説明

フッ素化アルコールのアルコキシル化

フッ素化アルキルアルコキシレート、および、少なくとも1種のフッ素化アルコールが少なくとも1種のアルキレンエポキシドと、水素化ホウ素アルカリ金属および有機第4級塩を含む触媒系の存在下に接触されるフッ素化アルキルアルコキシレートの調製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素化アルキルアルコキシレート、ならびに、水素化ホウ素アルカリ金属および有機第4級塩を含む触媒系の存在下に、フッ素化アルコールをアルキレンエポキシドと接触させるその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコールアルコキシレートを含有する材料が、広く多様な産業用途において、例えばノニオン性界面活性剤として用いられている。これらは、典型的には、1種または複数種の触媒の存在下での、アルコールと、エチレンオキシド(すなわち、オキシラン)またはプロピレンオキシド(すなわち、2−メチルオキシレン)などのアルキレンエポキシドとの反応により調製される。フッ素化アルキル基が組み込まれているアルコールとアルキレンエポキシドとの反応により調製されるフッ素化アルキルアルコキシレートは材料の重要なクラスである。フッ素化アルキルアルコキシレートは、数々の産業用途において特に有用であり、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、電気化学電池、ならびに、種々の光学用コーティングおよび他のコーティングの製造を含む種々の分野におけるノニオン性界面活性剤としての使用を含む。
【0003】
フッ素化アルコールのアルコキシル化のための公知の触媒系および方法は、三フッ化ホウ素または四フッ化ケイ素などのルイス酸の単独での、金属水素化物、フッ化物、アルキルまたはアルコキシドと組み合わせた使用を含む。残念なことに、このような酸性の材料は、アルキルアルコキシル化の最中に、アルキレンエポキシドの二量体化などの副反応を触媒してジオキサンをも形成してしまう。強塩基を触媒として単独で用いることは、フッ素化アルコールのアルコキシル化に関しては満足できるものではない。
【0004】
米国特許第5,608,116号明細書には、一般構造RfCH2CH2OH(式中、Rfは30個以下の炭素原子の直鎖または分岐鎖パーフルオロアルキル基である)を有するパーフルオロアルキルエタノールの市販されている混合物が、ヨウ素供給源および水素化ホウ素アルカリ金属を含む触媒系の存在下にアルコキシル化される、フルオロアルキルアルコキシレートの調製方法が開示されている。
【0005】
8個以上の炭素を有する長鎖パーフルオロアルキル基に由来するフッ素化材料は高価である。従って、長鎖パーフルオロアルキル基と比して同一の、または、より良好な性能をもたらすことが可能である短鎖フッ素化基および部分フッ素化基を使用することで、フッ素含有量を低減させることが望ましい。米国特許第5,608,116号明細書中に開示されている触媒系は、短鎖または部分フッ素化基を有するアルコールのアルコキシル化に関して満足のいくものではない。この触媒系は、短鎖または部分フッ素化基を有するアルコールが利用される場合に、反応性が低く、かつ、反応速度が遅くなってしまう。
【0006】
短鎖または部分フッ素化基を有するアルコールのアルコキシル化において所望の反応性をもたらす触媒系を用いるプロセスが必要とされている。本発明は、このようなプロセス、および、得られるフッ素化アルキルアルコキシレートを提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、式(1a)の化合物:
f−(CH2CF2n(CH2m−(CH2CH2O)p−XH (1a)
(式中、
fは、1〜6個の炭素原子の直鎖または分岐鎖パーフルオロアルキル基であり;
nは0〜4であり;
XはOであり;
mは1〜6の整数であり;
pは1〜約40の整数である)
の調製方法を含み、
式(4)のフッ素化アルコール
f−(CH2CF2n(CH2m−XH (4)
(式中、
fは1〜6個の炭素原子の直鎖または分岐鎖パーフルオロアルキル基であり;
nは0〜4であり;
mは1〜6の整数であり;
XはOである)
と、2〜10個の炭素原子を有するアルキレンオキシド、または、前記アルキレンオキシドなどの混合物とを、(1)少なくとも1種の水素化ホウ素アルカリ金属、および、(2)少なくとも1種の有機第4級塩を含む触媒系の存在下に接触させる工程を含む。任意により、ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、元素ハロゲン、および、これらの混合物からなる群から選択されるハロゲン供給源が触媒中に存在している。
【0008】
本発明は、(1)水素化ホウ素アルカリ金属、および、(2)少なくとも1種の有機第4級塩を含む触媒系をさらに含む。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において商標はすべて大文字で記載されている。
【0010】
本発明は、式(1)のフッ素化アルキルアルコキシレート
f−(CH2CF2n(CH2m−(CH2CH2O)p−XH (1)
(式中、
fは、1〜6個の炭素原子の直鎖または分岐鎖パーフルオロアルキル基であり;
nは1〜4の整数であり;
XはOであり;
mは1〜6の整数であり;
pは1〜約40の整数である)
の調製方法を含む。
【0011】
