説明

フラックス内包カプセル含有導電性粒子、異方性導電材料及び接続構造体

【課題】電極間の接続に用いられた場合に、導電性粒子の表面の酸化被膜を充分に除去でき、電極間の接続抵抗を低くすることができるフラックス内包カプセル含有導電性粒子を提供する。
【解決手段】金属層5を表面に有する導電性粒子2と、フラックス6、及び該フラックス6を内包しており、かつポリマーにより形成されている被膜7を有するフラックス内包カプセル3とを備え、フラックス内包カプセル3が金属層5内に含有されているフラックス内包カプセル含有導電性粒子1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電極間の接続に使用できるフラックス内包カプセル含有導電性粒子、並びに該フラックス内包カプセル含有導電性粒子を用いた異方性導電材料及び接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
はんだボール等の導電性粒子が、ICチップとフレキシブルプリント回路基板との接続や、ICチップとITO電極を有する回路基板との接続等に用いられている。例えば、ICチップの電極と回路基板の電極との間に導電性粒子を配置した後、加熱及び加圧により導電性粒子の表面を溶融させることにより、上記電極同士を電気的に接続できる。
【0003】
導電性粒子の表面は金属により形成されている。このため、導電性粒子の表面には酸化被膜が形成されやすい。導電性粒子を溶融させて、電極間を接続する際には、酸化被膜は除去されることが好ましい。酸化被膜が除去されなければ、導電性粒子の表面の金属が充分に濡れ拡がらずに、金属と電極とが金属結合により接合されないことがある。このため、電極間の接続抵抗が高くなることがある。
【0004】
従来、電極間の接続の前に、酸化被膜を除去するためのフラックスが電極に塗布されていた。この場合には、フラックスを電極に塗布する作業が必要であった。さらに、酸化被膜を充分に除去するためには、比較的多くのフラックスを電極に塗布しなければならなかった。このため、電極間の接続後に、洗浄によりフラックスを除去しなければならないことがあった。また、洗浄により基板等が劣化することがあった。
【0005】
そこで、電極間の接続の前に、フラックスを電極に塗布しなくてもよい導電性粒子が提案されている。例えば、下記の特許文献1には、導電性粒子と、該導電性粒子の表面に固着されており、かつフラックスを内包している複数のフラックス内包カプセルとを備えるフラックス内包カプセル付き導電性粒子が開示されている。
【特許文献1】特開2003−247083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のフラックス内包カプセル付き導電性粒子では、100℃未満の比較的低温で、フラックスを内包している被膜からフラックスが浸み出しやすかった。このため、上記フラックス内包カプセル付き導電性粒子を用いて電極間を接続した場合、加熱の初期段階で、フラックスが被膜から浸み出しやすかった。さらに、導電性粒子の上方部分に付着したフラックスが、導電性粒子の下方部分に流動することがあった。このため、導電性粒子の上方部分の表面の酸化被膜が除去されないことがあった。この結果、導電性粒子と上方の電極とが、接触しているだけで、金属結合により充分に接合されないことがあった。このため、導電性粒子と上方の電極とを接続するために、上方の電極にフラックスを塗布し、再度加熱及び加圧しなければならないことがあった。
【0007】
本発明の目的は、電極間の接続に用いられた場合に、導電性粒子の表面の酸化被膜を充分に除去でき、電極間の接続抵抗を低くすることができるフラックス内包カプセル含有導電性粒子、並びに該フラックス内包カプセル含有導電性粒子を用いた異方性導電材料及び接続構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、金属層を表面に有する導電性粒子と、フラックス、及び該フラックスを内包しており、かつポリマーにより形成されている被膜を有するフラックス内包カプセルとを備え、前記フラックス内包カプセルが前記金属層内に含有されていることを特徴とする、フラックス内包カプセル含有導電性粒子が提供される。
【0009】
本発明に係るフラックス内包カプセル含有導電性粒子のある特定の局面では、前記ポリマーのガラス転移温度は、100℃以上、前記金属層の融点以下である。
【0010】
本発明に係るフラックス内包カプセル含有導電性粒子の他の特定の局面では、前記金属層の融点が300℃以下であり、前記ポリマーのガラス転移温度が100〜300℃の範囲内にある。
【0011】
本発明に係る異方性導電材料は、本発明のフラックス内包カプセル含有導電性粒子と、バインダー樹脂とを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る接続構造体は、第1の電気的接続対象部材と、第2の電気的接続対象部材と、該第1,第2の電気的接続対象部材を電気的に接続している接続部とを備え、前記接続部が、本発明のフラックス内包カプセル含有導電性粒子、又は該フラックス内包カプセル含有導電性粒子とバインダー樹脂とを含む異方性導電材料を用いて形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るフラックス内包カプセル含有導電性粒子では、フラックス内包カプセルが金属層内に含有されているため、電極間の接続に用いられた場合に、被膜が熱により変形し、被膜からフラックスが適度に浸み出して、導電性粒子の表面の酸化被膜を充分に除去できる。従って、導電性粒子と電極とを金属結合により容易に接合できる。このため、電極間の接続抵抗を低くすることができる。
