説明

フッ素艶消しフィルム、フッ素艶消し積層フィルム、フッ素艶消し加飾積層フィルム、積層シート、及びこれらを積層した積層成形品

【課題】高生産条件下でも外観が良好で、きめの細かい艶消し性及び耐溶剤性に優れたフッ素艶消しフィルムを提供する。
【解決手段】フッ素樹脂(A)及び非架橋アクリル樹脂(B)を含有し、フッ素樹脂(A)の溶解度パラメータ(SPF)とアクリル樹脂(B)の溶解度パラメータ(SPA)が式(1)を満足し、220℃、せん断速度60sec-1の条件のアクリル樹脂(B)のせん断粘度(SVA)とフッ素樹脂(A)のせん断粘度(SVF)が式(2)を満足するフッ素艶消しフィルム(F1);同組成のフッ素艶消し樹脂層(I)とアクリル樹脂層(II)を積層したフィルム(F2);フィルム(F2)に絵柄層(III)を有するフィルム(F3);フィルム(F1)〜(F3)の何れかと熱可塑性樹脂層(IV)を積層したシート(F4);フィルム(F1)〜(F3)及びシート(F4)の何れかを基材(V)に積層した積層成形品。
(1)SPA-SPF≧4.0J1/2cm-3/2 (2)SVA/SVF≦2.0

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高生産条件下においても外観が良好で、かつ、きめの細かい艶消し性及び耐溶剤性に優れたフッ素艶消しフィルム、フッ素艶消し積層フィルム、フッ素艶消し加飾積層フィルム、積層シート、及びこれらを積層した積層成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ化ビニリデン系樹脂等のフッ素フィルムは、耐候性、耐溶剤性及び耐汚染性に優れているため、プラスチック、ガラス、スレート、ゴム、金属板、木板等の各種基材表面にラミネートされる保護フィルムとして広く使用されている。また、フッ素フィルムで表面が保護された基材は建築物の内装材、外装材、家具等の多くの用途で使用されている。近年、特に屋内で使用される壁紙やレザー家具等の基材についてはイメージの高級化が要望されるようになり、艶消しフィルムがラミネートされたものの使用が多くなっている。
【0003】
この艶消しフィルムの製法としては、主として(1)表面を荒らした金属製又はゴム製のマットロールによってフィルム表面に微細な凹凸を付与し、熱成形する方法、(2)砂又は金属等の微粒子を被処理フィルム表面に吹き付けて微細な凹凸を付与する方法(サンドブラスト法)、(3)被処理フィルムに艶消し剤をコーティングする方法、及び(4)微細な有機又は無機の充填剤(艶消し剤)をフィルム構成用樹脂中に添加する方法が知られている。
【0004】
しかしながら、マットロールによるフィルムの艶消し方法(1)には、フッ素樹脂に添加した紫外線吸収剤等の添加剤によりマットロールが目詰まりし易いという問題や、薄いフィルムでは厚み斑がそのまま艶斑となり、均質な艶消しフィルムが得られにくいという問題がある。
【0005】
また、サンドブラスト法(2)には、薄く柔らかいフィルムでは、サンドブラスト時に被処理フィルムが伸びたり、破断したりする問題がある。
【0006】
更に、艶消し剤をコーティングする方法(3)では、艶消し剤がフッ素樹脂に対して非粘着(非接着)性なのでフッ素樹脂の表面に艶消し剤のコーティングを容易に行うことが出来ない。
【0007】
また、艶消し剤をフィルム構成用樹脂中に添加する方法(4)においては、無機系の艶消し剤を使用する場合には、得られたフィルム内にボイドが発生し易く、機械的強度が低下する問題、フィルムの透明性が低下する問題、及び溶融押出製膜する工程での高温加熱によりフッ素樹脂が着色する問題が生じる場合がある。
【0008】
例えば、特許文献1には、表面層が架橋アクリル樹脂及びフッ化ビニリデン系樹脂を含有する、外観性、表面光沢度、引張伸び及び熱加工性に優れたフッ化ビニリデン系樹脂フィルムが提案されている。また、特許文献2には、フッ化ビニリデン系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂及び特定粒径の架橋アクリル樹脂を含有する樹脂組成物を用いた、外観、表面光沢度、熱加工性及び耐候性に優れた内外装建材用表面保護フィルムが提案されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2で得られるフィルムは、いずれも耐溶剤性が充分とはいえない。
【0010】
また、特許文献3には、インサート成形又はインモールド成形を施した時に成形品が白化せず、車輌用途に用いることができる表面硬度、耐熱性、及び透明性又は艶消し性を有するアクリル樹脂フィルム状物が提案されている。この特許文献3には、無機充填剤又は架橋性高分子粒子を混練する方法、エポキシ基含有単量体を共重合する方法、水酸基を有する直鎖状重合体を使用する方法、フッ素樹脂フィルムを最表層に設けること等が開示されている。
【0011】
しかしながら、特許文献3には、耐溶剤性を維持しつつ、外観が良好で、かつ、きめの細かい艶消し性を発現させる具体的な施策については何ら開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−205755号公報
【特許文献2】特開2008−7709号公報
【特許文献3】特開2005−139416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、高生産条件下においても外観が良好で、かつ、きめの細かい艶消し性及び耐溶剤性に優れたフッ素艶消しフィルム、フッ素艶消し積層フィルム、フッ素艶消し加飾積層フィルム、積層シート、及びこれらを積層した積層成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の要旨とするところは、フッ素樹脂(A)及び非架橋のアクリル樹脂(B)を含有し、フッ素樹脂(A)の溶解度パラメータ(SPF)と非架橋のアクリル樹脂(B)の溶解度パラメータ(SPA)が下式(1)を満足し、220℃、せん断速度60sec-1の条件下における非架橋のアクリル樹脂(B)のせん断粘度(SVA)と220℃、せん断速度60sec-1の条件下におけるフッ素樹脂(A)のせん断粘度(SVF)が下式(2)を満足するフッ素艶消しフィルム(F1)である。
【0015】
SPA−SPF≧4.0J1/2cm-3/2・・・(1)
SVA/SVF≦2.0・・・(2)
また、本発明の要旨とするところは、フッ素樹脂(A)及び非架橋のアクリル樹脂(B)を含有し、フッ素樹脂(A)の溶解度パラメータ(SPF)と非架橋のアクリル樹脂(B)の溶解度パラメータ(SPA)が前記式(1)を満足し、220℃、せん断速度60sec-1の条件下における非架橋のアクリル樹脂(B)のせん断粘度(SVA)と220℃、せん断速度60sec-1の条件下におけるフッ素樹脂(A)のせん断粘度(SVF)が前記式(2)を満足するフッ素艶消し樹脂層(I)と、アクリル樹脂層(II)とを積層してなるフッ素艶消し積層フィルム(F2)である。
【0016】
また、本発明の要旨とするところは、上記のフッ素艶消し積層フィルム(F2)の少なくとも片面に、さらに絵柄層(III)を有するフッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)である。
【0017】
また、本発明の要旨とするところは、上記のフッ素艶消しフィルム(F1)、上記のフッ素艶消し積層フィルム(F2)、及び、上記のフッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)からなる群より選ばれるフィルムと、熱可塑性樹脂層(IV)とを積層してなる積層シート(F4)である。
【0018】
また、本発明の要旨とするところは、上記のフッ素艶消しフィルム(F1)、上記のフッ素艶消し積層フィルム(F2)、上記のフッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)、及び、上記の積層シート(F4)からなる群より選ばれるフィルム又はシートを基材(V)に積層した積層成形品である。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、耐溶剤性を備え、高生産条件下においても外観が良好で、かつ、きめ細かい良好な艶消し状態を有するフィルム、シート及び積層成形品が得られる。これらは、例えば自動車、建築物の内外装用途や直射日光の厳しい外装用途等の各種用途に好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[フッ素樹脂(A)]
本発明で使用されるフッ素樹脂(A)としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)系共重合体、テトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体、フッ化ビニリデンと(メタ)アクリル酸アルキルエステル等のアクリル系単量体との共重合体及びフッ化ビニリデン系重合体を主成分とする他樹脂との混合樹脂が挙げられる。これらは単独で、又は二種以上を併用して使用できる。特に、得られるフッ素艶消しフィルムの光透過性及びきめの細かい艶消し発現性並びにフッ素樹脂(A)と非架橋のアクリル樹脂(B)との相溶性の点でフッ化ビニリデン系重合体が好ましい。
【0021】
フッ化ビニリデン系重合体は、フッ化ビニリデン単量体単位を有するビニル重合体であれば特に限定されず、フッ化ビニリデンの単独重合体であってもよく、フッ化ビニリデンと他のビニル化合物単量体との共重合体であってもよい。フッ化ビニリデンと共重合可能な他のビニル単量体としては、例えば、フッ化ビニル、四フッ化エチレン、三フッ化塩化エチレン、六フッ化プロピレン等のフッ素化されたビニル単量体及びスチレン、エチレン、ブタジエン、プロピレン等のビニル単量体が挙げられる。
【0022】
フッ素樹脂(A)は、220℃、せん断速度60sec-1の条件下における非架橋のアクリル樹脂(B)のせん断粘度(SVA)と、220℃、せん断速度60sec-1の条件下におけるフッ素樹脂(A)のせん断粘度(SVF)が下式(2)を満足するフッ素樹脂であることが必要である。
【0023】
SVA/SVF≦2.0・・・(2)
このようなフッ素樹脂(A)を使用することにより、得られるフッ素艶消しフィルム(F1)、フッ素艶消し積層フィルム(F2)、フッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)及び積層シート(F4)の外観を良好とすることが出来る。とりわけ高生産条件下において良好な分散状態を達成することが出来るので、工業的利用価値が高い。
【0024】
これらのせん断粘度(SVA及びSVF)は、ツインキャピラリレオメータにより測定して得た値である。
<ツインキャピラリレオメータ測定条件>
使用機器:Malvern社 Rosand RH−7D
Bagley補正を実施し、キャピラリ部での圧力損失を補正した値を用いた。
【0025】
特に、フッ素艶消しフィルム(F1)、フッ素艶消し積層フィルム(F2)の製膜性の点から、フッ素樹脂(A)は、アクリル樹脂(B)の上記せん断粘度(SVA)と、フッ素樹脂(A)の上記せん断粘度(SVF)が下式(3)を満足するフッ素樹脂であることが好ましい。
【0026】
1.0≦SVA/SVF≦2.0・・・(3)
[非架橋のアクリル樹脂(B)]
本発明で使用される非架橋のアクリル樹脂(B)の溶解度パラメータ(SPA)は、フッ素樹脂(A)の溶解度パラメータ(SPF)よりも4.0J1/2cm-3/2以上高いことが必要である。このような非架橋のアクリル樹脂(B)を使用することにより、得られるフッ素艶消しフィルム(F1)、フッ素艶消し積層フィルム(F2)、フッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)及び積層シート(F4)は外観及び艶消し性に優れ、耐溶剤性を良好とすることができる。
【0027】
本発明において、溶解度パラメータとは以下のFedorsの式で表される値(σ)をいう。
<Fedorsの式>
σ=(Ev/v)1/2=(ΣΔei/ΣΔvi1/2
σ:溶解度パラメータ(単位;J1/2cm-3/2
v:蒸発エネルギー
v:モル体積
Δei:各原子又は原子団の蒸発エネルギー
Δvi:各原子又は原子団のモル体積
上式の計算に使用する各原子又は原子団の蒸発エネルギー及びモル体積は、「R.F.Fedors,Polym.Eng.Sci.,14,147(1974)」に拠る。
【0028】
