説明

フラックス転写装置

【課題】転写テーブル上のフラックスの残量を残量センサで検出する場合、フラックスが検出しにくい透明な粘性流体であるため、検出しにくいという問題があった。
【解決手段】回転テーブル50上のフラックスの残量を監視する残量センサ62は、スキージ61で掻き取られるフラックスの盛り上がり部分の上方に配置された投光素子62aと受光素子62bとから成る反射型の光センサ62により構成され、スキージ61で掻き取られるフラックスの盛り上がり部分に向けて投光素子62aから投光して反射光を受光素子62bで検出する。投光領域のフラックスの盛り上がりが少なくなるほど、当該投光領域のフラックス表面が平坦面に近付いていくため、反射型の光センサ54で受光する反射光量が増加する。この特性を考慮して、反射型の光センサ62の受光素子62bで受光する反射光量が予め設定したレベルを越えたときにフラックスの残量不足と判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写テーブル上のフラックスを均一に押し広げてフラックス膜を形成するフラックス転写装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
電子部品実装機を使用して電子部品のバンプや端子を回路基板に半田付けする場合、半田の濡れ性等を良くするために、例えば、特許文献1(特開2001−85830号公報)に示すように、電子部品実装機に小型のフラックス転写装置をセットして、予め電子部品のバンプや端子にフラックスを転写してから、半田付けすることがある。
【0003】
この種のフラックス転写装置は、フラックスを貯留した皿状の回転テーブル(転写テーブル)を回転させることで、その上方に配置されたスキージによって回転テーブル上のフラックスを均一に押し広げてフラックス膜を形成し、該回転テーブルの回転を停止させて、電子部品実装機の吸着ノズルに吸着した電子部品のバンプや端子を回転テーブル上のフラックス膜に浸すことで、電子部品のバンプや端子にフラックスを転写するようにしている。
【0004】
また、特許文献2(特開平10−76210号公報)には、転写テーブル上のフラックスの残量を検出する残量センサとして、透過型の光電センサ、レーザーセンサを用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−85830号公報(第3頁〜第4頁等)
【特許文献2】特開平10−76210号公報(第3頁〜第4頁等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、転写テーブル上のフラックスの残量を残量センサで検出する場合、フラックスが検出しにくい透明な粘性流体であるため、検出しにくいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、転写テーブル上にフラックスを供給し、その上方に配置されたスキージによって前記転写テーブル上のフラックスを均一に押し広げてフラックス膜を形成し、このフラックス膜に転写対象物を浸すことで、この転写対象物にフラックスを転写するフラックス転写装置において、前記転写テーブルに貯留されているフラックスの残量を監視するための残量センサを備え、前記残量センサは、前記スキージング動作中に前記スキージで掻き取られるフラックスの盛り上がり部分に向けてその上方から投光して反射光を検出する反射型の光センサにより構成されていることを特徴とするものである。本発明のように、スキージング動作中にスキージで掻き取られるフラックスの盛り上がり部分に向けてその上方から投光すると、その投光領域のフラックスの盛り上がりが少なくなるほど、当該投光領域のフラックス表面が平坦面に近付いていくため、当該投光領域のフラックス表面での光の乱反射や屈折が少なくなり、反射型の光センサで受光する反射光量が増加する。従って、反射型の光センサで受光する反射光量が予め設定したレベルを越えたときに当該光センサがこれを検出するように構成すれば、フラックスが検出しにくい透明な粘性流体であるという事情があっても、スキージで掻き取られるフラックスの盛り上がりの不足(フラックスの残量不足)を精度良く検出することができる。
【0008】