式(1)の好ましい化合物は、Rfが、4個または6個の炭素を有するパーフルオロアルキルであるものである。また、mが1〜4であり、より好ましくは2〜4である式(1)の化合物が好ましい。また、pが1〜約30、好ましくは1〜20、および、より好ましくは4〜13の整数である式(1)の化合物が好ましい。
【0012】
式(1)の化合物は、Rf(CH2CF2n−部分(式中、Rfは1〜6個の炭素原子を有する短鎖パーフルオロアルキル基である)を含有する少なくとも1種の部分フッ素化アルコールが、水素化ホウ素アルカリ金属および有機第4級塩を含む触媒系の存在下にアルキレンエポキシドと接触させられる方法により調製される。この調製方法の詳細が以下に記載されている。
【0013】
式(1)のフッ素化アルキルアルコキシレートは、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、電気化学電池、および、種々の光学コーティングの生産におけるノニオン性界面活性剤としての使用を含む数々の産業用途において特に有用である。本発明のフッ素化アルキルアルコキシレートの所望の特性の一つは、水性媒体において、きわめて低い濃度で表面張力を低下させることが可能であることである。典型的には、式(1)の化合物の使用は、水中に0.1%で25mN/m未満の表面張力をもたらす。この界面活性剤の特性は、特に均染剤および粘着防止剤として、塗料、染料、研磨剤、および、他のコーティング組成物などの種々のコーティングを含む多くの水性媒体における使用がもたらされる。本発明の化合物はまた、種々の油田作業において有用である。
【0014】
fは、6個以下の炭素原子を有する短鎖パーフルオロアルキル基である。式(1)のフッ素化アルキルアルコキシレートの利点の1つは、フッ素効率を高めつつ所望の表面特性をもたらすことである。本明細書において用いられるところ、「フッ素効率」という用語は、同一のまたは高められた表面特性を達成するために、フッ素化化合物を最低限の量で、および、フッ素をより低いレベルで用いることができる能力を意味する。式(1)の化合物はまた、表面張力を低減させる界面活性剤として有用であると共に、部分フッ素化および/または6個以下の炭素の短鎖パーフルオロアルキル鎖長により低いフッ素含有量を有しつつも低い限界ミセル濃度を有する。
【0015】
液体の表面挙動の改変方法は、液体に、上記に定義されている式(1)の化合物を添加する工程を含む。脱イオン水の通常の表面張力は72ダイン/cm(72mN/m)である。上記の式(1)の化合物は、特定の量で表面張力を低減させる界面活性剤である。一般に、水中の界面活性剤の濃度が高いほどより良好な性能が達成される。典型的には液体である媒体におけるこのような表面張力値は、媒体中に約0.5重量%未満の界面活性剤の濃度で、約25ミリニュートン/メートル(mN/m)未満、好ましくは約21ミリニュートン/メートル(mN/m)未満である。
【0016】
この方法は、典型的には、被覆剤、洗浄剤、油田剤、および、多くの他の用途などの多様な用途における表面張力および限界ミセル濃度(CMC)値を低下させるために、表面挙動を改変させる工程を含む。本発明の方法を用いて改変させることが可能である表面挙動のタイプとしては、湿潤性、浸透性、延展性、均展性、流動性、乳活性、分散性、忌避性、分離性、潤滑性、腐食性、接着性、不粘着性、発泡性、および、安定性が挙げられる。本発明の方法において用いられることが可能である液体のタイプとしては、コーティング組成物、ラテックス、塗料、染料、ポリマー、床仕上剤、インク、乳化剤、発泡剤、離型剤、撥水撥油剤、流れ調整剤、フィルム蒸発抑制剤、湿潤剤、浸透剤、洗浄剤、研削剤、電気めっき剤、腐食抑制剤、エッチング剤溶液、はんだ剤(soldering agent)、分散助剤、微生物剤、パルプ化助剤、すすぎ助剤(rinsing aid)、艶出剤、パーソナルケア組成物、乾燥剤、静電防止剤、床仕上剤、または、結合剤が挙げられる。
【0017】
式(1)の化合物および方法は、ガラス、木材、金属、レンガ、コンクリート、セメント、天然および合成石材、タイル、合成床材、紙、生地材料、プラスチック、ならびに、塗料用のコーティング配合物などの、低い表面張力が所望される多様な用途に有用である。これらの化合物および方法は、床、家具、靴、および、自動車の手入れのために湿潤性、均展性、および、光沢を向上させるためのワックス、仕上げ剤、および研磨剤に有用である。化合物および方法はまた、ガラス、タイル、大理石、セラミック、リノリウムおよび他のプラスチック、金属、石、積層体、天然および合成ゴム、樹脂、プラスチック、繊維、ならびに、布用の多様な水性および非水性洗浄用製品において有用である。式(1)の化合物はまた、掘削および抗井刺激用途に用いられる油田剤においても有用である。
【0018】
本発明は、式(1a):
f−(CH2CF2n(CH2m−(CH2CH2O)p−XH (1a)
(式中、
fは、1〜6個の炭素原子の直鎖または分岐鎖パーフルオロアルキル基であり;
nは0〜4であり;
XはOであり;
mは1〜6の整数であり;
pは1〜約40の整数である)
の化合物の調製方法を含む。
【0019】
本発明の方法は、式(4);
f−(CH2CF2n(CH2m−XH (4)
(式中、
fは、1〜6個の炭素原子の直鎖または分岐鎖パーフルオロアルキル基であり;
nは0〜4であり;
mは1〜6の整数であり;
XはOである)
のフッ素化アルコール、または、このようなフッ素化アルコールの混合物と、アルキレンエポキシドなどの1種または複数種のアルコキシル化剤とを、(1)水素化ホウ素アルカリ金属、および、(2)少なくとも1種の有機第4級塩を含む触媒系の存在下に接触させる工程を含む。任意により、ヨウ化アルカリ金属、ヨウ化アルカリ土類金属、元素ヨウ素、および、これらの混合物からなる群から選択されるヨウ素供給源もまた存在している。触媒系は、強塩基などの助触媒または他の触媒の不在下においても有効であるが、このような材料が所望の場合には存在していることが可能である。
