説明

フラット回路体の取付方法

【課題】取付作業時間の短縮を図ることができるフラット回路体の取付方法を提供する。
【解決手段】フラット回路体10は、複数本の導体11と、これらの複数本の導体相互を所定の離間間隔で平面状に保持するシート状の絶縁被覆材12と、フラット回路体の幅寸法内でフラット回路体の幅方向に並んで絶縁被覆材上に複数個の位置決め孔13aを貫通形成した取付部13と、を備え、フラット回路体が取り付けられる筐体20は、取付部が面接触状態に載置される回路体載置部22と、回路体載置部に載置された取付部の複数個の各位置決め孔に嵌合する複数個の樹脂製位置決めピン23とを備え、樹脂製位置決めピンと位置決め孔との嵌合によって、フラット回路体の幅方向及び長さ方向への各導体の移動を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等においてワイヤハーネスとして配索されるフラット回路体の取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等では、ワイヤハーネスの配索作業を簡便にするために、ワイヤハーネスの配索経路に位置する樹脂製の筐体に、ワイヤハーネスを固定するための機構を一体形成しておく場合がある。
【0003】
また、省スペース化等のために、ワイヤハーネスとして、フラット回路体を採用することも少なくない。ここに、フラット回路体とは、絶縁被覆材で被覆された複数の電線が平面状に結合した構造を成すフラットな配線材で、具体的には、複数の被覆電線をリボン状に接続一体化したリボン電線、フレキシブルフラットケーブル(FFC)、フレキシブルプリントサーキット(FPC)、フレキシブルワイヤーサーキット(FWC)等が該当する。
【0004】
図5及び図6は、フラット回路体101の配索経路に位置する樹脂製の筐体111に、フラット回路体101を固定するための機構(後述の柱状突起対)を一体形成した従来のフラット回路体の取付方法を示したものである。このフラット回路体の取付方法は、下記特許文献1に開示されたものである。
【0005】
図示例の取付方法の場合、フラット回路体101は、複数の被覆電線102をリボン状に接続一体化したリボン電線103と、このリボン電線103の絶縁被覆材に接着された樹脂製のシート状素材(テープ状素材)104と、を備えている。この樹脂製のシート状素材104は、リボン電線103を幅方向に横断するテープ状で、両端105a,105bがフラット回路体101の外側に突出するように長さ設定されている。
【0006】
この樹脂製のシート状素材104は、筐体111への取付部となるもので、リボン電線103の両側に突出する両端105a,105bには、後述する樹脂製の筐体111側の柱状突起を挿通させるための取付孔106a,106bが、貫通形成されている。
【0007】
樹脂製の筐体111は、車体上のフラット回路体101の配索経路に配備される部品で、熱可塑性樹脂で形成されている。この樹脂製の筐体111としては、具体的には、例えば、インストルメントパネルや、ドアトリムなど、車体の内装に使用される各種の構造用樹脂部品が該当する。
【0008】
図示例の樹脂製の筐体111の場合は、フラット回路体101が載置されるハーネス配索面113に、柱状突起対115が、一体形成されている。柱状突起対115は、フラット回路体101の幅方向に離間した一対の柱状突起115a,115bから構成されている。
【0009】
それぞれの柱状突起115a,115bは、その上端部が、ハーネス配索面113に載置されたフラット回路体101の樹脂製のシート状素材104の取付孔106a、106bから上方に突出するように、ハーネス配索面113からの突出高さが設定されている。
【0010】
図5に示したフラット回路体101の樹脂製の筐体111への取り付けは、図6に示すように、フラット回路体101の樹脂製のシート状素材104の両端105a,105bの取付孔106a、106bを、樹脂製の筐体111上のハーネス配索面113の各柱状突起115a,115bの上端に嵌合させることで完了する。
【0011】