この場合、請求項2のように、転写テーブル上にフラックスを供給するフラックス供給手段と、残量センサの出力信号に基づいてフラックスの残量が不足すると判断されるときに前記フラックス供給手段を作動させて前記転写テーブル上にフラックスを補給する制御手段とを備えた構成とすると良い。このようにすれば、転写テーブルに貯留されているフラックスの残量不足が検出される毎に、その都度、転写テーブル上にフラックスを自動的に補給することができ、フラックス不足による半田付け不良の発生を未然に防止できて、半田付けの品質・信頼性を向上できる。
【0009】
この場合、スキージで掻き取られるフラックスの掻き取り量が少なくなり過ぎると、バンプ等の転写対象物の浸漬により生じたフラックス膜表面の凹凸を均一な平面に均すことができなくなり、バンプ等の転写対象物に均一にフラックスを転写できなくなる。
【0010】
この点を考慮して、請求項3のように、フラックス膜を形成するスキージング動作中に残量センサの出力信号に基づいてスキージで掻き取られるフラックスの掻き取り量を検出してフラックスの残量を監視するようすると良い。このようにすれば、スキージング動作中にフラックスの残量不足を精度良く検出することができる。
【0011】
一般に、スキージは、フラックスを掻き取るエッジ部分の形状が直線状に形成されている。本発明は、このような直線エッジ形状のスキージを用いても良いが、回転する転写テーブル上のフラックスを直線エッジ形状のスキージで押し広げると、フラックスがスキージのエッジの中央側からその両端側に向けて流動する傾向があるため、スキージの中央側のフラックスが相対的に少なくなる傾向がある。このため、回転する転写テーブル上のフラックスの残量が少なくなると、スキージの中央側で局所的にフラックスが不足してフラックス膜表面を均一な平面に均すことができなくなる可能性がある。
【0012】
この対策として、転写テーブルを回転させてスキージングする回転方式のものでは、請求項4のように、スキージのエッジ部分の形状をその中央側が転写テーブルの回転方向に湾曲する円弧状に形成すると良い。このようにすれば、回転する転写テーブル上のフラックスをスキージで押し広げる際に、フラックスがスキージのエッジの中央側からその両端側に向けて流動することをスキージのエッジ部分の湾曲形状によって防止することができ、スキージの中央側で局所的にフラックスが不足した状態になることを防止できる。
【0013】
尚、転写テーブルを固定してスキージを水平方向に直線移動させたり、或はスキージを固定して転写テーブルを水平方向に直線移動させる直動方式のものでは、直線エッジ形状のスキージを用いれば良い。
【0014】
また、請求項5のように、フラックス供給手段は、フラックスを貯留するタンクと、このタンク内に空気を供給して該タンクの吐出ノズルからフラックスを空気圧で前記転写テーブル上に押し出す空気供給源とを備え、フラックス供給停止中に、前記吐出ノズル内の残留フラックスが前記タンク内に逆流しないように前記タンク内圧を大気圧よりも少し高い圧力に維持するように構成すると良い。
【0015】
本発明者らの研究結果によれば、フラックス供給停止中にタンク内圧が大気圧と同一になっていると、吐出ノズル内の残留フラックスが表面張力等によってタンク内に逆流する現象が発生することが判明した。この逆流現象が発生すると、タンク内に空気を供給してタンクの吐出ノズルからフラックスを空気圧で転写テーブル上に押し出す際に、フラックスの押し出し量がばらついてしまい、転写テーブルへのフラックスの補給量が安定しない。
【0016】
この対策として、請求項5のように、フラックス供給停止中にタンク内圧を大気圧よりも少し高い圧力に維持するようにすれば、フラックス供給停止中に吐出ノズル内の残留フラックスがタンク内に逆流することを防止でき、転写テーブルへのフラックスの補給量を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例におけるフラックス転写装置本体を電子部品実装機内のセット位置にセットした状態を示す主要部の縦断側面図である。
【図2】フラックス転写装置本体を電子部品実装機内のセット位置にセットした状態を示す主要部の一部破断側面図である。
【図3】フラックス転写装置を電子部品実装機内に取り付ける直前の状態を示す主要部の一部破断側面図である。
【図4】フラックス転写装置本体を電子部品実装機の外側の引き出し位置に引き出した状態を示す主要部の縦断側面図である。
【図5】フラックス転写装置本体の平面図である。
【図6】フラックスの残量不足検出方法を説明する図である(フラックスの残量が不足していないときの図である)。
