説明

フッ素化界面活性剤及びその使用方法

少なくとも100,000グラム/モルの重量平均分子量を有する非イオン性フッ素化高分子界面活性剤を含む組成物であって、該非イオン性フッ素化高分子界面活性剤が、独立して式Iで表される二価の単位(非イオン性フッ素化高分子界面活性剤の総重量を基準にして、30重量%〜65重量%の範囲で)と、独立して式IIで表される二価の単位(非イオン性フッ素化高分子界面活性剤の総重量を基準にして、70重量%〜35重量%の範囲である)とを含み、Rは、3〜4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基であり、R及びRは各々独立して、水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは16〜24個の炭素原子を有するアルキル基であり、かつnは2〜11の整数である、前記組成物。前記非イオン性フッ素化高分子界面活性剤及び液状炭化水素を含む発泡体並びに発泡体の製造及び使用方法もまた開示されている。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
フッ素化界面活性剤は、例えば、発泡剤及びレベリング剤として、幅広く使用されてきた。フッ素化界面活性剤の発泡性及びレベリング性は、それを多くの産業(例えば、油及びガス及び繊維材料)における多くの用途(例えば、工業的コーティング)おいて有益なものとした。
【0002】
発泡体類は、強化石油回収、破砕、掘削、及び仕上げ作業を包含する、炭化水素採収井(例えば、油井又は天然ガス井)を含む各種操作において有用である。発泡流体は、非発泡流体に優る幾つかの利点を有し得る。例えば、発泡流体中の液体の体積は、非発泡流体中の液体の体積より小さく、その結果として、発泡体を使用した場合、浸透性地下層への流体損失はより少なくなる。更に、発泡流体は通常、改良された強化石油回収、破砕、又は仕上げ作業に続いて、非発泡流体よりもより容易に地層から除去される。発泡流体(ゲル化流体又は非ゲル化流体のいずれかを含む)は更に、破砕、掘削、又は仕上げ作業にて使用され、あるいは生じる、粒子状物質(例えば、プロパント、砂利、放出された微粉、及び掘削くず)の懸濁及び移送において、それらの非発泡対照物より大きな能力を有する傾向がある。発泡体は更に、非発泡掘削流体よりも小さい密度を有し、発泡体の使用は通常、掘削が非平衡条件(即ち、掘削流体の圧力が、周辺岩石の間隙圧よりも低い)下にある場合、層破壊の危険性を低下させる。
【0003】
ガス田又は油田操業にて用いられる発泡体中の液相として利用される液体としては、水、炭化水素、及びアルコール水溶液が挙げられる。地下層処理のための発泡流体の液相中にて1つ以上の炭化水素を使用することは、当該地下層が地下層にとって異質である水の侵入に敏感である場合に、有利である。このような水感応層は一般に、外部の水との接触により粘土の膨潤及び/又はその結果としての微粉の移動によって、修復不可能な程にダメージを受ける粘土を含有する。
【0004】
発泡体中では、気泡は互いに薄い液膜によって分離されている。通常は、界面活性剤は、気泡と液膜との界面に吸着することにより発泡体を安定させ、かつ気泡が合体しないようにバリアを提供する。通常、炭化水素発泡体を形成することは、水性発泡体を形成することより、より挑戦的である。水とは異なり、それは大きな表面張力を有し、かつ荷電種を溶解することができる炭化水素は一般に、気泡の合体を回避する性質は持たない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
幾つかのフッ素化界面活性剤は、安定した炭化水素発泡体を作り出すことが知られている。元来、幅広く利用可能なフッ素化界面活性剤の多くは、長鎖ペルフルオロアルキル基、例えば、ペルフルオロオクタンスルホンアミド基を含む。しかし、近年、業界では、ペルフルオロオクチルフッ素化界面活性剤を使用しない傾向があり、これにより例えば、炭化水素発泡体を作り出すことができる新しいタイプの界面活性剤に対する要求が生まれている。
【0006】
ペルフルオロブタンスルホンアミド含有繰返し単位及び約15,000グラム/モルの重量平均分子量を有する1つの非イオン性高分子フッ素化界面活性剤を、注入井に加える、掘削流体中及び強化石油回収流体中の炭化水素発泡剤として使用されてきた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様においては、本発明は、少なくとも100,000グラム/モルの重量平均分子量を有する非イオン性フッ素化高分子界面活性剤を提供し、当該非イオン性フッ素化高分子界面活性剤が、
独立して式Iで表される二価の単位
【0008】
【化1】

【0009】
(非イオン性フッ素化高分子界面活性剤の総重量を基準にして、30重量%〜65重量%の範囲で)と、
独立して式IIで表される二価の単位
【0010】
【化2】

【0011】
(非イオン性フッ素化高分子界面活性剤の総重量を基準にして、70重量%〜35重量%の範囲で)とを含み、及び
式中、
が、3〜4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基であり、
R及びRが各々独立して、水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、
が16〜24個の炭素原子を有するアルキル基であり、かつ
nが2〜11の整数である。
【0012】
幾つかの実施形態では、本発明は、本発明の非イオン性フッ素化高分子界面活性剤及び液状炭化水素(例えば、ケロセン、ディーゼル、ガソリン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、鉱油、又はナフテンの少なくとも1つ)を含む組成物を提供する。幾つかの実施形態では、組成物は発泡体である。
【0013】
別の態様では、本発明は、液状炭化水素を含む発泡体の製造方法を提供し、当該方法が、
液状炭化水素及び少なくとも100,000グラム/モルの重量平均分子量を有する非イオン性フッ素化高分子界面活性剤を含む組成物を提供する工程であって、当該非イオン性フッ素化高分子界面活性剤が、
独立して式Iで表される二価の単位
【0014】
【化3】

【0015】
(非イオン性フッ素化高分子界面活性剤の総重量を基準にして、30重量%〜65重量%の範囲で)と、
独立して式IIで表される二価の単位
【0016】
【化4】

