説明

フライ調理方法及び装置

【課題】調理油の量が標準量より減少した状態で揚げ調理を行っても、味と食感に優れ、さめてもおいしい揚げ物をつくることができるフライ調理装置を提供する。
【解決手段】フライ調理装置A1は、油槽20と、油槽20内の調理油を加熱する電気ヒータ21と、調理時間を設定するタイマーと、油槽内の調理油の量を検知する温度センサを備えており、調理時間の設定にあたり、被調理物の種類に対応して設定されている調理時間を基本設定値とし、被調理物の一度に調理する量の多少に対応して設定されている補正値を基本設定値に加算し、さらに、調理油の油量の減少が温度センサで検知されたときに、調理油の油量の減少に対応して設定されている補正値を加算することによって調理時間を設定するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライ調理方法及び装置に関するものである。更に詳しくは、例えば総菜店等で客の注文に対してリアルタイムで揚げ物を提供するのに好適なフライ調理方法及び装置において、調理油の量が標準量より減少した状態で揚げ調理を行っても、味と食感に優れ、さめてもおいしい揚げ物をつくることができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
ファーストフード店やコンビニエンスストア或いはスーパーマーケットの総菜部等、飲食物を提供する店舗では、揚げ物を効率よく調理するためのフライ調理装置(フライヤー)が広く使用されている。従来のフライ調理装置は、昇降自在な調理籠を備えており、所定の調理時間が経過すると被調理物が入った調理籠を油中から上昇させ、自然落下により被調理物の油を切るようにしたものが一般的である。
【0003】
また、近年においては、前記のような店舗での揚げ物の販売において、予めつくり置いたものを客に提供するのではなく、客の注文を受けてから調理を開始し、ファーストフード店のように、いわばリアルタイムで揚げ物を提供する販売形態が要求されるようになってきた。
【0004】
しかしながら、揚げ物をリアルタイムで客に提供する場合でも、食材中の旨みとなる結合水を極力外部へ出さずに自由水を効率よく油と交換するよう調理して、揚げ物を過不足のない調理時間でタイミング良く油槽から取出すことで、味と食感に優れ、さめてもおいしい揚げ物を提供する必要がある。さらに、一般に客の注文の量はまちまちであり、一個から数個の場合もあるが、10個、20個などの場合も想定しなければならない。
【0005】
このような現場の要求(ニーズ)に応えるものとして、本発明者は特許文献1において、「フライ調理用補助装置、フライ調理装置及びフライ調理方法」を提案した。
この発明は、被調理物の種類に応じた調理温度、基本調理時間、被調理物の単位数又は単位量当たりの油温低下温度、油温を調理温度に復帰させるのに必要な時間等を記憶させた記憶手段と、前記基本調理時間、油温低下温度、油温を調理温度に復帰させるのに必要な時間を演算する演算手段と、を含む制御装置を有するフライ調理装置であって、調理時間の設定にあたり、被調理物の種類に応じて設定されている調理時間を基本設定値とし、被調理物の一度に調理する量の多少に対応して設定されている補正値を基本設定値に加えることによって、調理時間を設定するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−250709
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記従来のフライ調理用補助装置、フライ調理装置及びフライ調理方法は、前記現場の要求に十分に応えることができるもので、客の注文に対してリアルタイムで揚げ物を提供するのに好適で、より適切な調理時間で、なおかつ味と食感に優れた揚げ物を提供できるものであった。しかしながら、現場で実際に長く使用を続けることによって、以下のような課題があることもわかってきた。
【0008】
すなわち、フライ調理装置においては、通常、調理油の油量位置の上限が決められており、被調理物を油中に投入したときに、多量の気泡の発生によって油が油槽から溢れる危険を防止するようになっている。また、揚げ調理を続けると、調理物に吸収される分だけ油量は次第に減っていくので、適当なタイミングで調理油を補充しなければならないが、油量の最低量については特に決められておらず、前記タイミングは現場の調理者の裁量に任されているのが実情である。
