説明

フルオレン誘導体の製造方法

【課題】
工業的な実施に好適なフルオレン誘導体の製造方法、即ち、フルオレノンとフェノキシエタノールの反応物から不純物を効率よく除去し、高純度で色相の良好な9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを高収率で製造する方法を提供する。
【解決手段】
ヘテロポリ酸を触媒として用いてフルオレノンとフェノキシエタノールとを反応させて9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを製造する方法において、得られた反応液から、水と、この水と分液可能な有機溶剤とから構成される抽剤を用いて、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを有機相に分配させて回収することにより高純度の9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを効率よく得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、変性アクリル樹脂等の原料として有用なフルオレン誘導体、詳しくは、フルオレノンとフェノキシエタノールとを反応させて9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを製造する方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンなどのフルオレン誘導体は、耐熱性、透明性に優れ、高屈折率を備えたポリマー原料として有望であり、光学レンズ、フィルム、プラスチック光ファイバー、光ディスク基盤、耐熱性樹脂やエンジニヤリングプラスチックなどの原料として期待されている。前記プラスチック原料として用いるには、フルオレン誘導体の着色の低減および化合物の純度がきわめて重要である。一般に、製造過程で混入したり、原料に含まれている金属分、S分や触媒成分等の残存物が少ない方が、フルオレン誘導体の着色、透明性に優れている。したがって、反応生成物を精製して単離する方法が重要になる。
【0003】
9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの製造方法としては、硫酸とチオールを触媒としてフルオレノンとフェノキシエタノールとを反応させ、得られた反応液を低級脂肪族アルコールに溶解させた後、水を添加して9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを析出させて回収する方法が開示されている(特許文献1)。また、得られた反応液を水と相溶し難い有機溶剤および水を加えて溶解、水洗し、水相と油相に分離し、油相から9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを析出させて回収する方法が開示されている(特許文献2)。しかし、これらの方法では触媒として大量の硫酸とチオールを用いるため、製品中に硫酸誘導体が残存触媒として残る。触媒由来のイオウ分が混入することにより、製品の着色や安定性低下、純度低下などの問題が生じる。更に光学樹脂原料など、高純度の製品を得るためにはイオウ分を除くために精製を繰り返す必要があり、工業的に有利な方法とは言えない。
【0004】
硫酸とチオールを触媒としてフルオレノンとフェノキシエタノールとを反応させ、得られた反応液にアルカリ水溶液を添加した後、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンと硫酸塩とを共沈させて回収する方法が開示されている(特許文献3)。しかし、この方法では高純度の製品を得るためには更に共沈させた硫酸塩を分離するために精製する必要があり、工業的に有利な方法とは言えない。
【0005】
【特許文献1】特開平7−165657
【0006】
【特許文献2】特開平10−45655
【0007】
【特許文献3】特開2005−104898
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、工業的な実施に好適なフルオレン誘導体の製造方法、即ち、フルオレノンとフェノキシエタノールの反応物から不純物を効率よく除去し、高純度で色相の良好な9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを高収率で製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ヘテロポリ酸を触媒として用いてフルオレノンとフェノキシエタノールとを反応させて9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを製造する方法において、得られた反応液から、水と、この水と分液可能な有機溶剤とから構成される抽剤を用いて、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを有機相に分配させて回収することにより反応物から不純物を効率よく除去できることを見出した。
【0010】
更に、本発明は、前記方法により得られた有機相より有機溶剤およびフェノキシエタノールの全部または一部を留去した後、晶析溶剤または晶析溶剤と水の混合物を添加し、冷却して目的とする9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを晶析させて回収することで高い純度のフルオレン誘導体が効率よく製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明においては、触媒であるヘテロポリ酸の存在下で、フルオレノンとフェノキシエタノールとを反応させて9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを得る。この際の反応方法は特に限定されるものではないが、通常、原料のフルオレノンとフェノキシエタノール、およびヘテロポリ酸触媒を反応装置に仕込み、空気中又は窒素、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気下、トルエン、キシレンなどの不活性溶媒存在下又は非存在下で加熱攪拌することにより行うことができる。また、必要に応じて、反応系を脱水しながら反応してもよい。反応はバッチ方式でも連続方式でもよい。反応温度は、50〜300℃、好ましくは80〜250℃、更に好ましくは120〜180℃とするのがよい。
