説明

フライバック充電装置、発光装置、および撮像装置

【課題】自励式のフライバック充電装置において、抵抗分割を用いずに容量の充電電圧を検出し、その充電電圧に基づいて充電を制御する。
【解決手段】整流ダイオード7はフライバックトランス1の二次側に流れる電流をメインコンデンサ6に伝える。FET2はフライバックトランス1の一次側に流れる電流をオンおよびオフする。二次側電流検出装置3はフライバックトランス1の二次側に流れる電流を検出する。OFF時間測定装置5はフライバックトランス1の一次側の電流がオフしている時間を検出する。制御装置9はフライバックトランスの一次側に流れる電流が第1の所定値に達するときにFET2をオフし、二次側電流検出装置3の検出する電流が第2の所定値に達するときにFET2をオンするように制御すると共に、OFF時間測定装置5による時間の検出結果に基づいて充電完了か否かを判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置が有する容量に電荷を充電するフライバック充電装置に関する。また、本発明は、本フライバック充電装置を有する発光装置、および本発光装置を有する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、写真撮影時の補助光源として用いられるフラッシュ発光装置には、メインコンデンサの電荷を蓄積する為に、フォーワード方式より効率の良いフライバック方式を採用したフライバック充電装置が多く採用されてきた。ここで、フライバック充電装置の制御方式を大別すると、フライバックトランスの一次側の電流の導通を制御するスイッチング素子に外部から直接発振制御信号を加える他励式(例えば、特許文献1を参照)と、充電回路内に自身で発振するループを構成する自励式(例えば、特許文献2を参照)とに分けられる。いずれの場合も、メインコンデンサの充電電圧を検出する手段として、抵抗分割を用いるのが一般的である。
【特許文献1】特開平11−237668号公報
【特許文献2】特開2006−337880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のように、メインコンデンサの充電電圧を検出するのに抵抗分割を用いると、充電時に抵抗を介してメインコンデンサの電荷がグラウンドにリークし、充電効率が悪化する。また、メインコンデンサと抵抗分割用の抵抗を直接繋ぐと、充電停止時にもメインコンデンサの電荷が抵抗を介してリークしてしまう。
【0004】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであって、自励式のフライバック充電装置において、抵抗分割を用いずに容量の充電電圧を検出し、その充電電圧に基づいて充電を制御することができるフライバック充電装置、発光装置、および撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、トランスを介して容量に電荷を充電するフライバック充電装置であって、前記トランスの二次側に流れる電流を前記容量に伝えるダイオードと、前記トランスの一次側に流れる電流をオンおよびオフするスイッチング素子と、前記トランスの二次側に流れる電流を検出する電流検出部と、前記トランスの一次側の電流がオフしている時間を検出する時間検出部と、前記トランスの一次側に流れる電流が第1の所定値に達するときに前記スイッチング素子をオフし、前記電流検出部の検出する電流が第2の所定値に達するときに前記スイッチング素子をオンするように制御すると共に、前記時間検出部による時間の検出結果に基づいて充電完了か否かを判断する制御部とを有することを特徴とするフライバック充電装置である。
【0006】
また、本発明のフライバック充電装置において、前記制御部は、前記時間検出部によって検出された時間が所定の時間より短くなったときに、充電が完了したと判断することを特徴とする。
【0007】
また、本発明のフライバック充電装置において、前記時間検出部は、所定の周波数のパルスを出力するクロック発振器と、前記トランスの一次側の電流がオフしている間に前記クロック発振器の出力する前記パルスの数をカウントするカウンタとを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記のフライバック充電装置を備える発光装置である。
【0009】
