説明

フラビウィルス感染の処置のためのオリゴヌクレオチドアナログおよび方法

【課題】フラビウィルスに感染した宿主を処置するための治療化合物および治療法を提供。
【解決手段】動物細胞内でのフラビウィルスの複製の阻害の方法、および、その方法における使用のためのオリゴヌクレオチド化合物。そのオリゴヌクレオチドアナログは、(i)ヌクレアーゼ抵抗性の骨格を有し、(ii)細胞に取り込まれ得、(iii)8〜40個の間のヌクレオチド塩基を含み、そして、(iv)特定の配列の少なくとも一部分を含む上記ウィルスの正鎖RNAゲノムの領域に相補的な、少なくとも8塩基の配列を有する。フラビウィルスに感染した細胞を、上記のアナログに曝すことは、その細胞内での、ウィルスのssRNAおよび上記のオリゴヌクレオチドから構成されるヘテロ二重鎖の形成に有効であり、そのヘテロ二重鎖は少なくとも45℃で解離するTmによって特徴付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、動物内でのフラビウィルスの感染の処置における使用のためのオリゴヌクレ
オチドアナログ、そのアナログを利用する抗ウィルス方法、ウィルスゲノムの標的部位へ
の、そのアナログの結合をモニターする方法に関連する。
【0002】
(参考文献)
以下の参考文献は、背景、または、本発明において用いられ得る方法およびプロトコー
ルに関連する。
【0003】
【表1】

【0004】
【表2】

【0005】
【表3】

【0006】
【表4】

【背景技術】
【0007】
(発明の背景)
フラビウィルス科は、ゲノムサイズが9〜15kbの、単一正鎖RNAウィルスの一群
である。これらは、約40〜50nmのエンベロープに包まれたウィルスである。フラビ
ウィルス科の中には、プロトタイプの黄熱病ウィルス(YFV)、4種の血清型のデング
熱ウィルス(DEN−1、DEN−2、DEN−3、およびDEN−4)、日本脳炎ウィ
ルス(JEV)、マレーバレー脳炎ウィルス(MVEV)、クンジンウィルス(KUN)
、セントルイス脳炎ウィルス(SLEV)、西ナイルウィルス(WNV)、ダニ媒介性脳
炎ウィルス(TBEV)、および約70種の、他の病原ウィルスを含むフラビウィルス属
がある。
【0008】
ほとんどのフラビウィルスの感染は、患者の体力を保たせるのに有効な処方(例えば、
発熱を低く保つための解熱剤、体液、2次細菌感染に対する抗生物質、必要ならば呼吸の
補助など)によって処置される。リバビリンの使用は、多くのRNAウィルスに対して顕
著な抗ウィルス性の化学療法活性を有し、そして、インフルエンザウィルス、RSウィル
ス、ラッサ熱ウィルス、およびハンタウィルスの感染に対する処置において有効であると
証明されている。様々なインターフェロン薬とリバビリンの併用は、C型肝炎ウィルスの
感染を処置するために用いられる。しかし、フラビウィルス(例えば、デング熱および黄
熱病)に対するリバビリンのインビトロおよびインビボでの活性は、極めて弱い(Ley
ssen,De Clercqら 2000)。
【0009】
40年間の研究努力にもかかわらず、ほとんどのフラビウィルス(例えばデング熱)に
対する、安全で、かつ効果的なワクチンは、まだ利用可能ではない。黄熱病ウィルスおよ
び日本脳炎ウィルスに対する効果的なワクチンは存在するが、これらのウィルスは、未だ
なお、世界的に重大な疾患の原因である。効果的なデング熱ワクチンを開発するための努
力は、そのウィルスの疫学によって複雑にされる。任意の所与のデング熱の血清型に対す
る免疫は、その特定の血清型に対する一生の免疫を誘導するが、異なる血清型による二次
感染がデング出血熱およびデング熱ショック症候群(DHF/DSS)を誘導し得、それ
らは、20%をこえる死亡率と関連した、デング熱感染の重大な形態である(Mongk
olsapaya、Dejnirattisaiら 2003)。
【0010】
フラビウィルスの感染に関連する疾患の重大性、ならびに、動物および特にヒトにおけ
る、その広範性を鑑みると、フラビウィルスに感染した宿主を処置するための治療化合物
および治療法の必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、ある局面において、動物細胞におけるフラビウィルスの複製を阻害する方法
を含み、この動物細胞は哺乳動物細胞および鳥類の細胞を含む。上記の方法を実行する中
で、細胞は、(i)ヌクレアーゼ抵抗性の骨格を有し、(ii)その細胞に取り込まれ得
、(iii)8〜40ヌクレオチドの間の塩基を含み、(iv)配列番号1−4として識
別される配列の1つの少なくとも一部分を含む、そのウィルスの正鎖RNAゲノムの領域
に相補的な、少なくとも8塩基の配列を有し、配列番号1−4は、それぞれの配列が、フ
ラビウィルスの2つの大クラスの内の1つにおける、ウィルスゲノムの5’末端環化配列
または3’末端環化配列を表す、オリゴヌクレオチドアナログに曝される。好ましい実施
形態において、上記のオリゴヌクレオチドアナログは、ウィルスゲノムの正鎖における3
’末端環化配列(配列番号3または4)の少なくとも一部分と相補的な配列を有する。上
記の化合物への曝露は、その細胞内において、上記のウィルスのssRNAおよび上記の
オリゴヌクレオチドから構成されるヘテロ二重鎖構造の形成に効果的であり、このヘテロ
二重鎖構造は、少なくとも45℃で解離するTmで特徴付けられ、そして、そのウィルス
の5’末端環化配列と3’末端環化配列との間に崩壊した塩基対合を有する。このことは
、細胞内でのウィルスの複製の阻害により証明される。
【0012】
ある実施形態において、上記のアナログは、配列番号1−4の配列の内の1つの全て、
または一部分に相補的である。別の実施形態において、上記のアナログは、ウィルス配列
とヘテロ二重鎖構造を形成し得る配列を含み、このウィルス配列は、そのゲノムの5’末
端環化配列の一部分、およびそのゲノムの3’末端環化配列の相補的な部分を含む。
【0013】
セントルイス脳炎ウィルス、マレーバレー脳炎ウィルス、西ナイルウィルス、クンジン
ウィルス、日本脳炎ウィルス、黄熱病ウィルス、デング熱ウィルス−1型、2型、3型、
および4型、または西ナイルウィルスのいずれかの複製を阻害する使用のために、上記の
細胞が曝される上記のオリゴヌクレオチドアナログは、配列番号1または3の、そして好
ましくは配列番号3の、少なくとも一部分を含む、上記ウィルスの正鎖RNAゲノムの領
域に相補的な少なくとも8塩基の配列を有する。別の実施形態において、上記のオリゴヌ
クレオチドアナログは、配列番号1として識別される、上記のゲノム5’末端環化配列の
一部、および、配列番号3として識別される、上記のゲノムの3’末端環化配列の相補的
な部分を含む配列と、ヘテロ二重鎖構造を形成し得る配列を含む。
【0014】
ダニ媒介性脳炎ウィルス、ポワッサンウィルス、跳躍病ウィルス、キャサヌール森林病
ウィルス、およびアルカーマウィルス(Alkhurma virus)のいずれかの複
製を阻害する使用のために、上記の細胞が曝される上記のオリゴヌクレオチドアナログは
、配列番号2または4の、そして好ましくは配列番号4の、少なくとも一部分を含む、上
記のウィルスの正鎖RNAゲノムの領域に相補的な少なくとも8塩基の配列を有する。別
の実施形態において、上記のオリゴヌクレオチドアナログは、配列番号2として識別され
る上記のゲノムの5’末端環化配列の一部分、および、配列番号4として識別される上記
のゲノムの3’末端環化配列の相補的な部分を含む配列と、ヘテロ二重鎖構造を形成し得
る配列を含む。
【0015】
好ましいオリゴヌクレオチドアナログは、電荷を持たない、または実質的に電荷を持た
ない骨格(例えば、図2A−2Gに示される構造の内の1つ)を有し、そして好ましくは
、実質的に電荷を持たない、リン含有骨格(例えば、図3A−3Dに示される構造)に連
結された、8〜25個のモルホリノサブユニットから構成される。1つの好ましいアナロ
グは、図3Bに示される構造であり、ここでXはNRであり、この中でRは水素または
CHであり、ぞしてYおよびZはそれぞれ酸素である。
【0016】
ヒト被験体を含む、動物被験体におけるフラビウィルスの処置のためには、その感染し
た細胞は、感染した被験体への、非経口的な投与、または経口的な投与によって、上記の
オリゴヌクレオチドアナログに曝され得る。その方法はさらに、上記のオリゴヌクレオチ
ドアナログおよび上記のウィルスのゲノムの相補的な部分から構成されるヘテロ二重鎖の
出現について、体液をモニターする工程を含む。
【0017】
別の局面において、本発明は、動物細胞内でのフラビウィルスの複製の阻害における使
用のためのオリゴヌクレオチドアナログを含む。上記のアナログは、(i)ヌクレアーゼ
抵抗性の骨格、(ii)動物細胞により取り込まれ得、(iii)8〜40個の間のヌク
レオチド塩基を含み、(iv)フラビウィルスの正鎖RNAゲノムの領域に相補的な少な
くとも8塩基の配列を含み、ここで、上記のフラビウィルスの正鎖RNAゲノムは、配列
番号1−4として識別されるウィルスゲノムの内の1つの少なくとも一部分を含み、この
配列番号1−4はそれぞれの配列が、フラビウィルスの2つの大クラスの内の1つにおけ
る、そのゲノムの5’末端環化配列または3’末端環化配列を表し、そして(v)フラビ
ウィルスのssRNAゲノムとヘテロ二重鎖構造を形成し得て、そのヘテロ二重鎖構造は
、少なくとも45℃で解離するTm、およびそのウィルスの5’末端環化配列および3’
末端環化配列の間に崩壊した塩基対合を有することで特徴付けられることによって、特徴
付けられる。このことは、上記の細胞内でのウィルスの複製の阻害によって証明される。
上記のアナログは様々な実施形態を有し、それは、抗ウィルス性の治療法における上記ア
ナログの使用に関して、上記に記載されたものを含む。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
動物細胞内においてフラビウィルスの複製を阻害する方法であって、
(a)オリゴヌクレオチドアナログであって、(i)ヌクレアーゼ抵抗性の骨格を有し
、(ii)該細胞に取り込まれ得、(iii)8〜40個の間のヌクレオチド塩基を含み
、そして(iv)該ウィルスの正鎖RNAゲノムの領域に相補的な、少なくとも8塩基の
配列を有し、該ウィルスの正鎖RNAゲノムは、配列番号1−4からなる群から選択され
る該ゲノムの5’末端環化配列または3’末端環化配列の少なくとも一部分を含む、オリ
ゴヌクレオチドアナログに該細胞を曝す工程、および
(b)該曝す工程によって、該細胞内において、該ウィルスのssRNAおよび該オリ
ゴヌクレオチドから構成されるヘテロ二重鎖構造を形成する工程であって、該へテロ二重
鎖構造は少なくとも45℃で解離するTmによって特徴付けられ、そして、該ウィルスの
5’末端環化配列および3’末端環化配列の間に崩壊した塩基対合を有する、工程
を含む方法。
(項目2)
前記細胞が曝される前記オリゴヌクレオチドアナログが、配列番号3および4からなる群
より選択される、前記ゲノムの3’末端環化配列の少なくとも一部分に相補的な配列を含
む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記細胞が曝される前記オリゴヌクレオチドアナログが、それぞれ、配列番号1および2
からなる群より選択される前記ゲノムの5’末端環化配列の一部分、および配列番号3お
よび4からなる群より選択される該ゲノムの3’末端環化配列の相補的な部分を含むウィ
ルスの配列と、ヘテロ二重鎖構造を形成し得る配列を含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
セントルイス脳炎ウィルス、マレーバレー脳炎ウィルス、西ナイルウィルス、クンジンウ
ィルス、日本脳炎ウィルス、黄熱病ウィルス、デング熱ウィルス−1型、2型、3型、お
よび4型、西ナイルウィルスのいずれかの複製を阻害するための項目1に記載の方法で
あって、ここで、前記細胞が曝される前記オリゴヌクレオチドアナログが、該ウィルスの
正鎖RNAゲノムの領域に相補的な少なくとも8塩基の配列を有し、該ウィルスの正鎖R
NAゲノムは、それぞれ配列番号1および3からなる群から選択される該ゲノムの5’末
端環化配列または3’末端環化配列の少なくとも一部分を含む、方法。
(項目5)
前記細胞が曝される前記オリゴヌクレオチドアナログが、配列番号3に相補的な配列を含
む、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記細胞が曝される前記オリゴヌクレオチドアナログが、配列番号1として識別される前
記ゲノムの5’末端環化配列の一部、および配列番号3として識別される該ゲノムの3’
末端環化配列の相補的な部分を含む配列と、ヘテロ二重鎖構造を形成し得る配列を含む、
項目4に記載の方法。
(項目7)
ダニ媒介性脳炎ウィルス、ポワッサンウィルス、跳躍病ウィルス、キャサヌール森林病ウ
ィルス、およびアルカーマウィルス(Alkhurma virus)のいずれかの複製
を阻害するための項目1に記載の方法であって、ここで、前記細胞が曝される前記オリ
ゴヌクレオチドアナログが、該ウィルスの正鎖RNAゲノムの領域に相補的な少なくとも
8塩基の配列を有し、該ウィルスの正鎖RNAゲノムは、それぞれ、配列番号2および4
からなる群から選択される該ゲノムの5’末端環化配列または3’末端環化配列の少なく
とも一部分を含む、方法。
(項目8)
前記細胞が曝される前記オリゴヌクレオチドアナログが、配列番号4に相補的な配列を含
む、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記細胞が曝される前記オリゴヌクレオチドアナログが、配列番号2として識別される前
記ゲノムの5’末端環化配列の一部、および配列番号4として識別される該ゲノムの3’
末端環化配列を含む配列と、ヘテロ二重鎖構造を形成し得る配列を含む、項目7に記載
の方法。
(項目10)
前記細胞に曝される前記オリゴヌクレオチドアナログが、実質的に電荷を持たない、リン
含有骨格に連結された、8〜25個のモルホリノサブユニットから構成される、項目1
に記載の方法。
(項目11)
前記細胞が曝される前記オリゴヌクレオチドアナログが、モルホリノサブユニットおよび
、1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’末端の環外炭素
に結合する、リン含有サブユニット間結合から構成される、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記細胞が曝される前記アナログの前記モルホリノサブユニットが、ホスホロジアミデー
ト連結によって結合され、該ホスホロジアミデート連結は下記の構造に従っており:
【化1】


