説明

フライカッター研削装置

【課題】従来のカップホイールダイヤモンド砥石のように目詰まりを起こすことなく、複数のMEMSデバイス又はNEMSデバイスを製造する過程の半導体ウエハにCuメッキされたメッキ層である金属層を高効率で研削加工ができるようにする。
【解決手段】本発明は、チャックプレート4にチャックされて研削加工される半導体ウエハWと、フライカッタープレート9の下面にフライカッター刃10とを備え、スピンドルケーシング7とスピンドル軸8とはエアベアリング11を介装すると共に、フライカッター刃10は外側フライカッター刃10aと同高又は若干高くした1又は2の内側フライカッター刃10b.10cを環状に植設させ、半導体ウエハWを多数のMEMSデバイス又はNEMSデバイスに製造する過程で形成される金属層Mを研削する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高効率で研削加工するフライカッター研削装置に関するものであって、更に詳細には、多数のMEMSデバイス又はNEMSデバイスに製造する過程の半導体ウエハの金属層の高精度の平坦研削加工をフライカッター刃を用いることで、カップホイール型砥石のように目詰まりさせないで効率良く実施すると共に、スピンドル軸にエアベアリングを用いることで上下方向と水平方向とのフライカッタープレートの揺れを最小限に抑えるフライカッター研削装置に関するものである。
【0002】
現今における弛まざる技術革新は目覚ましいものがあり、その先端技術の開発によって、優れた様々な商品群が多数送出されており、特に、コンピュータ、マイコン等の電子関連機器に用いられるMEMSデバイス又はNEMSデバイスを製造する過程の半導体ウエハの研削装置は、各種開発されて使用されており、近年要求される被研削体である半導体ウエハは、装着するデバイスの小型化の観点からの極薄化であり、生産性の観点からの拡径化であり、歩留まりの観点からの全面を超高精度に均一性を有した平坦加工、鏡面加工であり、極薄化され、拡径化され、且つ、材料特性は硬質、脆性の半導体ウエハを如何に超高精度に且つ効率良く仕上げるかに凌ぎを削っている現状である。
【0003】
その為に、この種のフライカッター研削装置は、例えば、先に開示されている、基盤1へ摺動板3を設け、これにチャック機構4を突設させる。基盤1へ担持体5を立設し、これにスピンドルケーシング7を設けて、スピンドルを内装し、カップ型カッター8を固着する。担持体5へは、また、非接触計測装置11とディスプレー12とを装着する。カップ型カッター8を降下させると共にスピンドルを回転させ、ワークWをチャック機構4へ固着させると共にチャック機構を回転させ、摺動させてワークを加工する。加工後にワークWを非接触計測装置11の直下へ移動させて非接触測定し、加工精度をディスプレー12で確認しながらワークWをチャック機構4から取り外すこと無く、要すれば再度修正加工をするもの(特許文献1参照)や、基盤に立設させた担持用基軸2′に摺動機構1bを介して担持部3を設ける。担持部3へ傾斜機構4を介してスピンドルケーシング5を設ける。スピンドル6へ基台7を装着し、複数のカッター8を固定する。基盤に突設させたチャック機構9にワークWを固着して回転させ、傾斜機構4で基台7をワークに対して傾斜させ、スピンドル6を回転させて加工することによって凸状球面、凸状非球面、凹状球面、凹状非球面を形成する。ミクロン単位の超精密な球面加工又は非球面加工及び平面加工が可能と成り画期的なもの(特許文献2参照)が開示されている。
【特許文献1】特開平6−00710号公報
【特許文献2】特開平6−55322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
然し乍ら、昨今要求されるMEMSデバイス又はNEMSデバイスを製造する過程の半導体ウエハは、貫通された孔へのCuメッキに対し、Cuメッキの厚さが厚くなりパターンのメッキと比べて50μmと厚いため、この金属層を研削する必要があり、カップホイール型砥石では時間がかかると共に、砥石の目詰まりが発生して超精度且つ高速の加工ができず、更には、特許文献1及び特許文献2に記載のものは、フライカッター研削装置であるが、フライカッター刃を複数の点状に設けているもので、高効率の研削加工ができず、更に、フライカッタープレートの揺れを押さえることができず、安定した高精度の研削加工ができないものであり、課題