説明

フッ素ゴム組成物

【課題】汎用の3元系フッ素ゴムを用いたフッ素ゴム組成物であって、耐水性、耐水蒸気性、耐燃料油性および耐圧縮永久歪特性にすぐれた加硫物を与え得るものを提供する。
【課題を解決するための手段】フッ素含量が67〜69重量%のパーオキサイド架橋可能なテトラフルオロエチレン/フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロペン3元共重合ゴム、(A)比表面積が5〜20m/gのカーボンブラック、(B)瀝青物フィラー、(C)酸化亜鉛またはハイドロタルサイトおよび(D)有機過酸化物を含有するフッ素ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素ゴム組成物に関する。さらに詳しくは、耐水性、耐水蒸気性、耐燃料油性にすぐれたフッ素ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の汎用フッ素ゴムは、エンジンオイル、燃料油等のオイル系シール材としては非常にすぐれた耐性を有するが、冷却水やLLC(ロング・ライフ・クーラント)等の水系シール材としては適しておらず、シリンダライナやオイルクーラ、ラジエータ等の冷却装置用シール材には、一般にシリコーンゴム、EPDMあるいは特殊グレードのフッ素ゴムが使用されている。
【0003】
しかしながら、シリコーンゴムには、強度不足や耐加水分解性に劣るといった問題がみられる。また、EPDMにあっては、通常水道水中に添加されている塩素に基因する次亜塩素酸によるゴムの劣化が生ずることがあり、水中に黒色異物が混入したり、周辺機器を汚したりするという黒水化現象がみられる。さらに、水道水中には、次亜塩素酸以外にも多くのイオン物質が含まれており、これら各種イオンによるゴムの劣化が、水道水と直接接触する用途に使用した場合に限らず、これら各種イオンを含む溶液の輸送や貯蔵等の際にゴムを使用している場合にも同様の問題が生じている。
【0004】
特殊グレードのフッ素ゴムは、汎用フッ素ゴムと比較して耐熱水性や耐水蒸気性にはすぐれているものの、低温特性や耐久性(圧縮永久歪の値の変化率で示される)に劣るという問題を有している。また、パーフルオロポリエーテル系のフッ素ゴム、例えばデュポン・ダウエラストマー社製品カルレッツは、耐熱性の点では極めてすぐれた特性を有する反面、圧縮永久歪の値が非常に悪く、しかもその価格が非常に高価であるため、汎用シール材の成形材料としての適性に乏しいといえる。
【0005】
一方、2元系のフッ素ゴム、例えばフッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロペン2元共重合ゴムをポリオール加硫したものは、圧縮永久歪の点ではすぐれているものの化学的安定性に劣るため、熱水や水蒸気に対しては加水分解による架橋点の切断等の不具合が考えられる。また、3元系のフッ素ゴム、例えばテトラフルオロエチレン/フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロペン3元共重合ゴムのポリオール加硫物は、2元系のフッ素ゴムと比べて耐燃料油性は向上するが、圧縮永久歪の値が悪化する傾向にある。さらに、アミン加硫したものは、燃料油中に含まれるアミンによってゴムが浸食され、一般にアミンクラックと呼ばれる硬化不具合をひき起す場合もみられる。
【0006】
本出願人は先に、汎用のフッ素ゴムを用い、高温環境下で使用可能なセンサ用のグロメットやシールパッキン等として好適に使用されるフッ素ゴム加硫成形品の製造法として、フッ素ゴム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウムおよびサーマルブラックと瀝青炭フィラーを含有するフッ素ゴム組成物をポリオール系加硫剤の存在下で加硫成形した後、約250〜300℃の温度で熱処理する方法を提案しており、このような方法で得られたフッ素ゴム加硫成形品は、高温環境下での耐圧縮永久歪特性や耐圧縮割れ性にすぐれてはいるが、ポリオール加硫物であるので、耐水性、耐水蒸気性の点では満足されるレベルにはない。
