説明

フルオロアルキル界面活性剤

式(I)
【化1】


[式中、
mおよびdは、それぞれ独立して1又は2の整数であり;
nは、独立して0又は1であり;
各Rは、独立して水素又はC1〜C4アルキル基であり;
Aは、独立して水素又は−C(O)−O−Bであり;
0は、1〜約50個の親水基で中断又は置換されている炭素数約2〜約100の直鎖、分岐鎖、若しくは環式の脂肪族基、又はこれらの組み合わせであって、前記親水基がヒドロキシル、アミノ、エーテル、およびこれらの混合物からなる群から選択され、親水基、対、炭素原子の比が約1:1.1〜約1:10であり、各炭素原子に1個以下の親水基が結合しており、親水基間に共有結合がないものであり、
各Bは、独立して式(IIa)、(IIb)又は(IIc)の1価の基であり:
(IIa) Rf1(CH2t(R1r
(IIb) Rf2(CH2CF2p(CH2CH2q(R1r
(IIc) Rf3O(CF2CF2p(CH2CH2q(R1r
(式中、
f1とRf2はそれぞれ、C1〜C6直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキルであり;
f3は、任意に1個、2個又は3個のエーテル酸素原子で中断されているC1〜C7直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキル基であり;
tは、1〜約10の整数であり;
pおよびqは、それぞれ独立して1〜約3の整数であり;
rは0又は1であり;
1は、−S(CH2t−から選択される2価の基である)
但し、
mが1のとき、nは1であり;
mが2のとき、nは0であり、Aは水素であり、dは1であり;
dが2のとき、mは1であり、Aは−C(O)−O−Bであり、R0は炭素数が少なくとも3であり、窒素と親水基は異なる炭素原子に結合している]
の組成物および、界面活性剤としてのその使用を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、フルオロケミカル界面活性剤の合成と使用に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロケミカル鎖を有する界面活性剤および表面処理剤では、パーフルオロアルキル鎖が長いほど、所与の濃度でフッ素含有率が高く、通常、性能がより優れている。しかし、より長いパーフルオロアルキル鎖から誘導されたフッ素化材料ほど、高価である。従って、フッ素含有量を低減しつつ、同等又はそれより高い性能を発揮することが望ましい。フッ素含有量を低減するとコストが削減されるが、製品の性能を維持することが必要である。
【0003】
米国特許第3,719,698号明細書は、第一級アルキルアミンと2当量のフッ素化アクリレートタイプのエステルを反応させて、布帛用の撥水撥油性仕上剤として有用な付加生成物を得ることを開示している。
【0004】
界面活性剤の性能を改善し、フッ素有効性を増加させること、即ち、界面活性剤の有効性又は性能を向上させ、同レベルの性能を達成するのに必要な高価なフッ素成分の割合がより低くて済むようにすること、又は同レベルのフッ素を使用してより優れた性能を有するようにすることが望ましい。とりわけ望ましいのは、現在の市販の製品と類似の性能を有するが、パーフルオロアルキル末端(tails)がより短い界面活性剤である。本発明は、このような界面活性剤を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、式(I)の組成物を含む。
【0006】
【化1】

【0007】
[式中、
mおよびdは、それぞれ独立して1又は2の整数であり;
nは、独立して0又は1であり;
各Rは、独立して水素又はC1〜C4アルキル基であり;
Aは、独立して水素又は−C(O)−O−Bであり;
0は、1〜約50個の親水基で中断又は置換されている炭素数約2〜約100の直鎖、分岐鎖、若しくは環式の脂肪族基、又はこれらの組み合わせであって、前記親水基がヒドロキシル、アミノ、エーテル、およびこれらの混合物からなる群から選択され、親水基、対、炭素原子の比が約1:1.1〜約1:10であり、各炭素原子に1個以下の親水基が結合しており、親水基間に共有結合がないものであり、
各Bは、独立して式(IIa)、(IIb)又は(IIc)の1価の基であり:
(IIa) Rf1(CH2t(R1r
(IIb) Rf2(CH2CF2p(CH2CH2q(R1r
(IIc) Rf3O(CF2CF2p(CH2CH2q(R1r
(式中、
f1とRf2はそれぞれ、C1〜C6直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキルであり;
f3は、任意に1個、2個又は3個のエーテル酸素原子で中断されているC1〜C7直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキル基であり;
tは、1〜約10の整数であり;
pおよびqは、それぞれ独立して1〜約3の整数であり;
rは0又は1であり;
1は、−S(CH2t−から選択される2価の基である)
但し、
mが1のとき、nは1であり;
mが2のとき、nは0であり、Aは水素であり、dは1であり;および
dが2のとき、mは1であり、Aは−C(O)−O−Bであり、R0は炭素数が少なくとも3であり、窒素と親水基は異なる炭素原子に結合している]
【0008】
本発明は、更に、媒体を前述の式(I)の組成物と接触させる工程を含む、媒体の表面張力を低下させる方法を含む。
【0009】
本発明は、更に、基材に堆積する前に、前述の式(I)(式中、R0はR01であり、R01は、約5〜約50個のエーテル酸素原子で中断されている炭素数約10〜約100の直鎖又は分岐鎖の脂肪族基、又はこれらの組み合わせであって、エーテル酸素原子、対、炭素原子の比が約1:2〜約1:3であり、各炭素原子に1個以下のエーテル酸素原子が結合しており、エーテル酸素原子間に共有結合がない)の1つ以上の化合物を含む組成物をコーティングベースに添加する工程を含む、コーティングされる基材に耐ブロッキング性、オープンタイム延長、およびレベリングを付与する方法を含む。