【図7】フラックスの残量不足検出方法を説明する図である(フラックスの残量が不足しているときの図である)。
【図8】フラックス供給装置の構成を説明する図である。
【図9】フラックス供給装置の動作とタンク内圧の変化を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した一実施例を図面を参照して説明する。 フラックス転写装置10は、電子部品実装機20の装着部11に装着される取付ベース12と、この取付ベース12上に搭載されたフラックス転写装置本体14とを備え、フラックス転写装置本体14は、取付ベース12の上面に設けられた2本のガイドレール13に沿って電子部品実装機20の内側のセット位置(図1の位置)と外側の引き出し位置(図4の位置)との間をスライド移動できるように構成されている。
【0019】
電子部品実装機20の装着部11は、電子部品供給装置(フィーダ)の装着部としても使用できるように装着構造が共通化されている。これを具体的に説明すると、装着部11の底面には、フラックス転写装置10の着脱方向に延びる装着ガイド溝15が形成され、フラックス転写装置10の取付ベース12の下面に設けられた凸条部16が装着ガイド溝15に嵌まり込んだ状態となっている。
【0020】
取付ベース12の先端部(前進端部)には、立上がりプレート17が垂直に立設され、この立上がりプレート17には、フラックス転写装置本体14に対するストッパ18が設けられ、作業者がフラックス転写装置本体14を電子部品実装機20の内側のセット位置に押し込むときに、フラックス転写装置本体14のベースプレート19がストッパ18に当接することで、フラックス転写装置本体14がセット位置で停止されるようになっている。
【0021】
また、取付ベース12の立上がりプレート17には、フラックス転写装置10の信号線・電源線を装着部11側のコネクタ21に接続するためのコネクタ22と、取付ベース12を装着部11側に係合固定するための係合ピン23,24(図3参照)が設けられ、この係合ピン23,24が装着部11の奥壁部の係合穴25,26(図3参照)に差し込まれることで、取付ベース12が装着部11側に係合固定される。図2及び図3に示すように、取付ベース12には、ロック部材27がスプリング28によって下方に付勢された状態で上下動可能に取り付けられている。
【0022】
取付ベース12を装着部11に装着する場合は、図2に示すように、立上がりプレート17が装着部11の奥壁部に当接するまで取付ベース12を装着部11に押し込むと、ロック部材27が装着部11のロック穴29に嵌まり込んだ状態となる。これにより、取付ベース12が装着部11に装着された状態でロックされると共に、立上がりプレート17の係合ピン23,24が装着部11の奥壁部の係合穴25,26に差し込まれ、且つ、フラックス転写装置10側のコネクタ22が装着部11側のコネクタ21に接続された状態となる。フラックス転写装置本体14の信号線・電源線は、ケーブルベアリング42によって取付ベース12側に配線され、コネクタ22に接続されている。
【0023】
取付ベース12のうちの装着部11の外側に位置する部分には、ロック解除レバー31が設けられ、このロック解除レバー31とロック部材27との間がワイヤ32(図2及び図3参照)によって連結されている。このロック解除レバー31は、ねじりコイルばね(図示せず)によってロック方向(図2の反時計回り方向)に回動付勢されている。取付ベース12を装着部11から取り外す場合は、ロック解除レバー31をロック解除方向(図2の時計回り方向)に回動操作することで、ロック部材27をスプリング28の付勢力に抗してロック穴29から引き上げてロック解除できるようになっている。
【0024】
また、図2及び図3に示すように、ロック部材27の近傍には、ロック/ロック解除を検出する第2の安全スイッチ33が設けられている。この場合、取付ベース12が装着部11に装着されて第2のロック部材27がロック穴29に嵌まり込んだ状態(ロック状態)となっているときに、第2のロック部材27によって第2の安全スイッチ33がオン状態に維持されてフラックス転写装置本体14の運転が許可されるようになっている。そして、取付ベース12を装着部11から取り外す際に、ロック解除レバー31の回動操作により第2のロック部材27をロック穴29から引き上げてロック解除すると、第2の安全スイッチ33がオフ状態に切り替わってフラックス転写装置本体14の運転が禁止されるようになっている。
【0025】