ここで、Yは酸素、Zは酸素、Pjはプリンまたはピリミジン塩基対合部分であって
、塩基特異的水素結合によるポリヌクレオチド内の塩基への結合が効果的な部分、および
、Xはアルキル、アルコキシ、チオアルコキシ、アミノ、またはジアルキルアミノを含む
アルキルアミノである、項目11に記載の方法。
(項目13)
ヒト被験体内でのフラビウィルスの感染を処置するための項目12に記載の方法であっ
て、ここで、前記曝す工程が、前記オリゴヌクレオチドアナログを該被験体に経口的に投
与する工程を含む、方法。
(項目14)
ヒト被験体内でのフラビウィルスの感染を処置するための項目12に記載の方法であっ
て、ここで、前記曝す工程が、前記オリゴヌクレオチドアナログを該被験体に投与する工
程を含み、そしてさらに、該オリゴヌクレオチドアナログおよび前記ウィルスのゲノムの
相補的な部分から構成されるヘテロ二重鎖の出現について、体液をモニターする工程を含
む、方法。
(項目15)
哺乳動物被験体内での西ナイルウィルスを処置するための項目1に記載の方法であって
、ここで、前記細胞が曝される前記オリゴヌクレオチドアナログが、配列番号26として
識別される配列を含む、方法。
(項目16)
哺乳動物被験体内でのデング熱ウィルス1−4型を処置するための項目1に記載の方法
であって、ここで、前記細胞が曝される前記オリゴヌクレオチドアナログが、配列番号2
4として識別される配列および配列番号27として識別される配列のどちらかを含む、方
法。
(項目17)
動物細胞内でのフラビウィルスの複製の阻害における使用のためのオリゴヌクレオチドア
ナログであって、以下:
(i)ヌクレアーゼ抵抗性の骨格、
(ii)ウィルスに感染された動物細胞に取り込まれ得ること、
(iii)8〜40個の間のヌクレオチド塩基を含むこと、
(iv)該フラビウィルスの正鎖RNAゲノムの領域に相補的な少なくとも8塩基の配
列を含み、該フラビウィルスの正鎖RNAゲノムは、配列番号1−4からなる群から選択
された、該ゲノムの5’末端環化配列または3’末端環化配列の少なくとも一部分を含み
、そして
(v)該フラビウィルスのssRNAゲノムと、少なくとも45℃で解離するTmで特
徴付けられるヘテロ二重鎖構造を形成し得て、そして該ウィルスの5’末端環化配列およ
び3’末端環化配列の間に崩壊した塩基対合を有すること
により特徴付けられる、オリゴヌクレオチドアナログ。
(項目18)
配列番号3および4からなる群から選択された、前記ウィルスゲノムの3’末端環化配列
の少なくとも一部分に相補的な配列を含む、項目17に記載のアナログ。
(項目19)
ぞれぞれ、配列番号1および2からなる群より選択された、前記ゲノムの5’末端環化配
列の一部分、ならびに、配列番号3および4からなる群より選択された、該ゲノムの3’
末端環化配列の相補的な部分を含むウィルス配列と、ヘテロ二重鎖構造を形成し得る配列
を含む、項目17に記載のアナログ。
(項目20)
セントルイス脳炎ウィルス、マレーバレー脳炎ウィルス、西ナイルウィルス、クンジンウ
ィルス、日本脳炎ウィルス、黄熱病ウィルス、デング熱ウィルス−1型、2型、3型、お
よび4型、西ナイルウィルスのいずれかの複製を阻害するための項目17に記載のアナ
ログであって、該ウィルスの正鎖RNAゲノムの領域と相補的な少なくとも8塩基の配列
を有し、該ウィルスの正鎖RNAゲノムは、それぞれ、配列番号1および3からなる群か
ら選択された、該ゲノムの5’末端環化配列または3’末端環化配列の少なくとも一部分
を含む、アナログ。
(項目21)
配列番号3に相補的な配列を含む、項目20に記載のアナログ。
(項目22)
配列番号1として識別される前記ゲノムの5’末端環化配列の一部分、および配列番号3
として識別される該ゲノムの3’末端環化配列の相補的な部分を含む配列と、ヘテロ二重
鎖構造を形成し得る、項目20に記載のアナログ。
(項目23)
ダニ媒介性脳炎ウィルス、ポワッサンウィルス、跳躍病ウィルス、キャサヌール森林病ウ
ィルス、およびアルカーマウィルスのいずれかの複製を阻害するための項目17に記載
のアナログであって、該ウィルスの正鎖RNAゲノムの領域に相補的な少なくとも8塩基
の配列を含み、該ウィルスの正鎖RNAゲノムは、それぞれ、配列番号2および4からな
る群から選択される、該ゲノムの5’末端環化配列または3’末端環化配列の少なくとも
一部分を含む、アナログ。
(項目24)
配列番号4の少なくとも一部分と相補的な配列を含む、項目23に記載のアナログ。
(項目25)
配列番号2として識別される前記ゲノムの5’末端環化配列の一部分、および配列番号4
として識別される該ゲノムの3’末端環化配列の相補的な部分を含む配列と、ヘテロ二重
鎖構造を形成し得る配列を含む、項目23に記載のアナログ。
(項目26)
モルホリノサブユニット、および、1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサ
ブユニットの5’末端の環外炭素に結合する、リン含有サブユニット間連結から構成され
る、項目17に記載のアナログ。
(項目27)
前記モルホリノサブユニットがホスホロジアミデート連結によって結合され、該ホスホロ
ジアミデート連結は下記の構造に従っており:
【化2】


ここで、Yは酸素、Zは酸素、Pjはプリンまたはピリミジン塩基対合部分であって
、塩基特異的水素結合によるポリヌクレオチド内の塩基への結合が効果的な部分、および
、Xはアルキル、アルコキシ、チオアルコキシ、アミノ、またはジアルキルアミノを含む
アルキルアミノである、項目17に記載のアナログ。
(項目28)
西ナイルウィルスを処置するための項目17に記載のアナログであって、ここで、前記
細胞が曝される該オリゴヌクレオチドアナログが、配列番号26として識別される配列を
含む、アナログ。
(項目29)
デング熱ウィルス1−4型の処置における使用のための項目17に記載のアナログであ
って、前細胞が曝される該オリゴヌクレオチドアナログが、配列番号24および配列番号
27として識別される配列のどちらかを含む、アナログ。
以下の、発明の詳細な説明を、添付の図と併せて読んだ場合、本発明の、これらの、お
よびその他の目的および特徴が、より完全に明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、フラビウィルスゲノムの5’末端部分および3’末端部分を、示される二次構造、ならびに、図の上端にあるボックスで指し示される5’末端環化配列および3’末端環化配列と共に示す。
【図2】図2A−2Gは、電荷を持たない骨格を有する、様々なオリゴヌクレオチドアナログの骨格構造を示す。
【図3】図3A−3Dは、3A−3Dに示された、模範的なモルホリノオリゴヌクレオチドの、反復サブユニットセグメントを示す。
【図4】図4Aおよび図4Bは、TBEVアンチセンス(図4A)および混合配列のアンチセンス(図4B)の濃度の増加に対する、TBEVおよびWNVの反応をプロットしたものである。
【図5−1】図5A−5Dは、DENアンチセンス(配列番号27)に対する、4種のデング熱ウィルスの血清型の反応をプロットしたものである。
【図5−2】図5A−5Dは、DENアンチセンス(配列番号27)に対する、4種のデング熱ウィルスの血清型の反応をプロットしたものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(発明の詳細な説明)
(I.定義)
別に示さない限り、本明細書にて用いられる下記の用語は、以下の意味を有する。
【0020】
用語「オリゴヌクレオチドアナログ」は、(i)改変された骨格構造(例えば、天然の
オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドにおいて見出される、標準のホスホジエステ
ル連結以外の骨格)、ならびに(ii)随意的には、改変された糖部分(例えば、リボー
ス部分またはデオキシリボース部分以外のモルホリノ部分)を有するオリゴヌクレオチド
を言及する。上記のアナログは、標準のポリヌクレオチド塩基と、ワトソン−クリック塩
基対合によって水素結合し得る塩基を支え、ここで上記のアナログの骨格は、配列特異的
な方法における、上記のオリゴヌクレオチドアナログ分子と標準のポリヌクレオチド(例
えば、一本鎖RNAまたは一本鎖DNA)内の塩基との間の、このような水素結合を可能
にする方法で、上記の塩基を提示する。好ましいアナログは、実質的に電荷を持たないリ
ン含有骨格を有するものである。
【0021】
オリゴヌクレオチドアナログ内の、実質的に電荷を持たないリン含有骨格は、そのサブ
ユニット連結の大多数(例えば、60〜100%の間)が、生理学的なpHにおいて電荷
を持たず、そして、単一のリン原子を含むものである。上記のアナログは8〜40の間の
サブユニットを含み、代表的には約8〜25サブユニットを含み、そして好ましくは約1
2〜25サブユニットを含む。上記のアナログは、下記に定義するように、標的配列への
正確な配列相補性、または近い相補性を有し得る。
【0022】
オリゴヌクレオチドアナログの「サブユニット」は、上記のアナログの1つのヌクレオ
チド(またはヌクレオチドアナログ)ユニットを言及する。「電荷を持つサブユニット」
に言及する場合には、その電荷は代表的にはサブユニット間連結(例えば、ホスフェート
連結またはホスホロチオエート連結)内に存在するが、上記の用語は、接続されたサブユ
ニット間連結を有する、または有しない、ヌクレオチドユニットを言及し得る。
【0023】
「モルホリノオリゴヌクレオチドアナログ」は、図3A−3Dに示される形態のモルホ
リノサブユニット構造から構成されるオリゴヌクレオチドアナログであり、ここで、(i
)これらの構造は、1〜3原子の長さで、1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接
するサブユニットの5’末端の環外炭素に結合する、リン含有連結によって互いに連結さ
れ、(ii)PおよびPは、塩基特異的な水素結合による、ポリヌクレオチド内の塩
基への結合に効果的な、プリン塩基対合部分またはピリミジン塩基対合部分である。上記
のプリン塩基対合部分またはピリミジン塩基対合部分は、代表的にはアデニン、シトシン
、グアニン、ウラシル、またはチミンである。モルホリノオリゴマーの合成、構造、およ
び結合特性は、米国特許第5,698,685号、同第5,217,866号、同第5,
142,047号、同第5,034,506号、同第5,166,315号、同第5,5
21,063号、および同第5,506,337号に詳述され、これらは全て、本明細書
内に参考として援用される。
【0024】
図3Bに示される上記サブユニットおよび連結は6原子の反復ユニット骨格として、図
3B(上記の6原子は:モルホリノ窒素、連結されたリン原子、そのリン原子を5’末端
環外炭素に連結する原子(通常は酸素)、5’末端環外炭素、そして次のモルホリノ環の
2つの炭素原子を含む)に示されるように、用いられる。これらの構造において、5’末
端環外モルホリノ炭素をリン含有基に連結する原子Yは、硫黄、窒素、炭素、または好
ましくは酸素であり得る。リンから垂れ下がるX部分は、塩基特異的水素結合を妨げない
、任意の安定な基である。好ましいX基としては、フルオロ、アルキル、アルコキシ、チ
オアルコキシ、および、環状アミンを含むアルキルアミノが挙げられ、その全てが、塩基
特異的結合が崩壊しない限りは、多様に置換され得る。アルキル、アルコキシ、およびチ
オアルコキシは、好ましくは、1〜6個の炭素原子を含む。アルキルアミノは、好ましく
は、低級アルキル(C〜C)置換を適用し、そして、環化アミンは、好ましくは、5
〜7員の窒素複素環であって、それは随意的に、酸素、窒素、および硫黄から選択される
1〜2個のさらなるヘテロ原子を含む。Zは硫黄または酸素であり、好ましくは酸素であ
る。
【0025】
好ましいモルホリノオリゴマーは、ホスホロジアミデートが連結したモルホリノオリゴ
マーであり、本明細書ではPMOとよぶ。こうしたオリゴマーは、図3Bにしめされるよ
うなモルホリノサブユニット構造から構成され、ここで、XはNH、NHR、またはN
(ここで、Rは低級アルキルであり、好ましくはメチルである)であり、Yは酸素で
あり、およびZは酸素であり、そして、PおよびPは、塩基特異的水素結合によるポ
リヌクレオチド内の塩基への結合に効果的な、プリン塩基対合部分またはピリミジン塩基
対合部分である。代わりのホスホロジアミデート連結を有する構造もまた好ましく、ここ
で、図3Bにおいて、Xは低級アルコキシ(例えば、メトキシまたはエトキシ)であり、
YはNHまたはNR(ここで、Rは低級アルキルである)であり、そしてZは酸素である

