視界が遮られることがあったとしても、障
害物にフォークの先端または、パレットの先端が衝突しそうになると、これを通知手段に
よって確認できる。ゆえに、作業者は前方の障害物を確認するために、フォークリフトか
ら身を乗り出さすような危険な操作を行なう必要も、補助作業者を必要としていない。
【0016】
請求項1に示すように、非接触測定器をフォークの間の下端部分に設けている場合には
、簡素な構成でありながらフォークリフトの前方にある障害物をバランスよく測定できる
。一方、請求項2に示すように、各フォークの下端部分の前方にある障害物をそれぞれの
非接触測定器によって測定し、何れか一つの非接触測定器がフォークの前方に障害物を測
定したときに通知手段が障害物を通知するこうに構成した場合には、荷物とフォークの接
触をより確実に避けることができる。
【0017】
前記出退機構が、一端がフォークリフトの車体、他端が前記昇降ブラケットにそれぞれ
固定されて昇降ブラケットを吊り下げる索体と、インナーマストに回動自在に取付けられ
て前記索体をかけるように構成された第1プーリと、前記インナーマストに回動自在に取
付けられて前記フォークが下端部に位置する状態で前記昇降ブラケットが床面に当たらな
いように索体を曲げて引っ張る程度に索体に当接する第2プーリと、前記昇降ブラケット
の下側に取付けられて昇降ブラケットの突出状態においてのみ前記非接触測定器を有効に
する測定器位置確認スイッチとを備える場合(請求項3)には、インナーマストに取り付
けられている第1プーリに巻回させた索体によって昇降ブラケットを吊しているので、フ
ォークと昇降ブラケットの高さ位置をあわせて、フォークの高さ位置に追従させて昇降ブ
ラケットを上下に移動させることができる。つまり、フォーク上昇時には、フォーク固定
用ブラケットの下面から非接触測定器を突出させた相対位置に非接触測定器を固定させた
状態で障害物の測定を行なうことができる。
【0018】
また、フォーク最下降時は第2プーリが索体を引っ張る程度に索体に当接することによ
り、フォークレール固定ブラケット内に昇降ブラケットが後退するので前記非接触測定器
もフォークレール固定ブラケット内に入り、床面と非接触測定器の間に隙間が生じる。つ
まり、非接触測定器が床面に衝突することがない。なお、索体はワイヤーであることが好
ましいが、チェーンやロープのようなものであってもよい。また、索体がチェーンである
場合は、プーリはスプロケットであってもよい。
【0019】
前記非接触測定器が光を用いて距離を測定する光検知センサである場合(請求項4)に
は、拡散しない光を用いて距離を測定するので、より正確な距離の測定を行なうことがで
き、信頼性が向上する。なお、光検知センサは光電センサのように一筋の光線を用いて距
離を測定するシンプルな構成であることが好ましいが、この光センサとして複数筋の光線
を用いて多点の距離を測定するものであってもよい。また、光の照射に伴う反射光を測定
する物であっても、赤外光など輻射する光を測定する物であってもよい。光検知センサが
フォークの長さを考慮に入れてフォークに接触しそうな距離に障害物を検知したときには
通知手段を用いて警告を発する。
【0020】
前記非接触測定器は超音波を用いて距離を測定する超音波検知センサである場合(請求
項5)には、超音波を用いて所定の領域における距離を測定するものであってもよい。超
音波は幾らかの拡散が生じるので、所定の領域にける障害物の有無を測定することができ
、この領域を調整することによりフォークリフトの前方における障害物を適正に検出でき
る。超音波検知センサがフォークの長さを考慮に入れてフォークに接触しそうな距離に障
害物を検知したときには通知手段を用いて警告を発する。
【0021】
なお、前記非接触測定器として光検知センサと超音波検知センサを組み合わせて用いて
もよい。
【0022】
前記非接触測定器はフォーク先端部近傍を撮像するカメラを備える場合(請求項6)に
は、フォークの下端から前方を撮像した画像によって、前方にある障害物を確認すること
ができる。なお、カメラによって撮像される画像は障害物に当たって反射する光を二次元
的に検知するものであるが、カメラ側から赤外光などを照射して反射する光を検出して撮
像を行うものであっても、障害物から輻射する遠赤外線を用いて撮像を行うものであって
もよい。撮像した画像は通知手段としてのモニタに表示させることができる。なお、撮像