【0009】
したがって、実際の現場では、補充作業の煩わしさもあって、限界に近い少ない油量で調理される場合も少なからずあると思われる。しかし、油量が少なくなると、同じ調理温度では油槽内の調理油全体が保持できるカロリーも少なくなるため、被調理物を油中に投入したときの油温の下落幅が、装置に設定されている値より大きくなる。この場合、設定されている補正値を加算しても、調理時間が不足することになるので、味と食感に優れた揚げ物を提供できなくなるおそれがあった。本発明者は、この知見をもとに鋭意研究と試行を重ね、本発明を完成するに至った。
【0010】
(本発明の目的)
本発明は、被調理物の種類に応じて設定されている調理時間を基本設定値とし、この基本設定値に油量の減少に対応して予め設定した補正値を加えて調理時間を調整するようにして、調理油の量が標準量(又は基準量)より減少した状態で揚げ調理を行っても、味と食感に優れ、さめてもおいしい揚げ物をつくることができるフライ調理方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
(1)本発明は、
調理時間の設定にあたり、被調理物の種類に対応して設定されている調理時間を基本設定値とし、調理油の油量の減少に対応して設定されている補正値を基本設定値に加算することによって調理時間を設定する、
フライ調理方法である。
【0012】
(2)本発明は、
調理時間の設定にあたり、被調理物の種類に対応して設定されている調理時間を基本設定値とし、被調理物の一度に調理する量の多少に対応して設定されている補正値を基本設定値に加算し、さらに、調理油の油量の減少に対応して設定されている補正値を加算することによって調理時間を設定する、
フライ調理方法である。
【0013】
(3)本発明は、
調理油の油量の減少を高低方向に位置が異なる温度センサを使用し、高い側の温度センサが油面から出ることによる検出温度の変化で油量を検知するようにし、高い側と低い側の温度センサが油中にあるときに、高い側の温度センサによる検出温度と低い側の温度センサによる検出温度の差が所要の値より小さくなったとき、又は検出温度の変化に応じて、予め設定されている補正値をさらに加算することによって調理時間を設定する、
前記(1)又は(2)のフライ調理方法である。
【0014】
(4)本発明は、
既存のフライ調理器に取り付けるフライ調理用補助装置であって、
被調理物を収容又は保持する容器と、
該容器を動かす駆動手段と、
前記容器を油中に入れて被調理物を所要時間調理した後、油中から上げて被調理物の油を切るようにし、この油中での調理から油外での油切りまでの作業を自動的に行うよう前記駆動手段を制御する制御手段と、
調理時間を設定するタイマーと、
油槽内の調理油の量を検知する油量検知手段と、
を備えており、
調理時間の設定にあたり、被調理物の種類に対応して設定されている調理時間を基本設定値とし、前記油量検知手段により調理油の油量の減少を検知したときに調理油の油量の減少に対応して設定されている補正値を基本設定値に加算することによって調理時間を設定する、
フライ調理用補助装置である。
【0015】
(5)本発明は、
既存のフライ調理器に取り付けるフライ調理用補助装置であって、
被調理物を収容又は保持する容器と、
該容器を動かす駆動手段と、
前記容器を油中に入れて被調理物を所要時間調理した後、油中から上げて被調理物の油を切るようにし、この油中での調理から油外での油切りまでの作業を自動的に行うよう前記駆動手段を制御する制御手段と、
調理時間を設定するタイマーと、
油槽内の調理油の量を検知する油量検知手段と、
を備えており、
調理時間の設定にあたり、被調理物の種類に対応して設定されている調理時間を基本設定値とし、被調理物の一度に調理する量の多少に対応して設定されている補正値を基本設定値に加算し、さらに、前記油量検知手段により調理油の油量の減少を検知したときに調理油の油量の減少に対応して設定されている補正値を加算することによって調理時間を設定する、
フライ調理用補助装置である。
【0016】
(6)本発明は、
油槽と、
油槽内の調理油を加熱する加熱手段と、
前記(4)又は(5)のフライ調理用補助装置と、
を備えている、
フライ調理装置である。
【0017】
(7)本発明は、
油槽と、