【0014】
さらに、フラックス内包カプセルは金属層内に含有されているため、フラックス内包カプセル含有導電性粒子がバインダー樹脂に分散された場合に、バインダー樹脂中にフラックスが溶出し難い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0016】
(フラックス内包カプセル含有導電性粒子)
図1は、本発明の一実施形態に係るフラックス内包カプセル含有導電性粒子を示す断面図である。
【0017】
図1に示すように、フラックス内包カプセル含有導電性粒子1は、導電性粒子2と、フラックス内包カプセル3とを備える。
【0018】
導電性粒子2は、基材粒子4と、該基材粒子4の表面4aを被覆している金属層5とを有する。導電性粒子2の表面は金属層5である。従って、フラックス内包カプセル含有導電性粒子1は、金属層5を表面に有する。導電性粒子は、基材粒子4を有していなくてもよい。導電性粒子は、基材粒子を有しない金属粒子であってもよい。
【0019】
複数のフラックス内包カプセル3が、金属層5内に含有されている。複数のフラックス内包カプセル3が、フラックス内包カプセル含有導電性粒子1の表面近傍に含有されている。
【0020】
フラックス内包カプセル3は、フラックス6と、該フラックス6を内包している被膜7とを有する。被膜7は、ポリマーにより形成されている。
【0021】
フラックス6は特に限定されない。フラックス6として、はんだ接合等に一般的に用いられているフラックスを使用できる。フラックス6として、例えば、塩化亜鉛、塩化亜鉛と無機ハロゲン化物との混合物、塩化亜鉛と無機酸との混合物、溶融塩、リン酸、リン酸の誘導体、有機ハロゲン化物、ヒドラジン、有機酸又は松脂等が挙げられる。フラックスは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0022】
上記溶融塩として、塩化アンモニウム等が挙げられる。上記有機酸として、乳酸、クエン酸、ステアリン酸、グルタミン酸又はヒドラジン等が挙げられる。上記松脂として、活性化松脂又は非活性化松脂等が挙げられる。
【0023】
フラックス6は、松脂であることが好ましく、活性化松脂又は非活性化松脂であることがより好ましい。上記フラックスとして、活性化松脂又は非活性化松脂を用いることにより、フラックス内包カプセル含有導電性粒子1が電極間の接続に用いられた場合、電極間の接続抵抗を低くすることができる。
【0024】
上記松脂はアビエチン酸を主成分とするロジン類である。フラックス6は、ロジン類であることが好ましく、アビエチン酸であることがより好ましい。上記フラックスとして、ロジン類を用いることにより、フラックス内包カプセル含有導電性粒子1が電極間の接続に用いられた場合、電極間の接続抵抗をより一層低くすることができる。
【0025】
フラックス6の活性度を調整するために、塩基性有機化合物を被膜7に内包させてもよい。上記塩基性有機化合物として、塩酸アニリン又は塩酸ヒドラジン等が挙げられる。
【0026】
被膜7は、溶剤を内包してもよい。該溶剤として、アセトン、アミルベンゼン、アミルアルコール、ベンゼン、四塩化炭素、エチルアルコール、メチルアルコール、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、トルエン、トリクロロエチレン、テレピン油、キシレン、又は2−メチル2,4−ペンタンジオール等が挙げられる。
【0027】
また、被膜7は、界面活性剤を内包してもよい。
【0028】
上記フラックス6を内包している被膜7は、ポリマーにより形成されている。
【0029】
上記ポリマーのガラス転移温度は、100℃以上、かつ金属層5の融点(以下、金属層の融点を融点Tm又はTmともいう)以下であることが好ましい。上記ポリマーのガラス転移温度が上記範囲内にある場合には、フラックス内包カプセル含有導電性粒子1が電極間の接続に用いられたときに、被膜7が熱により変形し、被膜7からフラックス6が適度に浸み出して、フラックス内包カプセル含有導電性粒子1の表面の酸化被膜を効果的に除去できる。従って、導電性粒子2と電極とを確実に接続でき、電極間の接続抵抗を低くすることができる。
【0030】
上記金属層5の融点Tmは、300℃以下であることがより好ましく、280℃以下であることがさらに好ましく、さらに260℃以下であることが特に好ましい。上記ポリマーのガラス転移温度は、100〜300℃の範囲内にあることがより好ましく、100〜280℃の範囲内にあることがさらに好ましく、さらに100〜260℃の範囲内にあることが特に好ましい。
【0031】
上記ポリマーのガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)により測定できる。
【0032】
上記ポリマーとして、ガラス転移温度が100〜Tm℃の範囲内にあるホモポリマー、又はガラス転移温度が100〜Tm℃のコポリマー等が挙げられる。
【0033】