【特許文献1】特開2001−192482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、汎用の3元系フッ素ゴムを用いたフッ素ゴム組成物であって、耐水性、耐水蒸気性、耐燃料油性および耐圧縮永久歪特性にすぐれた加硫物を与え得るものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる本発明の目的は、フッ素含量が67〜69重量%のパーオキサイド架橋可能なテトラフルオロエチレン/フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロペン3元共重合ゴム、(A)比表面積が5〜20m/gのカーボンブラック、(B)瀝青物フィラー、(C)酸化亜鉛またはハイドロタルサイトおよび(D)有機過酸化物を含有するフッ素ゴム組成物によって達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るフッ素ゴム組成物から得られた加硫物は、常態物性、耐水性、耐水蒸気性および耐圧縮永久歪特性にすぐれており、特に空気加熱および水中浸漬後の圧縮永久歪値によって示される耐久性の点ですぐれている一方で、2元系フッ素ゴムに匹敵する低温特性を示している。このような特性を有する本発明のフッ素ゴム組成物は、給湯器、高温熱水、水道水用途などのシール材の成形材料として好適に使用される。また、本発明のフッ素ゴム組成物は、燃料油C、アルコール含有燃料油等の各種燃料油に対してもすぐれた耐燃料油透過性を示すシール材の成形材料としても好適に使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
汎用の3元系フッ素ゴムとしては、テトラフルオロエチレン〔TFE〕/フッ化ビニリデン〔VdF〕/ヘキサフルオロプロペン〔HFP〕3元共重合ゴムが用いられる。この3元系共重合ゴムには、パーオキサイド架橋可能なタイプとポリオール加硫可能なタイプの両者があり、耐水性の観点から本発明においては前者のタイプのものが用いられる。パーオキサイド架橋可能な3元系共重合ゴムは、共重合反応時に飽和または不飽和の含ヨウ素および/または含臭素化合物を共存させることにより得ることができる。
【0011】
この3元系共重合ゴムは、そのフッ素含量が67〜69重量%の範囲になければならない。一般には、共重合ゴム中VdF成分がより多いとフッ素含量がより低下する方向にあり、一方共重合ゴム中TFE成分がより多いとフッ素含量がより増加する傾向にあるので、共重合3成分の共重合割合を調節することによって、上記規定されたようなフッ素含量の3元系共重合ゴムを形成させることができる。フッ素含量がこれよりも低い3元系共重合ゴムを用いると、耐アミン性、耐水性、耐熱水性がいずれも劣るようになり、一方これよりも多いフッ素含量の3元系共重合ゴムを用いると、空気老化試験後の圧縮永久歪の値が悪く、また低温特性に著しく劣るようになる。また、そのムーニー粘度ML1+4(121℃)は、約20〜80の範囲にあることが好ましい。
【0012】
この3元系共重合ゴムには、(A)カーボンブラック、(B)瀝青物フィラーおよび(C)酸化亜鉛またはハイドロタルサイトが必須の添加剤として添加され、(D)有機過酸化物によるパーオキサイド架橋が行われる。
【0013】
(A)成分カーボンブラックとしては、比表面積(窒素吸着比表面積法により測定)が5〜20m/gのもの、例えばサーマルブラック、より具体的にはMTカーボンブラック(比表面積6m/g、比重1.8、吸油量0.4cm/g、平均粒径450nm)やFTカーボンブラック(比表面積13〜19m/g、比重1.8、吸油量0.5cm/g、平均粒径90〜206nm)等が用いられる。これら以外の比表面積を有するカーボンブラックを用いると、架橋密度が小さくなり、耐圧縮永久歪特性を低下させるばかりではなく、相手材ハウジングへの粘着性も大となる。
【0014】
(B)成分瀝青物フィラーとしては、一般に平均粒径が約1〜10μm、好ましくは約5〜7μmで比重が1.25〜1.45のもの、例えばオースチンブラック325(Coal Fillers社製品、平均粒径6μm、比重1.32)等が用いられる。