油槽内の調理油を加熱する加熱手段と、
調理時間を設定するタイマーと、
油槽内の調理油の量を検知する油量検知手段と、
を備えており、
調理時間の設定にあたり、被調理物の種類に対応して設定されている調理時間を基本設定値とし、前記油量検知手段により調理油の油量の減少を検知したときに調理油の油量の減少に対応して設定されている補正値を基本設定値に加算することによって調理時間を設定する、
フライ調理装置である。
【0018】
(8)本発明は、
油槽と、
油槽内の調理油を加熱する加熱手段と、
調理時間を設定するタイマーと、
油槽内の調理油の量を検知する油量検知手段と、
を備えており、
調理時間の設定にあたり、被調理物の種類に対応して設定されている調理時間を基本設定値とし、被調理物の一度に調理する量の多少に対応して設定されている補正値を基本設定値に加算し、さらに、前記油量検知手段により調理油の油量の減少を検知したときに調理油の油量の減少に対応して設定されている補正値を加算することによって調理時間を設定する、
フライ調理装置である。
【0019】
調理油の油量の減少に対応して設定されている補正値は、油量が減少するほど値が大きくなる。すなわち、油量が減少するほど加熱調理時間がより長くなるように設定される。調理油が補充されて量が増え、例えば標準量となった場合は、補正値(加算値)は「0」となる。また、補充によって補充前よりは多く標準量より少ない油量になったときは(標準量と補充前の油量との間に、一または二以上の油量検出部が設定されている場合)、補正値(加算値)が補充前より小さくなる。補正値は、被調理物の種類や量(又は個数)、油槽の大きさ、油量又は油の種類等の違いによって適宜設定されるものであり、特に限定されるものではない。
【0020】
また、温度がより高温の高い側の温度センサによる検出温度と低い側の温度センサによる検出温度の差が所要の値より小さくなったとき、又は検出温度の変化に応じて、補正される補正値についても、同様に被調理物の種類や量(又は個数)、油槽の大きさ(又は油量)等の違いによって適宜設定されるものであり、特に限定されるものではない。
【0021】
調理油の油量又は油量の減少(又は変化)を検知する装置、方法については公知手段が採用され、特に限定されるものではない。また、油量の検知については、無段階で検知するようにしてもよいし、検知できる油量(液位)を複数に設定して段階的に検知してもよい。その検知結果に伴う補正値の設定において、その増減幅(例えば1秒単位、0.5秒単位等)は適宜設定できるものである。
【0022】
被調理物を収容又は保持する容器としては、油を透過できるものであれば、その形態は特に限定しない。例えば、金属製の網籠状のもの、多数の孔を設けた金属板で形成したもの等である。
【0023】
容器を動かす駆動手段としては、例えば動力源となるモーター、アクチュエータ及び動力伝達系となるリンク機構、ギヤ機構等、各種の公知手段が採用でき、それらの組み合わせ及び構造については特に限定するものではない。
【0024】
調理時間を設定するタイマーは、ダイヤル式(アナログ式)のものでもよいし、数値を入力するタイプ(デジタル式)のものでもよい。後者のタイプでは、すべて手入力で入力するものでもよいし、例えばコロッケ、鶏肉の唐揚げ等の種類(品目)の選択、或いは冷凍、生等の形態の選択、更には個数や重さ等の量の選択・入力等により自動的に数値が入力されるものでもよい。
【0025】
油中での調理から油外での油切りまでの作業は、一回又は複数回行われる。前記作業を何回行うかについては、被調理物の種類、形態、量等によって適宜設定されるものであり、特に限定されるものではない。
【0026】
油槽は、公知のものを採用することができ、その構造、大きさ、調理油の容量及び種類等は特に限定するものではない。
また、油槽内の調理油を加熱する加熱手段としては、例えば電気ヒータ、ガスヒータ或いは電磁ヒータ等の公知のものが採用され、特に限定するものではない。
【0027】
(作用)
本発明に係るフライ調理用補助装置及びフライ調理装置の作用を説明する。
フライ調理用補助装置及びフライ調理装置は、調理時間の設定にあたり、被調理物の種類に対応して設定されている調理時間を基本設定値とし、調理油の油量の減少に対応して設定されている補正値を基本設定値に加算することによって、調理時間を設定することができる。
【0028】
