説明

フッ素含有化合物

【課題】高温耐熱性、柔軟性、低Tg、透明性、耐熱黄変性等の物性を保有する硬化物を形成可能な化合物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表されるフッ素含有化合物。式(1)中、Rfはn価のフッ素化炭化水素基、nは1以上の整数。R1〜R3は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基又は下記式(2)で表される基である。式(2)中、Ra〜Reは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、mは0〜3の整数である。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素含有化合物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高耐熱・高耐電圧の半導体装置において半導体素子を被覆する材料として、150℃以上の耐熱性を有する材料が求められている。特にLED素子などの光学材料を被覆する材料としては、耐熱性に加えて、柔軟性、透明性、耐熱黄変性、耐光黄変性、高屈折率等の物性を備えることが求められている。
【0003】
耐熱性が高く熱放散性の良い材料として、シロキサン(Si−O−Si結合体)による橋かけ構造を有する少なくとも1種の第1の有機珪素ポリマーと、シロキサンによる線状連結構造を有する少なくとも1種の第2の有機珪素ポリマーとを、シロキサン結合により連結させた、分子量が2万から80万である第3の有機珪素ポリマーの1種以上を含有する合成高分子化合物が報告されている(特許文献1)。しかしながら、これらの材料の物性は、未だ満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−206721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ヒドロシリル化反応が可能となる付加硬化型架橋官能基が導入された新規なフッ素含有化合物を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記フッ素含有化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ヒドロシリル化反応が可能となる付加硬化型架橋官能基が導入されたフッ素含有化合物が、硬化した場合に、高温耐熱性、柔軟性、低Tg、透明性、耐熱黄変性等の物性を保有することを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記式(1)
【化1】

[式中、Rfはn価のフッ素化炭化水素基、nは1以上の整数を示し、nが2以上の場合、n個の括弧内の基は、同一であっても異なっていてもよい。R1〜R3は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基又は下記式(2)
【化2】

(式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Reは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。mは、0〜3の整数を示す。)
で表される基を示す。但し、R1〜R3の少なくとも1つは、水素原子又は上記式(2)で表される基である。]
で表されることを特徴とするフッ素含有化合物を提供する。
上記フッ素含有化合物において、Rfは、下記式(3)
【化3】

(式中、n1は1〜4の整数、n2は1〜10の整数、n3は1〜4の整数を示す。)
で表される2価のフッ素化炭化水素基であることが好ましい。さらに、n1=1、n2=3、n3=1、m=0であることが好ましい。好ましくは、上記フッ素含有化合物は、0〜90℃のいずれかの温度において液体である。
また、本発明は、塩基の存在下、下記式(4)
【化4】

(式中、Rfはn価のフッ素化炭化水素基、nは1以上の整数を示す。)
で表されるヒドロキシ化合物と、下記式(5)
【化5】

[式中、Xはハロゲン原子を示す。R1〜R3は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基又は下記式(2)
【化6】

(式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Reは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。mは、0〜3の整数を示す。)
で表される基を示す。但し、R1〜R3の少なくとも1つは、水素原子又は上記式(2)で表される基である。]
で表されるシラン化合物とを反応させて、下記式(1)
【化7】

(式中、Rf、n、R1〜R3は上記と同じ。nが2以上の場合、n個の括弧内の基は、同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるフッ素含有化合物を得ることを特徴とする、フッ素含有化合物の製造方法を提供する。
上記製造方法において、Rfは、下記式(3)
【化8】

(式中、1は1〜4の整数、n2は1〜10の整数、n3は1〜4の整数を示す。)
で表される2価のフッ素化炭化水素基であることが好ましい。さらに、n1=1、n2=3、n3=1、m=0であることが好ましい。また、好ましくは、塩基は有機塩基である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の新規なフッ素含有化合物は、ヒドロシリル化反応が可能となる付加硬化型架橋官能基が導入されているため、フッ素及び珪素含有架橋官能基を持つ化合物のバリエーションが拡大し、そのアプリケーションに変化を起こすことができる。本発明の新規なフッ素含有化合物によれば、高温耐熱性、柔軟性、低Tg、透明性、耐熱黄変性等の物性を保有する硬化物が得られる。本発明のフッ素含有化合物は、高温耐熱性、柔軟性、低Tg、透明性、耐熱黄変性等の物性を保有するLED等の半導体素子の封止材として使用できる。
また、本発明のフッ素含有化合物の製造方法によれば、上記新規なフッ素含有化合物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[フッ素含有化合物]
本発明のフッ素含有化合物は、下記式(1)
【化9】

