説明

フットコントローラ装置

【課題】 従来における椅子の昇降や背凭れの起伏を行うジョイスティック方式にあっては、立位診療(医者が立った状態での診療)時に椅子の昇降または背凭れの起伏操作を行う場合には、医者は膝関節を進展し、かつ、足関節(足根関節)を背屈させた状態のまま、足先を前後左右に動かして操作するという非常に困難な操作を強いられるという問題があった。
【解決手段】 固定部材1に対して中立位置となるようにバネ付勢された操作軸4と、該操作軸の中間部に一体的に取付けられた平面状の操作板7と、前記固定部材に対して等間隔で取付けられ前記操作軸の傾斜方向を検出する検出手段3とより構成し、前記操作軸あるいは操作板を足先で操作して前記操作軸を傾斜させることで、該操作軸によって検出手段が操作されるようにしたフットコントローラ装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療、例えば、歯科用椅子の動作を施術者が足先を前後、あるいは、左右に動かすことで椅子の上下動や背凭れの起伏を制御するためのフットコントローラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用椅子には、油圧シリンダ等のアクチュエータが組み込まれており、椅子に着座している患者を診療に適した姿勢位置に導くため、椅子の高さや背凭れの傾き等を足の操作によって調整するためのフットコントローラが椅子からコードを介して歯科医の操作しやすい位置で操作が行えるようになっていた。
【0003】
そして、このようなフットコントローラの一例として、垂直に起立したジョイスティック状のスイッチを設け、操作軸を前後左右に傾倒操作することにより椅子の昇降や背凭れの傾倒を行わせるものがあった。ジョイスティックの形態としては、特開2000−195383に開示された発明がある。この発明は、スプリングによって中立位置(垂直状態)となる操作体を操作することにより、該操作体に取付けられている操作軸が傾斜され、該操作軸が傾くことで4つのマイクロスイッチの内の傾いた方向の1つを押してスイッチをオン状態とするものである。
【特許文献1】特開2000−195383
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ジョイスティックを用いて立位診療(医者が立った状態での診療)時に椅子の昇降または背凭れの起伏操作を行う場合には、医者は膝関節を進展し、かつ、足関節(足根関節)を背屈させた状態のまま、足先を前後左右に動かして操作するという非常に困難な操作を強いられるという問題があった。また、座位診療(椅子に着座した状態での診療)時であっても、操作軸を手前方向に倒す(引き寄せる)場合は、踵を浮かせた状態での操作となるので、操作がし難く施術者に疲労を与えるとう問題もあった。
【0005】
また、球面軸受けや、操作軸が貫通する十字孔を設けるために、構造が複雑になると共に製造生産性が悪く、さらに、容積が大きくなるので操作軸の先端高さも高くなるため、踵を床面につけたまま操作する際に足関節の背屈が大きくなって施術者に疲労を与えると共に操作もしづらいといった問題があった。
【0006】
本発明は前記した問題点を解決せんとするもので、その目的とするところは、立位診療での操作が行い易く、かつ、座位診療においても踵を浮かせることなく手前方向に軸を傾動させることができると共に、連続した操作も容易に行え、しかも構造が簡単で安価に製作することができるフットコントローラ装置を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフットコントローラ装置は、前記した目的を達成せんとするもので、請求項1は、固定部材に対して中立位置となるようにバネ付勢された操作軸と、該操作軸の中間部に一体的に取付けられた平面状の操作板と、前記固定部材に対して等間隔で取付けられ前記操作軸の傾斜方向を検出する検出手段とより構成し、前記操作軸あるいは操作板を足先で操作して前記操作軸を傾斜させることで、前記操作軸あるいは前記操作板の裏面によって検出手段が操作されるようにしたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の手段は、前記した請求項1において、前記操作板の裏面との当接によって該操作板の傾斜角度を規制するための前記固定部材に取付けられたストップ部材を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項3の手段は、前記した請求項1または2において、前記操作軸から当接部材を突出させ、該当接部材と前記ストップ部材との当接によって前記操作軸の回転を防止したことを特徴とする。