【0010】
本発明は、更に、前述の式(I)(但し、R0はR01である)の組成物が塗布されている基材を含む。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書では、商標は全て大文字で示される。
【0012】
本明細書に引用される特許は全て参照により本明細書に援用される。
【0013】
本発明は、市販の製品と比較して高いフッ素有効性を有する界面活性剤を提供する。同レベルの性能を達成するのに必要なフッ素の割合が低くて済むか、又は同レベルのフッ素を使用してより優れた性能が得られる。これは、本発明の化合物がより短いパーフルオロアルキル基を含有するため、達成される。
【0014】
本発明は、式(I)の化合物を含む。
【0015】
【化2】

【0016】
[式中、
mおよびdは、それぞれ独立して1又は2の整数であり;
nは、独立して0又は1であり;
各Rは、独立して水素又はC1〜C4アルキル基であり;
Aは、独立して水素又は−C(O)−O−Bであり;
0は、1〜約50個の親水基で中断又は置換されている炭素数約2〜約100の直鎖、分岐鎖、若しくは環式の脂肪族基、又はこれらの組み合わせであって、前記親水基がヒドロキシル、アミノ、エーテル、およびこれらの混合物からなる群から選択され、親水基、対、炭素原子の比が約1:1.1〜約1:10であり、各炭素原子に0又は1個の親水基が結合しており、親水基間に共有結合がないものであり、
各Bは、独立して式(IIa)、(IIb)又は(IIc)の1価の基であり:
(IIa) Rf1(CH2t(R1r
(IIb) Rf2(CH2CF2p(CH2CH2q(R1r
(IIc) Rf3O(CF2CF2p(CH2CH2q(R1r
(式中、
f1とRf2はそれぞれ、C1〜C6直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキルであり;
f3は、任意に1個、2個又は3個のエーテル酸素原子で中断されているC1〜C7直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキル基であり;
tは、1〜約10の整数であり;
pおよびqは、それぞれ独立して1〜約3の整数であり;
rは0又は1であり;
1は、−S(CH2t−から選択される2価の基である)
但し、
mが1のとき、nは1であり;
mが2のとき、nは0であり、Aは水素であり、dは1であり;および
dが2のとき、mは1であり、Aは−C(O)−O−Bであり、R0は炭素数が少なくとも3であり、窒素原子と親水基は異なる炭素原子に結合している]
【0017】
0基中、親水基、対、炭素原子の比は約1:1.1〜約1:10である。好ましくはこの比は、約1:1.1〜約1:5であり、より好ましくは約1:1.1〜約1:4である。
【0018】
0基中、各炭素原子に0又は1個の親水基が結合しており、親水基間に共有結合はない。これは、どの親水基の間にも共有結合は存在しないが、親水基間に水素結合は可能であることを意味する。例えば、親水性ヒドロキシル基とエーテル酸素の間に水素結合が存在し得る。しかし、酸素−酸素共有結合および酸素−窒素共有結合は存在しない(ない)。
【0019】
本発明の一実施形態は、本明細書で式(Ia)として表される前述の式(I)(式中、mは2であり、nは0であり、Aは水素であり、dは1である)の組成物である。
0−N−[CH2CH2CO2B]2 (Ia)
【0020】
これらの材料は、下記の反応スキーム1の経路Aに従って、第一級アミン、R0−NH2をフッ素化アクリル酸エステルに付加することによって調製される。式(Ia)の所望の生成物を得るのに、モノアミンは約2当量のフッ素化アクリル酸エステルを必要とする。付加反応は、通常、溶媒又は追加の触媒なしで達成することができる。しかし、溶媒、例えば、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、又は他の好適な溶媒を使用することができる。必要に応じて、触媒、例えば、トリエチルアミンなどの第三級アミンを使用することができる。好ましくは、付加反応は高温、例えば、40〜80℃で実施される。付加反応の生成物は、通常、式(Ia)の二付加体(bis−adduct)を約80〜約92%含み、残部は一付加体(mono−adduct)中間体および残留フッ素化アクリレートである。ガスクロマトグラフィー(GC)を使用して反応と生成物の純度を監視する。
【0021】
反応スキーム1
経路A
0NH2 + CH2=CHCO2B → R0NHCH2CH2CO2
0NHCH2CH2CO2B + CH2=CHCO2B → R0−N−[CH2CH2CO2B]2 (Ia)
経路B
0(NH2d + BO2CCH=CHCO2B → R0−[NHCH(CO2B)CH2CO2B]d (Ib)
【0022】
本発明の別の実施形態は、本明細書で式(Ib)として表される式(I)(式中、mは1であり、nは1であり、Aは−C(O)−O−Bである)の組成物である。
0−[NHCH(CO2B)CH2CO2B]d (Ib)
【0023】
これらの材料は、上記の反応スキーム1に概略を記載した経路Bに従って、第一級アミンR0−(NH2dをマレイン酸エステルに付加することによって調製される。式(Ib)の所望の生成物を得るのに、モノアミン(式中、dは1である)は約1当量のフッ素化マレイン酸エステルを必要とし、ジアミン(式中、dは2である)は約2当量のフッ素化マレイン酸エステルを必要とする。好ましい反応条件は、式(Ia)の組成物について前述したものと同じである。液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)、又はガスクロマトグラフィー(GC)で付加反応を監視することができる。
【0024】