【0020】
式(1)の化合物は式(1a)に含まれる。
【0021】
本発明の方法における反応体として用いられる好適なフッ素化アルコールは、上記に定義されている式(4)のものである。好ましいアルコールは、Rfが4〜6個の炭素、および、より好ましくは4個の炭素を含むパーフルオロアルキル基であるものである。また、nが0〜3、より好ましくは0〜2、および、より好ましくは1であり;mが1〜4、好ましくは2〜4、より好ましくは2であるアルコールが好ましい。
【0022】
多数のアルコキシル化剤のいずれかが、本発明の方法における反応体として用いられることが可能である。アルキレンエポキシドが好ましい。これらのうち、エチレンオキシド(オキシラン)、プロピレンオキシド(2−メチルオキシラン)、および、これらの混合物が好ましい。2種以上のエチレンオキシドを、混合物として、または、順次に添加することが可能である。速い反応性のためエチレンオキシドを単独で用いることが好ましい。
【0023】
接触させる工程は、触媒系の存在下に、約90℃〜200℃の範囲内の温度で実施される。実機操業に関しては、約120℃〜約170℃の温度でこのプロセスを実施することが好ましい。温度は、技術分野において公知である適切な手段によって好適な範囲内に維持される。このプロセスは、大気圧〜約100psig(791×103Pa)の圧力で実施される。約大気圧〜50psig(446×103Pa)、より好ましくは約20psig(239×103Pa)〜約50psig(446×103Pa)の圧力が好ましい。
【0024】
本発明の方法は、その操作における柔軟性を達成している。触媒は、アルコキシル化剤の添加前、または、またはその最中にフッ素化アルコールに添加されることが可能である。好ましくは、フッ素化アルコールは、アルコキシル化剤および加熱の前に触媒と混合される。
【0025】
本発明の方法において用いられる触媒系は、以下のとおり2種の要素を含む:(1)水素化ホウ素アルカリ金属、および、(2)少なくとも有機第4級塩。ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、元素ハロゲン、および、これらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のハロゲン供給源が任意により、触媒系中に存在していることが可能である。
【0026】
本発明の方法において用いられる触媒系における使用に好適な水素化ホウ素アルカリ金属としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリエチルホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、および水素化ホウ素リチウムが挙げられる。水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。触媒中の水素化ホウ素アルカリ金属対フッ素化アルコールのモル比は、後半に様々であることが可能であり、少なくとも約0.005〜1.0、または、これ以上である。上限は、水素化ホウ素の過剰な使用の経費、生成物および廃棄物流の過剰量の水素化ホウ素での汚染、および、アルコキシル化反応の発熱量の制御の潜在的な困難性などの実用上の見地によってのみ定められている。好ましくは、モル比は、約0.005:1.0〜約0.25:1.0である。水素化ホウ素対フッ素化アルコールの最適なモル比は、フッ素化アルコールおよびアルコキシル化剤の構造、ならびに、反応容器の温度、圧力および冷却効率などの要因によって影響されることとなる。本発明の目的に有用な、100℃〜145℃、大気圧下での、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド等などのアルキレンオキシドとフッ素化アルコールとの反応に関して、水素化ホウ素対フッ素化アルコールの好ましいモル比は、約0.025〜1.0、および、より好ましくは約0.1〜1.0の範囲内である。
【0027】
本発明の方法において用いられる触媒系における使用に好適な有機第4級塩は、式(2)
[(R14Q]+- (2)
(式中、
Qは、窒素、リン、砒素、アンチモン、および、ビスマスからなる群から選択される周期律表の第Vb族の元素であり;
各R1は、任意によりフッ素を含有しており、および、任意によりアルキルで置換されている、C1〜C16アルキル、C1〜C16アリール、C1〜C16アルカリール、C1〜C16アラルキル、C1〜C16シクロアルキル、C1〜C16フルオロアルキルラジカル、および、C1〜C16芳香族炭素環からなる群から独立して選択され、ただし、4個のR1部分における炭素原子の総数は少なくとも16であり;
Yはハロゲンまたはカルボエトキシラジカルである)
の1つまたは複数の基を含む。
【0028】
本発明の方法において用いられる触媒系における使用に好適な好ましい有機第4級塩は、R1が、アルキル、アリール、アルカリール、アラルキル、および、シクロアルキルラジカルからなる群から選択されるが、ただし、4個のR1部分における炭素原子の総数が少なくとも16であり、好ましくは約28〜40である式(2)のものである。また、Qが窒素およびリンである第4級塩も好ましい。
【0029】
本発明において用いられる触媒系における使用に好適な式(2)の特定の有機第4級塩の例としては、以下の:
(C494+Br-