【0010】
請求項4の手段は、前記した請求項1において、前記検出手段が4個のマイクロスイッチあるいはタクトスイッチであり、該マイクロスイッチあるいはタクトスイッチが90度の間隔で配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5の手段は、固定部材に対して中立位置となるようにバネ付勢された操作軸と、該操作軸の中間部に一体的に取付けられた平面状の操作板と、該操作板が傾斜することでオン状態されるタクトスイッチと、前記操作板の裏面との当接によって該操作板の傾斜角度を規制するためのストップ部材とより構成したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は前記したように、固定部材に対して中立位置となるようにバネ付勢された操作軸の中間部に一体的に平面状の操作板を取付け、前記固定部材に対して等間隔に前記操作軸の傾斜方向を検出する検出手段を取付け、前記操作軸のみならず前記操作板が作動しても傾斜が検出されるようにしたので、踵を床面につけたまま操作板を踏み込むことによっての操作が可能になり、従って、座位診療は勿論のこと立位診療での操作が行い易く施術者に疲労感を与えることがない。
【0013】
また、固定部材に操作板の下側に、操作板の傾斜角度を規制するためのストップ部材を取付けることで、操作軸を変位させ過ぎることによって検出手段に対して負荷が掛かり過ぎて、検出手段を損傷することがない。さらに、操作軸が十字方向のみに案内されるので、操作の方向性が明確となり操作がし易くなると共に複数の検出手段に対して同時にオンさせることがない。
【0014】
また、操作軸に当接部材を設け、操作軸が鉛直軸回りに回転させた場合に前記当該部材がストップ部材に当接して回転を規制し、水平面における操作板の向きが常に所定の行きに位置するようにしたので、操作板上にシール、例えば、上昇操作といった操作に対しての椅子がどのように動作するかの情報を貼ったり、あるいは操作板を円板形状ではなく菱形形状にするなどして、認知性の向上を図ることができ、椅子の上下動や背凭れの起伏操作を誤るのを防ぐことができる。
【0015】
さらに、検出手段としてタクトスイッチを使用した場合には、コストの低減とスイッチの取付けや配線作業の省力化につながり生産性の向上を図ることができる等の効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、操作軸のみならず操作板を足先で操作することで、前記操作軸を傾斜させてマイクロスイッチ等の検出手段を制御することができる。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明に係るフットコントローラ装置の一実施例を図面と共に説明する。
1は図示しないハウジングの底面板に固定される鞍形状の固定部材、2は該固定部材1の上面に後述する操作軸4が挿入可能な隙間を介して相対向して固定されたストップ部材にして、対向面には挿入孔2aが形成されている。
【0018】
3は前記固定部材1の裏面に90度の角度で配置固定されたリミットスイッチである検出手段にして、相対向する2個の各検出手段3における操作片3aがそれぞれ対面するような方向で固定されている。なお、本実施例では検出手段3としてマイクロスイッチの場合について説明したが、磁気的、電気的、光学的なセンサを使用することも可能である。
【0019】
4は下部側が前記ストップ部材2の隙間を介して前記固定部材1に形成された孔1aを貫通して起立された操作軸にして、下端には底部を有するリング状押圧部4aが挿入された状態でEリング4bが取付けられている。また、前記リング状押圧部4aと前記固定部材1の裏面との間にスプリング5が張設され、このスプリング5によって操作軸3は起立状態を維持する(図6参照)。なお、リング状押圧部4aのリング状面と前記検出手段3とは対向した状態となっているので、操作軸4が傾斜すると、リング状面で検出手段3の操作片3aが押圧され、スイッチとしてオン・オフ動作する。
【0020】
6は前記操作軸4における前記ストップ部材2の挿入孔2aと対向する位置に貫通固定されたネジである当接部材にして、該当接部材6によって操作軸4の回転が阻止されている。7は前記操作軸4の上端側における前記ストップ部材2とは所望の間隔を隔てた位置にナット7aによってネジ止め固定された操作板にして、該操作板7を足先で踏み込むことで、操作軸4を踏み込んだ方向に傾斜させることが可能なように構成されている。
【0021】
