説明

フラットディスプレイ用耐衝撃吸収材、プラズマディスプレイ用光学フィルタ、プラズマディスプレイパネル、及びフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材の製造方法

【課題】フラットディスプレイの前面ガラスに直接貼り合せることができる耐衝撃材であって、貼り合わせ後に剥がれ、膨れ、ずれ落ち等が起き難く、剥離後にはフラットディスプレイの再利用が可能で、且つ製造工程の簡略化及び低コスト化が図れるフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材、この耐衝撃吸収材を用いたプラズマディスプレイ用光学フィルタを提供することを主目的とする。
【解決手段】単層で厚みが100μm以上で、ガラス密着性が3〜15N/25mmであるフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材、及びこの耐衝撃吸収材からなる耐衝撃層を含有するプラズマディスプレイ用光学フィルタである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットディスプレイ用耐衝撃吸収材、プラズマディスプレイ用光学フィルタ、プラズマディスプレイパネル、及びフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の電子機器の表示パネルとして、大画面パネルを作製可能なPDP(プラズマディスプレイパネル)、FED(フィールドエミッションディスプレイ)、LCD(液晶ディスプレイ)等のフラットディスプレイが注目されている。このようなフラットディスプレイは、大型化が進む中、ディスプレイの前面ガラスの厚みが薄く、且つ割れ易いという問題を有していた。
【0003】
従来、PDP等のフラットディスプレイの前面ガラス破損を防止するために、前面ガラスの前方に数ミリの間隔をおいて、アクリル樹脂や強化ガラス等からなる保護板を設け、フラットディスプレイパネルに衝撃が加わることを防止していた。しかし、このような保護構造は、フラットディスプレイパネルの軽量化、薄型化の妨げとなる問題があった。さらに、パネルの前面ガラスと保護板との間に空間があるため、蛍光灯等の外光の映り込みによる画質低下を生じたり、僅かな振動により画像の歪みを生じるといった問題があった。
【0004】
そこで、フラットディスプレイパネルの前面ガラスの破損を防止するための技術として、前面ガラスに直接保護板等を貼り付ける技術が種々検討されている。例えば特許文献1等には、保護板を接着層を介してパネルの前面ガラスに接着する構造が提案されているが、この構造では衝撃が前面ガラスに伝わり易く、前面ガラスの破損防止効果が充分に得られない問題があった。さらに別な技術として、特許文献2には、フラットディスプレイパネルの前面ガラスに透明な粘着剤層を介して、割れ防止層(衝撃緩和層)Bとその上の飛散防止層Aとの順に透明な合成樹脂からなる2つの層を積層し、飛散防止層Aのせん断弾性率が2×108Pa以上であり、割れ防止層Bのせん断弾性率が1×104〜2×108Paの範囲内である衝撃緩和積層体が提案されている。また、特許文献3には、フラットディスプレイパネル本体の前面ガラスに接合される耐衝撃フィルムであって、せん断弾性率が1×103Pa〜1×106Paの透明な合成樹脂からなり平面型ディスプレイパネルの前面ガラス側の第1の層と、せん断弾性率が1×108Pa以上の透明な合成樹脂からなり該第1の層よりも視認側の第2の層と、せん断弾性率が1×106Pa以上1×108Pa未満の透明な合成樹脂からなり該第2の層よりも視認側の第3の層とを含むことを特徴とする平面型ディスプレイパネル用耐衝撃フィルムが提案されている。しかしながらこれらの積層体によれば、層の増加による厚膜化や製造工程の煩雑化、高コスト化を引き起こすという問題がある。
【0005】
また、特許文献4には、ディスプレイの前面に反射防止膜を有する光学フィルターを粘着剤層を介して貼付したプラズマディスプレイパネルであって、衝撃試験による破壊エネルギーが0.5ジュール以上であるプラズマディスプレイパネルが提案され、粘着剤層の厚みが0.5〜2.0mmであることが記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−156182号公報
【特許文献2】特開2001−266759号公報
【特許文献3】特開2003−246015号公報
【特許文献4】特開2002−260539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前面ガラスに直接保護板等を貼り付ける場合には、直接貼る工程において、保護板等にしわが入ったり、前面ガラスと保護板等の間にごみが入ったりする場合が生じる。このような場合に、保護板等を剥がしてフラットディスプレイは再利用したいという要求がある。しかしながら、保護板等が剥離困難であったり、剥離しても前面ガラスに接着剤の一部が残り(以下、「糊残り」という場合がある)、フラットディスプレイの再利用が困難であった。例えば、前述した特許文献4の実施例に開示された粘着剤層によれば、後述する比較例に示すように、密着強度が強すぎて、人が引っ張って剥離することは困難である。
【0008】
本発明は以上のような問題点を考慮してなされたものであり、フラットディスプレイの前面ガラスに直接貼り合せることができる耐衝撃材であって、貼り合わせ後に剥がれ、膨れ、ずれ落ち等が起き難く、剥離後にはフラットディスプレイの再利用が可能で、且つ製造工程の簡略化及び低コスト化が図れるフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材、この耐衝撃吸収材を用いたプラズマディスプレイ用光学フィルタ、この光学フィルタを用いたプラズマディスプレイパネル、及びフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、単層で厚みが100μm以上で、ガラス密着性が3〜15N/25mmである、フラットディスプレイ用耐衝撃吸収材を提供することにより上記課題を解決するようにした。
本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材は、単層で厚みが100μm以上で、ガラス密着性が3〜15N/25mmであることにより、フラットディスプレイの前面ガラスに直接貼り合わせて、衝撃を吸収することができ、且つ貼り合わせ後に使用中の剥がれ、膨れ、ずれ落ち等が起き難い。一方、貼り合わせた後に剥離が容易なため、剥離後のフラットディスプレイを再利用可能である。また、単層であるため、積層体のような層の増加による厚膜化や製造工程の煩雑化が生じず、製造工程の簡略化及び低コスト化が図れる。
【0010】
本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材においては、引っ張り弾性率が25℃で1×104〜1×106Pa・sであることが、衝撃吸収性の点から好ましい。
【0011】
また、本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材においては、分子量が1000以下の成分が3重量%以下であることが、貼り合わせ後の剥離時に糊残りがない点、及び臭いの点から好ましい。
【0012】
本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材においては、アクリル系粘着剤を含んでなることが、耐熱性、耐湿熱性、耐光性などの耐久性や、透明性、低コスト性(汎用性が高い)の点、及び本発明を実現するにあたり生産性が高い点から好ましい。
【0013】
また、前記アクリル系粘着剤としては、中でも、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、及び(メタ)アクリル酸ラウリルよりなる群から選ばれる1種以上を少なくとも用いて重合された重合体であることが、透明性、低コスト性の点から好ましい。
【0014】
本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材においては、粘着付与剤が3重量%未満であることが、貼り合わせ後の剥離時に糊残りがない点、透明性の点、及び経時で接着性の劣化が起き難い点から好ましい。
【0015】
また、本発明に係る光学フィルタは、プラズマディスプレイパネルの表示面に直接貼付されるための光学フィルタであって、前記本発明に係る耐衝撃吸収材からなる耐衝撃層を含有することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る光学フィルタは、前記本発明に係る耐衝撃吸収材からなる耐衝撃層を含有していることにより、表示面に対して良好な耐衝撃性を有し、通常のガラス基板等を有する光学フィルタに比べてかなりの軽量化及び低コスト化が図れるものである。
【0017】
本発明に係る光学フィルタにおいては、光学フィルタの直接貼付される面を構成する層が前記本発明に係る耐衝撃吸収材からなる耐衝撃層であることが好ましい。この場合には、表示面に対して、使用上問題がない接着性を有しながら、剥離が容易なため、剥離後のプラズマディスプレイパネルを再利用可能である。また、従来のプラズマディスプレイパネルの表示面に直接貼付されるための光学フィルタと比べても、層構成を単純化でき、製造工程の簡略化及び低コスト化が図れる。
【0018】
本発明に係るプラズマディスプレイ用光学フィルタにおいては、近赤外線吸収化合物を含む樹脂層を有し、800〜1100nmの波長範囲の透過率が40%以下であることが、ディスプレイ内部から放出され、他の機器に誤動作を与え得る近赤外線を遮断する点から好ましい。
【0019】
また、本発明に係るプラズマディスプレイ用光学フィルタにおいては、ネオン光560〜630nmの波長範囲に最大吸収波長を持つネオン光吸収化合物を含む樹脂層を有し、該波長範囲における最大吸収波長の透過率が30%以下であることが、ディスプレイ内部から放出され、色調に影響を与えるネオン光を遮断する点から好ましい。
【0020】
本発明に係るプラズマディスプレイ用光学フィルタにおいては、可視光380〜780nmの波長範囲の透過率が40%以上であることが、透明性の高い光学フィルタを得る点から好ましい。
【0021】
また、本発明に係るプラズマディスプレイ用光学フィルタにおいては、プラズマディスプレイ装置から発生する静電気及び/又は電磁波ノイズをシールドする電磁波遮蔽層を有することが、電磁波の放出の強さを規格内に低減化する点から好ましい。
【0022】
また、本発明に係るプラズマディスプレイパネルは、前記本発明に係る光学フィルタが表示面に直接貼付されてなるものである。
本発明に係るプラズマディスプレイパネルは、前記本発明に係る光学フィルタが表示面に直接貼付されてなるため、パネルの前面ガラスと保護板との間に空間がないことにより、画質低下や画像の歪みを生じるといった問題がなく、且つ軽量化及び薄型化を実現可能で、更に製造工程の簡略化及び低コスト化が図れるものである。
【0023】
