説明

フタロシアニン化合物

【課題】より短波長領域、特に640〜750nm付近に最大吸収波長を有し、耐熱性に優れ、グラム吸光係数が高いフタロシアニン化合物を提供する。
【解決手段】下記化学式2:


(式中、Xは酸素原子または硫黄原子であり、Aはフェニル基、置換基を有するフェニル基または置換基を有するナフチル基である。)または下記化学式3:


(式中、Rは炭素数1〜3のアルキレン基であり、Rは炭素数1〜8のアルキル基であり、nは1〜4の整数で示される基である)で示される基で芳香環が置換されたフタロシアニン化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フタロシアニン化合物およびフラットパネルディスプレイ用フィルターに関するものである。詳しくは、本発明は、640〜750nmという波長域に最大吸収波長を有するフタロシアニン化合物およびこれを含有するフラットパネルディスプレイ用フィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型で大画面にできるディスプレイとしてフラットパネルディスプレイが注目されている。なかでもプラズマディスプレイパネル(PDP:Plasma Display Panel)や液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等が市場に大きく広がり注目されている。しかしながら、PDPは、プラズマ放電の際に近赤外線光が発生し、この近赤外線が家電用テレビ、クーラー、ビデオデッキ等のリモコン等の周辺電子機器、さらには伝送系光通信の誤動作を誘発することがあり、この近赤外線をカットする赤外線吸収フィルターを前面に設置することが必要とされる。
【0003】
上記目的として、可視光線透過率が高く、ディスプレーの鮮明度を損なわず、ディスプレーから出る800〜1000nmの比較的長波長域の近赤外線光を効率よくカットできる、即ち、当該波長域の近赤外線の選択吸収能に優れたフタロシアニン系色素について、様々な研究がなされてきた(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかしながら、近年、情報量増加の流れが非常に早まり、例えばCD−Rが大容量光ディスクとしてDVD±Rに変貌しつつあるように記録波長の短波長化が要求されている。そのため、携帯電話やゲーム機などに利用されている800〜900nmの波長で現在同様にして使用されている光通信システムも将来は700nm前後の波長へと短波長化が図られると考えられる。しかしながら、現状のPDPは700〜750nmの波長に余分な発光があるものの、700〜750nmの波長をカットするフィルターは設置されておらず、伝送系光通信の誤動作を誘発する恐れがあり、この波長域の光線をカットするフィルターを前面に設置することが将来的に必要であると考えられる。
【0005】
また、同時に640〜700nmの波長の光は、赤色の発色が弱い一部のLCDに利用される例もあるが、610〜635nmの波長域の純粋な赤色とは異なり「深紅」と呼ばれる色調であることから、フラットパネルディスプレイや液晶ディスプレイの分野では必ずしも好ましい色調の光とはいえず、特に赤色の発光が強いPDPでは、純粋な赤色を再現する為に、この波長域の光線をカットするフィルターが必要となってきている。
【特許文献1】特開2001−264532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、640〜750nmという波長域に最大吸収波長を有することに加え、プラズマディスプレー用フィルターに添加される近赤外線吸収色素には、耐熱性などの諸特性が要求される。また、近赤外線吸収色素の添加量をできるだけ少なくし、かつ効率的な吸収特性を得るためには、色素のグラム吸光係数が高いものが要求される。
【0007】
したがって、本発明は、上記事情を鑑みて、より短波長領域、特に640〜750nm付近に最大吸収波長を有し、耐熱性に優れ、グラム吸光係数が高いフタロシアニン化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、特定の構造を有するフタロシアニン化合物が短波長領域、特に640〜750nm付近に最大吸収波長を示し、また耐熱性に優れ、グラム吸光係数が高いことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、上記目的は、下記式(1):
【0010】
【化1】

【0011】
式中、Z〜Z16は、それぞれ独立して、水素原子、下記化学式2:
【0012】
【化2】

【0013】
式中、Xは酸素原子または硫黄原子であり、Aはフェニル基、1〜5の置換基Rを有するフェニル基または1〜7の置換基Rを有するナフチル基であり、前記置換基Rは、それぞれ独立して、ニトロ基、COOR、OR(Rは炭素数1〜8のアルキル基)、ハロゲン原子、アリール基、シアノ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基であり、この際、Rは、炭素数1〜8のアルキル基(この際、アルキル基は、炭素数1〜8のアルキルオキシ基、ハロゲン原子もしくはアリール基で置換されていてもよい)、または下記化学式3で示される基;
【0014】
【化3】

【0015】
式中、Rは炭素数1〜3のアルキレン基であり、Rは炭素数1〜8のアルキル基であり、nは1〜4の整数である;
である:
で示される基、または下記化学式2’:
【0016】
【化4】

【0017】
式中、R’は炭素数1〜3のアルキレン基であり、R”は炭素数1〜8のアルキル基であり、lは0〜4の整数である:
で示される基であり、
この際、Z、Z、Z、Z、Z、Z12、Z13及びZ16のうち1〜3個は、化学式2または化学式2’で示される基であり、Z、Z、Z、Z、Z10、Z11、Z14及びZ15のうち3〜1個は、化学式2または化学式2’で示される基であり、Z〜Z16のうち合計4個は、化学式2または化学式2’で示される基であり、Z〜Z16のうち少なくとも1個は、化学式2で示される基であり、
Mは無金属、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表わす:
で示されるフタロシアニン化合物によって達成される。
【発明の効果】
【0018】
本発明のフタロシアニン化合物は、特に640〜750nm付近に最大吸収波長を示すため、フラットパネルディスプレイ、特にPDPやLCDが放つ無用の近赤外域(700〜750nm)の光や、いわゆる深紅と呼ばれる不純な赤色の波長(640〜700nm)の光をカットし、例えば光通信システムの誤作動誘発を防止し、また同時に鮮明な赤色を再現する効果を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、下記式(1):
【0020】
【化5】

【0021】
式中、Z〜Z16は、それぞれ独立して、水素原子、下記化学式2:
【0022】
【化6】

【0023】
式中、Xは酸素原子または硫黄原子であり、Aはフェニル基、1〜5の置換基Rを有するフェニル基または1〜7の置換基Rを有するナフチル基であり、前記置換基Rは、それぞれ独立して、ニトロ基、COOR、OR(Rは炭素数1〜8のアルキル基)、ハロゲン原子、アリール基、シアノ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基であり、この際、Rは、炭素数1〜8のアルキル基(この際、アルキル基は、炭素数1〜8のアルキルオキシ基、ハロゲン原子もしくはアリール基で置換されていてもよい)、または下記化学式3で示される基;
【0024】
【化7】

【0025】
式中、Rは炭素数1〜3のアルキレン基であり、Rは炭素数1〜8のアルキル基であり、nは1〜4の整数である;
である:
で示される基、または下記化学式2’:
【0026】
【化8】

【0027】
式中、R’は炭素数1〜3のアルキレン基であり、R”は炭素数1〜8のアルキル基であり、lは0〜4の整数である:
で示される基であり、
この際、Z、Z、Z、Z、Z、Z12、Z13及びZ16のうち1〜3個は、化学式2または化学式2’で示される基であり、Z、Z、Z、Z、Z10、Z11、Z14及びZ15のうち3〜1個は、化学式2または化学式2’で示される基であり、Z〜Z16のうち合計4個は、化学式2または化学式2’で示される基であり、Z〜Z16のうち少なくとも1個は、化学式2で示される基であり、
Mは無金属、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表わす:
で示されるフタロシアニン化合物に関するものである。
【0028】
なお、本明細書において、式(1)における、Z、Z、Z、Z、Z、Z12、Z13及びZ16は、フタロシアニン核の8箇所のα位に置換する置換基を表わすため、これらの置換基をα位の置換基とも称する。また、同様にして、式(1)における、Z、Z、Z、Z、Z10、Z11、Z14及びZ15は、フタロシアニン核の8箇所のβ位に置換する置換基を表わすため、これらの置換基をβ位の置換基とも称する。
【0029】
フタロシアニン化合物(1)は、640〜750nmという特定の波長域で最大吸収波長を示すため、これらの領域の光を選択的にカットすることが可能である。このため、本発明のフタロシアニン化合物を用いたフラットパネルディスプレイ用のフィルターは、例えば、情報量増加の流れに対応した光通信システムの誤作動誘発を防止し、また同時に鮮明な赤色を再現するのに有用である。また、フタロシアニン化合物(1)は、赤色の発光が強いフラットパネルディスプレイや液晶ディスプレイの分野では必ずしも好ましい色調の光とはいえない640〜700nmの波長の光を効率よくカットするため、このような化合物を用いたフィルターは、純粋な赤色を再現するフラットパネルディスプレイや液晶ディスプレイに好適に使用できる。
【0030】
本発明のフタロシアニン化合物(1)は、α位およびβ位の各々に少なくとも1つの化学式2または化学式2’で表される置換基を有する。従来知られているフタロシアニンとしては、β位にニトロフェノキシ基を4つ有する化合物であるβ−(ニトロフェノキシ)4置換Znフタロシアニン(Journal of Porphyrins and Phthalocyanines(2005),9(4),268−274、またはMakromoleculare Chemie(1988),189(5),1001−1011)がある。また、α位にエステル基(−COOR)を有するフェノキシ基を4つ有するフタロシアニン(中国特許出願公開第101023945号、中国特許出願公開第101012234号)も知られている。本願発明者らが検討した結果、α位のみに化学式2または化学式2’で表される置換基を有するフタロシアニンは、有機溶剤の溶解性に優れるものの、耐熱性および耐光性に劣ることが判明した。一方、β位のみに化学式2または化学式2’で表される置換基を有するフタロシアニンは、耐熱性は向上するものの、スペクトルのスタッキングが生じ(吸光スペクトルが横に広がり)、最大吸収波長におけるピークがシャープなスペクトルが得られず、グラム吸光係数が低くなることが判明した。本発明のフタロシアニン化合物(1)は、α位とβ位とに少なくとも1つの化学式2または化学式2’で表される置換基を有するため、上記従来のフタロシアニン化合物と比較して、グラム吸光係数と耐熱性とのバランスに優れ、かつ、フラットパネルディスプレイ用途に必要とされる640〜700nmの波長の光を効率よくカットすることができる。
【0031】
以下、本発明の第一の態様における好ましい実施の形態を説明する。
【0032】
上記式(1)において、Z〜Z16は、水素原子、下記化学式2:
【0033】
【化9】

【0034】
:または下記化学式2’:
【0035】
【化10】

【0036】
を表す。この際、Z〜Z16は、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。中でも、溶媒溶解性を考慮すると、上記式(1)において、Z〜Z16は、水素原子または化学式2であることが好ましい。
【0037】
化学式2において、Xは酸素原子または硫黄原子を表わす。好ましくは酸素原子である。Xが酸素原子であると、得られるフタロシアニン化合物の最大吸収波長を短波長側にシフトできるため、得られるフタロシアニン化合物の最大吸収波長(λmax)を、近赤外領域の中でも640〜750nmの波長領域に容易に調節できる。
【0038】
化学式2において、Aは、フェニル基、1〜5の置換基Rを有するフェニル基または1〜7の置換基Rを有するナフチル基を表す。好ましくは、1〜5の置換基Rを有するフェニル基である。
【0039】
化学式2が複数存在する場合には、化学式2の種類は、同一であっても異なるものであってもよい。Z〜Z16のうち、少なくとも1がフェノキシ基またはフェノキシチオ基(Aがフェノール基)である場合には、フェノキシ基またはフェノキシチオ基以外の他の化学式2で示される基が存在することが好ましい。
【0040】
フェニル基の置換基数は、1〜5であるが、グラム吸光係数の観点から、より好ましくは1〜3の整数を示し、置換基がハロゲン原子の場合には、置換基数は1〜5の整数のいずれも好ましい。ナフチル基の置換基数は、1〜7であるが、グラム吸光係数(グラム当たりの吸光度)の観点から、1〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、1または2であることがさらに好ましい。
【0041】
ナフチル基とXとの結合位置は特に限定されず、下記1位(1−ナフチル基)または2位(2−ナフチル基)のいずれであってもよい。
【0042】
【化11】

【0043】
同様にして、置換基のナフタレン環への結合位置もまた、特に制限されない。例えば、ナフチル基とXとの結合位置が1位(1−ナフチル基)である場合には、置換基のナフタレン環への結合位置は、2位、3位、4位、5位、6位、7位または8位のいずれでもよいが、耐熱性や溶媒溶解性などを考慮すると、好ましくは2位、3位が好ましく、2位がより好ましい。また、ナフチル基とXとの結合位置が2位(2−ナフチル基)である場合には、置換基のナフタレン環への結合位置は、1位、3位、4位、5位、6位、7位または8位のいずれでもよいが、好ましくは3位、6位が好ましく、耐熱性や溶媒溶解性などを考慮すると、3位がより好ましい。
【0044】
フェニル基またはナフチル基の置換基(以下、Rとも称する)は、ニトロ基、COOR、OR(Rは炭素数1〜8のアルキル基)、ハロゲン原子、アリール基、シアノ基、または炭素数1〜8のアルキル基(この際、アルキル基はハロゲン原子で置換されていてもよい)である。この際、Rは、炭素数1〜8のアルキル基(この際、アルキル基は炭素数1〜8のアルキルオキシ基、ハロゲン原子もしくはアリール基で置換されていてもよい)、または下記化学式3で表される基である。フェニル基またはナフチル基に置換基Rが複数存在する場合、複数のRは、同一であっても異なるものであってもよい。
【0045】
【化12】