【0026】
用語「置換された」は、特にアルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、またはア
ルキルアミノ基に関して、炭素に結合した水素原子の、ヘテロ原子を含む置換基(例えば
、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、チオール、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミ
ノ、イミノ、オキソ(ケト)、ニトロ、シアノ、あるいは、様々な酸またはエステル(例
えば、カルボキシル、スルホン、またはホスホン))による置換を言及する。それはまた
、ヘテロ原子に結合した水素原子(例えば、アミン水素)の、アルキル、カルボニル、ま
たは他の炭素含有基による置換も言及し得る。
【0027】
本明細書で用いられるように、用語「標的」は、ウィルスのゲノムRNAに関連して、
ウィルスのゲノムRNAを言及し、そして、ウィルスの複製的な鎖である正鎖RNA、あ
るいは、正鎖RNAの複数の新たな複製の生成の中で形成される、逆鎖またはアンチセン
ス鎖のいずれかを含み得る。
【0028】
用語「標的配列」は、上記のオリゴヌクレオチドアナログが配向される標的RNAの一
部分、すなわち、上記のオリゴヌクレオチドアナログがハイブリダイズする配列を言及す
る。標的配列は、配列番号1−4として識別される配列の1つの少なくとも一部分を含み
、これは、さらに下記で論ずるように、フラビウィルスの2つの大クラスの内の1つにお
ける、上記のゲノムの5’末端環化配列または3’末端環化配列を表す。後に見るように
、上記の標的配列は、ウィルスゲノムの連続した領域であってよく、または、上記のゲノ
ムの5’末端環化配列および3’末端環化配列の双方の相補的な配列から構成されてもよ
い。
【0029】
用語「ターゲティング配列」は、上記のRNAゲノム内の標的配列に相補的であるか、
または実質的に相補的な、上記のオリゴヌクレオチドアナログ内の配列である。上記アナ
ログの全体の配列、またはその一部分のみは、標的配列に相補的であってよく、あるいは
アナログの全配列の一部分のみであってよい。例えば、20塩基を有するアナログにおい
て、8〜12塩基のみがターゲティング配列であり得る。代表的には、ターゲティング配
列は、上記のアナログにおける連続した塩基から形成されるが、代わりに、例えば上記ア
ナログの反対側の末端から一緒に置かれた場合に標的配列に及ぶ配列を構成する、非連続
な配列から形成されてもよい。後に見るように、標的配列およびターゲティング配列は、
上記アナログのウィルスゲノムへの結合が、ゲノム内の5’末端環化配列および3’末端
環化配列により形成されるRNAの二次構造の形成を崩壊させるか、または防ぐために働
くように、選択される。
【0030】
標的配列およびターゲティング配列は、逆平行な構成においてハイブリダイゼーション
が起きた場合、互いに「相補的」と記述される。二重鎖ポリヌクレオチドは、もう1つの
ポリヌクレオチドと「相補的」であり得る。ターゲティングは、標的配列に、「ほぼ」ま
たは「実質的に」相補的であり得、本発明の目的のために、なお機能する。好ましくは、
本発明で使用されるオリゴヌクレオチドアナログは、標的配列との不一致を、10ヌクレ
オチドの内多くとも1ヌクレオチドを有し、そして好ましくは、20個の内多くとも1個
の不一致を有する。あるいは、使用されるアンチセンスオリゴマーは、本明細書に示され
る模範的なターゲティング配列と、少なくとも90%の配列相同性を有し、そして好まし
くは、少なくとも95%の配列相同性を有する。
【0031】
オリゴマーが、生理学的条件下、実質的に45℃をこえるTで、好ましくは少なくと
も50℃をこえるTで、そして代表的には60℃〜80℃またはそれ以上のTで、標
的にハイブリダイズした場合、オリゴヌクレオチドアナログは標的ポリヌクレオチドに「
特異的にハイブリダイズする」。こうしたハイブリダイゼーションは、好ましくは、スト
リンジェントなハイブリダイゼーション条件に対応する。所与のイオン強度およびpHに
おいて、Tは、標的配列の50%が相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズする温
度である。また一方、こうしたハイブリダイゼーションは、アンチセンスオリゴマーが標
的配列に「ほぼ」または[実質的に」相補的である場合、正確に相補的である場合と同様
に、起こり得る。
【0032】
「ヌクレアーゼ抵抗性」オリゴマー分子(オリゴマー)は、ハイブリダイズしない形、
またはハイブリダイズした形において、その骨格がヌクレアーゼによる切断に実質的に抵
抗性があるものを言及し;その切断は体内の通常の細胞外ヌクレアーゼおよび細胞内ヌク
レアーゼによるものであって;すなわち、上記のオリゴマーは、オリゴマーが曝される体
内の通常のヌクレアーゼ条件において、ヌクレアーゼによる切断をほとんど、または全く
示さない。
【0033】
「ヘテロ二重鎖」は、オリゴヌクレオチドアナログと、標的RNAの相補的な部分との
二重鎖を言及する。「ヌクレアーゼ抵抗性ヘテロ二重鎖」は、アンチセンスオリゴマーの
、その相補的な標的への結合によって形成されるヘテロ二重鎖を言及し、そのヘテロ二重
鎖は、二重鎖RNA/RNA複合体または二重鎖RNA/DNA複合体を切断し得る、細
胞内ヌクレアーゼおよび細胞外ヌクレアーゼ(例えばRNA分解酵素H)によるインビボ
での分解に実質的に抵抗性を示すようなものである。
【0034】
「標的RNAに関する、塩基特異的な細胞内結合現象」は、オリゴヌクレオチドアナロ
グの、標的RNA配列への細胞内での特異的な結合を言及する。こうした結合の塩基特異
性は、配列に特異的である。例えば、一本鎖ポリヌクレオチドは、配列内で相補的な一本
鎖ポリヌクレオチドに、特異的に結合し得る。
【0035】
感染したssRNAウィルスを対象として「十分な量」のアンチセンスオリゴマーは、
感染したウィルスの複製の速度、および/またはウィルスの負荷、および/またはウィル
ス感染に関連する症状を減少させるために十分に効果的である。
【0036】
本明細書にて用いられるように、用語「体液」は、尿、唾液、血漿、血液、髄液、また
はその他の生物学的な起源を持つサンプル(例えば、皮膚細胞または皮膚細片)を含む、
被験体から得られる様々なサンプル型を包含し、そして、そこに懸濁されている細胞また
は細胞断片、または液体培地およびその溶質を言及し得る。
【0037】
用語「相対量」は、試験測定とコントロール測定との間で比較がなされた場合に用いら
れる。反応中に複合体を形成する試薬の相対量は、コントロール試料と反応する量に比較
して、試験試料と反応する量である。上記のコントロール試料は、同一のアッセイにて別
々に用いられてよく、または、同一のサンプルの一部(例えば、組織切片中で、悪性の部
位を囲む正常な組織)であってもよい。
【0038】
個体または細胞の「処置」は、その個体または細胞の自然経過を変化させる手段として
提供される操作の、任意の型である。処置の例としては、例えば薬学的組成物の投与が挙
げられるが、これに限るものではない。そして、予防的に、あるいは、病的現象の惹起ま
たは病因的因子との接触の後か、いずれかにおいて、行われ得る。特定のウィルスに感染
したと診断された患者に関連して、関連した用語「改良された治療結果」は、ウィルスの
成長、またはウィルスの負荷、または、その特定のウィルスによる感染に関連した検出し
得る症状の遅滞または減少を言及する。
【0039】
ある因子は、受動拡散以外の仕組みによって、細胞膜を越えて哺乳動物細胞に入り得る
場合、「哺乳動物細胞に能動的に取り込まれる」。例えば、その因子は「能動輸送」によ
って輸送されてよく、それは、例えばATP依存性輸送機構による、哺乳動物の細胞膜を
越えた因子の輸送を言及し、あるいは「促進輸送」によって輸送されてもよく、それは、
その因子の輸送タンパク質への結合を必要とし、そして結合した因子の膜を超えた通過を
促進する輸送機構による、細胞膜を超えたアンチセンス因子の輸送を言及する。能動輸送
および促進輸送の双方のためには、上記のオリゴヌクレオチドアナログは、好ましくは、
下記に定義するように、実質的に電荷を持たない骨格を有する。あるいは、上記のアンチ
センス化合物は複合型の形式(例えば、陽イオン性の脂質またはリポゾームと複合された
陰イオン性の骨格を有し、それはエンドサイトーシスの機構によって細胞中に取り込まれ
得る因子)に構築され得る。上記のアナログは、標的宿主細胞への輸送を促進するために
、例えばその5’末端または3’末端にて、アルギニンの豊富なペプチド(例えば、HI
V TATタンパク質)に結合体化され得る。
【0040】
(II.標的フラビウィルス)
本発明は、オリゴマーアナログであって、(i)フラビウィルスRNAの3’−CS領
域(または5’−CS領域)を標的とし、(ii)そのアナログと宿主細胞内のウィルス
RNAとの間で効果的な相互作用をし得るような、物理的特徴および薬物動態学的特徴を
有するオリゴマーアナログに、フラビウィルスに感染した細胞を曝すことによって、フラ
ビウィルスの複製の効果的な阻害が達成され得るという発見に基づく。1つの局面におい
て、そのアナログは、ウィルスに感染した哺乳動物被験体の処置に用いられ得る。
【0041】
本発明は、下記に記述するウィルスを含む、フラビウィルス科のフラビウィルス属のメ
ンバーを対象とする。フラビウィルス属(genes)およびそのメンバーの、様々な物
理的特徴、形態学的特徴、および生物学的特徴が、例えば、Textbook of H
uman Virology,R.Belshe編,第2版,Mosby,1991、ま
たは上記に引用した参考文献の1つ以上に見出され得る。フラビウィルスのメンバーそれ
ぞれの、鍵となる生物学的特徴、病理学的特徴、および疫学的特徴のいくつかは、以下に
概要を述べる。
【0042】
(フラビウィルスの複製)
フラビウィルスは小さな、エンベロープに包まれたウィルスで、短い5’末端非翻訳領
域および3’末端非翻訳領域(NTRs)、単一の長いオープンリーディングフレーム、
5’キャップ、およびポリアデニル化されていない3’終端を含む、長さ約10,500
ヌクレオチドの、一本鎖の正鎖ゲノムRNAを含む。4種全ての血清型のデング熱、黄熱
病ウィルス、日本脳炎ウィルス、西ナイルウィルス、およびダニ媒介性脳炎ウィルスを含
む、多数のフラビウィルスのゲノムの完全なヌクレオチド配列が報告されている。全ての
フラビウィルスタンパク質は、宿主により媒介される正確なプロセッシング事象、および
ウィルスにコードされたプロテアーゼを通して、単一の長いポリタンパク質から引き出さ
れる。単一のオープンリーディングフレームにコードされる10個の遺伝子産物は、順に
、カプシド(C)、プレメンブレン(prM、これは、細胞からのウィルスの放出の直前
に、膜(M)に加工される)、エンベロープ(E)、そして7個の非構造(NS)タンパ
ク質:NS1、NS2a、NS2b、NS3、NS4a、NS4b、およびNS5を構成
するポリタンパク質として翻訳される(Leyssen,De Clercqら 200
0;Brinton 2002)。
【0043】
全ての蚊媒介性フラビウィルスは、保存性のRNA配列およびRNA構造を共有する(
Proutski,Gouldら 1997;Zeng,Falgoutら 1998;
Li,Liら 2002)。フラビウィルスの3’−NTRおよび5’−NTRの、配列
の比較およびRNAの2次構造の予測から、いくつかの短い、良く保存された配列が明ら
かとなっており、3’末端領域(約90塩基)が、保存されたステム−ループ構造内に折
り畳まれ得ていることが示される(Hahn,Hahnら 1987)。保存されたステ
ムループ構造は、多くの正鎖RNAウィルスにおいてウィルスの複製に重要であることが
示された。フラビウィルスの3’末端ステム−ループ構造の1次配列は、フラビウィルス
の間で良く保存されてはいないが、二次構造は良く保存されている。短い保存された配列
(3’−CS、配列番号3)が、保存されたステム−ループ構造の上流に(つまり、5’
末端方向に)確認されている。3’−CSと、ゲノムの5’末端における保存された配列
(5’−CS、配列番号1)との間の相補性は、結果として、長い範囲での分子内のRN
A相互作用、またはゲノムRNAの環化をもたらすことが提唱されている(Hahn,H
ahnら 1987;You,Falgoutら 2001;Corver,Lench
esら 2003)。最近の実験からは、これらの配列の間の塩基対合が、クンジンウィ
ルスレプリコンのRNA複製に必須であることが示唆されている(Khromykh,M
ekaら 2001)。コンピューターにより生成された、デング熱ウィルスの5’−C
Sと3’−CSの間の予測された二次構造は図1に示され(Khromykh,Meka
ら 2001)、図の上部のボックス内に5’−CSおよび3’−CSが示され、そして
本明細書において、それぞれ配列番号1および配列番号3として識別される。短い相補的
な配列がまた、ダニ媒介性脳炎ウィルスゲノムの5’末端領域および3’末端領域におい
て識別され(それぞれ、配列番号2および配列番号4)、そして潜在的な環化配列と同様
に働くことが提唱されている(Khromykh,Mekaら 2001)。
【0044】
(デング熱ウィルス)
フラビウィルスの伝染および感染病理は、異なるウィルス間で極めて異なるが、デング
熱ウィルスは、この属における説明に役立つ実例として都合が良い。デング熱ウィルスは
節足動物媒介性ウィルス(アルボウィルス)であり、そしてシマカ属の蚊、第一にA.a
egyptiおよびA.albopictusによって、ヒトに伝染する。このウィルス
は、高い発熱、頭痛、筋肉および関節の痛み、ならびに発疹によって明示される疾病を引
き起こす。いくつかの場合において、代表的には子供において、より激しい型の感染がデ
ング出血熱/デング熱ショック症候群(DHF/DSS)と共に見られ、これらは、ショ
ックに通じる、激しい出血、血管透過性、またはその両方によって特徴付けられる。所与
のデング熱の血清型に感染し、そして引き続いて異なる血清型に感染した個体は、DHF
/DSSに対してより顕著に危険な状態にある。診断および迅速な医療行為無しでは、D
HF/DSSの急激な発症および急速な進行は、致命的になり得る。
【0045】
4種類のデング熱ウィルスの1種類以上に起因する、特定の地方に特有のデング熱は、
熱帯および亜熱帯の多くにおいて、主要な公衆衛生問題である。時には100万人以上を
巻き込む、散発的なデング熱の流行が発生し続けている。デング熱ウィルスは、500,
000例のDHF/DSSを含む、年間1億例のデング熱が発生していると見積もられる
、世界的な罹患率および死亡率について、節足動物伝染性ウィルスの最も重要なグループ
である。人口の世界的な増加、特に熱帯の全体にわたる住民の都市化、および、持続した
蚊の抑制措置の欠如によって、デング熱を媒介する蚊は、熱帯、亜熱帯、およびいくつか
の温帯の全体にわたってその分布が広がっており、世界人口の過半数にデング熱感染の危
険をもたらしている。現代のジェット機旅行および人々の移住は、デング熱の血清型の世
界的な分布を促進し、現在では、デング熱の複数の血清型が、多くの地域において地方特
有となっている。これに付随して、最近15年間において、デング熱の流行の頻度、およ
びDHF/DSSの発生率の増加がある。例えば、東南アジアにおいて、DHF/DSS
は子供の間で入院および死亡の主要な原因である(HayesおよびGubler 19
92)。
【0046】
以下に記述するように、フラビウィルス属の多くの他のメンバーもまた、重篤な疾患(
例えば、黄熱病、日本脳炎、セントルイス脳炎、オーストラリア脳炎、およびダニ媒介性
脳炎)の病因因子である。
【0047】
(黄熱病ウィルス)
黄熱病に対する効果的なワクチンが何年も利用可能であるが、このウィルスは、死亡率
が50%である、出血熱の主要な原因である。世界中で、年間200,000例と見積も
られる黄熱病(内30,000例の死亡)がある。黄熱病のない国において移入された事
例も、少数起きている(WHO,Fact Sheet 100,2001)。
【0048】
(日本脳炎ウィルス)
このアルボウィルスは、世界的なウィルス性脳炎の主要な原因である。アジアでは年間
約50,000例が起きており、高い(30%)死亡率をもたらすか、または生存した患
者の永久的な神経的後遺症(30%)をもたらす。JEVによって引き起こされる集団発
生は、熱帯アジアおよび亜熱帯アジアの人口が稠密である地域において、重要な公衆衛生
問題をもたらし続けている。この疾患は蚊のイエカ属に属する種によって伝染され、臨床
的には脳炎として明示され、幼い子供および高齢者の間で、しばしば重度となり、そして
高い死亡率をもたらす。JEVはまた、家畜(例えばブタおよびウマ)にも感染する。最
近20年間で、不活化されたJEVワクチンを用いた免疫化が、日本、韓国、および台湾
において、疾患を抑制している。しかしながら、ワクチンの生産に高いコストがかかるた
めに、それが最も必要とされている国々では、容易には利用可能ではない(CDC,Ja
panese Encephalitis Fact Sheet,2001)。
【0049】
(マレーバレー脳炎ウィルスおよびクンジンウィルス)
これらのウィルスは「オーストラリア脳炎」の原因因子であり、「オーストラリア脳炎
」は、無菌性髄膜炎および/または脳炎によって特徴付けられる臨床的な症候群である。
双方ともアルボウィルスであり、イエカ属の蚊によって伝染され、そして北オーストラリ
アにおいて固有である。マレーバレー脳炎の症状は、ほとんど常に、急激な発熱;摂食障
害および頭痛の発生を含む。数日後に脳機能障害となり得、そして昏睡および死亡の双方
が確実となり得る。いくつかの後遺症となる、精神的な障害も機能的な障害もなしに、こ
の脳炎症候群から回復することは、まれである。クンジンウィルスは、西ナイルウィルス
に密接に関連したウィルスであり(Scherret,Poidingerら 2001
)、マレーバレー脳炎ウィルスに臨床的に類似した疾病を引き起こすが、一般により重篤
度が低く、ヒトへの感染の頻度は低いと報告されている。
【0050】
(西ナイルウィルス)
西ナイルウィルス(WNV)は、もう1つの節足動物媒介性フラビウィルスで、近年、
ヒトのみならずその他の動物種(例えばウマおよび鳥類)に対しても、致死性の健康への
脅威として出現した。1999年にニューヨークが、西ナイルウィルス感染の事例を報告
する、北アメリカで最初の地域になった。西ナイルウィルスのヒトへの感染は、かつては
アフリカ、中東および東ヨーロッパのみで見つかった。上記のウィルスは、ヒトおよびい
くつかの動物種に、感染した鳥類を餌とすることでウィルスを取り入れた蚊によって伝染
する。西ナイルウィルスは公衆衛生にとって、引き続き脅威のままである。疫学的研究お
よびウィルス学的研究から、生きたウィルスが、蚊および鳥類の集団の中で生存している
ことが示されている。蚊の抑制措置が、ニューヨーク、ニュージャージー、コネチカット
、およびその他の多くの東部諸州で実行されたが、西ナイルウィルスの新しい事例はまだ
診断されている。現在、西ナイルウィルスは、米国のほぼ全ての州で見つかっている(E
nserink 2002)。
【0051】
ヒトに感染した西ナイルウィルスの中で、150〜300ごとにおよそ1つが、発熱、
筋肉痛、および場合によっては発疹を伴う疾患となる。症候性のものの内、約10〜15
%が、髄膜炎(頭痛、肩こり)、または脳炎(精神状態の変化、末梢神経の異常、筋衰弱
)の徴候を有する。ほとんど全ての死亡は、50歳をこえるヒトにおいて起きている。中
枢神経系へ感染した患者の致死率は、5%〜11%の間である。致死は、換気の補助を必
要とし、そして第2の合併症につながる、中枢神経系の長期の機能障害に起因していた。
長期の神経性の症状は、西ナイルウィルスに引き起こされた脳炎の生存者に起こっている

