説明

フラッシングキャンセラ回路

【課題】部品点数を減らして省スペース化及びコストダウンを実現することができ、遅延を生じさせることのないフラッシングキャンセラ回路を提供する。
【解決手段】本発明のフラッシングキャンセラ回路100は、第1抵抗3と第2抵抗4とコンデンサ6とから構成されてフラッシングパルスをキャンセルする積分回路と、積分回路によってオンオフされて発光ダイオード8に流れる電流をスイッチングする駆動トランジスタ5とを備え、駆動トランジスタ5以外にトランジスタを備えていないことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードが点滅してしまうフラッシングを防止するためのフラッシングキャンセラ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両にはヘッドライトや方向指示器等の白熱電球の断線を検出する装置が搭載されている。この断線検出装置は、白熱電球へパルス電流を供給することで白熱電球の断線を検出するものである。ところが、断線検出装置を搭載した車両において、白熱電球を省電力に優れた発光ダイオードに交換すると、断線検出の為のパルス電流で発光ダイオードが点滅してしまう。そこで、この点滅を防止するために点滅防止回路であるフラッシングキャンセラ回路が必要であった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、図2及び図3を参照して従来のフラッシングキャンセラ回路の動作を説明する。
【0004】
図2に示すように、従来のフラッシングキャンセラ回路はトランジスタを3個使用して構成されており、入力信号端子9、10から入ってくるフラッシングパルスは、抵抗器11とコンデンサ12によって構成される積分回路によってキャンセルされ、トランジスタ15をオフ状態に保っている。
【0005】
これにより、トランジスタ18がオン状態になるため、トランジスタ20はオフ状態が保たれて入力信号端子9、10から入ってくるフラッシングパルスは発光ダイオード22へ供給されずに発光ダイオード22の点滅が防止される。
【0006】
次に、発光ダイオード22の点灯時の動作について説明すると、入力信号端子9、10から入ってくるパルスは連続パルスなので、抵抗器11とコンデンサ12によって構成される積分回路で直流分が蓄えられ、トランジスタ15がオン状態になる。これによってトランジスタ18がオフとなり、トランジスタ20は抵抗器19からのベース電流によってオン状態になる。このため入力信号端子9、10から入ってくる連続パルスがトランジスタ20と抵抗器21を通って発光ダイオード22に供給されて点灯する。
【0007】
この場合に発光ダイオード22の点灯遅延は、抵抗器11とコンデンサ12によって構成される積分回路の時定数によって決まり、数m秒の遅れで点灯するので、人の目には分からないほど早く点灯する。
【0008】
次に、図3に示す従来のフラッシングキャンセラ回路について説明すると、図3に示す従来のフラッシングキャンセラ回路ではトランジスタ1個を使用し、サーミスタ25の特性を利用してフラッシングパルスをキャンセルしている。
【0009】
入力信号端子23、24からのフラッシングパルスはサーミスタ25を通り、トランジスタ28をオン状態にする。このときサーミスタ25の抵抗値は抵抗器26と略同じになっているので、入力信号端子23、24からのフラッシングパルスの電流はサーミスタ25を通り、トランジスタ28に流れる。この電流によってトランジスタ28がオン状態になるので、フラッシングパルスは発光ダイオード29に供給されずにトランジスタ28の側へ流れて発光ダイオード29は点灯しない。
【0010】
次に、発光ダイオード29の点灯時の動作について説明する。入力信号端子23、24から連続パルスが入ってくると、サーミスタ25が温まって抵抗値が抵抗器26の3〜4倍になる。このためトランジスタ28のベース電流が非常に小さくなり、トランジスタ28はオン状態からオフ状態に変わる。これにより、連続パルスは発光ダイオード29に供給されて発光ダイオード29が点灯する。
【0011】
上述したように、従来では図2及び図3に示すようなフラッシングキャンセラ回路を用いてフラッシングパルスによる発光ダイオードの点滅を防止していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2010−105590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述した図2に示す従来のフラッシングキャンセラ回路では、トランジスタ15、18、20の3個が必要で、それに付随して他の部品点数も多くなってしまうという問題点があった。