【0046】
化学式3中、Rは炭素数1〜3のアルキレン基であり、Rは炭素数1〜8のアルキル基であり、nは1〜4の整数である。
【0047】
COORにおけるRが炭素数1〜8のアルキル基の場合、炭素数1〜8のアルキル基は、溶剤溶解性の点から、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基である。炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が挙げられる。炭素数1〜8のアルキル基に場合によっては存在する置換基は、炭素数1〜8のアルキルオキシ基、ハロゲン原子またはアリール基である。場合によっては存在する、アルキル基の置換基である炭素数1〜8のアルキルオキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、iso−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、iso−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基などの直鎖、分岐又は環状のアルキルオキシ基が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜4のアルキルオキシ基が好ましい。場合によっては存在する、アルキル基の置換基であるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。これらの中でも、フッ素原子または塩素原子が好ましい。場合によっては存在する、アルキル基の置換基であるアリール基としては、フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−t−ブチルフェニル基、p−クロロフェニル基などが挙げられる。これらの中でも、フェニル基が好ましい。これらの置換基は複数個存在していても良く、複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであっても良く、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。アルキル基の置換基の数は特に限定されるものではないが、1〜3個であることが好ましく、1または2個であることが好ましい。
【0048】
COORにおけるRが化学式3で表される基の場合、化学式3で表される基におけるRは、エーテル溶媒溶解性への効果の点から1〜3のアルキレン基である。炭素数1〜3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、iso−プロピレン基が挙げられる。好ましくは、エチレン基、プロピレン基である。また、化学式3で表される基におけるRは、分子量の観点から1〜8のアルキル基であり、より好ましくは1〜4のアルキル基である。炭素数1〜8のアルキル基としては、上記Rの欄で記載されたものが挙げられる。化学式3で表される基におけるnは、分子量の観点から、1〜4の整数であり、1〜3の整数であることが好ましい。
【0049】
RがORの場合、ORにおけるRは、炭素数1〜8のアルキル基、好ましくは色素の結晶性、取扱性の良さの点から、炭素数1〜3のアルキル基を示す。Rで示される炭素数1〜8のアルキル基としては、上記Rにおいて、記載したものと同様の置換基が挙げられる。
【0050】
Rがハロゲン原子の場合、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子またはヨウ素原子であることが好ましい。中でも、色素の分子量が小さくなり、グラム吸光係数が高くなるため、塩素原子、フッ素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0051】
Rがアリール基の場合、アリール基としては、フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−t−ブチルフェニル基、p−クロロフェニル基、等のアリール基が挙げられる。中でも、色素の分子量が小さくなり、グラム吸光係数が高くなるため、フェニル基が好ましい。
【0052】
Rがアルキル基の場合、置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基としては、Rが炭素数1〜8のアルキル基の場合に例示したアルキル基が挙げられる。好ましくは、色素の結晶性、取扱性の良さの点から、炭素数1〜3のアルキル基である。場合によっては存在する、アルキル基の置換基であるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。これらの中でも、フッ素原子または塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。アルキル基の置換基であるハロゲン原子は複数個存在していても良く、複数個存在する場合には同一若しくは異なっていても良い。アルキル基の置換基の数は特に限定されるものではないが、1〜3個であることが好ましい。
【0053】
グラム吸光係数の観点からは、化学式2で示される基のうち少なくとも1が、Aがニトロ基、COOR、ハロゲン原子、またはシアノ基で置換されたフェニル基またはナフチル基である、−X−Aであることが好ましい。ニトロ基、COOR、ハロゲン原子、またはシアノ基は、電子吸引的であるため、グラム吸光係数が向上するものと考えられる。
【0054】
また、化学式2で示される基のうち少なくとも1が、フェニル基の置換基であるRが2位に存在する、または2−ナフチル基の置換基であるRが3位に存在する、化学式2である形態も好ましい。すなわち、Z〜Z16のうち、少なくとも1は、下記化学式5または下記化学式5’で示されることが好ましい。中でも、化学式5’で示される置換基が少なくとも1存在することが好ましい。
【0055】
【化13】

【0056】
【化14】

【0057】
上記化学式5において、Xは化学式2において定義したとおりであり、Rは、化学式2における置換基Rに相当し、mは1〜5の整数である。また、mが1の場合、化学式3の置換基は、2位にのみRが存在することを意味する。mが2である場合、Rは、2,6位、2,5位に存在することが好ましく、2,6位に存在することがより好ましい。Rが少なくとも2位、好ましくは、2位、2,6位、2,5位、より好ましくは2位または2,6位に存在すると、立体障害性が生じてフタロシアニン分子の重なり合いを防ぐことができるため、シャープな吸収スペクトルを得ることができ、グラム吸光係数が高くなる。また、有機溶剤への溶解性に優れたものとなる。
【0058】
上記化学式5’において、Xは化学式2において定義したとおりであり、Rは、化学式2における置換基Rに相当し、m”は1〜7の整数である。m”が1の場合、化学式5’の置換基は、3位にのみRが存在することを意味する。m”が2である場合、Rは、1,3位、3,4位に存在することが好ましい。Rが少なくとも3位に存在すると、立体障害性が生じてフタロシアニン分子の重なり合いを防ぐことができるため、シャープな吸収スペクトルを得ることができ、グラム吸光係数が高くなる。また、有機溶剤への溶解性に優れたものとなる。
【0059】
なお、上記化学式5’において、2位のXおよび3位のR以外の置換基Rは、ナフタレン環のいずれの水素原子と置換されてもよい。すなわち、上記化学式5’では、置換基「R」が、2個のナフタレン環のうち、Xが存在する側のナフタレン環に存在しているが、この置換基は当該位置に存在することを意味するものではなく、他方のベンゼン環に存在してもよい。すなわち、上記化学式5’は、下記置換基(5’−1)及び(5’−2)双方を包含する。
【0060】
【化15】

【0061】
化学式2で示される基のうち、有機溶剤への溶解性、特にエーテル系溶媒への溶解性の観点から、少なくとも1が下記化学式4:
【0062】
【化16】

【0063】
化学式4中、XおよびRは、化学式2において定義したとおりであり、Rはフェニル基の置換基Rに該当し、mおよびmは、1〜5の整数である(但し、m≦m):で示される基、下記化学式4’:
【0064】
【化17】

【0065】
化学式4’中、Xは、化学式2において定義したとおりであり、Rはフェニル基の置換基Rに該当し、m’は2〜5の整数である:で示される基、または少なくとも1の置換基がCOORであるナフチルオキシ基もしくはナフチルチオ基であることが好ましい。置換基としてエステル基が存在する、または置換基が少なくとも2,6位に存在することによって、エーテル系溶媒への溶解性がさらに向上する。mは、好ましくは1〜3の整数を示し、より好ましくは1または2である。化学式4’において、Rは特に限定されるものではないが、電子吸引性と立体的効果の観点から、ハロゲン原子であることが好ましく、塩素原子、またはフッ素原子であることがより好ましい。また、化学式4’において、m’が2である場合、Rは2、6位に存在する。m’は、好ましくは2〜3の整数を示し、より好ましくは2である。ナフチルオキシ基もしくはナフチルチオ基にナフタレン環の置換基としてCOORが存在する場合、COORの数は、1〜3個であることが好ましく、より好ましくは1または2である。化学式4で示される基は、Z〜Z16中、エーテル溶解性の点から、2〜7個存在することが好ましい。また、化学式4’で示される基は、Z〜Z16中、エーテル溶解性の点から、2〜7個、より好ましくは2〜4個存在することが好ましい。化学式4で示される基および化学式4’で示される基は、双方とも存在してもよいし、どちらか一方のみが存在してもよい。
【0066】
化学式2’において、R’はエーテル溶解性への効果と分子量の点から、炭素数1〜3のアルキレン基である。炭素数1〜3のアルキレン基としては、上記Rの欄で例示したものが挙げられる。好ましくは、エチレン基、プロピレン基である。R”はエーテル溶解性への効果と分子量の点から、炭素数1〜8のアルキル基であり、好ましくは1〜2のアルキル基である。1〜8のアルキル基としては、上記Rの欄で例示したものが挙げられる。lは、エーテル溶解性への効果と分子量の観点から、0〜4の整数であり、1〜2の整数であることがより好ましい。
【0067】
上記式(1)において、Z、Z、Z、Z、Z、Z12、Z13及びZ16のうち1〜3個は、化学式2または化学式2’で示される基であり、Z、Z、Z、Z、Z10、Z11、Z14及びZ15のうち3〜1個は、化学式2または化学式2’で示される基であり、Z〜Z16のうち合計4個は、化学式2または化学式2’で示される基である。そして、Z〜Z16のうち少なくとも1個は化学式2で示される基である。すなわち、フタロシアニン核のα位に化学式2または化学式2’で示される基が3個存在する場合には、フタロシアニン核のβ位に化学式2または化学式2’で示される基が1個存在する。そして、それ以外は水素原子である。同様に、α位に化学式2または化学式2’で示される基が2個存在する場合には、β位に化学式2または化学式2’で示される基が2個存在し、それ以外は水素原子である。また、α位に化学式2または化学式2’で示される基が1個存在する場合には、β位に化学式2または化学式2’で示される基が3個存在し、それ以外は水素原子である。フタロシアニン化合物の耐熱性が向上し、シャープな吸光スペクトルが得られることから、α位に化学式2または化学式2’で示される基が2個存在し、β位に化学式2または化学式2’で示される基が2個存在することが好ましい。Z〜Z16のうち、化学式2で示される基または化学式2’以外のZ〜Z16は、フタロシアニンの分子量を小さくし、グラム吸光係数を高めることができるため、水素原子を表す。Z〜Z16に4個存在する、化学式2または化学式2’で示される基は、それぞれ同じであってもよいし、異なるものであってもよい。また、α位に存在する化学式2または化学式2’で示される基と、β位に存在する化学式2または化学式2’で示される基とは、同じであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0068】
上記式(1)において、Mは、無金属、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表わすものである。ここで、無金属とは、金属以外の原子、例えば、2個の水素原子であることを意味する。また、金属としては、鉄、マグネシウム、ニッケル、コバルト、銅、パラジウム、亜鉛、バナジウム、チタン、インジウム、錫等が挙げられる。金属酸化物としては、チタニル、バナジル等が挙げられる。金属ハロゲン化物としては、塩化アルミニウム、塩化インジウム、塩化ゲルマニウム、塩化錫(II)、塩化錫(IV)、塩化珪素等が挙げられる。好ましくは、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物であり、具体的には、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル、鉄、バナジル、チタニル、塩化インジウム、塩化錫(II)であり、より好ましくは銅、バナジル及び亜鉛であり、さらに好ましくは亜鉛、銅であり、最も好ましくは亜鉛である。中心金属が亜鉛、銅であると、耐熱性が高いため好ましい。また、中心金属が亜鉛であると、アセトン、メタノール、メチルセルソルブといった汎用性溶媒に対する溶剤溶解性が高く、また樹脂に対する溶解性が高いため、特に好ましい。
【0069】
本発明において、Z〜Z16のうち、4個が化学式2または化学式2’で示される置換基であるが、各置換基がフタロシアニン骨格の各ベンゼン環に均質になる(各ベンゼン環にほぼ同数の置換基が存在する)ように配置されることが好ましい。中でも、本発明のフタロシアニン化合物は、各ベンゼン環に化学式2または化学式2’で示される置換基が1個存在する下記式(I)で表されるフタロシアニン化合物(以下、単に「フタロシアニン化合物(I)」とも称する)であることが好ましい。
【0070】
【化18】

【0071】
上記式において、Bは化学式2または化学式2’で示される基であり、Mは式(1)中で用いられているものと同一である。各ベンゼン環に存在する置換基Bの種類は、同一であってもよいし、異なるものであってもよい。好適には、α位に存在する置換基Bの種類は同一であり、またβ位に存在する置換基Bの種類は同一であることが好ましい。そして、化学式2または化学式2’で表される置換基がα位に1〜3個存在し、β位に3〜1個存在する。
【0072】
フタロシアニン化合物(1)の好ましい例としては、下記のものが挙げられる。なお、本発明のフタロシアニン化合物はこれらに限定されるものではない。下記の化合物の略称において、Pcはフタロシアニン核を表わし、Zn、Cu、Voは中心金属を表わし、Pcのすぐ後にα位に置換する置換基を表わし、そのα位に置換する置換基の後にβ位に置換する置換基を表わす。例えば、[ZnPc−{α−(2−NO)CO},{β−(2−COOC)CO}12]は、中心金属がZn、α位のうち2個が(2−NO)CO−で置換され、β位のうち2個が(2−COOC)CO−で置換され、残りが水素原子であるフタロシアニン化合物を示す。
【0073】
【表1−1】