また、本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材の製造方法は、無溶剤で且つ少なくとも一種の光重合性モノマーと当該光重合性モノマーの重合体を含有する耐衝撃吸収材形成用塗工液を塗布する塗布工程と、1mW/cm以上40mW/cm2未満の照度で20〜180秒間紫外線を照射する弱照射工程と、40mW/cm2以上の照度で0.1〜20秒間紫外線を照射する強照射工程とを有する。本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材の製造方法は、前記本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材を得るのに適した製造方法である。
本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材の製造方法においては、前記耐衝撃吸収材形成用塗工液がアクリル系粘着剤であることが、前記本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材を得るために生産性が高い点から好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材は、フラットディスプレイの前面ガラスに直接貼り合せることができる耐衝撃材であって、貼り合わせ後に剥がれ、膨れ、ずれ落ち等が起き難く、剥離後にはフラットディスプレイの再利用が可能で、且つ製造工程の簡略化及び低コスト化が図れるといった効果を奏するものである。
【0025】
本発明に係る光学フィルタは、前記本発明に係る耐衝撃吸収材からなる耐衝撃層を含有していることにより、表示面に対して良好な耐衝撃性を有し、通常のガラス基板等を有する光学フィルタに比べてかなりの軽量化及び低コスト化が図れるものである。本発明に係る光学フィルタにおいて、特に光学フィルタの直接貼付される面を構成する層が前記本発明に係る耐衝撃吸収材である場合には、表示面に対して、使用上問題がない接着性を有しながら、剥離が容易なため、剥離後のプラズマディスプレイパネルを再利用可能である。また、従来のプラズマディスプレイパネルの表示面に直接貼付されるための光学フィルタと比べても、層構成を単純化でき、製造工程の簡略化及び低コスト化が図れる。
【0026】
本発明に係るプラズマディスプレイパネルは、耐衝撃性を有しながら、画質低下や画像の歪みを生じるといった問題がなく、且つ軽量化及び薄型化を実現可能で、更に製造工程の簡略化及び低コスト化が図れるものである。
【0027】
また、本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材の製造方法によれば、前記本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材を得るのに生産性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明は、フラットディスプレイ用耐衝撃吸収材、それを用いた光学フィルタ、及びプラズマディスプレイパネル、さらにはフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材の製造方法を含むものである。以下、それぞれについて詳述する。
【0029】
A.フラットディスプレイ用耐衝撃吸収材
本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材は、単層で厚みが100μm以上で、ガラス密着性が3〜15N/25mmである。
ここで上記ガラス密着性は、JIS Z0237−2000の試験に準拠して、ナトリウムソーダガラスに貼り合わせ、速度200mm/minで、90度で剥離させて測定することができる。ガラス密着性は3N/25mm未満であると、フラットディスプレイの前面ガラスから剥がれたり、経時で気泡が生じたり、部分剥離が生じたりする恐れがある。また、ガラス密着性は15N/25mmを超えると、例えば42インチサイズのようなガラス面に貼り付け後に人が引っ張っても剥離が困難であるため、フラットディスプレイ用耐衝撃吸収材貼り付け後に耐衝撃吸収材を剥離してフラットディスプレイを再利用することが難しい。ガラス密着性は、さらに好ましくは、5〜12N/25mmである。
【0030】
本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材は、単層で厚みが100μm以上で、ガラス密着性が3〜15N/25mmであることにより、フラットディスプレイの前面ガラスに直接貼り合わせることができ、衝撃があっても吸収して当該ガラスが割れることを防ぐ。また、貼り合わせ後に使用中の剥がれ、膨れ、ずれ落ち等が起き難い一方、貼り合わせた後に剥離が容易なため、剥離後のフラットディスプレイを再利用可能である。また、単層であるため、積層体のような層の増加による厚膜化や製造工程の煩雑化が生じず、製造工程の簡略化及び低コスト化が図れる。
【0031】
なお、本発明に係る耐衝撃吸収材は、耐衝撃吸収材として使用される際には単層であるが、流通時には、シリコーン樹脂又はフッ素系樹脂が塗布されたPET等の離型フィルム等が層の両面又は片面に貼り付けられていても良い。
本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材は、衝撃吸収性の点から単層で厚みが100μm以上であるが、厚膜化防止の点からは1500μm以下であることが好ましく、衝撃吸収性と厚膜化防止のバランスの点から、500μm〜1000μmであることが更に好ましい。
【0032】
本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材においては、引っ張り弾性率が25℃で1×104〜1×106Pa・sが衝撃吸収性の点から好ましく、更に5×104〜5×105Pa・sであることが好ましい。ここで引っ張り弾性率は、動的粘弾性測定の粘性項と弾性項の2乗平均値をいう。上記引っ張り弾性率の値は、動的粘弾性測定器(株式会社ユービーエム社製、Rheogel−E4000)を用いて測定することができ、25℃、チャック間距離20mm、幅5mm、歪み10μm、昇温速2℃/min、周波数10Hzにおける値である。
【0033】
本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材は、単層で厚みが100μm以上で、ガラス密着性が3〜15N/25mmであることを満足することができる粘着性を有する樹脂材料から適宜選択して用いて形成することができる。粘着性を有する樹脂材料としては、シリコーン樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。中でも、粘着性を有するアクリル系樹脂(以下、アクリル系粘着剤という)を含んでなることが、耐熱性、耐湿熱性、耐光性などの耐久性や、透明性、低コスト性(汎用性が高い)の点、及び本発明を実現するにあたり生産性が高い点から好ましい。
【0034】
アクリル系粘着剤は、接着の主成分となるものであり、通常は、炭素原子数1〜18程度のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体であるのが一般的である。なお、本発明において(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸をいう。
【0035】
ここで使用される(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸sec-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル及び(メタ)アクリル酸ラウリル等を挙げることができる。中でも、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリルが、透明性、低コスト性の点から好適に用いられる。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、通常はアクリル系粘着剤中に15〜99.5重量部の量で共重合されているが、本発明において用いられるアクリル系粘着剤においては、15〜80重量部の量で共重合されていることが更に好ましい。
【0036】
また、アクリル系粘着剤を形成するカルボキシル基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、マレイン酸モノブチル及びβ-カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基を含有するモノマーを挙げることができる。
【0037】
さらに、上記のようなモノマーの他に、アルコキシアルキル鎖を有するモノマーを含有することが、耐湿熱性が高くなる点から好ましい。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-エトキシブチルなどを挙げることができる。
【0038】
更に、本発明で用いられるアクリル系粘着剤には、上記の他に、アクリル系粘着剤の特性を損なわない範囲内で他の官能基を有するモノマーが共重合されていても良い。他の官能基を有するモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル及びアリルアルコール等の水酸基を含有するモノマー;(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド及びN-エチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基を含有するモノマー;N-メチロール(メタ)アクリルアミド及びジメチロール(メタ)アクリルアミド等のアミド基とメチロール基とを含有するモノマー;アミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びビニルピリジン等のアミノ基を含有するモノマーのような官能基を有するモノマー;アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテルなどのエポキシ基含有モノマーなどが挙げられる。この他にもフッ素置換(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリロニトリルなどのほか、スチレン及びメチルスチレンなどのビニル基含有芳香族化合物、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニル化合物などを挙げることができる。
【0039】
さらに、本発明で用いられるアクリル系粘着剤には、上記のような他の官能基を有するモノマーの他に、他のエチレン性二重結合を有するモノマーを使用することができる。ここでエチレン性二重結合を有するモノマーの例としては、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル及びフマル酸ジブチル等のα,β-不飽和二塩基酸のジエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;ビニルエーテル;スチレン、α-メチルスチレン及びビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;(メタ)アクリロニトリル等を挙げることができる。