【0015】
(A)成分カーボンブラックと(B)成分瀝青物フィラーとは、約30/5〜5/30、好ましくは約20/10〜10/20の重量比で用いられる。この範囲外の割合で用いられると、圧縮永久歪や強度が悪化するようになる。また、これら両者は合計して3元系共重合ゴム100重量部当り約10〜50重量部、好ましくは約20〜40重量部の割合で用いられ、使用割合がこれよりも少ないと耐熱性の低下がみられ、一方これより多い割合で用いられると硬度が高くなり、また成形性も低下して実用性に乏しくなる。
【0016】
(C)成分としての酸化亜鉛は、3元系共重合ゴム100重量部当り約0.5〜20重量部、好ましくは約2〜15重量部の割合で用いられる。酸化亜鉛の使用割合がこれよりも少ないと、熱伝導率の効果が少なく、耐熱性に劣るようになる。また、(C)成分としてのハイドロタルサイトは、式 Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HOで表わされ、表面処理、表面未処理、脱結晶水、焼成等の合成ハイドロタルサイト、ロシアウラル地方産、ノルウェースナルム地方産等の天然鉱物のいずれをも用いることができる。実際には、市販品、例えば協和化学製品DHT-4A、DHT-4A-2、KW-2000等が、3元系共重合ゴム100重量部当り約0.1〜20重量部、好ましくは約0.5〜10重量部の割合で用いられる。これらのハイドロタルサイト類は、無機物の陰イオン交換体であって、その構造中のCO部分がハロゲン等と置換してハロゲンを不活性化させるので、使用割合がこれも少ないと、次亜塩素酸に対する耐性を向上させることができず、一方これ以上の割合で用いられると、強度低下や圧縮永久歪の悪化を招くようになる。(C)成分として酸化亜鉛とハイドロタルサイトとを併用することもでき、その場合には前記各割合でかつ両者の合計量が20重量部を超えないような量で用いられる。
【0017】
(D)成分有機過酸化物としては、一般にゴムのパーオキサイド架橋に使用できるものであれば特に制限なく使用することができ、例えば第3ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、第3ブチルクミルパーオキサイド、1,1-ジ(第3ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,3-ジ(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、第3ブチルパーオキシベンゾエート、第3ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、n-ブチル-4,4-ジ(第3ブチルパーオキシ)バレレート等が、3元系共重合ゴム100重量部当り約0.5〜6重量部、好ましくは約1〜5重量部の割合で用いられる。これ以下の使用割合では、十分な架橋密度が得られず、一方これ以上の割合で用いられると、発泡により加硫成形物が得られなかったり、得られても弾性や伸びが低下するようになる。
【0018】
有機過酸化物によるパーオキサイド架橋に際しては、(E)成分多官能性不飽和化合物、例えばトリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、N,N′-m-フェニレンビスマレイミド等を、3元系共重合ゴム100重量部当り約1〜10重量部、好ましくは約2〜8重量部併用することが望ましい。これ以下の使用割合では、十分な架橋密度が得られない場合があり、一方これ以上の割合で使用すると、発泡により加硫成形物が得られなかったり、得られても弾性や伸びが低下するようになる。
【0019】
ゴム組成物中には、以上の必須成分以外にゴムの一般的な配合剤として用いられているホワイトカーボン等の補強剤、タルク、クレー、グラファイト、けい酸カルシウム等の充填剤、ステアリン酸、パルミチン酸、パラフィンワックス等の加工助剤、老化防止剤、可塑剤等が、必要に応じて適宜添加して用いられる。
【0020】