【0017】
(非イオン性フッ素化高分子界面活性剤の総重量を基準にして、70重量%〜35重量%の範囲で)とを含み、
式中、
は、3〜4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基であり
R及びRは各々独立して、水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、
は16〜24個の炭素原子を有するアルキル基であり、かつ
nは2〜11の整数である、組成物を提供する工程、
及び気泡を組成物中に形成して、発泡体を製造する工程を含む。
【0018】
別の態様では、本発明は、炭化水素を有する地下地層の処理方法を提供し、当該方法は炭化水素を有する地下地層へ発泡体を導入することを含み、ここで、当該発泡体は液状炭化水素及び本発明の非イオン性フッ素化高分子界面活性剤を含む。幾つかの実施形態では、発泡体の導入は、炭化水素を有する地下地層へ、そこに単数又は複数の亀裂を開けるのに十分なだけの速度及び圧力にて、発泡体を注入する工程を含む。幾つかの実施形態では、前記層が、少なくとも1つの注入井及び少なくとも1つの生産井を有し、かつ、炭化水素を有する地下地層への発泡体の導入は、注入井を通して発泡体を注入する工程を含み、当該方法は発泡体によって地下地層内の炭化水素の少なくとも一部を動かす工程を更に含む。これらの実施形態の幾つかでは、前記方法は、炭化水素の少なくとも1部分を生産井から回収する工程を更に含む。
【0019】
本発明の地下地層処理方法における幾つかの実施形態では、前記方法は、掘削装置を使用して、炭化水素を有する地下地層に井戸を掘る工程と、前記発泡体を介して、掘削くずを運搬する工程を更に含む。幾つかの実施形態では、地下地層は、坑井によって貫通され、発泡体が地下地層の坑井に導入され、前記方法は、地下地層の坑井内にて仕上げ作業を実施する工程を更に含む。幾つかの実施形態では、仕上げ作業は、坑井に砂利を充填する工程、坑井を洗浄する工程、又は坑井をセメント付けすることのうち、少なくとも1つである。
【0020】
本発明の方法の幾つかの実施形態では、液状炭化水素は、ケロセン、ディーゼル、ガソリン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、鉱油、又はナフテンの少なくとも1つである。
【0021】
本発明の非イオン性フッ素化高分子界面活性剤は通常、安定した炭化水素発泡体(即ち、長い半減期を有する発泡体)を作り出す。前述の態様における幾つかの実施形態では、非イオン性フッ素化高分子界面活性剤の1重量%ケロセン溶液は、22℃にて、少なくとも20、25、30、35、40、又は更に少なくとも45分の発泡体半減期を有する。本発明の非イオン性フッ素化高分子界面活性剤は、典型的にかつ意外にも、依然は掘削流体及び強化石油回収操業において使用されていたペルフルオロブタンスルホンアミド基を含有する非イオン性高分子界面活性剤よりも、より安定している炭化水素発泡体を提供する。幾つかの実施形態では、本発明の非イオン性フッ素化高分子界面活性剤は、ペルフルオロオクタンスルホンアミド基を含有する類似の非イオン性フッ素化高分子界面活性剤を含む発泡体よりも、より安定している炭化水素発泡体を提供する。
【0022】
本願において、
「アルキル基」及び接頭辞「alk−」は、直鎖基及び分枝鎖基の両方並びに環状基を含む。環状基は、単環式又は多環式であることができ、かつ幾つかの実施形態では、3〜10個の環炭素原子を有する。
【0023】
用語「ペルフルオロアルキル基」としては、線状、分枝状、及び/又は環状アルキル基が挙げられ、ここで、2個の炭素原子ごとに、水素又は塩素のいずれか一方の1個以下の原子が存在しているという条件でフッ素原子の代わりに、水素原子又は塩素原子が存在している基と同様に、全てのC−H結合は、C−F結合によって置き換えられている。ペルフルオロアルキル基の幾つかの実施形態では、水素又は塩素の少なくとも1つが存在する場合、ペルフルオロアルキル基としては、少なくとも1つのトリフルオロメチル基が挙げられる。
【0024】
用語「炭化水素」とは、炭素及び水素からなる化合物を意味し、飽和又は不飽和であってよい、線状、分枝状、及び環状基が挙げられる。
【0025】
用語「非イオン性」とは、イオン基(例、塩)又は水中で速やかにイオン化される基(例えば、−COH、−SOH、−OSOH、−P(=O)(OH))が無いことを意味する。
【0026】
用語「発泡体」とは、ガス(例えば、窒素、二酸化炭素、空気、及び天然ガス)並びに液体(本明細書においては、液状炭化水素を含む)の混合物を意味する。
【0027】
特に指示しない限り、全ての数の範囲は、それらの端点を含む。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の非イオン性フッ素化高分子界面活性剤は、少なくとも100,000(幾つかの実施形態では、少なくとも105,000、110,000、115,000、120,000、125,000、130,000、135,000、又は更に少なくとも140,000)グラム/モルの重量平均分子量を有する。幾つかの実施形態では、非イオン性フッ素化高分子界面活性剤は、250,000以下(幾つかの実施形態では、245,000、240,000、235,000、230,000、225,000、220,000、215,000、210,000、205,000、200,000、195,000、190,000、185,000、180,000、175,000、170,000、165,000以下あるいは160,000以下)グラム/モルの重量平均分子量を有する。非イオン性フッ素化高分子界面活性剤は通常、分子量分布及び組成分布を有する。重量平均分子量は、例えば、ゲル透過クロマトグラフィー(即ち、サイズ排除クロマトグラフィー)によって、当該技術分野において既知の技術を使用して測定できる。
【0029】
本発明の非イオン性フッ素化高分子界面活性剤は、独立して式Iで表される二価の単位を含む。
【0030】
【化5】

【0031】
Rfは、3〜4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基(例えば、ペルフルオロ−n−ブチル、ペルフルオロイソブチル、ペルフルオロ−sec−ブチル、ペルフルオロ−t−ブチル、ペルフルオロ−n−プロピル、又はペルフルオロイソプロピル)である。幾つかの実施形態では、Rfはペルフルオロブチル(例えば、ペルフルオロ−n−ブチル)である。幾つかの実施形態では、Rfはペルフルオロプロピル(例えば、ペルフルオロ−n−プロピル)である。
【0032】
Rは、水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、又はsec−ブチル)である。幾つかの実施形態では、Rは、メチル又はエチルである。
【0033】
式Iにおいて、nは、2〜11(即ち、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11)の値を有する整数である。
【0034】
独立して化学式Iで表される二価の単位は、非イオン性フッ素化高分子界面活性剤の総重量を基準にして、30重量%〜65重量%(幾つかの実施形態では、35重量%〜60重量%、あるいは45重量%〜55重量%)の範囲内で存在する。
【0035】
本発明の非イオン性フッ素化高分子界面活性剤は、独立して式IIで表される二価の単位を含む。
【0036】
【化6】

【0037】
は、水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、又はsec−ブチル)である。幾つかの実施形態では、Rは水素である。幾つかの実施形態では、Rはメチルである。
【0038】
は、16〜24個(幾つかの実施形態では、18〜22個)の炭素原子を有するアルキルである。
【0039】
独立して化学式IIで表される二価の単位は、非イオン性フッ素化高分子界面活性剤の総重量を基準にして、35重量%〜70重量%(幾つかの実施形態では、40重量%〜65重量%、あるいは45重量%〜55重量%)の範囲内で存在する。
【0040】
本発明の非イオン性フッ素化高分子界面活性剤の幾つかの実施形態では、独立して化学式Iで表される二価の基及び独立して化学式IIで表される二価の基は、ランダム共重合される。
【0041】
本発明の非イオン性フッ素化高分子界面活性剤は、例えば、典型的には連鎖移動剤及び反応開始剤の存在下で、少なくとも第1のモノマー及び第2のモノマーを含有する混合物を共重合させることによって調製してよい。用語「共重合すること」とは、第1のモノマー及び第2のモノマーのそれぞれによって、少なくとも1つの特定可能な構造要素を含むポリマー又はオリゴマーを形成することを意味する。典型的には、形成された前記ポリマー又はオリゴマーは、分子量分布及び組成分布を有する。
【0042】
第1のモノマーは、式IIIで表されるフッ素化フリーラジカル重合性アクリレートモノマーの少なくとも1つであり、
【0043】
【化7】

【0044】
式中、Rf、R、及びnは、化学式Iについて上述したようなものである。
【0045】
第2モノマーは、式IVで表される脂肪族フリーラジカル重合性モノマーの少なくとも1つであり、
【0046】
【化8】