したがって、加熱調理時間の不足が起こることを防止でき、調理の際に被調理物表面での自由水と調理油の交換及び被調理物の内部の加熱が、必要な時間をかけて十分に行われる。これにより、調理油の量が標準量より減少した状態で揚げ調理を行っても、味と食感に優れ、さめてもおいしい揚げ物を提供することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、調理時間の設定にあたり、被調理物の種類に対応して設定されている調理時間を基本設定値とし、調理油の油量の減少に対応して設定されている補正値を基本設定値に加算することによって、調理時間を設定することができる。
したがって、調理油の量が標準量より減少した状態で揚げ調理を行っても、加熱調理時間の不足が起こることを防止でき、その結果、調理の際に被調理物表面での自由水と調理油の交換及び被調理物の内部の加熱が必要な時間をかけて十分に行われるので、味と食感に優れ、さめてもおいしい揚げ物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るフライ調理装置の一実施の形態を示す油槽を断面した正面視説明図。
【図2】フライ調理装置の一実施の形態を示す油槽を断面した側面視説明図。
【図3】フライ調理装置を構成するフライ調理用補助装置の温度検出部の構造を示す縦断面説明図。
【図4】温度検出部を構成するセンサカバーの構造を示し、(a)は正面図、(b)は(a)におけるI−I断面図。
【図5】フライ調理装置を構成するフライ調理用補助装置の操作パネルの説明図。
【図6】油槽内の調理油の油量の減少(変化)に伴う補正値の設定について説明するための説明図。
【図7】本発明に係るフライ調理装置の他の実施の形態を示す油槽を断面した側面視説明図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
〔実施の形態〕
【0032】
本発明を図面に示した実施の形態に基づき詳細に説明する。
フライ調理用補助装置1は、既存のフライ調理器2と組み合わせてフライ調理装置A1を構成するものである。フライ調理器2については、後述する。
【0033】
フライ調理用補助装置1は、制御装置10、駆動装置11、収容籠12及び設置台13により構成されている。設置台13は、フライ調理器2に固定される脚フレーム130と、その上部に固定されている台部131で構成されている。
【0034】
制御装置10は、箱状のケーシング101と、ケーシング101の正面側に設けられている操作パネル102を備えている。ケーシング101の内部には、操作パネル102で操作される各種制御機器(図示省略)が収納されている。操作パネル102には、図5に示すように品目表示部103が10箇所に設けられている。品目表示部103は、それぞれが設定スイッチとなっている。
【0035】
符号104は二ケタ表示を並設したタイマー(図示省略)の表示部である時間表示部、105は三ケタ表示の油温表示部、106はブザー設定スイッチである。また、107はPOWERスイッチ、108はUPスイッチ、109はDOWNスイッチ、100はSETスイッチである。
時間表示部104及び油温表示部105は、それぞれ時間と油温を表示するだけではなく、後で詳述する各種設定の際の数字や文字の表示にも使用されるようになっている。UPスイッチ108とDOWNスイッチ109は、その操作によって収容籠12の上昇と下降操作ができるものである。
【0036】
ケーシング101は、前記設置台13の台部131に着脱可能にネジ等で固定されている。台部131の後部側は、脚フレーム130の上端部に、水平状態から上方へ所要の角度までの範囲で回動できるように取り付けられている。
また、ケーシング101の内部には、前記駆動装置11を構成する各種機器も収納されている。なお、駆動装置11の構造については、前記特許文献1の駆動装置と同等の構成を有しているので、以下、簡単な説明に止め、詳細な説明は省略する。
【0037】
ケーシング101の底部には、横断面形状がコ字状のフレーム110が下方へ向け垂直に設けられている。フレーム110の下端部には、所要の長さを有し上下方向にスライドする昇降ロッド111が挿通されている。昇降ロッド111の下端部には、収容籠12を着脱自在に装着するための装着部材112が取り付けられている。
【0038】