上記ホモポリマーとして、例えば、メタクリル酸メチルホモポリマー(ガラス転移温度105℃)、スチレンホモポリマー(ガラス転移温度100℃)又はメタクリル酸ホモポリマー(ガラス転移温度180℃)等が挙げられる。
【0034】
単独で重合された場合にガラス転移温度が100〜Tm℃のホモポリマーが得られるモノマーを複数種用いて共重合させることにより、上記コポリマーを得ることができる。また、単独で重合された場合にガラス転移温度が100℃未満のホモポリマーが得られるモノマーと、単独で重合された場合にガラス転移温度が100〜Tm℃のホモポリマーが得られるモノマーとを共重合させることにより、上記コポリマーを得ることができる。
【0035】
上記モノマーとして、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ビニルシアン化合物、有機酸ビニル化合物又は芳香族ビニル化合物等が挙げられる。これらのモノマーを重合又は共重合させることにより、上記ポリマーを得ることができる。上記「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0036】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等が挙げられる。上記ビニルシアン化合物として、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。上記有機酸ビニル化合物として、酢酸ビニル又はプロピオン酸ビニル等が挙げられる。上記芳香族ビニル化合物として、スチレン、α−メチルスチレン又はビニルナフタレン等が挙げられる。
【0037】
ポリマーのガラス転移温度が100〜Tm℃の範囲内になるように、モノマーが適宜組み合わされて用いられる。
【0038】
また、ポリマーを得る際には、上記モノマーとして、架橋性モノマーを用いてもよい。架橋性モノマーを用いることにより、ポリマーのガラス転移温度を調整できる。単独で重合された場合にガラス転移温度が100℃未満のホモポリマーが得られるモノマーを用いる場合、コポリマーを得る際に用いられる全てのモノマーの合計100重量%中に、架橋性モノマーは1〜20重量%の範囲内で含有されることが好ましい。単独で重合された場合にガラス転移温度が100℃以上のホモポリマーが得られるモノマーを用いる場合、コポリマーを得る際に用いられる全てのモノマー合計100重量%中に、架橋性モノマーは0.1〜10重量%の範囲内で含有されることが好ましい。上記範囲内で架橋性モノマーを含有させることにより、ポリマーのガラス転移温度を100〜Tm℃の範囲内に容易に調整できる。
【0039】
上記架橋性モノマーとして、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサ(メタ)アクリレート又はジビニルベンゼン等が挙げられる。上記「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0040】
上記フラックス6を被膜7により内包する方法は、特に限定されない。この方法として、フラックス6を分散させた媒体中で、上記モノマーを重合させる方法等が挙げられる。
【0041】
上記フラックス内包カプセル3の形状は、球状であることが好ましい。
【0042】
上記フラックス内包カプセル3の平均粒子径は、0.01〜10μmの範囲内にあることが好ましい。フラックス内包カプセル3の平均粒子径が大きすぎると、フラックス内包カプセル3を金属層5内に含有させることが困難になる。フラックス内包カプセル3が小さすぎると、フラックス内包カプセル含有導電性粒子1が電極間の接続に用いられた場合に、被膜7から放出されるフラックス6の量が少なすぎることがある。
【0043】
なお、上記フラックス内包カプセルの「平均粒子径」とは、体積平均粒子径を示す。フラックス内包カプセルの平均粒子径は、例えばマイクロトラック(日機装社製)を用いて測定できる。
【0044】
導電性粒子2の金属層5を形成するための金属は特に限定されない。該金属として、例えば、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、鉛、錫、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム、錫、又は錫を含む合金等が挙げられる。なかでも、錫、錫を含む合金、ニッケル、銅又は金が好ましい。
【0045】
上記錫を含む合金は、銀、銅、亜鉛、ビスマス、インジウム、鉛及びアンチモンからなる群から選択された1種と、錫とを含むことが好ましい。上記錫を含む合金の具体例として、錫−鉛合金、錫−銅合金、錫−銀合金又は錫−鉛−銀合金等が挙げられる。
【0046】
基材粒子4として、樹脂粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子又は金属粒子等が挙げられる。
【0047】
上記樹脂粒子を形成するための樹脂として、例えば、ジビニルベンゼン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、尿素樹脂、イミド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂又は塩化ビニル樹脂等が挙げられる。上記無機粒子を形成するための無機物として、シリカ又はカーボンブラック等が挙げられる。上記有機無機ハイブリッド粒子として、例えば、架橋したアルコキシシリルポリマーとアクリル樹脂とにより形成された有機無機ハイブリッド粒子等が挙げられる。上記金属粒子を形成するための金属として、銀、銅、ニッケル、ケイ素、金又はチタン等が挙げられる。