【0047】
式中、R及びRは、化学式IIについて上述したようなものである。
【0048】
式IIIのフッ素化フリーラジカル重合性アクリレートモノマー、及びそれらの調製方法は、当技術分野において既知である(例えば、米国特許第2,803,615号(アルブレヒト(Albrecht)ら)及び米国特許第6,664,354号(サヴュー(Savu)ら)(これらの開示は、フリーラジカル重合性モノマー類及びそれらの調製方法に関し、本明細書に参考として組み込まれる。)を参照のこと。上記参考文献に記載されているノナフルオロブタンスルホンアミド基含有構造体の製造方法は、例えば、米国特許第2,732,398号(ブライス(Brice)ら)(その開示は、参考として本明細書に組み込まれている)の実施例2及び3に記載されている方法によって製造することができるヘプタフルオロプロパンスルホニルフルオライドを出発物質として、ヘプタフルオロプロパンスルホンアミド基を製造するために使用することができる。
【0049】
式IVの化合物(例えば、ヘキサデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルメタクリレート)は、例えば、幾つかの化学物質製造業者(例えば、シグマ−アルドリッチ社(Sigma-Aldrich Company)(ウィスコンシン州ミルウォーキー));VWRインターナショナル社(ペンシルベニア州ウエストチェスター);モノマー−ポリマー&ダジャック・ラボ社(Monomer-Polymer & Dajac Labs)(ペンシルベニア州フェスターヴィル(Festerville));アボカド・オーガニックス社(Avocado Organics)(マサチューセッツ州、ワードヒル);及びチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals)(スイス、バーゼル))から入手可能であり、あるいは、従来法にて合成してもよい。幾つかの式IVの化合物は、単一化合物の単一異性体(例えば、直鎖異性体)として入手可能である。その他の式IVの化合物は、例えば、異性体類の混合物(例えば、直鎖及び分岐鎖異性体類)化合物類の混合物(例えば、ヘキサデシルアクリレート及びオクタデシルアクリレート)、及びこれらの組み合わせとして入手可能である。
【0050】
幾つかの実施形態では、2つ以上の第1のモノマー及び/又は2つ以上の第2のモノマーの混合物(例えば、ステアリルメタクリレート及びベヘニルメタクリレート)を使用することが可能である。その他の実施形態では、1つの第1のモノマー及び1つの第2のモノマーを使用することが可能である。
【0051】
少なくとも1つの第1のモノマーと少なくとも1つの第2のモノマーとの重合は、典型的には、添加したラジカル反応開始剤の存在下で実施される。当該技術分野において広く知られかつ使用されているようなフリーラジカル反応開始剤を使用して、構成成分の重合を開始させてよい。ラジカル反応開始剤の例としては、アゾ化合物類(例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、又はアゾ−2−シアノバレリアン酸)、ヒドロペルオキシド類(例えば、クメン、t−ブチル又はt−アミルヒドロペルオキシド)、ジアルキルペルオキシド類(例えば、ジ−t−ブチル又はジクミルペルオキシド)、ペルオキシエステル類(例えば、t−ブチルペルベンゾエート又はジ−t−ブチルペルオキシフタレート)、ジアシルペルオキシド類(例えば、過酸化ベンゾイル又はラウリルペルオキシド)が挙げられる。有用な光開始剤類としては、ベンゾインエーテル類(例えば、ベンゾインメチルエーテル又はベンゾインブチルエーテル);アセトフェノン誘導体類(例えば、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン又は2,2−ジエトキシアセトフェノン);並びにアシルホスフィンオキシド誘導体類及びアシルホスホネート誘導体類(例えば、ジフェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド、イソプロポキシフェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド、又はジメチルピバロイルホスホネート)が挙げられる。加熱時又は光分解時に、このようなラジカル反応開始剤は分解してラジカルを生成し、それがエチレン系不飽和結合に添加され、重合を開始する。
【0052】
重合反応は、有機ラジカル重合に好適な任意の溶媒中で実施してよい。構成成分は、任意の好適な濃度(例えば、反応混合物の総重量を基準として、約5重量%〜約90重量%)にて、溶媒中に存在してよい。好適な溶媒類の例示的実施例としては、脂肪族及び脂環式炭化水素類(例えば、ヘキサン、ヘプタン、及びシクロヘキサン)、芳香族溶媒類(例えば、ベンゼン、トルエン、及びキシレン)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、グリム、ジグリム、及びジイソプロピルエーテル)、エステル類(例えば、エチルアセテート及びブチルアセテート)、アルコール類(例えば、エタノール及びイソプロピルアルコール)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド)、アミド類(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミド)、ハロゲン化溶媒類(例えば、メチルクロロホルム、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン、トリクロロエチレン、及びトリフルオロトルエン)、並びにこれらの混合物が挙げられる。幾つかの実施形態では、本発明の非イオン性フッ素化高分子界面活性剤は、少なくとも1つのエステル溶媒(例えば、エチルアセテート及びブチルアセテート)中にて実施される重合反応によって調製される。
【0053】
重合は、有機ラジカル反応を実施するのに好適な任意の温度で行うことができる。特定の用途のための温度及び溶媒は、特定の反応開始剤及び所望の分子量の使用のために必要とされる、剤の溶解度、温度などの考慮に基づいて、当業者が選択することができる。全ての反応開始剤及び全ての溶媒に好適な特定の温度を列挙することは現実的ではないが、一般に、好適な温度は、約30℃〜約200℃(幾つかの実施形態では、約40℃〜約100℃、あるいは約50℃〜約80℃)の範囲である。
【0054】
ラジカル重合は、連鎖移動剤の存在下で実施してもよい。本発明の非イオン性フッ素化高分子界面活性剤の調製に使用してよい典型的連鎖移動剤としては、ヒドロキシル置換メルカプタン類(例えば、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−2−ブタノール、3−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−1−プロパノール、及び3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(即ち、チオグリセロール));アミノ置換メルカプタン類(例えば、2−メルカプトエチルアミン);二官能性メルカプタン類(例えば、ジ(2−メルカプトエチル)スルフィド);並びに脂肪族メルカプタン類(例えば、オクチルメルカプタン及びドデシルメルカプタン)が挙げられる。
【0055】
例えば、当該技術分野において既知の技術を使用して、反応開始剤の濃度及び活性度、各モノマーの濃度、温度、連鎖移動剤の濃度、及び溶媒を調整することによって、ポリアクリレートコポリマーの分子量をコントロールすることができる。
【0056】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、液状炭化水素を含む。好適な液化炭化水素としては、原油;精製炭化水素類(例えば、ガソリン、ケロセン、及びディーゼル);パラフィン系及びイソパラフィン系炭化水素類(例えば、ペンタン類、ヘキサン類、ヘプタン類、高級アルカン類、並びにトータル・フィナ社(TotalFina)(フランス、パリ)から、商標名「イサーン(ISANE)IP 130」及び「イサーン(ISANE)IP 175」にて入手され、及びエクソン・モービル・ケミカル社(Exxon Mobil Chemicals)(テキサス州ヒューストン)から、「イソパール(ISOPAR)」の商標名で入手される、)イソパラフィン系溶媒類;鉱油;リグロイン;ナフテン類;芳香族化合物類(例えば、キシレン及びトルエン);天然ガス縮合物類;並びにこれらの組み合わせ(混和性又は不混和性のいずれか)が挙げられる。幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、ケロセンを含む。幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、ディーゼルを含む。
【0057】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は発泡体である。本発明の発泡体の安定性(即ち、発泡体半減期)及びその他の性質(例えば、発泡体膨張)当該技術分野において既知の技術を使用して測定できる。(アルム、R.R.ら(Alm, R. R. et al.)著、「ケミカル・タイムズ&トレンド(Chemical Times & Trends)」(1986年、4月号、40〜48ページ)参照のこと。本願において、発泡体半減期は、非イオン性フッ素化高分子界面活性剤の1重量%ケロセン溶液の約200mLを、ホバート社(Hobart)(オハイオ州トロイ)から入手したフードミキサー(型式N−50)のボウル内に置くこと;及び当該溶液を22℃にて3分間中速(300rpm)にて、針金製泡立て器アタッチメントを使用して混合すること;によって決定される。次に、得られた発泡体を直ちに、「ナルジーン(NALGENE)」高密度ポリプロピレンから作製され、かつ内径約8cm及び高さ約52cmを有する2000mLメスシリンダー(VWRインターナショナル社から入手した)内に注ぎ込んで、発泡体の膨張及び発泡体半減期を測定する。液体の半分が、発泡体から排出される(即ち、液体の初期容量の半分が提供される)のに必要な時間を測定し、発泡体半減期を得る。発泡体膨張とは、発泡後に得られた体積を発泡前の液体の体積で除したものを意味する。発泡体インデックスは、発泡体膨張率(foam expansion)を発泡体半減期と乗じることによって計算する。
【0058】
幾つかの実施形態では、本発明の非イオン性フッ素化高分子界面活性剤は、意外にも、その他のフッ素化した二価の単位を含む非イオン性高分子界面活性剤よりもより長寿命の発泡体(例えば、式V(式中、Rf、R、及びnは、式Iの二価の単位について上述したようなものである)で表されるフッ素化した二価の単位)を提供する。
【0059】
【化9】