昇降ロッド111の横側には、所要の間隔をおいて平行に所要長さのカバー管15が設けられている。カバー管15は、下端が開口した円筒体に複数の広口の窓部150を設けた構造で、カバー管15の内外で調理油の流通が良好に行われる構造である。
【0039】
カバー管15の内部には、調理油の温度を検出すると共に油量検知手段ともなる第1の温度センサ16と第2の温度センサ17が収容されている。第1の温度センサ16は、検出部160がカバー管15の下端の開口部近傍に位置させてあり、第2の温度センサ17は、検出部170がカバー管15の中間部近傍に位置させてある。これら二系統の温度センサ16、17は、第1の温度センサ16で位置が低い側の油温を検出し、第2の温度センサ17で位置が高い側の油温を検出する(図6参照)。
【0040】
なお、第1の温度センサ16と第2の温度センサ17は、カバー管15と共に昇降調整が可能であり、使用時には、第1の温度センサ16の検出部160が油槽20の深さの約1/2の高さ(電気ヒータ21よりやや上方)に位置するように設定されている。第1の温度センサ16と第2の温度センサ17の高さは、前記位置に限定されるものではなく、例えば油量に対応して適宜設定又は調整されるものである。また、第1の温度センサ16と第2の温度センサ17の応答時間は1.0秒以下であるのが好ましい。
【0041】
装着部材112に着脱可能に装着される収容籠12は、ステンレススチール製の網籠であり、網目を通して効率よく調理油が透過する。収容籠12は、上部側が開口した有底箱状に形成されており、フック120を装着部材112に掛けて装着することができる。
【0042】
フライ調理装置A1は、前記のように、手作業でフライ調理を行うための既存のフライ調理器2に、前記フライ調理用補助装置1を後付けにした構成となっている。フライ調理器2は、所定の容量を有する油槽20と、油槽20内に溜められた調理油を加熱する電気ヒータ21を備えている。
なお、フライ調理装置は、製造段階からフライ調理用補助装置と同等の装置とフライ調理器を一体的に製造したものでもよい。
【0043】
(作用)
図1ないし図6を参照して、本実施の形態に係るフライ調理用補助装置1及びそれを使用したフライ調理装置A1の作用を説明する。
なお、以下の一度揚げ及び二度揚げの場合の説明で表した各数値は一つの例であって、この数値に限定されるものではない。
【0044】
(各種設定)
冷凍コロッケ10個を「一度揚げ調理」する場合を例にとり説明する。
(1)まず、品目表示部103で被調理物の品目設定を行う。ここでは、品目表示部103の1番〜10番のうちの4番を選択し、4番の設定スイッチを押す。
(2)これにより、4番の設定スイッチに対応して記憶されている調理時間が時間表示部104に表示され、無負荷時の揚げ時間としてタイマーに仮設定される。ここでは、5分30秒に設定される。
【0045】
(3)次に、収容籠12の動作を設定する。ここでは、油中(調理中)と油外(調理完了後)での動作時間、動作ストロークの設定を行う。なお、この設定については、予め設定されている任意のキー(操作パネル102の各スイッチ或いはその組み合わせによる)を操作し、時間表示部104、油温表示部105の表示を利用して行われる。
【0046】
(4)任意のキーを操作して、基準揚げ温度(無負荷)の設定を行う。ここでは、170℃に設定する。
【0047】
(5)任意のキーを操作して、初期設定値すなわち下落温度遅延時間(補正時間)を設定する。ここでは、コロッケ種のフライ調理の場合で、予め設定されている値(説明書等に品目・量・温度・フライヤーの種類等が記載されている)を選択する。例えば、冷凍のコロッケ種一個当たり70gで、油温の下落温度約0.8℃(10個で約8℃)、0.8℃あたりの復帰時間5秒を選択する。なお、下落温度・復帰時間はガス・電気・電磁フライヤー及び構造・容量等によって異なり、0.8℃当たりで、例えば0〜20秒の設定値を設けることができる。
【0048】
そして、基準温度に対して投入下落温度を積分しながら最低積分値(下落温度最低値)を確認し、反転地点数秒後に比較して遅延時間が設定される。つまり、基準温度(無負荷)に対して被調理物量を投入後の下落温度及び時間と反転時間に対して予め基準を設け個別に設定する。この場合、例えば1個、5個、10個、15個、20個、25個、30個のそれぞれの平均下落温度が1個当たり約0.8℃である。この時の反転地点で復帰に必要な時間及び被調理物の投入時より揚がりまでの幾何学的中心温度の時間変化・余熱時間変化等を考慮し、例えば0〜20秒間の設定値で設定する。