【0074】
【表1−2】

【0075】
【表1−3】

【0076】
なお、上記化合物のうち、α位で置換される置換基数およびβ位で置換される置換基数が整数でないもの、例えば、[ZnPc−{α−(2−NO)CO}0.5,{β−(2−COOCH)CO}3.512]、[ZnPc−{α−(2−NO)CO}3.5,{β−(2−COOCH)CO}0.512][ZnPc−{α−(2−NO)CO}2.5,{β−(2−COOCH)CO}1.512]などは、複数の種類の化合物が混合物の形態で存在することを意味する。ここでいう複数の種類の化合物とは、α位に化学式2または化学式2’で表される置換基が3個で、β位に化学式2または化学式2’で表される置換基が1個:α位に化学式2または化学式2’で表される置換基が2個で、β位に化学式2または化学式2’で表される置換基が2個:α位に化学式2または化学式2’で表される置換基が1個で、β位に化学式2または化学式2’で表される置換基が3個などの化合物である。つまり、本発明のフタロシアニン化合物(1)は、一種の化合物である場合に加えて、複数の種類の化合物が混合物の形態で存在することをも包含する。このため、このような場合には、上記式(1)中のα位の置換基中に占める化学式2または化学式2’で示される置換基の数は、各フタロシアニン化合物中の化学式2または化学式2’で示される置換基数の平均として表わされるため、必ずしも整数にならない。同様に、上記式(1)中のβ位の置換基中に占める化学式2または化学式2’で示される置換基の数は、各フタロシアニン化合物中の化学式2または化学式2’で示される置換基数の平均として表わされるため、必ずしも整数にならない。なお、α位の置換基である化学式2または化学式2’で示される置換基とβ位の置換基である化学式2または化学式2’で示される置換基との合計は、4である。このようなフタロシアニン化合物(1)は、下記に詳述するが、原料であるフタロニトリル化合物(A)とフタロニトリル化合物(B)とを所定の混合比で混合したものを使用して、これと金属塩とを環化反応する方法などによって製造できる。
【0077】
本発明のフタロシアニン化合物の吸収波長としては、近赤外領域の中でも640〜750nmの波長領域に最大吸収波長(λmax)を有することが好ましい。なお、本明細書において、最大吸収波長は、下記実施例で測定の方法で測定された値を採用する。本発明のフタロシアニン化合物は、640〜750nm付近に最大吸収波長を示すため、フラットパネルディスプレイ、特にPDPやLCDが放つ無用の近赤外域(700〜750nm)の光や、いわゆる深紅と呼ばれる不純な赤色の波長(640〜700nm)の光をカットし、例えば光通信システムの誤作動誘発を防止し、また同時に鮮明な赤色を再現する効果を発揮できる。
【0078】
さらに、本発明のフタロシアニン化合物のグラム吸光係数の下限値としては、特に制限されないが、上記したような用途、特にフラットパネルディスプレイ用フィルターへの使用を考慮すると、好ましくは50以上、より好ましくは60以上、さらに好ましくは70以上である。また、本発明のフタロシアニン化合物のグラム吸光係数は高ければ高いほど好ましく、それ故、グラム吸光係数の上限値は、特に限定されないが、通常グラム吸光係数は500以下である。なお、本明細書において、グラム吸光係数は、下記実施例で測定の方法で測定された値を採用する。本発明のフタロシアニン化合物は、吸収波長を所望の範囲に合わせるために導入するα位およびβ位の置換基数および置換基種が適切であり、色素の分子量が大きくならず、また、吸光係数も高いため、グラム吸光係数が高くなると考えられる。
【0079】
本発明のフタロシアニン化合物(1)の製造方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の方法を適当に利用することができるが、好ましくは溶融状態または有機溶媒中で、フタロニトリル化合物と金属塩とを環化反応する方法が特に好ましく使用できる。以下、本発明のフタロシアニン化合物(1)について、製造方法の特に好ましい実施形態を記載する。しかしながら、本発明は、下記好ましい実施形態に制限されるものではない。
【0080】
すなわち、下記式(I):
【0081】
【化19】

【0082】
で示されるフタロニトリル化合物(1)、下記式(II):
【0083】
【化20】

【0084】
で示されるフタロニトリル化合物(2)、下記式(III):
【0085】
【化21】

【0086】
で示されるフタロニトリル化合物(3)、および下記式(IV):
【0087】
【化22】

【0088】
で示されるフタロニトリル化合物(4)を、金属、金属酸化物、金属カルボニル、金属ハロゲン化物及び有機酸金属(本明細書中では、一括して「金属化合物」とも称する)からなる群から選ばれる一種と環化反応させることによって、本発明のフタロシアニン化合物が製造できる。
【0089】
なお、上記式(I)〜(IV)中、Z〜Z16は、所望のフタロシアニン化合物(1)の構造によって規定される。具体的には、上記式(I)〜(IV)中、Z〜Z16は、それぞれ、上記式(1)中のZ〜Z16の定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0090】
環化反応は、特開昭64−45474号公報に記載の方法などの、従来公知方法により合成できる。
【0091】
上記態様において、環化反応は、式(I)〜(IV)のフタロニトリル化合物と金属、金属酸化物、金属カルボニル、金属ハロゲン化物及び有機酸金属からなる群から選ばれる一種を溶融状態または有機溶媒中で反応させることが好ましい。この際使用できる金属、金属酸化物、金属カルボニル、金属ハロゲン化物及び有機酸金属としては、反応後に得られる式(1)のフタロシアニン化合物(1)のMに相当するものが得られるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、上記式(1)におけるMの項で列挙された鉄、銅、亜鉛、バナジウム、チタン、インジウム及びスズ等の金属、当該金属の、塩化物、臭化物、ヨウ化物等の金属ハロゲン化合物、酸化バナジウム、酸化チタニル及び酸化銅等の金属酸化物、酢酸塩等の有機酸金属、ならびにアセチルアセトナート等の錯体化合物及びカルボニル鉄等の金属カルボニル等が挙げられる。具体的には、鉄、銅、亜鉛、バナジウム、チタン、インジウム、マグネシウム及びスズ等の金属;当該金属の、塩化物、臭化物、ヨウ化物等の金属ハロゲン化合物、例えば、塩化バナジウム、塩化チタン、塩化銅、塩化亜鉛、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化鉄、塩化インジウム、塩化アルミニウム、塩化錫、塩化ガリウム、塩化ゲルマニウム、塩化マグネシウム、ヨウ化銅、ヨウ化亜鉛、ヨウ化コバルト、ヨウ化インジウム、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化ガリウム、臭化銅、臭化亜鉛、臭化コバルト、臭化アルミニウム、臭化ガリウム;一酸化バナジウム、三酸化バナジウム、四酸化バナジウム、五酸化バナジウム、二酸化チタン、一酸化鉄、三二酸化鉄、四三酸化鉄、酸化マンガン、一酸化ニッケル、一酸化コバルト、三二酸化コバルト、二酸化コバルト、酸化第一銅、酸化第二銅、三二酸化銅、酸化バラジウム、酸化亜鉛、一酸化ゲルマニウム、及び二酸化ゲルマニウム等の金属酸化物;酢酸銅、酢酸亜鉛、酢酸コバルト、安息香酸銅、安息香酸亜鉛等の有機酸金属;ならびにアセチルアセトナート等の錯体化合物及びコバルトカルボニル、鉄カルボニル、ニッケルカルボニル等の金属カルボニルなどが挙げられる。これらのうち、好ましくは金属、金属酸化物及び金属ハロゲン化物であり、より好ましくは金属ハロゲン化物であり、さらに好ましくは、ヨウ化バナジウム、ヨウ化銅およびヨウ化亜鉛であり、特に好ましくは、ヨウ化銅およびヨウ化亜鉛であり、最も好ましくはヨウ化亜鉛である。ヨウ化亜鉛を用いる場合、中心金属は、亜鉛ということになる。金属ハロゲン化物のうち、ヨウ化物を用いることが好適な理由は、溶剤や樹脂に対する溶解性に優れ、得られるフタロシアニン化合物のスペクトルがシャープであり、所望の波長である640〜750nmに収まりやすいためである。環化反応の際にヨウ化物を用いた場合にスペクトルがシャープになる詳細なメカニズムは不明であるが、ヨウ化物を用いた場合、反応後にフタロシアニン化合物中に残存するヨウ素が、フタロシアニン化合物と何らかの相互作用を起こして、フタロシアニン化合物の層間にヨウ素が存在するようになるためであると推定される。しかしながら、上記メカニズムに限定されるものではない。環化反応に金属ヨウ化物を用いた場合と同様の効果を得るために、得られたフタロシアニン化合物をヨウ素で処理してもよい。
【0092】
また、上記態様において、また、環化反応は、無溶媒中でも行なえるが、有機溶媒を使用して行なうのが好ましい。有機溶媒は、出発原料としてのフタロニトリル化合物との反応性の低い、好ましくは反応性を示さない不活性な溶媒であればいずれでもよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、モノクロロベンゼン、o−クロロトルエン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1−クロロナフタレン、1−メチルナフタレン、エチレングリコール、およびベンゾニトリル等の不活性溶媒;メタノール、エタノール、1−プロパノ−ル、2−プロパノ−ル、1−ブタノール、1−ヘキサノール、1−ペンタノール、1−オクタノール等のアルコール;ならびにピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトフェノン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、1−クロロナフタレン、1−メチルナフタレン、1−オクタノール、ジクロロベンゼンおよびベンゾニトリルが、より好ましくは、1−オクタノール、ジクロロベンゼンおよびベンゾニトリルが使用される。これらの溶媒は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0093】
上記態様における式(I)〜(IV)のフタロニトリル化合物と金属化合物との反応条件は、当該反応が進行する条件であれば特に制限されるものではないが、例えば、有機溶媒100質量部に対して、上記フタロニトリル化合物(1)〜(4)を1〜500質量部、好ましくは10〜350質量部、より好ましくは2〜40質量部、さらに好ましくは20〜40質量部の範囲の合計量で、かつ金属化合物を該フタロニトリル化合物4モルに対して、好ましくは1〜2モル、より好ましくは1〜1.5モルの範囲で仕込む。環化の際は、特に限定されるものではないが、好ましくは反応温度30〜250℃、より好ましくは80〜200℃の範囲で反応させる。反応時間は、特に限定されるものではないが、好ましくは3〜20時間であり、より好ましくは3〜10時間である。なお、反応後は、従来公知のフタロシアニン化合物の合成方法に従って、ろ過、洗浄、乾燥することにより、次工程に用いることのできるフタロシアニン誘導体を効率よく、しかも高純度で得ることができる。
【0094】
上記態様において、出発原料である式(I)〜(IV)のフタロニトリル化合物は、従来既知の方法により合成でき、また、市販品を用いることもできる。
【0095】
以下、フタロシアニン化合物(I)の出発原料である、下記式(A)で表されるフタロニトリル化合物(以下、単に「フタロニトリル化合物(A)」とも称する)、または式(B)で表されるフタロニトリル化合物(以下、単に「フタロニトリル化合物(B)」とも称する)の合成例を述べる。なお、式(A)および(B)中のBは、上記化学式(I)中のBと同義であるため、ここでは説明を省略する。
【0096】
【化23】

【0097】
【化24】

【0098】
フタロニトリル化合物(A)またはフタロニトリル化合物(B)は、従来公知の製造方法により得ることができる。好適には、ニトロフタロニトリルと、下記式(C);
【0099】
【化25】