【0060】
典型的に、かつ意外にも、本発明の非イオン性フッ素化高分子界面活性剤は、より小さな分子量を有する非イオン性フッ素化高分子界面活性剤よりもより長寿命の発泡体を提供することが観察されてきた。幾つかの実施形態では、本発明の非イオン性フッ素化高分子界面活性剤は意外にも、二価の単位(独立して化学式IIで表され、式中、Rは14個未満の炭素原子を有するアルキルである)を含む非イオン性高分子界面活性剤よりもより長寿命の発泡体を提供する。
【0061】
通常は、本発明の組成物(例えば、発泡体)としては、組成物の全重量を基準にして、少なくとも0.01重量%、0.015重量%、0.02重量%、0.025重量%、0.03重量%、0.035重量%、0.04重量%、0.045重量%、0.05重量%、0.055重量%、0.06重量%、0.065重量%、0.07重量%、0.075重量%、0.08重量%、0.085重量%、0.09重量%、0.095重量%、0.1重量%、0.15重量%、0.2重量%、0.25重量%、0.5重量%、1重量%、1.5重量%、2重量%、3重量%、4重量%、又は5重量%〜5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、又は10重量%以下の少なくとも1つの本発明の非イオン性フッ素化高分子界面活性剤が挙げられる。例えば、発泡体中の非イオン性フッ素化高分子界面活性剤の量は、組成物の総重量を基準として、0.01重量%〜10重量%、0.1重量%〜10重量%、0.1重量%〜5重量%、1重量%〜10重量%の範囲あるいは1重量%〜5重量%の範囲であってよい。幾つかの実施形態では、非イオン性フッ素化高分子界面活性剤は、組成物の総重量を基準として、0.3重量%〜0.5重量%の範囲で存在する。より少量及びより大量の非イオン性フッ素化高分子界面活性剤を組成物(例えば、発泡体)中にて使用してもよく、かつ幾つかの用途のために望ましい場合がある。
【0062】
液状炭化水素を含む組成物及び本発明の非イオン性フッ素化高分子界面活性剤中に気泡(例えば、窒素、二酸化炭素、及び空気)を形成することは、種々のメカニズム(例えば、機械的及び化学的メカニズム)を使用して実施することができる。有用な機械的発泡メカニズムとしては、組成物をかき混ぜること(例えば、振盪、撹拌、及び泡立て)、組成物中へガスを注入すること(例えば、組成物表面の下にノズルを挿入し、組成物中へガスを吹き込むこと)並びにこれらの組み合わせが挙げられる。有用な化学的発泡メカニズムとしては、化学反応(組成物成分(例えば、熱分解によってガスを放出する成分)の分解)によるガスのその場発生、組成物成分(例えば、液体ガス)を蒸発させること、及び組成物の圧力を下げること又は組成物を加熱することによって組成物中のガスを揮発させることが挙げられる。本発明の発泡体及び/又は本発明の方法より調製される発泡体は、全発泡体体積の10%〜90%の範囲の容積比にて気泡を含む。
【0063】
例えば、井戸の箇所(あるいは井戸の先端にて)で発泡体を形成するために、当該技術分野において既知の幾つかの方法の1つを使用して、液化炭化水素中で気泡を混合することができる。そのような方法としては、米国特許第3,463,231号(ハチソン(Hutchison)ら)及び米国特許第3,819,519号(シャルマン(Sharman)ら)記載されるようなものが挙げられ、その開示は、発泡体生成方法に関しては、本明細書に参考として組み込まれる。
【0064】
少なくとも1つの亀裂をその中に開けるための炭化水素を含む地下地層の処理技術は、当技術分野において既知である。このような破砕は通常、岩石強度を上回りかつ井戸の周囲の炭化水素を産出する地層中に高伝導性の亀裂又は溝を開けるだけの速度と圧力にて、流体(例えば、発泡体)を注入することによって行う。本発明の方法を使用して、天然又は人口のリザーバからの炭化水素(例えば、油及びガス)の抽出を増やすことができる。破砕流体として用いるのに適した液化炭化水素は、「プラチナ(PLATINUM)」、「TG−740」、「SF−770」、「SF−800」、「SF−830」、及び「SF−840」の商標名にて、シンオイル社(SynOil)(カナダ、アルバータ州カルガリー)から入手可能である。
【0065】
幾つかの実施形態では、本発明の炭化水素を含む地下地層の処理方法は、その中に少なくとも1つの亀裂を開けるのに十分な速度及び圧力にて発泡体を層に注入することにより形成された亀裂内へ、複数個のプロパント粒子を注入することを更に含む。形成された亀裂が閉じないように、それによりそれを通して、層内の炭化水素が流れることができる導電性チャネルを維持するように、プロパント粒子を注入した。断裂地下地層内へのプロパント粒子の注入技術は、当技術分野において既知である。幾つかの実施形態では、複数のプロパント粒子を注入する工程及び発泡体を注入する工程は、例えば、プロパント粒子及び発泡体を層へ注入するに先立って組み合わせる工程により、同時に実施される。幾つかの実施形態では、本発明の発泡体組成物は、複数のプロパント粒子を更に含む。幾つかの実施形態では、複数のプロパント粒子の注入は、発泡体注入後に実施される。
【0066】
強化石油回収用の発泡体の使用方法は、当技術分野において既知である。本発明の発泡体を使用して、層から炭化水素を置換し又は押すことができる。前記発泡体は更に、層のより浸透性の領域をブロックして、層のより浸透性の小さい領域へと注入したガス又は流体の向きを変え、そこで炭化水素を捕捉するために使用してもよい。発泡体は、本発明の非イオン性フッ素化高分子界面活性剤及び液状炭化水素を含む組成物を、地下地層に導入し、それによって、層内のガス移動度を下げることによる層ガスダウンホール(formation gases downhole)により形成することができる。その他の強化石油回収方法は、米国特許第6,105,672号(デロイテル(Deruyter)ら)、米国特許第6,227,296号(レパート(Reppert)ら);及び米国特許第5,834,406号(シダンスク(Sydansk))に記載されており、その開示は、本明細書に参考として組み込まれる。
【0067】
各種操作(例えば、坑井の洗浄、坑井への砂利充填、及び坑井のセメント付け)(多くの場合仕上げ作業と称される)を使用して、生産用炭化水素産出井を準備する。仕上げ作業実施のための地下地層の坑井内への発泡体導入技術は、当技術分野において既知である(例えば、米国特許第7,066,262号(ファンクハウザー(Funkhouser))(その開示は、参考として本明細書に組み込まれている)を参照のこと)。幾つかの実施形態では、本発明の発泡体は、複数の砂利粒子を更に含む。懸濁砂利粒子を含有する発泡体を使用して、砂利粒子を坑井(例えば、ほぼ非成層の又は弱成層の砂)内の所望の領域へ送達して、砂の制御を向上させるための砂利パックを形成することが可能である。
【0068】
炭化水素を含む地下地層内での地下井採掘における発泡体使用技術は、当技術分野において既知である(例えば、米国特許第7,033,975号(バラン(Baran)ら))(その開示は、参考として本明細書に組み込まれている)を参照のこと)。本発明の発泡体は、例えば、井戸の先端にて界面活性剤溶液及びガスの供給から、市販の混合装置を使用して、坑井を掘削が行われている領域までポンプダウンして、通常はドリルストリングの真ん中へとポンプダウンし、かつ一般に、ドリルストリングと掘削ヘッド周辺の坑井壁との間の輪形隙間へとポンプアウトして、掘削くずを包んで、それらを輪形隙間の上井戸の先端へ移送することができる。次に、堀くずは、発泡体から分離して、廃棄できる。浸透性の層におけるほとんどの削井用途では、掘削流体圧力は、井戸の間隙圧と周囲の井戸層の破砕圧力との間で維持しれなければならない。流体圧力が低すぎると、層の流体は、坑井又は環から流体を押し出して、キック又はブローアウトをもたらす。流体圧力が高すぎると、坑井に隣接した層に亀裂が生じ、流体循環の損失並びに流体及び堀くずが損失し、破壊する可能性がある。液状炭化水素掘削流体は、「シンドリル(SYNDRIL)」の商標名でシンオイル社(SynOil)から、及び「カルボ−ドリル(CARBO-DRILL)」及び「カルボ−コア(CARBO-CORE)」の商標名にてベーカー・ヒューズ(Baker Hughes)社(テキサス州ヒューストン)から得ることができる。