【0049】
この設定値は、装置の初期設定時に品目別に実際にフライ調理をして油温や復帰時間を実測し、独自に設定することができる。設定値が、調理種一個当たり0.8℃に対して5秒であれば、10個の補正時間は50秒である。すなわち、この補正時間を前記仮設定時間である5分30秒に加えて、調理時間は6分20秒に自動補正される。
なお、調理時間は被調理物の量の多少に応じて変わり、例えば冷凍コロッケ20個の場合では、同じ条件では補正時間は100秒であり、調理時間は7分10秒に設定され、5個の場合では、補正時間は25秒であり、調理時間は5分55秒に設定される。
【0050】
(6)任意のキーを操作して、前記被調理物の一度に調理する量の多少に対応した補正値の設定と併せて、調理油の油量の減少に対応した補正値を設定する。例えば、冷凍のコロッケ種一個当たり70gで、油温の下落温度約0.5℃(10個で約5℃)、0.5℃あたりの復帰時間3秒を選択する。
【0051】
本実施の形態においては、温度の検出部は、図6に示すように第1の温度センサ16の検出部160と第2の温度センサ17の検出部170の二箇所である。この場合は、標準量から油量が減少して上部側の検出部170が油温を検出しなくなったら、タイマーにおいて補正値が加算されて調理時間がより長くなる。補正値が加算されるのは、本実施の形態では図6において、油量が油面Bから油面Cの間であるが、これに限定されるものではなく、油温の検出部を三箇所或いはそれ以上の複数箇所に設定して、油量の変化に伴ってより細かな調理時間の補正ができるようにしてもよい。
(7)以上で補正時間等の設定を完了し、設定を確認する。
【0052】
(調理の流れと各部の動き)
(1)前記の設定を終了した後、SETスイッチ110を押す。これにより、前記設定に基づいて、制御装置10により駆動装置11等の制御が行われる。なお、上昇している収容籠12には、被調理物である10個の冷凍のコロッケ種(70g:図示省略)が収容されている。
【0053】
(2)油槽20内部の調理油22が設定温度(170℃)に達したら、駆動装置11が作動し、収容籠12が下降する。コロッケ種は収容籠12と共に一度に油中に入り、コロッケ種のフライ調理が始まる。なお、コロッケ種が油中に入ると油温が下落し、コロッケ種が10個の場合では、約8℃下落する。
【0054】
(3)収容籠12は駆動装置11により、油中で例えば10mmのストロークで30秒間上下動(スイング)する。これにより、収容籠12内部の調理中のコロッケ種も油中で動くので、コロッケ種同士が継続的な接触をしにくくなり、全面が油と触れるようになる。また、収容籠12とコロッケ種が動くことによって、油中に新たな対流が起こり、又は調理油22が攪拌され、コロッケ種から出た自由水により温度が下がった調理油22が周囲の温度が高い調理油22と入れ替わり、コロッケ種の周囲の油温のムラが改善される。これにより、コロッケ種は十分に高い温度の調理油で調理される。
【0055】
(4)コロッケ種10個のフライ調理は、前記したように調理油の油量の減少に伴う補正を行わない場合は6分20秒間行われる。また、揚げ調理中においては、第1の温度センサ16と第2の温度センサ17は常時油温を検出している。第1の温度センサ16と第2の温度センサ17の検出部160、170が油中にあり、双方で油温を検出しているときに、温度がより高温の位置が高い側の第2の温度センサ17による検出温度と低い側の第1の温度センサ16による検出温度の差が所要の値(例えば5℃)より小さくなったときに、又は油温の急激な温度変化やゆっくりとした温度変化等、検出温度の変化の状態に応じて、予め設定されている補正値を加算することもできる。これは、例えば衣の量(水分の量)が多く、油温が下落しやすい掻き揚げ等を調理する場合に特に有用である。
【0056】
(5)そして、揚げ調理を行うにつれて調理油の標準量(油面A)から油量が減少して油面が下がり、第2の温度センサ17の検出部170より下がり(油面B)、検出部170が油中から空気中に出ると、検出部170による検出温度が急激に下がり、この温度変化を検知して、油量が油面Bの量まで減ったことを感知する。これにより、温度の検出は、油中にある第1の温度センサ16の検出部160だけで行われるように切り替わる。これは、前記したように油温の検出部を三箇所或いはそれ以上の複数箇所に設定した場合も同様で、当初全部の検出部が油中にあり油温の検出を行っている状態から、油量が減って位置が高い側の検出部が順次油外に出ると、その度ごとに、それより下方に位置する各検出部、すなわち油中にある検出部だけが温度を検出するように切り替わる。