【0012】
本発明に用いられるヘテロポリ酸とは、一般的には異なる2種以上の酸化物複合体からなる複合酸化物酸、およびこれらのプロトンの一部もしくはすべてを他のカチオンで置き換えたものである。ヘテロポリ酸は、例えば、リン、ヒ素、スズ、ケイ素、チタン、ジルコニウムなどの元素の酸素酸イオン(例えば、リン酸、ケイ酸)とモリブデン、タングステン、バナジウム、ニオブ、タンタルなどの元素の酸素酸イオン(バナジン酸、モリブデン酸、タングステン酸)とで構成されており、その組み合わせにより種々のヘテロポリ酸が可能である。具体的には、リンモリブデン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸、ケイタングステン酸、リンバナドモリブデン酸などが例示される。ヘテロポリ酸は無水物であってもよく、結晶水含有物であってもよい。また、ヘテロポリ酸は活性炭、アルミナ、シリカ−アルミナ、ケイソウ土などの担体に担持した形態で用いてもよい。これらのヘテロポリ酸は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲でヘテロポリ酸以外の他の触媒を併用してもよい。
【0013】
ヘテロポリ酸の使用量は特に限定されるものではないが、充分な反応速度を得るには、原料であるフルオレノン類の重量に対して、0.0001重量倍以上、好ましくは0.001〜30重量倍、更に好ましくは0.01〜5重量倍程度である。
【0014】
フェノキシエタノールの使用量は、特に限定されるものではないが、副反応抑制及び経済性の点から、通常、フルオレノン1モルに対して、2〜50モル、好ましくは2.5〜20モル、さらに好ましくは3〜10モル程度である。また、これらの化合物を反応溶媒として用いることもできる。
【0015】
本発明の特徴は、ヘテロポリ酸を触媒として用いてフルオレノンとフェノキシエタノールとを反応させて9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを製造する方法において、得られた反応液から水と、この水と分液可能な有機溶剤とから構成される抽剤を用いて、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを有機相に分配させて、工業的に有利な方法で、高純度、高収率で回収することにある。
【0016】
本発明において、フルオレノンとフェノキシエタノールとの反応終了後の反応液に水と、この水と分液可能な有機溶剤を加えて溶解、洗浄する工程は、通常の方法で行われる。すなわち、前記反応液に水と、この水と分液可能な有機溶剤を添加し、必要に応じて攪拌下に、好ましくは高められた温度、具体的には有機相が均一になる温度に加温し、攪拌することにより有機相を洗浄する。水と、この水と分液可能な有機溶剤の添加は、同時でも良いし、何れか一方を後から添加してもよい。この洗浄操作は1回でもよく、複数回行うこともできる。
【0017】
本発明に用いられる水と分液可能な有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素類、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジ-iso-プロピルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、ジフェニルエーテルなどの脂肪族エーテル類、酢酸エチル、酢酸n-ブチルなどのエステル類などが挙げられ、その中でもトルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンが好ましい。その使用量は、特に限定されるものではないが、経済性の点から、通常、フルオレノンの重量に対して、0.1重量倍以上、好ましくは0.5〜100重量倍、更に好ましくは1〜20重量倍程度である。これらの有機溶媒は単独で使用もよく、また2種以上の混合物で使用してもよい。また反応溶媒をそのまま使用することもできる。
【0018】
本発明に用いられる水は、特に限定されるものではないが、工業用水、水道水、イオン交換水、蒸留水などを使用することができる。また、本発明の目的を損なわない範囲で、これらの水に有機化合物、無機化合物、またはこれらの塩を溶解させた水溶液を用いることもできる。水に溶解する有機化合物、無機化合物、またはこれらの塩としては、水に相溶しやすく、水相に分配されるものならば特に限定されるものではない。これらの具体例としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、アンモニアなどの無機塩基、脂肪族、脂環族、芳香族または複素環式アミン類などの有機塩基、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、などの二塩基酸、酒石酸、クエン酸などのオキシカルボン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸などのポリアミノカルボン酸など挙げられる。添加する水の使用量は、特に限定されるものではないが、経済性の点から、通常、フルオレノンの重量に対して、0.1重量以上、好ましくは0.5〜100重量、更に好ましくは1〜20重量程度である。
【0019】
かくして洗浄操作が完了する。次に該反応混合液を静置し、有機相と水相に分離し、有機相から目的とする9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを回収する。この際、得られた有機相は、活性炭、活性白土、酸性白土、活性アルミナ、ゼオライト、イオン交換樹脂などの吸着剤による通常の吸着精製処理を行うこともできる。
