説明

フォークリフト

【課題】1本の指の操作で、フォークの2つの動作を同時に行えるようにする。
【解決手段】フォークリフトは、荷役用のフォークを操作するための油圧操作部4が表示された表示装置2と、油圧操作部4に対するタッチ操作を検出するためのタッチセンサ25と、タッチセンサ25からの検出信号を受けて、フォークの動作を制御する制御装置とを備える。油圧操作部4には、水平軸Xと、水平軸Xに直交する垂直軸Yとが設定され、水平軸Xおよび垂直軸Yの交点に基準位置Oが設定される。フォークは、タッチセンサ25が基準位置Oから水平軸X方向へのスライド操作を検出すると、第1の動作をし、タッチセンサ25が基準位置Oから垂直軸Y方向へのスライド操作を検出すると、第2の動作をし、タッチセンサ25が基準位置Oから水平軸X方向および垂直軸Y方向に対して斜め方向へのスライド操作を検出すると、第1の動作および前記第2の動作を同時にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示手段に表示された油圧操作部をタッチ操作して、フォークを操作するフォークリフトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフォークリフトでは、図9に示すように、運転室20の前側の操作台21に、荷役用のフォークを操作するための油圧操作レバー22が設けられている。この油圧操作レバー22は、フォークを上昇・下降させるためのリフトレバー22aと、フォークを前傾・後傾させるためのティルトレバー22bと、フォークを前進・後進させるためのリーチレバー22cとがある。オペレータは運転室20に搭乗して油圧操作レバー22を傾動すると、油圧装置が駆動し、フォークは油圧操作レバー22の操作量に応じて動作する。
【0003】
また例えば、特許文献1に記載のフォークリフトでは、上記のような機械的な油圧操作レバー22を設ける代わりに、フォークを操作するために、タッチパネル式のモニタディスプレイが設けられる。モニタディスプレイ上には、リフト操作用のタッチスイッチと、ティルト操作用のタッチスイッチとが表示される。そして、オペレータが指で、こられのタッチスイッチに対してタッチ操作をすると、油圧装置が駆動し、フォークがタッチ操作に応じて動作する。
【0004】
このように、従来のフォークリフトは、図9のように油圧操作レバー22を傾動してフォークを操作するものと、特許文献1のようにモニタディスプレイをタッチ操作してフォークを操作するものとがある。
【0005】
ところで、フォークリフトによって荷役作業をする際に、3つのフォークの動作のうち、すなわちリフト動作、ティルト動作、およびリーチ動作うち、いずれか2つの動作が同時に行われるように、フォークを操作したい場合がある。図9のフォークリフトで、例えば、リフト動作およびリーチ動作を同時に行うためには、オペレータはリフトレバー22aおよびリーチレバー22cの双方を同時に傾動させる。しかしながら、この操作をするためには、オペレータは左右両方の手を用いなければならず、非常に操作性が悪い。
【0006】
特許文献1のフォークリフトで、例えば、リフト動作およびティルト動作を同時に行うためには、オペレータがリフト操作用のタッチスイッチと、ティルト操作用のタッチスイッチとを同時にタッチ操作する。すなわち、2本の指を用いて、一方の指でリフト操作用のタッチスイッチに対してタッチ操作を、他方の指でティルト操作用のタッチスイッチに対してタッチ操作を、同時に行う。したがって、特許文献1のフォークリフトでは、図9のフォークリフトと違い、左右両方の手を用いる必要はなく、片手の操作でフォークの2つの動作が同時に行える。
【0007】
しかしながら、2本の指は必須であり、しかも2本の指を器用に動かすことが要求される。そのため、特許文献1のフォークリフトでも、フォークが2つの動作を同時にするように、フォークを操作することは難しい。このように、2つの動作を同時に行うためには、両手または2本の指が必要であり、非常に操作がしにくいものだった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平07−242400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、1本の指の操作で、フォークが2つの動作を同時に行うフォークリフトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係るフォークリフトは、荷役用のフォークと、フォークを操作するための油圧操作部が表示された表示手段と、表示手段に設けられ、油圧操作部に対するタッチ操作を検出するためのタッチセンサと、タッチセンサからの検出信号を受けて、フォークの動作を制御する制御手段とを備えたフォークリフトであって、
