説明

フッ化物イオン洗浄のシステム及び装置

洗浄工程で、現場生成されたフッ化水素(HF)を使用するシステム及び装置を開示する。例示的なシステムは、液相又は気相のハロゲン化供給材料と水素ガスとの現場反応を促進してHFを形成するために十分な温度で動作する洗浄レトルトを含む。このシステムは、洗浄レトルトの外部に配置された、液相又は気相のハロゲン化供給材料源と水素ガス源とを含み、それらは、反応すると洗浄レトルト内でHFを生成する。洗浄レトルト内に配置されるHFスクラバーは、現場反応によって形成された残留HFガスを実質的に除去する。例示的な装置は、洗浄レトルトを含み、洗浄レトルトは、洗浄の必要がある部品を保持できる第1の領域と、HFスクラバーとして動作する第2の領域とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してフッ化物イオン洗浄システム及び装置に関し、特に超合金材料からなる構成部品などを洗浄するために使用されるフッ化水素を、現場で生成及び捕捉するシステム及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ化物イオン洗浄(FIC)は、後続のろう付け補修作業の準備で、フィールドラン(field−run)高温ガス通路の構成部品から酸化物を除去するために行われる。現在のFIC技術は、処理工程中にHF(フッ化水素)ガスの利用可能性が限られているために効率が悪く、或いは、反応性物質としてHFボトルガスを使用するために装置価格及び維持費が高い。
【0003】
市販の動的FIC装置は、現在、原材料としてHFボトルガスを使用している。HFは猛毒であるため、HFを安全に取り扱うためには、高価で比較的複雑な装置が必要である。加えて、HFは洗浄工程で過剰に使用しなければならないので、廃流にもHFが含まれ、スクラバー装置及びそれに必要な補助装置が必要とされる。これを組み合わせることにより、ユーザーは、ガスの取り扱い及び処理システムで、ある程度の経済効果を得るために、通常の工程から分離された大型の装置を使用することを余儀なくされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4975147A号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、原料としてHFボトルガスを使用することに関する流下(downfalls)がない有効な洗浄方法を有することが望まれる。更に、廃流から余剰のHFを除去するための別個のスクラバー装置の必要性を低減するか、若しくは排除するような有効な洗浄方法を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の必要性は、洗浄レトルト内でのHFの現場生成システム及び装置を提供し、洗浄レトルトから廃流を放出する前に余剰のHFを除去する例示的実施形態によって達成し得る。
【0007】
本明細書に開示する例示的実施形態は、液相又は気相のハロゲン化供給材料と水素ガスとの現場反応を促進してフッ化水素(HF)を形成するために十分な温度で動作する洗浄レトルトを含むシステムである。システムは更に、液相又は気相のハロゲン化供給材料の少なくとも一方を洗浄レトルトに供給するための供給材料源と、水素ガスを洗浄レトルトに供給するための水素ガス源とを含み、供給材料源と水素ガス源は両方とも洗浄レトルトの外部に配置される。システムは更に、現場反応によって形成された残留HFガスを実質的に除去するHFスクラバーを含み、HFスクラバーは洗浄レトルト内に配置される。
【0008】
本明細書に開示する例示的実施形態は、液相又は気相のハロゲン化供給材料と水素ガスとの現場反応を促進してフッ化水素(HF)を形成するために十分な温度で動作する洗浄レトルトを含む装置を備え、洗浄レトルトは、洗浄の必要がある部品を保持するようなサイズと寸法の第1の領域と、HFスクラバーを含む第2の領域とを備える。
【0009】
本発明と見なされる主題は、明細書末尾で詳細に指摘され、明確に特許請求されている。しかし、本発明は添付図面を参照した以下の説明を参照することによって、最も良く理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】少なくとも洗浄領域と除染領域とを有する洗浄レトルトを含む高温炉の概略図である。
【図2】ある点では図1の炉と同様であり、真空ポンプを含む高温炉の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