本発明の別の実施形態は、式(I)(式中、窒素(又は、d=2のとき、複数の窒素)が約40mol%〜100mol%塩形態になっている(salinized))の組成物である。「窒素が約40mol%〜100mol%塩形態になっている(salinized)」の用語は、式(I)の窒素原子がプロトン化された若しくはアルキル化された形態で、又は、部分的にプロトン化された若しくは部分的にアルキル化された形態で存在し得ることを意味する。式(I)の窒素を塩形態にすること(salinization)によって、式(I)の組成物に有用な水分散性および/又は溶解性が付与される。部分的に又は完全に塩形態になった式(I)の組成物を得る簡便且つ好ましい手法は、組成物に酸を添加することを含む。このような酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、蟻酸、プロピオン酸、又は乳酸がある。好ましくは酢酸を使用し、好ましくは(1つ以上の)窒素を完全に塩形態にする。好ましくは、酸の溶媒として水が存在する。式(I)の組成物の当量を基準にして、窒素1つ当たり約1〜約2当量の酸を使用することによって、完全に塩形態にすることができる。
【0025】
部分的に又は完全に塩形態にすることによって本発明の組成物を精製することができる。例えば、組成物に酢酸を添加して、酸溶液を形成し、それをヘキサンなどの溶媒で抽出する。溶媒抽出を使用して、残留フッ素化アクリル酸エステル又はフッ素化マレイン酸エステルを除去し、このようにして本発明の組成物の純度を高くする。
【0026】
本発明の別の実施形態は、式(I)(式中、dは1であり、R0は、1個のヒドロキシル基、エーテル基、又は第三級アミノ基で中断又は置換されている炭素数約2〜約10の直鎖、分岐鎖、若しくは環式の脂肪族基、又はこれらの組み合わせである)の組成物である。式(I)の組成物が好ましく、式(Ia)(式中、R0−は、
−CH2CH2CH2OH;
−CH2CH(OH)CH3
−CH2CH2CH2CH2OH;
−CH2CH2CH2CH2CH2CH2OH;
−CH2CH2N(CH32
−CH2CH2CH2N(CH32
−CH2CH2CH2CH2N(CH32
−CH2CH2N(CH2CH32
−CH2CH2CH2N(CH2CH32;および
−CH2CH2CH2CH2N(CH2CH32
からなる群から選択される)のものがとりわけ好ましい。これらの組成物は、塩形態になった形態で、水性媒体中で界面活性剤として有用である。
【0027】
式(I)の他の好ましい組成物は、R0がR01であるものである。R01は、R0の部分集合であり、約5〜約50個のエーテル酸素で中断されている炭素数約10〜約100の、より好ましくは約5〜約20個のエーテル酸素で中断されている炭素数約20〜40の直鎖又は分岐鎖の脂肪族基、又はこれらの組み合わせであって、エーテル酸素原子、対、炭素原子の比が約1:2〜約1:4、より好ましくは約1:2〜約1:3であり、各炭素原子に1個以下のエーテル酸素原子が結合しており、エーテル酸素原子間に共有結合がない。これらの組成物中、好ましくはR01の分子量は、各原子価が−NH2基で占められているとき、約200〜約2200であり、水に対する溶解度は1重量%以上であり、より好ましくは5重量%以上である。これらの材料は、アミン末端ポリオキシアルキレンとフッ素化アクリレートおよびフッ素化マレエートとの反応によって得られる。
【0028】
式(Ia)および式(Ib)の組成物の形成に有用なアミン末端ポリオキシアルキレンとしては、アミン末端ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(mPEGNH2)又はアミン末端ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールトリブロックモノメチルエーテル(mPEG−PPG−PEG−NH2)が挙げられる。それらは、Bueckmannら(Makromol.Chem.182, p.1379−1384, 1981)によって記載されているように、対応するヒドロキシル末端モノメチルエーテルを臭化チオニルで処理した後、アンモニアで処理することによって得ることができる。同様に、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム共重合体のアミン末端モノメチルエーテルも得ることができる。これらの材料の市販の例としては、Huntsman Chemical(Salt Lake City, UT)製のJEFFAMINEポリオキシアルキレンアミンXTJ−505およびXTJ−506、並びに、SURFONAMINE L−55としても知られ、Huntsman Chemical(Salt Lake City, UT)から入手可能な開発サンプルXTJ−580がある。
【0029】
式(Ib)の組成物の形成に有用な他のアミン末端ポリオキシアルキレンとしては、アミン末端ポリエチレングリコールエーテル(NH2−PEG−NH2)、アミン末端ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールトリブロックエーテル(NH2−PEG−PPG−PEG−NH2)、およびエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのアミン末端ランダム共重合体が挙げられる。それらは、対応するヒドロキシル末端ポリマーを塩化チオニルおよびアンモニアで処理することにより合成で得ることができる。これらの材料の市販の例としては、Huntsman Chemical(Salt Lake City, UT)から入手可能なJEFFAMINEポリオキシアルキレンアミンED−600(XTJ−500、分子量600)、ED−900(XTJ−501、分子量900)、ED−2003(XTJ−502、分子量2000)、およびHK−511(分子量220)がある。
【0030】