【0069】
本発明の方法においては、用語「井戸」及び「坑井」は、産出井、非産出井、注入井、流体廃棄井、試掘井戸、及び探鉱井を包含する。井戸及び坑井は、垂直、水平、垂直と水平との間で数度振れた角度、並びにこれらの組み合わせ(例えば、非垂直構成要素を持つ垂直井)であり得る。用語「導入する工程」とは、当該技術分野において既知の任意の好適方法を使用して、井戸、坑井、又は地下地層中に発泡体をポンピングする工程、注入する工程、注ぐ工程、放出する工程、置換する工程、スポッティング工程、循環させる工程、又は別の方法で置くこと、を包含する。
【0070】
種々の駆動部(例えば、モーター、タービン、及び発電機)を用いる種々のポンピングシステム(例えば、容積式及び渦巻ポンプ)を、本発明の方法を実施するに際して使用してもよい。
【0071】
好適なプロパント及び本発明を実施する際に有用な砂利粒子としては、グレイデッドクルミ殻、その他グレーデッドナッツ殻、樹脂コーティングされたクルミ殻、その他樹脂コーティングされたナッツ殻、グレイデッド砂、樹脂コーティングされた砂、焼結ボーキサイト、粒子状セラミック材料、ガラスビーズ、及び粒子状熱可塑性材料が挙げられる。砂粒子は、例えば、バッジャー・マイニング社(Badger Mining Corp.)(ウィスコンシン州ベルリン);ボーデン・ケミカル社(Borden Chemical)(オハイオ州コロンバス);フェアモント・ミネラルズ社(Fairmont Minerals)(オハイオ州シャルドン)から入手可能である。熱可塑性粒子は、例えば、ダウケミカル社(Dow Chemical Company)(ミシガン州ミッドランド)及びBJ・サービス社(BJ Services)(テキサス州ヒューストン)から入手可能である。粘土系粒子は、例えば、カルボセラミックス社(CarboCeramics)(テキサス州アービング);及びサンゴバン社(Saint-Gobain)(フランス、クルブヴォア(Courbevoie))から入手可能である。焼結ボーキサイトセラミック粒子は、例えば、ボロヴィチ・リフラクトリーズ社(Borovichi Refractories)(ロシア、ボロヴィチ);3M社(ミネソタ州セントポール);カルボセラミックス社(CarboCeramics);及びサンゴバン社(Saint Gobain)から入手可能である。ガラスビーズは、例えば、ダイヴァーシファイド・インダストリー社(Diversified Industries)(カナダ、ブリティッシュコロンビア州、シドニー);及び3M社から入手可能である。用いた粒子のサイズは、例えば、地下層の特性に依存し得る。一般に、好適な微粒子サイズは、約2〜約200メッシュ(U.S.シーブ・シリーズ・スケール)の範囲で変化し得る。
【0072】
幾つかの実施形態では、本発明の発泡体及び/又は本発明に従って調製された発泡体は更に、ゲル化剤(例えば、リン酸エステル)を含む。これらの実施形態の幾つかでは、発泡体は更に、ゲル化剤のための活性化剤(例えば、多価金属イオンの供給源)を含む。通常は、ゲル化剤を使用する実施形態では、本発明を実施する際に有用な液化炭化水素は、ゲル化剤(例えば、リン酸エステル)、活性化剤(例えば、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、又はアルミニウムイソプロポキシド)、及び非イオン性高分子界面活性剤と組み合わされ、得られた混合物は発泡体へ転換され、地下地層中へ注入される。本発明を実施する際に有用なゲル化剤及び活性化剤は、例えば、米国特許第4,622,155号(ハリス(Harris)ら)、及び米国特許第5,846,915号(スミス(Smith)ら)に記載されており、その開示は、本明細書に参考として組み込まれる。ゲル化剤を使用する幾つかの実施形態では、好適なブレーカが発泡体中に含まれ、又は発泡体へ添加されて、処置用発泡体の粘度が最終的には低下して、例えば、それを所望の時間にて地下層から回収するようにしてよい。好適なブレーカとしては、例えば、米国特許第7,066,262号(ファンクハウザー(Funkhouser))(その開示は、参考として本明細書に組み込まれている)に記載されるものが挙げられる。
【0073】
本発明の非イオン性フッ素化高分子界面活性剤はまた、例えば、撥油及び/又は撥水処理を基材(繊維性基材、例えば、繊維、不織のもの、カーペット、及び革を包含する)へ送達する発泡体中にて有用であってもよい。非イオン性フッ素化高分子界面活性剤は、その他の従来の適用方法を使用して、撥油及び/又は撥水処理としても適用することができる。フッ素化ポリマー並びに撥油及び/又は撥水処理の処方において有用な溶媒及び添加剤による基材処理方法は、当技術分野において既知である(例えば、米国特許出願公開第2005/0027063号(オーデネルト(Audenaert)ら))(その開示は、参考として本明細書に組み込まれている)を参照のこと)。基材に撥液性を提供することができる本発明の非イオン性フッ素化高分子界面活性剤の有用な量は通常、当該基材の重量を基準にして、0.01重量%〜10重量%(幾つかの実施形態では、0.05重量%〜3.0重量%、あるいは0.1重量%〜1.0重量%)の範囲で変動する。
【0074】
本発明の非イオン性フッ素化高分子界面活性剤はまた、基材表面に対するより良き濡れ性及び/若しくはレベリング性又はコーティング配合物内での構成成分(例えば、増粘剤又は色素)のより良き分散性を提供する工業的コーティング添加剤としても有用であり得る。工業的コーティング配合物としては通常、少なくとも1つのポリマー材料(例えば、膜形成ポリマー)及び少なくとも1つの溶媒(例えば、メチルエチルケトン及び1−メトキシ−2−プロパノール)が挙げられる。コーティング配合物を基材に適用した際、溶剤は蒸発し、及びポリマー粒子が合着して、連続的なフィルムを形成する。コーティング配合物は通常、適用され、乾燥され、所望により加熱されて、完成品に固体コーティングが残る。本発明のフッ素化界面活性剤を添加することにより、コーティングが基材を濡らす能力が向上することによって、及び/又はフィルム形成中の溶剤の均一な蒸発(即ち、レベリング)によって、幾つかの配合物のフィルム形成特性が改善される場合がある。
【0075】
コーティング配合物のための好適な膜形成ポリマーの例としては、アクリルポリマー類(例えば、ポリ(メチルメタクリレート−コ−エチルアクリレート)及びポリ(メチルアクリレート−コ−アクリル酸));ポリウレタン類(例えば、脂肪族、脂環式又は芳香族ジイソシアネート類と、ポリエステルグリコール類又はポリエーテルグリコール類との反応生成物);ポリオレフィン類、(例えば、ポリスチレン);スチレンとアクリレート(類)とのコポリマー類(例えば、ポリ(スチレン−コ−ブチルアクリレート);ポリエステル類(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートイソフタレート、及びポリカプロラクトン);ポリアミド類(例えば、ポリヘキサメチレンアジパミド);ビニルポリマー類(例えば、ポリ(ビニルアセテート/メチルアクリレート)及びポリ(ビニリデンクロライド/ビニルアセテート);ポリジエン類(例えば、ポリ(ブタジエン/スチレン));セルロースエーテル類及びセルロースエステル類を包含するセルロース誘導体類(例えば、エチルセルロース及びセルロースアセテート/ブチレート)、並びにウレタン−アクリレートコポリマー類が挙げられる。このようなポリマー類は、例えば、民間の供給元から入手可能であり、あるいは当該技術分野において既知の方法及び出発材料を使用して調製してもよい。