【0052】
(セントルイス脳炎ウィルス)
セントルイス脳炎ウィルスの最近の流行はないものの、それは米国西部で固有のままで
あり、そして、無菌性髄膜炎および/または脳炎を含む重篤な疾患の原因である。もう1
つのアルボウィルスであるSLEVは、1975年および1990年に起こった、最大の
最近の米国での突発と共に、予測不可能で、かつ断続的な流行の原因である。
【0053】
(ダニ媒介性脳炎)
ダニ媒介性脳炎(TBE)は、ヨーロッパおよびアジアの大部分で発生する、最も危険
なヒトの感染症の1つである。病因因子はダニ媒介性脳炎ウィルス(TBEV)である。
TBEVは、89〜166件の死亡を含む、ロシアでの、年間少なくとも11,000件
のヒトの脳炎の事例、および、残りのヨーロッパでの年間約3000件の事例の原因であ
ると考えられている(Ternovoi,Kurzhukovら 2003)。TBEウ
ィルスはしばしば、温和な、または無症候性から、40%に達する致死率の重篤な脳炎に
至る範囲の症状を示す、病原性を示す。同じグループに含まれる関連したウィルスである
、跳躍病ウィルス(LIV)およびポワッサンウィルス(POW)もまたヒトの脳炎を引
き起こすが、めったに流行の規模にはならない。同じグループに属する2つのほかのウィ
ルスである、キャサヌール森林病ウィルス(KFD)およびアルカーマウィルス(ALK
)は、TBE複合ウィルスに密接に関連し、脳炎よりも、致死的な出血熱の原因になる傾
向がある(Gritsun,Lashkevichら 2003)。
【0054】
(III.ウィルス標的領域およびターゲティング配列)
好ましい標的配列は、隣接し、および正鎖フラビウィルスRNAの5’−CS配列また
は3’−CS配列の少なくとも一部分(例えば、少なくとも2〜8塩基)を含む配列であ
る。上記にて論じたように、これらの保存された環化配列(CS)は、RNA複製を惹起
するために、ウィルスRNAの3’末端領域および5’末端領域を非常に近くまで移動さ
せることによって、ウィルスの複製に役割を果たしていると考えられる(Hahn,Ha
hnら 1987;Khromykh,Mekaら 2001)。種々のフラビウィルス
ゲノム配列は、周知の出所(例えば、NCBI Genbankデータベース)から利用
可能である。あるいは、当業者は多くの被験体ウィルスの配列を、公開された文献内に探
し得る(例えば、目的とするウィルスの配列情報を公開している参考文献を探すことによ
って)。一旦、完全な、または部分的なウィルス配列が得られた場合、そのウィルスの5
’CS配列および3’CS配列が識別される。
【0055】
対応するウィルスゲノム内の5’−CS末端ターミナル配列および3’−CS末端ター
ミナル配列を含む、模範的なウィルス核酸配列のためのGenBankの参照を、以下の
表1に収載する。これらの配列は、フラビウィルス属に含まれる他の配列の例証に過ぎな
いことが理解される。なぜなら、それらは、文献の出自または特許の出自の、利用可能な
遺伝子配列データベースから利用可能であり得るからである。配列番号5−15として識
別される以下の配列はまた、本明細書の末尾にある表3にも収載される。保存された5’
−CSおよび3’−CSは、表1において太字で示され、そして表1において配列番号1
−4として収載される。
【0056】
模範的な標的配列のもう1つのグループは、配列番号5−15の相補体である;それは
、識別された配列5−15の1つに、相補的に逆平行な配列を有する配列である。例えば
、配列番号5:
【0057】
【化3】