(C494+Cl-
(C494+-
(C494+-
(C494+OAc-
(ヘキシル)4+Br-
(ヘプチル)4+Cl-
(C253+CH2(C65)Br-
[CH3(CH2)15]N+(CH3)3Br-
(C494+Br−、
(C653+CH3Br-
(C653+CH2(C65)Br-
が挙げられる。
【0030】
上記の式(2)([(R14Q]+-)によって表されている多くの他の特定の有機第4級塩はまた、本発明において用いられる触媒系における使用に好適である。本明細書における触媒として有用な市販されている塩の例としては、共にMilwaukee,WIのAldrich Chemical Companyから入手可能であるメチルトリカプリル塩化アンモニウム、および、メチルトリアルキル(C8〜C10)塩化アンモニウムが挙げられる。
【0031】
普通、反応系に関与する相が水性および有機系である場合、約70個の炭素原子が一定の実用上の限定によって課せられる上限を表すが、第4級塩に包含される炭素原子の理論的な最大数は存在しない。式(2)における炭化水素の一種は、第4級基によりさらに置換されて、式(3)
【0032】
【化1】

【0033】
(式中、Q、YおよびR1は式(2)に定義されているとおりである)
により表されているジ第4級塩を形成することが可能である。
【0034】
式(3)のジ第4級塩はまた、本発明において用いられる触媒系における使用に好適である。さらに、一般式[(R14Q]+-(2)が複数回反復して一緒に結合している多官能性第4級塩もまた本発明の方法において効果的に用いられることが可能である。単官能性、二官能性、および、多官能性第4級塩を含むこのような塩の混合物もまた本発明の方法において用いられることが可能である。
【0035】
触媒において適用される第4級塩の量は、かなり幅広く影響される。水素化ホウ素アルカリ金属の存在下でのフッ素化アルコールのアルコキシル化のために好適な本明細書に記載の第4級塩は、約0.1:1〜約3:1の式2および式3対水素化ホウ素アルカリ金属におけるQのモル比で利用される。
【0036】
本発明の方法において用いられる触媒系における使用に好適なハロゲン供給源としては、元素ハロゲン、ハロゲン化リチウム、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウム、ハロゲン化カルシウム、および、周期律表の第Vb族の元素のハロゲン化物が挙げられる。これらのハロゲン供給源のうち、好ましいハロゲンは、ヨウ素、臭素、および、塩素である。好ましいハロゲン供給源は、元素ハロゲン、ハロゲン化ナトリウム、または、これらの混合物である。本発明の触媒系における使用については、ヨウ素、ヨウ化ナトリウム、または、これらの混合物が特に好ましい。ハロゲン供給源対水素化ホウ素アルカリ金属のモル比は、約0.01:10および約300:1の範囲内である。100℃〜145℃、大気圧下での本発明の目的のために有用なアルキレンオキシドのフッ素化アルコールとの反応について、好ましいハロゲン供給源対水素化ホウ素アルカリ金属のモル比は、約0.1:1.0〜約0.5:1.0の範囲であり、最も好ましいモル比は、約0.1:1.0〜0.3:1.0の範囲内である。水素化ホウ素に比して高レベルのハロゲン供給源では、アルコキシル化反応は阻害される傾向にあり、反応速度が遅い可能性がある。
【0037】
既述のとおり、本発明の方法において用いられる触媒系は、1)水素化ホウ素アルカリ金属、および、2)有機第4級塩の混合物を含む。理論に束縛されることは望まないが、第4級塩の触媒活性は相間移動触媒とみなされると考えられている。これは、極性の低い異なる相への塩の顕著な溶解度によって特徴付けられる。数々の相中の反応体および生成物が相互に反応する程度または速度の相当の増加は触媒系の存在により生じる。
【0038】
通常はアンモニウムまたはホスホニウム第4級塩である一定の有機第4級塩は、他の反応体を含有する相よりも、最も極性の低い反応体を含有する相中により可溶性である相間移動触媒として反応プロセスに導入されることにより作用する。より具体的には、これらの有機第4級塩の相間移動触媒としての使用は、不均質な反応系中に実施されることが可能である。本明細書において、「不均質な反応」という用語は、反応に関与する反応体および/または生成物が、液体−液体または液体−固体相を含む個別の相中にあることを意味する。これらの有機第4級塩は、個別の相間の相界面を超えた反応体、生成物、イオン、または、他の反応性もしくは官能基の移動により、このような不均質な反応を効果的に触媒することが可能である。例えば、反応体または生成物を含有する個別の相は極性および/または溶解度が異なることとなり、有機第4級塩は極性の低い相中により優先的に可溶性であるよう選択されることとなる。有機第4級塩はまた、2つもしくは複数の個別の相にわたって反応体、生成物、イオン、または、他の反応性もしくは官能基を移行させて、不均質な反応を促進させることが可能である。
【0039】
本発明の方法における使用に好適な溶剤は、本発明の方法において用いられる反応体および生成物に明確な溶解度を示すものである。いくつかはまた、反応性を高めるともみなされることが可能である。このような溶剤の例としては、エチレングリコールジメチルエーテル(ジメチルエチレングリコール、または、グリムとも呼ばれる)、ジ−エチレングリコールジメチルエーテル(ジメチルジエチレングリコール、またはジグリムとも呼ばれる)、トリ−エチレングリコールジメチルエーテル(トリメチルジエチレングリコール、またはトリグリムとも呼ばれる)、またはテトラ−エチレングリコールジメチルエーテル(テトラメチルジエチレングリコール、またはテトラグライムとも呼ばれる)、ならびに、エチレンオキシド環式六量体(CAS RN:17455−13−9)およびエチレンオキシド環式五量体(CAS RN:33100−27−5)などの環式エーテル等が挙げられる。これらの本発明の方法に好適な溶剤の選択は、これらの個別の相中への溶解度、沸点、および、除去の可能性に応じる。