【0040】
また、上記のようなエチレン性二重結合を有するモノマーの他に、エチレン性二重結合を2個以上有する化合物を併用することもできる。このような化合物の例としては、ジビニルベンゼン、ジアリルマレート、ジアリルフタレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレ-ト、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
【0041】
本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材においては、耐衝撃性を向上させるために、粘着性を有する樹脂材料の他に、架橋剤を添加して製造しても良い。架橋剤とは、光又は熱により架橋反応を起こすものであり、耐衝撃吸収材においては、架橋反応後の反応生成物が含まれる。架橋剤としては、トリジイソシアネートなどのイソシアネートや、エポキシ硬化剤、多官能モノマー等(多官能とは2官能以上)等が挙げられる。中でも、アクリル系粘着剤に含まれるカルボキシル基と反応し得るようなトリレンジイソシアネートのような架橋剤を用いることが、耐衝撃性を高め、耐熱性、耐光性の点から好ましい。架橋剤を添加する場合には、フラットディスプレイ用耐衝撃吸収材中に0.1〜3重量%添加することが好ましい。
【0042】
本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材においては、分子量が1000以下の成分が3重量%以下であることが、貼り合わせ後の剥離時に糊残りがない点、及び臭いの点から好ましい。更に、分子量が1000以下の成分は、1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下であることが、臭いの点から望ましい。
【0043】
また、本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材においては、粘着付与剤(「タッキファイアー」とも言われる)が3重量%未満であることが好ましい。このような場合には、貼り合わせ後の剥離時に糊残りがなく、耐衝撃吸収材に含まれる上記粘着性を有する樹脂との相溶性の点から透明性が悪化することもないからである。また、経時で界面に粘着付与剤が移動することによる、ずれや気泡や剥がれが起き難いからである。本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材においては、粘着付与剤は1重量%未満であることが更に好ましく、含まれないことがより更に好ましい。
【0044】
本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材は、ディスプレイの表示面に貼り付けされることから透明性が高いことが好ましく、ヘーズが3以下であることが好ましい。ここでヘーズは、JIS K7105−1981に準拠した方法により測定された値を意味する。具体的には、1.2mm厚のガラス板に粘着樹脂層を貼り合せて、ガラス板と逆面にPETフィルム、例えば東洋紡製コスモシャインA−4100の易接着面を粘着樹脂層と重なるように貼り合せて作製した試料を用いて、ヘーズ値を測定できる。
【0045】
本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材は、プラズマディスプレイパネルに対する衝撃試験による破壊エネルギーが0.5J以上、好ましくは0.6J以上という耐衝撃性を有することが望ましい。ここで衝撃試験は、図6に示す衝撃試験装置を用いて行い、高さ9.6cmから直径50.8mmの鋼球35(重量534g)(JIS B1501 玉軸受用鋼球に規定されたもの)を落下させたときの、破壊エネルギーを測定して行った。試験台31としてSUS製土台32と、厚さ10mmのガラス板33を貼り合わせたものを用いた。該試験台31上に、プラズマディスプレイ用の前面ガラス板34として旭硝子社製の高歪点ガラス板(PD−200:商品名、厚み2.8mm)を載置した。なお、PD−200は、プラズマディスプレイメーカー各社が共通に使用しているプラズマディスプレイ用の前面ガラス板34である。試験台31上に前面ガラス板34を直接載置した理由は、プラズマディスプレイの筐体によるクッション性を排除するためである。
【0046】
本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材においては、上記本発明の効果が損なわれない限り、更にn−ブチルアミンのような増感剤、光重合開始剤等を含んでいても良い。また、後述するような近赤外線吸収色素、及び/又は、ネオン光吸収色素等の色素を1種以上含有させて、近赤外線及び/又はネオン光吸収機能や色補正機能を兼ね備えたものとしても良い。
【0047】
本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材は、フラットディスプレイに組み込まれて用いられるのに適しており組み込まれ方は時に限定されないが、中でも、フラットディスプレイパネルに直接貼付されて用いられる耐衝撃吸収材に特に適している。
【0048】
B.フラットディスプレイ用耐衝撃吸収材の製造方法
本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材の製造方法は、無溶剤で且つ少なくとも一種の光重合性モノマーと当該光重合性モノマーの重合体を含有する耐衝撃吸収材形成用塗工液を塗布する塗布工程と、1mW/cm以上40mW/cm2未満の照度で20〜180秒間紫外線を照射する弱照射工程と、40mW/cm2以上の照度で0.1〜20秒間紫外線を照射する強照射工程とを有する。
【0049】
このような本発明のフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材の製造方法について、図面を用いて具体的に説明する。図1は、本発明のフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材の製造方法の一例を示す工程図である。図1(a)に示すように、まず離型フィルム1上に、無溶剤で且つ少なくとも一種の光重合性モノマーと当該光重合性モノマーの重合体を含有する耐衝撃吸収材形成用塗工液2を塗布する塗布工程が行われる。次いで、図1(b)に示すように、上記塗布工程により塗布された耐衝撃吸収材形成用塗工液2の層に、1mW/cm以上40mW/cm2未満の照度で20〜180秒間、弱紫外線3を照射する弱照射工程が行われる。これにより、塗工液2中に含まれていた少なくとも一種の光重合性モノマーがゆっくり重合反応を行い、直鎖状に高分子量化する重合体を多く形成させ、高分子化が進んだ耐衝撃吸収材形成用塗膜4を形成する。次いで、図1(c)に示すように、高分子化が進んだ耐衝撃吸収材形成用塗膜4の層に更に40mW/cm2以上の照度で0.1〜20秒間、強紫外線5を照射する強照射工程が行われることにより、図1(d)に示すように耐衝撃吸収材6が形成される。この強照射工程により、耐衝撃吸収材形成用塗膜4中に残存されていた光重合性モノマーが重合反応をし、残存モノマーが低減される。
【0050】
上記のような本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材の製造方法は、前記本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材を得るのに適した製造方法である。前記本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材は、所定の物性値が得られる限り特に製造方法は限定されないが、単層で比較的厚い膜であることから、例えば溶剤を含有する塗工液を用いて製造すると、多量の溶剤を発生し、回収装置にコストがかかる上、乾燥に時間を要し、更に乾燥時に気泡が入りやすく、生産性が悪い。一方、本発明に係る製造方法においては無溶剤の塗工液を塗布して製造するため、上記問題は解決される。
【0051】
また、上記のような本発明のフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材の製造方法によれば、弱照射工程と強照射工程の両方を有するので、残存モノマー量が低減されて、ガラス面に直接貼り付け後に剥離しても糊残りがない耐衝撃吸収材を容易に製造することが可能である。
【0052】
以下、本発明のフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材の製造方法について、工程毎に説明する。
1.塗布工程
本発明における塗布工程は、無溶剤で且つ少なくとも一種の光重合性モノマーと当該光重合性モノマーの重合体を含有する耐衝撃吸収材形成用塗工液を塗布する工程である。
本発明に用いられる耐衝撃吸収材形成用塗工液は、溶剤を含まず、少なくとも一種の光重合性モノマーと当該光重合性モノマーの重合体とが含有されてなるものであり、必要に応じて他の添加剤が添加される。このような添加剤としては、具体的には、光重合開始剤、増感剤、架橋剤等を挙げることができる。その他、前述のような近赤外線及び/又はネオン光吸収機能や色補正機能を兼ね備えた耐衝撃吸収材とするには、後述するような近赤外線吸収色素、及び/又は、ネオン光吸収色素等の色素を1種以上含有させても良い。
【0053】
本発明において用いられる、溶剤を含まず、少なくとも一種の光重合性モノマーと当該光重合性モノマーの重合体とが含有されてなる塗工液は、少なくとも一種の光重合性モノマーに当該光重合性モノマーの重合体が溶解している、所謂シロップ型の塗工液である。このようなシロップ型の塗工液としては、少なくともアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとカルボキシル基を有するモノマーとこれらの共重合体とが含有されてなるアクリル系のシロップ型塗工液であることが好ましい。アクリル系のシロップ型塗工液に用いられる、アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとカルボキシル基を有するモノマー、及び更に共重合可能なモノマーは、具体的には前述と同様のものを用いることができる。
シロップ型塗工液は、例えば、少なくとも一種の光重合性モノマーに重合開始剤を投入して重合反応を進行させて、強制冷却を行って重合反応を途中で止めることにより得ることができる。
【0054】
本発明において用いられる塗工液は、塗布可能な粘度に調整されていることが好ましく、500〜20000mPa・s、更に1000〜5000mPa・s程度に調整されていることが好ましい。
【0055】
また、本発明において用いられる塗工液において、少なくとも一種の光重合性モノマーと当該光重合性モノマーの重合体の総重量に対する、当該重合体の合計の含有量は、特に限定されるものではないが、通常、20〜60重量%程度、好ましくは40〜50重量%程度である。
【0056】