【0014】
最近の製品は、部品の大きさを小さくし、更に部品を搭載するスペースも小さくする傾向があるため、図2に示す従来の回路では部品を小さくしても部品点数が多くなるので、省スペース化及びコストダウンを実現することは困難であった。
【0015】
また、図3に示す従来のフラッシングキャンセラ回路では、サーミスタ25の温度が徐々に上がることによってサーミスタ25の抵抗値が徐々に大きくなり、それによってトランジスタ28がオフされて発光ダイオード29が点灯する。したがって、サーミスタ25の温度特性によって発光ダイオード29が点灯するまでに時間がかかり、目で見て分かる程度の遅延が生じてしまうという問題点があった。また、フラッシングキャンセラ回路の周囲が高温になっていると、サーミスタ25の抵抗値が大きくなるので、入力信号端子23、24からのフラッシングパルスの電流がそのまま発光ダイオード29に流れ、発光ダイオード29を点滅させてしまうという問題点もあった。
【0016】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、部品点数を減らして省スペース化及びコストダウンを実現することができ、遅延を生じさせることのないフラッシングキャンセラ回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係るフラッシングキャンセラ回路は、フラッシングパルスが発光ダイオードに流れることをキャンセルするフラッシングキャンセラ回路であって、フラッシングパルスをキャンセルする積分回路と、積分回路によってオンオフされて発光ダイオードに流れる電流をスイッチングする駆動トランジスタとを備え、駆動トランジスタ以外にトランジスタを備えていないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るフラッシングキャンセラ回路によれば、駆動トランジスタ1個だけで回路を構成しているので、部品点数を減らすことができ、これによって小さなスペース内に搭載することが可能になるとともにコストダウンを実現することができる。また、積分回路を用いているので、発光ダイオードを点灯させるときの点灯速度を速くすることができ、遅延を防止することができる。さらに、サーミスタを用いていないので、周囲温度による影響を受けることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用した一実施形態に係るフラッシングキャンセラ回路の構成を示す回路図である。
【図2】従来のフラッシングキャンセラ回路の構成を示す回路図である。
【図3】従来のフラッシングキャンセラ回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用した一実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
[フラッシングキャンセラ回路の構成]
図1は本実施形態に係るフラッシングキャンセラ回路の構成を示す回路図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係るフラッシングキャンセラ回路100は、電源に接続された入力端子1と、接地されている共通端子やCOMMON端子等を含む出力端子2とに接続されており、入力端子1に一端が接続された第1抵抗3と、第1抵抗3の他端と出力端子2との間に接続された第2抵抗4と、入力端子1からの電流をスイッチングする駆動トランジスタ5と、第1抵抗3と第2抵抗4との接続点と出力端子2との間に接続されたコンデンサ6と、駆動トランジスタ5に一端が接続された第3抵抗7と、第3抵抗7の他端と出力端子2との間に接続された発光ダイオード8とを備えている。
【0023】
ここで、本実施形態に係るフラッシングキャンセラ回路100は、断線検出をするためのフラッシングパルスが発光ダイオード8に流れることをキャンセルするための回路であり、第1抵抗3と第2抵抗4とコンデンサ6とによって積分回路を構成している。
【0024】
この積分回路は、フラッシングパルスが入力されたときにはコンデンサ6でフラッシングパルスを吸収してキャンセルする機能を有しており、発光ダイオード8を点灯させるための連続パルスが入力されたときには駆動トランジスタ5をオンする役割をしている。
【0025】
駆動トランジスタ5は発光ダイオード8に流れる電流をスイッチングしており、第1抵抗3の一端にコレクタ端子が接続され、第1抵抗3と第2抵抗4との接続点にベース端子が接続され、第3抵抗7を介して発光ダイオード8にエミッタ端子が接続されている。
【0026】
[フラッシングキャンセラ回路の動作]