で表されることを特徴とする。上記式(1)中、Rfはn価のフッ素化炭化水素基、nは1以上(例えば1〜6)の整数を示し、nが2以上の場合、n個の括弧内の基は同一であっても異なっていてもよい。本発明のフッ素含有化合物は、ヒドロシリル化反応が可能となる付加硬化型架橋官能基が導入され、固体、液体、気体の状態をとることが考えられるが、好ましくは、常圧で、0〜90℃のいずれかの温度において液状を呈している。さらに好ましくは、常圧で、10〜40℃のいずれかの温度において液状を呈し、特に、常温常圧(1atm、25±5℃)にて液状を呈することが好ましい。融点としては、90℃以下が好ましく、40℃以下がさらに好ましく、0℃以下が特に好ましい。ヒドロシリル化反応が可能となる付加硬化型架橋官能基とは、エチレン性不飽和二重結合を有する基、またはSi−H結合を有する基を指す。
【0010】
<R1〜R3
上記式(1)におけるR1〜R3は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基又は下記式(2)
【化10】

で表される基を示す。上記式(2)中、Ra、Rb、Rc、Rd、Reは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。mは0〜3の整数を示し、m=0の場合は単結合を表す。mは0又は1が好ましく、特に好ましくは1である。R1〜R3の少なくとも1つは、水素原子又は上記式(2)で表される基である。
【0011】
1〜R3、Ra、Rb、Rc、Rd、Reにおける炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル基などが挙げられる。R1〜R3におけるアリール基としては、置換若しくは非置換のフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。R1〜R3として、水素原子又は上記式(2)で表される基以外の基としては、メチル基又はフェニル基が好ましい。Ra、Rb、Rc、Rd、Reとしては、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0012】
<Rf
fで示されるフッ素化炭化水素基における炭化水素基としては、例えば、1価又は多価の脂肪族炭化水素基、1価又は多価の脂環式炭化水素基、1価又は多価の芳香族炭化水素基、及びこれらが2以上結合した1価又は多価の基などが挙げられ、好ましくは、炭素数1〜20の1〜4価の直鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素数2〜20の1〜4価の分枝鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の1〜4価の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の1〜4価の芳香族炭化水素基、及びこれらの基の2以上が酸素原子又は硫黄原子を介して若しくは介することなく結合した総炭素数が4〜22の1〜4価の基などが挙げられる。さらに好ましくは、炭素数3〜10の2〜3価の直鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜10の2〜3価の分枝鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素数5〜10の2〜3価の脂環式炭化水素基、炭素数8〜10の2〜3価の芳香族炭化水素基、及びこれらの基の2以上が酸素原子又は硫黄原子を介して若しくは介することなく結合した2〜3価の基などが挙げられる。
【0013】
炭素数1〜20の1価の直鎖状炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、ウンデシル、ペンタデシル、オクタデシル基等;炭素数2〜20の1価の分岐鎖状炭化水素基として、メチルエチル、ジメチルメチル、2−メチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、2−メチルブチル、2,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2−エチル−2−メチルプロピル、2−メチルペンチル、2,2−ジメチルペンチル、2,3−ジメチルペンチル、2,4−ジメチルペンチル、2,3,4−トリメチルペンチル、2−エチル−2−メチルペンチル基等;炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基として、シクロペンチル、1−メチルシクロペンチル、シクロへキシル、1−メチルシクロへキシル、1,4−ジメチルシクロへキシル基等;炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基として、フェニル、1−メチルフェニル、1,4−ジメチルフェニル、ナフチル基等が挙げられる。
【0014】