上記のフラット回路体の取付方法では、フラット回路体101や樹脂製の筐体111とは別体のクリップ等を使用せずに、フラット回路体101を樹脂製の筐体111に固定できるため、別体のクリップ等を使用する取付方法の場合と比較すると、樹脂製の筐体111へのフラット回路体101の取り付けを容易にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−143741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、特許文献1に記載のフラット回路体の取付方法では、フラット回路体101の製造時に、リボン電線103に該リボン電線103の絶縁被覆材とは別部品である樹脂製のシート状素材104を接着させる工程が必要で、この樹脂製のシート状素材104の接着工程のために、フラット回路体101の生産性を向上させることが難しいという問題があった。
【0014】
また、筐体111への取付部となる樹脂製のシート状素材104の両端部は、リボン電線103の両側から外方に突出しているため、保管時や運搬時等に樹脂製のシート状素材104の両端部が周囲の器物との干渉で変形し易く、樹脂製のシート状素材104の両端部の変形のために、樹脂製のシート状素材104の取付孔106a,106bへの柱状突起115a,115bの挿通作業が円滑にできず、取付作業時間の遅延を招くおそれがあった。
【0015】
また、特許文献1に記載のフラット回路体の取付方法では、リボン電線103の両側に突出するシート状素材104の両端の2箇所で、フラット回路体101を筐体111に位置決めするだけのため、リボン電線103を構成している複数の被覆電線102のそれぞれに対して、高精度に移動を規制することはできない。そのため、リボン電線103の各被覆電線102が圧接コネクタの圧接刃に圧接接続されるような場合に、リボン電線103に張力が作用すると、リボン電線103に作用した張力が各被覆電線102の圧接接続部にかかってしまって、圧接刃の変形や、被覆電線102の導体の断線等の不都合が発生するおそれがあった。
【0016】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、フラット回路体の製造時に別部品の接着工程が必要なく、フラット回路体の生産性を向上させることができ、また、取付作業時間の遅延を招く変形等が取付孔周辺部に発生することを抑止して、取付作業時間の短縮を図ることができるフラット回路体の取付方法を提供することにある。
更に、本発明の目的は、フラット回路体の各導体が圧接接続されるような場合に、各導体の圧接接続部にフラット回路体に作用する張力が作用することを防止して、圧接刃の変形や導体の断線等の不都合が発生することを防止することのできるフラット回路体の取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1)絶縁被覆材で被覆された複数の電線が平面状に結合した構造を成すフラット回路体を、樹脂製の筐体に固定するフラット回路体の取付方法であって、
前記フラット回路体は、電線導体となる複数本の導体と、これらの複数本の導体相互を所定の離間間隔で平面状に保持するシート状の前記絶縁被覆材と、前記フラット回路体の幅寸法内で前記フラット回路体の幅方向に並んで前記絶縁被覆材上に複数個の位置決め孔を貫通形成した取付部と、を備え、
前記筐体は、前記取付部が面接触状態に載置される回路体載置部と、前記回路体載置部に載置された前記取付部の複数個の各位置決め孔に嵌合する複数個の樹脂製位置決めピンとを備え、
前記筐体上の複数個の前記樹脂製位置決めピンを前記フラット回路体上の複数個の前記位置決め孔に嵌合させることで、前記フラット回路体を構成している複数本の前記導体のそれぞれに対して、前記フラット回路体の幅方向及び長さ方向の移動を規制することを特徴とするフラット回路体の取付方法。
【0018】
(2)前記絶縁被覆材は、隣接する導体間よりも広い幅で、前記導体の長さ方向に延在する孔加工用被覆部を複数条備え、孔加工用被覆部に前記位置決め孔が形成されていることを特徴とする上記(1)に記載のフラット回路体の取付方法。