【0040】
不活性材料または他の溶剤もまた反応の最中に存在していることが可能である。好ましい実施形態において、フッ素化アルコールまたはアルコール混合物は、触媒系の存在下にアルコキシル化剤とそのままで接触させられる。フッ素化アルコールは、アルコキシル化剤との反応に先駆けて、望ましくない副反応を回避するために、当業者に公知の方法を用いて完全に乾燥されていることも好ましい。本発明の方法は、非フッ素化アルコールのアルコキシル化にも良好に適用可能である。
【0041】
本発明の方法の特定の一実施形態において、上記に定義されている式(1)のフッ素化アルキルアルコキシレートは、以下の式:
【0042】
【化2】

【0043】
に従い、上記に定義されている、式(4)Rf(CH2CF2n(CH2mXHの一般構造を有するフッ素化アルコールと、エチレンオキシドとの、上記の触媒の存在下での反応により調製される。
【0044】
本発明の方法において反応体として用いられる式(4)
f(CH2CF2n(CH2m−OH (4)
(式中、Rfは1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖パーフルオロアルキル基であり、下付文字nは0〜4であり、および、mは、1〜6、好ましくは1〜4、より好ましくは2〜4の整数である)のフッ素化アルコールは、nが正の整数である、以下のスキーム1による合成により入手可能である。
【0045】
【化3】

【0046】
フッ化ビニリデンと直鎖または分岐鎖パーフルオロヨウ化アルキルとの反応は、構造Rf(CH2CF2qI(式中、Rfは式(4)に定義されているとおりであり、および、qは1〜4である)の化合物をもたらす。例えば、Balagueら、「Synthesis of fluorinated telomers,Part 1,Telomerization of vinylidene fluoride with perfluoroalkyl iodides」,J.Fluorine Chem.(1995年),70(2),第215〜23ページを参照のこと。特定のヨウ化物テロマーが分留により単離される。ヨウ化物テロマーは、米国特許第3,979,469号明細書に記載の手法によりエチレンで処理されて、rが1〜3以上であると共にqが1〜4であるヨウ化エチレンテロマー(スキーム1のVI)をもたらす。ヨウ化エチレンテロマー(スキーム1のVI)は、オレウムで処理され、および、加水分解されて、国際公開第95/11877号パンフレットに開示されている手法に従い、対応するアルコールテロマー(スキーム1のV)をもたらす。あるいは、ヨウ化エチレンテロマー(スキーム1のVI)は、N−メチルホルムアミドで処理され、続いて、エチルアルコール/酸加水分解されることが可能である。
【0047】
nが0である式(4)のフッ素化アルコールは公知であり、市販されている。これらは、好適な触媒の存在下でのテトラフルオロメチレンのクロメライゼーション(klomerization)、続いて、エチル化および加水分解によるものなどの従来の方法によって調製される。米国特許第5,097,090号明細書を参照のこと。
【0048】
以下の器具および試験法を、本明細書における実施例において用いた。
【0049】
器具
250mL丸底フラスコ(RBF)を反応器として用いた。フラスコは、エチレンオキシド(EO)供給ラインに接続されたガス導入チューブ、ドライアイスコンデンサ、および、機械的攪拌機を備えていた。J−KEM,Gemini controller(St.Louis,MOのJ−KEM Scientific,Inc.製)に接続した熱電対を用いてバッチ温度を制御した。
【0050】
エチレンオキシド(EO)供給ラインは、実験室用の秤の上に設置した2.27kgエチレンオキシドボンベを備えていた。エチレンオキシドボンベは外部遮断ゲートバルブを備えていると共に、チェックバルブおよびニードルコントロールバルブが直列に接続していた。このEO供給ラインはT−ラインを介して乾燥窒素流に接続して、窒素とEOとの混合物を反応器に流入させていた。反応器の直前にドライトラップを導入して、予期しない反応器からの逆流に対するEO供給ラインの緩衝とした。流れは、Wilmington,DEのE.I.du Pont de Nemours and Company製のKRYTOXで満たしたガスバブラー、ならびに、窒素およびEOの各々の両方へのライン中の2個のロトメータにより監視した。
【0051】
スクラバーシステムをドライアイスコンデンサからの出口ラインに含めた。出口ラインはKRYTOX出口バブラーを通り、次いで、2つのスクラバーボトル(反応器とスクラバーとの間の緩衝として作用する第1の乾燥ボトルと、10%水性水酸化ナトリウムで満たされた第2のスクラバー)を通っていた。
【0052】
試験法1−表面張力計測