組成物の調製は、以上の各成分をニーダ、インターミックス、バンバリーミキサ等の密閉式混練機またはオープンロールを用いて混練することによって行われ、混練物はシート状に分出されあるいは押出機、バウエル装置等を用いて所定の形状とされた後、圧縮プレス、注入成形機、射出成形機等を用いて、約150〜230℃で約1〜30分間程度加硫成形され、さらに約175〜250℃、好ましくは約200〜230℃で約5〜48時間、好ましくは約15〜30時間程度エアオーブン等を用いて二次加硫される。
【実施例】
【0021】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0022】
実施例1
TFE/VdF/HFP3元共重合ゴム(パーオキサイド加硫系; 100重量部
デュポン・ダウエラストマー社製品GBL-600S、
フッ素含量68重量%、ML1+4(121℃)65)
FTカーボンブラック(新日鐵製品HTC#20-S、 10 〃
粒径82nm)
オースチンブラック(Coal Fillers社製品、粒径5.5μm) 10 〃
ZnO(堺化学製品亜鉛華1号) 3 〃
トリアリルイソシアヌレート(日本化成製品タイクWH、60%) 4 〃
2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン 3 〃
(日本油脂製品パーヘキサ25B、40%)
以上の各成分を前記の如き混練手段を用いて混練し、混練物を180℃で6分間プレス加硫した後、230℃で22時間オーブン加硫(二次加硫)を行って、厚さ2.0mmの加硫シートを得た。また、プレス成形を行って、P-24 Oリング加硫を成形した。
【0023】
この混練物のロール加工性、加硫成形性と共に、加硫シートおよびP-24 Oリングについて次の各項目の測定を行った。
ロール加工性:良好を○、やや悪化を△、劣るを×と評価
加硫成形性:良好を○、離型性やや悪化や流れ不良ややありを△と評価
常態物性:JIS K6253、JIS K6251準拠
TR試験:JIS K6261準拠(TR10値を測定)
空気加熱老化試験:JIS K6257準拠(230℃、70時間)
圧縮永久歪:JIS K6262準拠(P-24 Oリング使用、空気中、175℃、70時間および線径 2.4mmのOリングについて、それぞれ150℃の空気中曝露または水中浸漬
70、140、500、1000時間後の値を測定)
浸漬試験:JIS K6258準拠(ASTM No.1またはIRM903中、175℃、70時間浸漬後の硬さ変 化、引張強さ変化率、伸び変化率、体積変化率を測定)
耐LLC性:JIS K6258準拠(30容積%エチレングリコール水溶液中、120℃、500時間浸 漬後の硬さ変化、引張強さ変化率、伸び変化率、体積変化率を測定)
【0024】
実施例2
実施例1において、ZnOの代りに、同量のハイドロタルサイト(協和化学製品DHT-4A)が用いられた。
【0025】
比較例1
実施例1において、オースチンブラックが用いられず、FTカーボンブラック量が20重量部に変更された。
【0026】
比較例2
実施例1において、FTカーボンブラックが用いられず、オースチンブラック量が20重量部に変更された。
【0027】
比較例3
実施例1において、以下の各成分が用いられた。
VdF/HFP2元共重合ゴム(ポリオール加硫系; 100重量部
デュポン・ダウエラストマー社製品バイトンA41J、
フッ素含量66重量%、ML1+4(121℃)41)
MTカーボンブラック(CANCARB社製品、粒径270nm) 10 〃
オースチンブラック(Coal Fillers社製品、粒径5.5μm) 10 〃
水酸化カルシウム(近江化学製品Caldic#1000) 6 〃
MgO(協和化学製品MgO#150) 3 〃
【0028】
比較例4
比較例3において、VdF/HFP2元共重合ゴムの代りに、同量のTFE/VdF/HFP3元共重合ゴム(ポリオール加硫系;デュポン・ダウエラストマー社製品バイトンB61J、フッ素含量68%、ML1+4(121℃)60)が用いられた。
【0029】
比較例5
実施例1において、TFE/VdF/HFP3元共重合ゴムの代りに、同量の他のVdF/HFP2元共重合ゴム(パーオキサイド加硫系;ダイキン製品ダイエルG801、フッ素含量66重量%、ML1+4(121℃)66)が用いられ、またFTカーボンブラックの代りに、同量のMTカーボンブラック(CANCARB製品、粒径270nm)が用いられた。