【0019】
(3)前記フラット回路体は、端部付近に前記取付部としての端部取付部が設けられ、
前記フラット回路体の端部が固定される前記筐体としてのコネクタは、前記フラット回路体の端部の導体を圧接する圧接刃と、前記端部取付部の複数個の位置決め孔に嵌合する複数個の樹脂製位置決めピンを前記圧接刃に接近した位置に配置した回路体位置決め部と、を備え、
前記端部取付部における複数個の前記位置決め孔と前記回路体位置決め部における複数個の前記樹脂製位置決めピンとの嵌合によって、前記フラット回路体の端部が前記コネクタに位置決め固定されることを特徴とする上記(1)に記載のフラット回路体の取付方法。
【0020】
(4)前記端部取付部に装備される前記位置決め孔と、前記回路体位置決め部に装備される前記樹脂製位置決めピンとを、前記フラット回路体の長さ方向に位置をずらした複数列に装備して、前記フラット回路体の端部が前記コネクタに位置決め固定されることを特徴とする上記(3)に記載のフラット回路体の取付方法。
【0021】
上記(1)の構成によれば、筐体への取り付けのためにフラット回路体に設けられる取付孔は、フラット回路体において導体を被覆している絶縁被覆材に直接形成されている。そのため、取付孔の装備のために、別部材のシート状素材等をフラット回路体に接着する必要がない。従って、フラット回路体の製造時に別部品の接着工程が必要なく、フラット回路体の生産性を向上させることができる。
【0022】
また、筐体への取り付けのためにフラット回路体に設けられる取付孔は、フラット回路体の絶縁被覆材上に形成されるため、フラット回路体の幅内に取付孔を配置することができ、両端が回路体の両外側に突出するシート状素材に取付孔を装備していた従来の場合と比較すると、取付孔の周辺部が外側に突出しない。そのため、保管時や運搬時等に取付孔の周辺部が周囲の器物との干渉で変形することを防止することができる。従って、取付作業時間の遅延を招く変形等が取付孔の周辺部に発生することを抑止して、取付作業時間の短縮を図ることができる。
【0023】
また、上記(1)の構成によれば、筐体上の樹脂製位置決めピンとフラット回路体上の位置決め孔とは、フラット回路体の幅方向に並んで複数装備されていて、互いに嵌合させることで、フラット回路体を構成している複数本の導体のそれぞれに対して、フラット回路体の幅方向及び長さ方向の移動を規制する構成であり、例えば、フラット回路体の幅方向に並ぶ樹脂製位置決めピンや位置決め孔の数量を3個以上の適宜数に増やすことで、フラット回路体を構成する複数本の導体のそれぞれに対して移動を規制する効力を更に高めることができる。
【0024】
そのため、フラット回路体の各導体が圧接接続されるような場合に、各導体の圧接接続部にフラット回路体に作用する張力が作用することを防止して、圧接刃の変形や導体の断線等の不都合が発生することを防止することができる。
【0025】
上記(2)の構成によれば、位置決め孔が形成される孔加工用被覆部は、隣接する導体間よりも広い幅に設定されているため、フラット回路体に装備される導体相互間の配列ピッチが狭い場合でも、フラット回路体の固定のために筐体に装備される樹脂製位置決めピンは、隣接する導体間の絶縁被覆材の幅よりも大きな径に設定して、樹脂製位置決めピンに十分な強度を確保することができる。
【0026】
従って、強度の高い太径の樹脂製位置決めピンを設定して、フラット回路体の固定強度を向上させることができる。
【0027】
上記(3)の構成によれば、筐体としてのコネクタの圧接刃にフラット回路体の各導体を圧接させた取り付け状態では、圧接刃に接近した位置で、フラット回路体の位置決め孔とコネクタ側の樹脂製位置決めピンとが嵌合していて、コネクタに圧接された各導体のそれぞれに対して、フラット回路体の幅方向及び長さ方向の移動が規制される。
【0028】
そのため、フラット回路体に張力が作用しても、フラット回路体に作用した張力が各導体の圧接接続部にかかることがない。従って、圧接刃の変形や、フラット回路体の導体の断線等の不都合が発生することを防止することができる。
【0029】