炭素数1〜20の2価の直鎖状炭化水素基としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、へキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン基等;炭素数2〜20の2価の分岐鎖状炭化水素基として、メチルメチレン、メチルエチレン、ジメチルメチレン、2−メチルトリメチレン、2,2−ジメチルトリメチレン、2−メチルテトラメチレン、2,3−ジメチルテトラメチレン、2,2−ジメチルテトラメチレン、2−エチル−2−メチルトリメチレン、2−メチルペンタメチレン、2,2−ジメチルペンタメチレン、2,3−ジメチルペンタメチレン、2,4−ジメチルペンタメチレン、2,3,4−トリメチルペンタメチレン、2−エチル−2−メチルペンタメチレン基等;炭素数3〜20の2価の脂環式炭化水素基として、1,2−シクロペンチレン、1,3−シクロペンチレン、シクロペンチリデン、1,2−シクロへキシレン、1,3−シクロへキシレン、1,4−シクロへキシレン、シクロヘキシリデン基等;炭素数6〜20の2価の芳香族炭化水素基として、フェニレン、ナフチレン基等;1,4−シクロヘキシレンビス(メチレン)、1,4−フェニレンビス(メチレン)などが挙げられる。
【0015】
上記以外の多価の炭化水素基としては、例えば、1,2,3−プロパントリイル、1,2,3−ブチルトリイル、1,2,4−ブチルトリイル、1,2,3,4−ブチルテトライル、1,2,3−ペンタントリイル、1,2,4−ペンタントリイル、1,2,5ペンタントリイル、1,2,3,4−ペンタンテトライル、1,2,4,5−ペンタンテトライル、1,2,3−シクロへキサントリイルなどが挙げられる。
【0016】
上記Rfで示されるフッ素化炭化水素基における炭化水素基のなかでも、2価の脂肪族炭化水素基が好ましく、テトラメチレン、ペンタメチレン、へキサメチレン、2−メチルテトラメチレン、2−メチルトリメチレン、2−メチルペンタメチレン、3−メチルペンタメチレンが特に好ましい。
【0017】
上記Rfで示されるフッ素化炭化水素基は、フッ素化前の炭化水素基の水素原子の、例えば20〜100%がフッ素原子で置換されており、30〜90%が置換されているのが好ましく、50〜70%が置換されているのがさらに好ましい。上記Rfで示されるフッ素化炭化水素基において、両末端の炭素原子に結合している水素原子は、フッ素原子で置換されていないことが好ましい。また、本発明のRfで示されるフッ素化炭化水素基は、炭素数が3〜8で、フッ素原子数が2〜14であり、−CF2−基を1〜6個含むことが好ましい。さらには、炭素数が3〜6で、フッ素原子数が2〜8であり、−CF2−基を1〜4個含むことが好ましい。−CF2−基が2個以上の場合、連続していることが好ましい。このような構造とすることにより、上記液状を呈する化合物が得られる。また、硬化した場合に耐熱性、透明性に優れた硬化物を得ることができる。炭素数が上記範囲より多いと硬化物が白濁しやすい。
【0018】
上記のフッ素化炭化水素基の例としては、例えば、2,2−ジフルオロプロパンジイル、2,2,3,3−テトラフルオロブタンジイル、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロペンタンジイル、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサンジイル、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロヘプタンジイル、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロオクタンジイル、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−テトラデカフルオロノナンジイル、及び2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ヘプタデカフルオロデカンジイル、2−フルオロ−2−パーフルオロメチル−1,3−プロパンジイル、及び2−フルオロ−2−パーフルオロエチル−1,3−プロパンジイル基などが例示できる。
【0019】
本発明のRfで示されるフッ素化炭化水素基としては、下記式(3)
【化11】

で表される2価のフッ素化炭化水素基であることが特に好ましい。なお、式中、n1は1〜4の整数、n2は1〜10の整数、n3は1〜4の整数を示す。なかでも、n1=n3=1、n2=1〜7が好ましく、n2=1〜4が特に好ましい。すなわち、1〜4個の−CF2−基を連続して構造中に有し、両末端がメチレン基である、2,2−ジフルオロプロパンジイル、2,2,3,3−テトラフルオロブタンジイル、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロペンタンジイル、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサンジイルが好ましい。
【0020】
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記の化合物が挙げられる。
【化12】