の相補体は、
【0058】
【化4】


である。
【0059】
【表5】

【0060】
【表6】


標的配列とターゲティング配列との間の相補性の度合いは、安定な二重鎖を形成するに
十分である。上記のアンチセンスオリゴマーの、標的RNA配列への相補的な領域は、8
〜11塩基の短さであってよく、しかし好ましくは12〜15塩基またはそれ以上(例え
ば、12〜20塩基)であり、あるいは12〜25塩基である。およそ15塩基のアンチ
センスオリゴマーは、一般に、上記のウィルスゲノム内に特有の相補配列を有するに十分
な長さである。さらに、相補的な塩基の最小の長さは、下記に論ずるように、要求される
結合のTを実現することを要求され得る。
【0061】
40塩基の長さのオリゴマーが適し得、そこで、少なくとも最小の塩基数(例えば8〜
11塩基、好ましくは12〜15塩基)が、上記の標的配列と相補的である。しかし、一
般に、細胞内の促進的な取り込み、または能動的な取り込みは、約30未満の長さのオリ
ゴマーで、好ましくは25未満であり、そしてより好ましくは20またはそれ未満の塩基
数で最適化される。PMOオリゴマーのためには、さらに下記に論ずるように、結合安定
性および取り込みの最適なバランスは一般に、13〜23塩基の長さで生じる。
【0062】
上記のオリゴマーは、ウィルス核酸標的配列に100%相補的であり得るか、または、
上記のオリゴマーとウィルス核酸標的配列との間に形成されるヘテロ二重鎖が、細胞性ヌ
クレアーゼおよびインビボで起こり得るその他の分解様式に耐える程度に十分に安定であ
る限りは、例えば改変体に対応するために、不一致を含み得る。ヌクレアーゼによる切断
に、より感受性の低いオリゴマー骨格は、以下で論じられる。不一致は、もし存在するな
らば、ハイブリッド二重鎖の中間領域よりも末端領域に対して、より不安定性が低い。許
容される不一致の数は、オリゴマーの長さ、二重鎖内のG:C塩基対合の割合、および二
重鎖内の不一致の位置に、良く知られた二重鎖の安定性の原則に従って、依存する。こう
したアンチセンスオリゴマーは、ウィルス核酸標的配列に100%相補的である必要は無
いが、核酸標的の生物学的活性(例えば、ウィルスRNAの環化)が調節されるように、
それは標的配列への安定かつ特異的な結合に効果的である。
【0063】
上記のオリゴマーと上記の標的配列との間に形成される二重鎖の安定性は、結合のT
と細胞性酵素による切断に対する二重鎖の感受性との関数である。相補配列RNAに対す
るアンチセンス化合物のTは、従来の方法(例えば、Hamesら Nucleic
Acid Hybridization,IRL Press,1985,107−10
8頁によって記述されたもの)によって測定され得る。それぞれのアンチセンスオリゴマ
ーは、相補配列RNAに対して、体温より高い、そして好ましくは45℃より高い結合T
を有するべきである。60〜80℃の範囲、またはそれより高いTが好ましい。周知
の原則に従って、相補的な塩基のRNAハイブリッドに対するオリゴマー化合物のT
、二重鎖内のC:G対合した塩基の割合を増加させること、および/または、ヘテロ二重
鎖の(塩基対合内の)長さを増加させることによって、増加し得る。同時に、細胞による
取り込みを最適化させる目的のために、オリゴマーのサイズを制限することが有利であり
得る。従って、15塩基以下の長さで、高いT(50℃以上)を示す化合物が一般に、
高いT値のために20塩基以上を要求する化合物よりも好ましい。
【0064】
以下の表2には、フラビウィルス属の選択されたウィルスの5’−CSおよび3’−C
Sを指向した、模範的なターゲティング配列を収載する。配列番号16−27によって識
別されるこれらの配列は、上記の配列番号5−15として識別される配列に相補的かつ逆
平行である(配列番号19は配列番号8に相補的であり、そして配列番号9に対して、1
つの不一致を含んで相補的であり、配列番号27はデング熱2型ウィルスの3’末端環化
配列を標的としている)。上記のように、オリゴヌクレオチドアナログ内の実際の標的配
列は、表1内の対応する標的配列の一部分のみに相補的であってよく、配列番号1内の配
列の一部、またはそれに相補的な配列番号3、あるいは配列番号2またはそれに相補的な
配列番号4を含む。
【0065】
より一般的には、本発明では、模範的なターゲティング配列として、ウィルスの正鎖R
NAゲノムの領域に相補的な、少なくとも8塩基の配列を意図し、その領域は、ゲノムの
5’末端環化配列もしくは3’末端環化配列である配列番号1、またはそれに相補的な配
列番号3の少なくとも一部を、この5’−CSで識別されるフラビウィルスのグループの
ために含むか、あるいは、配列番号2またはそれに相補的な配列番号4の少なくとも一部
を、この5’−CSで識別されるフラビウィルスのグループのために含む。好ましい実施
形態において、ターゲティング配列は、フラビウィルスの1つのグループのために、配列
番号3として識別される、ゲノムの3’末端環化配列の少なくとも一部分に、および、フ
ラビウィルスのもう1つのグループのために、配列番号4として識別される、ゲノムの3
’末端環化配列の少なくとも一部分に、相補的である。ターゲティング配列は、ウィルス
の5’末端環化配列と3’末端環化配列との間の塩基対合を崩壊させる(すなわち、図1
に図示されたように、環化ボックス内に示された、対合する塩基のステム二次構造を崩壊
させる)に十分な数の塩基を、CS配列内に含む。この構造を崩壊させるために要求され
るターゲティング配列の数は、好ましくは、2つの相補的な環化配列の内の1つに相補的
な、少なくとも2〜4塩基に加えて、隣接する標的配列の塩基に相補的な塩基である。
【0066】
1つの実施形態において、ターゲティング配列は、選択したウィルスの5’末端環化配
列または3’末端環化配列(すなわち、配列番号1−4のいずれか)の全体に相補的な塩
基を含む。
【0067】
もう1つの実施形態において、ターゲティング配列は、2つの環化配列の、対応する相
補的な領域に相補的である。例えば、図1の配列ボックスの上端に示される2つの環化配
列の相補的な4塩基部分を含む8塩基の標的配列は、不連続な配列5’CAUA...U
AUG3’を有する。この配列に効果的に結合し、そして崩壊させるターゲティング配列
は、配列5’CATA...TATG3’を有し得、ここで「...」は直接的な5’末
端−3’末端のサブユニット連結であってよく、または、標的配列内の不連続面に適応す
るように設計された、PEGリンカーのようなスペーサーであってよい。
【0068】
後者の実施形態は、本発明のもう1つの局面に従って、アンチセンスオリゴヌクレオチ
ドアナログの特定の事例を表し、このアンチセンスヌクレオチドは、RNA内の「ステム
」二次構造を形成する配列の相補的な部分に対して指向され、そして、ステム構造を崩壊
させる目的のために、ステム構造の双方の鎖に相補的な塩基を、ターゲティング塩基とし
て含む。
【0069】
【表7】