さらに、SPAとSPFの差(△σ:SPA−SPF)は、4.0J1/2cm-3/2以上となる必要がある。また、Δσの上限は特に限定されないが、本発明のフッ素艶消しフィルム(F1)、フッ素艶消し積層フィルム(F2)、フッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)及び積層シート(F4)の艶消し発現性やフッ素艶消しフィルム(F1)中での非架橋のアクリル樹脂(B)の分散性の点で6.8以下が好ましく、6.3以下がより好ましい。
【0029】
「非架橋のアクリル樹脂」とは、架橋剤単量体単位やグラフト交叉剤単量体単位等の多官能性単量体単位を含まないアクリル樹脂をいう。本発明で使用される非架橋のアクリル樹脂(B)は、上記条件を満足するSPAを有するものであればよく、公知のアクリル樹脂を使用することができる。
【0030】
非架橋のアクリル樹脂(B)としては、例えば、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート及びブチルメタクリレートから成る群より選ばれる少なくとも一種のメタクリレートから得られる構成単位を主構成単位とし、必要に応じて炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート、酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の他のビニル単量体から得られる構成単位を有する単一重合体又は共重合体、及び、(メタ)アクリレート単位を主構成単位とするアクリル重合体から上記SPAを有するものを選ぶことができる。これらは単独で、又は併用して使用できる。なお、「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタクリレートを示す。
【0031】
前記のSPAを有する非架橋のアクリル樹脂(B)は、水酸基含有重合体、カルボキシ基含有重合体等からなる樹脂が挙げられ、この中で、得られるフッ素艶消しフィルム(F1)、フッ素艶消し積層フィルム(F2)、フッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)及び積層シート(F4)の艶消し外観を良好にさせる点で、特に水酸基含有重合体からなる樹脂であることが好ましい。この水酸基含有重合体としては、例えば、以下に示す水酸基含有重合体(1)が挙げられる。この水酸基含有重合体(1)を使用することにより、得られるフッ素艶消しフィルム(F1)の伸度をフッ素樹脂の伸度と比べてほとんど低下しないようにすることができる。その結果、本発明のフッ素艶消しフィルム(F1)、フッ素艶消し積層フィルム(F2)、フッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)及び積層シート(F4)は、例えば二次加工時等にフィルム切れ等が起こりにくくなるので好ましい。
【0032】
水酸基含有重合体(1)は、炭素数1〜8の水酸基含有アルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル1〜80質量%、炭素数1〜13のアルキル基を有するメタクリル酸アルキル20〜99質量%及び炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキル0〜79質量%を含有する単量体成分を共重合して得られる重合体である。なお、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸又はメタクリル酸を示す。
【0033】
水酸基含有重合体(1)を構成する炭素数1〜8の水酸基含有アルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルとしては、例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2,3−ジヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及びアクリル酸4−ヒドロキシブチルが挙げられる。これらは単独で、又は二種以上を併用して使用できる。中でも、艶消し発現性の点で、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルが特に好ましい。
【0034】
単量体成分100質量%中の炭素数1〜8の水酸基含有アルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルの含有量は1〜80質量%が好ましい。この含有量を好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、特に好ましくは20質量%より多い含有量とすることにより、SPAが本発明の規定する範囲となり易く、本発明のフッ素艶消しフィルム(F1)、フッ素艶消し積層フィルム(F2)、フッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)及び積層シート(F4)の艶消し効果(艶消し性及び外観)が良好となる傾向にある。また、この含有量を好ましくは80質量%以下、より好ましくは50質量%以下とすることにより、水酸基含有重合体(1)粒子の分散性がより良好となり、フッ素艶消しフィルム(F1)中の水酸基含有重合体(1)の未分散の粒子が存在することを抑制し、製膜性が良好となる傾向にある。
【0035】
水酸基含有重合体(1)を構成する炭素数1〜13のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル及びメタクリル酸t−ブチルが挙げられる。これらは単独で、又は二種以上を併用して使用できる。中でも、耐候性の点で、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
【0036】
単量体成分100質量%中の炭素数1〜13のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルの含有量は、耐候性の点で、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。また、その含有量は艶消し発現性の点で、好ましくは99質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
【0037】
水酸基含有重合体(1)を構成する炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル及びアクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。これらは単独で、又は二種以上を併用して使用できる。
【0038】
単量体成分100質量%中の炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルの含有量は0質量%でも良いが、非架橋のアクリル樹脂(B)の分散性の点で、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。また、その含有量は耐候性、耐
熱性の点で、79質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
【0039】
非架橋のアクリル樹脂(B)のガラス転移温度は、本発明のフッ素艶消しフィルム(F1)、フッ素艶消し積層フィルム(F2)、フッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)及び積層シート(F4)の艶消し発現性や、フッ素艶消しフィルム(F1)中での水酸基含有重合体(1)の粒子の分散性の点で、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下である。これらの場合、単量体成分中の炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルの含有量は、0.5〜30質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましい。なお、非架橋のアクリル樹脂(B)のガラス転移温度は、各単量体成分の単独重合体のTgの値(ポリマーハンドブック[Polymer Handbook, J. Brandrup, Interscience, 1989]に記載されているもの)を用いてFOXの式から算出される。
【0040】
非架橋のアクリル樹脂(B)の固有粘度は、本発明のフッ素艶消しフィルム(F1)中での非架橋のアクリル樹脂(B)の分散性を良好とし、フッ素艶消しフィルム(F1)中の水酸基含有重合体(1)の未溶融成分を低減して、本発明のフッ素艶消しフィルム(F1)、フッ素艶消し積層フィルム(F2)、フッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)及び積層シート(F4)の外観を良好とする点で、0.3L/g以下が好ましく、0.12L/g以下がより好ましい。また、その固有粘度は、本発明のフッ素艶消しフィルム(F1)、フッ素艶消し積層フィルム(F2)、フッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)及び積層シート(F4)の艶消し性を良好とする点で、0.01L/g以上が好ましい。なお、非架橋のアクリル樹脂(B)の固有粘度は、サン電子工業製AVL−2C自動粘度計を使用して、溶媒にはクロロホルムを用い、25℃で測定した。
【0041】
非架橋のアクリル樹脂(B)の固有粘度を調節する為に、例えば、メルカプタン等の重合調節剤を用いることができる。メルカプタンとしては、例えば、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン及びt−ドデシルメルカプタンが挙げられる。メルカプタンの含有量は、特に限定されるものではないが、非架橋のアクリル樹脂を構成する単量体100質量部に対し、分散性の点で0.01質量部以上が好ましい。また、艶消し性を良好とする点で1質量部以下が好ましい。
【0042】
非架橋のアクリル樹脂(B)のMw(質量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は、2.2以下が好ましく、2.0以下がより好ましい。このMw/Mnが小さい程、非架橋のアクリル樹脂(B)の分子量分布は単分散に近くなるため、高分子量成分が減少し、本発明のフッ素艶消しフィルム(F1)、フッ素艶消し積層フィルム(F2)、フッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)及び積層シート(F4)中にフィッシュアイ等の外観不良の原因となる未溶融物の発生が抑制される。なお、Mw/Mnはゲルパーメーションクロマトグラフ(GPC)により以下のGPC測定条件で測定して得られる値を示す。
【0043】
<GPC測定条件>
使用機器:東ソー(株)製HLC−8320GPCシステム
カラム:TGKgel SupaerHZM−H(東ソー(株)製、商品名)2本
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折率(RI)。
【0044】
非架橋のアクリル樹脂(B)の220℃、せん断速度60sec-1の条件下におけるせん断粘度(SVA)は、6,000Pa・s以下が好ましく、3,000Pa・s以下がより好ましい。このSVAが小さい程、本発明のフッ素艶消しフィルム(F1)、フッ素艶消し積層フィルム(F2)、フッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)及び積層シート(F4)中にフィッシュアイ等の外観不良の原因となる非架橋のアクリル樹脂(B)の分散不良物の発生が抑制される。
【0045】
非架橋のアクリル樹脂(B)の製造方法としては、例えば、懸濁重合及び乳化重合が挙げられる。
【0046】
懸濁重合に使用される開始剤としては、例えば、有機過酸化物及びアゾ化合物が挙げられる。懸濁安定剤としては、例えば、有機コロイド性高分子物質、無機コロイド性高分子物質、無機微粒子及びこれらと界面活性剤とを組み合わせたものが挙げられる。中でも、有機系の懸濁安定剤が好ましく、例えば、特開平1−168,702号公報に開示されているメタクリル酸メチルとメタクリル酸カリウムの共重合体及びメタクリル酸メチルとメタクリル酸カリウムとメタクリル酸2−スルフォエチルナトリウム塩との共重合体が挙げられる。無機系の懸濁安定剤を使用する場合は、洗浄等の重合後処理により除去できるものが好ましく、例えば、第三リン酸カルシウムが挙げられる。懸濁安定剤の使用量は特に限定はされないが、懸濁重合を安定させる点で0.1質量部以上が好まし。また、経済性の点で10質量部以下であることが好ましい。