上記(4)の構成によれば、フラット回路体に装備される位置決め孔や筐体であるコネクタに装備される樹脂製位置決めピンが、前記フラット回路体の長さ方向に位置をずらした複数列に装備されているため、位置決め孔や脂製位置決めピンの装備が1列の場合と比較すること、フラット回路体に対する固定強度、各導体に対する位置決め強度が倍増する。従って、圧接刃の変形を防止したり、フラット回路体の導体の断線等を防止したりする効果が更に高められる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によるフラット回路体の取付方法によれば、筐体への取り付けのためにフラット回路体に設けられる取付孔は、フラット回路体において導体を被覆している絶縁被覆材に直接形成されている。そのため、取付孔の装備のために、別部材のシート状素材等をフラット回路体に接着する必要がない。従って、フラット回路体の製造時に別部品の接着工程が必要なく、フラット回路体の生産性を向上させることができる。
【0031】
また、筐体への取り付けのためにフラット回路体に設けられる取付孔は、フラット回路体の絶縁被覆材上に形成されるため、フラット回路体の幅内に取付孔を配置することができ、両端が回路体の両外側に突出するシート状素材に取付孔を装備していた従来の場合と比較すると、取付孔の周辺部が外側に突出しない。そのため、保管時や運搬時等に取付孔の周辺部が周囲の器物との干渉で変形することを防止することができる。従って、取付作業時間の遅延を招く変形等が取付孔周辺部に発生することを抑止して、取付作業時間の短縮を図ることができる。
【0032】
また、本発明によるフラット回路体の取付方法によれば、筐体上の複数個の樹脂製位置決めピンとフラット回路体上の複数個の位置決め孔とは、フラット回路体の幅方向に並んで複数装備されていて、互いに嵌合させることで、フラット回路体を構成している複数本の導体のそれぞれに対して、フラット回路体の幅方向及び長さ方向の移動を規制する構成であり、例えば、フラット回路体の幅方向に並ぶ樹脂製位置決めピンや位置決め孔の数量を増やすことで、フラット回路体を構成する複数本の導体のそれぞれに対して高精度に移動を規制することができる。
【0033】
そのため、フラット回路体の各導体が圧接接続されるような場合に、各導体の圧接接続部にフラット回路体に作用する張力が作用することを防止して、圧接刃の変形や導体の断線等の不都合が発生することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るフラット回路体の取付方法の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るフラット回路体の取付方法の第2実施形態における筐体とフラット回路体の取り付け前の状態を示す斜視図である。
【図3】図2に示した筐体における要部の拡大図である。
【図4】図2に示した筐体とフラット回路体の取り付け完了状態の斜視図である。
【図5】従来のフラット回路体の取付方法を示す斜視図である。
【図6】図5に示したフラット回路体の取付方法によりフラット回路体を固定した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係るフラット回路体の取付方法の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0036】
[第1実施形態]
図1は、本発明に係るフラット回路体の取付方法の第1実施形態を示す斜視図である。
【0037】
この第1実施形態のフラット回路体の取付方法は、図1に示すように、絶縁被覆材で被覆された複数の電線が平面状に結合した構造を成すフラット回路体10を、樹脂製の筐体20に固定する方法である。
【0038】
フラット回路体10は、図1に示すように、電線導体となる複数本の導体11と、これらの複数本の導体11相互を互いに絶縁状態に覆うシート状の絶縁被覆材12と、この絶縁被覆材12上に形成された取付部13と、を備える。
【0039】
複数本の導体11は、互いに平行に、平面状に並んでいる。