【0030】
比較例6
実施例1において、以下の各成分が用いられた。
TFE/VdF/HFP3元共重合ゴム(パーオキサイド加硫系; 100重量部
ダイキン製品ダイエルG912、フッ素含量71重量%、ML1+4(121℃)76)
FTカーボンブラック(HTC#20S) 15 〃
トリアリルイソシアヌレート(タイクWH、60%) 4 〃
2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン 2 〃
(パーヘキサ25B、40%)
【0031】
比較例7
実施例1において、以下の各成分が用いられた。ただし、加硫条件は180℃、4分間のプレス加硫および200℃、5時間のオーブン加硫(二次加硫)に変更された。
シリコーンゴム(信越シリコーン製品KE7724u) 100重量部
2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン 2 〃
(信越シリコーン製品C-8、25%)
FeO顔料(信越シリコーン製品ブラウンK100、 2 〃
50%マスターバッチ)
【0032】
以上の各実施例および比較例における測定結果は、次の表1に示される。なお、表中の圧縮永久歪の欄の×は、測定不可を示している。
表1
実施例 比較例
評価・測定項目
〔ロール加工性〕 ○ ○ ○ △ ○ ○ × △ ○
〔加硫成形性〕 △ ○ △ △ ○ ○ △ △ ○
〔常態物性〕
硬さ (JIS) 71 72 70 68 71 71 69 71 73
引張強さ (MPa) 22.1 18.6 18.3 12.3 14.2 15.3 19.6 16.7 8.1
伸び (%) 330 280 350 320 260 320 450 190 150
〔TR試験〕 (℃) -16 -16 -16 -16 -16 -13 -16 -5 -50
〔老化試験〕
硬さ変化(ポイント) +1 +1 +1 +2 +1 +1 +2 0 -1
引張強さ変化率(%) -1 0 +2 +12 +3 -3 -3 -30 +3
伸び変化率 (%) +10 -5 +6 -20 -7 -18 -10 0 -1
〔圧縮永久歪〕
(P-24 Oリング) (%) 11 13 16 10 11 18 23 18 10
(線径2.4mm Oリング)
150℃、空気中
70時間 (%) 10 12 16 10 10 16 21 19 7
140時間 (%) 13 14 19 13 13 21 25 23 12
500時間 (%) 20 21 27 19 21 32 31 28 16
1000時間 (%) 25 26 32 24 28 36 33 34 24
150℃、水中
70時間 (%) 28 30 32 32 65 71 32 30 20
140時間 (%) 29 32 36 34 72 78 37 35 24
500時間 (%) 34 35 43 39 85 92 45 38 37
1000時間 (%) 40 41 49 45 × × 51 41 68
〔浸漬試験〕
(ASTM No.1中)
硬さ変化(ポイント) -2 -2 -2 -2 0 0 -2 -1 -5
引張強さ変化率(%) +5 +3 -2 +4 +2 -8 +5 +2 -7
伸び変化率 (%) +17 +8 +19 +21 -4 -4 -4 +16 -8
体積変化率 (%) +0.3 +0.4 +0.4 +0.6 +0.1 +0.4 +0.4 +0.1 +6.7
(IRM903中)
硬さ変化(ポイント) -3 -3 -3 -3 -2 -1 -3 -2 -15
引張強さ変化率(%) -3 +1 -2 +2 -7 -14 +10 -8 -35
伸び変化率 (%) +10 +3 +7 +3 +9 -5 +5 -5 -24
体積変化率 (%) +2.3 +2.3 +2.4 +3.8 +2.4 +2.6 +2.5 +2.5 +38.0
〔耐LLC性〕
硬さ変化(ポイント) -1 -1 0 − − − − − -14