【0100】
で表される化合物(以下、単に「化合物(C)」とも称する)、または下記式(C’);
【0101】
【化26】

【0102】
で表される化合物(以下、単に「化合物(C’)」とも称する)とを反応させることにより得られる。ニトロフタロニトリル中のニトロ基が、化合物(C)由来の化学式2で表される置換基または化合物(C’)由来の化学式2’で表される置換基に置換される。式(C)中のAおよびXは、上記化学式2中のAおよびXと同義であるため、ここでは説明を省略する。また、式(C’)中のR’、R”およびlは、上記化学式2’中のR’、R”およびlと同義であるため、ここでは説明を省略する。フタロニトリル化合物(A)は、3−ニトロフタロニトリルと、化合物(C)または化合物(C’)とを反応させることにより得ることができ、式(B)のフタロニトリル化合物は、4−ニトロフタロニトリルと、化合物(C)または化合物(C’)とを反応させることにより得ることができる。
【0103】
ニトロフタロニトリルと化合物(C)および化合物(C’)との反応は、無溶媒下であるいは有機溶媒中で行われてもよいが、好ましくは有機溶媒中で行なわれる。この際使用できる有機溶媒としては、アセトニトリル及びベンゾニトリル等のニトリル;アセトン及び2−ブタノン等の極性溶媒;メタノール、エタノール、Xが酸素原子である場合の化合物(C)等のアルコール系溶媒などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、アセトニトリル、ベンゾニトリル及びアセトンである。これらの溶媒は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。溶媒を使用する際の有機溶媒の使用量は、ニトロフタロニトリルの濃度が、通常、1〜50(w/v)%、好ましくは10〜30(w/v)%となるような量である。
【0104】
ニトロフタロニトリルと化合物(C)および化合物(C’)との使用割合は、目的とするフタロニトリル化合物の構造によって適宜選択されるものであり、特に制限されないが、通常、ニトロフタロニトリル1モルに対して、化合物(C)および化合物(C’)が、1.0〜2.0モル、好ましくは1.1〜1.5モルの量で使用される。
【0105】
ニトロフタロニトリルと化合物(C)および化合物(C’)との反応は、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、フッ化カリウム(KF)、炭酸カリウム(KCO)などの触媒の存在下で行われることが好ましい。また、別途、相関移動触媒を添加してもよい。相関移動触媒を添加することによって、ニトロフタロニトリルと化合物(C)または化合物(C’)との求核置換反応の速度が上がる。相間移動触媒は、特に限定されるものではないが、4級アンモニウム塩が好ましい。具体的には、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。この際、相関移動触媒を含む触媒の使用量は、上記反応が良好に進行する量であれば特に制限されない。具体的には、触媒は、ニトロフタロニトリル1モルに対して、通常、1.0〜2.0モル、より好ましくは1.1〜1.5モル添加されることが好ましい。
【0106】
ニトロフタロニトリルと化合物(C)および化合物(C’)との反応条件は、上記反応が良好に進行する条件であれば特に制限されない。具体的には、ニトロフタロニトリルと化合物(C)および化合物(C’)との反応の際、好ましくは30〜150℃、より好ましくは60〜90℃の温度で、好ましくは1〜50時間、より好ましくは3〜20時間反応させる。
【0107】
かようにして得られたフタロニトリル化合物(A)およびフタロニトリル化合物(B)を原料として、金属化合物からなる群から選ばれる一種と環化反応させることによって、本発明のフタロシアニン化合物(I)が製造できる。この際、フタロニトリル化合物(A)およびフタロニトリル化合物(B)の混合モル比は、所望のフタロシアニン化合物の置換基数となるように適宜調整すればよい。例えば、[ZnPc−{α−(2−NO)CO}0.5,{β−(2−COOCH)CO}3.512]の場合、フタロニトリル化合物(A)と、フタロニトリル化合物(B)とを、0.5:3.5のモル比で混合して製造すればよい。
【0108】
また、その他の態様としては、下記式(F):
【0109】
【化27】

【0110】
で表されるフタロニトリル化合物と金属化合物とで環化反応を行った後、得られたフタロシアニン誘導体(以下、単に「フタロシアニン誘導体(F)」とも称する」と下記式(E):
【0111】
【化28】

【0112】
で示される化合物(以下、単に「化合物(E)」とも称する」および/または下記式(E’);
【0113】
【化29】

【0114】
で示される化合物(E’)
とを反応させる方法が挙げられる。
【0115】
式(F)中、Y、Y、YおよびYは、それぞれ独立して、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子等のハロゲン原子または水素原子である。ハロゲン原子としては、好ましくはフッ素原子および塩素原子であり、より好ましくはフッ素原子である。化合物(E)および化合物(E’)との反応の際に、ハロゲン原子が化学式2で表わされる置換基または化学式2’で表わされる置換基に置換されるため、最終的に化学式2または化学式2’で表される置換基を導入する位置にハロゲン原子が存在するフタロニトリルを原料として選択すればよい。例えば、フタロシアニン化合物のα位に化学式2または化学式2’で表される置換基を1つ導入する場合、式(F)中、YまたはYがハロゲン原子であるフタロニトリルを用いればよい。
【0116】
式(E)におけるAおよびXは、化学式2で用いられているものと同一であり、式(E’)におけるR’、R”およびlは、化学式2’で用いられているものと同義である。
【0117】
式(F)で表されるフタロニトリル化合物と金属化合物との環化反応は、上記式(I)〜(IV)のフタロニトリル化合物と金属化合物との環化反応と同様の条件により環化を行うことができるため、ここでは説明を省略する。
【0118】
フタロシアニン誘導体(F)と化合物(E)または化合物(E’)との反応は、従来公知の方法により行うことができる。反応は、反応に用いる化合物と反応性のない不活性な溶媒存在下で行うことが好ましい。例えば、ベンゾニトリル、アセトニトリル等のニトリルやN−メチルピロリドンまたはジメチルホルムアミドなどのようなアミド;ジクロロベンゼン、トルエンが挙げられる。反応には、トラップ剤として、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、フッ化カリウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、塩化マグネシウムおよび炭酸マグネシウム等の無機分を仕込むことが好ましい。
【0119】
本発明のフタロシアニン化合物は、有機溶媒、特にエーテル系溶媒との相溶性に優れるため、種々の用途に用いることができる。
【0120】
本発明のフタロシアニン化合物は、半透明ないし透明性を有しかつ熱線を遮蔽する目的の熱線遮蔽材、自動車用の熱線吸収合わせガラス、熱線遮蔽フィルムまたは熱線遮蔽樹脂ガラス、可視光線透過率が高くかつ近赤外線光のカット効率の高いプラズマディスプレー用フィルター、フラッシュ定着などの非接触定着トナー用の近赤外線吸収剤として、また、保温蓄熱繊維用の近赤外線吸収剤、赤外線による偵察に対し偽装性能(カモフラージュ性能)を有する繊維用の赤外吸収剤、半導体レーザーを使う光記録媒体、キセノンランプをバックライトとする液晶ディスプレイ用フィルター、光学文字読取機等における書き込みあるいは読み取りの為の近赤外線吸収色素、近赤外光増感剤、感熱転写・感熱孔版等の光熱交換剤、レーザービームを使用して樹脂を熱融着させるレーザー融着用の光熱交換剤、近赤外線吸収フィルター、眼精疲労防止剤あるいは光導電材料等、さらに組織透過性の良い長波長域の光に吸収を持つ腫瘍治療用感光性色素、カラーブラウン管選択吸収フィルター、カラートナー、インクジェット用インク、改ざん偽造防止用インク、改ざん偽造防止用バーコード用インク、近赤外吸収インク、写真やフィルムの位置決め用マーキング剤、およびゴーグルのレンズや遮蔽板、プラスチックリサイクルの際の仕分け用の染色剤、ならびにPETボトルの成形加工時のプレヒーティング助剤などに用いる際に優れた効果を発揮するものである。特に上記した特性を考慮すると、本発明のフタロシアニン化合物は、近赤外吸収色素、熱線遮蔽材、プラズマディスプレー用フィルター及び近赤外吸収材に好適に使用できる。
【0121】
上記したような特定の構造を有するフタロシアニン化合物は、640〜750nmという特定の波長域で最大吸収波長を示すため、これらの領域の光を選択的にカットすることが可能である。このため、本発明のフタロシアニン化合物は、フラットパネルディスプレイ用のフィルターに使用されると、例えば、PDPやLCDが放つ無用の近赤外域(700〜750nm)の光や、いわゆる深紅と呼ばれる不純な赤色の波長(640〜700nm)の光をカットし、例えば情報量増加の流れに対応した光通信システムの誤作動誘発を防止し、また同時に鮮明な赤色を再現するといった効果を発揮できるといった効果が期待される。加えて、本発明のフタロシアニン化合物は、有機溶剤との相溶性に優れ、かつ耐熱性、耐光性等の特性に優れ、またグラム吸光係数が高いので、少量で優れた効果を発揮するものである。
【0122】
したがって、本発明は、フタロシアニン化合物(1)を含む、フラットパネルディスプレイ用フィルターにも関する。フラットパネルディスプレイ用フィルターの用途としては、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイに用いられることが好適であり、特にプラズマディスプレイに用いることが好適である。
【0123】
本発明のフィルターは、フタロシアニン化合物(1)を含有することが必須であるが、他の最大吸収波長を有する色素をさらに含んでもよい。このような場合に使用できる他の色素としては、用途によって所望される最大吸収波長によって適宜選択されるが、例えば、800〜1000nmの近赤外吸収色素や570〜600nmのオレンジ色のネオン光を吸収する色素などが挙げられる。これらのうち、800〜1000nmの近赤外吸収色素としては、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、ニッケル錯体系色素、ジイモニウム系色素などが挙げられる。これらのうち、フタロシアニン系色素としては、特開平2001−106689号公報に記載のフタロシアニン系色素、特に特開平2001−106689号公報の実施例8で製造されるフタロシアニン[CuPc(2,5−ClPhO){2,6−(CHPhO}(PhCHNH)](λmax:807nm)、同公報の実施例7で製造されるフタロシアニン[VOPc(2,5−ClPhO){2,6−(CHPhO}(PhCHNH)](λmax:870nm)、同公報の実施例9で製造されるフタロシアニン[VOPc(PhS){2,6−(CHPhO}(PhCHNH)](λmax:912nm);特開平2004−18561号公報に記載のフタロシアニン系色素、特に特開平2004−18561号公報の実施例8で製造されるフタロシアニン[VOPc(PhS){2,6−(CHPhO}{CHCHO(CHNH}](λmax:928nm)、同公報の実施例17で製造されるフタロシアニン[VOPc(4−(CHO)PhS){2,6−(CHPhO}{CH(CHCH(C)CHNH}](λmax:962nm);下記式:
【0124】
【化30】

【0125】
で示される、フタロシアニン化合物[以下、{CuPc(3−メトキシカルボニルフェノキシ)(2−クロロベンジルアミノ)F}とも称する](λmax:916nm)、下記式:
【0126】
【化31】

【0127】
で示される、フタロシアニン化合物[以下、{CuPc(3−メトキシカルボニルフェノキシ)(2−エチルヘキシルアミノ)}とも称する](λmax:963nm)などが好ましく使用される。この場合では、耐久性、耐候性を考慮すると、800〜1000nmのフタロシアニン系色素は、フタロシアニン骨格の中心金属は銅であることが特に好ましい。また、特開平10−78509号公報の実施例に記載のあるフタロシアニン化合物も使用できる。ジイモニウム系色素としては、(N,N,N’,N’−テトラキス(p−ジエチルアミノフェニル)−p−ベンゾキノン−ビス(イモニウム)・ヘキサフルオロアンチモン酸塩、N,N,N’,N’−テトラキス(p−ジブチルアミノフェニル)−p−フェニレンジアミン−ビス(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸)イモニウム塩(日本カーリット(株)製、商標:CIR−1085)、N,N,N’,N’−テトラキス(p−ジブチルアミノフェニル)−p−フェニレンジアミン−ビス(六弗化アンチモン酸)イモニウム塩(日本カーリット(株)製、商標:CIR−1081)、ジイモニウムカチオンとビス(トリフルオロメタンスルホン)イミドアニオンとからなるジイモニウム色素(日本カーリット(株)製、商標:CIR−RL)などが好ましく使用される。ニッケル錯体系色素としては、Bis(1,2−diphenylethene−1,2−dithiol)nickelなどが好ましく使用される。さらに、シアニン系色素としては、安定化シアニン色素が使用できる。ここで、安定化シアニン色素とは、シアニン系カチオンとクエンチャーアニオンとからなる塩化合物である。このうち、シアニン系カチオンとしては、例えば、以下に示す、カチオンNo.1、No.2などが、また、クエンチャーアニオンとしては、例えば、以下に示す、アニオンNo.11、No.22の化合物が好ましく使用でき、これらを適宜組合わせた塩化合物が安定化シアニン色素として好ましく使用される。
【0128】
【化32】