絶縁被覆材12は、絶縁性フィルムで、複数本の導体11相互を所定の離間間隔で平面状(シート状)に保持している。即ち、本実施形態のフラット回路体10は、絶縁性フィルム間に複数本の導体11を保持した構成で、全体としては、シート状を呈している。このようなフラット回路体10としては、FPC(Flexible Printed Circuit)やFFC(Flexible Flat Cable)と呼称されている配線材、及びリボン電線等が該当する。
【0040】
取付部13は、図1では、フラット回路体10の両端部付近に、それぞれ装備されている。それぞれの取付部13は、フラット回路体10の幅寸法W1内で、絶縁被覆材12上に2個の位置決め孔13aを貫通形成した構成である。位置決め孔13aは、フラット回路体10を筐体20に位置決め・固定するための取付孔である。各取付部13では、2個の位置決め孔13aを、フラット回路体10の幅方向に並んで形成している。
【0041】
本実施形態の場合、それぞれの位置決め孔13aは、円孔で、絶縁被覆材12上の孔加工用被覆部12aに貫通形成されている。
【0042】
孔加工用被覆部12aは、絶縁被覆材12上で、隣接する導体11間の幅W2よりも広い幅W3で、且つ導体11の長さ方向に延在する帯状部分である。本実施形態の場合、孔加工用被覆部12aは、フラット回路体10の両側縁となる位置に、それぞれ配置されている。即ち、本実施形態のフラット回路体10は、孔加工用被覆部12aを2条備えている。
【0043】
筐体20は、車両のインストルメントパネルや、ドアトリムなど、車体の内装に使用される各種の構造用樹脂部品である。
【0044】
筐体20は、フラット回路体10の各取付部13の位置に対応して、回路体載置部22と、2個の樹脂製位置決めピン23とが装備されている。
【0045】
回路体載置部22は、取付部13が面接触状態に載置される筐体の表面である。
樹脂製位置決めピン23は、取付部13上の位置決め孔13aの配置に対応して、回路体載置部22に突設された円柱状のピンである。各樹脂製位置決めピン23は、回路体載置部22に載置された取付部13の2個の各位置決め孔13aに、略緊密状態に嵌合するように外径が設定されている。
【0046】
本実施形態のフラット回路体の取付方法は、筐体20上の2個の樹脂製位置決めピン23をフラット回路体10上の2個の位置決め孔13aに嵌合させることで、フラット回路体10を構成している複数本の導体11のそれぞれに対して、フラット回路体10の幅方向及び長さ方向の移動を規制する。
【0047】
以上に説明した第1実施形態のフラット回路体の取付方法では、筐体20への取り付けのためにフラット回路体10に設けられる取付孔である位置決め孔13aは、フラット回路体10において導体11を被覆している絶縁被覆材12に直接形成されている。そのため、位置決め孔13aの装備のために、別部材のシート状素材等をフラット回路体10に接着する必要がない。従って、フラット回路体10の製造時に別部品の接着工程が必要なく、フラット回路体10の生産性を向上させることができる。
【0048】
また、筐体20への取り付けのためにフラット回路体10に設けられる位置決め孔13aは、フラット回路体10の絶縁被覆材12上に形成されるため、フラット回路体10の幅内に位置決め孔13aを配置することができ、両端が回路体の両外側に突出するシート状素材に取付孔を装備していた従来の場合と比較すると、位置決め孔13aの周辺部が外側に突出しない。
【0049】
そのため、保管時や運搬時等に位置決め孔13aの周辺部が周囲の器物との干渉で変形することを防止することができる。従って、取付作業時間の遅延を招く変形等が位置決め孔13aの周辺部に発生することを抑止して、取付作業時間の短縮を図ることができる。
【0050】
また、以上に説明した第1実施形態のフラット回路体の取付方法では、筐体20上の樹脂製位置決めピン23とフラット回路体10上の位置決め孔13aとは、フラット回路体10の幅方向に並んで複数(実施形態では2個)装備されていて、互いに嵌合させることで、フラット回路体10を構成している複数本の導体11のそれぞれに対して、フラット回路体10の幅方向及び長さ方向の移動を規制する構成であり、例えば、フラット回路体10の幅方向に並ぶ樹脂製位置決めピン23や位置決め孔13aの数量を3個以上の適宜数に増やすことで、フラット回路体10を構成する複数本の導体11のそれぞれに対して移動を規制する効力を更に高めることができる。
