説明

フットレスト

【課題】フットレストを車両に組み付けするときの作業性が良好なフットレストを提供すること。
【解決手段】運転者の足元に設けられて、車両前方に向かうに従い第1の角度θ1で上方に傾斜して延びる第1の平面111と、当該第1の平面111の上端から前記第1の角度θ1よりも大きい第2の角度θ2で上方に延びる第2の平面112と、当該第2の平面112の上端から車両前方に向かうに従い前記第2の角度θ2よりも小さい第3の角度θ3で上方に傾斜して延びる第3の平面113と、を有することを特徴とするフットレスト11である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フットレストに関する。詳しくは、自動車等の車両に好適に用いられるフットレストに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の運転者の足元には、運転者が足裏を載せるフットレストが配設されている。
例えば、図5(A)に示すような車両用のフットレスト装置50が開示されている(特許文献1参照)。このフットレスト装置50は、フロントフロアパネル61の前端から車両前方に向かうに従い上方に傾斜して延びるトーボード62に取り付けられたフットレスト本体51と、トーボード62の上端から上方に延びるダッシュボードロア63に取り付けられたエネルギ吸収体52と、を備える。
フットレスト本体51は、運転者が足裏74を載せるフットレスト面510とトーボード62との間に所定値以上の荷重が作用したときに座屈変形する筒状の取付部511,512により、トーボード62に取付けられている。
また、車両前方側の取付部511の肉厚は、車両後方側の取付部512の肉厚よりも薄く、車両前方側の取付部511は、車両後方側の取付部512よりも座屈変形し易くなっている。
【0003】
図5(B)は、車両が前方衝突したときのフットレスト装置50及び運転者の下肢70の状態を示す図である。図5(B)に示すように、車両が前方衝突したときには、車両前方側の取付部511が車両後方側の取付部512よりも先に大きく座屈変形し、運転者のつま先71がエネルギ吸収体52に当接する。これにより、運転者の踵72の沈み込みによる足首73への負担が軽減されるとともに、つま先71への衝撃の入力が軽減され、運転者の下肢障害値を低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−331895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているエネルギ吸収体52は、略矩形状の外形を有しており、その上面が略水平となっているため、ダッシュボードロア63への組み付けが困難であるという問題があった。具体的には、エネルギ吸収体52をダッシュボードロア63にボルト等で組み付けする際には、エネルギ吸収体52の斜め上方から荷重を加える必要があるが、作業者は指先でエネルギ吸収体52の角部を押さえ付けなければならなかったため、エネルギ吸収体52に荷重を加え難く、組み付けが困難であった。
また、角部を指先で押さえ付けるため、作業者の指先への負担が大きかった。
さらには、エネルギ吸収体52は剛性が低いため、角部を強く押すと変形し、組み付けが困難となる場合があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、フットレストを車両に組み付けするときの作業性が良好なフットレストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明に係るフットレストは、運転者が足裏を載せるフットレスト(例えば、後述のフットレスト11)であって、運転者の足元に設けられて、車両前方に向かうに従い第1の角度(例えば、後述の第1の角度θ1)で上方に傾斜して延びる第1の平面(例えば、後述の第1の平面111)と、当該第1の平面の上端から前記第1の角度よりも大きい第2の角度(例えば、後述の第2の角度θ2)で上方に延びる第2の平面(例えば、後述の第2の平面112)と、当該第2の平面の上端から車両前方に向かうに従い前記第2の角度よりも小さい第3の角度(例えば、後述の第3の角度θ3)で上方に傾斜して延びる第3の平面(例えば、後述の第3の平面113)と、を有することを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、第1の平面及び第2の平面に加えて、第2の平面の上端から車両前方に向かうに従い第2の角度よりも小さい第3の角度で上方に傾斜して延びる第3の平面を設けた。これにより、作業者は、フットレストを車両に組み付けする際に、掌で第3の平面を押してフットレストに荷重を加えることができる。即ち、角部ではなく、面を掌で押すため、フットレストに荷重を加え易くなって組み付けが容易となり、作業性が向上する。