【0076】
用途によっては、コーティング配合物としては更に、少なくとも1つの添加剤(例えば、殺生物剤、充填剤、追加のレベリング剤、乳化剤、消泡剤、腐食防止剤、分散剤、及びさび止め剤)も挙げられる。配合物は、少なくとも1つの色素もまた所望により含有してよい。
【0077】
本発明のフッ素化界面活性剤を添加することにより改良され得るコーティング配合物としては、床磨き剤及び仕上げ剤、種々の基材のため(例えば、木の床)のワニス、写真用フィルム、自動車用又は船舶用コーティング(例えば、プライマー、ベースコート、及びトップコート)の製造において適用されるゲル、多孔質基材(例えば、木材、コンクリート、及び天然石)のためのシーラー、プラスチックレンズのためのハードコート、金属基材(例えば、缶、コイル、電子コンポーネント、及び標識)のためのコーティング、インク(例えば、ペン及びグラビア、スクリーン印刷及び熱印刷のためのもの)、並びに電子デバイスの製造において使用されるコーティング(例えば、フォトレジストインク)が挙げられる。配合物は、透明であっても又は色素で着色されていてもよい。コーティング配合物は、当業者に既知の多くの方法(例えば、ブラシ掛け、モップ掛け、バーコーティング、噴霧、ディップコーティング、グラビアコーティング、又はロールコーティング)によって適用されてよい。
【0078】
工業的コーティングのための配合物中で使用される場合、本発明の非イオン性フッ素化高分子界面活性剤は、溶液又は分散体の重量を基準にして、例えば、約0.001重量%〜約1重量%(幾つかの実施形態では、約0.001重量%〜約0.5重量%、あるいは約0.01重量%〜約0.3重量%)の最終濃度にて、溶液又は分散体へと処方することができる。
【0079】
本発明の実施形態及び利点を以下の非限定的な実施例により更に例示するが、これらの実施例の中で挙げた特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に限定するように解釈されるべきではない。
【0080】
別途注記のない限り、実施例及び本明細書の残部における全ての部分、割合、及び比率等は、重量による。
【実施例】
【0081】
重量平均分子量の決定
実施例2並びに例示的実施例12及び13の重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を使用して、線状ポリスチレンポリマー標準との比較により決定した。GPC測定は、ウォーターズ社製アライアンス2695システム(Waters Alliance 2695 system)(ウォーターズ社(Waters Corporation)(マサチューセッツ州ミルフォード)から入手)にて、10,000、1000、500及び100オングストロームのポアサイズを有する、5マイクロメートルのスチレンジビニルベンゼンコポリマー粒子(「PLGEL」の商標名でポリマー・ラボラトリーズ社(Polymer Laboratories)(英国シュロップシャー州)から入手可能)からなる4本の300ミリメートル(mm)×7.8ミリメートル・リニアカラムを使用して実施した。ウォーターズ社(Waters Corporation)製屈折率検出器(型式410)を40℃にて使用した。エチルアセテート中40%固形分のオリゴマーサンプル50ミリグラム(mg)を、テトラヒドロフラン10ミリリットル(mL)で希釈し(BHT250ppmにて阻害した)、0.45マイクロメートル注射器フィルターを通して濾過した。体積100マイクロリットルの試料をカラムに注入し、カラム温度は40℃であった。流速1mL/分を使用し、移動相はテトラヒドロフランであった。分子量の較正は、3.8×10グラム/モル〜580グラム/モルの範囲のピーク平均分子量を持つ狭分散性ポリスチレン標準を使用して実施した。較正及び分子量分布の計算は、分子量較正曲線に三次多項式フィットを使用した好適なGPCソフトウェアを使用して実施した。報告された各結果は、2回の注入の平均である。
【0082】
(実施例1)
窒素流下、N−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドエチルアクリレート(MeFBSEA)50g、オクタデシルメタクリレート50g(TCI社(日本、東京)から純度95%にて入手)、チオグリセロール0.2g(シグマ−アルドリッチ(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から入手)、及びエチルアセテート143gを、オーバーヘッド攪拌機、熱電対、及び還流凝縮器を装着した1Lフラスコに添加した。添加後、フラスコの内容物を、窒素のわずかな正圧下に維持した。J−Kem社製温度コントローラ(VWRインターナショナル社(ペンシルベニア州ウエストチェスター)から入手)を使用して温度設定値を65℃まで上げ、軽油/t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートの50/50混合物2.0g(「ルペロックス(LUPEROX)26M50」の商標名でアトフィナ社(Atofina)(ペンシルバニア州フィラデルフィア)から入手)を添加した。反応を15分間観察し、次に、温度コントローラを使用して温度設定値を70℃まで上げた。反応物を70℃にて一晩加熱し、室温まで冷却させた。
【0083】
MeFBSEAは、4,270kgのN−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドエタノール、1.6kgのフェノチアジン、2.7kgのメトキシヒドロキノン、1,590kgのヘプタン、1,030kgのアクリル酸、89kgのメタンスルホン酸(トリフルオロメタンスルホン酸に代えて)、及び7,590kgの水をパートBにて使用した以外は、参考として本明細書に組み込まれている米国特許第6,664,354号(サヴュー(Savu))の実施例2、パートA及びBの方法に従って製造された。
【0084】
発泡体安定性試験
実施例1の1重量%溶液は、エチルアセテート中41%固形分溶液をケロセン(アルファ・エイサー(マサチューセッツ州ワードヒル)から入手)で希釈して、溶液188mLを調製することによって準備した。前記溶液を、針金製泡立て器攪拌棒を装着したホバート社(Hobart)(オハイオ州トロイ)から入手したフードミキサー(型式N−50)のボウル内に入れ、次に、溶液を3分間300rpmにて室温(22℃)で攪拌した。得られた発泡体は、直ちに「ナルジーン(NALGENE)」高密度ポリプロピレン製で、内径約8cm及び高さ約52cmを有するメスシリンダー2000mL(VWRインターナショナル社から入手)へ移した。発泡体の体積はmLで測定し、発泡体膨張(即ち、188で除した発泡体体積)を記録した。発泡体体積を時間経過で観察し、液体94mLが存在する時間(即ち、発泡体半減期)を記録した。発泡体インデックス(即ち、発泡体膨張生成物及び発泡体半減期)を計算した。発泡体半減期、発泡体体積、及び発泡体インデックスが、下表1にて報告されている。
【0085】
【表1−1】