【0047】
通常、懸濁重合は懸濁安定剤の存在下に単量体等を重合開始剤と共に水性懸濁したものを使用して行われる。また、必要に応じて懸濁重合する際に単量体に可溶な重合体を単量体に溶解して重合することができる。懸濁重合後には、懸濁重合により得られるビーズ状物から、外観不良の原因となる、重合中に発生するクロロホルムに不溶な成分であるカレットを、篩別によって除去することが好ましい。篩別で使用される篩としては、十分な収率を確保する場合、150メッシュ以下が好ましく、50メッシュ以下がより好ましい。また、カレットを十分除去する場合には、50メッシュ以上が好ましく、150メッシュ以上がより好ましい。
【0048】
非架橋のアクリル樹脂(B)中には、300μm以上のカレットを含まない様にすることが好ましく、100μm以上のカレットを含まない様にすることがより好ましい。
【0049】
無機系懸濁安定剤を用いて重合する場合には、得られるフッ素艶消しフィルム(F1)、フッ素艶消し積層フィルム(F2)、フッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)及び積層シート(F4)中のフィッシュアイの発生を抑制して印刷抜けを抑制するために、懸濁重合で得られた非架橋のアクリル樹脂(B))のビーズ状物を水洗浄して非架橋のアクリル樹脂(B)中の無機物の含有量を低減させることが好ましい。
【0050】
この水洗浄の方法としては、例えば、非架橋のアクリル樹脂(B)のビーズ状物に硝酸等の洗浄液を加えて分散させた後に固液分離する分散洗浄法、及び、非架橋のアクリル樹脂(B)のビーズ状物に洗浄液を通過させる通過洗浄法が挙げられる。洗浄温度は、洗浄効率の点で、10〜90℃が好ましい。
【0051】
上述したような重合終了後の篩別や水洗浄等の後処理において、製品収率を低下させることなく篩別によりカレットを効率的に取除くために、また洗浄により効率的に無機物を除去するために、水酸基含有重合体(1)の平均粒子径は300μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。また、その平均粒子径は、重合体の取扱性の点で10μm以上が好ましい。なお、水酸基含有直鎖状重合体(1)の平均粒子径は、HORIBA(株)製のレーザ回折散乱式粒度分布測定装置LA−910を用いて測定することができる。
【0052】
[フッ素艶消しフィルム(F1)]
本発明のフッ素艶消しフィルム(F1)は、フッ素樹脂(A)100質量部及び非架橋のアクリル樹脂(B)1〜18質量部(フッ素樹脂(A)100質量部に対して)を含有することが好ましい。非架橋のアクリル樹脂(B)の配合量がフッ素樹脂(A)100質量部に対して1質量部以上であることにより、本発明のフッ素艶消しフィルム(F1)、フッ素艶消し積層フィルム(F2)、フッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)及び積層シート(F4)の艶消し性が良好となる。さらにイメージの高級化の観点から、フッ素艶消しフィルム(F1)、フッ素艶消し積層フィルム(F2)、フッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)及び積層シート(F4)の60°表面光沢度は低いことが好ましく、一般的に60°表面光沢度が45%以下から高級感が発現される。このため、非架橋のアクリル樹脂(B)の配合量は、3質量部以上がより好ましい。なお、本発明のフッ素艶消しフィルム(F1)、フッ素艶消し積層フィルム(F2)、フッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)及び積層シート(F4)の表面光沢度は、JIS Z8741に準じて測定した値である。
【0053】
一方、非架橋のアクリル樹脂(B)の配合量がフッ素樹脂(A)100質量部に対して18質量部以下であることにより、本発明のフッ素艶消しフィルム(F1)、フッ素艶消し積層フィルム(F2)、フッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)及び積層シート(F4)の耐溶剤性が良好となる。さらに非架橋のアクリル樹脂(B)を配合する費用対効果の観点から、15質量部以下がより好ましく13質量部以下がより好ましい。
【0054】
フッ素艶消しフィルム(F1)の厚みは、フッ素艶消しフィルム(F1)のラミネート性、製膜性又は二次加工性の点で、5〜500μmが好ましく、15〜200μmがより好ましく、30〜100μmが特に好ましい。
【0055】
フッ素艶消しフィルム(F1)[並びにフッ素艶消し積層フィルム(F2)、フッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)及び積層シート(F4)]の表面に凹凸が形成されていることも好ましい形態である。この場合、表面の凹凸の平均間隔(Sm)は30μm以下が好ましい。非架橋のアクリル樹脂(B)を配合し、このSmが30μm以下の場合、フッ素艶消しフィルム(F1)、フッ素艶消し積層フィルム(F2)、フッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)及び積層シート(F4)の艶消し状態が肌理細かく、艶消し性が極めて良好となる傾向にある。なお、表面凹凸の平均間隔(Sm)は、JIS B0601に準じて測定した値である。
【0056】
フッ素艶消しフィルム(F1)には、必要に応じて酸化防止剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤、艶消し剤、加工助剤、耐衝撃助剤、抗菌剤、防カビ剤、発泡剤、離型剤、着色剤、紫外線吸収剤、熱可塑性重合体等の各種添加剤を配合することができる。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤が挙げられる。熱安定剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系熱安定剤、硫黄系熱安定剤及びヒドラジン系熱安定剤が挙げられる。可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル、リン酸エステル、脂肪酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、オキシ安息香酸エステル、エポキシ化合物及びポリエステルが挙げられる。滑剤としては、例えば、脂肪酸エステル、脂肪酸、金属石鹸、脂肪酸アミド、高級アルコール及びパラフィンが挙げられる。帯電防止剤としては、例えば、カチオン系帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤、ノニオン系帯電防止剤及び両イオン系帯電防止剤が挙げられる。難燃剤としては、例えば、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、塩素系難燃剤、窒素系難燃剤、アルミニウム系難燃剤、アンチモン系難燃剤、マグネシウム系難燃剤、ホウ素系難燃剤及びジルコニウム系難燃剤が挙げられる。充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、滑石、蝋石及びカオリンが挙げられる。これら添加剤はそれぞれ単独で、又は二種以上を併用して使用できる。フッ素艶消しフィルム(F1)中のフッ素樹脂(A)及び非架橋のアクリル樹脂(B)以外の成分は10質量%以下が好ましい。
【0057】
フッ素艶消しフィルム(F1)に添加剤を配合する方法としては、例えば、成形品を得るための成形機にフッ素艶消しフィルム(F1)を形成するための原料と共に供給する方法、及び、予めフッ素艶消しフィルム(F1)を形成するための原料に添加剤を配合した原料混合物を各種混練機にて混練する方法が挙げられる。後者の方法で使用される混練機としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリミキサー及びロール混練機が挙げられる。なお、溶融押出しをする場合は、フィルムに印刷する際の印刷抜けや外観不良などの原因となる核や異物を取り除く為に、例えば200メッシュ以上のスクリーンメッシュで溶融状態にある各々の層を構成する樹脂組成物を濾過しながら押出しすることが好ましい。
【0058】
[フッ素艶消しフィルム(F1)の製造方法]
フッ素艶消しフィルム(F1)を得るための成形方法としては、例えば、Tダイ法、インフレーション法等の溶融押出法が挙げられ、これらのうち経済性の点でTダイ法が好ましい。溶融押出温度は、例えば150〜235℃程度である。また、押出機としては、例えば、単軸押出機及び二軸押出機が挙げられる。
【0059】
[フッ素艶消し積層フィルム(F2)]
本発明のフッ素艶消し積層フィルム(F2)は、フッ素艶消し樹脂層(I)とアクリル樹脂層(II)とを積層してなるものである。フッ素艶消し樹脂層(I)は、先に説明したフッ素艶消しフィルム(F1)を構成する材料と同一の樹脂組成物からなる層である。
【0060】
[アクリル樹脂層(II)]
フッ素艶消し積層フィルム(F2)を構成するアクリル樹脂層(II)は、アクリル樹脂組成物からなる層である。このアクリル樹脂組成物としては、ゴム含有重合体を含むアクリル樹脂組成物が好ましく、従来より知られる各種のアクリル樹脂組成物を用いることができる。特に、建材用途などにおいてフッ素艶消し積層フィルム(F2)に柔軟性が必要な場合は、特公昭62−19309号公報、特公昭63−8983号公報等に記載の樹脂組成物が好ましい。また、フッ素艶消し積層フィルム(F2)に、特に、車輌用に使用可能な耐擦り傷性、鉛筆硬度、耐熱性、耐薬品性が必要な場合は、特開平8−323934号公報、特開平11−147237号公報、特開2002−80678号公報、特開2002−80679号公報、特開2005−97351号公報等に記載の樹脂組成物が好ましい。また、特に、インサート成形又はインモールド成形を行った場合の耐成形白化性が必要な場合は、特開2004−137298号公報、特開2005−163003号公報、特開2005−139416号公報、特開2008−106252号公報等に記載の樹脂組成物が好ましい。
【0061】
アクリル樹脂層(II)に好適に用いられるアクリル樹脂組成物としては、例えば、アクリル酸アルキル及び/又はメタクリル酸アルキルと、グラフト交叉剤とを少なくとも重合体の構成成分とする公知のゴム含有多段重合体が挙げられる。中でも、アクリル酸アルキル及び/又はメタクリル酸アルキルと、グラフト交叉剤とを少なくとも重合体の構成成分とするゴム含有多段重合体が好ましい。さらに好ましいゴム含有多段重合体の具体例としては、炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキル及び/又は炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルと、グラフト交叉剤とを少なくとも重合体の構成成分としてなる弾性重合体(S)、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルを少なくとも重合体の構成成分としてなる硬質重合体(H)をこの順に重合して形成してなるゴム含有多段重合体が挙げられる。なお、「アクリル酸アルキル」及び「メタクリル酸アルキル」とは、各々、アクリル酸及びメタクリル酸のアルキルエステルを意味する。
【0062】
上記の弾性重合体(S)は、例えば、炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキル及び/又は炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキル(S1)(以下、「成分(S1)」という)と、必要に応じて用いる共重合可能な二重結合を有する他の単量体(S2)(以下、成分(S2)」という)と、必要に応じて用いる多官能性単量体(S3)(以下、「成分(S3)」という)と、グラフト交叉剤(S4)(以下、「成分(S4)」という)とを構成成分としてなる重合体であって、ゴム含有多段重合体を重合する際の最初に重合されるものである。
【0063】