【0020】
有機相から目的物を回収する方法については、有機相を適当な温度(例えば、−10〜30℃、特に0〜30℃程度)に冷却し、目的とする9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを晶析させて回収することができる。更に、本発明者らは、有機相より有機溶剤およびフェノキシエタノールの全部または一部を留去した後、晶析溶媒または晶析溶媒と水を添加して溶解させた後、冷却して目的とする9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを晶析させて回収することにより、本発明の目的とする高純度の9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを容易に得ることができることを見出した。なお、析出した目的物は、必要に応じて濾過・乾燥などして製品とすることができる。
【0021】
晶析溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−プタンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、などの一価もしくは多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素類、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジ-iso-プロピルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、ジフェニルエーテルなどの脂肪族エーテル類、酢酸エチル、酢酸n-ブチルなどのエステル類などが挙げられ、その中でもメタノール、エタノール、2−プロパノール、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンが好ましい。その使用量は、特に限定されるものではないが、経済性の点から、通常、フルオレノンの重量に対して、0.1重量倍以上、好ましくは0.5〜100重量倍、更に好ましくは1〜10重量倍程度である。
【0022】
なお、回収した反応生成物9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを更に精製する場合の精製方法としては、再結晶する方法が挙げられる。再結晶操作は、慣用の方法、例えば、再結晶溶媒に溶解し、混合液を冷却することにより行うことができる。通常、再結晶溶媒の沸点以下の温度で加温して溶解し、精製した溶液を、適当な温度(例えば、−10〜30℃、特に0〜30℃程度)に冷却することにより結晶を析出させることができる。これらの再結晶操作は必要に応じて繰り返し行うことができる。再結晶溶媒は特に限定されるものではないが、フルオレン誘導体が溶解する溶媒であれば広く使用でき、具体的には前記晶析溶媒と同じ溶媒を使用することができる。析出した結晶は濾過などにより回収され、必要により洗浄し、乾燥することにより目的化合物フルオレン誘導体を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、工業的な実施に好適な方法で、フルオレノンとフェノキシアルコールから9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを高純度、高収率で製造することができる。特に、目的製品中の残存触媒分や金属分を著しく低減できる。その結果、良好な着色度を有するという特有の効果を奏する。
【0024】
(実施例)
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
攪拌機、窒素吹込管、温度計、および冷却管を備えたガラス製反応器にフルオレノン86.4g(0.480モル)、フェノキシエタノール663.2g(4.80モル)、トルエン346.6gおよび触媒としてリンタングステン酸[(HPW1240)・nHO]2.17gを加え、温度を130℃に保ちながら、窒素雰囲気下で約12間攪拌した。得られた反応液に80℃でトルエン519.7g加えた後、水175.7gで3回洗浄を繰り返した。水相のpHは1回目が1で、2回目が3で、3回目が7であった。分離した有機相を加熱下、減圧濃縮によりトルエンおよび過剰のフェノキシエタノールを留去した。この濃縮液にトルエン600gを加え、80℃で1時間加熱攪拌した後、室温まで徐々に冷却し、目的物を濾別し、トルエンで洗浄して9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン193.6g(0.44モル、収率92.0%)の白色結晶を得た。得られた結晶のLC純度、S分、金属分および色相評価(加熱溶解色)結果を表1に示す。
【実施例2】
【0026】
攪拌機、窒素吹込管、温度計、および冷却管を備えたガラス製反応器にフルオレノン86.4g(0.480モル)、フェノキシエタノール663.2g(4.80モル)、トルエン346.6gおよび触媒としてケイタングステン酸[(HSiW1240)・nHO]2.17gを加え、温度を130℃に保ちながら、窒素雰囲気下で約8.5時間攪拌した。得られた反応液に80℃でトルエン519.7g加えた後、水175.7gで3回洗浄繰り返した。水相のpHは1回目が1で、2回目が3で、3回目が7であった。分離した有機相を加熱下、減圧濃縮によりトルエン全量およびフェノキシエタノール360gを留去した。この濃縮液にメタノール400gおよび水100gを加え、70℃で1時間加熱攪拌した後、室温まで徐々に冷却し、目的物を濾別し、メタノールで洗浄して9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン189.4g(0.43モル、収率90.1%)の白色結晶を得た。得られた結晶のLC純度、S分、金属分および色相評価(加熱溶解色)結果を表1に示す。