油圧操作部には、水平軸と、水平軸に直交する垂直軸とが設定され、水平軸および垂直軸の交点に基準位置が設定され、フォークは、タッチセンサが基準位置から水平軸方向へのスライド操作を検出すると、第1の動作をし、タッチセンサが基準位置から垂直軸方向へのスライド操作を検出すると、第2の動作をし、タッチセンサが基準位置から水平軸方向および垂直軸方向に対して斜め方向へのスライド操作を検出すると、第1の動作および第2の動作を同時にすることを特徴とする。
【0011】
好ましくは、スライド操作によって行われるフォークの動作を切り替える動作切替手段を備え、動作切替手段は、フォークが第1の動作に替えて第3の動作をするように、またはフォークが第2の動作に替えて第3の動作をするように、フォークの動作を切り替える。
【0012】
好ましくは、第1の動作はリーチ動作であり、第2の動作はリフト動作であり、第3の動作はティルト動作である。
【0013】
好ましくは、第1の動作の動作速度は、基準位置とオペレータの指のタッチ位置との水平軸方向の距離に比例し、第2の動作の動作速度は、基準位置とタッチ位置との垂直軸方向の距離に比例する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るフォークリフトは、上記の通り、オペレータが指により、油圧操作部に設定された基準位置からスライド操作をすることで、フォークが動作する。基準位置から水平軸方向にスライド操作をすると、フォークが第1の動作(例えば、リーチ動作)をし、垂直軸方向にスライド操作をすると第2の動作(例えば、リフト動作)をする。
【0015】
そして、基準位置から水平軸および垂直軸に対して斜め方向にスライド操作をすると、フォークが第1の動作および第2の動作を同時にする。すなわち、従来のように2本の指を用いなくても、1本の指の操作で、フォークは2つの動作を同時に行う。
【0016】
このように、本発明に係るフォークリフトでは、1本の指を水平軸および垂直軸に対して斜め方向にスライドさせるという単純な操作で、フォークに2つの動作を同時にさせることができ、フォークの操作がしやすい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るフォークリフトの斜視図である。
【図2】本発明に係るフォークリフトの運転室を示す図である。
【図3】本発明に係るフォークリフトの説明図である。
【図4】表示装置(表示手段)の構成を示す図である。
【図5】フォークの操作を説明する図である。
【図6】フォークの操作を説明する図である。
【図7】表示装置の構成を示す図である。
【図8】表示装置の構成を示す図である。
【図9】従来のフォークリフトの運転室を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、本発明に係るフォークリフト(以下、単にフォークリフトという)について説明する。図1に示すように、フォークリフトはリーチ型フォークリフトであって、車体1の前方に、車体1の両側から前方にのびる一対のストラドルレッグ10と、ストラドルレッグ10に沿って前後に移動可能なキャリッジ11とを備える。フォークリフトは、キャリッジ11に立設された一対のマスト12と、マスト12に沿って昇降可能に設けられたリフトブラケット13と、リフトブラケット13の前方に設けられた荷役用の一対のフォーク14とを備える。
【0019】
フォークリフトは、リフトブラケット13を昇降させるためのリフトシリンダ15を備える。リフトシリンダ15は、油圧シリンダであり、伸縮方向が上下方向となるようにマスト12に起立して設けられる。リフトシリンダ15が伸長すると、リフトブラケット13はマスト12に案内されて上昇し、リフトブラケット13とともにフォーク14も上昇する。一方、リフトシリンダ15が短縮すると、リフトブラケット13はマスト12に案内されて下降し、リフトブラケット13とともにフォーク14も下降する。このように、リフトシリンダ15の伸縮によって、フォーク14のリフト動作が行われる。