した画像を解析して前方に衝突の可能性のある障害物があると判断する信号処理回路と、
この信号処理回路によって障害物がありと判断したときに前記通知手段から警告を出力す
るようにしてもよい。また、カメラは前記光検知センサおよび超音波検知センサと共に取
付けられてもよい。
【0023】
前記通知手段は表示装置、ブザー、スピーカホンなどの発音装置を備える場合(請求項
7)には、フォークの前方に障害物があるときの通知を警告音(メロディ)および/また
は警告音声によって通知できるので、作業者はフォークリフトの操作から目線を移すこと
なく障害物の有無を確認できるので作業効率がよい。
【0024】
前記通知手段は警告を表示するディスプレイや警告ランプなどの表示装置を備える場合
(請求項8)には、障害物の状態を目視にて確認できるので、確実性が高くなる。とりわ
け、表示装置がディスプレイである場合には、作業者がフォークリフトの下端から覗いて
確認しているがごとく、障害物を確認できる。
【発明の効果】
【0025】
前述したように、本発明によれば、フォークリフトの下端に突出させた状態においてフ
ォークの前方の障害物(荷物)の有無を確認する非接触測定器を取り付け、その非接触測
定器で前方の障害物の有無を確認できる。また、フォークリフトの運転作業者が確認装置
の情報を運転席で見聞きすることで、前方の障害物の有無が確認でき安全に運行できる。
【0026】
フォーク(爪)の下降端では、障害物を確認する確認装置を、フォーク内に格納する出
、退機能を備え。フォーク上昇時は、フォーク下部に確認装置が現れ、障害物を確認する
ことができ、それだけ安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のフォークリフトの安全装置を取付けたフォークリフトの全体構成お よび動作を説明する図である。
【図2】第1実施形態に係るフォークリフトの安全装置の構成を説明する図である。
【図3】前記フォークリフトの安全装置の動作を説明する図である。
【図4】前記フォークリフトの安全装置の動作を説明する別の図である。
【図5】第2実施形態に係るフォークリフトの安全装置の構成を示す図である。
【図6】第3実施形態に係るフォークリフトの安全装置の構成を示す図である。
【図7】第4実施形態に係るフォークリフトの安全装置を取付けたフォークリフトの 全体構成および動作を説明する図である。
【図8】図7に示すフォークリフトの安全装置の構成を示す図である。
【図9】フォークリフトによって整理される荷物の例を示す図である。
【図10】従来のフォークリフトの全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図1〜図4を用いて、本発明の第1実施形態に係るフォークリフトの安全装置1
の構成および動作を説明する。図1は本発明のフォークリフトの安全装置1を取付けたフ
ォークリフト2の構成を示し、このフォークリフト2はパレット3に載せた荷物4a,4
b,4cを搬送し、積み上げるものである。
【0029】
図2〜図4に示すように、第1実施形態のフォークリフトの安全装置1はフォーク2a
の固定用ブラケット2bに下方に出退可能に取付けられた昇降ブラケット5と、この昇降
ブラケット5を突出させた状態においてフォーク2a間の下端部分の前方にある障害物を
測定可能な位置に取付けられた非接触測定器の一例としての光電センサ6と、前記フォー
ク2aの上昇時に前記昇降ブラケット5をフォーク固定用ブラケット2bから下方に所定
長さだけ突出させる一方、フォーク2aの下降時においては前記光電センサ6が床に接触
しない程度に前記昇降ブラケット5を後退させる出退機構7(図3,図4のみに図示)と
、運転席から確認できる位置に設置されて前記非接触測定器によって測定された前方の障
害物を通知させる通知手段の一例としてのホーン型スピーカ8aおよび表示装置の一例と
しての警報ランプ8bと、制御部9とを備える。
【0030】
前記フォークリフト2は前記フォーク固定用ブラケット2bを摺動自在に保持するイン
ナーマスト2cと、このインナーマスト2cを摺動自在に保持するアウターマスト2dを
有し、アウターマスト2dは車両本体2eに傾倒可能に取付けられている。また、アウタ
ーマスト2d、インナーマスト2c、フォーク固定用ブラケット2bはチェーンなどによ
って連動する。
【0031】
前記昇降ブラケット5はフォーク固定用ブラケット2bの下方に突出させた状態と、フ