また、本発明は、上記の発光装置を備える撮像装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トランスの一次側に流れる電流がオフしている時間の検出結果に基づいて充電完了か否かを判断することによって、抵抗分割を用いずに容量の充電電圧を検出し、その充電電圧に基づいて充電を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態を説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態を説明する。図1は、本実施形態による自励式のフライバック充電装置の構成を示している。図1に示すフライバック充電装置は、フライバックトランス1と、FET2と、二次側電流検出装置3と、一次側電流検出装置4と、OFF時間測定装置5と、メインコンデンサ6と、整流ダイオード7と、バッテリー8と、制御装置9とを備える。
【0013】
フライバックトランス1は、巻数比がn1:n2(一次巻数:二次巻数)であり、一次側に流れる電流によるエネルギーを二次側に伝える。FET2は、フライバックトランス1の一次側に流れる電流をオンおよびオフするスイッチング素子である。二次側電流検出装置3は、フライバックトランス1の二次側に流れる電流(Is)を検出する。一次側電流検出装置4は、フライバックトランス1の一次側に流れる電流(Ip)を検出する。
【0014】
OFF時間測定装置5は、フライバックトランス1の一次側の電流がオフしている時間(以下、OFF時間とする)を、二次側電流検出装置3の出力信号に基づき測定する。整流ダイオード7は、フライバックトランス1の二次側の電流を整流してメインコンデンサ6に伝える。バッテリー8は、フライバックトランス1の一次側に接続されており、メインコンデンサ6を充電するための電力を供給する。制御装置9は、二次側電流検出装置3と、一次側電流検出装置4と、OFF時間測定装置5との出力信号に基づき、FET2のオンおよびオフを制御する。
【0015】
次に、図2および図3のフローチャートに沿って、本フライバック充電装置の動作を説明する。図2に示すように制御装置9は、充電を開始すると、FET2をオンする(ステップS1)。これによって、フライバックトランス1の一次側に電流が流れ、エネルギーが蓄積される。
【0016】
一次側電流検出装置4は、一次側の電流が所定値を超えると、制御装置9への出力信号をLowからHighに切り替える(ステップS2)。制御装置9は、一次側電流検出装置4の出力信号の切替えを受けて、FET2をオフにする(ステップS3)。これによって、フライバックトランス1に蓄積されたエネルギーは、二次側を介して開放され、整流ダイオード7により整流された電流がメインコンデンサ6に電荷として蓄積される。この時、フライバックトランス1の二次側の電流Isは、ステップS4でFET2がオフした直後に瞬時に増大し、その後、フライバックトランス1の蓄積エネルギーの消費に伴い減少する。
【0017】
この動きに伴い、二次側電流検出装置3は、ステップS4でFET2がオフした直後に、Isが所定値を超えるタイミングで制御装置9への出力信号をLowからHighに切り替え、その後、Isが所定値を下回るタイミングで制御装置9への出力信号をHighからLowに切り替える(ステップS4)。ステップS1〜S4と並行して行われる判断(図3のステップS7)の結果、充電完了でなければ(ステップS5)、制御装置9は、二次側電流検出装置3の出力信号がHighからLowに切り替わった直後にFET2を再びオンにして、前述したフライバックトランス1のエネルギーの蓄積と開放を繰り返す(ステップS1〜S4)。
【0018】
また、図3に示すように制御装置9は、上記の充電動作(ステップS1〜S4)と並行して、二次側電流検出装置3の出力信号がHighに固定されている時間(≒FET2のOFF時間)を、OFF時間測定装置5を介して常にモニタ(ステップS6)する。そして、制御装置9は、OFF時間が所定時間より短くなったか否かを判断する(ステップS7)。OFF時間が所定時間より短くなった場合、制御装置9は、メインコンデンサ6の充電電圧が目標の電圧に達したものと判断し、FET2を強制的にオフ(ステップS8)して、充電を完了させる。また、OFF時間が所定時間以上であった場合、制御装置9はOFF時間の測定と判断を繰り返す(ステップS6〜S7)。
【0019】
次に、目標とする充電電圧で充電動作を停止させるための所定時間の算出方法について、一例を挙げて説明する。フライバックトランス1の巻数比(n2/n1)をN、フライバックトランス1の一次側のインダクタンスをLp、一次側電流検出装置4の検出電流をIpth、二次側電流検出装置3の検出電流をIsth、メインコンデンサ6の充電電圧をVout、OFF時間測定装置5のOFF時間をToff、FET2がオフした際のフライバックトランス1の二次側の電流(Is)の減衰率をApとする。メインコンデンサ6の容量値が十分に大きな値である場合、ApとVoutの関係、ToffとApの関係はそれぞれ(1)式、(2)式となる。
Ap=Vout/(N×N×Lp)[A/t] ・・・(1)