本工程における塗布方法は、塗工液を均一に塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、バーコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、ダイコーティング、スリットリバースコーティング、3本リバースコーティング、コンマコーティング、ロールコーティング、ディップコーティング等の方法を用いることができる。本発明においては、中でも、比較的厚い膜厚の塗工が容易な、ダイコーティング、スリットリバースコーティング、3本リバースコーティング、コンマコーティングを用いることが好ましい。
塗膜の厚みは、100μm〜1500μm、更に500μm〜1000μmとなるように塗布することが好ましい。
【0057】
また、本発明に係るフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材の製造方法においては、更に、上記塗布工程の後、好ましくは弱照射工程前に、塗布後の塗工液の層上に離型フィルムを貼り合わせる工程を有していても良い。この場合には、塗工液を平坦化させ易く、酸素阻害を起こし難くなるからである。また、塗膜の両面について後述する弱照射工程及び強照射工程を行なう場合に、行い易いからである。なお、離型フィルムとしては、剥がし易く、後述の照射工程時に照射を阻害しないように透明性の高いものを用いることが好ましく、例えば、シリコーン樹脂又はフッ素系樹脂が塗布されたPET等が好適に用いられる。
【0058】
2.弱照射工程及び強照射工程
本発明においては、上記塗布工程の後、上記塗布工程により塗布された上記位相差強化領域形成用塗工液中に含まれる光重合性モノマーを重合させて高分子化するために、1mW/cm以上40mW/cm2未満の照度で20〜180秒間紫外線を照射する弱照射工程と、40mW/cm2以上の照度で0.1〜20秒間紫外線を照射する強照射工程が行われる。
1mW/cm以上40mW/cm2未満の弱い照度で20〜180秒間と比較的長い間紫外線を照射する弱照射工程により、光重合開始剤のラジカル発生量を抑えて塗膜に含まれる光重合性モノマーの連鎖移動をゆっくり行なうことが可能となり、直鎖状に高分子化していくことができると推定される。弱照射工程の照度としては更に1mW/cm以上20mW/cm以下、特に1mW/cm以上10mW/cm以下であることが好ましい。また弱照射工程の照射時間は、更に60〜120秒間であることが好ましい。このような弱照射工程は、上記塗布工程により形成された塗膜のうち、ガラス面に直接貼り付ける面に対して行なうことが糊残りをなくす点から好ましいが、更に塗膜の片面から照射するだけでなく、両面から照射することが、耐衝撃性、耐久性の点から好ましい。
【0059】
一方、40mW/cm2以上の照度で0.1〜20秒間紫外線を照射する強照射工程により、弱照射工程後にも塗膜中に残存モノマーのうち、特に表面付近に存在するものを完全に重合させて高分子化させ、糊残りの原因になる残存モノマーをなくすことが可能になる。強照射工程の照度としては更に40以上mW/cm以上1200mW/cm以下、特に400mW/cm以上600mW/cm以下であることが好ましい。また強照射工程の照射時間は、更に0.1〜5秒間であることが好ましい。このような強照射工程は、上記塗布工程により形成された塗膜のうち、ガラス面に直接貼り付ける面に対して行なうことが糊残りをなくす点から好ましいが、更に塗膜の片面から照射するだけでなく、両面から照射することが、耐衝撃性、耐久性の点から好ましい。
【0060】
塗工液中に熱により架橋を行う架橋剤を含有している場合には、上記照射工程後に、更に用いられた架橋剤に合わせて適宜加熱工程を有することが好ましい。
【0061】
C.光学フィルタ
本発明に係る光学フィルタは、プラズマディスプレイパネルの表示面に直接貼付されるための光学フィルタであって、前記本発明に係る耐衝撃吸収材からなる耐衝撃層を含有することを特徴とする。
本発明に係る光学フィルタは、前記本発明に係る耐衝撃吸収材からなる耐衝撃層を含有していることにより、表示面に対して良好な耐衝撃性を有し、通常のガラス基板等を有する光学フィルタに比べてかなりの軽量化及び低コスト化が図れるものである。本発明に係る光学フィルタにおいては、光学フィルタの直接貼付される面を構成する層が前記本発明に係る耐衝撃吸収材からなる耐衝撃層であることが好ましい。この場合には、表示面に対して、使用上問題がない接着性を有しながら、剥離が容易なため、剥離後のプラズマディスプレイパネルを再利用可能である。また、従来のプラズマディスプレイパネルの表示面に直接貼付されるための光学フィルタと比べても、層構成を単純化でき、製造工程の簡略化及び低コスト化が図れる。
【0062】
本発明に係る光学フィルタは、前記本発明に係る耐衝撃吸収材からなる耐衝撃層の他に、種々の機能を有する層を1層以上積層して構成することができる。これらの機能を有する層としては、例えば、反射防止層、プラズマディスプレイ装置から発生する静電気及び/又は電磁波ノイズをシールドする電磁波遮蔽層、近赤外線吸収化合物を含む樹脂層からなる近赤外線吸収層、ネオン光吸収化合物を含む樹脂層からなるネオン光吸収層、色調補正層、粘着剤層等が挙げられる。これらの層の機能は1層に複合されていても良く、例えばネオン吸収機能と色調補正機能を兼ね備えた色素含有粘着剤層、ネオン吸収機能と色調補正機能を兼ね備えた近赤外線吸収層、近赤外線吸収機能及び/又は紫外線遮蔽機能を有する反射防止層、近赤外線吸収機能を有する電磁波遮蔽層など、2つ以上の機能を兼ね備えた層が積層されていても良い。
【0063】
本発明に係る光学フィルタは、光学フィルタの直接貼付される面を構成する層が前記本発明に係る耐衝撃吸収材からなる耐衝撃層であることが好ましく、前記本発明に係る耐衝撃吸収材からなる耐衝撃層の2つの面のうち、ディスプレイパネル表示面に直接貼り付けされる面とは異なる一方の面に、種々の機能を有する層を1層以上積層して構成することが好ましい。
【0064】
図2は本発明の実施態様1の光学フィルタをプラズマディスプレイパネルの前面に貼付した場合の積層構造の一例を示す図である。11は前記本発明に係る耐衝撃吸収材からなる耐衝撃層である。電磁波遮蔽層12は、粘着剤層16を介して耐衝撃層11に積層されている。近赤外線吸収層13は、粘着剤層16を介して電磁波遮蔽層12に積層されている。反射防止層15は、ネオン吸収機能と色調補正機能を兼ね備えた色素含有粘着剤層14を介して近赤外線吸収層13に積層されている。ここで、電磁波遮蔽層12と近赤外線吸収層13との間に介在する粘着剤層16は、電磁波遮蔽層12のメッシュ構造の凹凸内部にも充填され、電磁波遮蔽層12上の平坦化に寄与している。該電磁波遮蔽層12における金属メッシュ表面の黒化処理により形成された皮膜(黒のベタ塗りにて示す)は、耐衝撃層11側(プラズマディスプレイパネル本体10貼付側)に設けられている。これらの各層からなる積層体は、実施態様1の光学フィルタ17を構成している。(以下、以上のような層構成を有するものを、順に、「耐衝撃層11/粘着剤層16/電磁波遮蔽層12(黒化処理が耐衝撃層11側)/粘着剤層16/近赤外線吸収層13/色素含有粘着剤層14/反射防止層15」と表す場合がある。)該光学フィルタ17は、さらにプラズマディスプレイパネル本体10の表面(前面ガラス19)に前記本発明に係る耐衝撃吸収材からなる耐衝撃層11により直接貼り付けされて接合されている。
【0065】
上記色素含有粘着剤層14は、図2におけるいずれの粘着剤層16の位置と入れ替わっても良く、以下のような態様であっても良い。
実施態様2:耐衝撃層11/粘着剤層16/電磁波遮蔽層12(黒化処理が耐衝撃層11側)/色素含有粘着剤層14/近赤外線吸収層13/粘着剤層16/反射防止層15
実施態様3:耐衝撃層11/色素含有粘着剤層14/電磁波遮蔽層12(黒化処理が耐衝撃層11側)/粘着剤層16/近赤外線吸収層13/粘着剤層16/反射防止層15
【0066】
図3は本発明の実施態様4の光学フィルタをプラズマディスプレイパネルの前面に貼付した場合の積層構造の一例を示す図である。図3の光学フィルタは、図2の光学フィルタにおける電磁波遮蔽層12における金属メッシュ表面の黒化処理が、耐衝撃層11側(プラズマディスプレイパネル本体10貼付側)ではなく反射防止層15側であり、且つ、電磁波遮蔽層12の金属メッシュ構造の凹凸内部にも充填される粘着剤層16は、耐衝撃層11と電磁波遮蔽層12との間に介在する粘着剤層16であることが、図2と異なるだけであり、その他は図2と同じ層構成である。図2における色素含有粘着剤層14は、図3におけるいずれの粘着剤層16の位置と入れ替わっても良く、以下のような態様であっても良い。
【0067】
実施態様5:耐衝撃層11/粘着剤層16/電磁波遮蔽層12(黒化処理が反射防止層15側)/色素含有粘着剤層14/近赤外線吸収層13/粘着剤層16/反射防止層15
実施態様6:耐衝撃層11/色素含有粘着剤層14/電磁波遮蔽層12(黒化処理が反射防止層15側)/粘着剤層16/近赤外線吸収層13/粘着剤層16/反射防止層15
【0068】
更に、本発明に係る光学フィルタは、前記本発明に係る耐衝撃吸収材からなる耐衝撃層が含有されていれば良く、前記本発明に係る耐衝撃吸収材からなる耐衝撃層11は、光学フィルタの直接貼付される面を構成する層でなく、光学フィルタの内部に積層されているような態様であっても良い。
【0069】
図4は本発明の実施態様7の光学フィルタ17をプラズマディスプレイパネル10の前面ガラス19に貼付した場合の積層構造の一例を示す図である。図4の実施態様7の光学フィルタ17は、色素含有粘着剤層14/電磁波遮蔽層12/平坦化層16’/耐衝撃層11/近赤外線吸収層13/粘着剤層16/反射防止層15が順に積層された構成をとっている。ここで電磁波遮蔽層12と耐衝撃層11との間に介在する平坦化層16’は、電磁波遮蔽層12のメッシュ構造の凹凸内部に充填され、電磁波遮蔽層12上の平坦化に寄与する層であり、上記のように粘着剤層16であっても良いし、粘着性がない熱可塑性樹脂や放射線(紫外線を含む)硬化型樹脂をメッシュ構造の凹凸内部に充填して粘着性を有しない層であっても良い。前記本発明に係る耐衝撃吸収材からなる耐衝撃層11は、上記のように密着性を有するため、粘着性を有しない平坦化層16’と耐衝撃層11の間には必ずしも粘着剤層16を介してなくてもよい。必要に応じて、上記実施態様7において、平坦化層16’と耐衝撃層11の間に粘着剤層16を介する態様であっても良い。
【0070】
図4における色素含有粘着剤層14は、図4における粘着剤層16の位置と入れ替わっても良く、以下のような態様であっても良い。
実施態様8:粘着剤層16/電磁波遮蔽層12/平坦化層16’/耐衝撃層11/近赤外線吸収層13/色素含有粘着剤層14/反射防止層15
【0071】
なお、上記各態様において、色調調整色素、及び/又は、ネオン光吸収色素等の色素は、色素含有粘着剤層14中に含有させているが、光学フィルタを構成するいかなる層にも含有させることが可能である。例えば、色調調整色素及びネオン光吸収色素を上記近赤外線吸収層13に含有させ、ネオン吸収機能と色調補正機能を兼ね備えた色素含有近赤外線吸収層13としても良い。例えば、以下の実施態様が挙げられる。