ォーク固定用ブラケット2b内に収納されるように後退させた状態の2つの状態を切り替
え可能(出退可能)となるようにフォーク固定用ブラケット2bに対して上下方向に摺動
自在に形成されている。また、5aは前記昇降ブラケット5がフォーク固定用ブラケット
2bから下方に突出している状態であるかどうかを検出するリミットスイッチなどの測定
器位置確認スイッチであり、この測定器位置確認スイッチ5aによって測定された昇降ブ
ラケット5がフォーク固定用ブラケット2bの下方に突出させた状態であるかどうかの信
号は制御部9に送られる。
【0032】
前記光電センサ6は昇降ブラケット5の下端部に取付けられたものであり、フォーク2
bを上昇させた状態では2本のフォークの間において、フォーク2bよりも下に突出させ
た状態(図1、図4参照)でまっすぐ前方にレーザビームBを照射し、その反射光を用い
て障害物(荷物4b)との距離L0を測定する。また、光電センサ6は測定した距離L0
の情報は電気信号の形で制御部9に出力するものである。
【0033】
図3、図4に示すように出退機構7は、例えば、一端がフォークリフト2の車体2e、
他端が前記昇降ブラケット5にそれぞれ固定されて昇降ブラケット5を吊り下げる索体の
一例としてのワイヤ10と、インナーマスト2cに回動自在に取付けられて前記索体をか
けるように構成された第1プーリ11と、前記インナーマスト2cに回動自在に取付けら
れて前記フォーク2aが下端部に位置する状態で前記昇降ブラケット5および光電センサ
6が床面FLから高さh1だけ浮かせるようにワイヤ10を曲げて引っ張る程度にワイヤ
10に当接する第2プーリ12と、前記フォーク2aを下降端に位置させた状態で第1プ
ーリ11より高さh2だけ高い位置となるようにフォークリフト本体2eに回動自在に取
付けられる第1プーリ13とを備える。
【0034】
また、フォーク2aを最下端に位置させた状態における前記プーリ11〜13の位置関
係は、第1プーリ11の上端に対して第3プーリー13の上端(この第3プーリ13を省
略する場合は本体2eとの接続部)が高さh2だけ高くなる位置であり、第1プーリ11
の上端に対する第2プーリ12の下端は高さh3だけ低くなる位置に取付けられている。
この場合、フォーク2aを最下端に位置させた状態では、ワイヤ10を少なくとも式(1
)に示す長さLhだけ引っ張ることが可能である。
【0035】
Lh=h3×2+h2 … 式(1)
【0036】
前記ホーン型スピーカ8aはフォークリフト2の運転者作業者に聞こえやすい位置に取
付けられるものであり、本実施形態では邪魔にならない屋根の上に取付けている。また、
警報ランプ8aは運転作業者の目にとまる位置に取付けられるものであり、本実施形態で
は前方の保護フレームに取付けている。なお、ホーン型スピーカ8aから発生する音はメ
ロディにすることにより不快感を少なくすることができるが、ブザー音やサイレンや音声
のように警告的な意味合いを持たせた音であってもよい。つまり、発音装置はスピーカの
みならずブザーなどであってもよい。同様に、表示装置も警報ランプである例を示してい
るが、警報メッセージを表示させるディスプレイのような表示装置を用いてもよい。
【0037】
制御部9は測定器位置確認スイッチ5aが光電センサ6の突出状態を検知し、かつ、光
電センサ6によって測定した距離L0がフォーク2aの長さL1に安全確保のための距離
(任意)を加えた値よりも小さいときに前方に障害物ありと判断してホーン型スピーカ8
aに警告音のメロディを発生させると同時に警報ランプ8aを点灯させるものであり、リ
レー回路などを用いて容易に形成することができるが、PLCやマイクロコンピュータを
用いて形成しても良い。
【0038】
前記ワイヤ10は昇降ブラケット5などを吊すための十分な強度と、柔軟性をプーリー
11〜13にそって湾曲する柔軟性を兼ね備えるので好ましいが、ワイヤに代えてロープ
やチェーンを用いてもよいことは言うまでもない。
【0039】
上述のように構成された前記フォークリフトの安全装置1は、上述の出退機構7を備え
ることにより、図3に示すようにフォーク2aを最下端に配置させた状態ではワイヤ10
に第2プーリ12が当接し、このワイヤ10を図示略M字状に湾曲させるので、ワイヤ1
0を少なくとも長さLhだけ引っ張ることができ、光電センサ6を床面FLから高さh1
だけ浮かせることができる。なお、このときは測定器位置確認スイッチ5aは光電センサ
6が後退状態であることを検知しているので、制御部9が無駄に警報を出力することがな