本実施形態に係るフラッシングキャンセラ回路100は、入力端子1にフラッシングパルスが入力されると、第1抵抗3と第2抵抗4とコンデンサ6とから構成される積分回路によってフラッシングパルスをキャンセルする。
【0027】
具体的に説明すると、入力端子1から入力されるフラッシングパルスの電流はコンデンサ6に流れ込み、パルスの直流分がコンデンサ6に蓄えられる。このとき、コンデンサ6に蓄えられた電荷によって第2抵抗4の両端に電圧を発生させるが、フラッシングパルスは約0.5秒に1回で、そのパルス幅は数m秒のパルスなので、第2抵抗4に発生する電圧が駆動トランジスタ5をオンさせる閾値まで達する前に第2抵抗4の電圧は下がってしまう。したがって、フラッシングパルスでは駆動トランジスタ5をオンさせることができないので、フラッシングパルスが発光ダイオード8へ流れることはなく、積分回路によってキャンセルされることになる。
【0028】
ここで、上述したように積分回路でフラッシングパルスをキャンセルするので、フラッシングパルスのパルス幅及びパルスの直流分によって駆動トランジスタ5がオンされることがないように、積分回路の時定数と駆動トランジスタ5の閾値とを設計しておかなければならない。
【0029】
次に、発光ダイオード8の点灯時の動作について説明する。発光ダイオード8を点灯させるための連続パルスが入力端子1に入力されると、連続パルスは直流分を含んでいてコンデンサ6に十分に電荷が蓄えられる。これにより、積分回路を構成する第2抵抗4の両端に電圧が発生し、この電圧が駆動トランジスタ5をオン状態にするための閾値を超えるので、駆動トランジスタ5がオンされる。このとき、第1抵抗3は駆動トランジスタ5のベース電流を決める働きも兼ねているので、第1抵抗3の抵抗値に応じてベース電流が流れることになる。
【0030】
このようにして駆動トランジスタ5がオンされると、連続パルスは駆動トランジスタ5を通じて発光ダイオード8に供給されて発光ダイオード8が点灯する。
【0031】
[実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本発明を適用した一実施形態に係るフラッシングキャンセラ回路によれば、駆動トランジスタ5以外にトランジスタを備えていないので、部品点数を減らすことができ、これによって省スペース化が可能になるとともにコストダウンすることができる。また、積分回路を用いているので、発光ダイオード8を点灯させるときの点灯速度を速くすることができ、遅延を防止することができる。さらに、サーミスタを用いていないので、周囲温度による影響を防止することができる。
【0032】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施の形態に限定されることはなく、この実施の形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0033】
1 入力端子
2 出力端子
3 第1抵抗
4 第2抵抗
5 駆動トランジスタ
6 コンデンサ
7 第3抵抗
8 発光ダイオード
100 フラッシングキャンセラ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラッシングパルスが発光ダイオードに流れることをキャンセルするフラッシングキャンセラ回路であって、
前記フラッシングパルスをキャンセルする積分回路と、
前記積分回路によってオンオフされて前記発光ダイオードに流れる電流をスイッチングする駆動トランジスタとを備え、
前記駆動トランジスタ以外にトランジスタを備えていないことを特徴とするフラッシングキャンセラ回路。
【請求項2】
前記積分回路は、
電源に一端が接続された第1抵抗と、
前記第1抵抗の他端と接地端との間に接続された第2抵抗と、
前記第1抵抗と前記第2抵抗との接続点と前記接地端との間に接続されたコンデンサとを備え、
前記駆動トランジスタは、前記第1抵抗の一端にコレクタ端子が接続され、前記第1抵抗と前記第2抵抗との接続点にベース端子が接続され、前記発光ダイオードにエミッタ端子が接続されていることを特徴とする請求項1に記載のフラッシングキャンセラ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−81798(P2012−81798A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227522(P2010−227522)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(390005304)PIAA株式会社 (19)
【出願人】(310013196)上越電子工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】