引張強さ変化率(%) -36 -31 -29 − − − − − -9
伸び変化率 (%) -27 -24 -28 − − − − − +5
体積変化率 (%) -1.1 -1.1 -1.5 − − − − − +18.2
【0033】
以上の結果から、次のようなことがいえる。
(1)実施例1と実施例2とでは、同等の特性が示されているが、加硫成形性の点では実施例2の方がよい。
(2)比較例1は、圧縮永久歪の値が良くない。
(3)比較例2は、水中浸漬後の圧縮永久歪の値が良くない。
(4)比較例3〜4は、いずれもポリオール加硫系であるため、水中浸漬後の圧縮永久歪の値が良くない。
(5)比較例5は、ロール加工性が悪く、また圧縮永久歪も良くない。
(6)比較例6は、低温特性が悪く、圧縮永久歪も良くない。
(7)比較例7は、水中浸漬後の圧縮永久歪の値が良くない。
【0034】
実施例3、比較例8
前記実施例2、比較例3に準じ、厚さ0.5mmの加流シートを得、これらを燃料油透過試験冶具に取付け、燃料油C、70℃、圧縮なしの条件下で燃料油透過試験を行った結果、それぞれ燃料油透過係数(単位:mg・mm/cm・24hr)が4.5および7.7という値が得られた。
【0035】
一般に、燃料油透過係数を小さくしようとしてフッ素含有量を多くすると、低温特性は悪化するが、実施例3では比較例8にみられる従来の低温特性を維持しながら、燃料油透過係数の点でもすぐれていることが分る。
【0036】
実施例4、比較例9
前記実施例2,比較例3に準じ、クイックコネクタ用Oリング(内径18.6mm、線径2.4mm)を得、これらを燃料油透過試験冶具に取付け、10重量%エタノール含有燃料油C、80℃(圧力自然上昇)、種々の圧縮率の条件下で燃料油透過試験を行った結果、表2に示されるような結果が得られた。
表2
燃料油透過係数(mg・mm/cm・24hr)
圧縮率(%) 実施例4 比較例9
12 24.4 33.3
17 17.9 25.0
27 13.0 17.3
35 7.9 10.9



【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素含量が67〜69重量%のパーオキサイド架橋可能なテトラフルオロエチレン/フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロペン3元共重合ゴム、(A)比表面積が5〜20m/gのカーボンブラック、(B)瀝青物フィラー、(C)酸化亜鉛またはハイドロタルサイトおよび(D)有機過酸化物を含有してなるフッ素ゴム組成物。
【請求項2】
カーボンブラックがMTカーボンブラックまたはFTカーボンブラックである請求項1記載のフッ素ゴム組成物。
【請求項3】
瀝青物フィラーがオースチンブラックである請求項1記載のフッ素ゴム組成物。
【請求項4】
3元共重合ゴム100重量部当り(A)カーボンブラックと(B)瀝青物フィラーとが合計して10〜50重量部、(C)酸化亜鉛が0.5〜20重量部またはハイドロタルサイトが0.1〜20重量部、(D)有機過酸化物が0.5〜6重量部の割合で用いられた請求項1記載のフッ素ゴム組成物。
【請求項5】
(A)成分カーボンブラックと(B)成分瀝青物フィラーとが30/5〜5/30の割合で用いられた請求項4記載のフッ素ゴム組成物。
【請求項6】
さらに1〜10重量部の(E)多官能性不飽和化合物が(D)有機過酸化物と共に併用された請求項4記載のフッ素ゴム組成物。
【請求項7】
水と接触する水系シール材の成形材料として用いられる請求項1〜6のいずれかに記載されるフッ素ゴム組成物。
【請求項8】
燃料油と接触する燃料油系シール材の成形材料として用いられる請求項1〜6のいずれかに記載されるフッ素ゴム組成物。
【請求項9】
請求項7または8記載のフッ素ゴム組成物を架橋成形して得られたシール材。

【公開番号】特開2006−299224(P2006−299224A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277444(P2005−277444)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】