【0048】
基材粒子4の表面4aに金属層5を形成する方法は特に限定されない。金属層5を形成する方法として、例えば、無電解めっきにより金属層を形成する方法、電気めっきにより金属層を形成する方法、物理的蒸着により金属層を形成する方法、金属微粉を基材粒子の表面にコーティングすることにより金属層を形成する方法、又は金属微粉とバインダーとを含むペーストを基材粒子の表面にコーティングすることにより金属層を形成する方法等が挙げられる。なかでも、無電解めっきにより金属層を形成する方法が好適である。
【0049】
上記物理的蒸着により金属層を形成する方法として、真空蒸着、イオンプレーティング又はイオンスパッタリング等により金属層を形成する方法が挙げられる。
【0050】
基材粒子4の表面4aに金属層5を形成する際に、金属層5を形成する成分にフラックス内包カプセル3を添加することにより、フラックス内包カプセル3を金属層5内に含有させることができる。
【0051】
フラックス内包カプセル3を金属層5内に含有させる具体的な方法として、複合めっき法、ハイブリタイザー法又は溶融法等が挙げられる。
【0052】
導電性粒子2の平均粒子径は、1〜1000μmの範囲内にあることが好ましい。上記平均粒子径が、1μmよりも小さいと、電極間の接続信頼性が低下することがある。上記平均粒子径が1000μmをこえると、電極間の間隔が大きくなりすぎることがある。
【0053】
なお、導電性粒子の「平均粒子径」とは、数平均粒子径を示す。導電性粒子の平均粒子径は、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
【0054】
金属層5は、単層により形成されていてもよく、2層以上が積層された複数層により形成されていてもよい。
【0055】
導電性粒子2の金属層5の外表面は、錫又は錫を含む合金により形成されていることが好ましい。この場合には、フラックス内包カプセル含有導電性粒子1が電極間の接続に用いられた場合に、電極間の接続抵抗をより一層低くすることができる。
【0056】
金属層5の厚みは、0.001〜100μmの範囲内にあることが好ましく、0.1〜50μmの範囲内にあることがより好ましい。金属層5の厚みが0.001μm未満であると、導電性が不足することがあり、100μmを超えると、基材粒子4と金属層5との熱膨張率の差が大きくなり、基材粒子4の表面4aから金属層5が剥離しやすくなることがある。
【0057】
(異方性導電材料)
本発明に係る異方性導電材料は、本発明のフラックス内包カプセル含有導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む。
【0058】
上記バインダー樹脂は特に限定されない。バインダー樹脂として、絶縁性の樹脂等が用いられる。バインダー樹脂は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0059】
上記バインダー樹脂の具体例として、例えば、ビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体又はエラストマー等が挙げられる。
【0060】
上記ビニル樹脂として、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂又はスチレン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂として、例えば、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体又はポリアミド樹脂等が挙げられる。上記硬化性樹脂として、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0061】
上記硬化性樹脂は、常温硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂又は湿気硬化型樹脂等であってもよい。上記硬化性樹脂とともに、硬化剤が用いられてもよい。
【0062】
上記熱可塑性ブロック共重合体として、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、又はスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。上記エラストマーとして、例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、又はアクリロニトリル−スチレンブロック共重合ゴム等が挙げられる。
【0063】
異方性導電材料には、フラックス内包カプセル含有導電性粒子及びバインダー樹脂の他に、例えば、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤又は難燃剤等の各種添加剤が含有されてもよい。
【0064】