【0021】
[フッ素含有化合物の製造]
本発明のフッ素含有化合物の製造方法は、塩基の存在下、下記式(4)
【化13】

で表されるヒドロキシ化合物と、下記式(5)
【化14】

で表されるシラン化合物とを反応させて、上記式(1)で表されるフッ素含有化合物を得ることを特徴とする。上記式(4)(5)中、Rf、n、R1〜R3は上記と同じである。上記式(5)中、Xは塩素、臭素などのハロゲン原子及びアルコキシを示す。アルコキシ基には、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、t−ブトキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ、テトラデシルオキシ、オクタデシルオキシ基などの炭素数1〜30程度(特に、炭素数1〜20程度)のアルコキシ基が含まれる。
【0022】
<ヒドロキシ化合物>
式(4)で表されるヒドロキシ化合物としては、上記Rfを有する1価又は多価のアルコールが使用でき、目的とする式(1)で表されるフッ素含有化合物に対応するヒドロキシ化合物を使用できる。式(4)で表されるヒドロキシ化合物は公知の方法で製造でき、また市販品を用いることもできる。具体的には、2,2−ジフルオロプロパンジオール、2,2,3,3−テトラフルオロブタンジオール、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロペンタンジオール、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサンジオールが好ましく例示できる。
【0023】
<シラン化合物>
式(5)で表されるシラン化合物としては、具体的にはモノハロゲン化ビニルシラン、モノハロゲン化アリルシラン、3−ブテニルモノハロゲン化シラン、4−ペンテニルモノハロゲン化シラン、水素原子を有するモノハロゲン化シラン化合物などのモノハロゲン化シラン化合物;及び、モノアルコキシビニルシラン、モノアルコキシアリルシラン、3−ブテニルモノアルコキシシラン、4−ペンテニルモノアルコキシシランなどのモノアルコキシビニルシラン系化合物等が挙げられる。
【0024】
水素原子を有するモノハロゲン化シラン化合物の代表例としては、クロロジメチルシラン、クロロメチルフェニルシラン、クロロジエチルシラン、クロロエチルフェニルシラン、クロロジ−n−プロピルシラン、クロロ−n−プロピルフェニルシラン、クロロジ−t−ブチルシラン、クロロ−t−ブチルフェニルシラン、クロロジフェニルシラン、ブロモジメチルシラン、ブロモメチルフェニルシラン、ブロモジエチルシラン、ブロモエチルフェニルシラン、ブロモジ−n−プロピルシラン、ブロモn−プロピルフェニルシラン、ブロモジ−t−ブチルシラン、ブロモt−ブチルフェニルシラン、ブロモジフェニルシランなどが挙げられる。
【0025】
モノハロゲン化ビニルシランの代表例としては、クロロジメチルビニルシラン、クロロメチルフェニルビニルシラン、クロロジエチルビニルシラン、クロロエチルフェニルビニルシラン、クロロジ−n−プロピルビニルシラン、クロロ−n−プロピルフェニルビニルシラン、クロロジ−t−ブチルビニルシラン、クロロ−t−ブチルフェニルビニルシラン、クロロジフェニルビニルシラン、ブロモジメチルビニルシラン、ブロモメチルフェニルビニルシラン、ブロモジエチルビニルシラン、ブロモエチルフェニルビニルシラン、ブロモジ−n−プロピルビニルシラン、ブロモn−プロピルフェニルビニルシラン、ブロモジ−t−ブチルビニルシラン、ブロモt−ブチルフェニルビニルシラン、ブロモジフェニルビニルシランなどが挙げられる。
【0026】
モノハロゲン化アリルシランの代表例としては、クロロジメチルアリルシラン、クロロメチルフェニルアリルシラン、クロロジエチルアリルシラン、クロロエチルフェニルアリルシラン、クロロジ−n−プロピルアリルシラン、クロロ−n−プロピルフェニルアリルシラン、クロロジ−t−ブチルアリルシラン、クロロ−t−ブチルフェニルアリルシラン、クロロジフェニルアリルシラン、ブロモジメチルアリルシラン、ブロモメチルフェニルアリルシラン、ブロモジエチルアリルシラン、ブロモエチルフェニルアリルシラン、ブロモジ−n−プロピルアリルシラン、ブロモn−プロピルフェニルアリルシラン、ブロモジ−t−ブチルアリルシラン、ブロモt−ブチルフェニルアリルシラン、ブロモジフェニルアリルシランなどが挙げられる。
【0027】
3−ブテニルモノハロゲン化シランの代表例としては、クロロジメチル−3−ブテニルシラン、クロロメチルフェニル−3−ブテニルシラン、クロロジエチル−3−ブテニルシラン、クロロエチルフェニル−3−ブテニルシラン、クロロジフェニル−3−ブテニルシラン、ブロモジメチル−3−ブテニルシラン、ブロモメチルフェニル−3−ブテニルシラン、ブロモジエチル−3−ブテニルシラン、ブロモエチルフェニル−3−ブテニルシラン、ブロモジフェニル−3−ブテニルシラン等が挙げられる。
【0028】
4−ペンテニルモノハロゲン化シランの代表例としては、クロロジメチル−4−ペンテニルシラン、クロロメチルフェニル−4−ペンテニルシラン、クロロジエチル−4−ペンテニルシラン、クロロエチルフェニル−4−ペンテニルシラン、クロロジフェニル−4−ペンテニルシラン、ブロモジメチル−4−ペンテニルシラン、ブロモメチルフェニル−4−ペンテニルシラン、ブロモジエチル−4−ペンテニルシラン、ブロモエチルフェニル−4−ペンテニルシラン、ブロモジフェニル−4−ペンテニルシラン等が挙げられる。
【0029】