次に、取付ベース12上にスライド移動可能に支持されたフラックス転写装置本体14の構成を説明する。
図1及び図4に示すように、フラックス転写装置本体14には、第1のロック部材34(ロック手段)がスプリング35によって下方に付勢された状態で上下動可能に取り付けられ、この第1のロック部材34が取付ベース12に形成されたロック穴36,37に嵌まり込むことで、当該フラックス転写装置本体14が電子部品実装機20の内側のセット位置(図1の位置)と外側の引き出し位置(図4の位置)でそれぞれロックされるようになっている。
【0026】
このフラックス転写装置本体14には、ロック解除ハンドル38がハンドル支持フレーム39にスライド操作可能に設けられ、このロック解除ハンドル38と第1のロック部材34との間がワイヤ40によって連結されている。このロック解除ハンドル38は、スプリング48によってロック方向(フラックス転写装置本体14をセット位置へ押し込む方向)に付勢されている。このロック解除ハンドル38は、フラックス転写装置本体14をスライド移動させる際に作業者が握る把手を兼用し、電子部品実装機20の外側に位置するように配置されている。
【0027】
フラックス転写装置本体14をセット位置と引き出し位置との間でスライド移動させる場合は、ロック解除ハンドル38をロック解除方向(上記ロック方向とは反対方向)に引き操作することで、第1のロック部材34をスプリング35の付勢力に抗してロック穴36,37から引き上げてロック解除できるようになっている。
【0028】
また、第1のロック部材34の近傍には、ロック/ロック解除を検出する第1の安全スイッチ41が設けられている。この場合、フラックス転写装置本体14がセット位置(又は引き出し位置)にセットされて第1のロック部材34がロック穴36(又は37)に嵌まり込んだロック状態となっているときに、第1のロック部材34によって第1の安全スイッチ41がオン状態に維持されてフラックス転写装置本体14の運転が許可されるようになっている。そして、フラックス転写装置本体14をセット位置と引き出し位置との間でスライド移動させる際に、ロック解除ハンドル38の引き操作により第1のロック部材34をロック穴36,37から引き上げてロック解除すると、第1の安全スイッチ41がオフ状態に切り替わってフラックス転写装置本体14の運転が禁止されるようになっている。
【0029】
更に、図1及び図4に示すように、フラックス転写装置本体14がセット位置にセットされていることを検出する手段として、透過型のフォトインタラプタ等の光電スイッチ42が取付ベース12の立上がりプレート17の近傍に設けられ、フラックス転写装置本体14がセット位置にセットされることで、フラックス転写装置本体14の前進端に設けられた検出突起43が光電スイッチ42の発光素子と受光素子との間の光路を遮断して、光電スイッチ42がオフされるようになっている。
【0030】
この場合、光電スイッチ42がオフ状態(検出突起43を検出した状態)で、且つ、第1の安全スイッチ41がオン状態(第1のロック部材34がロック状態)になっているときに、フラックス転写装置本体14がセット位置にセットされていると判断して、フラックス転写装置本体14の自動運転が許可され、一方、光電スイッチ42がオン状態(検出突起43を検出しない状態)で、且つ、第1の安全スイッチ41がオン状態(第1のロック部材34がロック状態)になっているときに、フラックス転写装置本体14が引き出し位置にセットされていると判断して、フラックス転写装置本体14のマニュアル運転が許可されるようになっている。
【0031】
一方、フラックス転写装置本体14のベースプレート19には、鉄系材料等の磁性材料で形成された皿状の回転テーブル50(転写テーブル)を載せる回転台51が設けられ、この回転台51の上面に設けられた磁石52によって回転テーブル50が着脱可能に吸着保持されるようになっている。そして、回転台51の回転軸53の上端部が回転台51の上面よりも少しだけ上方に突出し、この回転軸53の上端部に回転テーブル50の下面中心部に形成した嵌合穴55を嵌め込むことで、回転テーブル50の中心を回転台51の回転中心に一致させ、更に、回転台51の上面の偏心位置に上向きに設けた回り止めピン54に回転テーブル50下面の偏心位置に設けた回り止め穴56を嵌め込むことで、回転テーブル50を回転台51に対して回り止めして両者を一体的に回転させるようにしている。
【0032】