弾性重合体(S)を構成する成分(S1)のうち、炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルは、直鎖状、分岐状のいずれでもよい。その具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル等が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を混合して使用できる。こららの中では、ガラス転移温度(Tg)の低いものがより好ましく、アクリル酸ブチルが好ましい。また、成分(S1)のうち、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルは、直鎖状、分岐状のいずれでもよい。その具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を混合して使用できる。
【0064】
(メタ)アクリル酸アルキル(S1)は、成分(S1)〜(S3)合計量100質量%に対し、60〜100質量%の範囲内で用いることが好ましい。また、弾性重合体(A)において用いた種類の(メタ)アクリル酸アルキルを、その後の硬質重合体が重合される際においても統一して用いるのが最も好ましい。ただし、成分(S)及び(H)の各重合体において、二種以上の(メタ)アクリル酸アルキルを混合したり、別種の(メタ)アクリル酸アルキルを用いたりしても構わない。なお「(メタ)アクリル酸アルキル」とは、アクリル酸アルキル及び/又はメタクリル酸アルキルを意味するものとする。
【0065】
弾性重合体(S)を構成する成分(S2)は、必要に応じて用いればよい。その具体例としては、炭素数9以上のアルキル基を有するアクリル酸高級アルキル、炭素数4以下のアルコキシ基を有するアクリル酸低級アルコキシ、アクリル酸シアノエチル等のアクリル酸アルキル単量体、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、アルキル置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。成分(S2)は、成分(S1)〜(S3)合計100質量%に対し、0〜40質量%の範囲内で用いることが好ましい。
【0066】
弾性重合体(S)を構成する多官能性単量体(S3)は、必要に応じて用いればよい。その具体例としては、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジメタクリル酸1,4−ブチレングリコール、ジメタクリル酸プロピレングリコール等のジメタクリル酸アルキレングリコールを用いることが好ましい。また、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼンなども使用可能である。また、多官能性単量体(S3)が全く作用しない場合でも、グラフト交叉剤が存在する限りかなり安定なゴム含有多段重合体を与える。例えば耐熱性等が厳しく要求されたりする場合など、その添加目的に応じて任意に用いればよい。成分(S3)は、成分(S1)〜(S3)合計100質量%に対し、0〜10質量%の範囲内で用いることが好ましい。
【0067】
弾性重合体(S)を構成する成分(S4)としては、共重合性のα,β−不飽和カルボン酸又はジカルボン酸のアリル、メタリル又はクロチルエステル等が挙げられる。特に、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸又はフマル酸のアリルエステルが好ましい。これらの中では、特にメタクリル酸アリルが優れた効果を奏する。その他、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等も有効である。成分(A4)は、主としてそのエステルの共役不飽和結合がアリル基、メタリル基又はクロチル基よりはるかに早く反応し、化学的に結合する。
【0068】
成分(S4)の使用量は、成分(S1)〜(S3)の合計量100質量部に対し0.1〜5質量部が好ましく、0.5〜2質量部がより好ましい。これら範囲の下限値は、グラフト結合の有効量の点で意義が有る。また上限値は、次に重合形成される重合体との反応量を適度に抑え、ゴム弾性体の弾性低下を防止する点で意義がある。
【0069】
ゴム含有多段重合体中の弾性重合体(S)の含有量は5〜70質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましい。
【0070】
ゴム含有多段重合体中の弾性重合体(S)は2段以上に分けて重合してもよい。2段以上に分けて重合した場合、各段を構成する単量体成分の比を変えてもよい。
【0071】
ゴム含有多段重合体を構成する硬質重合体(H)は、ゴム含有多段重合体の成形性、機械的性質等に関与する成分であり、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキル(H1)(以下、「成分(H1)」という)と、必要に応じて用いる共重合可能な二重結合を有する他の単量体(H2)(以下、「成分(H2)」という)とを構成成分としてなる重合体であって、ゴム含有多段重合体の最後に重合されるものである。
【0072】
成分(H1)及び(H2)の好ましい具体例は、それぞれ弾性重合体(S)の成分(S1)及び(S2)で挙げたものと同様である。成分(H1)の使用量は成分(H1)及び成分(H2)の合計100質量%に対し51〜100質量%が好ましい。
【0073】
硬質重合体(H)単独のTgは、60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。ゴム含有多段重合体中の硬質重合体(H)の含有量は30〜95質量%が好ましく、40〜70質量%がより好ましい。
【0074】
好ましいゴム含有多段重合体は、以上説明した弾性重合体(S)、及び硬質重合体(H)を基本構造体として有する。また、弾性重合体(S)を重合させた後、硬質重合体(H)を重合させる前に、中間重合体(M)を1段あるいは2段以上に分けて重合させてもよい。
【0075】
この中間重合体(M)は、炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキル(M1)と、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキル(M2)と、必要に応じて用いる共重合可能な二重結合を有する他の単量体(M3)と、必要に応じて用いる多官能性単量体(M4)と、必要に応じて用いるグラフト交叉剤(M5)とを重合体の構成成分とし、かつアクリル酸アルキル成分量が弾性重合体(S)から硬質重合体(H)に向かって単調減少する重合体である。ここで単調減少するとは、中間重合体(M)が弾性重合体(S)の組成と硬質重合体(H)の組成の中間のある一点の組成を有し、弾性重合体(S)から硬質重合体(H)に組成が徐々に連続的に又は段階的に近付くことをいう。特に、中間のある1点の組成を有するものが、得られるフッ素艶消し積層フィルム(F2)の透明性の点でよい。
【0076】
成分(M1)〜(M5)の好ましい具体例は、それぞれ弾性重合体(S)の成分(S1)〜(S4)で挙げたものと同様である。特に、中間重合体(M)に用いるグラフト交叉剤(M5)は、各重合体を密に結合させ、優れた諸性質を得るため、用いることが好ましい。
【0077】
成分(M1)の使用量は、中間重合体(M)中10〜90質量%が好ましい。成分(M2)の使用量は10〜90質量%が好ましい。成分(M3)の使用量は0〜20質量%が好ましい。成分(M4)の使用量は0〜10質量%が好ましい。成分(M5)の使用量は0.1〜5質量%が好ましい。
【0078】
ゴム含有多段重合体中の中間重合体(M)の含有量は、0〜35質量%が好ましい。
【0079】
乳化重合法により製造されるゴム含有多段重合体の平均粒子径としては、これを主成分とするフッ素艶消し積層フィルム(F2)の機械特性、透明性を考慮すると0.08〜0.3μmの範囲が好ましい。
【0080】
ゴム含有多段重合体を得る方法は例えば乳化重合があるが特に限定されない。例えば、弾性重合体(S)を与える単量体あるいは単量体混合物を水及び界面活性剤と混合して調製した乳化液を反応器に供給し重合し、その後、場合によっては中間重合体(M)、及び硬質重合体(H)を与える単量体あるいは単量体混合物をそれぞれ順に反応器に供給し重合する方法が好ましい。
【0081】
乳化液を調製する際に使用される界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤が使用できる。特にアニオン系の界面活性剤が好ましい。
【0082】
重合に使用する重合開始剤は公知のものが使用できる。その添加方法は水相、単量体相いずれか片方、又は、双方に添加する方法を用いることができる。好ましい開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤又は酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が挙げられる。この中でレドックス系開始剤がさらに好ましく、特に硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
【0083】
重合温度は用いる重合開始剤の種類や量によって異なるが、好ましくは40〜120℃、さらに好ましくは60〜95℃である。
【0084】
このゴム含有多段重合体を含むポリマーラテックスを必要に応じて濾材を配した濾過装置を用いて処理することができる。ゴム含有多段重合体は、このラテックスから塩析、酸析凝固、噴霧乾燥、又は凍結乾燥等の方法によって粉状で回収される。
【0085】
アクリル樹脂層(II)は、必要に応じて、例えば安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、発泡剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤等の配合剤を含むことができる。
【0086】
特に基材の保護の点においては、耐候性を付与するために紫外線吸収剤を添加することが好ましい。紫外線吸収剤の種類は、特に限定されないが、分子量400以上のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、分子量400以上のトリアジン系紫外線吸収剤が特に好ましい。前者の市販品としては、例えば、チバスペシャリティケミカルズ社の商品名チヌビン234、旭電化工業社の商品名アデカスタブLA−31、後者の市販品としては、例えば、チバスペシャリティケミカルズ社の商品名チヌビン1577、旭電化工業社の商品名アデカスタブLA−46等が挙げられる。
【0087】
紫外線吸収剤の添加量は、アクリル樹脂層(II)を構成する樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。耐候性の観点から、より好ましくは0.5質量部、特に好ましくは1質量部以上である。他方、フッ素艶消し積層フィルム(F2)の製膜時の工程汚れ、耐溶剤性、透明性の観点から、5質量部以下がより好ましく、3質量部以下が特に好ましい。
【0088】
アクリル樹脂層(II)には、特に、光安定剤が添加されていることが好ましい。光安定剤としては、公知のものを用いることが出来るが、特にヒンダードアミン系光安定剤等のラジカル捕捉剤が好ましい。このような光安定剤の市販品として、旭電化工業社のアデカスタブLA−57、アデカスタブLA−67、サノールLS−770等(以上、商品名)が挙げられる。
【0089】
ヒンダードアミン系光安定剤の添加量は、アクリル樹脂層(II)を構成する樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましい。耐光性の観点から、より好ましくは0.2質量部以上である。他方、フッ素艶消し積層フィルム(F2)の製膜時の工程汚れを防止する観点から、より好ましくは2質量部以下、特に好ましくは1質量部以下である。
【0090】
これら配合剤の添加方法としては、例えば、アクリル樹脂層(II)を成形するための押出機にアクリル樹脂組成物と共に供給する方法、アクリル樹脂組成物にあらかじめ配合剤を添加した混合物を各種混練機にて混連混合する方法が挙げられる。後者の方法に使用する混練機としては、通常の単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロール混練機等が挙げられる。なお、溶融押出しをする場合は、フィルムに印刷する際の印刷抜けや外観不良などの原因となる核や異物を取り除く為に、200メッシュ以上のスクリーンメッシュで溶融状態にある各々の層を構成する樹脂組成物を濾過しながら押出しすることが好ましい。