い。
【0040】
また、図4に示すようにフォーク2aを上昇させた状態では第2プーリ12がワイヤー
10を湾曲させることがなくなるので、光電センサ6をフォーク2aの下端から突出させ
ることができる。フォーク2aの下端から突出する光電センサ6はインナーマスト2cに
回動自在に取付けられた第1プーリ11に巻回されているワイヤ10によって吊り下げら
れているのでフォーク2aの上下移動に追従して上下方向に移動し、フォーク2aに対す
る光電センサ6の相対的な位置を固定することができる。したがって、光電センサ6は常
に、フォーク2aの下端部分における前方に障害物が無いことを確認することができる。
【0041】
なお、このとき光電センサ6から照射されるレーザビームBの位置はフォーク2aを差
し込んだパレット3の下端よりもわずかに下であることが好ましい。これによって作業者
はパレット3の下端部が前方の荷物4a,4bなどの障害物に接触しそうである状況をホ
ーン型スピーカ8aの警報メロディおよび警報ランプ8bの点灯によって確認することが
でき、たとえ前方の荷物4c(図1参照)によってフォーク2aおよびパレット3を目視
確認することができなくても、荷崩れの原因となる接触を避けることができる。
【0042】
つまり、前記光電センサ6が前方の障害物を検知すると、ホーン型スピーカから警報メ
ロディが流れ、警報ランプが点灯するので作業者はフォーク2aを少し上げて警報が止ま
ることを確認した後に前進して荷物4cを積み上げることができる。
【0043】
本発明のフォークリフトの安全装置1によれば従来装置では行えなかったフォーク
2aに荷物4cを載せた状態における安全確認を行なうことができるので、極めて有用で
ある。
【0044】
図5は第1実施形態の変形例となる第2実施形態のフォークリフトの安全装置1aを示
す図である。なお、以下の説明において図1〜図4と同じ符号を用いて説明する部材は同
一または同等の部材であるので、その詳細な構成の説明を省略する。
【0045】
図5に示すように、昇降ブラケット5に取付けられる非接触測定器は超音波検知センサ
6aであってもよい。この超音波検知センサ6aは平面視においてフォーク2aの間で、
フォーク2aの下側において超音波Wを照射し、荷物4bなどに当たって反射した超音波
を用いて前方の障害物を検出するものである。
【0046】
本実施形態のように超音波検知センサ6aを用いることにより検知エリアに広がりを持
たせることができ、両側のフォーク2aの前方にある障害物を一つの超音波検知センサ6
aによって検知することができる。つまり、可及的に簡単な構成で十分な安全性の確保を
行なうことができる。
【0047】
図6は第1、第2実施形態の変形例となる第3実施形態のフォークリフトの安全装置1
bを示す図である。以下の説明において図1〜図5と同じ符号を用いて説明する部材は同
一または同等の部材であるので、その詳細な構成の説明を省略する。
【0048】
図5に示すように、昇降ブラケット5に取付けられる非接触測定器はフォーク2aの位
置にあわせて左右のフォーク2aの下端部分にそれぞれ配置された光電センサ6b,6c
であってもよい。この光電センサ6b,6cは平面視においてフォーク2aの延長線上に
それぞれレーザビームBを照射して前方の障害物を検出する。前記制御部9はどちらか一
方の光電センサ6b,6cが障害物を検知すると、警報を出力する。障害物の検出精度が
高まり、信頼性に優れている。
【0049】
図7,8は本発明のさらに異なる第4実施形態のフォークリフトの安全装置1cを
示す図である。また、図7,8の説明においても図1〜図6と同じ符号を用いて説明する
部材は同一または同等の部材であるので、その詳細な構成の説明を省略する。
【0050】
第4実施形態のフォークリフトの安全装置1cは前記昇降ブラケット5の下端部で平面
視においてフォーク2a基端部の間の位置に、非接触測定器の一例として一台のカメラ6
eを設けた点と、通知手段の一例として前記カメラ6eによって撮像した像を表示する表
示装置としてのモニタ8cを設けた点において第1〜第3実施形態と異なっている。
【0051】
カメラ6eは作業者の目の届きにくいフォーク2a下端から前方を撮像範囲Aとする像
を撮像するものであり、前記制御部9はマイクロコンピュータなどの信号処理装置を備え
て前記カメラ6eによって撮像された像を用いて、画像解析することにより前方に障害物