また、ベースプレート19には、回転テーブル50の駆動源となるモータ57が下向きに設けられ、このモータ57の回転軸に嵌着されたプーリ58と回転台51の回転軸53の下端部に嵌着されたプーリ59との間にベルト60が掛け渡されている。これにより、モータ57の回転力が回転台51の回転軸53に伝達されて回転台51が回転駆動され、これと一体的に回転テーブル50が回転するようになっている。
【0033】
図5乃至図7に示すように、回転テーブル50の上方には、その半径とほぼ同じ長さのスキージ61が回転テーブル50の半径方向に沿って配置され、回転テーブル50を回転させることで、回転テーブル50上のフラックスをスキージ61によって均一に押し広げてフラックス膜を形成するようになっている。このフラックス膜の膜厚を調整できるようにするために、スキージ61の高さ位置を調整する高さ調整機構64が設けられ、この高さ調整機構64によるスキージ61の高さ位置の調整によってスキージ61と回転テーブル50の底面との間のギャップを調整できるようになっている。このスキージ61は、高さ調整機構64に着脱可能に取り付けられている。
【0034】
このスキージ61は、フラックスを掻き取るエッジ61aの形状が直線状に形成されているものを用いても良いが、このような直線エッジ形状のスキージ61で回転テーブル50上のフラックスを押し広げると、フラックスがスキージ61のエッジ61aの中央側からその両端側に向けて流動する傾向があるため、スキージ61の中央側のフラックスが相対的に少なくなる傾向がある。このため、回転テーブル50上のフラックスの残量が少なくなると、スキージ61の中央側で局所的にフラックスが不足してフラックス膜表面を均一な平面に均すことができなくなる可能性がある。
【0035】
この対策として、本実施例では、スキージ61のフラックスを掻き取るエッジ61aの形状がその中央側が回転テーブル50の回転方向に湾曲する円弧状に形成されている(図5参照)。このようにすれば、回転テーブル50上のフラックスをスキージ61で押し広げる際に、フラックスがスキージ61のエッジ61aの中央側からその両端側に向けて流動することをスキージ61のエッジ61a部分の湾曲形状によって防止することができ、スキージ61の中央側で局所的にフラックスが不足した状態になることを防止できる。
【0036】
更に、図6及び図7に示すように、スキージ61のエッジ61a側のフラックス掻き取り面61bが斜め下方を向くように傾斜面に形成され、このスキージ61のフラックス掻き取り面61bによってフラックスを下方に押さえ付けながら掻き取るようにしている。このようにすれば、電子部品78のバンプや端子にフラックスを転写した後に、フラックス膜に残る転写跡をスキージ61によって迅速に均すことができる。
【0037】
このスキージ61の近傍には、回転テーブル50に貯留されているフラックスの残量を監視するための残量センサ62が配置されている。この残量センサ62は、スキージ61で掻き取られるフラックスの盛り上がり部分の上方に配置された投光素子62aと受光素子62bとから成る反射型の光センサ62により構成され、回転テーブル50の回転中にスキージ61で掻き取られるフラックスの盛り上がり部分に向けて投光素子62aから投光して反射光を受光素子62bで検出するようになっている。
【0038】
このように、回転テーブル50の回転中にスキージ61で掻き取られるフラックスの盛り上がり部分に向けてその上方から投光すると、その投光領域のフラックスの盛り上がりが少なくなるほど、当該投光領域のフラックス表面が平坦面に近付いていくため、当該投光領域のフラックス表面での光の乱反射や屈折が少なくなり、反射型の光センサ54で受光する反射光量(主として回転テーブル50の底面からの反射光量)が増加する。この特性を考慮して、反射型の光センサ62の受光素子62bで受光する反射光量が予め設定したレベルを越えたときに当該光センサ62がこれを検出するように構成されている。このようにすれば、フラックスが検出しにくい透明な粘性流体であるという事情があっても、スキージ61で掻き取られるフラックスの盛り上がりの不足(フラックスの残量不足)を精度良く検出することができる。
【0039】
電子部品実装機20の稼働中は、図1に示すように、電子部品実装機20の吸着ノズル77に吸着した電子部品78のバンプや端子を回転テーブル50の底面に当接するまで下降させることで、バンプや端子をフラックス膜に浸して、その電子部品78のバンプや端子にフラックスを転写する。
【0040】