【0091】
フッ素艶消し積層フィルム(F2)の厚みは300μm以下が好ましい。積層成形品に用いるフィルムの場合は、その厚みは50μm〜300μmが好ましい。この厚みが50μm以上であると、成形品外観において十分な深みが得られる。また特に、複雑な形状に成形する場合、延伸によって十分な厚みが得られる。一方、厚みが300μm以下であると、適度な剛性を有することになるので、ラミネート性、二次加工性等が向上する。また、単位面積あたりの質量の点で、経済的に有利になる。さらには、製膜性が安定してフィルムの製造が容易になる。
【0092】
フッ素艶消し樹脂層(I)とアクリル樹脂層(II)の層厚みの比率(以下、単に「(I)/(II)」という)は、特に制限されない。ただし、フッ素艶消し積層フィルム(F2)の耐溶剤性、コスト、表面硬度、透明性、艶消し外観及び印刷適性の観点から、(I)/(II)=1/99〜20/80が好ましく、(I)/(II)=2/98〜10/90がより好ましい。なお、本発明において、フッ素艶消し樹脂層(I)とアクリル樹脂層(II)の各層の厚みは、フッ素艶消し積層フィルム(F2)を断面方向に70nmの厚みに切断したサンプルを、透過型電子顕微鏡にて観察し、5箇所でそれぞれの厚みを測定し、それらを平均することで算出する。透過型電子顕微鏡の市販品としては、例えば日本電子(株)製J100S(商品名)がある。
【0093】
フッ素艶消し積層フィルム(F2)の表面硬度に関しては、その鉛筆硬度(JIS K5400)がBより高い硬度であることが好ましい。更にHB以上がより好ましく、F以上が最も好ましい。鉛筆硬度がBより高い硬度のフッ素艶消し積層フィルム(F2)を用いると、後述するインサート成形あるいはインモールド成形を施す工程中で傷が付きにくく、更に成形品の耐擦り傷性も良好である。車両用途に使用される場合、フッ素艶消し積層フィルム(F2)の鉛筆硬度はHB以上であることがより好ましい。フッ素艶消し積層フィルム(F2)の鉛筆硬度がHB以上であると、得られる積層体は、ドアウエストガーニッシュ、フロントコントロールパネル、パワーウィンドウスイッチパネル、エアバッグカバー等、各種車両用部材に好適に使用することが出来る。更に、鉛筆硬度がFより高い硬度であると、ガーゼ等表面の粗い布で擦傷しても傷がほとんど目立たないため、工業的利用価値が高くなる。フッ素艶消し積層フィルム(F2)の表面硬度は、上述したようにフッ素艶消し樹脂層(I)とアクリル樹脂層(II)の層厚みの比率((I)/(II))、或いはアクリル樹脂層(II)を構成するアクリル樹脂組成物を選択することにより調整すればよい。
【0094】
[フッ素艶消し積層フィルム(F2)の製造方法]
本発明のフッ素艶消し積層フィルム(F2)を製造する為の方法としては、従来より知られる各種の方法を用いることができる。例えば、フィードブロックダイ又はマルチマニホールドダイ等を介した共押出成形法でフッ素艶消し樹脂層(I)とアクリル樹脂層(II)の積層構造を形成する方法や、フッ素艶消し樹脂層(I)とアクリル樹脂層(II)を夫々Tダイを用いた溶融押出し法等によりフィルム状に成形して、その2種のフィルムを熱ラミネート法により積層する方法がある。また、フッ素艶消し樹脂層(I)をフィルム状にし、その後アクリル樹脂層(II)を溶融押出し法により積層する押し出しラミネーション法等でもよい。この場合、フッ素艶消し樹脂層(I)とアクリル樹脂層(II)を入れ替えて製造しても良い。特に経済性、工程簡略化の観点から、共押出成形法によりフッ素艶消し樹脂層(I)及びアクリル樹脂層(II)の積層構造を形成することが好ましい。具体的には、例えば、上述したようなフィードブロックダイ又はマルチマニホールドダイを介した共押出成形法が特に好ましい。
【0095】
また、例えば、特開2002−361712号公報に記載されているように、フィードブロックダイ又はマルチマニホールドダイ等を介した共押出成形法によりフッ素艶消し樹脂層(I)及びアクリル樹脂層(II)の積層構造を形成する際、鏡面ロールとゴムロールで挟持して製造する方法も好ましい。フッ素艶消し積層フィルム(F2)を構成するアクリル樹脂層(II)側が鏡面ロールに接するようにした場合、アクリル樹脂層(II)が積層されている側の鏡面平滑性がさらに優れ、その結果優れた印刷適性の付与が可能となるので好ましい。また、フッ素艶消し樹脂層(I)側はゴムロールに接するようにするのが好ましい。この場合、フッ素艶消し樹脂層(I)の表面光沢度を上げることなく(つまり、良好な艶消し度合いを保持しつつ)、アクリル樹脂層(II)側の鏡面平滑性を向上でき、工業的利用価値が高い。
【0096】
使用するゴムロールは特に限定されないが、耐熱性の観点からシリコーン製ゴムロールが好ましい。シリコーン製ゴムロールの表面仕上げには、公知の加工方法を使用できる。ただし、フッ素艶消し積層フィルム(F2)の表面外観と、最終的にインサート成形或いはインモールド成形により得られる積層体の表面外観との合致性の観点から、室温硬化型シリコーンゴムを最表面に塗布仕上げすることで製造したゴムロールが好ましい。
【0097】
フッ素艶消し積層フィルム(F2)を構成するフッ素艶消し樹脂層(I)とアクリル樹脂層(II)はそれぞれ複数層から構成されていても良い。
【0098】
また、溶融押出しをする場合は、印刷抜けの原因となる核や異物を取り除く為に、200メッシュ以上のスクリーンメッシュで溶融状態にある各々の層を構成する樹脂組成物を濾過しながら押出しすることが好ましい。
【0099】
[フッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)]
本発明のフッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)は、フッ素艶消し積層フィルム(F2)の少なくとも片面に絵柄層(III)を有するものである。特に、印刷適性の観点からアクリル樹脂層(II)側に絵柄層(III)を有するものが好ましい。
【0100】
また、後述する積層シート(F4)あるいは積層成形品の製造時には、絵柄層(III)を熱可塑性樹脂層(IV)あるいは基材(V)との接着面側に配することが、加飾面の保護及び高級感の付与の観点から好ましい。
【0101】
[絵柄層(III)]
フッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)を構成する絵柄層(III)は、公知の方法で形成できる。特に、印刷法で形成された印刷層と蒸着法で形成された蒸着層のうち一方又は両方を絵柄層(III)として用いることが好ましい。この印刷層は、後述するインサート又はインモールド成形によって得られた積層体表面の模様又は文字等となる。印刷柄としては、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字、全面ベタ、メタリック等からなる絵柄が挙げられる。
【0102】
絵柄層(III)としての印刷層の形成には、バインダー及び適切な色の顔料又は染料を含有する着色インキを用いるとよい。バインダーとしては、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体等のポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキッド樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂等の樹脂が挙げられる。顔料としては、公知の各種顔料を使用できる。例えば、黄色顔料としては、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン等の有機顔料、黄鉛等の無機顔料が挙げられる。赤色顔料としては、ポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドン等の有機顔料、弁柄等の無機顔料が挙げられる。青色顔料としては、フタロシアニンブルー等の有機顔料、コバルトブルー等の無機顔料が挙げられる。黒色顔料としては、アニリンブラック等の有機顔料が挙げられる。白色顔料としては、二酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。染料としては、公知の各種染料を使用できる。
【0103】
印刷層の形成方法としては、オフセット印刷法、グラビア輪転印刷法、スクリーン印刷法等の公知の印刷法、ロールコート法、スプレーコート法等の公知のコート法、フレキソグラフ印刷法等が挙げられる。印刷層の厚さは、必要に応じて適宜決めればよく、通常、0.5〜30μm程度である。印刷層は、後述するインサート又はインモールド成形によって得られた積層体において所望の表面外観が得られるよう、その成形時の伸張度合いに応じて適宜厚さを選択すればよい。
【0104】
絵柄層(III)としての蒸着層は、例えば、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、インジウム、スズ、銀、チタニウム、鉛及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属又はこれらの合金若しくは金属化合物を用いて形成できる。蒸着層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等の方法が挙げられる。蒸着層は、後述するインサート又はインモールド成形によって得られた積層成形体において所望の表面外観が得られるよう、その成形時の伸張度合いに応じて適宜厚さを選択すればよい。
【0105】
[積層シート(F4)]
本発明の積層シート(F4)は、フッ素艶消しフィルム(F1)、フッ素艶消し積層フィルム(F2)、及び、フッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)からなる群より選ばれるフィルムと熱可塑性樹脂層(IV)とが積層されてなるシートである。それらフィルムの少なくとも片面に熱可塑性樹脂層(IV)を積層すればよいが、特に、フィルム表面の平滑性が優れているアクリル樹脂層(II)側の面が熱可塑性樹脂層(IV)に配するように積層することが好ましい。
【0106】
[熱可塑性樹脂層(IV)]
積層シート(F4)を構成する熱可塑性樹脂層(IV)は、後述する基材(V)との密着性を高める目的から、基材(V)との相溶性を有する材料からなるものが好ましい。特に、基材(V)と同じ材料からなるものがより好ましい。
【0107】
熱可塑性樹脂層(IV)としては、公知の熱可塑性樹脂フィルム又はシート用いることができる。その具体例として、アクリル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体又はその鹸化物、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリオレフィン系共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステル等のポリエステル系樹脂、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、12−ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン樹脂、セルロースアセテート、ニトロセルロース等の繊維素誘導体、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン−テトラフロロエチレン共重合体等のフッ素樹脂等又はこれらから選ばれる2種又は3種以上の共重合体又は混合物、複合体、積層体等が挙げられる。これらのうち、絵柄層(III)の形成性(絵柄層(III)は、フッ素艶消しフィルム(F1)あるいはフッ素艶消し加飾フィルム(F2)上に形成する代わりに熱可塑性樹脂層(IV)に形成することもできる)、積層シート(F4)の二次成形性の観点から、アクリル樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン、ポリカーボネートが好ましい。
【0108】
熱可塑性樹脂層(IV)には、必要に応じて、例えば、安定剤、酸化防止剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃剤、発泡剤、充填剤、抗菌剤、防カビ剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、難燃剤等の配合剤を配合してもよい。