上記バインダー樹脂中にフラックス内包カプセル含有導電性粒子を分散させる方法は、従来公知の分散方法を用いることができ特に限定されない。この方法として、例えば、バインダー樹脂中にフラックス内包カプセル含有導電性粒子を添加した後、プラネタリーミキサー等で混練し、分散させる方法、フラックス内包カプセル含有導電性粒子を水や有機溶剤中にホモジナイザー等を用いて均一に分散させた後、バインダー樹脂中へ添加し、プラネタリーミキサー等で混練し、分散させる方法、又はバインダー樹脂を水や有機溶剤等で希釈した後、フラックス内包カプセル含有導電性粒子を添加し、プラネタリーミキサー等で混練し、分散させる方法等が挙げられる。
【0065】
本発明の異方性導電材料は、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電粘接着剤、異方性導電フィルム、又は異方性導電シート等として使用され得る。本発明の異方性導電材料が、異方性導電フィルムや異方性導電シート等のフィルム状の接着剤として使用される場合、該フィルム状の接着剤に、フラックス内包カプセル含有導電性粒子を含有しないフィルム状の接着剤が積層されていてもよい。
【0066】
(接続構造体)
本発明に係る接続構造体は、第1の電気的接続対象部材と、第2の電気的接続対象部材と、該第1,第2の電気的接続対象部材を電気的に接続している接続部とを備える。接続部が、本発明のフラックス内包カプセル含有導電性粒子、又は該フラックス内包カプセル含有導電性粒子とバインダー樹脂とを含む異方性導電材料を用いて形成されている。
【0067】
上記第1,第2の電気的接続対象部材は、具体的には、半導体チップ、コンデンサ、又はダイオード等の電子部品や、プリント基板、フレキシブルプリント基板、又はガラス基板等の回路基板等が挙げられる。
【0068】
図2(a)〜(c)を参照しつつ、フラックス内包カプセル含有導電性粒子1を用いて、上記接続構造体を得る各工程の一例を以下説明する。
【0069】
図2(a)に示すように、先ず、第1の電気的接続対象部材の電極21の上面21aに、フラックス内包カプセル含有導電性粒子1を載せる。次に、導電性粒子2の表面が溶融する温度に加熱しながら、フラックス内包カプセル含有導電性粒子1の上方から、第2の電気的接続対象部材の電極22を降下させる。また、電極22の下面22aをフラックス内包カプセル含有導電性粒子1に接触させて、加圧する。
【0070】
図2(b)に示すように、加熱及び加圧により、被膜7が変形し、溶融し、フラックス6が被膜7の外に放出される。放出されたフラックス6は、導電性粒子2の表面の近傍に含有される。または、放出されたフラックス6は、導電性粒子2の表面に付着する。導電性粒子2の表面の近傍に含有されているか、又は導電性粒子2の表面に付着しているフラックス6により、導電性粒子2の表面、電極21の上面21a、及び電極22の下面22aの表面の酸化被膜が除去される。
【0071】
また、加熱により、フラックス6が次第に失活する。そして、図2(c)に示すように、導電性粒子2の下面2aが電極21の上面21aに接合されており、かつ導電性粒子2の上面2bが電極22の下面22aに接合されている接続構造体が得られる。導電性粒子2と電極21,22とは、金属結合により互いに接合される。
【0072】
従来、基材粒子102の表面が金属層103により被覆されている導電性粒子101を用いて、電極間を接続する場合には、図3(a)に示すように、電極121の上面に、フラックス111を塗布していた。そして、図3(b)に示すように、加熱及び加圧により、フラックス111を導電性粒子101の表面に付着させていた。この場合には、導電性粒子101の表面に充分な量のフラックスを付着させるために、フラックス111を比較的多く塗布しなければならなかった。このため、電極間の接続を終えた後、図3(c)に示すように、フラックス111が導電性粒子101の表面に残りやすかった。フラックス111が導電性粒子101の表面に残っていると、接続抵抗が高くなることがある。従って、洗浄により、導電性粒子101の表面に付着しているフラックス111を除去しなければならなかった。
【0073】
また、図4(a)に、特許文献1に記載のフラックス内包カプセル付き導電性粒子105を示す。フラックス内包カプセル付き導電性粒子105は、基材粒子106と、該基材粒子106を被覆している金属層107とを有する導電性粒子105の表面に、フラックス108を内包する被膜109が付着されている。
【0074】
図4(a)に示すように、フラックス内包カプセル付き導電性粒子105を電極121の上面に置き、加熱しながら、電極122を降下させた場合には、図4(b)に示すように、加熱の初期段階で、導電性粒子107の上方部分に付着していたフラックス108が、導電性粒子107の下方部分に流動することがあった。この結果、電極間の接続を終えた後、図4(c)に示すように、導電性粒子107と上方の電極122とが、接触しているだけで、金属結合により充分に接合されないことがあった。
【0075】
本実施形態では、導電性粒子2の表面を溶融させる熱により、被膜7が変形して、被膜7からフラックス6が放出される。放出されたフラックス6は、導電性粒子2の表面の近傍に含有されるか、又は導電性粒子2の表面に付着する。このため、図2(c)に示すように、導電性粒子2の下面2aが電極21の上面21aに接合されており、かつ導電性粒子2の上面2bが電極22の下面22aに接合されている接続構造体を得ることができる。
【0076】
本実施形態では、電極間の接続を終えた後、フラックスを洗浄により除去しなくても、電極間の接続抵抗を低くすることができる。洗浄工程が不要なので、洗浄により、電極21,22が形成されている基板等が劣化することがない。