【0020】
リフトブラケット13は、車体1の左右方向に設けられたシャフト16と、上端がシャフト16に回動可能に支持されたティルトブラケット17とを備える。左右一対のフォーク14は、後面にティルトブラケット17が当接した状態でシャフト16に支持される。さらに、フォークリフトは、ティルトブラケット17を前後に揺動するためのティルトシリンダ18を備える。ティルトシリンダ18は、油圧シリンダであり、そのロッド部がティルトブラケット17の後面に接触するようにリフトブラケット13に支持される。ティルトシリンダ18が伸長すると、ティルトブラケット17およびフォーク14がシャフト16を中心として前方に回動し、フォーク14は後傾する。一方、ティルトシリンダ18が短縮すると、ティルトブラケット17およびフォーク14がシャフト16を中心として後方に回動し、フォーク14は前傾する。このように、ティルトシリンダ18の伸縮によって、フォーク14のティルト動作が行われる。
【0021】
フォークリフトは、キャリッジ11を車体1の前後方向に移動させるためのリーチシリンダ19を備える。リーチシリンダ19は、油圧シリンダであり、伸縮方向が車体1の前後方向となるように、車体1とキャリッジ11との間に設けられる。リーチシリンダ19が伸長すると、キャリッジ11はストラドルレッグ10に案内されて前進し、マスト12と一体的にフォーク14が前進(リーチアウト)する。一方、リーチシリンダ19が短縮すると、キャリッジ11はストラドルレッグ10に案内されて後進し、マスト12と一体的にフォーク14が後進(リーチイン)する。このように、リーチシリンダ19の伸縮によって、フォーク14のリーチ動作が行われる。
【0022】
図1および図2に示すように、車体1の後部には、オペレータが搭乗するための運転室20が形成される。車体1の上部で、運転室20の前方には、フォークリフトを操作するための操作台21が形成される。
【0023】
フォークリフトは、オペレータのタッチ操作によって、フォーク14を操作するための表示装置2(表示手段)を備える。さらに、フォークリフトは、オペレータの表示装置2上でのタッチ操作による入力を受けて、上記したフォーク14の動作を制御するためのMPUなどからなる制御装置3(制御手段)を備える。制御装置3は、フォーク14の動作を制御するだけでなく、フォークリフトの走行制御など様々な制御を行う。表示装置2は操作台21上に設けられ、制御装置3は車体1の内部に設けられる。
【0024】
表示装置2は、タッチパネル式である。表示装置2は、図3に示すように、情報を表示するためのディスプレイ24と、オペレータのタッチ操作を検出するためのタッチセンサ25とを備える。タッチセンサ25はディスプレイ24全体に貼り付けられ、ディスプレイ24へのタップ操作、ダブルタップ操作、スライド操作、フリック操作(ディスプレイ24をタッチして軽くはじく操作)などといった様々なタッチ操作を検出し、またタッチ操作の操作位置、操作方向、操作速度などを検出可能である。タッチセンサ25からの検出信号はデコーダ26を介して制御装置3へ出力される。
【0025】
表示装置2と制御装置3との間の通信方式は、RS232C、CAN、USBなどの有線通信、またはWi-Fiなどの無線LANなどによる無線通信である。通信方式が無線通信の場合、表示装置2および制御装置3に通信機器27が設けられる。そして、無線通信の場合、表示装置2を操作台21の所定の位置に設置する必要はなく、車体1の任意の位置に配置することができる。また、オペレータは表示装置2を携帯しながらフォーク14を操作できる。これにより、オペレータは、自由な操作姿勢でフォーク14の操作が可能となる。
【0026】
フォークリフトは、フォーク14の揚高を連続的に検出するリフト揚高検出センサ30と、フォーク14のティルト角度を連続的に検出するティルト検出センサ31と、フォーク14のリーチ距離を連続的に検出するリーチ検出センサ32とを備える。
【0027】
また、フォークリフトは、上記の各油圧シリンダ15、18、19を伸縮させるための油圧モータ34と、油圧モータ34の出力を制御するためのモータドライバ33と、油圧モータ34の回転を検出するための回転検出エンコーダ35とを備える。制御装置3は、タッチ操作によるタッチセンサ25からの検出信号を受けると、モータドライバ33を介して油圧モータ34を駆動させる。油圧モータ34が駆動することで油圧シリンダ15、18、19は動作し、各検出センサ30、31、32はフォーク14の位置(揚高、ティルト角度、リーチ距離)を検出し、フォーク14の動作がタッチ操作に対応するように制御される。