【0057】
そして、この段階で調理油を補充して標準量に戻した場合は、第2の温度センサ17の検出部170が再度油温を検出するようになり、油量の減少に対応した補正値が加算されることなく調理が行われる。しかし、調理油を補充せず、そのまま調理を続ける場合は、予め設定した油量の減少に対応した前記補正値が加算され、調理時間が調整される。すなわち、本実施例では、6分20秒に30秒が加算されて、調理時間は6分50秒に自動的補正される。
【0058】
このように、被調理物の量及び油量の減少(第1の温度センサ16及び第2の温度センサ17により検知)に対応した補正値が加算されて、調理時間が調整される(制御装置10に備えられたタイマーによる)ので、揚げ調理において加熱時間の不足が起こることを防止でき、調理の際に被調理物表面での自由水と調理油の交換及び被調理物の内部の加熱が必要な時間をかけて十分に行われるので、味と食感に優れ、さめてもおいしい揚げ物を提供することができる。
【0059】
(6)さらに、調理を行うにつれて油量が減少し、第1の温度センサ16の検出部160が油中から空気中に出ると(油面C)、検出部160による検出温度が急激に下がり、この温度変化を検知して、油量が油面Cの量まで減ったことを感知する。この状態では、第1の温度センサ16による油温の検出もできなくなるので、調理油の補充を促すための報知が行われる。その報知手段は特に限定しないが、例えばブザー音、録音された人の声によるアナウンス或いは油温表示部105の点滅等である。
【0060】
(7)調理終了の前、例えば前記調理時間経過30秒前にブザー音で報知が行われる。これにより、例えば、店舗が飲食店である場合では、ご飯をよそう等、盛り付けの準備を前もって始めることができるので、効率的である。そして、調理時間が経過すると駆動装置11が作動し、収容籠12が上昇して油中から出る。
【0061】
(8)調理終了後は、収容籠12は駆動装置11の作動により油外で上下動(スイング)し、揚げ上がったコロッケの油切りが行われる。これにより、ごく短時間での油切りが可能になり、同時に水分も十分に飛ばすことができる。
(9)最後に調理終了のブザーが鳴り、周囲の調理者に知らせる。
【0062】
図7にはフライ調理装置A2を示している。図7においては、前記フライ調理装置A1と同等箇所には同一の符号を付して示している。
フライ調理装置A2は、フライ調理用補助装置が設けられていない簡易的構造のフライ調理装置であり、前記フライ調理装置A1と同様の第1の温度センサ16と第2の温度センサ17と、調理時間の補正を行うための補正値設定部18が設けられている。
フライ調理装置A2は、第1の温度センサ16と第2の温度センサ17と補正値設定部18により、調理油の量の減少に伴う前記と同様の調理時間の補正を行うことができるものである。
【0063】
なお、本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0064】
A1 フライ調理装置
1 フライ調理用補助装置
10 制御装置
101 ケーシング
102 操作パネル
103 品目表示部
104 時間表示部
105 油温表示部
106 ブザー設定スイッチ
107 POWERスイッチ
108 UPスイッチ
109 DOWNスイッチ
100 SETスイッチ
11 駆動装置
110 フレーム
111 昇降ロッド
112 装着部材
12 収容籠
120 フック
13 設置台
130 脚フレーム
131 台部
15 カバー管
150 窓部
16 第1の温度センサ
160 検出部
17 第2の温度センサ
170 検出部
2 フライ調理器
20 油槽
21 電気ヒータ
22 調理油
A2 フライ調理装置
18 補正値設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理時間の設定にあたり、被調理物の種類に対応して設定されている調理時間を基本設定値とし、調理油の油量の減少に対応して設定されている補正値を基本設定値に加算することによって調理時間を設定する、