複数の図を通して同一の参照番号が同じ要素を示す図面を参照すると、図1は、洗浄が必要な部品又は構成部品16が内部に配置される洗浄レトルト14を含む高温炉12を含む例示的システム10を示す。洗浄レトルト14は、ガス流18によって投入される適宜の洗浄ガスを収容することができる。洗浄レトルト14は少なくとも2つの領域を含む。第1の領域20は、洗浄の必要がある部品及び構成部品16を保持するようなサイズと寸法の領域である。第2の領域22は、HF除染ユニット(フッ素ゲッタ)として動作する。例示的な工程では、レトルト14が予熱され、例えばアルゴンで除去される。その後、無害のフッ素含有化合物24及び水素ガス26の供給材料がレトルト14内に投入される。フッ素含有化合物は、高温で水素と反応してレトルト14内にHFガス(ガス流18)を形成する。
【0012】
次いで、HFガスは酸化物の準揮発性フッ化物への転換により部品を洗浄するように作用し、これらの準揮発性フッ化物は、フッ化物イオン洗浄工程で流れるガス流により、部品又は構成部品16から除去される。例示的実施形態では、初期廃流28は、レトルトから排出される前に第2の領域22(フッ素ゲッタ)内でフッ素が除染されて、レトルトから排出される除染済み廃流30に実質的にフッ素が含まれないようにするので、従来のフッ化物イオン洗浄工程よりも無害である。任意に、洗浄レトルト14は、後述のようにAlやCrなどの初期廃流28中に含まれる金属の大部分を除去する第3の領域32(金属ゲッタ)を含んでも良い。
【0013】
図2に示す例示的実施形態では、同様のシステム100が使用される。システム100は、洗浄の必要がある部品又は構成部品116が内部に配置される洗浄レトルト114を含む高温炉112を備える。洗浄レトルト114は、上述のように、領域20、22と同様に動作する少なくとも領域120及び122を含む。任意に、レトルト114は、金属ゲッタのような領域132を含んでも良い。例示的実施形態では、除染された廃流130は、レトルト114内の圧力を脈動又は調整する真空ポンプ140に接続され、準揮発性フッ化物が部品116の表面から蒸発することを促進し、新しいHFガス118を部品の亀裂に供給する。真空ポンプが水分汚染することを防ぐため、防湿剤142を廃流130内に入れても良い。あるいは、乾燥機を使用せずに真空させるために、液封式真空ポンプを使用することもできる。
【0014】
例示的実施形態では、フッ化水素ガス(HF)が現場生成され、その後分解されて、従来のフッ化物イオン洗浄(FIC)工程に伴っていた有害物質の一部が除去される。フロン134a(テトラフルオロエタン)などの無害なフッ素含有化合物が供給材料として使用され、水素と混合した後に熱分解されてHFが形成される。
+5H→4HF+2CH(HF現場生成)
このように生成されたHFはフッ化物イオン洗浄工程で使用される。
6HF+Al→2AlF+3H
6HF+Cr→2CrF+3HO(洗浄)
O+CH→CO+H
レトルトから排気される前にHFを除去するために廃流が処理される。工程には、AlやCrなどの初期廃流に含まれる金属の大部分を除去する任意のステップがある。金属フッ素化合物の金属含有物を実質的に除去して、再構成されたHFを洗浄工程に再循環させるようにしても良い。あるいは、再構成されたHFを、後続の除染ユニットでより簡単に除去しても良い。
【0015】
これらの元素はフッ化物として廃流中に存在し、鉄などの純犠牲金属と化合させて金属合金に還元することによって、除去できる。
2AlF+2Fe+3H→2AlFe+6HF(及び)
CrF+Fe+H→CrFe+2HF(金属ゲッタリング)
フッ素除去ステップでは、フッ素含有種を高融点の犠牲材料と接触させるために充填床が使用される。反応の結果、安定した高融点温度のフッ素化合物が形成され、その後、レトルトが室温に戻った後に廃棄される。好ましい実施形態では、フッ素スクラバーはCaOなどのフッ素ゲッタを含む。
2HF+CaO→CaF+HO(フッ素ゲッタリング)
CaOの代わりにその他の塩又は塩の組み合わせを使用しても良い。例えば、CaOとNaClの組み合わせをSiと混合しても良い。フッ素−ゲッタ混合物によって、HFのほぼ全てを昇温状態でガス流から除去できるようになる。この工程により、無害の廃棄し易い固形廃棄物が生成される。気相副産物は炉の加熱ゾーンで燃焼し、その結果、COと水蒸気の放出物が生ずる。
【0016】
HFの現場生成と分解を組み合わせることにより、ある構成部品の洗浄が困難であるにも関わらず全ての部品について単一の共通サイクルを実行するのではなく、洗浄が必要な構成部品に洗浄工程を適応させることが可能になる。
【0017】
従って、本明細書に開示する例示的実施形態は、HFの現場生成において、原料としてHFボトルガスを使用することに関連する流下がない有効な洗浄方法を提供する。更に、余剰のHFを廃流から現場除去することで、別個のスクラバー装置の必要性は低減するか、若しくは排除される。
【0018】
本明細書に開示する実施形態は、高温で水素と結合された液相又は気相のハロゲン化供給材料を使用して洗浄レトルト内でHFガスが現場生成されることで、洗浄サイクルの開始前に洗浄レトルト内にHF前駆体物質を入れる必要がなく、供給材料としてHFガスが使用されない、フッ化物イオン洗浄のシステム及び方法を提示する。