【0129】
【化33】

【0130】
また、570〜600nmのオレンジ色のネオン光を吸収する色素としては、テトラアザポルフィリン系色素、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、アントラキノン系色素、サブフタロシアニン系色素、フタロシアニン系色素、ポリメチル系色素、ポリアゾ系色素などが挙げられる。これらのうち、テトラアザポルフィリン系色素としては、テトラ−t−ブチル−テトラアザポルフィリン・銅錯体、テトラ−t−ブチル−テトラアザポルフィリン・バナジウム錯体などが好ましく使用される。また、シアニン系色素、スクアリリウム系色素としては、特開2002−189422号公報に記載のシアニン系色素、スクアリリウム系色素などが好ましく使用される。サブフタロシアニン系色素としては、特開平2006−124593号公報に記載のサブフタロシアニン系色素などが好ましく使用される。570〜600nmのフタロシアニン系色素は、耐久性、耐候性を考慮すると、フタロシアニン骨格の中心金属は銅であることが特に好ましい。
【0131】
また、フタロシアニン化合物(1)以外に、600〜750nmに最大吸収波長を有する色素を含んでいてもよい。このような色素としては、具体的には、1−エチル−2−[3−クロロ−5−(1−エチル−2(1H)−キノリニリデン)−1,3−ペンタジエニル]キノリウムブロミド(106倍;λmax:694.4nm)、1,3,3−トリメチル−2−[5−(1,3,3−トリメチル−2(1H)−ベンズ[e]インドリニリデン)−1,3−ペンタジエニル]−3H−ベンズ[e]インドリニウムパークロレート(119倍;λmax:675.6nm)、3−エチル−2−[5−(3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン)−1,3−ペンタジエニル]ベンゾチアゾリウムヨージド(475倍;λmax:651.6nm)等のシアニン系色素などが挙げられる。なお、上記において、括弧内の倍率は、460nmの吸光度に対する最大吸収波長における吸光度の倍率であり、また、括弧内に、最大吸収波長(λmax)を示す。
【0132】
なお、上記他の色素は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0133】
本発明のフラットパネルディスプレイ用フィルターは、フラットパネルディスプレイ用フィルターにおいて使用することのできる色素/フタロシアニン色素(以下、単に「色素/フタロシアニン色素」とも称する)を基材に含有してなるもので、本発明でいう基材に含有するとは、基材の内部に含有されることはもちろんのこと、基材の表面に塗布した状態、基材と基材の間に挟まれた状態などを意味する。基材としては、透明樹脂板、透明フィルム、透明ガラス等が挙げられる。上記フタロシアニン化合物を用いて、本発明のフラットパネルディスプレイ用フィルターを作製する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、以下の4つの方法が利用できる。
【0134】
すなわち、(1)樹脂に色素/フタロシアニン色素を混練し、加熱成形して樹脂板あるいはフィルムを作製する方法;(2)色素/フタロシアニン色素を含有する塗料(液状ないしペースト状物)を作製し、透明樹脂板、透明フィルムあるいは透明ガラス板上にコーティングする方法;(3)色素/フタロシアニン色素を接着剤に含有させて、合わせ樹脂板、合わせ樹脂フィルム、合わせガラス等を作製する方法;および(4)色素/フタロシアニン色素を接着剤に含有させて、これを反射防止処理を施したフィルムなどに塗布し、PDPパネルやPDP前面フィルタガラスに貼り付ける方法等である。
【0135】
本発明において、ディスプレーからでる近赤外線光をカットするためにディスプレーの前面に設置するため、可視光線の透過率が低いと、画像の鮮明さが低下するため、フィルターの可視光線の透過率は高いほど良く、少なくとも30%、好ましくは40%以上必要である。また、近赤外線光のカット領域は、640〜1100nmであり、その領域の平均光線透過率が20%以下、好ましくは15%以下になるように設計する。このために必要であれば、色素/フタロシアニン色素を2種以上組み合わせてもよい。また、フィルターの色調を変えるために、可視領域に吸収を持つ他の色素を加えることも好ましい。また、色調用色素のみを含有するフィルターを作製し、後で貼り合わせることもできる。特にスパッタリングなどの電磁波カット層を設けた場合、元のフィルター色に比べて色合いが大きく異なる場合があるため、色調は重要である。
【0136】
上記の方法で得たフィルターをさらに実用的にするためには、フラットパネルディスプレーから出る電磁波を遮断する電磁波カット層、反射防止(AR)層、ノングレア(AG)層を設けることもできる。それらの作製方法は、特に制限を受けない。例えば、電磁波カット層は、金属酸化物等のスパッタリング方法が利用できるが、通常はSnを添加したIn(ITO)が、一般的であるが、誘電体層と金属層を基材上に交互にスパッタリングなどで積層させることで、近赤外線、遠赤外線から電磁波まで1100nm以上の光をカットすることもでききる。誘電体層としては、酸化インジウム、酸化亜鉛などの透明な金属酸化物であり、金属層としては、銀あるいは銀−パラジウム合金が一般的であり、通常、誘電体層よりはじまり3層、5層、7層あるいは11層程度積層する。この場合、ディスプレーより出る熱も同時にカットできるが、色素/フタロシアニン色素は、熱線遮蔽効果に優れるため、より耐熱効果を向上できる。基材としては、色素/フタロシアニン色素を含有するフィルターをそのまま利用しても良いし、樹脂フィルムあるいはガラス上にスパッタリングした後に該色素/フタロシアニン色素を含有するフィルターとはり合わせてもよい。また、電磁波カットを実際に行う場合は、アース用の電極を設置する必要がある。反射防止層は、表面の反射を抑えてフィルターの透過率を向上させるために、金属酸化物、フッ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物等の無機物を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法等で単層あるいは多層に積層させる方法、アクリル樹脂、フッ素樹脂等の屈折率の異なる樹脂を単層あるいは多層に積層させる方法等がある。また、反射防止処理を施したフィルムを該フィルター上に貼り付けることもできる。また、必要であれば、ノングレアー(AG)層を設けることもできる。ノングレアー(AG)層は、フィルターの視野角を広げる目的で、透過光を散乱させるために、シリカ、メラミン、アクリルなどの微粉体をインキ化して、表面にコーティングする方法等を用いることができる。インキの硬化は、熱硬化あるいは光硬化等を用いることができる。また、ノングレアー処理をしたフィルムを該フィルター上にはり付けることもできる。さらに必要であれば、ハードコート層を設けることもできる。
【0137】
フラットパネルディスプレー用のフィルターの構成は、必要に応じて変えることができる。通常、近赤外線吸収化合物を含有するフィルター上に反射防止層を設けたり、さらに必要であれば、反射防止層の反対側にノングレア層を設ける。また、電磁波カット層を組み合わせる場合は、近赤外線吸収化合物を含有するフィルターを基材として、その上に電磁波カット層を設けるか、あるいは近赤外線吸収化合物を含有するフィルターと電磁波カット能を有するフィルターを貼り合わせて作製できる。その場合、さらに、両面に反射防止層を作製するか、必要であれば、片面に反射防止層を作製し、その反対面にノングレア層を作製することもできる。また、色補正するために、可視領域に吸収を有する色素を加える場合は、その方法については制限を受けない。
【実施例】
【0138】
以下、実施例および比較例を説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記化合物の名称において、Pcはフタロシアニン核を、PNはフタロニトリルを表す。
【0139】
(合成例1)フタロニトリル化合物[α−{(2−NO)CO}PN]の合成(中間体1)
150mlフラスコに、3−ニトロフタロニトリル(以下、3NOPNと略す)25.10g(0.145モル)と2−ニトロフェノール24.21g(0.174モル)、炭酸カリウム24.05g(0.174モル)、n−テトラブチルアンモニウムブロマイド(以下、TBABと略す)0.47g(0.001モル)、アセトニトリル100.42gを投入し、内温80℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約12時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液に水200gを滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再び水200gを加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約60℃で一晩真空乾燥し、約36.1g(3NOPNに対する収率93.9モル%)が得られた。
【0140】
(合成例2)フタロニトリル化合物[α−{(2,6−Cl)CO}PN]の合成(中間体2)
150mlフラスコに、3NOPN25.10g(0.145モル)と2,6−ジクロロフェノール26.00g(0.160モル)、炭酸カリウム22.04g(0.160モル)、TBAB0.93g(0.002モル)、アセトニトリル100.42gを投入し、内温80℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約5時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液にメタノール50gと水150gの混合溶液を滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール200gと水200gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約60℃で一晩真空乾燥し、約38.9g(3NOPNに対する収率92.8モル%)が得られた。
【0141】
(合成例3)フタロニトリル化合物[α−{(2−CHO)CO}PN]の合成(中間体3)
150mlフラスコに、3NOPN5.19g(0.030モル)と2−メトキシフェノール4.10g(0.033モル)、炭酸カリウム4.56g(0.033モル)、アセトニトリル20.78gを投入し、内温80℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約3時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液にメタノール10gと水50gの混合溶液を滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール20gと水100gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約60℃で一晩真空乾燥し、約7.03g(3NOPNに対する収率93.6モル%)が得られた。
【0142】
(合成例4)フタロニトリル化合物[α−{(2−Ph)CO}PN]の合成(中間体4)
150mlフラスコに、3NOPN3.29g(0.019モル)と2−フェニルフェノール3.56g(0.021モル)、炭酸カリウム2.89g(0.021モル)、TBAB0.12g(0.0004モル)、アセトニトリル19.74gを投入し、内温60℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約28時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液にメタノール10gと水50gの混合溶液を滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール20gと水100gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約60℃で一晩真空乾燥し、約5.12g(3NOPNに対する収率90.9モル%)が得られた。
【0143】
(合成例5)フタロニトリル化合物[α−{(2−COOCH)CO}PN]の合成(中間体5)
150mlフラスコに、3NOPN2.60g(0.015モル)とサリチル酸メチル2.74g(0.018モル)、炭酸カリウム2.49g(0.018モル)、TBAB0.10g(0.0003モル)、アセトニトリル10.39gを投入し、内温80℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約9時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液からエバポレーション処理により溶媒を溜去し、そこへメチルエチルケトン(以下、MEKと略す)10gを添加した。このようにして得られた溶液をヘキサン100g中へ滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びMEK10gとヘキサン100gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約60℃で一晩真空乾燥し、約3.71g(3NOPNに対する収率88.8モル%)が得られた。
【0144】
(合成例6)フタロニトリル化合物[β−{(2−COOCH)CO}PN]の合成(中間体6)
150mlフラスコに、4−ニトロフタロニトリル(以下、4NOPNと略す)25.10g(0.145モル)とサリチル酸メチル30.89g(0.203モル)、炭酸カリウム22.04g(0.160モル)、TBAB0.93g(0.003モル)、アセトニトリル100.42gを投入し、内温80℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約40時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液にメタノール50gと水150gの混合溶液を滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール200gと水200gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約60℃で一晩真空乾燥し、約34.8g(4NOPNに対する収率86.3モル%)が得られた。
【0145】
(合成例7)フタロニトリル化合物[β−{(2−COOCOCH)CO}PN]の合成(中間体7)
150mlフラスコに、4NOPN2.60g(0.015モル)と2−(メトキシエチル)カルボキルフェノール3.53g(0.018モル)、炭酸カリウム2.49g(0.018モル)、TBAB0.10g(0.0003モル)、アセトニトリル20.78gを投入し、内温80℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約48時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液からエバポレーション処理により溶媒を溜去し、そこへMEK10gを添加した。このようにして得られた溶液をヘキサン100g中へ滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びMEK10gとヘキサン100gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約60℃で一晩真空乾燥し、約4.12g(4NOPNに対する収率85.2モル%)が得られた。
【0146】
(合成例8)フタロニトリル化合物[α−{(2,6−(CH)CO}PN]の合成(中間体8)
150mlフラスコに、3NOPN6.06g(0.035モル)と2,6−キシレノール4.70g(0.039モル)、炭酸カリウム5.32g(0.039モル)、TBAB0.23g(0.0007モル)、アセトニトリル24.24gを投入し、内温80℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約20時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液にメタノール25gと水50gの混合溶液を滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール50gと水50gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約60℃で一晩真空乾燥し、約5.3g(3NOPNに対する収率60.4モル%)が得られた。
【0147】
(合成例9)フタロニトリル化合物[α−{(2−CN)CO}PN]の合成(中間体9)
150mlフラスコに、3NOPN6.06g(0.035モル)と2−シアノフェノール4.59g(0.039モル)、炭酸カリウム5.32g(0.039モル)、TBAB0.23g(0.0007モル)、アセトニトリル24.24gを投入し、内温85℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約2時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液にメタノール25gと水50gの混合溶液を滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール50gと水50gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約60℃で一晩真空乾燥し、約5.6g(3NOPNに対する収率65.0モル%)が得られた。
【0148】
(合成例10)フタロニトリル化合物[α−{(2−(CF)CO)PN}の合成(中間体10)
150mlフラスコに、3NOPN6.06g(0.035モル)と2−ヒドロキシベンゾトリフルオリド6.24g(0.039モル)、炭酸カリウム5.32g(0.039モル)、TBAB0.23g(0.0007モル)、アセトニトリル24.24gを投入し、内温85℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約2時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液にメタノール25gと水50gの混合溶液を滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール50gと水50gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約60℃で一晩真空乾燥し、約9.7g(3NOPNに対する収率95.7モル%)が得られた。
【0149】
(合成例11)フタロニトリル化合物[α−{(CO)PN}]の合成(中間体11)
150mlフラスコに、3NOPN6.06g(0.035モル)とテトラフルオロフェノール7.11g(0.039モル)、炭酸カリウム5.32g(0.039モル)、TBAB0.23g(0.0007モル)、アセトニトリル24.24gを投入し、内温85℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約2時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液にメタノール25gと水50gの混合溶液を滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール50gと水50gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約60℃で一晩真空乾燥し、約9.7g(3NOPNに対する収率89.0モル%)が得られた。
【0150】
(合成例12)フタロニトリル化合物[β−{(2−COOCH−4−I)CO}PN]の合成(中間体12)
150mlフラスコに、4NOPN6.93g(0.040モル)と5−ヨードサリチル酸メチル12.23g(0.044モル)、炭酸カリウム6.08g(0.044モル)、TBAB0.26g(0.0008モル)、アセトニトリル27.70gを投入し、内温85℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約6時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液にメタノール28gと水55gの混合溶液を滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール55gと水55gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約60℃で一晩真空乾燥し、約14.3g(4NOPNに対する収率88.5モル%)が得られた。
【0151】
(合成例13)フタロニトリル化合物[β−{(2,6−(CH)CO}PN]の合成(中間体13)
150mlフラスコに、4NOPN6.93g(0.040モル)と2,6−キシレノール6.84g(0.056モル)、炭酸カリウム6.08g(0.044モル)、TBAB0.26g(0.0008モル)、アセトニトリル27.70gを投入し、内温85℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約12時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液にメタノール28gと水55gの混合溶液を滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール55gと水55gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約60℃で一晩真空乾燥し、約9.48g(4NOPNに対する収率95.5モル%)が得られた。
【0152】
(合成例14)フタロニトリル化合物[β−{(2,6−(OCH)CO}PN]の合成(中間体14)
150mlフラスコに、4NOPN6.93g(0.040モル)と2,6−ジメトキシフェノール6.78g(0.044モル)、炭酸カリウム6.08g(0.044モル)、TBAB0.26g(0.0008モル)、アセトニトリル27.70gを投入し、内温85℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約3時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液にメタノール28gと水55gの混合溶液を滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール55gと水55gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約60℃で一晩真空乾燥し、約8.65g(4NOPNに対する収率77.2モル%)が得られた。
【0153】
(合成例15)フタロニトリル化合物[β−{(2−COOCH−5−OMe)CO}PN]の合成(中間体15)
150mlフラスコに、4NOPN6.93g(0.040モル)と4−メトキシサリチル酸メチル8.02g(0.044モル)、炭酸カリウム6.08g(0.044モル)、TBAB0.26g(0.0008モル)、アセトニトリル27.70gを投入し、内温85℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約12時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液にメタノール28gと水55gの混合溶液を滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール55gと水55gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約60℃で一晩真空乾燥し、約11.25g(4NOPNに対する収率91.2モル%)が得られた。
【0154】
(合成例16)フタロニトリル化合物[β−{(2,6−Cl)CO}PN]の合成(中間体16)
150mlフラスコに、4NOPN8.66g(0.050モル)と2,6−ジクロロフェノール8.97g(0.055モル)、炭酸カリウム7.60g(0.055モル)、TBAB0.32g(0.001モル)、アセトニトリル34.63gを投入し、内温85℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約24時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液にメタノール50gと水150gの混合溶液を滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール200gと水200gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約60℃で一晩真空乾燥し、約12.86g(4NOPNに対する収率89.0モル%)が得られた。
【0155】
(合成例17)フタロニトリル化合物[α−{(2−COOCOCH)C10O}PN]の合成(中間体17)
150mlフラスコに、3NOPN8.42g(0.048モル)と3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸2−メトキシエチル12.41g(0.050モル)、炭酸カリウム7.30g(0.053モル)、TBAB0.77g(0.002モル)、アセトニトリル33.24gを投入し、内温85℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約9時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液にメタノール50gと水150gの混合溶液を滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール200gと水200gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約60℃で一晩真空乾燥し、約15.5g(3NOPNに対する収率86.7モル%)が得られた。
【0156】
(合成例18)フタロニトリル化合物[α−{(4−COO(CO)CH)CO}PN]の合成(中間体18)
150mlフラスコに、3NOPN6.93g(0.040モル)とp−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エチル11.94g(0.042モル)、炭酸カリウム6.08g(0.044モル)、TBAB0.41g(0.001モル)、アセトニトリル27.70gを投入し、内温90℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約5時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液を100℃×1hrの条件にてエバポレーション操作により溶媒を溜去した。得られた結晶を約80℃で一晩真空乾燥し、約16.15g(3NOPNに対する収率98.4モル%)が得られた。
【0157】
(合成例19)フタロニトリル化合物[β−{(2,6−((CHCH))CO}PN)の合成(中間体19)
200mlフラスコに、4NOPN15g(0.087モル)と2,6−ジイソプロピルフェノール19.31g(0.1083モル)、炭酸カリウム14.97g(0.1083モル)、アセトニトリル50gを投入し、内温85℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約12時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液にメタノール110gと水110gの混合溶液を滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール110gと水110gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約60℃で一晩真空乾燥し、約24.8g(4NOPNに対する収率93.6モル%)が得られた。
【0158】
(合成例20)フタロニトリル化合物[β−{(2,4−Cl)CO}PN]の合成(中間体20)
150mlフラスコに、4NOPN10.39g(0.060モル)と2,4−ジクロロフェノール10.27g(0.063モル)、炭酸カリウム9.12g(0.066モル)、アセトニトリル41.55gを投入し、内温85℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約12時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液にアセトン100mlと水300mlの混合溶液を滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を約80℃で一晩真空乾燥し、約17.1g(4NOPNに対する収率98.6モル%)が得られた。
【0159】
(合成例21)フタロニトリル化合物[β−{(2−COOCH)CS}PN]の合成(中間体21)
150mlフラスコに、4NOPN8.66g(0.050モル)とチオサリチル酸メチル9.25g(0.055モル)、炭酸カリウム7.60g(0.055モル)、TBAB0.32g(0.001モル)、アセトニトリル34.63gを投入し、内温85℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約20時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液にメタノール50gと水150gの混合溶液を滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール200gと水200gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約60℃で一晩真空乾燥し、約6.14g(4NOPNに対する収率41.7モル%)が得られた。
【0160】
(合成例22)フタロニトリル化合物[β−{(2,6−Cl)CS}PN]の合成(中間体22)
150mlフラスコに、4NOPN8.66g(0.050モル)と2,6−ジクロロチオフェノール9.85g(0.055モル)、炭酸カリウム7.60g(0.055モル)、TBAB0.32g(0.001モル)、アセトニトリル34.63gを投入し、内温85℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約20時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液にメタノール50gと水150gの混合溶液を滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール200gと水200gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約60℃で一晩真空乾燥し、約8.49g(4NOPNに対する収率55.6モル%)が得られた。
【0161】
(合成例23)フタロニトリル化合物[β−{(4−NO)CS}PN]の合成(中間体23)
150mlフラスコに、4NOPN8.66g(0.050モル)と4−ニトロチオフェノール8.53g(0.055モル)、炭酸カリウム7.60g(0.055モル)、TBAB0.32g(0.001モル)、アセトニトリル34.63gを投入し、内温85℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約20時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液にメタノール50gと水150gの混合溶液を滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール200gと水200gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約60℃で一晩真空乾燥し、約3.4g(4NOPNに対する収率24.2モル%)が得られた。
【0162】
(合成例24)フタロニトリル化合物[α−{(4−COO(CO)CH)CO}PN]の合成(中間体24)
150mlフラスコに、3NOPN10.39g(0.06モル)とp−ヒドロキシ安息香酸 2−(2−メトキシエトキシ)エチル15.14g(0.063モル)、炭酸カリウム9.12g(0.066モル)、TBAB0.61g(0.002モル)、アセトニトリル41.55gを投入し、内温85℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約4時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液にメタノール50gと水150gの混合溶液を滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール200gと水200gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約60℃で一晩真空乾燥し、約20.13g(3NOPNに対する収率91.6モル%)が得られた。
【0163】
(合成例25)フタロニトリル化合物[β−COPN]の合成(中間体25)
150mlフラスコに、4NOPN10.39g(0.06モル)とフェノール5.93g(0.063モル)、炭酸カリウム9.12g(0.066モル)、アセトニトリル41.55gを投入し、内温85℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約2時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液にメタノール50gと水150gの混合溶液を滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール200gと水200gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約60℃で一晩真空乾燥し、約12.8g(4NOPNに対する収率96.9モル%)が得られた。
【0164】
(実施例1)フタロシアニン化合物[ZnPc−{α−(2−COOCH)CO},{β−(2−COOCH)CO}12]の合成
150mlフラスコに、合成例5で得られた中間体5 3.51g(0.012モル)、合成例6で得られた中間体6 3.51g(0.012モル)、ヨウ化亜鉛2.11g(0.007モル)、ベンゾニトリル(以下、BNと略す)24.75gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、内温185℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約3時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液にMEK106.7gを添加し、得られた溶液をヘキサン320.0gに滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びMEK106.7gとヘキサン320.0gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約100℃で一晩真空乾燥し、約6.74g(中間体5および中間体6に対する収率95.3モル%)が得られた。
【0165】
(最大吸収波長およびグラム吸光係数の測定) 得られたフタロシアニン化合物を分光光度計(島津製作所製:UV−1600Pc)を用いてメチルセルソルブ0.8wt%含有メタノール溶液中で最大吸収波長(λmax)およびグラム吸光係数を測定した。測定手法は以下の通り行なった。
【0166】
50mlメスフラスコに得られたフタロシアニン化合物0.04gをメチルセルソルブ20gにて溶解し、溶液のメニスカスが50mlメスフラスコの標線と一致するようにメタノールを添加して調製した。次いで、調製した溶液をピペットを用いて1ml分取し、分取した溶液を全て50mlメスフラスコに投入してメタノールにて希釈し、溶液のメニスカスが50mlメスフラスコの標線と一致するように調製した。このようにして調製した溶液を1cm角のパイレックス製セルに入れ、分光光度計を用いて透過スペクトルを測定した。また、測定した吸光度をAとしたとき、グラム吸光係数を以下の式で計算した。
【0167】
【数1】