フライ調理方法。
【請求項2】
調理時間の設定にあたり、被調理物の種類に対応して設定されている調理時間を基本設定値とし、被調理物の一度に調理する量の多少に対応して設定されている補正値を基本設定値に加算し、さらに、調理油の油量の減少に対応して設定されている補正値を加算することによって調理時間を設定する、
フライ調理方法。
【請求項3】
調理油の油量の減少を高低方向に位置が異なる温度センサを使用し、高い側の温度センサが油面から出ることによる検出温度の変化で油量を検知するようにし、高い側と低い側の温度センサが油中にあるときに、高い側の温度センサによる検出温度と低い側の温度センサによる検出温度の差が所要の値より小さくなったとき、又は検出温度の変化に応じて、予め設定されている補正値をさらに加算することによって調理時間を設定する、
請求項1又は2記載のフライ調理方法。
【請求項4】
既存のフライ調理器に取り付けるフライ調理用補助装置であって、
被調理物を収容又は保持する容器と、
該容器を動かす駆動手段と、
前記容器を油中に入れて被調理物を所要時間調理した後、油中から上げて被調理物の油を切るようにし、この油中での調理から油外での油切りまでの作業を自動的に行うよう前記駆動手段を制御する制御手段と、
調理時間を設定するタイマーと、
油槽内の調理油の量を検知する油量検知手段と、
を備えており、
調理時間の設定にあたり、被調理物の種類に対応して設定されている調理時間を基本設定値とし、前記油量検知手段により調理油の油量の減少を検知したときに調理油の油量の減少に対応して設定されている補正値を基本設定値に加算することによって調理時間を設定する、
フライ調理用補助装置。
【請求項5】
既存のフライ調理器に取り付けるフライ調理用補助装置であって、
被調理物を収容又は保持する容器と、
該容器を動かす駆動手段と、
前記容器を油中に入れて被調理物を所要時間調理した後、油中から上げて被調理物の油を切るようにし、この油中での調理から油外での油切りまでの作業を自動的に行うよう前記駆動手段を制御する制御手段と、
調理時間を設定するタイマーと、
油槽内の調理油の量を検知する油量検知手段と、
を備えており、
調理時間の設定にあたり、被調理物の種類に対応して設定されている調理時間を基本設定値とし、被調理物の一度に調理する量の多少に対応して設定されている補正値を基本設定値に加算し、さらに、前記油量検知手段により調理油の油量の減少を検知したときに調理油の油量の減少に対応して設定されている補正値を加算することによって調理時間を設定する、
フライ調理用補助装置。
【請求項6】
油槽と、
油槽内の調理油を加熱する加熱手段と、
請求項4又は5記載のフライ調理用補助装置と、
を備えている、
フライ調理装置。
【請求項7】
油槽と、
油槽内の調理油を加熱する加熱手段と、
調理時間を設定するタイマーと、
油槽内の調理油の量を検知する油量検知手段と、
を備えており、
調理時間の設定にあたり、被調理物の種類に対応して設定されている調理時間を基本設定値とし、前記油量検知手段により調理油の油量の減少を検知したときに調理油の油量の減少に対応して設定されている補正値を基本設定値に加算することによって調理時間を設定する、
フライ調理装置。
【請求項8】
油槽と、
油槽内の調理油を加熱する加熱手段と、
調理時間を設定するタイマーと、
油槽内の調理油の量を検知する油量検知手段と、
を備えており、
調理時間の設定にあたり、被調理物の種類に対応して設定されている調理時間を基本設定値とし、被調理物の一度に調理する量の多少に対応して設定されている補正値を基本設定値に加算し、さらに、前記油量検知手段により調理油の油量の減少を検知したときに調理油の油量の減少に対応して設定されている補正値を加算することによって調理時間を設定する、
フライ調理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−170423(P2012−170423A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37535(P2011−37535)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(591188413)株式会社ハルモニア (4)
【Fターム(参考)】