また、面を掌で押すことになるため、低剛性のエネルギ吸収部材でフットレストを構成した場合であっても、フットレストが変形することがなく、良好な作業性を確保できる。
また、従来のような指先で角部を強く押す作業が無くなるため、作業者の指先への負担を軽減できる。
さらには、例えばダッシュボードロアやステアリングコラム等に対して作業を行う場合に、作業者は、第3の平面に足裏を載せて作業をすることができる。このため、作業者は、フットレストに体重をかけて安定した姿勢で作業できるようになり、作業性が向上する。
【0009】
また、本発明に係るフットレストは、第3の角度が第1の角度よりも大きいことが好ましい。
【0010】
通常、運転者は、運転を中断して休憩する際に、足を伸ばして足の疲れを癒す。このとき、膝を曲げた状態から足首の角度を変えずに足を伸ばすと、足裏は運転中と比べて起立した状態となる。そこで、この発明によれば、第3の角度を第1の角度よりも大きく設定したため、運転者は第3の平面に足裏を載せ易くなっている。これにより、運転者は、休憩中に足の疲れをより癒すことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フットレストを車両に組み付けするときの作業性が良好なフットレストを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のフットレストが配設された運転席の斜視図である。
【図2】本発明のフットレストの斜視図である。
【図3】本発明のフットレストを車両に組み付けるときの状態を示す斜視図である。
【図4】本発明のフットレストの使用状態を示す図であり、(A)は運転しているときの使用状態を示す側面図、(B)は休憩しているときの使用状態を示す側面図である。
【図5】従来のフットレストの使用状態を示す図であり、(A)は運転しているときの使用状態を示す側断面図、(B)は前方衝突したときの状態を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係るフットレスト11が設けられた運転席23の斜視図である。
車両10は、自動変速機を搭載したオートマチックトランスミッション車(AT車)である。車両10は、運転席23の足元に、左側から順に、フットレスト11と、ブレーキペダル13と、アクセルペダル15と、を備える。また、車両10は、車体25の前部を成すフロントボディ27と、車室21の床を成すフロントフロアパネル17を備えるアンダーボディ29と、図示しないエンジンルームとの隔壁を成すダッシュボードロア18と、を備える。
ダッシュボードロア18の下部には、フロントフロアパネル17の前端から車両前方に向かうに従い上方に傾斜して延びるトーボード19が連設されている。
【0015】
フットレスト11は、運転者が左足裏を載せ、足元を安定させるための足載せ台である。フットレスト11は、車両10の運転席23の足元に配設されており、後述する下部背面116をトーボード19に当接させた状態で、ボルト等によりトーボード19及びフロントフロアパネル17上に固定されている。
【0016】
図2は、本実施形態に係るフットレスト11の斜視図である。
図2において、矢印FRは車両前方を示しており、矢印RBは車両右方を示している。
図2に示すように、フットレスト11は、正面から上面にかけて順に、第1の平面111、第2の平面112、第3の平面113、及び第4の平面114を有する。また、フットレスト11は、底面117、上部背面115、下部背面116、右側面118、及び左側面119を有する。
【0017】
第1の平面111は、運転者が運転中に左足裏を載せる面である。第1の平面111は、運転者の足元に設けられており、車両前方に向かうに従い第1の角度θ1で上方に傾斜して延びている。第1の角度θ1は、運転者が足裏を載せ易い角度に適宜設定される。
ここで、第1の角度θ1は、水平面(車両床面)に対する第1の平面111の傾斜角度を意味する。後述する第2の角度θ2と第3の角度θ3についても同様である。
【0018】
第2の平面112は、前方衝突時等において運転者のつま先が当接する面であり、つま先への衝撃を緩和するためにエネルギ吸収部材により構成されている。なお、本実施形態では、フットレスト11全体が同一のエネルギ吸収部材により構成されている。
第2の平面112は、第1の平面111の上端から第1の角度θ1よりも大きい第2の角度θ2で上方に延びている。第2の角度θ2は、鈍角に設定されており、第2の平面112は、車両後方に向かって延びている。
【0019】
第3の平面113は、後述するように、フットレスト11を車両に組み付けする際に、作業者が掌で押して荷重を加える面である。また、第3の平面113は、運転者が休憩中等に足裏を載せる面である。
第3の平面113は、第2の平面112の上端から車両前方に向かうに従い、第2の角度θ2よりも小さい第3の角度θ3で上方に傾斜して延びている。第3の角度θ3は、鋭角であり、且つ第1の角度θ1よりも大きく設定されている。