Toff=(Ipth/N-Isth)/Ap[s] ・・・(2)
【0020】
したがって、(1)式と(2)式より、ToffとVoutの関係は(3)式となり、(3)式を変形すると(4)式となる。
Toff=(Ipth/N-Isth)×(N×N×Lp)/Vout ・・・(3)
Vout=N×Lp×(Ipth-N×Isth)/Toff ・・・(4)
【0021】
上記(4)式により、FET2のOFF時間(Toff)に基づき、メインコンデンサ6の充電電圧(Vout)を算出することができる。ここで、(4)式に具体的な数値を入れて、Toffが900n[s]の場合と3μ[s]の場合の充電電圧を算出する。N=12、Lp=20μ[H]、Ipth=1.4[A]、Isth=10m[A]とした時、以下のようになる。
Toff=900n[s]の場合、Vout=307.2μ/900n=341[V]
Toff=3μ[s]の場合、Vout=307.2μ/3μ=102[V]
【0022】
このように、充電電圧とOFF時間の間には反比例の関係が成り立つので、この関係に基づき所定時間を算出することによって、目標とする充電電圧で充電動作を停止させることが可能となる。尚、上記算出式には各種誤差が考慮されていないため、当然のことながら算出値と実測値との間に乖離が生じるが、各種誤差を考慮し、実測値との乖離が小さくなるように上記算出式に補正を加えれば、精度の向上を図ることができる。
【0023】
上述したように、本実施形態によれば、FET2のOFF時間に基づきメインコンデンサ6の充電電圧を算出することから、メインコンデンサ6に直接付加する分割抵抗等の充電電圧の検出回路を設けることなく、メインコンデンサ6の充電電圧を検出し、その充電電圧に基づいて充電を制御することができる。さらに、メインコンデンサ6に直接付加する充電電圧検出回路を用いないため、整流ダイオード7を挿入することによって、メインコンデンサ6の電荷のリークを防ぐことができ、高効率なフライバック充電装置を構成することができる。
【0024】
また、OFF時間測定装置5によって検出された時間が所定時間より短くなったときに充電が完了したと判断することによって、充電完了か否かの判断を容易に行うことができる。
【0025】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。図4は、第1の実施形態によるフライバック充電装置を適用した発光装置の構成を示している。図4において、図1と対応する箇所には図1と同一の符号を付している。
【0026】
図4に示す発光装置は、図1に対応するフライバック充電装置と、制御装置9からの指示で発光器を発光させる発光装置10とを備える。フライバック充電装置に係る二次側電流検出装置3は、基準電源11と、抵抗12と、比較器13とで構成される。フライバック充電装置に係る一次側電流検出装置4は、基準電源14と、抵抗15と、比較器16とで構成される。フライバック充電装置に係るOFF時間測定装置5は、所定の周波数のパルスを出力するクロック発振器17と、パルス数をカウントするカウンタ18とで構成される。
【0027】
発光装置10は、発光器であるキセノン管19と、キセノン管19にトリガ電圧を供給するトリガ回路20と、メインコンデンサ6に蓄積された電荷を用いてキセノン管19を発光させるIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)21と、制御装置9からの信号に基づきIGBT21の駆動信号を出力する発光パルス発生回路22とで構成される。
【0028】
次に、本発光装置の動作を説明する。本発光装置は、カメラに限らず、補助光が必要な装置に広く搭載され得るものであるが、以下では本発光装置がカメラに搭載されるものとして説明する。制御装置9は、図示しないカメラのメイン制御装置よりフラッシュ発光準備の指示信号を受けると、第1の実施形態で説明した動作に従い、メインコンデンサ6への充電を開始する。
【0029】
この時、二次側電流検出装置3は、フライバックトランス1の二次側電流Isを抵抗12によってI/V変換し、比較器13において変換電圧と基準電源11の電圧を比較する。二次側電流検出装置3は、変換電圧が基準電源11の電圧より低い時(Isが基準値以上の時)にHighを出力し、変換電圧が基準電源11の電圧より高い時(Isが基準値未満の時)にLowを出力する。
【0030】
また、一次側電流検出装置4は、フライバックトランス1の一次側電流Ipを抵抗15によってI/V変換し、比較器16において変換電圧と基準電源14の電圧を比較し、変換電圧が基準電源14の電圧より高い時(Ipが基準値以上の時)にHighを出力し、変換電圧が基準電源14の電圧より低い時(Ipが基準値未満の時)にLowを出力する。また、OFF時間測定装置5は、カウンタ18において、二次側電流検出装置3の出力信号がHighである間にクロック発振器17が出力するパルス数をカウントし、カウント数をOFF時間として制御装置9に出力する。そして、制御装置9は、OFF時間測定装置5から出力されたカウント数を時間に変換し、メインコンデンサ6の充電電圧を算出する。