表1内の標的配列は、RNAに特徴的なウラシル(U)塩基を含むように表され、そし
て表2内のターゲティング配列は、DNAに特徴的なチミン塩基を含むように表されるこ
とに留意のこと。ターゲティング配列の塩基は、通常のDNA塩基またはそのアナログ(
例えばウラシル)であり、それは、標的配列のRNA塩基とのワトソン−クリック塩基対
合を可能とすることが、理解される。
【0070】
(IV.アンチセンスオリゴマー)
(A.性質)
上記に詳述したように、アンチセンスオリゴマーは、ウィルスゲノム、好ましくは5’
−CSまたは3’CSのどちらかの標的部分に向けて指向された塩基配列を有する。さら
に、上記のオリゴマーは、感染した宿主細胞(例えば、感染した動物被験体内)に投与さ
れた場合、感染したウィルスを効果的に標的とし得る。上記のオリゴマー化合物が、(a
)哺乳動物細胞に能動的に取り込まれる能力を有し、そして(b)一旦取り込まれると、
約50℃をこえるTを有する標的ssRNAと二重鎖を形成する場合、この要求が満た
される。
【0071】
下記に記述するように、細胞によって取り込まれる能力は、上記のオリゴマーの骨格が
実質的に電荷を持たないことを要求し、そして好ましくは、上記のオリゴマーの構造が、
細胞膜を越えた能動輸送または促進輸送の基質として認識されることを要求する。上記の
オリゴマーが標的RNAと安定な二重鎖を形成する能力はまた、オリゴマーの骨格、なら
びに、上記に記した因子、アンチセンスオリゴマーの標的に関した相補性の長さおよび程
度、A:T塩基対に対するG:C塩基対の割合、ならびに、任意の不一致の塩基の位置に
も依存する。上記のアンチセンスオリゴマーの、細胞性ヌクレアーゼに抵抗する能力は、
因子の残存、および因子の、細胞の原形質への最終的な輸送を促進する。
【0072】
以下は、任意の所与の、実質的に電荷を持たない骨格を、これらの要求に応ずる能力に
ついて試験するための、開示された方法である。
【0073】
(A1.細胞による能動的な取り込み、または促進的な取り込み)
上記のアンチセンス化合物は、遊離の(複合体でない)形態で投与される場合には、促
進輸送または能動輸送によって、または、複合体の形態で投与される場合には、エンドサ
イトーシスの機構によって、宿主の細胞膜を越えて、宿主細胞により取り込まれ得る。
【0074】
因子が遊離の形態で投与される場合には、上記のアンチセンス化合物は実質的に電荷を
持つべきでなく、このことは、そのサブユニット間の連結の大多数が、生理的pHにおい
て電荷を持たないことを意味する。本発明を支持して実行された実験は、少数の正味の電
荷(例えば、15〜20マーのオリゴマーについて1〜2)が、実際に、実質的に電荷を
持たない骨格を有する、あるオリゴマーの、細胞による取り込みを亢進し得ることを示す
。電荷は、オリゴマー自身(例えば、骨格の連結内)に保有されてもよく、または末端の
荷電した基の付属物であってもよい。好ましくは、荷電した連結の数は、4つの電荷を持
たない連結あたり、荷電した連結はわずか1つである。より好ましくは、その数は、10
の電荷を持たない連結あたりわずか1つであり、または20の電荷を持たない連結あたり
わずか1つである。ある実施形態において、オリゴマーは完全に電荷を持たない。
【0075】
オリゴマーはまた、反対の電荷がおよそ同数存在している限り、負に荷電した骨格連結
、および正に荷電した骨格連結の双方を含み得る。好ましくは、上記のオリゴマーは、ど
ちらかの電荷が、3〜5個を越えて連続したサブユニットの連続を含まない。例えば、上
記のオリゴマーは、所与の数の陰イオン性の連結(例えば、ホスホロチオエート、または
N3’→P5’ホスホラミデート連結)、および、匹敵する数の陽イオン性の連結(例え
ば、N,N−ジエチレンジアミンホスホラミデート(Dagle,Littigら 20
00))を有し得る。正味の電荷は、好ましくは、中性であるか、またはオリゴマー1つ
につき最大で1〜2の正味の電荷である。
【0076】
実質的に、または完全に電荷を持たないことに加えて、上記のアンチセンス因子は、好
ましくは、膜輸送系(すなわち、膜タンパク質またはタンパク質)の基質であり、この膜
輸送系は、細胞膜を越えた、オリゴマーの促進輸送または能動輸送を可能とする。この特
徴は、以下の通りの、オリゴマーの相互作用または細胞の取り込みの、多数の試験の1つ
によって決定される。
【0077】
第1の試験は、細胞表面の受容体への結合を評価し、これは、オリゴマー化合物が、細
胞表面において、選択された荷電したオリゴマー(例えば、ホスホロチオエートオリゴマ
ー)を置換するか、あるいはそれによって置換される能力を調べることによる。細胞は、
所与の量の試験オリゴマーとともにインキュベートされ、この試験オリゴマーは代表的に
は蛍光標識されており、最終的なオリゴマー濃度は、約10〜300nMの間である。す
ぐその後に(例えば、(試験オリゴマーの顕著な内部移行が起き得た後)10〜30分間
)、置換化合物が、濃度を徐々に増大させて、加えられる。試験化合物が細胞表面の受容
体に結合し得るならば、置換化合物が、試験化合物を置換することが観察される。置換化
合物が、試験化合物の濃度の10倍以下の濃度において、50%の置換を引き起こすこと
が示されたならば、その試験化合物は、置換化合物と同じ、細胞輸送系の認識部位に結合
するものと考えられる。
【0078】
第2の試験は細胞輸送を測定し、それは、試験化合物の、標識されたリポーター(例え
ば、蛍光リポーター)を細胞内に輸送する能力を調べることによる。細胞は、標識された
試験化合物の存在下でインキュベートされ、標識された試験化合物は、最終濃度が約10
〜300nMの間で加えられる。30〜120分間のインキュベート後、細胞は、例えば
顕微鏡によって、細胞内の標識を調べられる。顕著な細胞内の標識の存在は、試験化合物
が、促進輸送または能動輸送によって輸送されたことの証明である。
【0079】
上記のアンチセンス化合物は、複合体の形態でもまた投与され得、ここで、複合体の因
子は代表的にはポリマー(例えば、陽イオン性脂質、ポリペプチド、または非生物学的陽
イオン性ポリマー)であり、アンチセンス化合物上に、任意の正味の電荷と反対の電荷を
有する。陰イオン性のオリゴヌクレオチドと、陽イオン性の脂質、またはその他のポリマ
ー構成成分との間で、二重層複合体を含む、複合体を形成する方法は周知である。例えば
、リポゾーム構成成分であるLipofectin(登録商標)(Felgner,Ga
dekら 1987)は、陽イオン性脂質であるDOTMA(N−[1−(2,3−ジオ
レイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド)および、中
性のリン脂質であるDOPE(ジオレイルホスファチジルエタノアミン)を含み、広く用
いられている。投与後、上記の複合体はエンドサイトーシス機構を通して細胞に取り込ま
れ、代表的には、エンドソーム体内での粒子封入に関与する。
【0080】
上記のアンチセンス化合物はまた、アンチセンスオリゴマーの5’末端または3’末端
に連結された、アルギニンの豊富なペプチドと結合体化された形態で投与され得る。上記
のペプチドは代表的には8〜16アミノ酸であり、アルギニン、ならびに、フェニルアラ
ニンおよびシステインを含むその他のアミノ酸の混合からなる。オリゴマーに結合体化さ
れたペプチドへの細胞の曝露は、結果として、細胞内への取り込み、およびRNA標的へ
の輸送の亢進を招く(Moulton,Nelsonら 2004)。
【0081】
あるいは、および本発明のもう1つの局面に従って、任意の所与の骨格を有するオリゴ
マーの必須の性質は、単純なインビボの試験によって確かめられ得、その試験では、標識
された化合物が動物に投与され、そして、オリゴマーが投与されてから数時間後に動物か
ら採取された体液サンプルが、標的RNAとのヘテロ二重鎖の存在についてアッセイされ
る。この方法は、以下の小節Dに詳述される。
【0082】
(A2.RNaseHに対する実質的な抵抗性)
アンチセンスオリゴヌクレオチドによる発現の阻害を説明するために、2つの一般的な
機序が提唱されている(Agrawal,Mayrandら 1990;Bonham,
Brownら 1995;Boudvillain,Guerinら 1997)。第1
の機序では、オリゴヌクレオチドとウィルスRNAとの間に形成されたヘテロ二重鎖はR
NaseHの基質として作用し、それはウィルスRNAの切断に導く。このクラスに属す
る、または属すると提唱されているオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート、ホスホ
トリエステル、およびホスホジエステル(改変されていない「天然の」オリゴヌクレオチ
ド)を含む。こうした化合物は、オリゴマー:RNA二重鎖構造の中で、ウィルスRNA
をRNaseHによる加水分解に曝し、それゆえ機能を失う。
【0083】
オリゴヌクレオチドアナログの第2のクラスは、「立体構造的ブロッカー」またはそれ
に代えて、「RNaseH不活化」または「RNaseH抵抗性」と称され、RNase
Hの基質として作用することが認められず、そして、標的RNAの核原形質輸送、スプラ
イシング、翻訳、または複製を立体構造的にブロックすることで作用すると考えられる。
このクラスは、メチルホスホネート(Toulme,Tinevezら 1996)、モ
ルホリノオリゴヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)、ある2’−O−アリルまたは2
’−O−アルキルで改変されたオリゴヌクレオチド(Bonham,Brownら 19
95)、およびN3’→P5’ホスホラミデート(Ding,Grayaznovら 1
996;Gee,Robbinsら 1998)を含む。
【0084】
試験オリゴマーは、試験化合物とRNA:オリゴマー二重鎖を形成することによる、そ
のRNaseH抵抗性についてアッセイされ得、そして、Steinらに記述されている
ように、上記の二重鎖をRNaseHと共に、標準のアッセイ条件下でインキュベートす
る。RNaseHに曝露した後、インタクトな二重鎖の存在または非存在が、ゲル電気泳
動または質量分析法によってモニターされ得る。
【0085】
(A3.インビボでの取り込み)
本発明のもう1つの局面に基づき、所与のアンチセンスオリゴマー型が、上記に記述さ
れた、要求される特徴(すなわち、高いT、宿主細胞によって能動的に取り込まれる能
力、およびRNaseHに対する実質的な抵抗性)を備えていることを確かめるための、
単純で迅速な試験が提供される。この方法は、適切に設計されたアンチセンス化合物が、
哺乳動物被験体に投与された場合に、ウィルスRNA標的の相補的な部分と安定なヘテロ
二重鎖を形成し、そして、引き続いてそのヘテロ二重鎖は尿(またはその他の体液)中に
現れる、という発見に基づいている。この方法の詳細はまた、共有に係る米国特許出願第
09/736,920号(表題は「Non−Invasive Method for
Detecting Target RNA」(非侵襲性の方法))においても示され、
その開示は本明細書にて参考として援用される。
【0086】
手短に言えば、調べられる骨格を含み、公知のRNAを標的とする塩基配列を有する試
験オリゴマーが、動物(例えば、哺乳動物被験体)に注射される。そのアンチセンスオリ
ゴマーは、任意の細胞内RNAに対して指向され得、その細胞内RNAは、宿主RNAま
たは感染したウィルスのRNAを含む。投与後数時間(代表的には8〜72時間)におい
て、尿がアンチセンス−RNAヘテロ二重鎖の存在についてアッセイされる。ヘテロ二重
鎖が検出された場合、その骨格は、本発明のアンチセンスオリゴマーとして用いるに適し
ている。
【0087】
試験オリゴマーは、もし哺乳動物被験体に適しているならば、後の解析を容易にするた
めに、(例えば、蛍光タグまたは放射活性タグによって)標識され得る。上記のアッセイ
は、任意の適した固相の形式、または液体の形式においてあり得る。一般に、固相アッセ
イは、ヘテロ二重鎖の分析物の固相支持体(例えば、粒子あるいは、ポリマーまたは試験
小片の基材)への最初の結合、および、結合したヘテロ二重鎖の存在/量の検出を含む。
液相アッセイでは、分析物サンプルは、代表的には、干渉するサンプルの構成成分を除く
ために前処理される。オリゴマーが標識される場合には、ヘテロ二重鎖の存在は、標識タ
グの検出によって確認される。非標識化合物のためには、固相の形式での場合には、ヘテ
ロ二重鎖はイムノアッセイによって検出されてよく、または、溶液もしくは懸濁液の形式
での場合には、質量分析法もしくは他の公知の方法によって検出されてよい。
【0088】
上記のアンチセンスオリゴマーが、ウィルスゲノムのウィルス特異的な領域(例えば、
フラビウィルスの5’−CSおよび3’−CSを含む領域)に相補的な場合、上記の方法
は、所与のssRNAウィルスの存在の検出に用いられ得る。上記の方法はまた、処置方
法の間の、ウィルスの量の減少をモニターするためにも用いられ得る。
【0089】
(B.模範的なオリゴマー骨格)
オリゴヌクレオチドアナログにおいて用いられ得る非イオン性の連結の例は、図2A−
2Gに示される。これらに図において、Bは、塩基特異的な水素結合による、ポリヌクレ
オチド内の塩基で、好ましくは、アデニン、シトシン、グアニン、およびウラシルから選
択される塩基への結合に効果的な、プリンまたはピリミジン塩基対合部を表す。適した骨
格構造は、カーボネイト連結(2A、Rは酸素)およびカルバメート連結(2A、RはN
)(MertesおよびCoats 1969;Gait,Jonesら 1974
);アルキルホスホネート連結およびホスホトリエステル連結(2B、Rはアルキルまた
は−O−アルキル)(Lesnikowski,Jaworskaら 1990);アミ
ド連結(2C)(Blommers,Pielesら 1994);スルホン連結および
スルホンアミド連結(2D、R,RはCH)(Roughten 1995;Mc
Elroy 1994);およびチオホルムアセチル連結(2E)(Matteucci
1990;Cross 1997)を含む。後者は、ホスホロチオエートアンチセンス
化合物に対して、より一層の二重鎖安定性および三重鎖安定性を有することが報告されて
いる(Cross 1997)。構造2Fの3’−メチレン−N−メチルヒドロキシアミ
ノ化合物もまた報告されている(Mohan 1995)。
【0090】
ペプチド核酸(PNA)(図2G)はDNAのアナログで、その骨格はデオキシリボー
ス骨格に構造的に同型であり、ピリミジン塩基またはプリン塩基が接続されたN−(2−
アミノエチル)グリシンユニットからなる。天然のピリミジン塩基およびプリン塩基を含
むPNAは、ワトソン−クリック塩基対合規則に従って、相補的なオリゴヌクレオチドに
ハイブリダイズし、そして、塩基対合認識の面においてDNAを模倣する(Egholm
ら 1993)。PNAの骨格は、ホスホジエステル結合ではなくてペプチド結合により
形成され、それはアンチセンスの適用に適するようにしている。その骨格は電荷を持たず
、結果として、通常よりも高い熱安定性を示すPNA/DNA二重鎖またはPNA/RN
A二重鎖を得ている。PNAは、ヌクレアーゼまたはプロテアーゼによっては認識されな
い。
【0091】
好ましいオリゴマー構造は、上記に記述したように、電荷を持たない連結に繋がった、
塩基対合部を持つ、モルホリノを基本とするサブユニットを用いる。実質的に電荷を持た
ない、ホスホロジアミデートに連結されたモルホリノオリゴマー(例えば、図3A−3D
に図示したような)は、特に好ましい。アンチセンスオリゴマーを含むモルホリノオリゴ
ヌクレオチドは、例えば、共有に係る米国特許第5,698,685号、同第5,217
,866号、同第5,142,047号、同第5,034,506号、同第5,166,
315号、同第5,185,444号、同第5,521,063号、および同第5,50
6,337号に詳述され、これらは全て、本明細書内で参考として明白に援用される。
【0092】
モルホリノを基本とするサブユニットの重要な性質としては以下が挙げられる:オリゴ
マー形態の中で、安定で電荷を持たない骨格連結によって連結される能力;形成されるポ
リマーが、高いTを有し、さらに10〜14塩基の短さのオリゴマーを有する、標的R
NAを含む、相補的な塩基の標的核酸にハイブリダイズし得るように、ヌクレオチド塩基
(例えば、アデニン、シトシン、グアニン、またはウラシル)を支持する能力;上記のオ
リゴマーが哺乳動物細胞内に能動的に輸送される能力;およびオリゴマー:RNAヘテロ
二重鎖が、RNAseによる分解に抵抗する能力。
【0093】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドの模範的な骨格構造は、図3A−3Dに示さ
れるβ−モルホリノサブユニット型を含み、それぞれ、電荷を持たない、リン含有サブユ
ニット連結に連結される。図3Aは、5原子反復ユニット骨格を形成するリン含有連結を
示し、ここで、モルホリノ環は1原子のホスホアミド連結によって連結される。図3Bは
、6原子反復ユニット骨格を生成する連結を示す。この構造では、5’モルホリノ炭素を
リン基に連結する原子Yは、硫黄、窒素、炭素、または好ましくは酸素であり得る。リン
からぶら下がったX部は、フッ素、アルキルまたは置換したアルキル、アルコキシまたは
置換したアルコキシ、チオアルコキシまたは置換したチオアルコキシ、あるいは、置換さ
れていない、一置換の、または二置換の窒素であり得、これらの窒素は環状構造(例えば
、モルホリンまたはピペリジン)を含む。アルキル、アルコキシ、およびチオアルコキシ
は、好ましくは1〜6個の炭素原子を含む。Z部は硫黄または酸素であり、そして好まし
くは酸素である。
【0094】
図3Cおよび3Dに示される連結は、7原子ユニットの長さの骨格として設計される。
構造3Cでは、X部は構造3Bと同様であり、そしてY部はメチレン、硫黄、または好ま
しくは酸素である。構造3Dでは、X部およびY部は構造3Bと同様である。特に好まし
いモルホリノオリゴヌクレオチドは、図3Bに示される形態のモルホリノサブユニット構
造から構成されるモルホリノオリゴヌクレオチドを含み、そこでは、XはNHまたはN
(CHであり、Yは酸素であり、そしてZは酸素である。
【0095】
上記に記したように、実質的に電荷を持たないオリゴマーは、都合よく、限られた数の
荷電した連結(例えば、毎5個の電荷を持たない連結あたり約1つ以下、より好ましくは
、毎10個の電荷を持たない連結あたり約1つ以下)を含む。これゆえ、少数の荷電した
連結(例えば、荷電したホスホラミデートまたはホスホロチオエート)がまた、オリゴマ
ーの中に取り込まれ得る。
【0096】
アンチセンス化合物は、段階的な固相での合成によって調製され得、そこでは、上記で
引用した参考文献に詳述された方法を用いる。いくつかの事例では、(例えば、薬物動態
を亢進するために、または化合物の獲得または検出を容易にするために)アンチセンス化
合物に、さらなる化学的成分を加えることが望ましい。こうした成分は、標準の合成方法
に従って、代表的にはオリゴマーの末端に、共有結合的に連結され得る。例えば、ポリエ
チレングリコール部またはその他の親水性のポリマー(例えば、10〜100個の単量体
サブユニットを有する)の付加は、溶解性の向上に有用であり得る。1つ以上の荷電した
基(例えば、陰イオン性に荷電した基(例えば、有機酸))は、細胞による取り込みを亢
進し得る。リポーター部(例えば、フルオレセインまたは放射能標識された基)は、検出
する目的で接続され得る。あるいは、オリゴマーに接続されたリポーター標識はリガンド
(例えば、抗原またはビオチンであり、これらは標識された抗体またはストレプトアビジ
ンに結合し得る)であり得る。アンチセンスオリゴマーに接続する、またはこれを改変す
るための成分の選択では、一般に、当然のことながら、生体適合性であり、そして望まし
くない副作用無しに、被験体が耐性を示すような、化学物質群を選択することが望ましい