【0109】
熱可塑性樹脂層(IV)の厚さは、必要に応じて適宜決めればよい。通常、20〜500μm程度とすることが好ましい。熱可塑性樹脂層(IV)は、積層シート(F4)の外観が完全に円滑な上面を呈し、基材の表面欠陥を吸収する又は射出成形時に絵柄層が消失しない程度の厚さを有することが好ましい。
【0110】
積層シート(F4)を得る方法としては、熱ラミネーション、ドライラミネーション、ウェットラミネーション、ホットメルトラミネーション等の公知の方法が挙げられる。また、押出しラミネーションにより、フッ素艶消しフィルム(F1)あるいはフッ素艶消し積層フィルム(F2)と熱可塑性樹脂層(IV)とを積層することもできる。
【0111】
積層シート(F4)は、衝撃、変形等の外力に対して取り扱い上十分な強度を発現する。例えば、後述するインサート成形等でフィルムを真空成形した後に金型から取り外したり、その真空成形品を射出成形用金型に装着したりするときに被る衝撃、変形等に対しても、割れ等が生じ難く、取り扱い性が良好となる。
【0112】
[ヒートシール層]
ヒートシール層は、本発明のフッ素艶消しフィルム(F1)、フッ素艶消し積層フィルム(F2)、フッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)と熱可塑性樹脂層(IV)とを強固に貼りあわせる場合に適宜使用する。本発明のフッ素艶消しフィルム(F1)、フッ素艶消し積層フィルム(F2)、フッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)と熱可塑性樹脂層(IV)とが接着性を有している場合には必要ないが、層間強度を上げるためには使用する方が好適である。ヒートシール層に用いるヒートシール剤としては、アクリル−ポリエステル−塩化酢酸ビニル系樹脂が好適であるが、特にこれに限定するものではない。
【0113】
[積層成形品]
本発明の積層成形品は、フッ素艶消しフィルム(F1)、フッ素艶消し積層フィルム(F2)、フッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)、及び、積層シート(F4)からなる群より選ばれるフィルム又はシートを基材(V)に積層したものである。特に、フィルム表面の平滑性が優れているアクリル樹脂層(II)側の面が基材(V)に接するように積層することが好ましい。
【0114】
基材(V)の材質としては、例えば、樹脂、木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木材板、木質繊維板等の水質板、鉄、アルミニウム等の金属等が挙げられる。
【0115】
基材(V)を構成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ウレタン系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の汎用の熱可塑性又は熱硬化性樹脂、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート等の汎用エンジニアリング樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、液晶ポリエステル、ポリアリル系耐熱樹脂等のスーパーエンジニアリング樹脂等、ガラス繊維又は無機フィラー(タルク、炭酸カルシウム、シリカ、マイカ等)等の補強材、ゴム成分等の改質剤を添加した複合樹脂又は各種変性樹脂等が挙げられる。
【0116】
これらのうち、溶融接着可能な樹脂が好ましく、例えば、ABS樹脂、AS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂又はこれらを主成分とする樹脂が好ましい。接着性の点では、ABS樹脂、AS樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂又はこれらを主成分とする樹脂が好ましく、特にABS樹脂、ポリカーボネート樹脂又はこれらを主成分とする樹脂がより好ましい。また、ポリオレフィン系樹脂等の熱融着しない樹脂であっても、接着層を設けることで成形時に接着させることは可能である。
【0117】
積層体の製造方法としては、二次元形状の積層体の場合で、かつ、基材が熱融着できるものの場合は、熱ラミネーション等の公知の方法を用いることができる。例えば、木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木材板、木質繊維板等の水質板、鉄、アルミニウム等の金属等、熱融着しない基材に対しては、接着層を介して貼り合わせることが可能である。
【0118】
三次元形状の積層成形品の場合、その製造方法としては、例えば、インサート成形法、インモールド成形法、真空成形装置を用いて予め準備しておいた型の表面に被成形物をラミネート成形する方法(以下「3次元オーバーレイラミネート成形法」と言う)が挙げられる。
【0119】
インサート成形法とは、印刷等の加飾を施したフィルム又はシートを、あらかじめ真空成形等によって三次元の形状に成形し、不要なフィルム又はシート部分をトリミング加工により除去し、その後射出成形金型内に移し、基材となる樹脂を射出成形することにより一体化させて成形品(積層体)を得る方法である。
【0120】
インモールド成形法とは、印刷等の加飾を施したフィルム又はシートを、射出成形金型内に設置し、真空成形を施し、その後同じ金型内で基材となる樹脂を射出成形することにより一体化させて成形品(積層体)を得る方法である。
【0121】
3次元オーバーレイラミネート成形法では、まず、シートで仕切られた2つの密閉空間を形成して一方の空間側に成形体を配置し、両方の空間又は成形体を配置している空間のみを減圧する。次いで、シートを加熱軟化し、一方の空間側から他方の空間側に向かってシート表面に成形体を押し当てた状態で、成形体を配置していない他方の空間のみを常圧に戻し、差圧を利用してシートを成形体に貼り付ける。この成形法では、加熱されたシートが全体的に均一に圧力を受けて成形体の表面に貼り付けられるので、成形体の表面が曲面等であっても良好にシートを成形体に貼り付けることができる。使用する装置としては、例えば、布施真空(株)製の「TOM(商品名)」が挙げられる。
【0122】
本発明のフッ素艶消しフィルム(F1)、フッ素艶消し積層フィルム(F2)、フッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)、積層シート(F4)は、高温時の伸度に富んでいるので、真空成形により三次元形状を付与する場合に非常に有利である。
【0123】
射出成形に使用する基材(V)としては、射出成形後の収縮率が、本発明のフッ素艶消しフィルム(F1)、フッ素艶消し積層フィルム(F2)、フッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)、積層シート(F4)の収縮率に近似した樹脂が好ましい。両者の収縮率が近似していると、インモールド成形、インサート成形及び3次元オーバーレイラミネート成形によって得た積層体の反り、或いはフィルム又はシートの剥がれ等の不具合が生じ難くなる。
【実施例】
【0124】
以下、実施例及び比較例により本発明を説明する。以下の記載において、「部」は「質量部」を表す。また、各フィルム、シート及び積層成形品の評価は下記の方法で行った。なお、以下の記載における略号は次の通りである。
「MMA」:メタクリル酸メチル
「MA」:アクリル酸メチル
「n−BA」:アクリル酸n−ブチル
「1,3−BD」:1,3−ブチレングリコールジメタクリレート
「AMA」:メタクリル酸アリル
「CHP」:クメンハイドロパーオキサイド
「LPO」:ラウリルパーオキサイド
「t−BH」:t−ブチルハイドロパーオキサイド
「EDTA」:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム
「HEMA」:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
「MEK」:メチルエチルケトン。
【0125】
(1)非架橋のアクリル樹脂(B)の質量平均粒子径:
HORIBA(株)製のレーザ回折散乱式粒度分布測定装置LA−910を用いて非架橋のアクリル樹脂(B)の質量平均粒子径を測定した。
【0126】
(2)アクリル樹脂組成物(2−1)及び(2−2)の質量平均粒子径:
大塚電子(株)製の光散乱光度計DLS−700(商品名)を用い、動的光散乱法でアクリル樹脂組成物(2−1)及び(2−2)の質量平均粒子径を測定した。
【0127】
(3)非架橋のアクリル樹脂(B)の固有粘度:
クロロホルム溶媒中、25℃において、サン電子工業製AVL−2C自動粘度計により非架橋のアクリル樹脂(B)の固有粘度を測定した。
【0128】
(4)アクリル樹脂組成物(2−1)及び(2−2)のゲル含有率:
所定量(抽出前質量)のアクリル樹脂組成物(2−1)及び(2−2)の粉体をアセトン溶媒中、還流下で抽出処理し、得られた処理液を遠心分離により分別し、乾燥後、アセトン不溶分の質量(抽出後質量)を測定した。ゲル含有率は下式にて算出した。
【0129】
ゲル含有率(%)=(抽出後質量(g)/抽出前質量(g))×100
(5)外観:
A4サイズのフッ素艶消しフィルム(F1)又はフッ素艶消し樹脂層(I)側を目視にて観察し、下記基準で外観を評価した。
「○」:非架橋のアクリル樹脂の分散不良によるフィッシュアイが0〜3個。
「△」:非架橋のアクリル樹脂の分散不良によるフィッシュアイが4〜10個。
「×」:非架橋のアクリル樹脂の分散不良によるフィッシュアイが11個以上。
【0130】
(6)60度表面光沢度:
JIS Z8741に準じ、ポータブル光沢計(コニカミノルタセンシング(株)製、商品名:GM−268)を用い、フッ素艶消しフィルム(F1)又はフッ素艶消し樹脂層(I)側の60度表面光沢度を測定した。
【0131】
(7)艶消し性:
フッ素艶消しフィルム(F1)又はフッ素艶消し樹脂層(I)側の表面を目視にて観察し、下記基準で艶消し性を評価した。
「◎」:極めてきめの細かい艶消し状態を有している。
「○」:きめの細かい艶消し状態を有している。
「×」:きめの粗い艶消し状態を有している。
【0132】
(8)フィルム表面凹凸の平均間隔(Sm):
(株)キーエンス製の形状測定レーザマイクロスコープVK−8500(商品名)を用い、倍率200倍でフッ素艶消しフィルム(F1)表面に形成された表面凹凸の平均間隔(Sm)を測定した。
【0133】
(9)耐溶剤性1:
フッ素艶消しフィルム(F1)又はフッ素艶消し樹脂層(I)の表面に溶剤(アセトン又はMEK)を1滴垂らし、室温で乾燥するまで放置した。乾燥後の試料表面を目視観察し、下記の基準で耐溶剤性を評価した。
「○」:試料表面に変化はない。
「△」:試料表面に僅かに溶剤の痕が残っている。
「×」:試料表面に溶剤の痕がはっきり残っている、又は試料表面の溶剤が接触した面が白濁している。
【0134】
(10)耐溶剤性2:
フッ素艶消しフィルム(F1)又はフッ素艶消し樹脂層(I)の表面にガーゼを載せ、その上にサンタンローション(商品名:Coppertone Waterbabies 30SPF)を1滴垂らし、さらにその上にアルミ板を含めた500gの荷重をかけ、74℃で1時間放置した。試験後の試料表面を目視観察し、下記の基準で耐溶剤性を評価した。
「○」:試料表面に変化はない。
「△」:試料表面に僅かに溶剤の痕が残っている。
「×」:試料表面に溶剤あるいはガーゼの痕がはっきり残っている、又は試料表面の溶剤が接触した面が白濁している。
【0135】
(11)耐溶剤性3:
フッ素艶消しフィルム(F1)又はフッ素艶消し樹脂層(I)の表面に10%乳酸水溶液を1滴垂らし、80℃で24時間放置した。試験後の試料表面を目視観察し、下記の基準で耐溶剤性を評価した。
「○」:試料表面に変化はない。
「△」:試料表面に僅かに溶剤の痕が残っている。
「×」:試料表面に溶剤の痕がはっきり残っている、フィルム表面が膨潤している、あるいは、溶剤が接触した面が白濁している。
【0136】
(12)耐溶剤性4:
フッ素艶消しフィルム(F1)又はフッ素艶消し樹脂層(I)の表面に内径38mm、高さ15mmのポリエチレン製円筒を置き、圧着器で試験片に強く密着させ、その開口部に自動車用芳香剤((株)ダイヤケミカル製、グレイスメイトポピー柑橘系)を5ml注入した。開口部にガラス板で蓋をした後、55℃に保持した恒温槽に入れ4時間放置した。試験後、圧着器を取り外し、試験片を水洗した後風乾し、試験部の表面の白化状態を観察した。