【0028】
次に、図4に基づいて、表示装置2の具体的な構成について説明する。表示装置2のディスプレイ24には、フォーク14を操作するための油圧操作部4が表示される。油圧操作部4は、正方形状である。油圧操作部4には、水平軸Xと、水平軸Xに直交する垂直軸Yとが設定され、表示される。そして、水平軸Xと垂直軸Yとの交点に基準位置Oが設定される。オペレータは、後述するように、指を油圧操作部4上で基準位置Oからスライドさせて、フォーク14の操作を行う。
【0029】
基準位置Oにはポインタ40が表示される。ポインタ40はオペレータのスライド操作によって、油圧操作部4を移動するように構成される。オペレータが指で基準位置Oに表示されたポインタ40をタッチし、基準位置Oからスライド操作した場合、ポインタ40はスライド操作している指のタッチ位置に表示され、スライド操作している指の動きに合わせて油圧操作部4を移動する。そして、オペレータが指をポインタ40から離すと、ポインタ40は基準位置Oにまで自動的に戻る。なお、このポインタ40は、油圧操作部4に表示させなくてもよい。
【0030】
図4の油圧操作部4は、リーチ動作およびリフト動作をするための構成である。水平軸Xがリーチ動作に対応し、垂直軸Yがリフト動作に対応する。リーチ動作は、オペレータが指で、基準位置Oから水平軸X方向にスライド操作をすることにより行われる。まず、オペレータは、基準位置O(ポインタ40)に指を当てる。そして、図5に示すように、基準位置Oから右方向にスライド操作をすると(図5の実線矢印参照)、フォーク14はリーチアウトする。すなわち、タッチセンサ25が右方向へのスライド操作を検出すると、制御装置3がリーチシリンダ19を伸長させて、フォーク14をリーチアウトさせる。それから、スライド操作した指をポインタ40(油圧操作部4)から離さずに、指をタッチし続けている間は、フォーク14はリーチアウトし続ける。スライド操作した指をポインタ40(油圧操作部4)から離し、タッチを解除すると、フォーク14は停止する。スライド操作した指をポインタ40から離すと、ポインタ40は基準位置Oに戻る。再度フォーク14を操作するには、基準位置Oに戻ったポインタ40に指を当てて、再び基準位置Oからスライド操作をする。
【0031】
オペレータが基準位置Oから左方向にスライド操作をすると、フォーク14はリーチインする。すなわち、タッチセンサ25が左方向へのスライド操作を検出すると、制御装置3がリーチシリンダ19を短縮させて、フォーク14をリーチインさせる。そして、スライド操作した指をポインタ40から離さずに、タッチし続けている間は、フォーク14はリーチインし続ける。スライド操作した指をポインタ40から離し、タッチを解除するとフォーク14は停止する。
【0032】
このように、基準位置Oから右方向にスライド操作をすると、フォーク14はリーチアウトし、基準位置Oから左方向にスライド操作をすると、フォーク14はリーチインする。
【0033】
上記のように、スライド操作した指をポインタ40から離さずに、タッチし続けている間は、フォーク14は動作を続け、スライド操作した指をポインタ40から離し、タッチを解除すると、フォーク14は動作を停止する構成を有する。当該構成は、以下で説明するスライド操作によるフォーク14の動作(リフト動作、リーチ動作、ティルト動作、これら3つのうち2つの同時動作)に共通する構成である。そのため、以下では省略する。
【0034】
リフト動作は、オペレータが指で、基準位置Oから垂直軸Y方向にスライド操作をすることで行われる。オペレータが、基準位置Oにあるポインタ40に指を当て、基準位置Oから上方向にスライド操作をすると(図5の点線矢印参照)、フォーク14は上昇する。すなわち、タッチセンサ25が上方向へのスライド操作を検出すると、制御装置3がリフトシリンダ15を伸長させて、フォーク14を上昇させる。
【0035】
オペレータが基準位置Oから下方向にスライド操作をすると、フォーク14は下降する。すなわち、タッチセンサ25が下方向へのスライド操作を検出すると、制御装置3がリフトシリンダ15を短縮させて、フォーク14を下降させる。
【0036】