【0031】
その後、メインコンデンサ6への充電が完了すると、制御装置9は、カメラのメイン制御装置よりフラッシュ発光の指示信号を受け、発光パルス発生回路22を介してIGBT20を駆動する。これにより、キセノン管19にはトリガ回路20によって数千Vのトリガ電圧が加えられ、これをきっかけにメインコンデンサ6に蓄積された電荷がキセノン管19を通ってIGBT21に一気にひっぱられ、この時にキセノン管19内で発光がおこる。
【0032】
上述したように、本実施形態によれば、高効率なフライバック充電装置を備えた発光装置を構成することができる。また、メインコンデンサの充電電圧を検出するための機能として、もともとカメラシステム内に備えられたデバイスに組み込まれた機能(制御装置、カウンタの機能、クロックの機能)を流用することが可能と考えられるため、充電電圧検出の為だけに特別なデバイス(抵抗や整流ダイオードやコンパレータ等)を付加する必要が無く、コストの低減や実装面積の低減を実現することが可能である。
【0033】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1の実施形態によるフライバック充電装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態によるフライバック充電装置の動作の手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施形態によるフライバック充電装置の動作の手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施形態による発光装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0035】
1・・・フライバックトランス、2・・・FET(スイッチング素子)、3・・・二次側電流検出装置(電流検出部)、4・・・一次側電流検出装置、5・・・OFF時間測定装置(時間検出部)、6・・・メインコンデンサ、7・・・整流ダイオード、8・・・バッテリー、9・・・制御装置(制御部)、10・・・発光装置、11・・・基準電源、12・・・抵抗、13・・・比較器、14・・・基準電源、15・・・抵抗、16・・・比較器、17・・・クロック発振器、18・・・カウンタ、19・・・キセノン管、20・・・トリガ回路、21・・・IGBT、22・・・発光パルス発生回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスを介して容量に電荷を充電するフライバック充電装置であって、
前記トランスの二次側に流れる電流を前記容量に伝えるダイオードと、
前記トランスの一次側に流れる電流をオンおよびオフするスイッチング素子と、
前記トランスの二次側に流れる電流を検出する電流検出部と、
前記トランスの一次側の電流がオフしている時間を検出する時間検出部と、
前記トランスの一次側に流れる電流が第1の所定値に達するときに前記スイッチング素子をオフし、前記電流検出部の検出する電流が第2の所定値に達するときに前記スイッチング素子をオンするように制御すると共に、前記時間検出部による時間の検出結果に基づいて充電完了か否かを判断する制御部と、
を有することを特徴とするフライバック充電装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記時間検出部によって検出された時間が所定の時間より短くなったときに、充電が完了したと判断することを特徴とする請求項1に記載のフライバック充電装置。
【請求項3】
前記時間検出部は、
所定の周波数のパルスを出力するクロック発振器と、
前記トランスの一次側の電流がオフしている間に前記クロック発振器の出力する前記パルスの数をカウントするカウンタと、
を有することを特徴とする請求項2に記載のフライバック充電装置。
【請求項4】
請求項1に記載のフライバック充電装置を備える発光装置。
【請求項5】
請求項4に記載の発光装置を備える撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−57214(P2010−57214A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216451(P2008−216451)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】