Kruess Tensiometer、K11 Version 2.501を器具に付属の説明書に従って用いて表面張力を計測した。Wilhelmyプレート方法を用いた。周長が既知である垂直なプレートをはかりに取り付け、および、濡れによる力を計測した。被試験サンプルは水で希釈した。実施例の各々を脱イオン水中の添加剤の固形分に基づく重量基準で脱イオン水に添加し;標準偏差は1ダイン/cm(1mN/m)未満であり;温度は約21℃であった。脱イオン水の通常の表面張力は72〜73ダイン/cm(72〜73mN/m)である。10個の反復試料の各々の希釈物を試験し、および、以下の機械設定を用いた:方法:プレート法SFT;間隔:1.0秒;濡れ長さ:40.2mm;読み取り限界:10;最低標準偏差:2ダイン/cm(2mN/m);Gr.Acc.:9.80665m/s2
【実施例】
【0053】
実施例1
清浄な乾燥した丸底フラスコ(RBF)に、40グラムの精製C49(CH2CF2nCH2CH2OH(121.9mmol)(式中、主にn=1)、0.175グラム(1.16mmol)のヨウ化ナトリウム、0.20グラム(5.29mmol)の水素化ホウ素ナトリウムおよび0.43グラム(1.17mmol)のヨウ化テトラ−n−ブチルアンモニウムを仕込んだ。反応器をN2パージ下(EO供給なし)に約125℃まで加熱し、1時間保持して、触媒形成中の水素の発生を完了させた。窒素パージを閉じた状態での出口バブラーでの泡立ちの消失によって示される水素の発生が終わった後、EOの供給を開始した。約125℃±15℃で維持しながら1〜4グラムの小増分でエチレンオキシドを導入した。エチレンオキシドの添加は約3〜8時間のシフトで6日間にわたって継続し、反応混合物を、一晩の間、窒素下に冷却および静置させた。反応は大気圧で行った。反応器へのエチレンオキシドの添加は、添加の最中でのエチレンオキシドボンベの総重量の差異により推定した。エチレンオキシドの添加は大気圧で行い、および、未反応エチレンオキシドをスクラバーに蒸発させた。反応の進行は、1H NMR(CD2Cl2/トリフルオロ酢酸無水物、500MHz)により特徴付け、および、(EO#)、または、重合度(DP)としても公知であるエトキシル化アルコールのエチレンオキシド番号として表1に示されている。この実験の目的のための(EO#)は、エチレンオキシド(EO)のモル数をエトキシル化アルコールのモル数で除したものと定義される。反応1日目の終了時で、約6.5グラムのEO(累積量)がフラスコに投入されており、(EO#)は1.4であった。2日目の終了時で、約25〜27グラムのEO(累積量)がフラスコに投入されており、EO#は1.5であった。3日目の後、EOの消費は過度に遅いことが明らかであり、追加の0.18グラムのNaI、0.18グラムのNaBH4、および0.43グラムのヨウ化テトラ−n−ブチルアンモニウムを反応混合物に添加した。混合物を80℃に再加熱し、および、1時間保持して、触媒形成させ、および、発生した水素を通気させた。水素の発生は上記に記載の通りであった。エチレンオキシドの添加を再開し、混合物のサンプルを採取し、および、以下のとおり、経時的に1H NMR(CD2Cl2/トリフルオロ酢酸無水物、500MHz)により特徴付けた。4日目の終了時で、約45〜47グラムのEO(累積量)がフラスコに投入されており、EO#は3.4であった。5日目の終了時で、約50〜52グラムのEO(累積量)がフラスコに投入されており、EO#は5.9であった。6日目の終了時で、約53〜55グラムのEO(累積量)がフラスコに投入されており、EO#は6.4であった。6日目のエチレンオキシドの添加の後、混合物を室温に冷却したところ、反応質量は合計で65.2グラムであった。6日目からの最終生成物を、1H NMR(CD2Cl2/トリフルオロ酢酸無水物、500MHz)により、C49(CH2CF2nCH2CH2(OCH2CH2p−OH(主にn=1およびpは約6.4であった)として特徴付けた。反応および転換の進行が表1に示されている。実施例1からの6日目終了時の最終生成物を水に添加し、および、試験法1に従って表面張力について試験を行った。結果は表4のとおりである。
【0054】
【表1】

【0055】
表1において、EO=エチレンオキシド;EO#=エチレンオキシドのモル数/エトキシル化アルコールのモル数である。
【0056】
表1中のデータは、アルコールが、本発明の方法を用いて高い割合でエトキシル化アルコールに転化されたことを示す。
【0057】
比較例A
清浄な乾燥した丸底フラスコに、40グラムの精製C49(CH2CF2nCH2CH2OH(121.9mmol)(主にn=1)、0.35gms(2.33mmol)のヨウ化ナトリウム、および、0.20グラム(5.29mmol)の水素化ホウ素ナトリウムを仕込んだ。反応器を窒素パージ下(エチレンオキシド供給なし)に約125℃に加熱し、約1時間保持して水素の発生を完了させた。次いで40gmsのエチレンオキシドを、実施例1と同一のプロセスにおいて徐々にフラスコに添加した。反応の後、反応混合物の一部を減圧下、126℃、12mm Hg(1600Pa)で精製して、過剰量のC49(CH2CF2nCH2CH2OHを除去した。遊離アルコール蒸留画分は17.5gmsと計量され、エトキシル化ポット残渣は11.5gmsと計量された。最終生成物エトキシレート残渣を、1H NMR(CD2Cl2トリフルオロ酢酸無水物、500MHz)により、C49(CH2CF2nCH2CH2(OCH2CH2p−OH(主に、n=1およびpは約1.9であった)として特徴付けた。反応および転換の進行が表2に示されている。
【0058】
【表2】

【0059】
表2において、EO=エチレンオキシド;EO#=エチレンオキシドのモル数/エトキシル化アルコールのモル数である。
【0060】
表2中のデータは、わずかに35%のエトキシル化アルコールへの転換を示す。実施例1(表1)との比較では、本発明の方法は、25〜27モルのエチレンオキシドの使用でより高い割合の転化、および、45〜47モルのエチレンオキシドの使用で90%の転換を示し、それ故、本発明の方法の優位性を実証している。