このように、基準位置Oから上方向にスライド操作をすると、フォーク14は上昇し、基準位置Oから下方向にスライド操作をすると、フォーク14は下降する。
【0037】
さらに、この油圧操作部4では、基準位置Oから水平軸Xおよび垂直軸Yに対して斜め方向へスライド操作をすれば、フォーク14はリーチ動作およびリフト動作を同時に行う。例えば、図6に示すように、オペレータが、基準位置Oから右上方向にスライド操作をすると(実線矢印参照)、フォーク14はリーチアウトしながら上昇する。すなわち、タッチセンサ25が右上方向へのスライド操作を検出すると、制御装置3はリーチシリンダ19およびリフトシリンダ15を同時に伸長して、フォーク14をリーチアウトおよび上昇させる。なお、オペレータがスライド操作した指をポインタ40(油圧操作部4)から離さずにタッチし続けた場合、フォーク14はリーチ動作およびリフト動作の双方を続ける。そして、スライド操作した指をポインタ40(油圧操作部4)から離しタッチを解除すれば、フォーク14は双方の動作を止める。
【0038】
また、例えば、基準位置Oから左上方向にスライド操作をすると(点線矢印参照)、フォーク14はリーチインしながら上昇する。すなわち、タッチセンサ25が左上方向へのスライド操作を検出すると、制御装置3はリーチシリンダ19を短縮し、同時にリフトシリンダ15を伸長して、フォーク14をリーチインおよび上昇させる。
【0039】
以下同様に、基準位置Oから左下方向へスライド操作をすれば、フォーク14はリーチインしながら、下降する。基準位置Oから右下方向へスライド操作をすれば、フォーク14はリーチアウトしながら下降する。
【0040】
また、リーチ動作およびリフト動作をするにあたり、図5または図6に示すように、リーチ速度を、基準位置Oと、オペレータの指のタッチ位置(すなわち、ポインタ40の位置)との水平軸X方向の距離Lxに比例させ、リフト速度を、基準位置Oと当該タッチ位置との垂直軸Y方向の距離Lyに比例させる。これにより、スライド距離を変えれば、リーチ速度およびリフト速度を自由に変えて操作できる。
【0041】
例えば、基準位置Oから右上方向にスライド操作をするにあたり、図6の通り、実線矢印で示すスライド操作をし、スライド操作した指をタッチし続けている場合と、一点鎖線矢印で示すスライド操作をし、スライド操作した指をタッチし続けている場合とを考える。どちらのスライド操作もスライド距離は同じである。しかしながら、実線矢印のスライド操作における基準位置Oとタッチ位置との水平軸X方向の距離Lxは、一点鎖線矢印のスライド操作の半分である。そして、実線矢印のスライド操作における基準位置Oとタッチ位置との垂直軸Y方向の距離Lyは、一点鎖線矢印のスライド操作の2倍である。
【0042】
したがって、実線矢印のスライド操作のリーチ速度は、一点鎖線矢印のスライド操作のリーチ速度の半分となる。そして、実線矢印のスライド操作のリフト速度は、一点鎖線矢印のスライド操作のリフト速度の2倍となる。すなわち、当該構成により、同じ距離だけスライド操作をする場合でも、スライド操作の水平軸X(または垂直軸Y)に対する角度を変えることで、リーチ動作とリフト動作との動作速度の比率を自由に変えることができる。
【0043】
以上のように、オペレータは、1本の指の操作で2つの動作を同時に行えるだけでなく、2つの動作の動作速度をそれぞれ自由に決めて、フォーク14を操作できる。
【0044】
上記の油圧操作部4の構成では、フォーク14はリフト動作およびリーチ動作をすることはできるが、ティルト動作をすることができない。そこで、制御装置3は、油圧操作部4に対するスライド操作により行われるフォーク14の動作を切り替える動作切替手段5(図3)を備える。以下、その構成について説明する。
【0045】
図4に示すディスプレイ24の表示画面において、オペレータがディスプレイ24の油圧操作部4を除く部分で、左方向にフリック操作を行う。タッチセンサ25が当該フリック操作を検出すると、ディスプレイ24の表示画面はスクロールし、図7に示す表示画面になる。図7の表示画面では、水平軸Xにおける表示は、図4のようにリーチ動作に関する表示ではなく、ティルト動作に関する表示になっている。
【0046】