【0097】
(V.ウィルス複製の阻害)
上記に詳述したアンチセンス化合物は、哺乳動物細胞(例えばヒト細胞)および鳥類細
胞を含む動物の細胞内での、フラビウィルスの複製の阻害に有用である。1つの実施形態
において、こうした阻害は、これらのウィルスによる宿主動物の感染の処置において有効
である。よって、1つの実施形態において、上記の方法は、ウィルスに感染した細胞を、
特定のウィルスの複製を阻害するために有効なアンチセンス因子に接触させる工程を含む
。この実施形態において、上記のアンチセンス因子は、所与のウィルスに感染した哺乳動
物被験体(例えば、ヒトまたは家畜)に、適した薬学的キャリア中で、投与される。上記
のアンチセンスオリゴヌクレオチドが、宿主内のRNAウィルスの成長を阻止することが
企図される。RNAウィルスは、宿主の通常の成長または発育に有害な影響をほとんど、
または全く与えることなく、数の上で減少し得るか、または除去され得る。
【0098】
(A.感染因子の同定)
感染を引き起こす特定のウィルスは、当該分野で公知である方法(例えば、血清学的方
法または培養的方法)によって、または本発明のアンチセンスオリゴマーを用いた方法に
よって、決定され得る。
【0099】
血清学的同定は、被験体の生物学的試料(例えば、便、尿、脳脊髄液、血液など)から
単離されたウィルスサンプルまたはウィルス培養物を用いる。ウィルスを検出するための
イムノアッセイは一般に、当業者に慣用的に用いられている方法(例えば、ELISAま
たはウェスタンブロット)によって行われる。さらに、特定のウィルス株またはウィルス
種に特異的なモノクローナル抗体が、たいてい市販されている。
【0100】
培養的方法は、特徴(例えば、様々な培養条件下での成長率および形態)の比較を含む
、しかしそれに限らない、技術を用いることで、特定の型のウィルスを単離し、同定する
ために用いられ得る。
【0101】
感染した被験体内のウィルス感染性因子を同定するためのもう1つの方法では、多様な
フラビウィルス種を標的とする1つ以上のアンチセンスオリゴマーを用いる。任意の特徴
的なウィルスRNAを標的とする配列が用いられ得る。望ましい標的配列は、好ましくは
、(i)広いウィルスの科/属に共通であり、そして(ii)感染される宿主(例えばヒ
ト)では見つからない。多数の感染性ウィルスに特徴的な核酸配列は、公共のデータベー
スで入手可能であり、特異的なオリゴマーの設計のための基礎として役立ち得る。
【0102】
それぞれの多数のオリゴマーのために、以下の工程が行われる:(a)上記のオリゴマ
ーが被験体に投与される;(b)上記の投与後、選択された時間において、被験体から体
液サンプルが得られる;そして(c)上記のサンプルが、アンチセンスオリゴマーおよび
ウィルスゲノムの相補的な部分を含む、ヌクレアーゼ抵抗性のヘテロ二重鎖の存在につい
てアッセイされる。工程(a)〜(c)は、少なくとも1つの、あるいは、ウィルスまた
はウィルスの科を識別するために必要なだけの、このようなオリゴマーについて行われる
。オリゴマーは、経時的に、またはより便利には、同時的に、投与され得、かつアッセイ
され得る。ウィルスは、アンチセンスオリゴマー、および、所与の公知のウィルスまたは
所与の公知のウィルス科のウィルスゲノムの相補的部分を含むヘテロ二重鎖の存在(また
は非存在)に準じて、同定される。
【0103】
好ましくは、広範な科を標的とする、最初の群のオリゴマーが最初に用いられ、続いて
、それによって同定された広範な科/属に含まれる、特定の属および/または種および/
または株に相補的な、選択されたオリゴマーが用いられる。この第2の群のオリゴマーは
、広範な科/属に含まれる、特定の属および/または種および/または株を指向した標的
配列を含む。いくつかの異なる第2のオリゴマーの集団(すなわち、第1の段階で試験さ
れた、広範なウィルス科/属のそれぞれの内の1つ)が一般に提供される。配列は、(i
)試験された、個々の属/種/株に特異的で、(ii)ヒトでは見つからないものが選択
される。
【0104】
(B.アンチセンスオリゴマーの投与)
標的核酸へのアンチセンスオリゴマーの有効な送達は、処置の重要な局面である。本発
明に基づき、アンチセンスオリゴマーの送達の経路は、経口経路および非経口経路(例え
ば、静脈内送達、皮下送達、腹腔内送達、筋肉内送達、吸入による送達、経皮送達および
局所的な送達)を含む、様々な全身性の経路を含むが、これらに限られない。適切な経路
は、処置下にある被験体の状態に適するように、当業者によって決定され得る。例えば、
皮膚のウィルス感染の処置における、アンチセンスオリゴマーの適した送達経路は、局所
的な送達であり、一方、ウィルスの呼吸器感染の処置のためのアンチセンスオリゴマーの
送達は、吸入による。オリゴマーはまた、ウィルス感染した場所または血流に、直接送達
され得る。
【0105】
アンチセンスオリゴマーは、生理的に受容可能な、任意の便利なビヒクル内において投
与され得る。こうした組成物は、当業者によって用いられる、様々な標準の薬学的に受容
可能なキャリアのいずれかを含み得る。例としては、生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩
水(PBS)、水、エタノール水溶液、エマルジョン(例えば、油/水エマルジョン、ま
たはトリグリセリドエマルジョン)、錠剤、およびカプセルが挙げられるが、これらに限
られない。適した、生理的に受容可能なキャリアの選択は、選択される投与の方法に依存
して、変わる。
【0106】
いくつかの事例では、アンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞への取り込みを促進する
ために、リポソームが用いられ得る(例えば、Williams,S.A.,Leuke
mia 10(12):1980−1989,1996;Lappalainenら,A
ntiviral Res. 23:119,1994;Uhlmannら,ANTIS
ENSE OLIGONUCLEOTIDES:A NEW THERAPEUTIC
PRINCIPLE,Chemical Reviews,Volume 90,No.
4,pages 544−584,1990;Gregoriadis,G.,Chap
ter 14,Liposomes,Drug Carriers in Biolog
y and Medicine,pp.287−341,Academic Press
,1979を参照)。ヒドロゲルもまた、アンチセンスオリゴマーの投与のためのビヒク
ルとして用いられ得る(例えば、WO93/01286に記載のような)。オリゴヌクレ
オチドはまた、細粒または微粒子内にて投与され得る(例えば、Wu,G.Y.およびW
u,C.H.,J.Biol.Chem.262:4429−4432,1987を参照
)。あるいは、米国特許第6,245,747号に記載のように、アンチセンスオリゴマ
ーと複合した、ガスを充填した超微粒気泡の使用は、標的組織への送達を亢進し得る。
【0107】
徐放型の化合物もまた用いられ得る。これらは、造形品(例えば、フィルムまたはマイ
クロカプセル)の形態をした、半透性の重合体マトリックスを含み得る。
【0108】
上記の方法の1つ局面において、被験体はヒト被験体(例えば、局所的な、または全身
性のウィルス感染を受けていると診断された患者)である。患者の状態はまた、本発明の
アンチセンスオリゴマーの予防的な投与を指示し得る(例えば、(1)免疫障害を持つ;
(2)火傷を負っている;(3)留置カテーテルを有する;または(4)手術を受ける間
近であるか、または最近受けた、患者の場合において)。1つの好ましい実施形態におい
て、オリゴマーはホスホロジアミデートモルホリノオリゴマーであって、薬学的に受容可
能なキャリアに含まれ、経口的に送達される。もう1つの好ましい実施形態において、オ
リゴマーはホスホロジアミデートモルホリノオリゴマーであって、薬学的に受容可能なキ
ャリアに含まれ、静脈内に送達される(IV)。
【0109】
上記の方法のもう1つの適用において、被験体は家畜動物(例えば、ニワトリ、シチメ
ンチョウ、ブタ、ウシ、またはヤギなど)であり、そして処置は、予防的であるか、また
は治療的であるかのどちらかである。他の適用において、処置される感染動物は、1回以
上フラビウィルスに感染したような、動物園の動物か、または野生の動物であり得る(例
えば、アザラシ、ペンギン、またはタカ)。本発明はまた、治療量以下の量の、上記にて
記載した型の抗ウィルス性アンチセンス化合物を補われた、穀類を含む家畜および家禽の
食品組成物を含む。また、家畜および家禽に、治療量以下の量の抗ウィルス薬を補われた
穀類を与える方法において、上記の穀物が、治療量以下の量の、上記に記載されたような
抗ウィルス性のオリゴヌクレオチド組成物を補われた場合における改善も企図される。
【0110】
上記のアンチセンス化合物は一般に、結果として血中濃度のピークが、少なくとも20
0〜400nMのアンチセンスオリゴマーとなることに有効な量および様式で、投与され
る。代表的には、約1〜2週間の期間に対して、1用量以上のアンチセンスオリゴマーが
、一般には規則的な間隔で投与される。経口投与のための好ましい用量は、70kgあた
り約1〜25mgのオリゴマーからである。いくつかの事例では、患者あたり25mgを
越えるオリゴマーの用量が必要となり得る。IVの投与のために、好ましい用量は、70
kgあたり、約0.5mg〜10mgのオリゴマーである。上記のアンチセンスオリゴマ
ーは、短期間に対して規則的な間隔で(例えば、2週間以下に対して毎日)投与され得る
。しかし、いくつかの事例では、オリゴマーは、より長期間にわたって断続的に投与され
る。投与に続いて、または同時的に、抗生物質またはその他の治療上の処置が与えられ得
る。処置療法は、処置をされている被験体の、イムノアッセイ、その他の生化学的な試験
、および生理的検査の結果に基づいて、示されたように調製され得る(用量、頻度、経路
など)。
【0111】
(C.処置のモニタリング)
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた、有効なインビボの処置療法は、投
与の期間、用量、頻度、および経路、ならびに処置を施される被験体の状態(すなわち、
局所的な、または全身的な感染に応じた投与と対比して、予防的投与)に従って、変化し
得る。よって、こうしたインビボの療法はしばしば、最適な治療結果を達成するために、
処置される特定の型のウィルス感染に適当な試験によるモニタリング、および、用量また
は処置療法における、対応した調節を必要とする。処置は、例えば、感染の一般的な指標
(例えば、完全血球算定(CBC)、核酸検出法、免疫診断試験、ウィルスの培養、また
はヘテロ二重鎖の検出)によってモニターされ得る。
【0112】
1つ以上の型のRNAウィルスの成長の阻害または排除における、インビボで投与され
る本発明のアンチセンスオリゴマーの効力は、アンチセンスオリゴマーの投与に先立って
、投与の間に、および投与に続いて被験体から採取された生物学的サンプル(組織、血液
、尿など)から決定され得る。こうしたサンプルのアッセイは、(1)当業者に公知の手
順(例えば、電気泳動的ゲル移動度アッセイ)を用いた、標的配列および非標的配列との
ヘテロ二重鎖形成の存在または非存在のモニタリング;(2)標準の技術(例えば、EL
ISAまたはウェスタンブロッティング)によって決定される、ウィルスのタンパク質生
成量のモニタリング;または(3)例えばスピアマン−カーバー(Spearman−K
arber)法を用いた、ウィルス力価への効果の測定を含む(例えば、Pari,G.
S.ら,Antimicrob.Agents and Chemotherapy 3
9(5):1157−1161,1995;Anderson,K.P.ら,Antim
icrob.Agents and Chemotherapy 40(9):2004
−2011,1996,Cottral,G.E.(編)Manual of Stan
dard Methods for Veterinary Microbiology
,pp.60−93,1978内、を参照)。
【0113】
アンチセンスオリゴマー処置の効力をモニタリングする好ましい方法は、アンチセンス
−RNAヘテロ二重鎖の検出による。アンチセンスオリゴマーの投与後、選択した時間に
おいて、サンプル内のヘテロ二重鎖種の存在の検出、および/またはヘテロ二重鎖種のレ
ベルの測定のために、体液が収集される。代表的には、体液サンプルは投与後3〜24時
間に収集され、好ましくは、投与後6〜24時間で収集される。上記に示したように、体
液サンプルは、尿、唾液、血漿、血液、髄液、または生物的起源を持つその他の液体サン
プルであり得、そして、その中に懸濁される細胞または細胞片、または液体培地およびそ
の溶質を含み得る。収集されるサンプルの量は、代表的には0.1〜10mlの範囲で、
好ましくは約1ml以下である。
【0114】
サンプルは、望ましくない成分を除くために、および/または、望ましくないssRN
Aの突出領域を除く目的で、(例えば、RNase処理によって)サンプル内のヘテロ二
重鎖を処理するために、処理され得る。もちろん、ヘテロ二重鎖の検出がサイズによる分
離(例えば、質量分析の電気泳動)に依存している場合、突出を除くことは特に重要であ
る。
【0115】
サンプルから望ましくない成分を除くためには、様々な方法が利用可能である。例えば
、ヘテロ二重鎖は正味で負の荷電を有するため、中性の、または正に荷電した物質からヘ
テロ二重鎖を分離するために、電気泳動法またはイオン交換法の技術を用い得る。サンプ
ルはまた、表面に結合した抗体、またはヘテロ二重鎖に特異的に結合し得るその他の因子
を有する固体の支持体に接触され得る。結合しない物質を除くために支持体を洗浄した後
、ヘテロ二重鎖は、さらなる解析(例えば、電気泳動、質量分析、またはイムノアッセイ
による)のために、実質的に精製された形態で放出され得る。
【0116】
以下の例は本発明を例証するが、決して本発明を限定する意図を持つものではない。
【実施例】
【0117】
(実施例1:インビトロでの西ナイルウィルスのアンチセンス阻害)
2つのPMOオリゴマーを、培養されたVero細胞において西ナイルウィルスに対す
るその活性について調べた。1つの20マーのPMOオリゴマーは、西ナイルウィルスの
3’−CS領域を標的としている(WNV3’CS、配列番号26)。もう一方の20マ
ーのPMO化合物は「ナンセンスな」配列(5’−AGTCTCGACTTGCTACC
TCA−3’)であり(NC−1)、これは任意のヒト、サル、またはWNVの遺伝子配
列と顕著な相同性を持たなかった。双方のPMOオリゴマーを、インビトロでの細胞によ
る取り込みを促進するために、5’末端においてペプチドと結合体化した(RC−
5’−PMO)。2つの別々の実験、「2点」および「8点投与反応」を、2%ウシ胎児
血清を補われた標準的な哺乳動物組織培養培地内に懸濁された細胞に、ウィルス種菌と共
に、それぞれのPMOオリゴマーを加えることで行った。24時間後、細胞を、顕微鏡下
で視覚的に、および、記載されるように(Morrey,Smeeら 2002)「ニュ
ートラルレッド色素アッセイ」を用い、マイクロプレートリーダーによって定量的に、双
方の手段によって、細胞変性効果について記録した。当業者にとって、ウィルス価におい
て50%の減少を結果として得る有効濃度(EC50)が20μMを越える場合は、低い
抗ウィルス活性であるとみなし、一方、EC50が20μMより低い場合には、実質的な
抗ウィルス活性を示している。以下の表は、これらの結果の概要を示す。
【0118】
【表8】