好ましくは、アミン末端ポリオキシアルキレンは、約5〜約20の繰り返し単位、より好ましくは約10〜約20の繰り返し単位を有する。本発明の組成物を調製するのに好ましいアミン末端ポリオキシアルキレンは水に対する溶解度が1重量%以上であり、より好ましくは水に対する溶解度が5重量%以上である。これらの材料は、通常、主に、ポリエチレングリコール(PEG)ベースであり、従って、ポリプロピレングリコール(PPG)ベースの材料よりも親水性が高い。
【0031】
式(Ia)および(Ib)(式中、R0はR01である)の組成物は、ほぼ中性〜僅かに塩基性のpH、例えば、pH約6〜pH約9、およびそれより高い水性媒体中で良好な界面活性特性を示す。従って、それらは、アニオン性又は非イオン性界面活性剤又はこれらの混合物を使用する多くのラテックスベースの配合物を含む様々な市販の配合物中で界面活性剤および表面処理剤として有用である。
【0032】
本発明の別の実施形態は、式(I)(式中、Bは、Rf1(CH2t(R1r−、式(IIa)からなる群から選択される)の組成物である。この実施形態では、好ましくはRf1は、C4〜C6直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキルであり、tは約2〜約4であり、rは0である。
【0033】
本発明の別の実施形態は、式(I)(式中、Bは、Rf2(CH2CF2p(CH2CH2q(R1r−、式(IIb)からなる群から選択される)の組成物である。この実施形態では、好ましくはRf2は、C4〜C6直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキルであり、pおよびqはそれぞれ独立して1又は2であり、rは0である。
【0034】
本発明の別の実施形態は、式(I)(式中、Bは、Rf3O(CF2CF2p(CH2CH2q(R1r−、式(IIc)からなる群から選択される)の組成物である。この実施形態では、好ましくはRf3は、任意に1個、2個又は3個のエーテル酸素原子で中断されているC3〜C7直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキルであり、pおよびqはそれぞれ独立して1又は2であり、rは0である。
【0035】
本発明の式(Ia)の組成物を形成するのに有用なフッ素化アクリレートは、米国特許第3,282,905号明細書および欧州特許出願公開第1632542A1号明細書に記載の手順を使用して、対応するフッ素化アルコールからアクリル酸でエステル化することによって調製される。或いは、フッ素化アクリル酸エステルは、米国特許第3,890,376号明細書に開示されている手順に従って対応する硝酸エステルから製造することができる。本発明の式(Ib)の組成物を形成するのに有用なフッ素化マレエートは、対応するフッ素化アルコールから無水マレイン酸でエステル化することによって調製される。
【0036】
本発明に有用なフッ素化アクリレートおよびフッ素化マレエートを形成するのに有用なフッ素化アルコールとしては、式(IIIa)、(IIIb)、および(IIIc)のものが挙げられる。
(IIIa) Rf1(CH2tOH
(IIIb) Rf2(CH2CF2p(CH2CH2qOH
(IIIc) Rf3O(CF2CF2p(CH2CH2qOH
分岐鎖パーフルオロアルキル基を含有する組成物が好適であるが、式(IIIa)では、パーフルオロアルキル基は好ましくは直鎖である。パーフルオロアルキルエタノール(式中、t=2であり、Rf1は炭素数2または6である)は、市販のパーフルオロアルキルエタノールのテロマー混合物を分留することによって得ることができる。市販されている式(IIIa)の具体的なフッ素化アルコールとしては、1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−ヘキサノールおよび1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−オクタノールが挙げられる。
【0037】
式(IIIb)(式中、Rf2は炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のパーフルオロアルキル基である)のフッ素化テロマーアルコールは、反応スキーム2に従って合成により得ることができる。
【0038】
【化3】

【0039】
反応スキーム2
フッ化ビニリデン(VDF)と直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキルアイオダイドとのテロメリゼーションは周知であり、構造式Rf2(CH2CF2pI(式中、pは1以上であり、Rf2はC1〜C6パーフルオロアルキル基である)の化合物が得られる。例えば、Balagueら、「Synthesis of fluorinated telomers, Part 1, Telomerization of vinylidene fluoride with perfluoroalkyl iodides」、 J.Fluor.Chem.(1995), 70(2), 215−23、およびMontefuscoら、「Original Vinylidene Fluoride−Containing Acrylic Monomers as Surface Modifiers in Photopolymerized Coatings」、 Macromolecules(2004), 37(26), 9804−9813を参照されたい。特定のテロマーアイオダイドは分留によって単離される。米国特許第3,979,469号明細書に記載の手順によってテロマーアイオダイドをエチレンで処理し、テロマーエチレンアイオダイド(IV)(式中、qは1〜3又はそれより大きい)を得ることができる。国際公開第95/11877号パンフレットに開示されている手順に従って、テロマーエチレンアイオダイド(IV)をオレウムで処理し、加水分解して、対応するテロマーアルコール(IIIb)を得ることができる。或いは、テロマーエチレンアイオダイド(IV)をN−メチルホルムアミドで処理した後、エチルアルコール/酸で加水分解することができる。