このように構成したフットコントローラ装置にあっては、操作軸4あるいは操作板7を操作者が足先でスプリング5のバネ力に抗して傾けると、傾いた方向とは反対側に位置する検出手段3が操作軸4におけるリング状押圧部4aによって操作されるので、該検出手段3より操作されたとの信号が送出されて椅子の制御が行われる。また、前記操作者の足によって操作軸4あるいは操作板7に回転力が加えられて操作軸4が回転した場合には、前記当接部材6がストップ部材の孔2a内壁に当接して操作軸4の回転を阻止する。
【実施例2】
【0022】
次に、図7、図8の第2の実施例について説明する。なお、前記した第1の実施例と同一部号は同一部材を示し説明は省略する。
この実施例と前記第1の実施例と異なる点は、床面に置いた状態において操作軸4が床面に対して傾いていること、また、検出手段3を操作板7の裏面側で行うようにしたことである。
【0023】
以下、第2の実施例の具体的を説明するに、操作軸4をスプリング5によってバネ付勢することで中立位置に取付けるための固定部材1の裏面には、床面に設置される底板8に固定するための長い2本の脚柱9と短い2本の脚柱10が取付けられている。従って、4本の脚柱9,10によって固定部材1を底板8に取付けると、固定部材1は水平線に対して傾斜した状態となり、高さの低い側を操作者の足側に向けて設置することで、踵を床面に着けた状態で操作軸4および操作板7の操作がし易くなる。
【0024】
11は基板にして、該基板11は前記脚柱9,10より突出して延長された頂部が操作板7の裏面と当接するストップ部材9a,10aに取付けられている。そして、基板11の前記ストップ部材9a,10aとの中間部に位置する部分に4個のタクトスイッチである検出手段3が取付けられている。なお、基板11には操作軸4が貫通される孔11aが形成されているので、操作軸4の操作に支障を来すことはない。
【0025】
また、前記ストップ部材9a,10aは、操作板7が操作者によって傾けられた際、該操作板7の裏面が前記検出手段3を押下すると同時に該操作板7の裏面が当接して検出手段3を破壊することがないような長さに設定されている。さらに、基板11と固定部材1との間に位置する操作軸4にはネジ12aによってゴム等から形成された当接部材12が取付けられている。
【0026】
このように構成したフットコントローラ装置にあっては、操作軸4あるいは操作板7を操作者が足先でスプリング5のバネ力に抗して傾けると、傾いた方向に位置する検出手段3が操作板7によって操作されるので、該検出手段3より操作されたとの信号が送出されて椅子の制御が行われる。また、前記操作者の足によって操作軸4あるいは操作板7に回転力が加えられて操作軸4が回転した場合には、前記当接部材12がストップ部材10aに当接して操作軸4の回転を阻止する。
【0027】
次に、前記した構成のフットコントローラ装置を使用して歯科用椅子を上下動させ、かつ、背凭れを起伏させるための動作について図9、図10と共に説明する。なお、以下の説明では図1または図7において操作軸4を前後方向に傾斜させることで椅子の上下動を行わせ、左右方向に傾斜させるとことで背凭れの起伏を行わせるものとするが、この方向は適宜選択できるものである。
【0028】
図9においては、操作軸4と操作板7のみを示しているが、全体の構造は図1〜図6または図7、図8で示したものである。図9(a)は施術者の踵を床面に接触させた状態で足先の裏面側を操作軸4に乗せ、踵を軸として左右方向に回動させることで操作軸4を左右方向に傾斜させている状態を示している。これにより左右の検出手段3が操作されて背凭れの伏倒を制御することができる。
【0029】
また、図9(b)は施術者の踵を床面から少し浮かせた状態で足先の裏面側を操作軸4に乗せ、前後方向に移動させることで操作軸4を前後方向に傾斜させている状態を示している。これにより前後の検出手段3が操作されて椅子の上下を制御することができる。
【0030】
さらに、図9(c)は施術者の踵を床面に接触させた状態で足先の裏面側を操作板7の手前側に乗せ、爪先を押し下げることで操作軸4を手前側に傾斜させている状態を示している。これにより前後の検出手段3が操作されて椅子の上昇または下降を制御することができる。この場合には、立位診療時でも操作し易く、特に、手前に傾斜させるために足裏で操作軸4を手前に引き寄せる動作が不要となるので、座位診療においても軽い力で楽に操作することができる。
【0031】
なお、前記した動作説明では、操作軸4の上端を回動させあるいは操作板7を押し下げる場合について説明したが、図10に示すように、操作板7の上面に足先を位置させて押し下げて操作軸4を右方向に傾斜させて椅子の制御を行ったり、足先の側部で操作軸4を蹴飛ばすようにして操作軸4を逆方向に傾斜させて椅子を逆方向に制御することができるので、踏む動作と蹴る動作によって連続した操作が行えることとなり、操作性の向上を図ることができる。