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記課題に鑑み、鋭意研鑽の結果、これらの課題を解決するもので、基台と、基台の上面に設けたチャックテーブルと、チャックテーブルに設けた回転するチャック用回転軸と、チャック用回転軸に固定されたチャックプレートと、チャックプレートにチャックされて研削加工される半導体ウエハと、チャックテーブルの近傍の基台に立設させたコラムと、コラムに昇降可能に担持させたスピンドルケーシングと、スピンドルケーシングに垂設させ回転するスピンドル軸と、スピンドル軸に固定されたフライカッタープレートと、フライカッタープレートに植設させたフライカッター刃と、を備え、スピンドルケーシングとスピンドル軸とはエアベアリングを介装すると共に、フライカッター刃はフライカッタープレートの下面の外周辺に沿って一体的に接続させた環状に植設させた外側フライカッター刃と、外側フライカッター刃と同高又は若干高くした1又は2の内側フライカッター刃を一体的に接続させた環状に植設させ、外側フライカッター刃は半導体ウエハの少なくとも中心位置より外方を通過するように配設し、半導体ウエハを多数のMEMSデバイス又はNEMSデバイスに製造する過程で形成される金属層を研削するものである。
【発明の効果】
【0006】
前述の如く構成した本発明のフライカッター研削装置のフライカッター刃は、フライカッタープレートの下面の外周辺に沿って一体的に接続させた環状に植設させた外側フライカッター刃と、外側フライカッター刃と同高又は若干高くした1又は2の内側フライカッター刃を夫々一体的に接続させた環状に植設させたことによって、従来のカップホイールダイヤモンド砥石のように目詰まりを起こすことなく、複数のMEMSデバイス又はNEMSデバイスを製造する過程の半導体ウエハにCuメッキされたメッキ層である金属層を高効率で研削加工ができ、更に、スピンドルケーシングとスピンドル軸とはエアベアリングを介装して回転自在としたことにより、フライカッタープレートの上下方向、水平方向の揺れが0.2μm以下に成り、高精度の研削加工ができるものであり、画期的で実用性の高い有効な発明である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明のフライカッター研削装置の実施の形態を図面によって、具体的に説明すると、図1は本発明のフライカッター研削装置の実施例を説明するための側面概要図であり、図2は本発明のフライカッター研削装置の実施例のフライカッタープレートの底面図であり、図3は本発明のフライカッター研削装置で研削加工される前の半導体ウエハの概要を説明するための断面図であり、図4は本発明のフライカッター研削装置で研削加工された後の半導体ウエハの概要を説明するための平面図であり、図5は本発明のフライカッター研削装置で研削加工された後の半導体ウエハの概要を説明するための断面図である。
【0008】
本発明は、高効率で研削加工するフライカッター研削装置に関するものであって、更に詳細には、多数のMEMSデバイス又はNEMSデバイスに製造する過程の半導体ウエハWの金属層Mの高精度の平坦研削加工をフライカッター刃10を用いることでカップホイール型砥石のように目詰まりさせないで効率良く実施すると共に、スピンドルケーシング7とスピンドル軸8との間にエアベアリング11を介装することで上下方向と水平方向とのフライカッタープレート9の揺れを最小限に抑えるフライカッター研削装置に関するものであり、基台1と、該基台1の上面に設けたチャックテーブル2と、該チャックテーブル2に設けた一方方向に回転するチャック用回転軸3と、該チャック用回転軸3の上面に固定されたチャックプレート4と、該チャックプレート4にチャックされて研削加工される半導体ウエハWと、前記チャックテーブル2の近傍の基台1に立設させたコラム5と、該コラム5に昇降手段6を介装して昇降可能に担持させたスピンドルケーシング7と、該スピンドルケーシング7に垂設させた他方方向に回転するスピンドル軸8と、該スピンドル軸8の下端に固定されたフライカッタープレート9と、該フライカッタープレート9の下面にフライカッター刃10と、を備え、前記スピンドルケーシング7と前記スピンドル軸8とはエアベアリング11を介装すると共に、前記フライカッター刃10はフライカッタープレート9の下面の外周辺に沿って一体的に接続させた環状に植設させた外側フライカッター刃10aと、該外側フライカッター刃10aと同高又は若干高くした1又は2の内側フライカッター刃10b.10cを夫々一体的に接続させた環状に植設させ、該外側フライカッター刃10aは前記半導体ウエハWの少なくとも中心位置より外方を通過するように配設し、該半導体ウエハWを多数のMEMSデバイス又はNEMSデバイスに製造する過程で形成される金属層Mを研削することを特徴とするものである。