【0040】
フッ化ビニリデンとエチレンのテロメリゼーションから誘導され、本発明に有用なフッ素化アクリレートの形成に有用なフッ素化テロマーアルコール(IIIa)および(IIIb)の具体例としては、表1Aに記載されているものが挙げられる。具体的なアルコールのリスト、表1Aおよび表1B、並びに本明細書の実施例に記載されているC37基、C49基、およびC613基は、特に他の記載がない限り、直鎖パーフルオロアルキル基を指す。
【0041】
【表1】

【0042】
式(IIIc)(式中、p=1であり、Rf3は、任意に1個、2個又は3個のエーテル酸素原子で中断されている炭素数2〜7の直鎖又は分岐鎖のパーフルオロアルキル基である)のフッ素化アルコールは、反応スキーム3に従って合成により得ることができる。
【0043】
【化4】

【0044】
反応スキーム3
パーフルオロアルキルエーテルアイオダイド(V)は、米国特許第5,481,028号明細書の実施例8に記載の手順により、出発物質としてパーフルオロアルキルビニルエーテルを使用して製造される。スキーム2の第2の反応では、パーフルオロアルキルエーテルアイオダイド(V)を過剰のエチレンと高温高圧で反応させ、テロマーエチルアイオダイド(VI)を得る。エチレンの付加は熱的に実施できるが、好適な触媒を使用することが好ましい。好ましくは、触媒は、ベンゾイルパーオキサイド、イソブチロイルパーオキサイド、プロピオニルパーオキサイド、又はアセチルパーオキサイドなどの過酸化物触媒である。より好ましくは、過酸化物触媒はベンゾイルパーオキサイドである。反応温度は限定されないが、110℃〜130℃の範囲の温度が好ましい。反応時間は、触媒と反応条件で変わり得るが、24時間(h)で十分であることが分かった。生成物は、未反応の出発物質を最終生成物から分離する任意の手段で精製されるが、蒸留が好ましい。パーフルオロアルキルエーテルアイオダイド1モル当たり約2.7molのエチレン、110℃の温度および自己圧(autogenous pressure)、24時間の反応時間を使用し、蒸留により生成物を精製して、理論の80%までの十分な収率が得られた。国際公開第95/11877号パンフレットに開示されている手順に従って、パーフルオロアルキルエーテルエチルアイオダイド(VI)をオレウムで処理し、加水分解して、対応するアルコール(IIIc)を得る。或いは、パーフルオロアルキルエーテルエチルアイオダイドをN−メチルホルムアミドで処理した後、エチルアルコール/酸で加水分解する。
【0045】
(IIIc)のより高級な同族体(pは2又は3である)は、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルエーテルアイオダイド(V)(式中、pは1である)をテロメリゼーションした後、蒸留により特定のテロマーを単離し、次いでエチレンとテロメリゼーションすることによって得ることができる。テロマーエチレンアイオダイドのより高級な同族体(qは2又は3である)は、過剰なエチレンと高圧で反応させることによって得ることができる。
【0046】
本発明に有用なフッ素化アクリレートおよびマレエートを形成するのに有用なフッ素化アルコール(IIIc)の具体例としては、表1Bに記載されるものが挙げられる。
【0047】
【表2】

【0048】
本発明の別の実施形態は式(I)の組成物であり、式(IIa)、(IIb)および(IIc)中、rは1であり、R1は−S−(CH2t−から選択される2価の基である。これは、本発明の組成物中に任意に存在する連結基である。この実施形態では、連結基のイオウ原子は炭素原子のみに結合している。フッ素化アクリレートおよびフッ素化マレエート(式中、rは1である)を形成するのに有用なフッ素化アルコールとしては、式(VIIa)、(VIIb)および(VIIc)のものが挙げられる。
(VIIa) Rf1(CH2tS(CH2tOH
(VIIb) Rf2(CH2CF2p(CH2CH2qS(CH2tOH
(VIIc) Rf3O(CF2CF2p(CH2CH2qS(CH2tOH
フッ素化アルコール(VIIb)および(VIIc)は、それぞれ式(IV)および(VI)のエチレンアイオダイドから、ω−メルカプトアルカノール、例えば、2−メルカプトエタノールと反応させることによって、合成により調製される。式(VIIa)のフッ素化アルコールは、市販されているRf1(CH2tIから類似の方法で得ることができる。
【0049】
部分的に又は完全に塩形態になった式(I)の組成物は、例えば、酸性又は僅かに酸性の媒体中で有用な界面活性剤である。ある期間にわたる周囲温度での僅かに酸性の媒体中での表面張力安定性を比較することによって、式(I)(Rfは様々であってよい)の組成物が次の順番:(IIb)>(IIc)>(IIa)で安定性を有することが分かる。従って、最大限の界面活性剤安定性が必要な用途では、Rfが(IIb)である式(I)の組成物が好ましい。最小限の界面活性剤安定度が望ましい用途では、例えば、分解性が望ましい幾つかの環境用途では、Rfが(IIa)である式(I)の組成物が好ましい。理論に結び付けられることを望まないが、選択を理解する目的で、酸性媒体中における安定性の差は、酸性媒体中におけるフッ素化エステルの加水分解安定性が異なる結果である可能性がある。更に、本発明の界面活性剤を使用する際、ある一定の用途では、使用前に式(I)の組成物を塩形態にすることが望ましい可能性がある。
【0050】