【0032】
前記した動作において、操作軸4あるいは操作板7を操作して傾斜させた場合に、操作板7の裏面がストップ部材2に当接し(第1の実施例の場合)、あるいは、ストップ部材9a,10aに当接し(第2の実施例の場合)して操作角度が規制されるので、検出手段3に無理な力が加わることがなく損傷を与えることがなく、かつ、操作軸4を操作する場合に、操作軸4に加わる曲げ応力を操作板7で分散されるので、強度が確保され操作軸4が折曲されたり損傷されたりすることがない。
【0033】
また、第1および第2の実施例にあって、操作板7の回転を規制し操作板の向きが常に所定の方向を向くので、例えば、円盤上に「上昇動作」等のシール(操作に対して椅子がどのように動作するかの情報)を貼ったり円盤形状ではなく菱形形状にするなどして、認知性の向上を図ることができ、椅子の上下動や背凭れの起伏動作を誤ることを防ぐことができる。
【0034】
前記した説明では、歯科用椅子の場合について説明したが、眼科用椅子、産
婦人科用椅子、手術台等の医療分野全般に応用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るフットコントローラ装置の内部構造を示す第1の実施例における斜視図である。
【図2】同上の正面図である。
【図3】図1の側面図である。
【図4】図1の底面図である。
【図5】図2のA−A線断面図である。
【図6】図2のB−B線断面図である。
【図7】第2の実施例における検出手段を操作していない状態の正面図である。
【図8】同上のA−A線断面図である。
【図9】図7の検出手段が操作された状態の正面図である。
【図10】(a)は操作軸を左右方向に傾斜させている状態の底面図と側面図、(b)は操作軸を前後方向に傾斜させている状態の底面図と側面図、(c)は操作板を操作して手前側に傾斜させている状態の底面図と側面図である。
【図11】操作軸を左方向に蹴っている状態と操作板を踏んで右方向に傾斜させる動作を示す平面図と側面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 固定部材
2 ストップ部材
2a 挿通孔
3 検出手段
4 操作軸
5 スプリング
6 当接部材
7 操作板
8 底板
9,10 脚柱
9a,10a ストップ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材に対して中立位置となるようにバネ付勢された操作軸と、該操作軸の中間部に一体的に取付けられた平面状の操作板と、前記固定部材に対して等間隔で取付けられ前記操作軸の傾斜方向を検出する検出手段とより構成し、前記操作軸あるいは操作板を足先で操作して前記操作軸を傾斜させることで、前記操作軸あるいは前記操作板の裏面によって検出手段が操作されるようにしたことを特徴とするフットコントローラ装置。
【請求項2】
前記操作板の裏面との当接によって該操作板の傾斜角度を規制するための前記固定部材に取付けられたストップ部材を設けたことを特徴とする請求項1記載のフットコントローラ装置。
【請求項3】
前記操作軸から当接部材を突出させ、該当接部材と前記ストップ部材との当接によって前記操作軸の回転を防止したことを特徴とする請求項1または2記載のフットコントローラ装置。
【請求項4】
前記検出手段が4個のマイクロスイッチあるいはタクトスイッチであり、該マイクロスイッチあるいはタクトスイッチが90度の間隔で配置されていることを特徴とする請求項1記載のフットコントローラ装置。
【請求項5】
固定部材に対して中立位置となるようにバネ付勢された操作軸と、該操作軸の中間部に一体的に取付けられた平面状の操作板と、該操作板が傾斜することでオン状態されるタクトスイッチと、前記操作板の裏面との当接によって該操作板の傾斜角度を規制するためのストップ部材とより構成したことを特徴とするフットコントローラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−26743(P2007−26743A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203941(P2005−203941)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(000108672)タカラベルモント株式会社 (113)
【Fターム(参考)】