【0168】
このようにして測定した結果を表1にまとめる。
【0169】
(耐熱性の評価)
得られたフタロシアニン化合物8.3mgに(株)日本触媒社製ベンジルマレイミド含有アクリル系ポリマー(BSX−23−M4)1.48gおよびメチルセルソルブ3.0gを加え、溶解、混合して、樹脂塗料液を調製した。得られた樹脂塗料液をバーコーターを使用して、ガラス板に乾燥膜中の色素濃度1wt%、乾燥膜厚が2μmとなるよう塗布し、80℃にて30分間乾燥させた。このようにして得られたコーティングガラス板の吸収スペクトルを分光光度計(島津製作所製:UV−1600Pc)にて測定し、これを加熱前スペクトルとした。次に、加熱前スペクトルを測定した塗膜ガラス板を200℃にて12時間、加熱処理した。この加熱処理したコーティングガラス板の吸収スペクトルを分光光度計にて測定し、これを加熱後スペクトルとした。このように測定した加熱前、加熱後の各スペクトルにおいて400nm〜1100nmまでの吸光度を積分し、加熱前と加熱後でその吸光度の差を測定した。また、加熱前スペクトルをE、加熱後スペクトルをE、測定した吸光度の差をΔEとしたとき、ΔEを以下の式で計算した。
【0170】
【数2】