【0020】
第4の平面114は、第3の平面113の上端から第4の角度θ4(図示せず)で車両前方に向かって延び、上部背面115の上端に至っている。第4の角度θ4は、第3の角度θ3よりも小さく設定されている。
【0021】
下部背面116は、フットレスト11を車両に組み付けたときに、トーボード19に当接するように、トーボード19の傾斜角度と同一の傾斜角度を有している。
【0022】
次に、本実施形態に係るフットレスト11の作用及び効果について、図3及び図4を参照して説明する。
ここで、図3は、フットレスト11を車両10に組み付けするときの状態を示す斜視図である。また、図4は、フットレスト11の使用状態を示す図であり、(A)は運転しているときの使用状態を示す側面図、(B)は休憩しているときの状態を示す側面図である。
【0023】
上述したように、本実施形態によれば、第1の平面111及び第2の平面112に加えて、第2の平面112の上端から車両前方に向かうに従い第2の角度θ2よりも小さい第3の角度θ3で上方に傾斜して延びる第3の平面113を設けた。
これにより、図3に示すように、作業者は、フットレスト11を車両10に組み付けする際に、掌31で第3の平面113を押してフットレスト11に荷重を加えることができる。即ち、角部ではなく、面を掌31で押すため、フットレスト11に荷重を加え易くなって組み付けが容易となり、作業性が向上する。
また、面を掌31で押すことになるため、低剛性のエネルギ吸収部材でフットレスト11を構成した場合であっても、フットレスト11が変形することがなく、良好な作業性を確保できる。
また、従来のような指先32で角部を強く押す作業が無くなるため、作業者の指先32への負担を軽減できる。
さらには、例えばダッシュボードロア18やステアリングコラム等に対して作業を行う場合に、作業者は、第3の平面113に足裏を載せて作業をすることができる。このため、作業者は、フットレスト11に体重をかけて安定した姿勢で作業できるようになり、作業性が向上する。
【0024】
ところで、運転者は、運転を中断して休憩する際に、足を伸ばして足の疲れを癒すのが通常である。このとき、図4(A)及び(B)に示すように、膝41を曲げた状態から足首42の角度を変えずに足40を伸ばすと、足裏43は、運転中に比べて起立した状態となる。そこで、本実施形態に係るフットレスト11によれば、第3の角度θ3を第1の角度θ1よりも大きく設定したため、運転者は、第3の平面113に足裏43を載せ易くなっている。これにより、運転者は、休憩中に足40の疲れをより癒すことができる。
【0025】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
具体的には、上記実施形態では、第2の角度θ2を鈍角に設定したが、これに限定されない。例えば、第2の角度θ2を直角に設定してもよい。
また、上記実施形態では、第3の角度θ3を第1の角度θ1よりも大きく設定したが、これに限定されない。第3の角度θ3は、第2の角度θ2よりも小さい角度のうち、作業者が作業し易い角度に適宜設定してもよい。
また、上記実施形態では、第1の平面111を、底面117の後端から車両前方に向かうに従い上方に傾斜して延びるように設けたが、これに限定されない。例えば、底面117の後端から上方に延びる平面をさらに設け、この平面の上端から車両前方に向かうに従い上方に傾斜して延びるように第1の平面111を設けてもよい。
【符号の説明】
【0026】
10…車両
11…フットレスト
111…第1の平面
112…第2の平面
113…第3の平面
17…フロントフロアパネル
18…ダッシュボードロア
19…トーボード
θ1…第1の角度
θ2…第2の角度
θ3…第3の角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が足裏を載せるフットレストであって、
運転者の足元に設けられて、車両前方に向かうに従い第1の角度で上方に傾斜して延びる第1の平面と、
当該第1の平面の上端から前記第1の角度よりも大きい第2の角度で上方に延びる第2の平面と、
当該第2の平面の上端から車両前方に向かうに従い前記第2の角度よりも小さい第3の角度で上方に傾斜して延びる第3の平面と、を有することを特徴とするフットレスト。
【請求項2】
前記第3の角度は、前記第1の角度よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のフットレスト。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−73499(P2011−73499A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224824(P2009−224824)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】