一方、図4に示すディスプレイ24の表示画面において、オペレータがディスプレイ24の油圧操作部4を除く部分で、右方向にフリック操作を行う。タッチセンサ25が当該フリック操作を検出すると、ディスプレイ24の表示画面はスクロールし、図8に示す表示画面になる。図8の表示画面では、垂直軸Yにおける表示が、図4のようにリフト動作に関する表示ではなく、ティルト動作に関する表示になっている。表示装置2は、ディスプレイ24の油圧操作部4以外の部分に対する左右方向へのフリック操作によって、ディスプレイ24の表示画面をスクロールさせて、図4、図7または図8のいずれかに示す表示画面に自由に変更できる。
【0047】
ディスプレイ24に対するフリック操作によって、ディスプレイ24を、図4の表示画面から図7の表示画面にしたとする。動作切替手段5は、タッチセンサ25からの検出信号を受けると、スライド操作によって行われるフォーク14の動作を切り替える。動作切替手段5は、この場合、フォークがリーチ動作に替えてティルト動作をするように設定を切り替える。
【0048】
したがって、図7の油圧操作部4では、オペレータが指で基準位置Oから水平軸X方向にスライド操作をすると、フォーク14は、図4の油圧操作部4のように、リーチ動作をするのではなく、ティルト動作をする。オペレータが、基準位置Oから右方向へスライド操作をすると、フォーク14が前傾する方向にティルトする。すなわち、タッチセンサ25が右方向へのスライド操作を検出すると、制御装置3がティルトシリンダ18を短縮し、フォーク14を前傾する方向にティルトさせる。オペレータが、基準位置Oから左方向へスライド操作をすると、フォーク14が後傾する方向にティルトする。すなわち、タッチセンサ25が左方向へのスライド操作を検出すると、制御装置3がティルトシリンダ18を伸長し、フォーク14を後傾する方向にティルトさせる。
【0049】
図7の油圧操作部4では、基準位置Oから垂直軸Y方向へスライド操作をした場合は、図4の油圧操作部4と同様に、フォーク14はリフト動作を行う。
【0050】
そして、図7の油圧操作部4では、基準位置Oから水平軸Xおよび垂直軸Yに対して斜め方向にスライド操作をすると、フォーク14がティルト動作およびリフト動作を同時に行う。例えば、基準位置Oから右上方向にスライド操作をすれば、前傾する方向にティルトしながら上昇する。すなわち、タッチセンサ25が右上方向のスライド操作を検出すると、制御装置3はティルトシリンダ18を短縮し、同時にリフトシリンダ15を伸長させて、フォーク14を前傾する方向にティルトおよび上昇させる。
【0051】
以下、同様に、基準位置Oから左上方向にスライド操作をすれば、フォーク14は後傾する方向にティルトしながら上昇し、基準位置Oから左下方向にスライド操作をすれば、フォーク14は後傾する方向にティルトしながら下降し、基準位置Oから右下方向にスライド操作をすれば、フォーク14は前傾する方向にティルトしながら下降する。
【0052】
なお、図7の油圧操作部4では、図5、図6で示した構成と同様に、ティルト速度は、基準位置Oとオペレータの指のタッチ位置との水平軸X方向の距離Lxに比例し、リフト速度は、基準位置Oと当該タッチ位置との垂直軸Y方向の距離Lyに比例する。
【0053】
ディスプレイ24に対するフリック操作によって、ディスプレイ24を、図4の表示画面から図8の表示画面に変更したとする。動作切替手段5は、タッチセンサ25からの検出信号を受け、スライド操作によって行われるフォーク14の動作を切り替える。動作切替手段5は、この場合、フォーク14がリフト動作に替えてティルト動作をするように設定を切り替える。
【0054】
したがって、図8の油圧操作部4では、基準位置Oから垂直軸Y方向にスライド操作をすると、フォーク14は、図4の油圧操作部4のように、リフト動作をするのではなく、ティルト動作をする。基準位置Oから上方向にスライド操作をすると、フォーク14は前傾する方向にティルトし、基準位置Oから下方向にスライド操作をすると、フォーク14は後傾する方向にティルトする。
【0055】
図8の油圧操作部4では、基準位置Oから水平軸X方向にスライド操作をすると、図4の油圧操作部4と同様に、リーチ動作を行う。
【0056】
そして、図8の油圧操作部4では、基準位置Oから水平軸Xおよび垂直軸Yに対して斜め方向にスライド操作をすると、フォーク14はリーチ動作およびティルト動作を同時に行う。例えば、基準位置Oから右上方向にスライド操作をすれば、フォーク14はリーチアウトしながら前傾する方向にティルトする。すなわち、タッチセンサ25が右上方向のスライド操作を検出すると、制御装置3はリーチシリンダ19を伸長させ、同時にティルトシリンダ18を短縮させて、フォーク14をリーチアウトおよび前傾する方向にティルトさせる。