がある状態を検出したときに前記ホーン型スピーカ8aを用いて警報音を出力する。なお
、ホーン型スピーカ8aを省略する場合は制御部9はリレー回路であってもよい。
【0052】
本実施形態のように構成することにより、作業者にとって死角となる部分をモニタ8c
によって確認できるので、極めてシンプルな構成でありながら十分な安全性の確保を行な
うことができる。
【符号の説明】
【0053】
1,1a〜1c フォークリフトの安全装置
2 フォークリフト
2a フォーク
2b フォーク固定用ブラケット
5 昇降ブラケット
5a 測定器位置確認スイッチ
6,6a〜6e 非接触測定器
7 出退機構
8a〜8c 通知手段
10 索体
11 第1プーリ
12 第2プーリ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーク固定用ブラケットに下方に出退可能に取付けられた昇降ブラケットと、
この昇降ブラケットを突出させた状態においてフォーク間の下端部分の前方にある障害物
を測定可能な位置に取付けられた非接触測定器と、
前記フォークの上昇時に前記昇降ブラケットをフォーク固定用ブラケットから下方に所定
長さだけ突出させる一方、フォーク下降時においては前記非接触測定器が床に接触しない
程度に前記昇降ブラケットを後退させる出退機構と、
運転席から確認できる位置に設置されて前記非接触測定器によって測定された前方の障害
物を通知させる通知手段とを備えることを特徴とするフォークリフトの安全装置。
【請求項2】
フォーク固定用ブラケットに出退可能に取付けられた昇降ブラケットと、
この昇降ブラケットを突出させた状態において各フォークの下端部分の前方にある障害物
をそれぞれ測定可能な位置に取付けられた非接触測定器と、
前記フォークの上昇時に前記昇降ブラケットをフォーク固定用ブラケットから下方に所定
長さだけ突出させる一方、フォーク下降時においては前記非接触測定器が床に接触しない
程度に前記昇降ブラケットを後退させる出退機構と、
運転席から確認できる位置に設置されて前記非接触測定器によって測定された前方の障害
物を通知させる通知手段とを備えることを特徴とするフォークリフトの安全装置。
【請求項3】
前記出退機構は、一端がフォークリフトの車体、他端が前記昇降ブラケットにそれぞれ
固定されて昇降ブラケットを吊り下げる索体と、インナーマストに回動自在に取付けられ
て前記索体をかけるように構成された第1プーリと、前記インナーマストに回動自在に取
付けられて前記フォークが下端部に位置する状態で前記昇降ブラケットが床面に当たらな
いように索体を曲げて引っ張る程度に索体に当接する第2プーリと、前記昇降ブラケット
の下側に取付けられて昇降ブラケットの突出状態においてのみ前記非接触測定器を有効に
する測定器位置確認スイッチとを備える請求項1または請求項2に記載のフォークリフト
の安全装置。
【請求項4】
前記非接触測定器は光を用いて距離を測定する光検知センサである請求項1〜請求項3
の何れか1項に記載のフォークリフトの安全装置。
【請求項5】
前記非接触測定器は超音波を用いて距離を測定する超音波検知センサである請求項1〜
請求項3の何れか1項に記載のフォークリフトの安全装置。
【請求項6】
前記非接触測定器はフォーク先端部近傍を撮像するカメラを備える請求項1〜請求項5
の何れか1項に記載のフォークリフトの安全装置。
【請求項7】
前記通知手段は表示装置、ブザー、スピーカホンなどの発音装置を備える請求項1〜請
求項6の何れか1項に記載のフォークリフトの安全装置。
【請求項8】
前記通知手段は警告を表示するディスプレイや警告ランプなどの表示装置を備える請求
項1〜請求項7の何れか1項に記載のフォークリフトの安全装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−195334(P2011−195334A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197323(P2010−197323)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3159851号
【原出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000191353)新明工業株式会社 (75)
【出願人】(591018567)トヨタ輸送株式会社 (4)
【Fターム(参考)】