実施態様9:耐衝撃層11/粘着剤層16/電磁波遮蔽層12/粘着剤層16/色素含有近赤外線吸収層13/粘着剤層16/反射防止層15
実施態様10:粘着剤層16/電磁波遮蔽層12/平坦化層16’/耐衝撃層11/色素含有近赤外線吸収層13/粘着剤層16/反射防止層15
【0072】
また、以上の実施態様7〜10において、電磁波遮蔽層12における黒化処理層は、反射防止層15側であっても、色素含有粘着剤層14又は粘着剤層16側(プラズマディスプレイパネル前面側)であって良い。
【0073】
以下、本発明の光学フィルタをプラズマディスプレイパネルに適用する場合の光学フィルタの層構成に用いられる各層を例示して説明する。
1.耐衝撃層
本発明の光学フィルタにおける耐衝撃層は、上記本発明に係る耐衝撃吸収材からなる層であるため、ここでの説明を省略する。上記本発明に係る耐衝撃吸収材からなる耐衝撃層には、上述のように、近赤外吸収色素、色調調整色素、及び/又は、ネオン光吸収色素等の色素、紫外線吸収剤等を含有していても良い。
【0074】
2.電磁波遮蔽層
電磁波遮蔽層は、プラズマディスプレイ等から発生した電磁波を遮蔽する機能を有するものであり、透明基材、接着剤層又は粘着剤層(図示していない)、金属メッシュ層がこの順に積層された積層構造を有するものである。
【0075】
(金属メッシュ層)
金属メッシュ層は、積層構造の電磁波遮蔽層を構成する一部の層である。電磁波遮蔽層を構成する各層のうち、金属メッシュ層は、特に、プラズマディスプレイ等から発生した電磁波を遮蔽する機能を有する。このような金属メッシュ層は、後述する透明基材上に、接着剤層(又は粘着剤層)により金属箔が貼り合わせられ、その金属箔がメッシュ状にエッチングされることにより形成される。本発明においては、この金属メッシュ層は、電磁波遮蔽性を有するものであれば、その金属の種類等は特に限定されるものではなく、例えば銅、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、金、銀、ステンレス、タングステン、チタン等を用いることができる。本発明においては、上記の中でも銅が、電磁波のシールド性、エッチング処理適性や取扱い性の面から好ましい。また用いられる銅箔の種類としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられるが、特に、電解銅箔であることが好ましい。これにより、厚さが10μm以下の均一性のよい金属メッシュ層とすることができ、また、金属メッシュ層の表面に黒化処理が施された際に、酸化クロム等との密着性を良好なものとすることができるからである。
【0076】
ここで、本発明においては、上記金属箔の一方の面又は両面に黒化処理されていることが好ましい。黒化処理とは、酸化クロム等により金属メッシュ層の表面を黒化する処理であり、光学フィルタにおいて、この酸化処理面は、観察者側の面、或いは観察者側とは反対の面となるように配置される。図2〜図4の電磁波遮蔽層12において、黒ベタに塗り潰されている箇所は黒化処理により形成された皮膜を示している。この黒化処理により金属メッシュ層表面に形成された酸化クロム等により、光学フィルタ表面の外光が吸収されることから、光学フィルタ表面で光が散乱することを防止することができ、良好な透過性を得ることが可能な光学フィルタとすることができるのである。光の散乱を防止する観点からは、酸化処理面は、観察者側の面にある方が好ましい。このような黒化処理は、上記金属箔に黒化処理液を塗布することにより行なうことができる。
【0077】
黒化処理の方法としては、CrO2水溶液や、無水クロム酸水溶液に酒石酸、マロン酸、クエン酸、乳酸等の異なるオキシカルボン酸化合物を添加して、6価クロムの一部を3価クロムに還元した溶液等を、ロールコート法、エアーカーテン法、静電霧化法、スクイズロールコート法、浸漬法等により塗布し、乾燥させることにより行なうことができる。なお、この黒化処理は、透明基材上に、接着剤層(又は粘着剤層)により金属箔が貼り合わせられ、メッシュ状にエッチングされた後に行なわれるものであってもよい。
【0078】
この黒化処理された金属箔の表面の黒濃度が0.6以上であることが好ましい。これにより、より非視認性を良好なものとすることができるからである。ここで、黒濃度は、COLOR CONTROL SYSTEMのGRETAG SPM100−11((株)KIMOTO製)を用いて、観測視野角10°、観測光源D50、照明タイプとして濃度標準ANSI Tに設定し、白色キャリブレイション後に測定した値である。
【0079】
また、上記金属箔の膜厚は、1μm〜100μmの範囲内、中でも5μm〜20μmの範囲内であることが好ましい。上記範囲より膜厚が厚いと、エッチングによりパターン線幅を細かく高精細化することが困難となり、また上記範囲より膜厚が薄い場合には、十分な電磁波シールド性が得られないからである。
【0080】
さらに、上記金属箔は、JIS B0601に準拠する十点平均粗さが0.5μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。上記範囲より小さい場合には、上記黒化処理をした場合であっても、光学フィルタ表面の外光が鏡面反射することから、視認性が劣化し、また上記範囲より大きい場合には、接着剤やレジスト等を塗布することが困難となるからである。
ここで、金属箔のエッチングは、後述する透明基材上に、接着剤層(又は粘着剤層)を介して金属箔が貼り合わせられた後に行なわれるものである。このエッチングは、通常のフォトリソグラフィー法により行なうことができ、例えば金属箔の表面にレジストを塗布し、乾燥した後、レジストをパターン版で密着露光し、現像処理を行なうことにより得ることができる。
【0081】
本発明に用いられる上述したような金属メッシュ層は、表面抵抗が10-6Ω/□〜5Ω/□の範囲内、中でも10-4Ω/□〜3Ω/□の範囲内であることが好ましい。一般的に、電磁波遮蔽性は、表面抵抗により測定することができ、この表面抵抗が低いほど、電磁波遮蔽性が良好なものということができる。ここで、上記表面抵抗の値は、表面抵抗測定装置ロレスターGP、(株)ダイヤインスツルメンツ製にてJIS K7194「導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験法」に記載される方法にて測定された値である。
【0082】
このエッチング処理された後の金属メッシュ層は、50μm〜500μmの範囲内、中でも100μm〜400μmの範囲内、特に200μm〜300μmの範囲内であることが好ましく、またメッシュ線幅が5μm〜20μmの範囲内であることが好ましい。メッシュ線幅が上記範囲より細かい場合には、断線が起こる場合があり、電磁波遮蔽性の面から好ましくなく、またメッシュ線幅が上記範囲より太い場合には、可視光の透過率が低く、例えばプラズマディスプレイの輝度が低くなる等という面から好ましくないからである。
【0083】
(透明基材)
透明基材は電磁波遮蔽層を構成する一部の層であり、接着剤層(又は粘着剤層)を介して金属メッシュ層を積層するための基材となる層である。本発明に用いられる透明基材は透明性を有し、かつ接着剤層(又は粘着剤層)が形成可能であれば、その種類等は特に限定されるものではなく、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類、環状ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルケトンからなるフィルムで可視領域の光線透過率が80%以上のフィルムが挙げられる。
【0084】
これらのフィルムは本発明の目的を妨げない程度であれば着色していてもよく、さらに単層で使うこともできるが、2層以上組み合わせた多層フィルムとして使ってもよい。中でも透明性、耐熱性、コストや取扱い性の面等から、PETが最も好ましい。可視領域の光線透過率はできる限り高いことが望ましいが、これは最終製品としては50%以上の光線透過率が必要なことから最低2枚を積層する場合でも透明基材としては80%を有すれば目的に適うからである。透過率が高ければ高いほど透明基材を複数枚積層できるため、光線透過率は好ましくは85%以上、最も好ましくは90%以上であり、このために厚さを薄化するのも有効な手段である。この透明基材の厚さは、透明性さえ満足すれば特に制限されるものではないが、加工性上からは12μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。厚さ12μm未満の場合はフィルムが柔軟過ぎ、導電層である金属メッシュ層の成膜や加工する際の張力により伸張やシワが発生しやすく、そのため金属メッシュ層の亀裂や剥離が生じやすく適さない。300μmを超えるとフィルムの可撓性が減少し、各工程での連続巻き取りが困難で適さない。さらに複数枚を積層する際は加工性が大幅に劣るといった問題もある。
【0085】
(接着剤層又は粘着剤層)
接着剤層(又は粘着剤層)は図2〜図4の電磁波遮蔽層において図示していないが、透明基材と金属メッシュ層とを接着するのに用いられる層である。接着剤層(又は粘着剤層)は、金属メッシュ層及び透明基材とを接着することが可能な層であれば、その種類等は特に限定されるものではないが、本発明においては、上記金属メッシュ層を構成する金属箔及び透明基材を接着剤層(又は粘着剤層)を介して貼り合わせた後、金属箔をエッチングによりメッシュ状とすることから、接着剤層(又は粘着剤層)も耐エッチング性を有することが好ましい。具体的には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール単独もしくはその部分ケン化品、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタンエステル樹脂等が挙げられる。また、本発明に用いられる接着剤層(又は粘着剤層)は、紫外線硬化型であってもよく、また熱硬化型であってもよい。特に、透明基材との密着性や、近赤外線吸収色素、及び/又は、ネオン光吸収色素との相溶性、分散性などの観点からアクリル樹脂もしくはポリエステル樹脂が好ましい。
【0086】
また、接着剤層(又は粘着剤層)中に、近赤外線吸収色素、及び/又は、ネオン光吸収色素を1種以上含有させてもよい。その場合、800nm〜1100nmの波長域における光線透過率が20%以下、中でも15%以下、560〜630nmの波長域における光線透過率が30%以下、中でも25%以下、であることが好ましい。さらに樹脂の水酸基価及び酸価が各々10以下でなければならない。これにより、上記樹脂に含まれる水酸基及び酸により近赤外線吸収色素、及び/又は、ネオン光吸収色素が樹脂中の反応基と反応すること等を防ぐことができ、安定に近赤外線吸収、及び/又は、ネオン光吸収機能を発揮することが可能なものとすることができる。
【0087】
接着剤層(又は粘着剤層)を介してドライラミネーション法等により透明基材及び金属メッシュ層を形成するための金属箔とを接着することができる。また、この接着剤層(又は粘着剤層)の膜厚が0.5μm〜50μmの範囲内、中でも1μm〜20μmであることが好ましい。これにより、透明基材及び金属メッシュ層とを強固に接着することができ、また、金属メッシュ層を形成するエッチングの際に透明基材が酸化鉄等のエッチング液の影響を受けること等を防ぐことができるからである。