「○」:試料表面に変化はない。
「△」:試料表面に僅かに溶剤の痕が残っている。
「×」:試料表面に溶剤の痕がはっきり残っている、又は、溶剤が接触した面が白濁している。
【0137】
(13)耐溶剤性5:
フッ素艶消しフィルム(F1)又はフッ素艶消し樹脂層(I)の表面に内径38mm、高さ15mmのポリエチレン製円筒を置き、圧着器で試験片に強く密着させ、その開口部にプラスチック用可塑剤としてジオクチルフタレートを5ml注入した。開口部にガラス板で蓋をした後、80℃に保持した恒温槽に入れ72時間放置した。試験後、圧着器を取り外し、試験片を水洗した後風乾し、試験部の表面の白化状態を観察した。
「○」:試料表面に変化はない。
「△」:試料表面に僅かに溶剤の痕が残っている。
「×」:試料表面に溶剤の痕がはっきり残っている、又は、溶剤が接触した面が白濁している。
【0138】
(14)耐溶剤性6:
フッ素艶消しフィルム(F1)又はフッ素艶消し樹脂層(I)の表面にN,N−ジエチル−m−トルアミドを1滴垂らし、80℃で24時間放置した。試験後の試料表面を目視観察し、下記の基準で耐溶剤性を評価した。
「○」:試料表面に変化はない。
「△」:試料表面に僅かに溶剤の痕が残っている。
「×」:試料表面に溶剤の痕がはっきり残っている、フィルム表面が膨潤している、あるいは、溶剤が接触した面が白濁している。
【0139】
(15)フッ素艶消し樹脂層(I)及びアクリル樹脂層(II)各層の厚さ:
フッ素艶消し樹脂積層フィルム(F2)を断面方向に70nmの厚みに切断したサンプルを、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製、商品名J100S)にて観察し、5箇所でそれぞれの厚みを測定し、それらを平均することで算出し求めた。
【0140】
(16)フッ素艶消し積層フィルム(F2)の印刷適性:
アクリル樹脂層(II)側に絵柄層としてシルバーメタリック柄をグラビア印刷にて設けた。印刷抜け個数をカウントし、以下の評価をした。
「○」:印刷抜け個数が1個/m2未満。
「×」:印刷抜け個数が10個/m2以上。
【0141】
(17)積層成形品の表面硬度:
積層成形品のフッ素艶消し樹脂層(I)面を用い、JIS K5400に従って表面硬度を測定した。
【0142】
[調製例1](非架橋のアクリル樹脂(B)としての水酸基含有重合体(1−1)の製造)
攪拌機、還流冷却器、窒素ガス導入口等の付いた反応容器に以下の単量体混合物(1)を仕込んだ。次いで、容器内を十分に窒素ガスで置換した後、反応容器内の単量体混合物(1)を攪拌しながら75℃まで加熱し、窒素ガス気流中で3時間反応させた。この後、反応容器内の温度を90℃に昇温して、更に45分保持して重合を完了し、引き続いて150メッシュ(目開き100μm)の条件で篩別を行い、通過したビーズを脱水、乾燥して水酸基含有重合体(1−1)を得た。
【0143】
得られた水酸基含有重合体(1−1)のSPAは22.6J1/2cm-3/2であった。また、重合体のTgは77℃、固有粘度は0.06L/g、Mw/Mnは2.1、質量平均粒子径は70μmであった。また、220℃、せん断速度60sec-1の条件下におけるせん断粘度(SVA)は1662.3Pa・sであった。
【0144】
<単量体混合物(1)>
MA:10部
MMA:60部
HEMA:30部
n−オクチルメルカプタン:0.18部
LPO:1部
第三リン酸カルシウム:1.8部
水:250部。
【0145】
[調製例2](アクリル樹脂層(II)としてのアクリル樹脂組成物(2−1)の製造)
<ゴム含有重合体(a)>
攪拌機を備えた容器に脱イオン水8.5部を仕込んだ後、以下に示す単量体混合物(a−A−1)をCHP0.025部と共に投入し、室温下にて攪拌混合した。次いで、攪拌しながら、乳化剤(東邦化学工業(株)製、商品名フォスファノールRS610NA)1.3部を上記容器内に投入し、攪拌を20分間継続して乳化液を調製した。
(a−A−1)
MMA:0.3部
n−BA:4.5部
1,3−BD:0.2部
AMA:0.05部
次に、冷却器付き重合容器内に脱イオン水186.5部を投入し、70℃に昇温した。さらに、イオン交換水5部にソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.20部、硫酸第一鉄0.0001部及びEDTA0.0003部を加えて調製した混合物を、重合容器内に一度に投入した。次いで、窒素下で攪拌しながら、調製した乳化液を8分間にわたって重合容器に滴下した後、15分間反応を継続させ、単量体混合物(a−A)の第1段目の重合を完結した。
【0146】
続いて、以下に示す単量体混合物(a−A−2)を、CHP0.016部と共に、90分間にわたって重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、単量体混合物(a−A)の二段目の重合を完結させた。
(a−A−2)
MMA:1.5部
n−BA:22.5部
1,3−BD:1.0部
AMA :0.25部
一段目の重合に使用した単量体混合物(a−A−1)に関してFOXの式から求めたTgは−48℃であり、二段目の重合に使用した単量体混合物(a−A−2)に関してFOXの式から求めたTgは−48℃であった。
【0147】
続いて、以下に示す単量体混合物(a−B)を、CHP0.0125部と共に、45分間にわたって重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させた。単量体混合物(a−B)から得られる重合体のFOXの式から求めたTgは20℃であった。
(a−B)
MMA:6部
n−BA:4部
AMA:0.075部
続いて、以下に示す単量体混合物(a−C)をn−OM0.19部及びt−BH0.08部と共に、140分間にわたって重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、ゴム含有重合体(a)の重合体ラテックスを得た。
(a−C)
MMA:55.2部
MA:4.8部
単量体混合物(a−C)に関してFOXの式から求めたTgは84℃であった。また、重合後に測定したゴム含有重合体(a)の質量平均粒子径は0.12μmであった。
【0148】
得られたゴム含有重合体(a)の重合体ラテックスを、濾材としてSUS製のメッシュ(平均目開き:62μm)を取り付けた振動型濾過装置を用いて濾過した後、酢酸カルシウム3.5部を含む水溶液中で塩析させ、水洗して回収し、乾燥し、粉体状のゴム含有重合体(a)を得た。ゴム含有重合体(a)のゲル含有率は60質量%であった。
【0149】
上記手順で得たゴム含有重合体(a)100部、さらに配合剤として、紫外線吸収剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名チヌビン234)1.4部、酸化防止剤(旭電化工業(株)製、商品名アデカスタブAO−50)0.1部、及び、光安定剤(旭電化工業(株)製、商品名LA−67)0.3部を、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。この混合物を230℃に加熱した脱気式押出機(池貝鉄工(株)製、商品名PCM−30)に供給し、混練して、300メッシュのスクリーンメッシュで異物を取り除きながら押出機で押し出し、ペレット化し、アクリル樹脂層(II)を構成するアクリル樹脂組成物(2−1)を得た。
【0150】
[調製例3](アクリル樹脂層(II)としてのアクリル樹脂組成物(2−2)の製造)
<ゴム含有重合体(b)>
容器にあらかじめ仕込む脱イオン水の量を10.8部に変更したこと以外は、調製例2と同様にして乳化液を調製した。次いで投入する脱イオン水の量を139.2部に変更し、昇温の温度を75℃に変更したこと以外は、調製例2の単量体混合物(a−A)の第1段目の重合と同様にして、単量体混合物(b−A)の第1段目の重合を完結した。
【0151】
続いて、単量体成分(a−A−2)の代わりに、以下に示す単量体成分(b−A−2)を使用したこと以外は、調製例2の単量体混合物(a−A)の第2段目の重合と同様にして、単量体混合物(b−A)の第2段目の重合を完結した。
(b−A−2)
MMA:9.6部
n−BA:14.4部
1,3−BD:1.0部
AMA:0.25部
一段目の重合に使用した単量体混合物(b−A−1)に関してFOXの式から求めたTgは−48℃であり、二段目の重合に使用した単量体混合物(b−A−2)に関してFOXの式から求めたTgは−10℃であった。
【0152】
続いて、単量体混合物(a−B)の代わりに、以下に示す単量体混合物(b−B)を使用したこと以外は、調製例2の単量体混合物(a−B)の重合と同様にして重合を行った。
(b−B)
MMA:6部
MA : 4部
AMA:0.075部
単量体混合物(b−B)に関してFOXの式から求めたTgは、60℃であった。
【0153】
続いて、単量体混合物(a−C)の代わりに、以下に示す単量体混合物(b−C)を使用し、n−OMの量を0.264部に変更したこと以外は、調製例2の単量体混合物(a−C)の重合と同様にして重合を行い、ゴム含有重合体(b)の重合体ラテックスを得た。
(b−C)
MMA:57部
MA:3部
単量体混合物(b−C)に関してFOXの式から求めたTgは99℃であった。また、重合後に測定したゴム含有重合体(b)の質量平均粒子径は0.11μmであった。
【0154】
得られたゴム含有重合体(b)の重合体ラテックスを、調製例2と同様にして濾過〜回収し、乾燥し、粉体状のゴム含有重合体(b)を得た。ゴム含有重合体(b)のゲル含有率は70質量%であった。
【0155】
そして、ゴム含有重合体(a)100部の代わりに、ゴム含有重合体(b)45部と熱可塑性重合体[MMA/MA共重合体(MMA/MA=99/1(質量比)、還元粘度ηsp/c=0.06L/g)55部を使用したこと以外は、調製例2と同様にして各添加材を混合し、300メッシュのスクリーンメッシュで異物を取り除きながら押出機で押し出し、ペレット化し、アクリル樹脂層(II)を構成するアクリル樹脂組成物(2−2)を得た。
【0156】
<実施例1>
フッ素樹脂(A)の「(a)」としてポリフッ化ビニリデン(アルケマ(株)製、商品名:KYNAR740、220℃、せん断速度60sec-1の条件下におけるせん断粘度(SVF)=996.7Pa・s、溶解度パラメータ(SPF)=17.1J1/2cm-3/2)100部に対して、調整例1で得た水酸基含有重合体(1−1)5部を配合し、ヘンシェルミキサーを用いて30秒間混合し、2軸押出機(東芝機械(株)製、商品名:TEM45、L/D=32)を用いてシリンダー温度180〜200℃、ダイヘッド温度220℃、スクリュー回転数(Ns)250rpm、押出量(Q)80kg/hr又は50kg/hrの2条件で、300メッシュのスクリーンメッシュで異物を取り除きながら押し出し、切断してペレット化した。
【0157】
得られたペレットを乾燥後、夫々40φ製膜機((株)ムサシノキカイ製)を用いてT−ダイ法で300メッシュのスクリーンメッシュで異物を取り除きながら製膜し、厚み約50μmのフッ素フィルム(F1)を得た。なお、製膜に際してはシリンダー温度を180〜220℃に設定し、T−ダイの温度を230℃に設定した。得られたフィルムの60度表面光沢度、艶消し性、外観、Sm及び耐溶剤性についての評価結果を表1に示す。
【0158】
<実施例2〜3、比較例1〜2>
実施例1において、表1に示すフッ素樹脂(A)と非架橋のアクリル樹脂(B)を配合した以外は実施例1と同様に実施した。
【0159】
【表1】

【0160】
表中の略号及び略称は以下の通りである。
・フッ素樹脂(A)の「(a)」:ポリフッ化ビニリデン(アルケマ(株)製、商品名KYNAR740、SVF=996.7Pa・s、SPF=17.1J1/2cm-3/2
・フッ素樹脂(A)の「(b)」:ポリフッ化ビニリデン(クレハ(株)製、商品名KF−T1000、SVF=1173.0Pa・s、SPF=17.1J1/2cm-3/2
・フッ素樹脂(A)の「(c)」:ポリフッ化ビニリデン(アルケマ(株)製、商品名KYNAR760、SVF=2139.3Pa・s、SPF=17.1J1/2cm-3/2
・フッ素樹脂(A)の「(d)」:ポリフッ化ビニリデン(アルケマ(株)製、商品名KYNAR720、SVF=700.8Pa・s、SPF=17.1J1/2cm-3/2
・「水酸基含有重合体(1−1)」:調製例1で得た水酸基含有重合体(SVA=1662.3Pa・s、SPA=22.6J1/2cm-3/2