【0061】
実施例2
清浄な乾燥した(丸底フラスコ)RBFに、40グラムの精製C49(CH2CF2nCH2CH2OH(121.9mmol)(主にn=1);0.20gms(1.33mmol)のヨウ化ナトリウム)、0.20グラム(5.29mmol)の水素化ホウ素ナトリウムおよび.47グラム(1.16mmol)のメチルトリフェニルホスホニウムヨージドを仕込んだ。反応器を窒素パージ下(EO供給なし)で約80℃に加熱し、約1時間保持して、触媒形成中の水素の発生を完了させた。窒素パージを閉じた状態での出口バブラーでの泡立ちの消失によって示される水素の発生が終わった後、EOの供給を開始した。125℃±15℃への維持を試みながら、1〜4グラムの小増分でエチレンオキシドを導入した。エチレンオキシドの添加は約3〜8時間のシフトで6日間にわたって継続し、反応混合物を、一晩の間、窒素下に冷却および静置させた。反応は大気圧で行ったため、反応器へのエチレンオキシドの添加は、添加の最中でのエチレンオキシドボンベの総重量の差異により推定した。未反応エチレンオキシドはすべてスクラバーに蒸発させた。反応の進行は、実施例1に記載の方法による1H NMR(CD2Cl2/トリフルオロ酢酸無水物、500MHz)により特徴付けた。2日目の終了時で、約6.0グラムのEO(累積量)がフラスコに投入されており、EO#は2であった。2日目の後、EOの消費は過度に遅いことが明らかであり、追加の0.18グラムのNaI、0.20グラムのNaBH4を反応混合物に添加した。混合物を125℃に再加熱し、および、約1.3時間保持して、触媒形成させ、および、発生したH2を通気させた。水素の発生は上記に記載の通りであった。エチレンオキシドの添加を再開し、経時的に混合物のサンプルを採取した。3日目の終了時で、約10〜12グラム(累積量)のEOがフラスコに投入されており、EO#は1.7であった。5日目の終了時で、約21〜23グラム(累積量)のEOがフラスコに投入されており、EO#は2.3であった。反応はなお遅く見えたので、追加の047グラムのメチルトリフェニルホスホニウムヨージドをフラスコに添加した。6日目の終了時で、47.5〜50.5グラムのEO(累積量)がフラスコに投入されており、EO#は6.2であった。6日目のエチレンオキシドの添加の後、混合物を室温に冷却したところ、反応質量は合計で67.2グラムであった。上記の6日目からの最終生成物を、1H NMR(CD2Cl2/トリフルオロ酢酸無水物、500MHz)により、C49(CH2CF2nCH2CH2(OCH2CH2p−OH(主にn=1およびpは約6.2であった)として特徴付けた。反応および転換の進行が表3に示されている。実施例2からの最終生成物を水に添加し、および、試験法1に従って表面張力について試験を行った。結果は表4のとおりである。
【0062】
【表3】

【0063】
表3において、EO=エチレンオキシド;EO#=エチレンオキシドのモル数/エトキシル化アルコールのモル数である。
【0064】
表3中のデータは、アルコールが、本発明の方法を用いて高い割合でエトキシル化アルコールに転化されたことを示す。
【0065】
比較例B
式Cx2x+1CH2CH2(OCH2CH2pOH(式中、xは、約4〜約14の分布を有しており、および、p(平均エトキシル化度)は約7であった)によって表される、Wilmington DEのE.I.du Pont de Nemours and Company製の市販されているフルオロアルキルアルコキシレートを水に添加し、試験法1に従って表面張力を試験した。結果は表4のとおりである。
【0066】
【表4】

【0067】
表4中のデータは、本発明の化合物を添加すると、各水溶液の表面張力が顕著に低減したことを示す。パーフルオロアルキル基中に6個の炭素を有する実施例1および2は、4〜14個の炭素を有するパーフルオロアルキルの混合物を有し、それ故、フッ素が高い含有量で存在する比較例Bに匹敵する表面張力の低減を示した。
【0068】
比較例C
反応器に、40グラムの精製C49(CH2CF2nCH2CH2OH(121.9mmol)、主にn=1;0.35グラム(2.32mmol)のヨウ化ナトリウム、および0.20グラム(5.29mmol)の水素化ホウ素ナトリウムを仕込んだ。反応器を窒素パージ下(エチレンオキシド供給なし)で約80℃に加熱し、約1時間保持して、触媒形成中の水素の発生を完了させた。20グラムのエチレンオキシドを導入した後、9psig(163×103Pa)の窒素で0℃で反応器を加圧した。反応を12時間実施し、および、反応器の温度を約135℃に維持した。開始時点で反応器の圧力は約35〜40psig(343×103〜377×103Pa)であったが、エチレンオキシドが消費されるに伴って低下し、エチレンオキシドの消費が完了した各時点では9psig(163×103Pa)に低下した。生成物は、1H NMR(CD2Cl2/トリフルオロ酢酸無水物、500MHz)により、C49(CH2CF2nCH2CH2(OCH2CH2p−OH(主にn=1およびpは約1.4であった)として特徴付けた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1a)の化合物
f−(CH2CF2n(CH2m−(CH2CH2O)p−XH (1a)
(式中、
fは、1〜6個の炭素原子の直鎖または分岐鎖パーフルオロアルキル基であり;
nは0〜4であり;
XはOであり;
mは1〜6の整数であり;
pは1〜約40の整数である)
の調製方法であって、式(4)のフッ素化アルコール