本発明は、更に、媒体を前述の式(I)の組成物と接触させることを含む、媒体の表面張力を低下させる方法を含む。様々な媒体のいずれも本発明の方法に使用するのに好適である。通常、媒体は液体である。好適な媒体の例としては、例えば、コーティング組成物、ラテックス、ポリマー、床仕上げ剤、インク、乳化剤、発泡剤、離型剤(release agent)、撥水撥油剤、流れ調整剤、皮膜蒸発抑制剤(film evaporation inhibitor)、湿潤剤、浸透剤、クリーナー、研削剤(grinding agent)、電気めっき剤、腐食防止剤、エッチング液、ハンダ剤(soldering agent)、分散助剤、微生物剤、パルプ化助剤、すすぎ助剤(rinsing aid)、艶出剤、パーソナルケア組成物、乾燥剤、帯電防止剤、床磨き剤、又は結合剤が挙げられる。本発明の組成物を媒体に添加すると、本発明の組成物の界面活性特性のため、媒体の表面張力が低下する。本発明の組成物は、通常、単に媒体とブレンドされるか又は媒体に添加される。
【0051】
本発明は、更に、基材に堆積する前に、前述の式(I)(式中、R0はR01である)の1つ以上の化合物を含む組成物をコーティングベースに添加することを含む、コーティングされる基材に耐ブロッキング性、オープンタイム延長、およびレベリングを付与する方法を含む。R01はR0の部分集合であり、約5〜約50個のエーテル酸素原子で中断されている炭素数約10〜約100の直鎖又は分岐鎖の脂肪族基、又はこれらの組み合わせであって、エーテル酸素原子、対、炭素原子の比が約1:2〜約1:3であり、各炭素原子に1個以下のエーテル酸素原子が結合しており、エーテル酸素原子間に共有結合がない。R01基中、各炭素原子に0又は1個のエーテル酸素原子が結合しており、エーテル酸素原子間に共有結合がない。これは、どのエーテル酸素原子間にも共有結合が存在しないことを意味する。上記に開示した式(I)(式中、R0はR01である)の組成物は、中性又は僅かに塩基性の媒体中で、例えば、pH約6〜pH約9で界面活性剤として有用である。
【0052】
本明細書で「コーティングベース」の用語で称される好適なコーティング組成物としては、アルキドコーティング、タイプIウレタンコーティング、不飽和ポリエステルコーティング、又は水分散コーティングの組成物、典型的には液体配合物が挙げられ、これらは基材表面に耐久性皮膜を作り出すために基材に塗付される。これらは、従来の塗料、ステインおよび類似のコーティング組成物である。
【0053】
「アルキドコーティング」の用語は、本明細書で使用される時、アルキド樹脂をベースにする従来の液体コーティング、典型的には塗料、透明塗料、又はステインを意味する。アルキド樹脂は、不飽和脂肪酸残基を含有する複雑な分岐および架橋ポリエステルである。従来のアルキドコーティングは、バインダ又は皮膜形成成分として硬化性又は乾性アルキド樹脂を使用する。アルキド樹脂コーティングは、乾性油から誘導された不飽和脂肪酸残基を含有する。これらの樹脂は、酸素又は空気の存在下で自発的に重合し、固い保護膜を形成する。重合は、「乾燥」又は「硬化」と称され、大気中の酸素による油の脂肪酸成分中の不飽和炭素−炭素結合の自動酸化の結果として起こる。配合アルキドコーティングの薄い液層として表面に塗付されるとき、形成する硬化皮膜は比較的硬質で、非溶融性であり、非酸化アルキド樹脂又は乾性油の溶媒又は希釈剤の役割をする多くの有機溶媒に実質的に不溶性である。このような乾性油は、油をベースにするコーティングの原料として使用され、文献に記載されている。
【0054】
「ウレタンコーティング」の用語は、以下で使用される時、タイプIウレタン樹脂をベースにする従来の液体コーティング、典型的には塗料、透明塗料、又はステインを意味する。ウレタンコーティングは、典型的にはポリイソシアネート(通常はトルエンジイソシアネート)と乾性油の酸の多価アルコールエステルとの反応生成物を含有する。ウレタンコーティングは、ASTM D−1により5つのカテゴリーに分類される。タイプIウレタンコーティングは、前述のSurface Coatings Vol.Iに記載の予備反応した自動酸化性バインダを含有する。これらはウラルキド、ウレタン変性アルキド、油変性ウレタン、ウレタン油、又はウレタンアルキドとしても知られ、ポリウレタンコーティングの最大のカテゴリーであり、これらには塗料、透明塗料、又はステインが含まれる。バインダ中の不飽和乾性油残基の空気酸化および重合によって、硬化したコーティングが形成される。
【0055】
「不飽和ポリエステルコーティング」の用語は、以下で使用される時、モノマー中に溶解し、必要に応じて開始剤と触媒を含有する不飽和ポリエステル樹脂をベースにする従来の液体コーティング、典型的には塗料、透明塗料又はゲルコート配合物を意味する。不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和プレポリマーとして、1,2−プロピレングリコール又は1,3−ブチレングリコールなどのグリコールと、酸無水物の形態のマレイン酸(又は、マレイン酸と、飽和酸、例えば、フタル酸)などの不飽和酸との重縮合から得られる生成物を含有する。不飽和プレポリマーは、鎖中に不飽和を含有する直鎖ポリマーである。これは、例えば、スチレンなどの好適なモノマー中に溶解し、最終樹脂を生成する。フリーラジカル機構による直鎖ポリマーとモノマーとの共重合により皮膜が形成される。熱により、又は、より一般的には、別々に包装され使用前に添加されるベンゾイルパーオキサイドなどの過酸化物の添加によりフリーラジカルを発生させることができる。このようなコーティング組成物は、「ゲルコート」仕上剤と称されることが多い。室温でコーティングを硬化させるために、過酸化物のフリーラジカルへの分解はある一定の金属イオン、通常はコバルトによって触媒される。塗布する前に、過酸化物とコバルト化合物の溶液を混合物に別々に添加し、十分攪拌する。フリーラジカル機構によって硬化する不飽和ポリエステル樹脂も、例えば、紫外線を使用する照射硬化に適している。熱が発生しないこの硬化形態は、木材又は板の皮膜に特に適している。例えば、電子線硬化などの他の放射線源も使用される。
【0056】