モノアルコキシビニルシランの代表例としては、メトキシジメチルビニルシラン、メトキシメチルフェニルビニルシラン、メトキシジエチルビニルシラン、メトキシエチルフェニルビニルシラン、メトキシジ−n−プロピルビニルシラン、メトキシn−プロピルフェニルビニルシラン、メトキシジ−t−ブチルビニルシラン、メトキシt−ブチルフェニルビニルシラン、メトキシジフェニルビニルシラン、エトキシジメチルビニルシラン、エトキシメチルフェニルビニルシラン、エトキシジエチルビニルシラン、エトキシエチルフェニルビニルシラン、エトキシジ−n−プロピルビニルシラン、エトキシn−プロピルフェニルビニルシラン、エトキシジ−t−ブチルビニルシラン、エトキシt−ブチルフェニルビニルシラン、エトキシジフェニルビニルシランなどが挙げられる。
【0030】
モノアルコキシアリルシランの代表例としては、メトキシジメチルアリルシラン、メトキシメチルフェニルアリルシラン、メトキシジエチルアリルシラン、メトキシエチルフェニルアリルシラン、メトキシジ−n−プロピルアリルシラン、メトキシn−プロピルフェニルアリルシラン、メトキシジ−t−ブチルアリルシラン、メトキシt−ブチルフェニルアリルシラン、メトキシジフェニルアリルシラン、エトキシジメチルアリルシラン、エトキシメチルフェニルアリルシラン、エトキシジエチルアリルシラン、エトキシエチルフェニルアリルシラン、エトキシジ−n−プロピルアリルシラン、エトキシn−プロピルフェニルアリルシラン、エトキシジ−t−ブチルアリルシラン、エトキシt−ブチルフェニルアリルシラン、エトキシジフェニルアリルシランなどが挙げられる。
【0031】
3−ブテニルモノアルコキシシランの代表例としては、メトキシジメチル−3−ブテニルシラン、メトキシメチルフェニル−3−ブテニルシラン、メトキシジエチル−3−ブテニルシラン、メトキシエチルフェニル−3−ブテニルシラン、メトキシジフェニル−3−ブテニルシラン、エトキシジメチル−3−ブテニルシラン、エトキシメチルフェニル−3−ブテニルシラン、エトキシジエチル−3−ブテニルシラン、エトキシエチルフェニル−3−ブテニルシラン、エトキシジフェニル−3−ブテニルシラン等が挙げられる。
【0032】
4−ペンテニルモノアルコキシシランの代表例としては、メトキシジメチル−4−ペンテニルシラン、メトキシメチルフェニル−4−ペンテニルシラン、メトキシジエチル−4−ペンテニルシラン、メトキシエチルフェニル−4−ペンテニルシラン、メトキシジフェニル−4−ペンテニルシラン、エトキシジメチル−4−ペンテニルシラン、エトキシメチルフェニル−4−ペンテニルシラン、エトキシジエチル−4−ペンテニルシラン、エトキシエチルフェニル−4−ペンテニルシラン、エトキシジフェニル−4−ペンテニルシラン等が挙げられる。式(5)で表されるシラン化合物は公知の方法で製造でき、また市販品を用いることもできる。
【0033】
<溶媒>
式(4)で表されるヒドロキシ化合物と式(5)で表されるシラン化合物との反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行われる。前記溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリルなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0034】
式(5)で表されるシラン化合物の使用量は、式(4)で表されるヒドロキシ化合物の反応に付すべきヒドロキシル基1モルに対して、例えば1.0〜2モル、好ましくは1.0〜1.3モル、さらに好ましくは1.0〜1.2モル程度である。
【0035】
<塩基>
本発明のフッ素含有化合物の製造方法は、塩基の存在下で行う。反応系に塩基を存在させることにより一般に反応速度が著しく増大する。塩基には無機塩基及び有機塩基が含まれる。無機塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属炭酸塩;炭酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩などが挙げられる。
【0036】
有機塩基としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウムなどのアルカリ金属有機酸塩(特に、アルカリ金属酢酸塩);酢酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属有機酸塩;メチルリチウム、ブチルリチウム(n−ブチルリチウム,s−ブチルリチウム,t−ブチルリチウムなど)などのアルキルリチウム;リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムエトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド(式(5)又は(6)で表されるヒドロキシ化合物に対応するアルカリ金属アルコキシドなど);ナトリウムフェノキシドなどのアルカリ金属フェノキシド;トリエチルアミン、N−メチルピペリジン、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、トリエチレンジアミン(1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン;DABCO)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、ヘキサメチレンテトラミン、テトラメチルエチレンジアミン、トリオクチルアミン、ジメチルアニリン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、4−メチルモルフォリンなどのアミン類(第3級アミンなど);ピリジン、ルチジン、ピコリン、イミダゾール、2,2′−ビピリジル、1,10−フェナントロリンなどの含窒素芳香族複素環化合物などが挙げられる。これらの塩基は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。なかでも、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジンなどの3級アミン;ピリジン、ルチジン、ピコリンなどの窒素含有芳香族性複素環化合物などが好ましい。