・「熱可塑性重合体」:メチルメタクリレート(MMA)−メチルアクリレート(MA)共重合体(MMA/MA=87/13(質量比)、還元粘度ηsp/c=0.06L/g、SVA=1443.0Pa・s、SPA=20.3J1/2cm-3/2
・「△σ」:SPA−SPF(J1/2cm-3/2)。
【0161】
上記の実施例及び比較例より、次のことが明らかとなった。
【0162】
実施例1〜3では、押出量(Q)が80kg/hr及び50kg/hrの何れの条件でペレット化した原料を使用しても、フッ素樹脂が本来有する耐溶剤性を備え、且つきめの細かい艶消し状態を有する艶消しフィルムが得られた。ただし、実施例3ではSVA/SVFが低いので、外観の良好な艶消しフィルムが得られたものの、一部の箇所で端部から幅方向に切れ目が生じた。すなわち実施例1及び2に比べて製膜性が若干劣っていた。
【0163】
一方、比較例1ではSVA/SVFが大き過ぎるので、押出量(Q)が80kg/hrの高生産条件でペレット化した原料を使用した場合に、分散不良に伴うフィッシュアイが発生し、外観の良好な艶消しフィルムが得られなかった。また、比較例2では△σ(SP
A−SPF)が低過ぎるので、艶消し性が不十分であった。
【0164】
<実施例4>
フッ素艶消し樹脂層(I)を構成する実施例1で得たフッ素樹脂組成物のペレット、及び、アクリル樹脂層(II)を構成する調製例2で得たアクリル樹脂組成物(2−1)のペレットを80℃で一昼夜乾燥した。シリンダー温度240℃に設定した500メッシュのスクリーンメッシュを設けたノンベントスクリュー型65mmφの押出機を用いて、アクリル樹脂組成物(2−1)を可塑化し、他方、同じくシリンダー温度180〜220℃に設定した500メッシュのスクリーンメッシュを設けた25mmφの押出機を用いて前記フッ素樹脂組成物を可塑化し、次いで240℃に設定した2種2層用マルチマニホールドダイで、アクリル樹脂層(II)側が鏡面冷却ロールに接するようにして厚さ50μmのフッ素艶消し積層フィルム(F2)を作製した。
【0165】
フッ素艶消し積層フィルム(F2)の断面を観察したところ、フッ素艶消し樹脂層(I)の厚みは5μm、アクリル樹脂層(II)の厚みは45μmであった。
【0166】
一方、熱可塑性樹脂層(IV)として、ランダム重合ポリプロピレン樹脂にヒンダードフェノール系酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、酸化鉄(顔料)を含有させた厚さ90μmのフィルム(リケンテクノス(株)製、商品名:リベストTPO)を用いた。この熱可塑性樹脂層(IV)の表面に、絵柄層(III)としてバインダー樹脂がアクリル樹脂と塩化酢酸ビニル樹脂、顔料が少なくともイソインドリン、ジケトピロロピロール、カーボンブラック、フタロシアニンブルーの1つ以上からなるインキを使用してグラビア印刷法により絵柄を印刷した。この絵柄層(III)とフッ素艶消し積層フィルム(F2)のアクリル樹脂層(II)側が接するように配し、これらを熱ラミネートして積層シート(F4)を得た。
【0167】
<実施例5>
アクリル樹脂層(II)として、調製例2で得たアクリル樹脂組成物(2−1)の代わりに調製例3で得たアクリル樹脂層(2−2)を使用し、フッ素艶消し積層フィルムの厚さを125μmに変更したこと以外は、実施例4と同様にして、フッ素艶消し積層フィルム(F2)を得た。
【0168】
フッ素艶消し積層フィルム(F2)の断面を観察したところ、フッ素艶消し樹脂層(I)の厚みは5μm、アクリル樹脂層(II)の厚みは120μmであった。
【0169】
得られたフッ素艶消し積層フィルム(F2)のアクリル樹脂層(II)側に絵柄層(III)としてシルバーメタリック柄をグラビア印刷にて設けて、フッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)を得た。印刷適性評価は「○」であった。
【0170】
さらに、熱可塑性樹脂層(IV)として接着層を有する厚さ0.35mmのABSシートを、接着層とシルバーメタリック調絵柄層とが接するように、熱ラミネーションによって積層し、積層シート(F4)を得た。この積層シート(F4)を用いて成形を行った。具体的には、この積層シート(F4)を、フッ素艶消し積層フィルム(F2)側がキャビティー側になるように真空引き機能を持つ金型内に配置し、積層シート(F4)が190℃に達するまでヒーターで加熱した後、真空成形を行った。
【0171】
真空成形した積層シート(F4)の不要な部分(最終積層体において基材(V)と接着しない部分)を、フッ素艶消し積層フィルム(F2)側から、トムソン打ち抜き型を用いてトリミングした。
【0172】
不要部をトリミング加工した後の積層シート(F4)を、キャビティー側の金型の底、かつ、中央のゲートから横方向に3cmの位置に、1cm2、深さ1mmの凹みがある金型の底に、積層シート(F4)のフッ素艶消し積層フィルム(F2)側がキャビティー側になるように配置した。次いで、積層シート(F4)の熱可塑性樹脂層(IV)に基材(V)となるABS樹脂(UMG ABS(株)製、商品名ダイヤペットABSバルクサムTM25)を射出成形し、インサート成形により積層体(積層成形品)を得た。
【0173】
積層体の形状は、縦150mm×横120mm×厚さ2mm、深さ10mmの箱型であり、金型のゲート位置は、積層体中央に1箇所、中央ゲートの上下(積層体縦方向)40mmの位置に各1箇所の計3箇所であり、ゲート形状は、直径1mmのピンポイントゲートである。また、金型のキャビティー側の底面と側面を結ぶ角のコーナーRは約3である。コーナーRは、FUJI TOOL製 RADIUS GAGE(商品名)で測定した。この射出成形は、(株)日本製鋼所製、J85ELII型射出成形機(商品名)を用い、シリンダー温度250℃、射出速度30%、射出圧力43%、金型温度60℃の条件で行った。この積層成形品の各種評価を行った。その結果を表2に示す。
【0174】
<実施例6〜7>
フッ素艶消し樹脂層(I)とアクリル樹脂層(II)の層厚みとその比率[(I)/(II)]を表2に示すように変更したこと以外は、実施例5と同様にして積層成形品を作製し評価した。その結果を表2に示す。
【0175】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明のフッ素艶消しフィルム(F1)、フッ素艶消し積層フィルム(F2)、フッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)、積層シート(F4)及び積層成形品は、特に車輌用途、建材用途に適している。具体例としては、インストルメントパネル、コンソールボックス、メーターカバー、ドアロックペゼル、ステアリングホイール、パワーウィンドウスイッチベース、センタークラスター、ダッシュボード等の自動車内装用途、ウェザーストリップ、バンパー、バンパーガード、サイドマッドガード、ボディーパネル、スポイラー、フロントグリル、ストラットマウント、ホイールキャップ、センターピラー、ドアミラー、センターオーナメント、サイドモール、ドアモール、ウインドモール等、窓、ヘッドランプカバー、テールランプカバー、風防部品等の自動車外装用途、AV機器や家具製品のフロントパネル、ボタン、エンブレム、表面化粧材等の用途、携帯電話等のハウジング、表示窓、ボタン等の用途、さらには家具用外装材用途、壁面、天井、床等の建築用内装材用途、サイディング等の外壁、塀、屋根、門扉、破風板等の建築用外装材用途、窓枠、扉、手すり、敷居、鴨居等の家具類の表面化粧材用途、各種ディスプレイ、レンズ、ミラー、ゴーグル、窓ガラス等の光学部材用途、あるいは電車、航空機、船舶等の自動車以外の各種乗り物の内外装用途、瓶、化粧品容器、小物入れ等の各種包装容器及び材料、景品や小物等の雑貨等のその他各種用途等に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂(A)及び非架橋のアクリル樹脂(B)を含有し、フッ素樹脂(A)の溶解度パラメータ(SPF)と非架橋のアクリル樹脂(B)の溶解度パラメータ(SPA)が下式(1)を満足し、220℃、せん断速度60sec-1の条件下における非架橋のアクリル樹脂(B)のせん断粘度(SVA)と220℃、せん断速度60sec-1の条件下におけるフッ素樹脂(A)のせん断粘度(SVF)が下式(2)を満足するフッ素艶消しフィルム(F1)。
SPA−SPF≧4.0J1/2cm-3/2・・・(1)
SVA/SVF≦2.0・・・(2)
【請求項2】
220℃、せん断速度60sec-1の条件下における非架橋のアクリル樹脂(B)のせん断粘度(SVA)と220℃、せん断速度60sec-1の条件下におけるフッ素樹脂(A)のせん断粘度(SVF)が下式(3)を満足する請求項1記載のフッ素艶消しフィルム(F1)。
1.0≦SVA/SVF≦2.0・・・(3)
【請求項3】
フッ素樹脂(A)100質量部に対して、非架橋のアクリル樹脂(B)1〜18質量部を含有する請求項1又は2記載のフッ素艶消しフィルム(F1)。
【請求項4】
220℃、せん断速度60sec-1の条件下における非架橋のアクリル樹脂(B)のせん断粘度(SVA)が6,000Pa・s以下である請求項1〜3の何れか一項記載のフッ素艶消しフィルム(F1)。
【請求項5】
非架橋のアクリル樹脂(B)が水酸基含有重合体である請求項1〜4の何れか一項記載のフッ素艶消しフィルム(F1)。
【請求項6】
水酸基含有重合体のガラス転移温度が90℃以下である請求項5記載のフッ素艶消しフィルム(F1)。
【請求項7】
フッ素樹脂(A)及び非架橋のアクリル樹脂(B)を含有し、フッ素樹脂(A)の溶解度パラメータ(SPF)と非架橋のアクリル樹脂(B)の溶解度パラメータ(SPA)が下式(1)を満足し、220℃、せん断速度60sec-1の条件下における非架橋のアクリル樹脂(B)のせん断粘度(SVA)と220℃、せん断速度60sec-1の条件下におけるフッ素樹脂(A)のせん断粘度(SVF)が下式(2)を満足するフッ素艶消し樹脂層(I)と、アクリル樹脂層(II)とを積層してなるフッ素艶消し積層フィルム(F2)。
SPA−SPF≧4.0J1/2cm-3/2・・・(1)
SVA/SVF≦2.0・・・(2)
【請求項8】
220℃、せん断速度60sec-1の条件下における非架橋のアクリル樹脂(B)のせん断粘度(SVA)と220℃、せん断速度60sec-1の条件下におけるフッ素樹脂(A)のせん断粘度(SVF)が下式(3)を満足する請求項7記載のフッ素艶消し積層フィルム(F2)。
1.0≦SVA/SVF≦2.0・・・(3)
【請求項9】
フッ素樹脂(A)100質量部に対して、非架橋のアクリル樹脂(B)1〜18質量部を含有する請求項7又は8記載のフッ素艶消し積層フィルム(F2)。
【請求項10】
220℃、せん断速度60sec-1の条件下における非架橋のアクリル樹脂(B)のせん断粘度(SVA)が6,000Pa・s以下である請求項7〜9の何れか一項記載のフッ素艶消し積層フィルム(F2)。
【請求項11】
非架橋のアクリル樹脂(B)が水酸基含有重合体である請求項7〜10の何れか一項記載のフッ素艶消し積層フィルム(F2)。
【請求項12】
水酸基含有重合体のガラス転移温度が90℃以下である請求項11記載のフッ素艶消し積層フィルム(F2)。
【請求項13】
請求項7記載のフッ素艶消し積層フィルム(F2)の少なくとも片面に、さらに絵柄層(III)を有するフッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)。
【請求項14】
請求項1記載のフッ素艶消しフィルム(F1)、請求項7記載のフッ素艶消し積層フィルム(F2)、及び、請求項13記載のフッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)からなる群より選ばれるフィルムと、熱可塑性樹脂層(IV)とを積層してなる積層シート(F4)。
【請求項15】
請求項1記載のフッ素艶消しフィルム(F1)、請求項7記載のフッ素艶消し積層フィルム(F2)、請求項13記載のフッ素艶消し加飾積層フィルム(F3)、及び、請求項14記載の積層シート(F4)からなる群より選ばれるフィルム又はシートを基材(V)に積層した積層成形品。

【公開番号】特開2012−233089(P2012−233089A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102746(P2011−102746)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】