【0077】
フラックス内包カプセル含有導電性粒子1では、金属層5内にフラックス内包カプセル3が含有されているため、導電接続に用いた場合、導電性粒子2の表面の酸化被膜が除去される。また、金属層5内のフラックス内包カプセル3が応力を緩和するように作用するため、ウィスカーの発生を抑制できる。さらに、金属層5内にフラックス内包カプセル3が含有されていることにより、金属層5の溶融時の融解速度を高めることができる。
【0078】
本実施形態では、バインダー樹脂を含まないフラックス内包カプセル含有導電性粒子1が用いられていた。フラックス内包カプセル含有導電性粒子1と、バインダー樹脂とを含む異方性導電材料を用いて、電極21と電極22とを接続してもよい。
【0079】
特許文献1に記載のようなフラックス内包カプセル付き導電性粒子105をバインダー樹脂中に分散させた場合には、被膜109がバインダー樹脂中に溶解しやすい。このため、被膜109からフラックス108が放出され、フラックス108がバインダー樹脂中に溶出しやすい。フラックス108がバインダー樹脂中に溶出すると、電極の接続の際に、導電性粒子105の表面にフラックス108を付着させることができない。このため、導電性粒子の表面の酸化被膜を除去できず、電極間の接続抵抗が高くなる。
【0080】
フラックス内包カプセル含有導電性粒子1をバインダー樹脂に分散させた場合には、フラックス内包カプセル3が金属層5内に含有されているため、フラックス6がバインダー樹脂中に溶出し難い。従って、導電性粒子の表面の酸化被膜を効果的に除去でき、電極間の接続抵抗を高めることができる。
【0081】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0082】
(合成例1)
モノマーとしてのイソボルニルメタクリレート(IBX)97重量部及びトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMP)3重量部と、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル1重量部とを均一に溶解し、溶液を得た。得られた溶液に、ラウリル硫酸ナトリウムを溶解した水溶液(ラウリル硫酸ナトリウム濃度0.15重量%)2000重量部を加えて、超音波ホモジナイザーにより乳化し、乳化液を得た。得られた乳化液を、70℃で10時間反応させ、ポリマー分散液を得た。遠心分離機を用いて、得られたポリマー分散液からポリマーを分離した。真空乾燥機を用いて、60℃で12時間かけて分離されたポリマーを乾燥し、ポリマーaを得た。
【0083】
(合成例2)
モノマーを、メタクリル酸(MAA)30重量部と、アクリロニトリル(AN)65重量部と、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMP)5重量部とに変更したこと以外は合成例1と同様にして、ポリマーbを得た。
【0084】
(合成例3)
乾式粉砕器を用いて、ゼラチンを微粉砕し、微粉砕されたゼラチン(ポリマーc)を得た。
【0085】
(合成例4)
モノマーを、ジビニルベンゼン(DVB)100重量部に変更したこと以外は合成例1と同様にして、ポリマーdを得た。
【0086】
(合成例5)
モノマーを、アクリル酸エチル(EA)50重量部と、アクリロニトリル(AN)30重量部と、メタクリロニトリル(MAN)20重量部とに変更したこと以外は合成例1と同様にして、ポリマーeを得た。
【0087】
(ガラス転移温度の評価)
合成例1〜5で得られたポリマーa〜eのガラス転移温度を、示差走査熱量計DSCにより測定した。結果を下記の表1に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
(実施例1)
(1)フラックス内包カプセルの作製
モノマーとしてのイソボルニルメタクリレート(IBX)97重量部及びトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMP)3重量部と、フラックスとしてのアビエチン酸50重量部と、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル1重量部とを均一に溶解し、溶液を得た。得られた溶液に、ラウリル硫酸ナトリウムを溶解した水溶液(ラウリル硫酸ナトリウム濃度0.15重量%)2000重量部を加えて、超音波ホモジナイザーにより乳化し、乳化液を得た。得られた乳化液を、70℃で10時間反応させ、フラックス内包カプセル分散液を得た。遠心分離機を用いて、得られたフラックス内包カプセル分散液からフラックス内包カプセルを分離した。真空乾燥機を用いて、60℃で12時間かけて分離されたフラックス内包カプセルを乾燥し、フラックス内包カプセルA(体積平均粒子径0.3μm)を得た。
【0090】
(2)フラックス内包カプセル含有導電性粒子の作製