「水分散コーティング」の用語は、本明細書で使用される時、水相中に分散した皮膜形成材料の乳濁液、ラテックス、又は懸濁液などの、水を必須分散成分として構成される基材の装飾又は保護を目的としたコーティングを意味する。「水分散コーティング」は、多数の配合物を表す一般的な分類であり、前述の分類の要素並びに他の分類の要素を含む。水分散コーティングは、一般に、他の一般的なコーティング成分を含有する。水分散コーティングの例としては、ラテックス塗料などの顔料コーティング、ウッドシーラー、ステイン、および仕上剤などの非顔料コーティング、メーソンリーおよびセメント用のコーティング、並びに水をベースにするアスファルト乳剤が挙げられるが、これらに限定されない。水分散コーティングは、任意に、界面活性剤、保護コロイドおよび増粘剤、顔料および体質顔料、防腐剤、殺真菌剤、凍解安定剤、消泡剤、pH調整剤、融合助剤(coalescing aids)、および他の成分を含有する。ラテックス塗料では、皮膜形成材は、アクリレート、アクリル、ビニル−アクリル、ビニル、又はこれらの混合物のラテックスポリマーである。このような水分散コーティング組成物は、C.R.Martensによって「Emulsion and Water−Soluble Paints and Coatings」(Reinhold Publishing Corporation, New York, NY, 1965)に記載されている。
【0057】
「乾燥コーティング」の用語は、本明細書で使用される時、コーティング組成物が乾燥、固化又は硬化した後に得られる最終的な装飾および/又は保護皮膜を意味する。このような最終皮膜は、例えば、硬化、融合(coalescing)、重合、相互侵入、放射線硬化、紫外線硬化、又は蒸発によって得ることができるが、これらに限定されない。最終皮膜は、また、ドライコーティングにおけるように乾燥した最終的な状態で塗布することもできる。
【0058】
ブロッキングは、コーティングされた2つの表面が押し合わせられたときの、又は長時間互いに接触して配置されたときの望ましくない付着である。ブロッキングが起こったとき、表面を分離させると、その結果、一方の又は両方の表面のコーティングが破壊する可能性がある。従って、耐ブロッキング性の改善は、例えば、窓枠におけるように、コーティングされた2つの表面が接触していなければならない多くの場合に有利である。
【0059】
「オープンタイム延長(open time extension)」の用語は、本明細書では、液体コーティング組成物の層を隣接する液体コーティング組成物層に、塗り継ぎむら(lap mark)、刷毛目、又は他の塗布跡を示すことなく溶け込ませることができる期間を意味するのに使用される。それはウエットエッジタイム(wet−edge time)とも称される。低沸点の揮発性有機化学物質(VOC)を含有するラテックス塗料は、高沸点のVOC溶媒を含まないため、所望されるより短いオープンタイムを有する。オープンタイム延長がないと、重なった刷毛目又は他の跡などの表面欠損が生じる。コーティングされた表面の外観が重要であるときは、オープンタイム延長が長い方が有利であるが、その理由は、1つのコーティング層とそれに隣接するコーティング層が重なった領域に、重なり跡、刷毛目、又は他の塗布跡を残すことなくコーティングを塗布することができるからである。
【0060】
式(I)(式中、R0は上で定義されたR01である)の本発明の組成物は、コーティングベースへの添加剤として使用されるとき、室温又は周囲温度で入れて完全に攪拌することにより、コーティングベース又は他の組成物に有効に導入される。振盪機を使用すること又は熱若しくは他の方法の提供することなどの、より入念な混合を使用することができる。このような方法は必要ではなく、最終組成物を実質的に改善しない。本発明の組成物は、ラテックス塗料の添加剤として使用されるとき、一般に湿潤塗料中に本発明の組成物の乾燥重量で約0.001重量%〜約5重量%添加される。好ましくは約0.01重量%〜約1重量%、より好ましくは約0.1重量%〜約0.5重量%が使用される。
【0061】
本発明の組成物は、様々な媒体中で界面活性剤として有用である。このような媒体の表面特性を変えることは更に有用である。例えば、表面張力、レベリング、オープンタイム延長、およびブロッキングなどの表面特性は、媒体に本発明の組成物を添加することによって変えられる。本発明の組成物は、現在市販されている製品と比較して高いフッ素有効性を有する。本発明の組成物は、同レベルの性能を達成するのに、より少ないフッ素を使用して表面特性を変えるという利点を提供する、又は従来技術の組成物と同レベルのフッ素を使用して、より優れた性能を付与する。
【0062】
試験方法
本明細書の実施例では、次の試験方法を使用した。
【0063】
試験方法1−表面張力測定
試験方法1A
界面活性剤の表面張力測定は、脱イオン水中1重量%の酢酸中で、製造業者のマニュアルに従って使用される自動Kruess張力計(Model K11, Kruess USA(Nazareth, PA))でWilhelmyプレート法を使用して測定した。最初に1重量%の濃度でサンプルを調製し、次の一連の濃度:0.5、0.1、0.05、0.01、0.005、0.0025、0.001、および0.0005重量%に脱イオン水で希釈した。所与の濃度で表面張力値がより低くければ、界面活性特性が改善されていることを示す。
【0064】
試験方法1B
界面活性剤の表面張力測定は、MILLIPOREろ過精製水中で、製造業者のマニュアルに従って使用される自動Kruess張力計(Model K11, Kruess USA(Nazareth, PA))又はSigma 70張力計(KSV Instruments Inc.(Monroe, CT))でWilhelmyプレート法を使用して測定した。MILLIPOREフィルタは、Millipore Corporation(Billerica, MA)から入手可能である。最初に1重量%の濃度でサンプルを調製し、次の一連の濃度:0.5、0.1、0.05、0.01、0.005、0.0025、0.001、および0.0005重量%に希釈した。容器を全て洗浄し、まず水道水で、次いで脱イオン水で十分にすすぎ、次いでMILLIPOREろ過水で3回すすいだ。測定後、ビーカーを乾燥させ、それらを任意にプラズマクリーニングオーブン中で5分間清浄化した。