【0088】
3.近赤外線吸収層
近赤外線吸収層は、基本的には、透明バインダ樹脂中に、近赤外線を吸収する近赤外線吸収色素を有するものである。
近赤外線吸収色素としては、光学フィルタが代表的な用途であるプラズマディスプレイパネルの前面に適用される場合、プラズマディスプレイパネル7はキセノンガス放電を利用して発光する際に生じる近赤外線領域、即ち、800nm〜1100nmの波長域を吸収するもの、該帯域の近赤外線の透過率が20%以下、更に15%以下であることが好ましい。同時に近赤外線吸収層は、可視光領域、即ち、380nm〜780nmの波長域で、十分な光線透過率を有することが望ましい。
【0089】
近赤外線吸収色素としては、具体的には、ポリメチン系化合物、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ジチオール系化合物、イモニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、アミニウム系化合物、ピリリウム系化合物、セリリウム系化合物、スクワリリウム系化合物、銅錯体類、ニッケル錯体類、ジチオール系金属錯体類の有機系近赤外線吸収色素、酸化スズ、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アンモン、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化ランタン等の無機系近赤外線吸収色素、を1種、又は2種以上を併用することができる。
【0090】
種類や添加量は、近赤外線吸収色素の吸収波長や吸収係数や、色調及びディスプレイ用前面板に要求される透過率などによって適宜選択すればよい。例えば、近赤外線吸収剤の添加量は、層中に0.1〜15重量%程度添加し、それらの近赤外線吸収剤を紫外線から保護するために、層中にベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系などの紫外線吸収剤を含ませてもよく、紫外線吸収剤の添加量は、層中に0.1〜10重量%程度である。
【0091】
上記透明バインダ樹脂としては熱可塑性樹脂が好ましく、さらに好ましくは、極性の高い官能基を持たない合成樹脂や、また極性の高い官能基を持っている官能基数の少ない合成樹脂である。好ましい熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ウレタン系樹脂、又はポリエステル樹脂である。該熱可塑性樹脂は色素の溶解性や安定維持性、及び着色剤の機能耐久性の点で良好である。さらに樹脂の水酸基価、及び/又は、酸価が各々10以下でなければならない。これにより、上記樹脂に含まれる水酸基及び酸基により近赤外線吸収色素等が反応すること等を防ぐことができ、安定に近赤外線吸収機能等を発揮することが可能なものとすることができる。
【0092】
近赤外線吸収層の製造方法は、PETフィルム等の離型フィルム上に近赤外線吸収色素含有インクをグラビアリバース法等により塗工(例えば10g/m2)することにより、離型フィルム/近赤外線吸収色素/離型フィルムからなる積層シートを得る。
【0093】
4.色素含有粘着剤層:
本発明の光学フィルタに用いられる色素含有粘着剤層は、色素含有粘着剤層中に、ネオン光吸収色素、及び/又は、色調調整色素の1種以上を含有させたものが使用される。前記のような近赤外線吸収色素が含有されていても良い。ここで、色調調整色素とは、パネルからの発光の色純度や色再現範囲、電源OFF時のディスプレイ色などの改善の為にディスプレイ用フィルタの色を調整するために含有するものである。
【0094】
ネオン光吸収色素を含有する場合、560〜630nmの波長域における光線透過率が30%以下、中でも25%以下、であることが好ましい。
ネオン光吸収色素としては、少なくとも570〜610nmの波長領域内に光線透過率の吸収極大を有する色素として従来から利用されてきた色素、例えば、シアニン系、オキソノール系、メチン系、サブフタロシアニン系若しくはポルフィリン系等を挙げることができる。
【0095】
また、色調調整色素として用いることのできる公知の色素としては、特開2000−275432号公報、特開2001−188121号公報、特開2001−350013号公報、特開2002−131530号公報等に記載の色素が好適に使用できる。更にこのほかにも、黄色光、赤色光、青色光等の可視光を吸収するアントラキノン系、ナフタレン系、アゾ系、フタロシアニン系、ピロメテン系、テトラアザポルフィリン系、スクアリリウム系、シアニン系等の色素を使用することができる。
【0096】
本発明では色素含有粘着剤層に用いる樹脂のガラス転移点温度(Tg)が30℃〜150℃の範囲内、中でも40℃〜120℃の範囲内であることが好ましい。これにより、樹脂を溶剤等に溶解させて、塗布後、溶剤を揮発させて乾燥する際に、表面の凹凸を、透明基材のTg以上の温度で、例えば、ミラーロール等を用いて圧力をかけることにより、透明性の高い平坦な高品質な光学フィルタとすることができるからである。この色素含有粘着剤層を平坦化する工程における温度及び圧力は、その透明樹脂の種類により適宜選択されるものであるが、通常50℃〜170℃の範囲内であり、また圧力は線圧0.1kg/cm2〜10kg/cm2の範囲内であることが好ましい。
【0097】
上述したような性質を有する樹脂としては、具体的には、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリイミド系樹脂、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるペルフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンコポリマー(EPE)、テトラフルオロエチレンとエチレン又はプロピレンとのコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマー(ECTFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)、フッ化ビニル系樹脂(PVF)等のフッ素系樹脂を挙げることができ、中でも透明性の観点からアクリル系樹脂、エステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂であることが好ましい。また、上記樹脂の平均分子量は、500〜600,000の範囲内、中でも1万〜40万であることが好ましい。これにより、上記のような性質を有する透明樹脂とすることができるからである。さらに樹脂の水酸基価、及び/又は、酸価が各々10以下であることが好ましい。これにより、上記樹脂に含まれる水酸基及び酸基によりネオン光吸収色素等が反応すること等を防ぐことができ、安定にネオン光吸収機能等を発揮することが可能なものとすることができる。
【0098】
本発明において、このような色素含有粘着剤層の膜厚は、10μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。この範囲にすることにより、特に、金属メッシュ層の凹凸に色素含有粘着剤層が形成される場合には、金属メッシュ層を平坦化することが可能となるからである。
【0099】
5.反射防止層
反射防止層は、本発明の光学フィルタの最上層に配置され、磨りガラスのように、光を散乱もしくは拡散させて像をボカス手法、及び/又は、屈折率の高い層と低い層を組み合わせてなる表面の光の反射を防止する手法により形成された層である。
【0100】
すなわち、前者の手法において光を散乱もしくは拡散させるためには、光の入射面を粗面化することが基本であり、この粗面化処理には、サンドブラスト法やエンボス法等により基体表面を直接粗面化する方法、基体表面に放射線、熱の何れかもしくは組み合わせにより硬化する樹脂中にシリカなどの無機フィラーや、樹脂粒子などの有機フィラーを含有させた粗面化層を設ける方法、及び基体表面に海島構造による多孔質膜を形成する方法を挙げることができる。
【0101】
また、後者の表面の光の反射を防止する方法としては、屈折率の高い材料と低い材料を交互に積層し、多層化(マルチコート)することで、表面の反射が抑えられ、良好な反射防止効果を得ることができる。通常、この反射防止層は、SiO2に代表される低屈折率材料と、TiO2、ZrO2等の高屈折率材料とを交互に蒸着等により成膜する気相法等によって形成される。
【0102】
反射防止効果を向上させるためには、低屈折率層の屈折率は、1.45以下であることが好ましい。これらの特徴を有する材料としては、例えばLiF(屈折率n=1.4)、MgF2(屈折率n=1.4)、3NaF・AlF3 (屈折率n=1.4)、AlF3(屈折率n=1.4)、Na3AlF6(屈折率n=1.33)、SiO2(屈折率n=1.45)等の無機材料を微粒子化し、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂等に含有させた無機系低反射材料、フッ素系・シリコーン系の有機化合物、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、放射線硬化型樹脂等の有機低反射材料を挙げることができる。
【0103】
さらに、5〜30nmのシリカ超微粒子を水もしくは有機溶剤に分散したゾルとフッ素系の皮膜形成剤を混合した材料を使用することもできる。該5〜30nmのシリカ超微粒子を水もしくは有機溶剤に分散したゾルは、ケイ酸アルカリ塩中のアルカリ金属イオンをイオン交換等で脱アルカリする方法や、ケイ酸アルカリ塩を鉱酸で中和する方法等で知られた活性ケイ酸を縮合して得られる公知のシリカゾル、アルコキシシランを有機溶媒中で塩基性触媒の存在下に加水分解と縮合することにより得られる公知のシリカゾル、さらには上記の水性シリカゾル中の水を蒸留法等により有機溶剤に置換することにより得られる有機溶剤系のシリカゾル(オルガノシリカゾル)が用いられる。これらのシリカゾルは水系及び有機溶剤系のどちらでも使用することができる。有機溶剤系シリカゾルの製造に際し、完全に水を有機溶剤に置換する必要はない。前記シリカゾルはSiO2として0.5〜50重量%濃度の固形分を含有する。シリカゾル中のシリカ超微粒子の構造は球状、針状、板状等様々なものが使用可能である。また、皮膜形成剤としては、アルコキシシラン、金属アルコキシドや金属塩の加水分解物や、ポリシロキサンをフッ素変性したものなどを用いることができる。
【0104】
低屈折率層は、上記で述べた材料を例えば溶剤に希釈し、スピンコーティング、ロールコーティングや印刷等によるウェットコーティング法や、真空蒸着、スパッタリング、プラズマCVD、イオンプレーティング等による気相法で、高屈折率層上に設けて乾燥後、熱や放射線(紫外線の場合は上述の光重合開始剤を使用する)等により硬化させることによって得ることができる。
【0105】
高屈折率層の形成は、屈折率を高くするために高屈折率のバインダ樹脂を使用するか、高い屈折率を有する超微粒子をバインダ樹脂に添加することによって行なうか、あるいはこれらを併用することによって行なう。高屈折率層の屈折率は1.55〜2.70の範囲にあることが好ましい。