平均粒径4μmのジビニルベンゼン樹脂粒子の表面に、パラジウム金属を付着させた。上記パラジウム金属が付着された樹脂粒子の表面に、無電解ニッケルめっきを行うことにより、厚さ0.1μmのニッケルめっき層を形成した。ニッケルめっき層が形成された樹脂粒子を200mlの容積のバレルめっき装置に入れ、硫酸銅400g/lと、塩酸5ml/lと、硫酸100g/lと、光沢剤1g/lとを含む銅めっき液を添加し、電流密度2A/dm、浴温30℃で電気めっきを行い、厚さ10μmの銅めっき層が形成された樹脂粒子を得た。銅めっき層が形成された樹脂粒子を、200mlの容積のバレルめっき装置に入れ、フラックス内包カプセルAが分散されためっき液(ディップソール社製「TS−3400」)を添加し、電流密度0.5A/dm、浴温30℃で電気めっきを行い、フラックス内包カプセルAを含有する厚さ10μmのはんだ層(錫−銀合金:融点260℃)が形成された導電性粒子を得た。融点260℃のはんだ層を表面に有し、かつ該はんだ層内にフラックス内包カプセルAが含有されているフラックス内包カプセル含有導電性粒子A−1(数平均粒子径44μm)を作製した。
【0091】
(実施例2)
モノマーを、メタクリル酸(MAA)30重量部と、アクリロニトリル(AN)65重量部と、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMP)5重量部とに変更したこと以外は実施例1と同様にして、フラックス内包カプセルB(体積平均粒子径0.3μm)を作製した。
【0092】
フラックス内包プセルAを、得られたフラックス内包カプセルBに変更したこと以外は実施例1と同様にして、融点260℃のはんだ層を表面に有し、かつ該はんだ層内にフラックス内包カプセルBが含有されているフラックス内包カプセル含有導電性粒子B−1(数平均粒子径44μm)とを作製した。
【0093】
(実施例3)
乾式粉砕器を用いて、ゼラチンを微粉砕し、微粉砕されたゼラチン(ポリマーc)を得た。
【0094】
フラックスとしてのアビエチン酸50重量部をトルエン50重量部に均一に溶解し、溶液を得た。得られた溶液に、ラウリル硫酸ナトリウムを溶解した水溶液(ラウリル硫酸ナトリウム濃度0.15重量%)2000重量部を加えて、超音波ホモジナイザーにより乳化し、乳化液を得た。得られた乳化液に、上記ポリマーcを溶解した水溶液(ポリマーc濃度5重量%)を加え、攪拌した。その後、エタノールを滴下して、フラックス内包カプセル分散液を得た。遠心分離機を用いて、得られたフラックス内包カプセル分散液からフラックス内包カプセルを分離した。真空乾燥機を用いて、60℃で12時間かけて得られたフラックス内包カプセルを乾燥し、フラックス内包カプセルC(体積平均粒子径0.3μm)を得た。
【0095】
フラックス内包カプセルAを、得られたフラックス内包カプセルCに変更したこと以外は実施例1と同様にして、融点260℃のはんだ層を表面に有し、かつ該はんだ層内にフラックス内包カプセルCが含有されているフラックス内包カプセル含有導電性粒子C−1(数平均粒子径44μm)を作製した。
【0096】
(実施例4)
モノマーを、ジビニルベンゼン(DVB)100重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、フラックス内包カプセルD(体積平均粒子径0.3μm)を作製した。
【0097】
フラックス内包カプセルAを、得られたフラックス内包カプセルDに変更したこと以外は実施例1と同様にして、融点260℃のはんだ層を表面に有し、かつ該はんだ層内にフラックス内包カプセルDが含有されているフラックス内包カプセル含有導電性粒子D−1(数平均粒子径44μm)を作製した。
【0098】
(実施例5)
モノマーを、アクリル酸エチル(EA)50重量部と、アクリロニトリル(AN)30重量部と、メタクリロニトリル(MAN)20重量部とに変更したこと以外は実施例1と同様にして、フラックス内包カプセルE(体積平均粒子径0.3μm)を作製した。
【0099】
フラックス内包カプセルAを、得られたフラックス内包カプセルEに変更したこと以外は実施例1と同様にして、融点260℃のはんだ層を表面に有し、かつ該はんだ層内にフラックス内包カプセルEが含有されているフラックス内包カプセル含有導電性粒子E−1(数平均粒子径44μm)を作製した。
【0100】
(比較例1)
実質的に融点が260℃のはんだにより形成された導電性粒子F−1(数平均粒子径44μm)を用意した。
【0101】
(評価)
(1)フラックス内包カプセルの観察
実施例1〜5で得られたフラックス内包カプセルA〜Eを、透過電子顕微鏡TEMにて観察した。フラックスが被膜に内包されている場合を「○」、フラックスが被膜に内包されていない場合を「×」として、結果を下記の表2に示した。
【0102】
(2)実装評価
フラックス内包カプセル含有導電性粒子A−1〜E−1又は導電性粒子F−1をプリント基板の電極上に24個置いた。フラックス内包カプセル含有導電性粒子A−1〜E−1又は導電性粒子F−1を介して、ダミーチップをプリント基板上に、電極同士が互いに対向するように積層した。その後、赤外線リフロー装置を用いて導電性粒子と電極とを接合し、接続構造体を得た。接合の際に、185℃で1分間加熱し、次いで245℃で3分間加熱した。
【0103】
得られた接続構造体の対向する電極間の接続抵抗を4端子法により測定した。接続抵抗値が、1Ω以下であった場合を「○」、1Ωを超え、5Ω以下であった場合を「△」、5Ωを超えた場合を「×」として、結果を下記の表2に示した。
【0104】
【表2】

【0105】
実施例1〜5のフラックス内包カプセル含有導電性粒子A−1〜E−1では、導電性粒子と電極とが接合されており、接続抵抗が低かった。
【0106】