また、フラックス転写装置本体14には、回転テーブル50上にフラックスを供給するフラックス供給装置65(フラックス供給手段)が設けられている。このフラックス供給装置65は、図8に示すように、フラックスを貯留するタンク66と、このタンク66内に空気を供給するボンベ等の空気供給源67と、一方向絞り弁68と、第1の電磁切換弁69(3ポート2位置切換弁)と、第2の電磁切換弁70(2ポート2位置切換弁)と、消音器71とから構成されている。
【0041】
回転テーブル50にフラックスを供給する場合は、第1の電磁切換弁69に通電して、第1の電磁切換弁69を空気供給位置に切り換え、空気供給源67の吐出パイプ72をタンク66の入口側の空気配管73に連通させて、空気供給源67から吐出される空気を空気配管73を通してタンク66内に供給して、該タンク66の吐出ノズル74からフラックスを空気圧で回転テーブル50上に押し出す。この際、空気配管73の途中に設けられた一方向絞り弁68によってタンク66内に流入する空気流量が一定流量以下に絞られる。
【0042】
本実施例では、電子部品実装機20の制御装置(制御手段)は、残量センサ62の出力信号に基づいて回転テーブル4上のフラックスの残量を監視し、フラックスの残量不足が検出されたときに、第1の電磁切換弁69に通電して、自動的にフラックスを回転テーブル4上に補給する。
【0043】
一方、回転テーブル50へのフラックス供給を停止する場合は、第1の電磁切換弁69への通電をオフして、第1の電磁切換弁69を空気供給停止位置に切り換え、空気供給源67の吐出パイプ72を閉鎖する。この場合、図9に示すように、第2の電磁切換弁70は、フラックス供給開始から通電されて大気連通位置に維持され、フラックス供給停止後も、所定時間Tが経過するまで第2の電磁切換弁70への通電が継続されて大気連通位置に維持される。これにより、タンク66内の空気が一方向絞り弁68→第1の電磁切換弁69→第2の電磁切換弁70→消音器71の経路で排出され、タンク66内の圧力が大気圧の近くまで減圧される。そして、フラックス供給停止(第1の電磁切換弁69のオフ)から所定時間Tが経過した時点で、第2の電磁切換弁70への通電をオフして、第2の電磁切換弁70を閉鎖位置に切り換え、タンク66を密閉する。
【0044】
この場合、所定時間Tは、タンク66の内圧が大気圧まで減圧されるのに要する時間よりも短い時間に設定されている。従って、フラックス供給停止から所定時間Tが経過した時点で、第2の電磁切換弁70への通電をオフして、タンク66を密閉すると、フラックス供給停止中は、タンク66の内圧が大気圧よりも少し高い圧力に維持される。
【0045】
前述したように、フラックス供給停止中にタンク66の内圧が大気圧と同一になっていると、吐出ノズル74内の残留フラックスが表面張力等によってタンク66内に逆流する現象が発生する。この逆流現象が発生すると、タンク66内に空気を供給してタンク66の吐出ノズル74からフラックスを空気圧で回転テーブル50上に押し出す際に、フラックスの押し出し量がばらついてしまい、回転テーブル50へのフラックスの補給量が安定しない。
【0046】
この点、本実施例のように、フラックス供給停止中にタンク66の内圧を大気圧よりも少し高い圧力に維持するようにすれば、フラックス供給停止中に吐出ノズル74内の残留フラックスがタンク66内に逆流することを防止でき、回転テーブル50へのフラックスの補給量を安定させることができる。
【0047】
図5に示すように、フラックス転写装置本体14には、フラックス転写装置本体14を引き出し位置でマニュアル運転するための操作パネル75が設けられている。フラックス転写装置本体14が引き出し位置に引き出されている状態で、作業者が操作パネル75を操作してマニュアル運転を行えば、フラックス膜の膜厚調整のために、回転テーブル50を回転させてフラックス膜を形成したり、フラックス供給装置65を動作させて回転テーブル50上にフラックスを補給することが可能である。
【0048】
この場合、電子部品実装機20の稼働前でも、フラックス転写装置本体14がセット位置にセットされている状態で、作業者が電子部品実装機20の外側に位置する操作パネル75を操作してフラックス供給装置65を動作させて回転テーブル50上にフラックスを補給することが可能である。この際、回転テーブル50上にフラックスを補給して回転テーブル50を回転させながら残量センサ62の出力信号に基づいて回転テーブル4上のフラックスの残量を検出し、そのフラックスの残量が適量になるまでフラックスを補給する動作を自動的に行わせることが可能である。