【実施例3】
【0027】
攪拌機、窒素吹込管、温度計、および冷却管を備えたガラス製反応器にフルオレノン86.4g(0.480モル)、フェノキシエタノール663.2g(4.80モル)、トルエン346.6gおよび触媒としてリンタングステン酸[(HPW1240)・nHO]2.17gを加え、温度を130℃に保ちながら、窒素雰囲気下で約12間攪拌した。得られた反応液に80℃でトルエン519.7g加えた後、10%シュウ酸水溶液175.7gで洗浄後、水175.7gで再度洗浄を行った。分離した有機相を加熱下、減圧濃縮によりトルエンおよび過剰のフェノキシエタノールを留去した。この濃縮液にトルエン600g、活性炭2.0gを加えて80℃で1時間加熱攪拌した後、熱ろ過により活性炭を除去した。得られたろ液を室温まで徐々に冷却し、目的物を濾別し、トルエンで洗浄して目的物の結晶を得た。この結晶とメタノール816gを再度ガラス容器に加え、70℃で1時間加熱攪拌した後室温まで徐々に冷却して9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン168.8g(0.38モル、収率80.2%)の白色結晶を得た。得られた結晶のLC純度、S分、金属分および色相評価(加熱溶解色)結果を表1に示す。
【0028】
(比較例1)
攪拌機、窒素吹込管、温度計、および冷却管を備えたガラス製反応器にフルオレノン86.4g(0.480モル)、フェノキシエタノール663.2g(4.80モル)、トルエン346.6gおよび触媒としてリンタングステン酸[(HPW1240)・nHO]2.17gを加え、温度を130℃に保ちながら、窒素雰囲気下で約12時間攪拌した。この反応液を加熱下、減圧濃縮によりトルエンおよび過剰のフェノキシエタノールを留去した。この濃縮液にトルエン600gを加え、80℃で1時間加熱攪拌した後、室温まで徐々に冷却し、目的物を濾別し、トルエンで洗浄して9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン174.1g(0.397モル、収率82.7%)の白色結晶を得た。得られた結晶のLC純度、S分、金属分および色相評価(加熱溶解色)結果を表1に示す。
【0029】
(比較例2)
攪拌機、冷却管および滴下ロートを備えたガラス製反応器にフルオレノン45g(0.25モル)、フェノキシエタノール138g(1.00モル)、α−メルカプトプロピオン酸0.2mLを仕込み、均一に溶解させてから95%硫酸45mLを30分かけて滴下した後、反応温度を65℃で4時間保温し、反応を続けて完結させた。次いで、反応液に水90g、トルエン360gを加え、80〜85℃で30分間水洗後、30分間静置して、下層の水相を分離した。更に2回同量の水を加えて水洗を繰り返し、硫酸を除去した。反応液を室温まで冷却して結晶を析出させ、濾過後、70℃で1日間減圧乾燥した。得られた結晶9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン82.3g(0.19モル、収率74.5%)の白色結晶を得た。得られた結晶のLC純度、S分、金属分および色相評価(加熱溶解色)結果を表1に示す。
【0030】
なお、本実施例、比較例において純度は高速液体クロマトグラフィーを用いて分析した面積百分率で表示した。またS分、金属分はイオンクロマトグラフ法により評価した。さらに色相評価は空気中220℃で3時間加熱溶解後の色相をAPHAで、透明性を目視で評価した[透明性評価:○(透明)>△(やや濁り有)>×(白濁)]。
【0031】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘテロポリ酸を触媒としてフルオレノンとフェノキシエタノールとを反応させて9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを製造する方法において、得られた反応液から、水と、この水と分液可能な有機溶剤とから構成される抽剤を用いて、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを有機相に分配させて回収することを特徴とする、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの製造方法。
【請求項2】
水と分液可能な有機溶剤が、芳香族炭化水素類、ハロゲン化芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類、脂肪族エーテル類、およびエステル類の溶剤から選ばれる少なくとも一種である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
有機相を冷却し、目的とする9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを析出させて回収することを特徴とする請求項1、2記載の製造方法。
【請求項4】
有機相より有機溶剤およびフェノキシエタノールの全部または一部を留去した後、晶析溶剤または晶析溶剤と水の混合物を添加し、目的とする9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを析出させて回収することを特徴とする請求項1、2記載の製造方法。
【請求項5】
晶析溶剤がアルコール類、ケトン類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類、脂肪族エーテル類、およびエステル類の溶剤から選ばれる少なくとも1種である請求項4記載の製造方法。

【公開番号】特開2007−197368(P2007−197368A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18061(P2006−18061)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(000216243)田岡化学工業株式会社 (115)
【Fターム(参考)】