【0106】
高屈折率層に用いる樹脂については、透明なものであれば任意の樹脂が使用可能であり、熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、放射線(紫外線を含む)硬化型樹脂などを用いることができる。熱硬化型樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を用いることができ、これらの樹脂に、必要に応じて架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶剤、粘度調整剤等を加えることができる。
【0107】
高い屈折率を有する超微粒子としては、例えば、紫外線遮蔽の効果をも得ることができる、ZnO(屈折率n=1.9)、TiO2(屈折率n=2.3〜2.7)、CeO2(屈折率n=1.95)の微粒子、また、帯電防止効果が付与されて埃の付着を防止することもできる、アンチモンがドープされたSnO2 (屈折率n=1.95)又はITO(屈折率n=1.95)の微粒子が挙げられる。その他の微粒子としては、Al23(屈折率n=1.63)、La23(屈折率n=1.95)、ZrO2(屈折率n=2.05)、Y23(屈折率n=1.87)等を挙げることができる。これらの微粒子は単独又は混合して使用され、有機溶剤又は水に分散したコロイド状になったものが分散性の点において良好であり、その粒径としては、1〜100nm、塗膜の透明性から好ましくは、5〜20nmであることが望ましい。
【0108】
高屈折率層を設けるには、上記で述べた材料を例えば溶剤に希釈し、スピンコーティング、ロールコーティング、印刷等の方法で基体上に設けて乾燥後、熱や放射線(紫外線の場合は上述の光重合開始剤を使用する)等により硬化させればよい。
また反射防止層中に、近赤外線吸収色素、及び/又は、ネオン光吸収色素を1種以上含有させてもよい。その場合、800nm〜1100nmの波長域における光線透過率が20%以下、中でも15%以下、560〜630nmの波長域における光線透過率が30%以下、中でも25%以下であることが好ましい。さらに樹脂が水酸基価及び酸価が所定の値以下でなければならない。これにより、上記樹脂に含まれる水酸基及び酸価により近赤外線吸収色素、及び/又は、ネオン光吸収色素が反応すること等を防ぐことができ、安定に近赤外線吸収能、及び/又は、ネオン光吸収機能を発揮することが可能なものとなる。また、反射防止層に紫外線遮蔽機能をもたらす点から、反射防止層中に紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。
【0109】
6.粘着剤層
光学フィルタの粘着剤層は、光学フィルタにおける各層を接着するための層であり、例えば、市販の両面接着テープ(例、CS−9611:商品名、日東電工(株)製)が使用できる。
【0110】
以上、各層を例示して説明したが、本発明に係るプラズマディスプレイ用光学フィルタにおいては、近赤外線吸収化合物を含む樹脂層を有し、800〜1100nmの波長範囲の透過率が20%以下、更に15%以下であることが、ディスプレイ内部から放出され、他の機器に誤動作を与え得る近赤外線を遮断する点から好ましい。
【0111】
また、本発明に係るプラズマディスプレイ用光学フィルタにおいては、ネオン光560〜630nmの波長範囲に最大吸収波長を持つネオン光吸収化合物を含む樹脂層を有し、該波長範囲における最大吸収波長の透過率が30%以下、更に25%以下であることが、ディスプレイ内部から放出され、色調に影響を与えるネオン光を遮断する点から好ましい。
【0112】
本発明に係るプラズマディスプレイ用光学フィルタにおいては、プラズマディスプレイ装置から発生する静電気及び/又は電磁波ノイズをシールドする電磁波遮蔽層を有することが、電磁波の放出の強さを規格内に低減化する点から好ましい。
また、本発明に係るプラズマディスプレイ用光学フィルタにおいては、可視光380〜780nmの波長範囲の透過率が30%以上、更に35%以上であることが、透明性の高い光学フィルタを得る点から好ましい。
【0113】
また、本発明に係るプラズマディスプレイ用光学フィルタは、プラズマディスプレイパネルに対する衝撃試験による破壊エネルギーが0.5J以上、好ましくは0.6J以上という耐衝撃性を有することが好ましい。
【0114】
<光学フィルタの製造方法>
本発明に係る光学フィルタは、例えば、各層を構成するシートを貼り合わせて製造することができる。貼り合わせは、例えば図5に示すようなラミネート機を用いて行なうことができる。図2に示す層構成の光学フィルタの製造例を以下に説明する。
【0115】
i)反射防止層15/色素含有粘着剤層14/離型フィルムからなる積層シートの製造
図5のラミネート機の第1給紙部21に反射防止層15を巻き取ったもの配置し、且つ第2給紙部22に離型フィルム/色素含有粘着剤層14/離型フィルムからなる積層シートを巻き取ったものを配置する。次いで、第1給紙部21から、反射防止層15を繰り出しながら、一方、第2給紙部22から離型フィルム/色素含有粘着剤層14/離型フィルムからなる積層シートを繰り出すと同時に一側の第2離型フィルム巻取りロール24に巻取り、反射防止層15と、色素含有粘着剤層14/離型フィルムからなるシートを第1ラミネートユニット25で約3kgf/mのラミネート圧でラミネートし、次いで、第2ラミネートユニット26で約5kgh/mのラミネート圧でラミネートして、巻取りロール27に巻き取って、反射防止層1/色素含有粘着剤層2/離型フィルムからなる積層シートを得る。このとき、第1離型フィルム巻取りロール23は、巻き取る離型フィルムが存在しないので使用しない。
【0116】
ii)反射防止層15/色素含有粘着剤層14/近赤外線吸収層13/離型フィルムからなる積層シートの製造
前記i)工程で得られた反射防止層15/色素含有粘着剤層14/離型フィルムからなる積層シートを第1給紙部21に配置する。一方、第2給紙部22に離型フィルム/近赤外線吸収層13/離型フィルムからなる積層シートを巻き取ったものを配置する。前記i)工程と同様にしてラミネートを行い、巻取りロール27に巻き取って、反射防止層15/色素含有粘着剤層14/近赤外線吸収層13/離型フィルムからなる積層シートを得る。
【0117】
以後同様にして、前工程で得られた積層シートを第1給紙部21に、一方、新たに積層するシートを第2給紙部22に配置し、順次、
iii)反射防止層15/色素含有粘着剤層14/近赤外線吸収層13/粘着剤層16/離型フィルムからなる積層シート、
iv)反射防止層15/色素含有粘着剤層14/近赤外線吸収層13/粘着剤層16/電磁波遮蔽層12/離型フィルムからなる積層シート、
v)反射防止層15/色素含有粘着剤層14/近赤外線吸収層13/粘着剤層16/電磁波遮蔽層12/粘着剤層16/離型フィルムからなる積層シート、
vi)反射防止層15/色素含有粘着剤層14/近赤外線吸収層13/粘着剤層16/電磁波遮蔽層12/粘着剤層16/耐衝撃層11/離型フィルムからなる積層シート
を得ることにより、本発明に係る光学フィルタを得ることができる。
【0118】
D.プラズマディスプレイパネル
本発明に係るプラズマディスプレイパネルは、前記本発明に係る光学フィルタが表示面に直接貼付されてなるプラズマディスプレイパネルである。
本発明に係るプラズマディスプレイパネルは、前記本発明に係る光学フィルタが表示面に直接貼付されてなるため、パネルの前面ガラスと保護板との間に空間がないことにより、画質低下や画像の歪みを生じるといった問題がなく、且つ軽量化及び薄型化を実現可能で、更に製造工程の簡略化及び低コスト化が図れるものである。
【0119】
本発明のプラズマディスプレイパネルとは、ガラス基板、ガス、電極、電極リード材料、厚膜印刷材料、蛍光体等の一般的なプラズマディスプレイパネルの構成要素に本発明に係る光学フィルタを含んだものである。さらに筐体を組み合わせることで、プラズマディスプレイ表示装置となる。ガラス基板は、前面ガラス基板と背面ガラス基板の二枚が用いられ、二枚のガラス基板には、電極と誘電体層が形成され、さらに背面ガラス基板には蛍光体層が形成される。二枚のガラス基板の間にはヘリウム、ネオン、キセノンなどからなるガスが封入されている。本発明に係るプラズマディスプレイパネル18は、例えば図2に示されるように、プラズマディスプレイパネル本体10の前面ガラス19に、上述した本発明に係る耐衝撃吸収材からなる耐衝撃層11を介して光学フィルタ17を接合して構成されている。
【0120】
本発明に係るプラズマディスプレイパネルは、例えば、前記vi)工程で得られた反射防止層15/色素含有粘着剤層14/近赤外線吸収層13/粘着剤層16/電磁波遮蔽層12/粘着剤層16/耐衝撃層11/離型フィルムからなる積層シートの離型フィルムを剥がし、露出した耐衝撃層11を、プラズマディスプレイパネル本体10の前面ガラス19に接合して製造することができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0121】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。
(実施例1)
1. 耐衝撃吸収材形成用塗工液の調製
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、及び冷却管を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに、アクリル酸2−エチルヘキシル919重量部、アクリル酸80重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル1重量部、n−ドデシルメルカプタン0.6gを投入し、フラスコ内の空気を窒素に置換しながら、50℃まで加熱した。次いで、重合開始剤として2,2’−アゾビス4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル0.025gを撹拌下に投入して均一に混合した。重合開始剤投入後、反応系の温度は上昇したが、冷却を行なわずに重合反応を続けたところ、反応系の温度が119℃に達し、その後徐々に下がり始めた。反応系の温度が115℃まで下がったところで、強制冷却を行い、シロップ型アクリル系粘着剤を得た。このシロップ型アクリル系粘着剤はモノマーを67重量%の濃度、ポリマーを33重量%の濃度で含有し、ポリマー分についてGPCを用いて重量平均分子量(Mw)を測定したところ21万であった。
得られたシロップ型アクリル系粘着剤に、光重合開始剤(イルガキュア184)をシロップ型アクリル系粘着剤100重量部に対して0.3重量部となるように添加し、架橋剤(トリレンジイソシアネート)をシロップ型アクリル系粘着剤100重量部に対して0.5重量部となるように添加して、耐衝撃吸収材形成用塗工液を得た。
【0122】
2.塗布工程
上記得られた耐衝撃吸収材形成用塗工液を離型フィルム(シリコーン塗工されたPET)上に厚み1000μmで塗工し、塗工後5秒後に上から気泡が入らないように離型フィルム(シリコーン塗工されたPET)を貼り合わせた。
【0123】
3.弱照射及び強照射工程