f−(CH2CF2n(CH2m−XH (4)
(式中、
fは、1〜6個の炭素原子の直鎖または分岐鎖パーフルオロアルキル基であり;
nは0〜4の整数であり;
mは1〜6の整数であり;
XはOである)
と、2〜10個の炭素原子を有するアルキレンオキシド、または、前記アルキレンオキシドの混合物とを、(1)少なくとも1種の水素化ホウ素アルカリ金属、および、(2)少なくとも1種の有機第4級塩を含む触媒系の存在下に接触させる工程を含む調製方法。
【請求項2】
有機第4級塩が、式(2)
[(R14Q]+- (2)
(式中、
Qは、窒素、リン、砒素、アンチモン、および、ビスマスからなる群から選択され;
各R1は、任意によりフッ素を含有しており、および、任意によりアルキルで置換されている、C1〜C16アルキル、C1〜C16アリール、C1〜C16アルカリール、C1〜C16アラルキル、C1〜C16シクロアルキル、C1〜C16フルオロアルキルラジカル(fluoroalkyl radical)、および、C1〜C16芳香族炭素環からなる群から独立して選択され、ただし、4個のR1部分における炭素原子の総数は少なくとも16であり;
Yはハロゲンまたはカルボエトキシラジカル(carboethoxy radical)である)
のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機第4級塩が:
(C494+Br-
(C494+Cl-
(C494+-
(C494+-
(C494+OAc-
(ヘキシル)4+Br-
(ヘプチル)4+Cl-
(C253+CH2(C65)Br-
[CH3(CH2)15]N+(CH3)3Br-
(C494+Br-
(C653+CH3Br-、および
(C653+CH2(C65)Br-
からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
触媒中の水素化ホウ素アルカリ金属対フッ素化アルコールのモル比が、約0.005:1〜約0.25:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第4級塩中の部分Q対水素化ホウ素アルカリ金属の触媒中のモル比が、約0.1:1〜約3:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
触媒系が、ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、元素ハロゲン、および、これらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のハロゲン供給源をさらに含み、ハロゲン供給源対水素化ホウ素アルカリ金属のモル比が約0.01:1〜約300:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリ−エチレングリコールジメチルエーテル、テトラ−エチレングリコールジメチルエーテル、エチレンオキシド環状六量体、エチレンオキシド環状五量体、および、これらの混合物からなる群から選択される溶剤中で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
接触が、約100℃〜約145℃の温度、および、大気圧〜約100psig(791×103Pa)の圧力で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
(1)水素化ホウ素アルカリ金属、および、(2)少なくとも1種の有機第4級塩を含む触媒系。
【請求項10】
有機第4級塩が、式(2)
[(R14Q]+- (2)
(式中、
Qは、窒素、リン、砒素、アンチモン、および、ビスマスからなる群から選択され;
各R1が、任意によりフッ素を含有しており、および、任意によりアルキルで置換されている、C1〜C16アルキル、C1〜C16アリール、C1〜C16アルカリール、C1〜C16アラルキル、C1〜C16シクロアルキル、C1〜C16フルオロアルキルラジカル、および、C1〜C16芳香族炭素環からなる群から独立して選択され、ただし、4個のR1部分における炭素原子の総数は少なくとも16であり;
Yはハロゲンまたはカルボエトキシラジカルである)
のものである、請求項9に記載の触媒系。
【請求項11】
有機第4級塩が:
(C494+Br-
(C494+Cl-
(C494+-
(C494+-
(C494+OAc-
(ヘキシル)4+Br-
(ヘプチル)4+Cl-
(C253+CH2(C65)Br-
[CH3(CH2)15]N+(CH3)3Br-
(C494+Br-
(C653+CH3Br-、および
(C653+CH2(C65)Br-
からなる群から選択される、請求項10に記載の触媒系。
【請求項12】
ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、元素ハロゲン、および、これらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のハロゲン供給源をさらに含む、請求項10に記載の触媒系。

【公表番号】特表2012−525438(P2012−525438A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508766(P2012−508766)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/033130
【国際公開番号】WO2010/127221
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】