【0051】
そのため、フラット回路体10の各導体11が圧接接続されるような場合に、各導体11の圧接接続部にフラット回路体10に作用する張力が作用することを防止して、圧接刃の変形や導体11の断線等の不都合が発生することを防止することができる。
【0052】
また、以上に説明した第1実施形態のフラット回路体の取付方法では、位置決め孔13aが形成される孔加工用被覆部12aは、隣接する導体11間よりも広い幅W3に設定されているため、フラット回路体10に装備される導体11相互間の配列ピッチが狭い場合でも、フラット回路体10の固定のために筐体20に装備される樹脂製位置決めピン23は、隣接する導体11間の絶縁被覆材12の幅W2よりも大きな径に設定して、樹脂製位置決めピン23に十分な強度を確保することができる。
【0053】
従って、強度の高い太径の樹脂製位置決めピン23を設定して、フラット回路体10の固定強度を向上させることができる。
【0054】
[第2実施形態]
図2〜図4は本発明に係るフラット回路体の取付方法の第2実施形態の説明図で、図2は第2実施形態における筐体とフラット回路体の取り付け前の状態を示す斜視図、図3は図2に示した筐体における要部の拡大図、図4は図2に示した筐体とフラット回路体の取り付け完了状態の斜視図である。
【0055】
この第2実施形態のフラット回路体の取付方法は、フラット回路体10Aの端部を、筐体としてのコネクタ20Aに位置決め固定するものである。
【0056】
フラット回路体10Aは、図2に示すように、電線導体となる複数本の導体11と、これらの複数本の導体11相互を互いに絶縁状態に覆うシート状の絶縁被覆材12と、この絶縁被覆材12上に形成された端部取付部13Aと、を備える。
【0057】
複数本の導体11は、互いに平行に、平面状に並んでいる。
絶縁被覆材12は、絶縁性フィルムで、複数本の導体11相互を所定の離間間隔で平面状(シート状)に保持している。
【0058】
端部取付部13Aは、フラット回路体10Aの端部をコネクタ20Aに取り付けるために、フラット回路体10Aの端部に備えられた取付部である。
【0059】
本実施形態の端部取付部13Aは、フラット回路体10Aの幅寸法W1内で、絶縁被覆材12上に複数の位置決め孔13aを貫通形成した構成である。位置決め孔13aは、フラット回路体10を筐体20に位置決め・固定するための取付孔である。端部取付部13Aでは、12個の位置決め孔13aを、備えている。12個の位置決め孔13aは、フラット回路体10Aの長さ方向に位置をずらした2列L1,L2に、6個ずつ配置されている。各列L1,L2は、フラット回路体10Aの幅方向に沿って延びる列である。
【0060】
本実施形態の場合、それぞれの位置決め孔13aは、角孔で、隣接する導体11間の絶縁被覆材12上に貫通形成されている。
【0061】
フラット回路体10Aの端部が固定される筐体としてのコネクタ20Aは、図2に示すように、フラット回路体10Aの端部の導体11を圧接する複数の圧接刃24と、フラット回路体10Aの端部を位置決めする回路体位置決め部25と、を備えている。
【0062】
複数の圧接刃24は、フラット回路体10の幅方向に並んで、配置されている。各圧接刃24は、フラット回路体10における複数の導体11の配列ピッチに対応して、配置されている。各圧接刃24は、図3に示すように、導体11を挟持する一対の刃24aを有していて、フラット回路体10Aの端部を押圧すると、一対の刃24aが導体11に隣接する絶縁被覆材12を貫通して、絶縁被覆材12内の導体11を挟持して、導体11に導通接続する。
【0063】
回路体位置決め部25は、端部取付部13Aが面接触状態に載置される回路体載置面25a上に、複数個の樹脂製位置決めピン25bを突設した構成である。樹脂製位置決めピン25bは、端部取付部13Aの複数個の位置決め孔13aに嵌合する角柱状の突起である。