【実施例】
【0009】
即ち、本発明のフライカッター研削装置は、円板状の半導体ウエハWから多数のMEMSデバイス又はNEMSデバイスの製造過程で形成される金、銀、銅等のメッキにより形成される金属層Mを研削して所定の回路を形成するものである。
【0010】
そして、基台1は、床面に載置固定されるもので、上面にフライカッター研削装置に必要な総ての装置を設けるための略矩形状のものである。
【0011】
次に、チャックテーブル2は、基台1の上面に設けられたもので、後述するチャック用回転軸3を回転自在に内装しているものである。
【0012】
次いで、チャック用回転軸3は、チャックテーブル2に内装されており一方方向に回転するもので、駆動源のモータ(図示しない)とギアやベルト等により機械的に接続されているもので、上面には後述するチャックプレート4を固定しているものである。
【0013】
更に、チャックプレート4は、チャック用回転軸3の上面に固定されており、後述する半導体ウエハWの非研削面をバキューム吸着により貼着するものである。
【0014】
更に、半導体ウエハWは、極薄化、拡径化された円板状のもので非研削面をチャックプレート4にチャックされ研削面には多数のMEMSデバイス又はNEMSデバイスの製造過程でメッキにより形成される金属層Mを後述するフライカッター刃10により所定の研削代を研削加工されるものである。
【0015】
また、コラム5は、チャックテーブル2の近傍の基台1に立設させており、後述する昇降手段6を介装してスピンドルケーシング7を昇降可能に担持させているものである。
【0016】
そして、昇降手段6は、コラム5とスピンドルケーシング7との間に介装されており、周知のもので良く、例えば、レールとレール受けとを夫々形成して、嵌合させて棒ネジとネジ孔とを設けることによって、棒ネジを駆動源のモータ(図示しない)に機械的に接続して回転させ、後述するスピンドルケーシング7を上下方向にスライドさせるものである。
【0017】
次に、スピンドルケーシング7は、コラム5に昇降手段6を介装して昇降可能に担持させているもので、後述するスピンドル軸8をエアベアリング11を介装して回転自在に垂設しているものである。
【0018】
次いで、スピンドル軸8は、スピンドルケーシング7に内装された駆動源のモータ(図示しない)に機械的に接続され他方方向に回転自在に垂設させているもので、つまり、前記チャックテーブル2と逆方向に回転するものである。
【0019】
更に、フライカッタープレート9は、スピンドル軸8の下端に水平に固定されたカップホイール型で、スピンドル軸8と共に回転すると共に、下面には後述するフライカッター刃10を植設させているものである。
【0020】
更には、フライカッター刃10は、外側フライカッター刃10aと1つ又は2つの内側フライカッター刃10b.10cから成り、フライカッタープレート9の下面に外周辺に沿って一体的に接続させた環状に植設しているものであり、つまり、フライカッタープレート9の下面に外周辺に沿って円弧状の複数のフライカッター刃10を形成して接続させ環状に植設しても、一体の環状に形成したフライカッター刃10を植設しても良く、半導体ウエハWに形成された金属層Mを研削加工するものである。
【0021】
次いで、エアベアリング11は、スピンドルケーシング7とスピンドル軸8との間に介装して回転自在とするものであり、スピンドルケーシング7にエア源のコンプレッサ(図示しない)等と連繋させたエア導入系11aを設けて、該エア導入系11aより加圧エアを取り入れたエアベアリング11としたものである。
【0022】
つまり、本発明のフライカッター研削装置は、チャックプレート4に半導体ウエハWをチャックしてチャックテーブル2を一方方向に回転させると共に、他方方向に回転するスピンドル軸8を昇降手段6により降下させてフライカッタープレート9の下面に植設させたフライカッター刃10で研削するものである。
【0023】