【0037】
塩基の使用量は、式(4)で表されるヒドロキシ化合物中のヒドロキシル基1モルに対して、例えば1〜300モル、好ましくは1〜1.5モル程度である。
【0038】
反応は重合禁止剤の存在下で行ってもよい。反応温度は、反応成分や触媒の種類などに応じて適宜選択でき、例えば、ビニルシランの場合、20〜200℃、好ましくは20〜100℃、さらに好ましくは40〜60℃程度である。また、ヒドロシランの場合、反応温度は、反応成分や触媒の種類などに応じて適宜選択でき、例えば、−78〜110℃、好ましくは−30〜40℃、さらに好ましくは−10〜10℃程度である。反応は常圧で行ってもよく、減圧又は加圧下で行ってもよい。反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの何れであってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などの何れの方法で行うこともできる。
【0039】
上記方法では、反応により、式(4)で表されるヒドロキシ化合物の少なくとも1個以上のヒドロキシル基がシリル化され、対応する式(1)で表されるフッ素含有化合物が生成する。反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。反応後の混合液に水、1〜7%の希塩酸、1〜7%の重曹水などの水系溶媒を加えて洗浄してもよい。
【実施例】
【0040】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。反応生成物の同定はGC−MS及び1H−NMRにより行った。
【0041】
実施例1
ヘキサフルオロペンタンジオールの誘導化(ジビニルシラン体CVへの誘導化)
300ml 4つ口フラスコに、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロペンタンジオール(20g、東京化成(株)製)とピリジン(22.3g)とトルエン(160g)とを仕込んだ。室温中、マグネチックスターラーで攪拌しながら、クロロジメチルビニルシラン(25.0g、東京化成(株)製)を30分間かけて滴下漏斗で滴下した。滴下終了後、オイルバスで50℃に加熱して1時間熟成した。
水(100g)を入れて攪拌した後、静置して下層(水層)を抜取った。さらに上層に5%HC1(60ml)を入れて攪拌した後静置して下層を抜取った。上層に5%重曹水を30ml入れて攪拌し、静置して下層を抜取った。
上層をエバポレータで濃縮した後、真空ポンプで減圧に引くと、上記式(11)で表されるフッ素含有化合物(ジビニルシラン誘導体)が27g得られた。
H NMR δ0.25 ppm (s,12H)、δ4.04 ppm (s,4H)、δ5.80 ppm (dd,4H) δ6.12 ppm (t,2H)
【0042】
実施例2
ヘキサフルオロペンタンジオールの誘導化(H型体CHへの誘導化)
300ml 4つ口フラスコに、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロペンタンジオール(20g、東京化成(株)製)とピリジン(22.3g)とトルエン(160g)とを仕込んだ。0℃に氷冷し、マグネチックスターラーで攪拌しながら、クロロジメチルシラン(19.9g、東京化成(株)製)を30分間かけて滴下漏斗で滴下した。滴下終了後、さらに0℃で1時間熟成した。
析出したピリジン塩酸塩をろ過し、除去した。
ろ液をエバポレータで濃縮した後、真空ポンプで減圧に引くと、上記式(12)で表されるフッ素含有化合物(ジシラン誘導体)が20g得られた。
H NMR δ0.25 ppm (s,12H)、δ4.01 ppm (s,4H)、δ4.20 ppm (s,2H)
【0043】
実施例3
実施例1で得られたフッ素含有化合物(0.400g)とメチルHシロキサン(0.100g、分子量1900〜2000、販売元:アズマックス社)を6mlのスクリュー管に秤量し、1時間室温で攪拌したところ、相溶性が良好で、透明で均一な溶液が得られた。得られた混合液に白金ビニルメチルシロキサン錯体(和光純薬製;白金1.6wt%)を1.0μl仕込み、再度攪拌し、耐熱硬化性組成物を得た。
得られた耐熱硬化性組成物をガラスプレートに塗布し、ホットプレート上で60℃、10分間加熱すると無色透明な硬化物が得られた。
【0044】
実施例4
実施例3において、実施例1で得られたフッ素含有化合物を、実施例2で得られたフッ素含有化合物に置き換えた以外は実施例3と同様にして、耐熱硬化性組成物を得た。
得られた耐熱硬化性組成物をガラスプレートに塗布し、ホットプレート上で60℃、10分間加熱すると無色透明な硬化物が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