上記2.で得られた離型フィルムで両面挟まれた塗膜について、ブラックライトを用いて弱照度(5mW/cm2)で、両面を片面ずつ、各120秒間紫外線を照射した。その後、同塗膜について、高圧水銀灯を用いて強照度(500mW/cm2)で、両面を片面ずつ、各10秒間紫外線を照射した。
【0124】
4.加熱工程
上記3.で得られた離型フィルムで両面挟まれた塗膜について、オーブンにて60℃で1週間加熱して、本発明に係る耐衝撃吸収材を得た。
【0125】
[評価]
(1)ガラス密着性
実施例1で得られた耐衝撃吸収材の離型フィルムの片方を剥がし、ナトリウムソーダガラスを貼り付けた。これを幅25mmに切り、JIS Z0237−2000の試験に基づき貼り合わせ、速度200mm/minで90度で剥離させて測定した。その結果、実施例1で得られた耐衝撃吸収材のガラス密着性は、14N/25mmであった。
【0126】
(2)糊残り試験
上記ガラス密着性の評価において、剥離した際、ガラスに残る粘着剤はなく、「糊残りなし」と目視で判断した。なお、粘着剤の縁が約0.1〜0.5mm程度残ることがあるが、これは切断面の粘着剤の形状や内部応力が不連続なため切り離されたものであり、実際にプラズマディスプレイパネルに用いた場合にも表示部に影響を与えないため、糊残りとはみなさない。
【0127】
(3)引っ張り弾性率
25℃、チャック間距離20mm、幅5mm、歪み10μm、昇温速2℃/min、周波数10Hzの条件で、動的粘弾性測定器(株式会社ユービーエム社製、Rheogel−E4000)を用いて測定した。
【0128】
(4)ヘーズ
JIS K7105−1981に準拠した方法により測定した。1.2mm厚のガラス板に実施例1の耐衝撃吸収材を貼り合せて、ガラス板と逆面にPETフィルム(東洋紡製コスモシャインA−4100)の易接着面を実施例1の耐衝撃吸収材と重なるように貼り合せて作製した試料を用いて、ヘーズ値を測定した。その結果、ヘーズ値は、2.1%であった。
【0129】
(5)分子量1000以下の成分量
実施例1で得られた耐衝撃吸収材形成用塗工液を溶媒(テトラヒドロフラン)に溶解し、得られた溶液について、液体クロマトグラフィー測定を行なった。装置として、東ソー(株)製、HLC−8120を用い、カラムとして、G7000HXL(7.8mmID×30cm)1本、GMHXL(7.8mmID×30cm)2本、G2000HXL(7.8mmID×30cm)1本を用いて測定した。その結果、実施例1で得られた耐衝撃吸収材塗工液の分子量1000以下の成分量は、全体の2.1重量%であった。
【0130】
(6)ディスプレイ貼り合わせ後の剥離及び糊残り
42インチのプラズマディスプレイに実施例1で得られた耐衝撃吸収材を貼り合わせた後、30分後に剥離を試みた。その結果、人の力で問題なく剥離することができた。また、プラズマディスプレイの前面ガラスに残った粘着剤はなく、「糊残りなし」と目視で判断した。
【0131】
(7)耐衝撃性
図6に示す衝撃試験装置を用いて行い、高さ9.6cmから順に衝撃エネルギーが0.1Jずつ大きくなるように高さを上げて行き、直径50.8mmの鋼球35(重量534g)(JIS B1501 玉軸受用鋼球に規定されたもの)を落下させた。この耐衝撃性試験後、耐衝撃吸収材に破壊(破損やクラック)が生じているかどうかを目視で確認し、破壊がなく異常がみられない、破壊エネルギーを測定した。試験台31としてSUS製土台32と、厚さ10mmのガラス板33を貼り合わせたものを用いた。該試験台31上に、プラズマディスプレイ用の前面ガラス板34として旭硝子社製の高歪点ガラス板(PD−200:商品名、厚み2.8mm)を載置した。なお、鋼球を落下させたときの衝撃エネルギーは、例えば高さ9.6cmの場合、鋼球重さ(Kg)×高さ(m)×9.8(m/s)=0.534×0.096×9.81として求められ、約0.5Jである。
その結果、3.1Jまで破壊がなく異常がみられず、実施例1の耐衝撃吸収材は、衝撃試験による破壊エネルギーが3.1Jという耐衝撃性を有するものであった。
【0132】
(比較例1)
n−ブチルアクリレート78.4重量%、2−エチルヘキシルアクリレート19.6重量%およびアクリル酸2.0重量%を共重合させたアクリル酸エステル共重合体100重量部に対し、金属化合物としてアセチルアセトン亜鉛塩:0.5重量部及びアセチルアセトンアルミ塩:0.7重量部を溶融攪拌した後、所定の厚み(0.5mm)でシート状に成形したものを比較例1の耐衝撃吸収材とした。これは、前述の特許文献4における実施例1の粘着シートに対応するものである。
【0133】
得られた比較例1の耐衝撃吸収材のガラス密着性を実施例1と同様に測定したところ、25N/25mmであった。また、実施例1の耐衝撃吸収材と同様に42インチのプラズマディスプレイに貼り合わせた後、30分後に剥離を試みた。その結果、人の力で剥離することはできなかった。また、実施例1の耐衝撃吸収材と同様の耐衝撃試験の結果、2.5Jという耐衝撃性を有するものであった。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の耐衝撃吸収材の製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】本発明の実施態様1の光学フィルタをプラズマディスプレイパネルの前面に直接貼付した場合の積層構造の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施態様4の光学フィルタをプラズマディスプレイパネルの前面に直接貼付した場合の積層構造の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施態様7の光学フィルタをプラズマディスプレイパネルの前面に直接貼付した場合の積層構造の一例を示す図である。
【図5】本発明の光学フィルタを構成する各層をラミネートするためのラミネート機の1例を示す図である。
【図6】衝撃試験装置を示す図である。
【符号の説明】
【0135】
1 離型フィルム
2 耐衝撃吸収材形成用塗工液
3 弱紫外線
4 耐衝撃吸収材形成用塗膜
5 強紫外線
6 耐衝撃吸収材
10 プラズマディスプレイパネル本体
11 耐衝撃層
12 電磁波遮蔽層
13 近赤外線吸収層
14 色素含有粘着剤層
15 反射防止層
16 粘着剤層
17 光学フィルタ
18 プラズマディスプレイパネル
19 前面ガラス
21 第1給紙部
22 第2給紙部
23 第1離型フィルム巻取りロール
24 第2離型フィルム巻取りロール
25 第1ラミネートユニット
26 第2ラミネートユニット
27 巻取りロール
31 試験台
32 土台
33 ガラス板
34 前面ガラス板
35 鋼球

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単層で厚みが100μm以上で、ガラス密着性が3〜15N/25mmである、フラットディスプレイ用耐衝撃吸収材。
【請求項2】
引っ張り弾性率が25℃で1×104〜1×106Pa・sである、請求項1に記載のフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材。
【請求項3】
分子量が1000以下の成分が3重量%以下である、請求項1又は2に記載のフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材。
【請求項4】
アクリル系粘着剤を含んでなる、請求項1乃至3のいずれかに記載のフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材。
【請求項5】
前記アクリル系粘着剤が、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、及び(メタ)アクリル酸ラウリルよりなる群から選ばれる1種以上を少なくとも用いて重合された重合体である、請求項4に記載のフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材。
【請求項6】
粘着付与剤が3重量%未満である、請求項1乃至5のいずれかに記載のフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材。
【請求項7】
プラズマディスプレイパネルの表示面に直接貼付されるための光学フィルタであって、請求項1乃至6のいずれかに記載の耐衝撃吸収材からなる耐衝撃層を含有することを特徴とする、プラズマディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項8】
前記光学フィルタの直接貼付される面を構成する層が、請求項1乃至6のいずれかに記載の耐衝撃吸収材からなる耐衝撃層であることを特徴とする、請求項7に記載のプラズマディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項9】
近赤外線吸収化合物を含む樹脂層を有し、800〜1100nmの波長範囲の透過率が40%以下であることを特徴とする、請求項7又は8に記載のプラズマディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項10】
ネオン光560〜630nmの波長範囲に最大吸収波長を持つネオン光吸収化合物を含む樹脂層を有し、該波長範囲における最大吸収波長の透過率が30%以下であることを特徴とする、請求項7乃至9のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項11】
可視光380〜780nmの波長範囲の透過率が40%以上であることを特徴とする、請求項7乃至10のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項12】
プラズマディスプレイ装置から発生する静電気及び/又は電磁波ノイズをシールドする電磁波遮蔽層を有することを特徴とする、請求項7乃至11のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項13】
請求項7乃至12のいずれかに記載の光学フィルタが表示面に直接貼付されてなるプラズマディスプレイパネル。
【請求項14】
無溶剤で且つ少なくとも一種の光重合性モノマーと当該光重合性モノマーの重合体を含有する耐衝撃吸収材形成用塗工液を塗布する塗布工程と、1mW/cm以上40mW/cm2未満の照度で20〜180秒間紫外線を照射する弱照射工程と、40mW/cm2以上の照度で0.1〜20秒間紫外線を照射する強照射工程とを有する、フラットディスプレイ用耐衝撃吸収材の製造方法。
【請求項15】
前記耐衝撃吸収材形成用塗工液がアクリル系粘着剤である、請求項13に記載のフラットディスプレイ用耐衝撃吸収材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−94191(P2007−94191A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285576(P2005−285576)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】