【0049】
以上説明した本実施例では、フラックス膜の膜厚調整作業やクリーニング作業等のメンテナンス作業を行う際に、電子部品実装機20からフラックス転写装置本体14を引き出して引き出し位置にセットすると、フラックス転写装置本体14のマニュアル運転が可能となるため、フラックス転写装置本体14を電子部品実装機20の外側の作業しやすい位置に引き出した状態で、フラックス膜の膜厚調整作業やクリーニング作業等のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0050】
しかも、本実施例では、フラックス転写装置本体14を電子部品実装機20の内側のセット位置と外側の引き出し位置との間で出し入れする際にフラックス転写装置本体14の運転を禁止する第1の安全スイッチ41を設けたので、フラックス転写装置本体14を出し入れする際に作業者の操作ミスによりフラックス転写装置本体14が不意に動作し始める事態を第1の安全スイッチ41によって未然に防止することができ、安全性を向上できる。
【0051】
更に、フラックス転写装置本体14をスライド移動可能に支持する取付ベース12が電子部品実装機20内の装着部11に装着されているときにフラックス転写装置本体14の運転を許可する第2の安全スイッチ33を設けたので、電子部品実装機20内の装着部11に対するフラックス転写装置本体14の取付ベース12の装着状態が不完全な場合には、それを第2の安全スイッチ33により検出してフラックス転写装置本体14の運転を禁止することができ、安全性を向上できる。
【0052】
更に、フラックス転写装置本体14をセット位置と引き出し位置でそれぞれロックする第1のロック部材34を設けたので、フラックス転写装置本体14をセット位置や引き出し位置にセットする作業を確実に行うことができると共に、フラックス転写装置本体14がセット位置や引き出し位置からずれ動くことを確実に防止できる。
【0053】
また、回転テーブル50とスキージ61をフラックス転写装置本体14に対して着脱可能に取り付けるようにしたので、電子部品実装機20の外側に引き出したフラックス転写装置本体14から回転テーブル10やスキージ61を取り外してクリーニング作業やメンテナンス作業を行うことができ、それらの作業性を更に向上させることができる。
【0054】
また、回転テーブル50上のフラックスの残量を監視するための残量センサ62を設け、この残量センサ62の出力信号に基づいてフラックスの残量が不足すると判断されるときにフラックス供給装置65を作動させて回転テーブル50上にフラックスを補給するようにしたので、電子部品実装機20の稼働中に、回転テーブル50上のフラックスの残量不足が検出される毎に、その都度、回転テーブル50上にフラックスを自動的に補給することができ、フラックス不足による半田付け不良の発生を未然に防止できて、半田付けの品質・信頼性を向上できる。
【0055】
この場合、回転テーブル50の回転中にスキージ61で掻き取られるフラックスの掻き取り量が少なくなり過ぎると、バンプ等の転写対象物の浸漬により生じたフラックス膜表面の凹凸を均一な平面に均すことができなくなり、バンプ等の転写対象物に均一にフラックスを転写できなくなる。
【0056】
この点を考慮して、本実施例では、回転テーブル50の回転中に残量センサ62の出力信号に基づいてスキージで掻き取られるフラックスの掻き取り量を検出してフラックスの残量を監視するようにしたので、回転テーブル50の回転中にフラックスの残量不足を精度良く検出することができる。
【0057】
更に、スキージ61のエッジ61a部分の形状をその中央側が回転テーブル50の回転方向に湾曲する円弧状に形成するようにしたので、回転テーブル50上のフラックスをスキージで押し広げる際に、フラックスがスキージ61のエッジ61aの中央側からその両端側に向けて流動することをスキージ61のエッジ61a部分の湾曲形状によって防止することができ、スキージ61の中央側で局所的にフラックスが不足した状態になることを防止できる。
【0058】
また、本実施例では、フラックス供給停止中にタンク66の内圧を大気圧よりも少し高い圧力に維持するようにしたので、フラックス供給停止中に吐出ノズル74内の残留フラックスがタンク66内に逆流することを防止でき、回転テーブル50へのフラックスの補給量を安定させることができる。
【0059】