[式中、Rfはn価のフッ素化炭化水素基、nは1以上の整数を示し、nが2以上の場合、n個の括弧内の基は、同一であっても異なっていてもよい。R1〜R3は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基又は下記式(2)
【化2】

(式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Reは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。mは、0〜3の整数を示す。)
で表される基を示す。但し、R1〜R3の少なくとも1つは、水素原子又は上記式(2)で表される基である。]
で表されることを特徴とするフッ素含有化合物。
【請求項2】
上記Rfが、下記式(3)
【化3】

(式中、n1は1〜4の整数、n2は1〜10の整数、n3は1〜4の整数を示す。)
で表される2価のフッ素化炭化水素基である、請求項1記載のフッ素含有化合物。
【請求項3】
n1=1、n2=3、n3=1、m=0である、請求項2記載のフッ素含有化合物。
【請求項4】
0〜90℃のいずれかの温度において液体である、請求項1〜3の何れか1項に記載のフッ素含有化合物。
【請求項5】
塩基の存在下、下記式(4)
【化4】

(式中、Rfはn価のフッ素化炭化水素基、nは1以上の整数を示す。)
で表されるヒドロキシ化合物と、下記式(5)
【化5】

[式中、Xはハロゲン原子を示す。R1〜R3は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基又は下記式(2)
【化6】

(式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Reは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。mは、0〜3の整数を示す。)
で表される基を示す。但し、R1〜R3の少なくとも1つは、水素原子又は上記式(2)で表される基である。]
で表されるシラン化合物とを反応させて、下記式(1)
【化7】

(式中、Rf、n、R1〜R3は上記と同じ。nが2以上の場合、n個の括弧内の基は、同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるフッ素含有化合物を得ることを特徴とする、フッ素含有化合物の製造方法。
【請求項6】
上記Rfが、下記式(3)
【化8】

(式中、n1は1〜4の整数、n2は1〜10の整数、n3は1〜4の整数を示す。)
で表される2価のフッ素化炭化水素基である、請求項5記載のフッ素含有化合物の製造方法。
【請求項7】
n1=1、n2=3、n3=1、m=0である請求項6記載のフッ素含有化合物の製造方法。
【請求項8】
塩基が有機塩基である請求項5〜7の何れか1項に記載のフッ素含有化合物の製造方法。

【公開番号】特開2012−36157(P2012−36157A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180227(P2010−180227)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】