次に、フライカッタープレート9の下面に植設させた外側フライカッター刃10aは、チャックプレート4にチャックされた半導体ウエハWの中心位置又は中心位置より若干外方を通過するように配設しているもので、夫々が回転する半導体ウエハWとフライカッター刃10とにより、万遍なく研削加工が施されるものである。
【0024】
つまり、図3〜図5の拡大した説明図の実施例のように、半導体ウエハWを多数のMEMSデバイス又はNEMSデバイスに製造する過程で形成される銅メッキによる金属層Mを研削するものであり、図3のように半導体ウエハWの上面に形成された銅による金属層Mを研削して、研削後は図4及び図5に図示するように縦方向の電極Maのみに研削されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
前述の如く構成した本発明のフライカッター研削装置は、フライカッター刃はフライカッタープレートの下面の外周辺に沿って一体的に接続させた環状に複数植設させたことによって、従来のカップホイールダイヤモンド砥石のように目詰まりを起こすことなく、MEMSデバイス又はNEMSデバイスを製造する過程の半導体ウエハにCuメッキされたメッキ層である金属層を高効率で研削加工ができ、更に、スピンドルケーシングとスピンドル軸とはエアベアリングを介装して回転自在としたことにより、フライカッタープレートの上下方向、水平方向の揺れが0.2μm以下に成り、高精度の研削加工ができるフライカッター研削装置を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は本発明のフライカッター研削装置の実施例を説明するための側面概要図である。
【図2】図2は本発明のフライカッター研削装置の実施例のフライカッタープレートの底面図である。
【図3】図3は本発明のフライカッター研削装置で研削加工される前の半導体ウエハの概要を説明するための断面図である。
【図4】図4は本発明のフライカッター研削装置で研削加工された後の半導体ウエハの概要を説明するための平面図である。
【図5】図5は本発明のフライカッター研削装置で研削加工された後の半導体ウエハの概要を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0027】
W 半導体ウエハ
M 金属層
Ma 電極
1 基台
2 チャックテーブル
3 チャック用回転軸
4 チャックプレート
5 コラム
6 昇降手段
7 スピンドルケーシング
8 スピンドル軸
9 フライカッタープレート
10 フライカッター刃
11 エアベアリング
11a エア導入系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、該基台の上面に設けたチャックテーブルと、該チャックテーブルに設けた一方方向に回転するチャック用回転軸と、該チャック用回転軸の上面に固定されたチャックプレートと、該チャックプレートにチャックされて研削加工される半導体ウエハと、前記チャックテーブルの近傍の基台に立設させたコラムと、該コラムに昇降手段を介装して昇降可能に担持させたスピンドルケーシングと、該スピンドルケーシングに垂設させた他方方向に回転するスピンドル軸と、該スピンドル軸の下端に固定されたフライカッタープレートと、該フライカッタープレートの下面に植設させたフライカッター刃と、を備え、前記スピンドルケーシングと前記スピンドル軸とはエアベアリングを介装すると共に、前記フライカッター刃はフライカッタープレートの下面の外周辺に沿って一体的に接続させた環状に植設させた外側フライカッター刃と、該外側フライカッター刃と同高又は若干高くした1又は2の内側フライカッター刃を夫々一体的に接続させた環状に植設させ、該外側フライカッター刃は前記半導体ウエハの少なくとも中心位置より外方を通過するように配設し、該半導体ウエハを多数のMEMSデバイス又はNEMSデバイスに製造する過程で形成される金属層を研削することを特徴とするフライカッター研削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−28828(P2009−28828A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194299(P2007−194299)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(392003982)ラップマスターエスエフティ株式会社 (23)
【Fターム(参考)】