尚、本実施例では、転写テーブル(回転テーブル50)を回転させてスキージングする回転方式のフラックス転写装置に本発明を適用したが、転写テーブルを固定してスキージを水平方向に直線移動させたり、或はスキージを固定して転写テーブルを水平方向に直線移動させる直動方式のフラックス転写装置に本発明を適用して実施しても良い。
【符号の説明】
【0060】
10…フラックス転写装置、12…取付ベース、14…フラックス転写装置本体、18…ストッパ、19…ベースプレート、20…電子部品実装機、21,22…コネクタ、23,24…係合ピン、25,26…係合穴、27…ロック部材、28…スプリング、29…ロック穴、31…ロック解除レバー、33…第2の安全スイッチ、34…第1のロック部材(ロック手段)、35…スプリング、36,37…ロック穴、38…ロック解除ハンドル、42…光電スイッチ、43…検出突起、50…回転テーブル(転写テーブル)、51…回転台、52…磁石、54…回り止めピン、57…モータ、61…スキージ、61a…エッジ、61b…フラックス掻き取り面、62…残量センサ(反射型の光センサ)、62a…投光素子、62b…受光素子、64…高さ調整機構、65…フラックス供給装置(フラックス供給手段)、66…タンク、67…空気供給源、68…一方向絞り弁、69…第1の電磁切換弁(3ポート2位置切換弁)、70…第2の電磁切換弁(2ポート2位置切換弁)、71…消音器、74…吐出ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写テーブル上にフラックスを供給し、その上方に配置されたスキージによって前記転写テーブル上のフラックスを均一に押し広げてフラックス膜を形成し、このフラックス膜に転写対象物を浸すことで、この転写対象物にフラックスを転写するフラックス転写装置において、
前記転写テーブルに貯留されているフラックスの残量を監視するための残量センサを備え、
前記残量センサは、前記スキージング動作中に前記スキージで掻き取られるフラックスの盛り上がり部分に向けてその上方から投光して反射光を検出する反射型の光センサにより構成されていることを特徴とするフラックス転写装置。
【請求項2】
前記転写テーブル上にフラックスを供給するフラックス供給手段と、
前記残量センサの出力信号に基づいてフラックスの残量が不足すると判断されるときに前記フラックス供給手段を作動させて前記転写テーブル上にフラックスを補給する制御手段とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のフラックス転写装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記フラックス膜を形成するスキージング動作中に前記残量センサの出力信号に基づいて前記スキージで掻き取られるフラックスの掻き取り量を検出してフラックスの残量を監視することを特徴とする請求項1又は2に記載のフラックス転写装置。
【請求項4】
前記転写テーブルは、モータによって回転駆動され、
前記スキージは、フラックスを掻き取るエッジ部分の形状がその中央側を前記転写テーブルの回転方向に湾曲させた円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のフラックス転写装置。
【請求項5】
前記フラックス供給手段は、フラックスを貯留するタンクと、このタンク内に空気を供給して該タンクの吐出ノズルからフラックスを空気圧で前記転写テーブル上に押し出す空気供給源とを備え、フラックス供給停止中に、前記吐出ノズル内の残留フラックスが前記タンク内に逆流しないように前記タンク内圧を大気圧よりも少し高い圧力に維持するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のフラックス転写装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−139085(P2011−139085A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31310(P2011−31310)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【分割の表示】特願2006−177594(P2006−177594)の分割
【原出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】