【0171】
このようにして測定した結果を以下の表1にまとめる。
【0172】
(実施例2)フタロシアニン化合物[ZnPc−{α−(2−CHO)CO},{β−(2−COOCH)CO}12]の合成
150mlフラスコに、合成例3で得られた中間体3 2.25g(0.009モル)、合成例6で得られた中間体6 2.50g(0.009モル)、ヨウ化亜鉛1.79g(0.005モル)、BN18.56gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、内温185℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約3時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液をMEK74.2gとヘキサン222.7gの混合溶液に滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びMEK74.2gとヘキサン222.7gの混合溶液を加えて攪拌洗浄した。最後に得られた結晶を吸引ろ過した後、再度メタノール55.7gを加えて攪拌することで精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約100℃で一晩真空乾燥し、約5.0g(中間体3および中間体6に対する収率99.0モル%)が得られた。
【0173】
このようにして得られたフタロシアニン化合物を、実施例1のフタロシアニン化合物を実施例2のフタロシアニン化合物に置き換えた以外、実施例1と全く同じ操作により最大吸収波長、グラム吸光係数および耐熱性を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0174】
(実施例3)フタロシアニン化合物[ZnPc−{α−(2,6−Cl)CO},{β−(2−COOCH)CO}12]の合成
150mlフラスコに、合成例2で得られた中間体2 3.76g(0.013モル)、合成例6で得られた中間体6 3.81g(0.013モル)、ヨウ化亜鉛2.28g(0.007モル)、BN26.81gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、内温185℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約3時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液をMEK115.6gとヘキサン346.7gの混合溶液に滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びMEK115.6gとヘキサン346.7gの混合溶液を加えて攪拌洗浄した。最後に得られた結晶を吸引ろ過した後、再度メタノール92.5gを加えて攪拌することで精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約100℃で一晩真空乾燥し、約7.18g(中間体2および中間体6に対する収率92.0モル%)が得られた。
【0175】
このようにして得られたフタロシアニン化合物を、実施例1のフタロシアニン化合物を実施例3のフタロシアニン化合物に置き換えた以外、実施例1と全く同じ操作により最大吸収波長、グラム吸光係数および耐熱性を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0176】
(実施例4)フタロシアニン化合物[ZnPc−{α−(2−NO)CO},{β−(2−COOCH)CO}12]の合成
150mlフラスコに、合成例1で得られた中間体1 7.96g(0.030モル)、合成例6で得られた中間体6 8.38g(0.030モル)、ヨウ化亜鉛5.27g(0.017モル)、BN61.87gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、内温160℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約16時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液をメタノール247.5gと水61.9gの混合溶液に滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール247.5gと水61.9gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約100℃で一晩真空乾燥し、約16.0g(中間体1および中間体6に対する収率92.6モル%)が得られた。
【0177】
このようにして得られたフタロシアニン化合物を、実施例1のフタロシアニン化合物を実施例4のフタロシアニン化合物に置き換えた以外、実施例1と全く同じ操作により最大吸収波長、グラム吸光係数および耐熱性を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0178】
(実施例5)フタロシアニン化合物[ZnPc−{α−(2−NO)CO},{β−(2−COOCOCH)CO}12]の合成
150mlフラスコに、合成例1で得られた中間体1 1.93g(0.007モル)、合成例7で得られた中間体7 2.28g(0.007モル)、塩化亜鉛0.52g(0.004モル)、オクタノール18.23gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、内温155℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約5時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液にアセトン18.23gを添加し、得られた溶液をヘキサン100gに滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びアセトン10gとヘキサン100gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約100℃で一晩真空乾燥し、約3.92g(中間体1および中間体7に対する収率90.3モル%)が得られた。
【0179】
このようにして得られたフタロシアニン化合物を、実施例1のフタロシアニン化合物を実施例5のフタロシアニン化合物に置き換えた以外、実施例1と全く同じ操作により最大吸収波長、グラム吸光係数および耐熱性を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0180】
(実施例6)フタロシアニン化合物[ZnPc−{α−(2−Ph)CO},{β−(2−COOCH)CO}12]の合成
150mlフラスコに、合成例4で得られた中間体4 1.50g(0.005モル)、合成例6で得られた中間体6 1.41g(0.005モル)、塩化亜鉛0.38g(0.003モル)、o−ジクロロベンゼン6.01g、オクタノール1.45gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、内温160℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約4時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液にMEK7gを添加し、得られた溶液をヘキサン25gに滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びMEK7gとヘキサン25gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約100℃で一晩真空乾燥し、約2.3g(中間体4および中間体6に対する収率74.8モル%)が得られた。
【0181】
このようにして得られたフタロシアニン化合物を、実施例1のフタロシアニン化合物を実施例6のフタロシアニン化合物に置き換えた以外、実施例1と全く同じ操作により最大吸収波長、グラム吸光係数および耐熱性を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0182】
(実施例7)フタロシアニン化合物[ZnPc−{α−(2,6−(CH)CO},{β−(2−COOCH)CO}12]の合成
150mlフラスコに、合成例8で得られた中間体8 3.72g(0.015モル)、合成例6で得られた中間体6 4.17g(0.015モル)、ヨウ化亜鉛2.63g(0.008モル)、BN30.94gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、内温185℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約12時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液をメタノール123.7gと水30.9gの混合溶液に滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール61.9gと水61.9gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約100℃で一晩真空乾燥し、約8.59g(中間体8および中間体6に対する収率102.4モル%)が得られた。
【0183】
このようにして得られたフタロシアニン化合物を、実施例1のフタロシアニン化合物を実施例7のフタロシアニン化合物に置き換えた以外、実施例1と全く同じ操作により最大吸収波長、グラム吸光係数および耐熱性を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0184】
(実施例8)フタロシアニン化合物[ZnPc−{α−(2−CN)CO},{β−(2−COOCH)CO}12]の合成
150mlフラスコに、合成例9で得られた中間体9 2.45g(0.01モル)、合成例6で得られた中間体6 2.45g(0.01モル)、ヨウ化亜鉛1.76g(0.006モル)、BN20.62gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、内温160℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約12時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液をメタノール82.5gと水20.6gの混合溶液に滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール41.2gと水41.2gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約100℃で一晩真空乾燥し、約5.21g(中間体9および中間体6に対する収率93.7モル%)が得られた。
【0185】
このようにして得られたフタロシアニン化合物を、実施例1のフタロシアニン化合物を実施例8のフタロシアニン化合物に置き換えた以外、実施例1と全く同じ操作により最大吸収波長、グラム吸光係数および耐熱性を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0186】
(実施例9)フタロシアニン化合物[ZnPc−{α−(2−CF)CO},{β−(2−COOCH)CO}12]の合成
150mlフラスコに、合成例10で得られた中間体10 3.75g(0.013モル)、合成例6で得られた中間体6 3.62g(0.013モル)、ヨウ化亜鉛2.28g(0.007モル)、BN26.81gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、内温160℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約12時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液をメタノール107.2gと水26.8gの混合溶液に滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール53.6gと水53.6gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約100℃で一晩真空乾燥し、約7.11g(中間体10および中間体6に対する収率91.3モル%)が得られた。
【0187】
このようにして得られたフタロシアニン化合物を、実施例1のフタロシアニン化合物を実施例9のフタロシアニン化合物に置き換えた以外、実施例1と全く同じ操作により最大吸収波長、グラム吸光係数および耐熱性を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0188】
(実施例10)フタロシアニン化合物[ZnPc−{α−(CO)},{β−(2−COOCH)CO}12]の合成
150mlフラスコに、合成例11で得られた中間体11 4.03g(0.013モル)、合成例6で得られた中間体6 3.62g(0.013モル)、ヨウ化亜鉛2.28g(0.007モル)、BN26.81gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、内温160℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約12時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液をメタノール107.2gと水26.8gの混合溶液に滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール53.6gと水53.6gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約100℃で一晩真空乾燥し、約7.38g(中間体11および中間体6に対する収率91.4モル%)が得られた。
【0189】
このようにして得られたフタロシアニン化合物を、実施例1のフタロシアニン化合物を実施例10のフタロシアニン化合物に置き換えた以外、実施例1と全く同じ操作により最大吸収波長、グラム吸光係数および耐熱性を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0190】
(実施例11)フタロシアニン化合物[ZnPc−{α−(2−NO)CO},{β−(2−COOCH−4−I)CO}12]の合成
150mlフラスコに、合成例1で得られた中間体1 2.65g(0.01モル)、合成例12で得られた中間体12 4.04g(0.01モル)、ヨウ化亜鉛1.76g(0.006モル)、BN20.62gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、内温160℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約14時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液をメタノール82.5gと水20.6gの混合溶液に滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール41.2gと水41.2gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約100℃で一晩真空乾燥し、約6.95g(中間体1および中間体12に対する収率99.0モル%)が得られた。
【0191】
このようにして得られたフタロシアニン化合物を、実施例1のフタロシアニン化合物を実施例11のフタロシアニン化合物に置き換えた以外、実施例1と全く同じ操作により最大吸収波長、グラム吸光係数および耐熱性を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0192】
(実施例12)フタロシアニン化合物[ZnPc−{α−(2−NO)CO},{β−(2,6−(CH)CO}12]の合成
150mlフラスコに、合成例1で得られた中間体1 3.45g(0.013モル)、合成例13で得られた中間体13 3.23g(0.013モル)、ヨウ化亜鉛2.28g(0.007モル)、BN26.81gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、内温160℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約12時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液をメタノール107.2gと水26.8gの混合溶液に滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール53.6gと水53.6gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約100℃で一晩真空乾燥し、約7.93g(中間体1および中間体13に対する収率111.7モル%)が得られた。
【0193】
このようにして得られたフタロシアニン化合物を、実施例1のフタロシアニン化合物を実施例12のフタロシアニン化合物に置き換えた以外、実施例1と全く同じ操作により最大吸収波長、グラム吸光係数および耐熱性を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0194】
(実施例13)フタロシアニン化合物[ZnPc−{α−(2−NO)CO},{β−(2,6−(OCH)CO}12]の合成
150mlフラスコに、合成例1で得られた中間体1 3.45g(0.013モル)、合成例14で得られた中間体14 3.64g(0.013モル)、ヨウ化亜鉛2.28g(0.007モル)、BN26.81gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、内温160℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約12時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液をメタノール107.2gと水26.8gの混合溶液に滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール53.6gと水53.6gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約100℃で一晩真空乾燥し、約7.75g(中間体1および中間体14に対する収率103.1モル%)が得られた。
【0195】
このようにして得られたフタロシアニン化合物を、実施例1のフタロシアニン化合物を実施例13のフタロシアニン化合物に置き換えた以外、実施例1と全く同じ操作により最大吸収波長、グラム吸光係数および耐熱性を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0196】
(実施例14)フタロシアニン化合物[ZnPc−{α−(2−NO)CO},{β−(2−COOCH−5−OCH)CO}12]の合成
150mlフラスコに、合成例1で得られた中間体1 2.65g(0.01モル)、合成例15で得られた中間体15 3.08g(0.01モル)、ヨウ化亜鉛1.76g(0.006モル)、BN20.62gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、内温160℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約7時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液をメタノール82.5gと水20.6gの混合溶液に滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール41.2gと水41.2gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約100℃で一晩真空乾燥し、約5.7g(中間体1および中間体15に対する収率94.0モル%)が得られた。
【0197】
このようにして得られたフタロシアニン化合物を、実施例1のフタロシアニン化合物を実施例14のフタロシアニン化合物に置き換えた以外、実施例1と全く同じ操作により最大吸収波長、グラム吸光係数および耐熱性を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0198】
(実施例15)フタロシアニン化合物[ZnPc−{α−(2−NO)CO},{β−(2,6−Cl)CO}12]の合成
150mlフラスコに、合成例1で得られた中間体1 3.18g(0.012モル)、合成例16で得られた中間体16 3.47g(0.012モル)、ヨウ化亜鉛2.11g(0.007モル)、BN24.75gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、内温160℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約8時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液をメタノール99.0gと水24.7gの混合溶液に滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール49.5gと水49.5gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約100℃で一晩真空乾燥し、約6.9g(中間体1および中間体16に対する収率モル101.4%)が得られた。
【0199】
このようにして得られたフタロシアニン化合物を、実施例1のフタロシアニン化合物を実施例15のフタロシアニン化合物に置き換えた以外、実施例1と全く同じ操作により最大吸収波長、グラム吸光係数および耐熱性を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0200】
(実施例16)フタロシアニン化合物[ZnPc−{α−(2−CN)CO},{β−(2−COOCH−5−OCH)CO}12]の合成
150mlフラスコに、合成例9で得られた中間体9 2.94g(0.012モル)、合成例15で得られた中間体15 3.70g(0.012モル)、ヨウ化亜鉛2.11g(0.007モル)、BN24.75gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、内温160℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約8時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液をメタノール99.0gと水24.7gの混合溶液に滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール49.5gと水49.5gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約100℃で一晩真空乾燥し、約6.4g(中間体9および中間体15に対する収率モル91.0%)が得られた。
【0201】
このようにして得られたフタロシアニン化合物を、実施例1のフタロシアニン化合物を実施例16のフタロシアニン化合物に置き換えた以外、実施例1と全く同じ操作により最大吸収波長、グラム吸光係数および耐熱性を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0202】
(実施例17)フタロシアニン化合物[ZnPc−{α−(2−CN)CO},{β−(2,6−Cl)CO}12]の合成
150mlフラスコに、合成例9で得られた中間体9 2.94g(0.012モル)、合成例16で得られた中間体16 3.47g(0.012モル)、ヨウ化亜鉛2.11g(0.007モル)、BN24.75gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、内温160℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約8時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液をメタノール99.0gと水24.7gの混合溶液に滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール49.5gと水49.5gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約100℃で一晩真空乾燥し、約6.5g(中間体9および中間体16に対する収率モル95.5%)が得られた。
【0203】
このようにして得られたフタロシアニン化合物を、実施例1のフタロシアニン化合物を実施例17のフタロシアニン化合物に置き換えた以外、実施例1と全く同じ操作により最大吸収波長、グラム吸光係数および耐熱性を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0204】
(実施例18)フタロシアニン化合物[ZnPc−{α−(2−NO)CO}2.5,{β−(2−COOCH)CO}1.512]の合成
150mlフラスコに、合成例1で得られた中間体1 4.97g(0.01875モル)、合成例6で得られた中間体6 3.13g(0.01125モル)、ヨウ化亜鉛2.63g(0.008モル)、BN30.94gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、内温160℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約16時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液をメタノール123.7gと水30.9gの混合溶液に滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール123.7gと水30.9gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約100℃で一晩真空乾燥し、約9.0g(中間体1および中間体6に対する収率104.1モル%)が得られた。
【0205】
このようにして得られたフタロシアニン化合物を、実施例1のフタロシアニン化合物を実施例18のフタロシアニン化合物に置き換えた以外、実施例1と全く同じ操作により最大吸収波長、グラム吸光係数および耐熱性を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0206】
(実施例19)フタロシアニン化合物[ZnPc−{α−(2−NO)CO},{β−(2−COOCH)CO}12]の合成
150mlフラスコに、合成例1で得られた中間体1 5.97g(0.0225モル)、合成例6で得られた中間体6 2.09g(0.0075モル)、ヨウ化亜鉛2.63g(0.008モル)、BN30.94gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、内温160℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約16時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液をメタノール123.7gと水30.9gの混合溶液に滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール123.7gと水30.9gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約100℃で一晩真空乾燥し、約9.4g(中間体1および中間体6に対する収率108.8モル%)が得られた。
【0207】
このようにして得られたフタロシアニン化合物を、実施例1のフタロシアニン化合物を実施例19のフタロシアニン化合物に置き換えた以外、実施例1と全く同じ操作により最大吸収波長、グラム吸光係数および耐熱性を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0208】
(実施例20)フタロシアニン化合物[CuPc−{α−(2−NO)CO},{β−(2−COOCH)CO}12]の合成
150mlフラスコに、合成例1で得られた中間体1 3.18g(0.012モル)、合成例6で得られた中間体6 3.34g(0.0012モル)、塩化銅0.71g(0.007モル)、o−ジクロロベンゼン14.11g、1−オクタノール6.25gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、内温160℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約2時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液をMEK81.5gとヘキサン244.4gの混合溶液に滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール61.1gを加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約100℃で一晩真空乾燥し、約6.2g(中間体1および中間体6に対する収率89.8モル%)が得られた。
【0209】
このようにして得られたフタロシアニン化合物を、実施例1のフタロシアニン化合物を実施例20のフタロシアニン化合物に置き換えた以外、実施例1と全く同じ操作により最大吸収波長、グラム吸光係数および耐熱性を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0210】
(実施例21)フタロシアニン化合物[ZnPc−{α−(2−CN)CO},{β−(2,6−((CHCH))CO}12]の合成
150mlフラスコに、合成例9で得られた中間体9 3.19g(0.013モル)、合成例19で得られた中間体19 3.96g(0.017モル)、ヨウ化亜鉛2.28g(0.007モル)、BN26.81gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、内温160℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約6時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液をメタノール160.9gと水40.2gの混合溶液に滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール53.6gと水53.6gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約100℃で一晩真空乾燥し、約6.35g(中間体9および中間体19に対する収率83.9モル%)が得られた。
【0211】
このようにして得られたフタロシアニン化合物を、実施例1のフタロシアニン化合物を実施例21のフタロシアニン化合物に置き換えた以外、実施例1と全く同じ操作により最大吸収波長、グラム吸光係数および耐熱性を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0212】
(実施例22)フタロシアニン化合物[ZnPc−{α−(2−COOCOCH)C10O},{β−(2−COOCOCH)CO}12]の合成
150mlフラスコに、合成例17で得られた中間体17 3.72g(0.01モル)、合成例7で得られた中間体7 3.22g(0.01モル)、ヨウ化亜鉛1.76g(0.006モル)、BN20.62gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、内温160℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約14時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液をメタノール123.7gと水30.9gの混合溶液に滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール41.2gと水41.2gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約100℃で一晩真空乾燥し、約6.85g(中間体17および中間体7に対する収率94.2モル%)が得られた。
【0213】
このようにして得られたフタロシアニン化合物を、実施例1のフタロシアニン化合物を実施例22のフタロシアニン化合物に置き換えた以外、実施例1と全く同じ操作により最大吸収波長、グラム吸光係数および耐熱性を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0214】
(実施例23)フタロシアニン化合物[ZnPc−{α−(4−COO(CO)CH)CO},{β−(2,4−Cl)CO}12]の合成
150mlフラスコに、合成例18で得られた中間体18 4.51g(0.011モル)、合成例20で得られた中間体20 3.18g(0.011モル)、ヨウ化亜鉛1.93g(0.006モル)、BN22.69gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、内温160℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約12時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液にメタノール90.7gと水90.7gの混合溶液を加えてデカンテーション処理を行った。上澄み液を捨てて得られた固形分に、再びメタノール90.7gと水90.7gの混合溶液を加えてデカンテーション処理を行った。上澄み液を捨てて得られた結晶を約100℃で一晩真空乾燥し、約7.9g(中間体18および中間体20に対する収率98.1モル%)が得られた。
【0215】
このようにして得られたフタロシアニン化合物を、実施例1のフタロシアニン化合物を実施例23のフタロシアニン化合物に置き換えた以外、実施例1と全く同じ操作により最大吸収波長、グラム吸光係数および耐熱性を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0216】
(実施例24)フタロシアニン化合物[ZnPc−{α−(2−CN)CO},{β−(2−COOCH)CS}12]の合成
150mlフラスコに、合成例9で得られた中間体9 3.19g(0.013モル)、合成例21で得られた中間体21 3.83g(0.013モル)、ヨウ化亜鉛2.28g(0.007モル)、BN26.81gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、内温160℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約10時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液をメタノール160.9gと水40.2gの混合溶液に滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール53.6gと水53.6gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約100℃で一晩真空乾燥し、約5.95g(中間体9および中間体21に対する収率80.0モル%)が得られた。
【0217】
このようにして得られたフタロシアニン化合物を、実施例1のフタロシアニン化合物を実施例24のフタロシアニン化合物に置き換えた以外、実施例1と全く同じ操作により最大吸収波長、グラム吸光係数および耐熱性を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0218】
(実施例25)フタロシアニン化合物[ZnPc−{α−(2−CN)CO},{β−(2,6−Cl)CS}12]の合成
150mlフラスコに、合成例9で得られた中間体9 3.19g(0.013モル)、合成例22で得られた中間体22 3.97g(0.013モル)、ヨウ化亜鉛2.28g(0.007モル)、BN26.81gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、内温160℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約10時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液をメタノール160.9gと水40.2gの混合溶液に滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール53.6gと水53.6gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約100℃で一晩真空乾燥し、約7.53g(中間体9および中間体22に対する収率99.3モル%)が得られた。
【0219】
このようにして得られたフタロシアニン化合物を、実施例1のフタロシアニン化合物を実施例25のフタロシアニン化合物に置き換えた以外、実施例1と全く同じ操作により最大吸収波長、グラム吸光係数および耐熱性を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0220】
(実施例26)フタロシアニン化合物[ZnPc−{α−(2−CN)CO},{β−(4−NO)CS}12]の合成
150mlフラスコに、合成例9で得られた中間体9 2.94g(0.012モル)、合成例23で得られた中間体23 3.38g(0.012モル)、ヨウ化亜鉛2.11g(0.007モル)、BN24.75gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、内温160℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約7時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液をメタノール148.5gと水37.1gの混合溶液に滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール49.5gと水49.5gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約100℃で一晩真空乾燥し、約5.6g(中間体9および中間体23に対する収率83.4モル%)が得られた。
【0221】
このようにして得られたフタロシアニン化合物を、実施例1のフタロシアニン化合物を実施例26のフタロシアニン化合物に置き換えた以外、実施例1と全く同じ操作により最大吸収波長、グラム吸光係数および耐熱性を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0222】
(実施例27)フタロシアニン化合物[ZnPc−{α−(4−COO(CO)CH)CO},{β−CO}12]の合成
150mlフラスコに、合成例24で得られた中間体24 2.93g(0.008モル)、合成例25で得られた中間体25 1.76g(0.008モル)、ヨウ化亜鉛1.40g(0.004モル)、BN16.50gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、内温160℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約5時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液をメタノール99.0gと水24.7gの混合溶液に滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール33.0gと水33.0gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約100℃で一晩真空乾燥し、約4.64g(中間体24および中間体25に対する収率93.7モル%)が得られた。
【0223】
このようにして得られたフタロシアニン化合物を、実施例1のフタロシアニン化合物を実施例27のフタロシアニン化合物に置き換えた以外、実施例1と全く同じ操作により最大吸収波長、グラム吸光係数および耐熱性を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0224】
(比較例1)フタロシアニン化合物[ZnPc−{α−(2−COOCH)CO}12]の合成
150mlフラスコに、合成例5で得られた中間体5 4.17g(0.015モル)、ヨウ化亜鉛1.32g(0.004モル)、BN30.94gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、内温185℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約5時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液にメタノール123.7gと水30.9gの混合溶液を滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール123.7gと水30.9gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約100℃で一晩真空乾燥し、約3.3g(中間体5に対する収率74.2モル%)が得られた。
【0225】
このようにして得られたフタロシアニン化合物を、実施例1のフタロシアニン化合物を比較例1のフタロシアニン化合物に置き換えた以外、実施例1と全く同じ操作により最大吸収波長、グラム吸光係数および耐熱性を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0226】
(比較例2)フタロシアニン化合物[ZnPc−{β−(2−COOCH)CO}12]の合成
150mlフラスコに、合成例6で得られた中間体6 4.17g(0.015モル)、ヨウ化亜鉛1.32g(0.004モル)、BN30.94gを投入し、窒素流通下(10ml/min)、内温185℃、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら約5時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液にメタノール123.7gと水30.9gの混合溶液を滴下して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール123.7gと水30.9gの混合溶液を加えて攪拌洗浄することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約100℃で一晩真空乾燥し、約3.8g(中間体6に対する収率84.9モル%)が得られた。
【0227】
このようにして得られたフタロシアニン化合物を、実施例1のフタロシアニン化合物を比較例2のフタロシアニン化合物に置き換えた以外、実施例1と全く同じ操作により最大吸収波長、グラム吸光係数および耐熱性を測定し、その結果を表1にまとめた。
【0228】
【表2】