【0086】
【表1−2】

【0087】
ポリマーは、ケロセンに不溶性であった。したがって、発泡体を調製することはできなかった。
【0088】
2回の測定の平均値
比較実施例
(実施例2)
実施例2は、MeFBSEA250g、ステアリルメタクリレート250g(シグマ−アルドリッチ(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から入手)、チオグリセロール1.0g、軽油/t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートの50/50混合物(「ルペロックス(LUPEROX)26M50」)10.0g及びエチルアセテート715gを使用したことを除いて、実施例1の方法を使用して準備した。上述の試験方法を使用して、重量平均分子量は、1.28×10グラム/モルである(かつ数平均分子量が6.8×10グラム/モルである)と決定された。発泡体安定性試験は、実施例1に記載の如く実施し、結果は、下表1で報告されている。
【0089】
(実施例3〜7)、例示的実施例1〜11、及び比較実施例A〜B
実施例3〜7、例示的実施例1〜11、及び比較実施例A〜Bは、上記表1に示すモノマー及び量を使用した以外は、実施例1の方法を使用して、準備かつ試験した。
【0090】
ステアリルアクリレートは、VWRインターナショナル社から入手した。
【0091】
MeFBSEMAは、N−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドエタノール3420kg、フェノチアジン1.6kg、メトキシヒドロキノン2.7kg、ヘプタン1400kg、メタクリル酸980kg(アクリル酸に代えて)、メタンスルホン酸63kg(トリフルオロメタンスルホン酸に代えて)、及び水7590kgをパートBにて使用した以外は、参考として本明細書に組み込まれている米国特許第6,664,354号(サヴュー(Savu))、実施例2、パートA及びBの方法に従って調製した。
【0092】
ベヘニルメタクリレートは、「CIBA AGEFLEX FM22」の商標名でチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals)(スイス、バーゼル)から入手した。
【0093】
デシルメタクリレート及びヘキサデシルメタクリレートは、モノマー−ポリマー&ダジャック・ラボ社(Monomer-Polymer & Dajac Labs)(ペンシルベニア州フィースタービル(Feasterville))から入手した。
【0094】
ドデシルメタクリレートは、アボカド・オーガニックス社(Avocado Organics)(マサチューセッツ州、ワードヒル)から入手した。2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル−2−メチルアクリレート(FBMA)は、欧州特許第1311637号(サヴュー(Savu)ら)(2006年、4月5日公開)のパラグラフ47に記載されているようにして調製された。
【0095】
2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチル−2−メチルアクリレート(FOMA)は、「L−9179」の商標名にて3M社(ミネソタ州、セントポール)から入手した。
【0096】
N−エチルペルフルオロオクタンスルホンアミドエチルアクリレート(EtFOSEA)は、「FX−13」の商標名で3M社から入手した。
【0097】
実施例3〜7、例示的実施例1〜11、及び比較実施例A〜Bの発泡体試験結果は、上表1に示す。
【0098】
例示的実施例12
例示的実施例12では、重合をヘキサン中で実施した以外は、実施例3の方法を使用して調製しかつ試験した。上述の試験方法を使用して、得られたポリマーの重量平均分子量は、8.9×10グラム/モルである(及び数平均分子量が5.7×10グラム/モルである)と決定された。発泡体特性は、上表1に示す。
【0099】
例示的実施例13
減圧下(4×10Pa(300mmHg)にて))、N−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドエチルメタクリレート(MeFBSEMA)の50%エチルアセテート溶液154キログラム(kg)(340ポンド)を、ジャケット温度を21℃(70°F)に設定した284リットル(75ガロン)のステンレス鋼反応器へ添加し、溶液を80rpmにて攪拌した。真空を復活させ、ステアリルメタクリレート(ローム&ハース社(Rohm & Haas)(ペンシルベニア州フィラデルフィア)から入手)51kg(113ポンド)を反応器に添加した。真空を復活させ、チオグリセロール(エバンス・ケメティックス社(Evans Chemetics)(ニュージャージー州イスリン)から入手)276gとエチルアセテート0.9kg(2ポンド)との予混合溶液を反応器に添加し、続いてエチルアセテート104kg(229ポンド)を添加した。反応器を窒素圧力(3.4×10Pa(50psi))下に置き、反応器のジャケット温度を65℃(149°F)まで上げた。80rpmにて撹拌を続けながら、軽油/t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート(「ルペロックス(LUPEROX)26M50」)とエチルアセテート1.8kg(4ポンド)との50/50混合物の予混合溶液2.6kg(5.7ポンド)を添加した。反応混合物は、65℃(149°F)にて約27時間撹拌・加熱し、約32℃(90°F)まで冷却させ、2つの208リットル(55ガロン)ドラム及び1つの19リットル(5ガロン)バケツに抜き取った。得られた生成物溶液の重量は、292kg(645ポンド)であった。サンプルは、1時間105℃で加熱したが、この条件下では、モノマー及び溶媒は完全に揮発性であり、固形分41%であると決定された。上述の試験方法を使用して、重量平均分子量は、1.36×10グラム/モルである(及び数平均分子量が4.0×10グラム/モルである)と決定された。
【0100】
比較実施例C
窒素流下、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルアクリレート(NFA)(ダイキン化成品販売株式会社(Daikin Chemical Sales)(日本、大阪)から入手)10g、ドデシルメタクリレート(アボカド・オーガニックス社(Avocado Organics)から入手)6.7g、チオグリセロール0.03g、及びエチルアセテート33gを、オーバーヘッド攪拌機、熱電対、及び還流凝縮器を装着した1Lフラスコに添加した。添加後、フラスコの内容物を、窒素のわずかな正圧下に維持した。J−Kem社製温度コントローラ(VWRインターナショナル社から入手)を使用して温度設定値を65℃まで上げ、 軽油/t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートの50/50混合物(「ルペロックス(LUPEROX)26M50」)0.33gを添加した。反応を15分間観察し、次に、温度コントローラを使用して温度設定値を70℃まで上げた。反応物を70℃にて一晩加熱し、室温まで冷却させた。発泡体安定性試験は、実施例1に記載の如く実施し、結果は、上記表1で報告されている。
【0101】
比較実施例D〜F
比較実施例D〜Fは、上記表1に示すモノマー及び量を使用した以外は、比較実施例Cの方法を使用して、準備かつ検査した。3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル−2−メチルアクリレート(NFMA)は、インドファイン・ケミカル社(Indofine Chemical Co.)(ニュージャージー州ヒルズバラ)から入手した。
【0102】
比較実施例G
窒素流下、MeFBSEMA840g、ステアリルメタクリレート560g(シグマ−アルドリッチ社(Sigma-Aldrich)から入手)、チオグリセロール14.0g、及びエチルアセテート2000gを、オーバーヘッド攪拌機、熱電対、及び還流凝縮器を装着した5Lフラスコに添加した。添加後、フラスコの内容物を、窒素のわずかな正圧下に維持した。J−Kem社製温度コントローラ(VWRインターナショナル社から入手)を使用して温度設定値を73℃まで上げ、軽油/t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートの50/50混合物(「ルペロックス(LUPEROX)26M50」)84gを添加した。反応を15分間観察し、次に、温度コントローラを使用して温度設定値を78℃まで上げた。反応物を78℃にて6時間20分加熱し、室温まで冷却させた。サンプル125mgをテトラヒドロフラン中に溶解させ、カラムが室温であり、蒸発光散乱検出器(ポリマー・ラボラトリーズ社(Polymer Laboratories)から入手)を使用し、分子量の較正は、1.1×10グラム/モル〜160グラム/モルの範囲のピーク平均分子量を持つ狭分散性ポリスチレン標準を使用して実施した以外は、上述の試験方法を使用して、得られたポリマーの重量平均分子量は、1.5×10グラム/モルである(及び数平均分子量が9.1×10グラム/モルである)と決定された。発泡体安定性試験は、実施例1に記載の如く実施した。発泡体体積は1120mLであり、発泡体半減期は8.5分であり、発泡体インデックスは51であった。
【0103】
比較実施例H
8個のペルフルオロ化炭素原子を有するフッ素化繰返し単位を含む非イオン性高分子界面活性剤の1重量%溶液(3M社(ミネソタ州、セントポール)から、50%溶液として、「FC−740」の商標名で入手)を調製し、実施例1の方法に従って発泡させた。発泡体体積は1660mLであり、発泡体半減期は32分であり、発泡体インデックスは282であった。
【0104】
比較実施例I
比較実施例Iは、MeFBSEMA60g、オクタデシルメタクリレート20g及びメトキシで末端処理したポリエチレンオキシドアルコール(「カルボワックス(CARBOWAX)750」の商標名で、ユニオンカーバイド社(コネチカット州、ダンベリー)から入手)から調製したアクリレートモノマー20gを用いて、米国特許第3,728,151号(シェルマン(Sherman)ら)(その開示は、参考として本明細書に組み込まれている)の実施例17に記載されている手順を使用したことを除いて、実施例2の方法を使用して準備した。ポリマーは、ケロセンに不溶性であった。したがって、発泡体を調製することはできなかった。
【0105】
比較実施例J
比較実施例Jは、MeFBSEMA55g、オクタデシルメタクリレート40g及びアクリル酸5g(シグマ−アルドリッチ社(Sigma-Aldrich)から入手)を調製に使用したことを除いて、実施例2の方法を使用して準備しかつ試験した。発泡体安定性試験は、実施例1に記載の如く実施した。発泡体体積は1240mLであり、発泡体半減期は4.5分であり、発泡体インデックスは29.9であった。
【0106】
(実施例8〜11)
下表2に示すモノマー及び量を使用し、追加のエチルアセテート122gを反応時間終了時、室温まで冷却する前に添加した以外は、実施例1の方法に従って、実施例8〜11を準備しかつ試験した。実施例8〜11の発泡体試験結果は、下表2に示す。
【0107】
【表2】