比較例1の導電性粒子F−1では、導電性粒子と電極とが充分に接合されなかったため、接続抵抗が高かった。
【0107】
(実施例6)
はんだ層の融点を170℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして、融点170℃のはんだ層を表面に有し、かつ該はんだ層内にフラックス内包カプセルAが含有されているフラックス内包カプセル含有導電性微粒子A−2を作製した。
【0108】
(実施例7)
はんだ層の融点を170℃に変更したこと以外は実施例2と同様にして、融点170℃のはんだ層を表面に有し、かつ該はんだ層内にフラックス内包カプセルBが含有されているフラックス内包カプセル含有導電性粒子B−2とを作製した。
【0109】
(実施例8)
はんだ層の融点を170℃に変更したこと以外は実施例3と同様にして、融点170℃のはんだ層を表面に有し、かつ該はんだ層内にフラックス内包カプセルCが含有されているフラックス内包カプセル含有導電性粒子C−2を作製した。
【0110】
(実施例9)
はんだ層の融点を170℃に変更したこと以外は実施例4と同様にして、融点170℃のはんだ層を表面に有し、かつ該はんだ層内にフラックス内包カプセルDが含有されているフラックス内包カプセル含有導電性粒子D−2を作製した。
【0111】
(実施例10)
はんだ層の融点を170℃に変更したこと以外は実施例5と同様にして、融点170℃のはんだ層を表面に有し、かつ該はんだ層内にフラックス内包カプセルEが含有されているフラックス内包カプセル含有導電性粒子E−2を作製した。
【0112】
(比較例2)
実質的に融点が170℃のはんだにより形成された導電性粒子F−2(数平均粒子径44μm)を用意した。
【0113】
(評価)
実施例6〜10及び比較例2で得られたフラックス内包カプセル含有導電性粒子A−2〜E−2及び導電性粒子F−2を用いて、接合の際に、145℃で1分間加熱し、次いで、160℃で3分間加熱したこと以外は、上記の方法と同様にして実装評価を行った。
【0114】
結果を下記の表3に示す。
【0115】
【表3】

【0116】
実施例6〜10のフラックス内包カプセル含有導電性粒子A−2〜E−2では、導電性粒子と電極とが接合されており、接続抵抗が低かった。
【0117】
比較例2の導電性粒子F−2では、導電性粒子と電極とが充分に接合されなかったため、接続抵抗が高かった。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るフラックス内包カプセル含有導電性粒子を示す断面図である。
【図2】図2(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係るフラックス内包カプセル含有導電性粒子を用いて、電極間を接続する各工程の一例を説明するための部分切欠正面断面図である。
【図3】図3(a)〜(c)は、従来の導電性粒子を用いて、電極間を接続する各工程を説明するための部分切欠正面断面図である。
【図4】図4(a)〜(c)は、従来のフラックス内包カプセル付き導電性粒子を用いて、電極間を接続する各工程を説明するための部分切欠正面断面図である。
【符号の説明】
【0119】
1…フラックス内包カプセル含有導電性粒子
2…導電性粒子
2a…下面
2b…上面
3…フラックス内包カプセル
4…基材粒子
4a…表面
5…金属層
6…フラックス
7…被膜
21…電極
21a…上面
22…電極
22a…下面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層を表面に有する導電性粒子と、
フラックス、及び該フラックスを内包しており、かつポリマーにより形成されている被膜を有するフラックス内包カプセルとを備え、
前記フラックス内包カプセルが前記金属層内に含有されていることを特徴とする、フラックス内包カプセル含有導電性粒子。
【請求項2】
前記ポリマーのガラス転移温度が、100℃以上、前記金属層の融点以下である、請求項1に記載のフラックス内包カプセル含有導電性粒子。
【請求項3】
前記金属層の融点が300℃以下であり、
前記ポリマーのガラス転移温度が100〜300℃の範囲内にある、請求項2に記載のフラックス内包カプセル含有導電性粒子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のフラックス内包カプセル含有導電性粒子と、バインダー樹脂とを含むことを特徴とする、異方性導電材料。
【請求項5】
第1の電気的接続対象部材と、第2の電気的接続対象部材と、該第1,第2の電気的接続対象部材を電気的に接続している接続部とを備え、
前記接続部が、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフラックス内包カプセル含有導電性粒子、又は該フラックス内包カプセル含有導電性粒子とバインダー樹脂とを含む異方性導電材料を用いて形成されていることを特徴とする、接続構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−73395(P2010−73395A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237701(P2008−237701)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】