【0057】
以下同様に、基準位置Oから左上方向にスライド操作をすれば、フォーク14はリーチインしながら、前傾する方向にティルトし、基準位置Oから左下方向にスライド操作をすれば、フォーク14はリーチインしながら、後傾する方向にティルトし、基準位置Oから右下方向にスライド操作をすれば、フォーク14はリーチアウトしながら後傾する方向にティルトする。
【0058】
なお、図8の油圧操作部4では、図5、図6で示した構成と同様に、リーチ速度は、基準位置Oとオペレータの指のタッチ位置との水平軸X方向の距離Lxに比例し、ティルト速度は、基準位置Oと当該タッチ位置との垂直軸Y方向の距離Lyに比例する。
【0059】
なお、フリック操作によって、図7の表示画面から図8の表示画面に変更した場合、動作切替手段5は、フォーク14がティルト動作に替えてリーチ動作をするように、リフト動作に替えてティルト動作をするように設定を切り替える。
【0060】
以上のように、図4の表示画面では、リーチ動作およびリフト動作を同時にでき、図7の表示画面では、ティルト動作およびリフト動作を同時にでき 図8の表示画面では、リーチ動作およびティルト動作を同時にできる。すなわち、ディスプレイ24を図4、図7または図8の表示画面に適宜切り替えることで、リフト動作、ティルト動作、リーチ動作の3つの動作のうち、いずれか2つの動作を組み合わせて、同時に行うことが可能となる。そして、1本の指をスライドさせるという非常に簡単な操作で、フォーク14に2つの動作を同時にさせることができ、従来のように2本の指を用いなくてもよく、フォーク14の操作がしやすい。
【符号の説明】
【0061】
14 フォーク
2 表示装置(表示手段)
24 ディスプレイ
25 タッチセンサ
3 制御装置(制御手段)
4 油圧操作部
5 動作切替手段
X 水平軸
Y 垂直軸
O 基準位置
Lx 水平軸方向の距離
Ly 垂直軸方向の距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷役用のフォークと、前記フォークを操作するための油圧操作部が表示された表示手段と、前記表示手段に設けられ、前記油圧操作部に対するタッチ操作を検出するためのタッチセンサと、前記タッチセンサからの検出信号を受けて、前記フォークの動作を制御する制御手段とを備えたフォークリフトであって、
前記油圧操作部には、水平軸と、前記水平軸に直交する垂直軸とが設定され、前記水平軸および前記垂直軸の交点に基準位置が設定され、前記フォークは、
前記タッチセンサが前記基準位置から水平軸方向へのスライド操作を検出すると、第1の動作をし、
前記タッチセンサが前記基準位置から垂直軸方向へのスライド操作を検出すると、第2の動作をし、
前記タッチセンサが前記基準位置から前記水平軸方向および前記垂直軸方向に対して斜め方向へのスライド操作を検出すると、前記第1の動作および前記第2の動作を同時にすることを特徴とするフォークリフト。
【請求項2】
スライド操作によって行われる前記フォークの動作を切り替える動作切替手段を備え、前記動作切替手段は、前記フォークが前記第1の動作に替えて第3の動作をするように、または前記フォークが前記第2の動作に替えて前記第3の動作をするように、前記フォークの動作を切り替えることを特徴とする請求項1に記載のフォークリフト。
【請求項3】
前記第1の動作はリーチ動作であり、前記第2の動作はリフト動作であり、前記第3の動作はティルト動作であることを特徴とする請求項2に記載のフォークリフト。
【請求項4】
前記第1の動作の動作速度は、前記基準位置とオペレータの指のタッチ位置との前記水平軸方向の距離に比例し、前記第2の動作の動作速度は、前記基準位置と前記タッチ位置との前記垂直軸方向の距離に比例することを特徴とする請求項1に記載のフォークリフト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−246126(P2012−246126A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121452(P2011−121452)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000232807)日本輸送機株式会社 (320)
【Fターム(参考)】