【0229】
比較例1で合成したα位4置換フタロシアニン化合物は、比較例2で合成したβ位4置換フタロシアニン化合物に比べ、グラム吸光係数εgは約2倍であったが、加熱による吸光度の差ΔEが大きく、耐熱性が悪化した。一方、実施例1〜27で合成したフタロシアニン化合物は、加熱による吸光度の差ΔEが比較例2で合成したβ位4置換フタロシアニン化合物に近く、グラム吸光係数εgは比較例1で合成したα位4置換フタロシアニン化合物と同等以上であった。そのため、表1で示したようにα位置換フタロシアニンとβ位置換フタロシアニン両者のそれぞれの優位的特長をあわせもつ、実施例1〜27のようなα、β位混合置換フタロシアニン化合物が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】

式中、Z〜Z16は、それぞれ独立して、水素原子、下記化学式2:
【化2】

式中、Xは酸素原子または硫黄原子であり、Aはフェニル基、1〜5の置換基Rを有するフェニル基または1〜7の置換基Rを有するナフチル基であり、前記置換基Rは、それぞれ独立して、ニトロ基、COOR、OR(Rは炭素数1〜8のアルキル基)、ハロゲン原子、アリール基、シアノ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基であり、この際、Rは、炭素数1〜8のアルキル基(この際、アルキル基は、炭素数1〜8のアルキルオキシ基、ハロゲン原子もしくはアリール基で置換されていてもよい)、または下記化学式3で示される基;
【化3】

式中、Rは炭素数1〜3のアルキレン基であり、Rは炭素数1〜8のアルキル基であり、nは1〜4の整数である;
である:
で示される基、または下記化学式2’:
【化4】

式中、R’は炭素数1〜3のアルキレン基であり、R”は炭素数1〜8のアルキル基であり、lは0〜4の整数である:
で示される基であり、
この際、Z、Z、Z、Z、Z、Z12、Z13及びZ16のうち1〜3個は、化学式2または化学式2’で示される基であり、Z、Z、Z、Z、Z10、Z11、Z14及びZ15のうち3〜1個は、化学式2または化学式2’で示される基であり、Z〜Z16のうち合計4個は、化学式2または化学式2’で示される基であり、Z〜Z16のうち少なくとも1個は、化学式2で示される基であり、
Mは無金属、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表わす:
で示されるフタロシアニン化合物。
【請求項2】
〜Z16は、それぞれ独立して、水素原子または前記化学式2で示される基を表す、請求項1に記載のフタロシアニン化合物。
【請求項3】
前記化学式2で示される基のうち少なくとも1が、前記置換基Rがニトロ基、COOR、ハロゲン原子、またはシアノ基である−X−Aである、請求項1または2に記載のフタロシアニン化合物。
【請求項4】
前記化学式2で示される基のうち少なくとも1が下記化学式5:
【化5】

上記化学式5中、Xは前記化学式2における定義と同様の定義であり、Rは、前記置換基Rに該当し、mは1〜5の整数である:または、下記化学式5’:
【化6】

上記化学式5’中、Xは前記化学式2における定義と同様の定義であり、Rは、前記置換基Rに該当し、m”は1〜7の整数である:
で示される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフタロシアニン化合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のフタロシアニン化合物を含む、フラットパネルディスプレイ用フィルター。

【公開番号】特開2010−77408(P2010−77408A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192785(P2009−192785)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】