【0119】
【表9】


(実施例2:ダニ媒介性脳炎のアンチセンス阻害)
この実施例では、2種のフラビウィルス、ダニ媒介性脳炎ウィルス(TBE)および西
ナイルウィルス(WN)に対する、本発明のアンチセンスPMO化合物の抗ウィルス活性
を試験するために立案された研究を記述する。2つのPMOオリゴマーを、抗ウィルス活
性について調べた(TBE 3’CS、配列番号25および;乱雑なコントロール配列で
あるDS−scr(5’−AGTCTCGACTTGCTACCTCA−3’))。双方
のPMOオリゴマーは、記述されたように(米国特許出願第60/466,703号、お
よびMoulton,Nelsonら 2004)、細胞による取り込みを亢進するため
に、5’末端にアルギニンの豊富なペプチドを結合体化した(RC−5’−PMO
)。WNの3’CSターゲティングPMOと、TBEの3’CSターゲティングPMOと
の間には全く相同性がないため、WNウィルスの感染は、ネガティブコントロール感染を
提供した。このコントロールは、それぞれのPMOによる非特異的なウィルス抑制のレベ
ルを示す。PMO化合物を、2mMのストック溶液を提供するように調製し、そして、組
織培養細胞上の標準用量のウィルスに対して滴定した。細胞を、1の感染効率(moi)
で感染し、そして、感染後18時間に採取された培地の上清のサンプル内におけるウィル
ス収量を評価した。
【0120】
本実施例で用いられた2つのウィルス株は:
1)TC401 西ナイル 99−34940−31A(New York株)継代2
代目
2)TC339 ダニ媒介性脳炎ウィルス(Hypr株)継代49代目
継代130代目のSW13細胞(5%FBSを加えたRPMI1640培地で増殖させ
た、ヒトコーカサス人副腎皮質腺癌細胞 ECAAC 87031801株)のT175
組織培養フラスコ(NUNC)4つを、トリプシン−EDTA(1×)で2回洗浄し、そ
して37℃にて2〜3分間インキュベートした。細胞を、フラスコあたり11.5mlの
増殖培地に再懸濁し、そして貯蔵した。貯蔵された細胞懸濁液について細胞計数を行い、
その結果は、99%の生存度において1.74×10細胞/mlであった。6mlの細
胞懸濁液を、4つのT175フラスコに播種するために用い、そして40mlの細胞懸濁
液を、270mlに希釈した。これを、15個の6ウェルプレートにおいて、ウェルあた
り3mlアリコートずつ分配した。プレートを、コンフルエントな細胞単層を形成するよ
うに、一晩インキュベートした。
【0121】
それぞれのPMO化合物を、4mlの無血清RPMI1640培地に、25μM、20
μM、15μM、10μM、および5μMに希釈した。2個の6ウェルプレートのウェル
から、培地を除いた。適切な化合物の希釈溶液2mlをプレートの全てのウェルに分配し
、そしてこのことは、双方のPMO化合物に関して別個のプレートにおいて繰り返した。
このプレートを、37℃にて5時間インキュベートした。2種のウィルスを−70℃のフ
リーザーから出し、そして迅速に解凍した。それぞれのウィルスを2×10pfu/m
lに希釈し、42mlの無血清培地を生成した。6ウェルプレートをインキュベーターか
ら取り出し、そして前処理培地を全てのウェルから吸引した。1mlの培地をコントロー
ルプレートのそれぞれのウェルに加えた(化合物無し)。それぞれのプレートセットに、
2×10pfu/mlに希釈したTBEまたはWNのどちらかを、1ウェルあたり1m
lずつ入れた。このプレートを室温にて1時間インキュベートし、次いで培地を除き、そ
して細胞の前処理に用いたときと同じ濃度の試験化合物を加えた、2mlのRPMI16
40+1%FBSで置換した。このプレートを37℃にて18時間インキュベートした。
【0122】
ウィルス力価を決定するための24ウェルプレートを調製するために、継代131代目
のSW13細胞のT175組織培養フラスコ(NUNC)8つを、トリプシン−EDTA
(1×)で2回洗浄し、そして37℃にて2〜3分間インキュベートした。細胞を、1フ
ラスコにつき11.5mlの増殖培地に再懸濁し、そして貯蔵した。貯蔵された細胞懸濁
液について細胞計数を行い、そして結果は、99%の生存率において1.7×10細胞
/mlであった。細胞懸濁液80mlを、680mlに希釈した。これらの細胞を、8つ
の24ウェルプレート上にて、1ウェルあたり1mlアリコートずつ分配した。プレート
を、コンフルエントな単層を形成するように一晩インキュベートした。
【0123】
感染後18時間にて、PMO処理をし、ウィルス感染された6ウェルプレートから得ら
れた培地の上清を、それぞれの個々のウェルから収集した。収集物の内30μlを、96
ウェルプレートの1カップに、270μlの無血清培地と共に配置した。サンプルの残り
は、クライオチューブ(cryotube)に入れ、そして−70℃で保管した。24ウ
ェルプレートから培地を除き、そして250μlの滴定希釈液を、96ウェルプレートか
ら24ウェルプレートに移し、これを37℃にて1時間インキュベートした。1mlのア
ガロース重層培地をそれぞれのウェルに加え、そして、室温にてアガロースが固まらせた
後、プレートを37℃にて5日間インキュベートした。5日後、プレートをインキュベー
ターから取り出し、それぞれのウェルに1mlの10%ホルモル生理食塩水を加え、そし
てプレートを室温にて3時間放置した。アガロース培地を除くためにプレートを流水で洗
浄し、そして残りのプレートを洗浄する間に、逆さにして排水するために放置した。次い
で、それぞれのウェルに1mlの0.1%ナフタレンブラック染色液を入れ、そして、染
色液を除き、かつプレートを流水で洗浄する前に、プレートを30分間放置した。次いで
、これらを3時間乾燥させるために(逆さにして)放置した。力価を決定するために、ウ
ィルスプラークを計数した。
【0124】
図4Aおよび4Bは、PMO処理した感染から得たウィルス力価を、未処理のコントロ
ールに対する%として示しており、ここで、ウィルスに感染された細胞を、TBEVまた
はWNVのどちらかで感染し、そして、TBEアンチセンス化合物(図4A、ここで、こ
の化合物は配列番号25を有する)または、コントロール化合物(図4B、乱雑な配列)
のどちらかで処理する。図4Aおよび図4B内のウィルス力価の比較から見られるように
、全ての細胞(処置した、およびコントロールの)のウィルス力価が、化合物濃度の増加
に伴って減少し、このことは、アンチセンス化合物およびコントロール化合物の双方に存
在する、付属したアルギニンの豊富なペプチドの細胞毒性効果によると考えられる。化合
物濃度が15μM以上の場合、WNVとの比較(図4A)、および、乱雑な配列のコント
ロールとの比較(図4Aおよび4Bの比較)の双方において、TBEウィルス阻害におけ
る配列特異的な増加が見られる。
【0125】
(実施例3:アンチセンスPMOによるデング熱ウィルス血清型1−4の阻害)
デング熱/デング出血熱(DF/DHF)は、過去20年以上にわたって、主要な世界
的な健康上の問題となっている。デング熱ウィルス(DEN)の地理学的分布、蚊である
その媒介昆虫、およびそれに起因する疾患の苦しみは、増加し続けている。世界保健機関
は、毎年5000万〜1億人の新たな感染が起きていると推定する。DF/DHFは現在
、南アジアにおいて、子供たちの間の入院および死亡の主要な原因であり、そして、その
発生率はアメリカにおいて鋭く上昇している。現在、ワクチンも、または有効な治療法も
存在しない。成功するワクチンまたは治療法の1つの必要条件は、ヒトのDENの4つの
血清型全てに対して有効であることである。この研究の目的は、3’CSを標的としたP
MOの、培養されたVero細胞内の4種の血清型のDENの複製の阻害に対する効力お
よび特異性を評価することである。5つのPMO化合物を、ウィルスの転写および/また
は翻訳において重要であると認識されている正鎖DEN2 RNA内の配列要素を標的と
して設計した(4、5)。本研究においてPMOは、Vero E6細胞への侵入を容易
にするために、アルギニンの豊富なペプチドと結合体化した。
【0126】
デング熱2型ウィルス(DEN2)の3’−CS領域とハイブリダイズするように設計
したPMOを、哺乳動物細胞培養物内でのデング熱ウィルスの複製を阻害する能力につい
て評価した。このPMOは、その培養物内の細胞への侵入を容易にするために、短いアル
ギニンの豊富なペプチドと結合体化した(RC−5’−PMO)。Vero E6
細胞をPMO薬剤と共にインキュベートし、DEN血清型1−4を接種し、そして、5〜
8日後のプラークアッセイによってウィルス力価を決定した。3’環化配列を標的とした
化合物(3’CS PMO)は、図5Aに示すように、4〜6日間にわたって、用量に依
存した様式および配列特異的な様式で、コントロールに比べて、規模において3オーダー
以上、DEN2の力価を減少させた。図5B−5Dに示すような検出限界を下回るいくつ
かの場合において、10μMの3’CS PMO溶液はそれぞれ、4種のデング熱の血清
型の力価を、規模において2オーダー以上減少させた。有効な抗DEN化合物は、Ver
o E6細胞内で増殖した西ナイルウィルス(WNV)の力価を変化させることは無かっ
た。これらのデータは、3’CS PMO化合物が、DEN1−4型の潜在的な治療薬で
あることを示している。
【0127】
前述から、本発明の、いかに様々な目的および特徴が満たされるか理解される。標的配
列は、いくつかのフラビウィルスにわたって保存されているため、単一のオリゴヌクレオ
チドアナログを、いくつかのウィルスのそれぞれを処置するために用い得る。例えば、配
列番号1またはその相補体である配列番号3に対して指向する単一のアナログは、セント
ルイス脳炎ウィルス、マレーバレー脳炎ウィルス、西ナイルウィルス、クンジンウィルス
、日本脳炎ウィルス、黄熱病ウィルス、デング熱ウィルス−1型、2型、3型、および4
型、ならびに西ナイルウィルスの複製の阻害に用いることができ、そして、配列番号2ま
たはその相補体である配列番号4に対して指向する単一のアナログは、ダニ媒介性脳炎ウ
ィルス、ポワッサンウィルス、跳躍病ウィルス、キャサヌール森林病ウィルス、およびア
ルカーマウィルスの処置に用いることができる。
【0128】
上記の標的配列が、1つの、または相補的な環化配列に限られる場合、上記のアナログ
は、ゲノム上の正鎖、および最初の複製物であるアンチセンス鎖の双方における、環化ス
テムの二次構造の崩壊に有効であり、それによって、正鎖および逆鎖の双方の複製のレベ
ルにおいて、ウィルス複製の阻害に働く。
【0129】
上記のアナログは体内で安定であり、いくつかのアナログ構造(例えば、PMO)につ
いて、経口投与し得る。さらに、上記のアナログとウィルス標的との間のヘテロ二重鎖の
形成は、フラビウィルスによる感染の存在または非存在の確認に、および/または、宿主
による治療剤の取り込みの確認に用い得る。
【0130】
【表10】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【公開番号】特開2010−42015(P2010−42015A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231039(P2009−231039)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【分割の表示】特願2006−522728(P2006−522728)の分割
【原出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(501237039)エイブイアイ バイオファーマ, インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】