【0064】
回路体載置面25aは、圧接刃24に接近した位置に設けられている。従って、複数個の樹脂製位置決めピン25bは、圧接刃24に接近した位置に配置された構成になっている。
【0065】
本実施形態の場合、複数個の樹脂製位置決めピン25bは、フラット回路体10A上の複数の位置決め孔13aの配列に対応して、フラット回路体10Aの長さ方向に位置をずらした2列に装備されている。
【0066】
第2実施形態のフラット回路体の取付方法では、図4に示すように、フラット回路体10Aの端部取付部13Aをコネクタ20Aの回路体載置面25aに載置して、端部取付部13Aにおける複数個の位置決め孔13aと回路体位置決め部25における複数個の樹脂製位置決めピン25bとを嵌合させると、フラット回路体10Aの端部がコネクタ20Aに位置決め固定される。
【0067】
フラット回路体10Aの端部がコネクタ20Aに位置決め固定された状態では、複数の圧接刃24がフラット回路体10Aの絶縁被覆材12を貫通して、フラット回路体10A内の各導体11と圧接刃24とが導通接続した圧接接続状態が得られる。
【0068】
以上に説明した第2実施形態のフラット回路体の取付方法の場合も、コネクタ20Aへの取り付けのためにフラット回路体10Aに設けられる位置決め孔13aは、フラット回路体10Aにおいて導体11を被覆している絶縁被覆材12に直接形成されている。そのため、位置決め孔13aの装備のために、別部材のシート状素材等をフラット回路体10Aに接着する必要がない。従って、フラット回路体10Aの製造時に別部品の接着工程が必要なく、フラット回路体10Aの生産性を向上させることができる。
【0069】
また、コネクタ20Aへの取り付けのためにフラット回路体10Aに設けられる位置決め孔13aは、フラット回路体10Aの絶縁被覆材12上に形成されるため、フラット回路体10Aの幅内に位置決め孔13aを配置することができ、両端が回路体の両外側に突出するシート状素材に位置決め孔13aを装備していた従来の場合と比較すると、位置決め孔13aの周辺部が外側に突出しない。そのため、保管時や運搬時等に位置決め孔13aの周辺部が周囲の器物との干渉で変形することを防止することができる。従って、取付作業時間の遅延を招く変形等が位置決め孔13a周辺部に発生することを抑止して、取付作業時間の短縮を図ることができる。
【0070】
また、以上に説明した第2実施形態のフラット回路体の取付方法によれば、コネクタ20A上の複数個の樹脂製位置決めピン25bとフラット回路体10A上の複数個の位置決め孔13aとは、フラット回路体10Aの幅方向に並んで複数装備されていて、互いに嵌合させることで、フラット回路体10Aを構成している複数本の導体11のそれぞれに対して、フラット回路体10Aの幅方向及び長さ方向の移動を規制する構成であり、図示例のようにフラット回路体10Aの幅方向に並ぶ樹脂製位置決めピン25bや位置決め孔13aの数量を第1実施形態よりも増やしたことで、フラット回路体10Aを構成する複数本の導体11のそれぞれに対して高精度に移動を規制することができる。
【0071】
そのため、フラット回路体10Aの各導体11が圧接接続される状況において、各導体11の圧接接続部にフラット回路体10Aに作用する張力が作用することを防止して、圧接刃24の変形や導体11の断線等の不都合が発生することを防止することができる。
【0072】
また、以上に説明した第2実施形態のフラット回路体の取付方法によれば、コネクタ20Aの圧接刃24にフラット回路体10Aの各導体11を圧接させた状態では、圧接刃24に接近した位置で、フラット回路体10Aの位置決め孔13aとコネクタ側の樹脂製位置決めピン25bとが嵌合していて、コネクタ20Aに圧接された各導体11のそれぞれに対して、フラット回路体10Aの幅方向及び長さ方向の移動が規制される。
【0073】
そのため、フラット回路体10Aに張力が作用しても、フラット回路体10Aに作用した張力が各導体11の圧接接続部にかかることがない。従って、圧接刃24の変形や、フラット回路体10Aの導体11の断線等の不都合が発生することを防止することができる。