【0019】
本明細書は、最良の形態を含む実施例を用いて本発明を開示し、当業者が本発明を製造及び使用できるようになっている。本発明の特許可能な範囲は特許請求の範囲によって定義され、当業者が想到するその他の実施例も含み得る。このようなその他の実施例は、特許請求の範囲の文言と相違ない構成要素を含む場合、又は特許請求の範囲の文言とさほど相違ない同等の構成要素を含む場合は、特許請求の範囲内にあるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相又は気相のハロゲン化供給材料と水素ガスとの現場反応を促進してフッ化水素(HF)を形成するために十分な温度で動作する洗浄レトルトと、
液相又は気相のハロゲン化供給材料の少なくとも一方を前記洗浄レトルトに供給するための、前記洗浄レトルトの外部に配置された供給材料源と、
水素ガスを洗浄レトルトに供給するための、前記洗浄レトルトの外部に配置された水素ガス源と、
現場反応によって形成された残留HFガスを実質的に除去する、前記洗浄レトルト内に配置されたHFスクラバーと、を備えるシステム。
【請求項2】
前記供給材料はクロロフルオロカーボン(CFC)又はヒドロフルオロカーボン(HFC)化合物の少なくとも1つからなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記供給材料はテトラフルオロエタン(HFC−134a)からなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記HFスクラバーは、HFガスと反応すると、安定した不揮発性の高融点温度のフッ素化合物を形成可能な材料からなる充填床反応器を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記材料はCaOを含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記洗浄レトルト内に配置された金属ゲッタを更に含み、前記金属ゲッタは、フッ化アルミニウム(AlF)又はフッ化クロム(CrF)の少なくとも1つと反応して、安定した不揮発性の高融点温度のフッ素化合物を形成するように動作する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記金属ゲッタは鉄からなる、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記洗浄レトルトの温度は約1500〜約2200°F(約816〜約1204°C)の範囲にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記洗浄レトルト内の圧力を調整するように動作する機構を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記圧力調整機構は真空ポンプを備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
液相又は気相のハロゲン化供給材料と水素ガスとの現場反応を促進してフッ化水素(HF)を形成するために十分な温度で動作する洗浄レトルトを備え、前記洗浄レトルトは、洗浄の必要がある部品を保持するようなサイズと寸法の第1の領域と、HFスクラバーを含む第2の領域とを備える、装置。
【請求項12】
前記HFスクラバーは、HFガスと反応すると、安定した不揮発性の高融点温度のフッ素化合物を形成可能な材料からなる充填床反応器を備える、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記材料はCaOを含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記洗浄レトルトは、不揮発性合金化材からなる金属ゲッタを備える第3の領域を更に備え、前記金属ゲッタはフッ化アルミニウム(AlF)、又はフッ化クロム(CrF)の少なくとも1つと反応して、安定した不揮発性の高融点温度のフッ素化合物を形成する、請求項10に記載の装置。
【請求項15】
前記不揮発性合金化材は鉄である、請求項14に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2012−507629(P2012−507629A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534607(P2011−534607)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/061120
【国際公開番号】WO2010/051174
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】