【0108】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱せずに、本発明の様々な改良及び変更を当業者は実施できるであろう。そして、本発明は、本明細書に述べた例示的な実施形態に不当に制限されるものでないことが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも100,000グラム/モルの重量平均分子量を有する非イオン性フッ素化高分子界面活性剤であって、
独立して式Iで表される二価の単位
【化1】

(前記非イオン性フッ素化高分子界面活性剤の総重量を基準にして、30重量%〜65重量%の範囲で)と、
独立して式IIで表される二価の単位
【化2】

(前記非イオン性フッ素化高分子界面活性剤の総重量を基準にして、70重量%〜35重量%の範囲で)とを含み、
式中、
は、3〜4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基であり、
R及びRは各々独立して、水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、
は16〜24個の炭素原子を有するアルキル基であり、かつ
nは2〜11の整数である、非イオン性フッ素化高分子界面活性剤。
【請求項2】
式Iで表される二価の単位が、前記非イオン性フッ素化高分子界面活性剤の総重量を基準にして、45重量%〜55重量%の範囲内で存在する、請求項1に記載の非イオン性フッ素化高分子界面活性剤。
【請求項3】
が18〜22個の炭素原子を有するアルキルである、請求項1又は2に記載の非イオン性フッ素化高分子界面活性剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の非イオン性フッ素化高分子界面活性剤及び液状炭化水素を含む組成物。
【請求項5】
前記液状炭化水素が、ケロセン、ディーゼル、ガソリン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、鉱油、又はナフテンの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記非イオン性フッ素化高分子界面活性剤が、前記組成物の総重量を基準として、0.1重量%〜5重量%の範囲で存在する、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が発泡体である、請求項4〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記非イオン性フッ素化高分子界面活性剤の1重量%ケロセン溶液が、25℃にて少なくとも30分の発泡体半減期を有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
複数のプロパント粒子を更に含む、請求項7又は8に記載の組成物。
【請求項10】
ゲル化剤を更に少なくとも1つ含む、請求項7〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
液状炭化水素を含む発泡体の製造方法であって、
前記液状炭化水素及び少なくとも100,000グラム/モルの重量平均分子量を有する非イオン性フッ素化高分子界面活性剤を含む組成物を提供する工程であって、前記非イオン性フッ素化高分子界面活性剤が、
独立して式Iで表される二価の単位
【化3】

(前記非イオン性フッ素化高分子界面活性剤の総重量を基準にして、30重量%〜65重量%の範囲で)と、
独立して式IIで表される二価の単位
【化4】

(前記非イオン性フッ素化高分子界面活性剤の総重量を基準にして、70重量%〜35重量%の範囲で)とを含み、
式中、
は、3〜4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基であり、
R及びRは各々独立して、水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、
は16〜24個の炭素原子を有するアルキル基であり、かつ
nは2〜11の整数である、組成物を提供する工程、及び
気泡を前記組成物中に形成して、前記発泡体を製造する工程を含む、製造方法。
【請求項12】
炭化水素を有する地下地層を処理する方法であって、
炭化水素を有する前記地下地層へ発泡体を導入する工程を含み、前記発泡体が、液状炭化水素及び請求項1〜3のいずれか一項に記載の非イオン性フッ素化高分子界面活性剤を含む、処理する方法。
【請求項13】
前記発泡体を導入する工程が、炭化水素を有する前記地下地層へ、そこに少なくとも1つの亀裂を開けるのに十分なだけの速度及び圧力にて、前記発泡体を注入する工程を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
複数のプロパント粒子を前記亀裂内へ注入する工程を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記地下地層が、少なくとも1つの注入井及び少なくとも1つの生産井を有し、及び、炭化水素を有する前記地下地層へ前記発泡体を導入する工程が、前記注入井を通して前記発泡体を注入する工程を含む、請求項12に記載の方法であって、
前記発泡体により前記地下地層内の前記炭化水素の少なくとも一部を移動させる工程を更に含む、方法。
【請求項16】
前記生産井から、前記炭化水素の少なくとも一部を回収する工程を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
掘削装置を使用して、炭化水素を有する前記地下地層に井戸を掘る工程と、
前記発泡体を介して、掘削くずを運搬する工程とを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記地下地層が、坑井によって貫通され、及び前記発泡体が前記地下地層の前記坑井に導入される、請求項12に記載の方法であって、
前記地下地層の前記坑井内にて仕上げ作業を実施する工程を更に含む、方法。
【請求項19】
前記仕上げ作業が、前記坑井に砂利を充填する工程、前記坑井を洗浄する工程、又は前記坑井をセメント付けする工程のうちの少なくとも1つである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記液状炭化水素が、ケロセン、ディーゼル、ガソリン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、鉱油、又はナフテンの少なくとも1つである、請求項12〜19のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2010−516451(P2010−516451A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546530(P2009−546530)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/051409
【国際公開番号】WO2008/089391
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】