【0074】
また、以上に説明した第2実施形態のフラット回路体の取付方法によれば、フラット回路体10Aに装備される位置決め孔13aやコネクタ20Aであるコネクタに装備される樹脂製位置決めピン25bが、フラット回路体10Aの長さ方向に位置をずらした2列に装備されているため、位置決め孔13aや樹脂製位置決めピン25bの装備が1列の場合と比較すること、フラット回路体10Aに対する固定強度、各導体11に対する位置決め強度が倍増する。従って、圧接刃24の変形を防止したり、フラット回路体10Aの導体11の断線等を防止したりする効果が更に高められる。
【0075】
なお、本発明のフラット回路体の取付方法は、前述した各実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形、改良等が可能である。
【0076】
例えば、フラット回路体の絶縁被覆材上に配列する位置決め孔の数量や、配列の列数等は、上記実施形態に限定しない。
【符号の説明】
【0077】
10,10A フラット回路体
11 導体
12 絶縁被覆材
12a 孔加工用被覆部
13 取付部
13a 位置決め孔(取付孔)
20 筐体
20A コネクタ(筐体)
22 回路体載置部
23,25b 樹脂製位置決めピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁被覆材で被覆された複数の電線が平面状に結合した構造を成すフラット回路体を、樹脂製の筐体に固定するフラット回路体の取付方法であって、
前記フラット回路体は、電線導体となる複数本の導体と、これらの複数本の導体相互を所定の離間間隔で平面状に保持するシート状の前記絶縁被覆材と、前記フラット回路体の幅寸法内で前記フラット回路体の幅方向に並んで前記絶縁被覆材上に複数個の位置決め孔を貫通形成した取付部と、を備え、
前記筐体は、前記取付部が面接触状態に載置される回路体載置部と、前記回路体載置部に載置された前記取付部の複数個の各位置決め孔に嵌合する複数個の樹脂製位置決めピンとを備え、
前記筐体上の複数個の前記樹脂製位置決めピンを前記フラット回路体上の複数個の前記位置決め孔に嵌合させることで、前記フラット回路体を構成している複数本の前記導体のそれぞれに対して、前記フラット回路体の幅方向及び長さ方向の移動を規制することを特徴とするフラット回路体の取付方法。
【請求項2】
前記絶縁被覆材は、隣接する導体間よりも広い幅で、前記導体の長さ方向に延在する孔加工用被覆部を複数条備え、孔加工用被覆部に前記位置決め孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフラット回路体の取付方法。
【請求項3】
前記フラット回路体は、端部付近に前記取付部としての端部取付部が設けられ、
前記フラット回路体の端部が固定される前記筐体としてのコネクタは、前記フラット回路体の端部の導体を圧接する圧接刃と、前記端部取付部の複数個の位置決め孔に嵌合する複数個の樹脂製位置決めピンを前記圧接刃に接近した位置に配置した回路体位置決め部と、を備え、
前記端部取付部における複数個の前記位置決め孔と前記回路体位置決め部における複数個の前記樹脂製位置決めピンとの嵌合によって、前記フラット回路体の端部が前記コネクタに位置決め固定されることを特徴とする請求項1に記載のフラット回路体の取付方法。
【請求項4】
前記端部取付部に装備される前記位置決め孔と、前記回路体位置決め部に装備される前記樹脂製位置決めピンとを、前記フラット回路体の長さ方向に位置をずらした複数列に装備して、前記フラット回路体の端部が前記コネクタに位置決め固定されることを特徴とする請求項3に記載のフラット回路体の取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−13252(P2013−13252A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144500(P2011−144500)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】