【0065】
試験方法2−湿潤およびレベリング試験
湿潤およびレベリング能力におけるサンプルの性能を試験するため、サンプルを床磨き剤(Rohm & Haas(Spring House, PA)によって供給されるRHOPLEX 3829を使用して最終試験配合物を調製した)に添加し、被覆を剥がした12インチ×12インチ(30.36cm×30.36cm)のビニルタイルの半分に塗布した。脱イオン水で希釈することによって、試験される界面活性剤の1重量%溶液を調製した。製造業者のプロトコルに従って、RHOPLEX 3829配合物100g分を調製した後、1重量%の界面活性剤溶液0.75gを添加して試験床磨き剤を得た。
【0066】
タイルの中心に試験磨き剤3mL分を付け、アプリケータを使用して上から下まで広げ、最後に、アプリケータを使用してタイル全体に大きい「X」を描くことによって、試験床磨き剤をタイルに塗布した。タイルを30分間乾燥させ、合計5層のコーティングを塗布した。各コーティングの後、タイル表面における磨き剤の湿潤およびレベリングを促進する界面活性剤の能力について、タイルを1〜5のスケール(1は最低であり、5は最高である)で評価した。次のスケールに従い、界面活性剤が添加されていない床磨き剤で処理されたタイルの比較に基づいて評価を決定した:
主観的タイル評価スケール
1 皮膜の不均一な表面被覆、顕著な縞模様、および表面欠陥
2 目に見える縞模様および表面欠陥、タイルの縁部からの皮膜の後退(withdrawal)
3 多数の表面欠陥および縞模様が明らかであるが、概ね皮膜はタイル表面全体を被覆している
4 小さい表面欠陥又は縞模様
5 目に見える表面欠陥又は縞模様がない
【0067】
試験方法3−オープンタイム延長
オープンタイムは、塗布される液体コーティング組成物の層を隣接する液体コーティング組成物層に、塗り継ぎむら、刷毛目又は他の塗布跡を示すことなく溶け込ませることができる時間である。それはウエットエッジタイム(wet−edge time)とも称される。低VOCラテックス塗料は、高沸点のVOC溶媒を含まないため、所望されるより短いオープンタイムを有する。十分なオープンタイムがないと、その結果、重なった刷毛目又は他の跡が生じる。オープンタイム試験は、本明細書に記載のサムプレス法(thumb press method)と称される十分に受け入れられている業界の慣例によって実施される。対照試料と試験される試料の活性成分0.1%を有する試料のダブルストリップドローダウンパネルを使用した。試験されるコーティング組成物と対照は同じコーティング組成物であったが、対照は試験される添加剤を含有しておらず、試験される試料は添加剤として本発明の組成物を含有していた。パネルは、7cmのドクターブレードを用いて20〜25℃、相対湿度40〜60%で作製された。次いで、各試料に並行して1〜2分の間隔で同じ圧力でダブルサムプレスを行った。終点は、親指に塗料残留物が観察されない時点とした。ドローダウンを行った時点から終点までの時間をオープンタイムとして記録した。対照と添加剤を含有する試料とのパーセント差をオープンタイム延長パーセントとして記録した。本発明の組成物は半光沢ラテックス塗料中で試験した。
【0068】
試験方法4−建築用ラテックス塗料の耐ブロッキング性
本明細書に記載の試験方法は、参照により本明細書に明示的に援用されるASTM D4946−89、建築用塗料の耐ブロッキング性の標準試験方法(Standard Test Method for Blocking Resistance of Architectural Paints)の変更である。
【0069】
試験される塗料の向かい合わせでの耐ブロッキング性をこの試験で評価した。ブロッキングは、この試験の目的では、塗装された2つの表面が押し合わせられたときの又は長時間互いに接触して配置されたときの望ましくない付着と定義される。
【0070】
試験される塗料を、アプリケータブレードを使用してポリエステル試験パネル上に流延した。塗装されたパネルは全て、油脂、油、指紋、塵埃などの表面汚染から保護された。通常、塗料を流延してから24時間後に結果を調べた。所望の時間、試験方法に規定されているように空調された室内でパネルを調整した後、塗装された試験パネルから6つの正方形(3.8cm×3.8cm)を切り取った。試験される各塗料について、切り取った部分(3対)を塗料面が向かい合うようにして配置した。向かい合わせにした試験片を50℃のオーブン内の大理石のトレイに載せた。直径の小さい方が試験片と接触するようにして8番の栓を上に載せた後、1000gの重りを栓の上に載せた。この結果、試験片に1.8psi(12,400パスカル)の圧力がかかった。試験される各試験片について、1つの重りと栓を使用した。ちょうど30分後に栓と重りを試験片から取り除き、オーブンから取り出し、耐ブロッキング性を決定する前に30分間空調された室内で冷却した。
【0071】
冷却後、ゆっくりとした一定の力で剥離することにより、試験片を分離した。耐ブロッキング性を、この方法の実施者によって決定される主観的タック評価(塗装された試験片の分離時に出る音)又は封着(塗装された2つの表面の完全な接着)に対応する0〜10で評価した。タックの程度が実際に聞こえるように試験片を耳の近くに置いた。評価システムを下記の耐ブロッキング性の数値評価と題された表に記載する。試験片の外観と接着する塗料表面の分率から封着の程度を評価した。塗料が試験パネル支持体から剥離するのは封着を示す。数値が大きいほど耐ブロッキング性が良好であることを示した。
【0072】
【表3】

【0073】
材料
本明細書の実施例では、次の材料を使用した。化合物A1〜A15およびB1〜B14は、それぞれ表1Aおよび表1Bに記載したフルオロアルコールを指す。
【0074】
SURFONAMINE L−55としても知られる、Huntsman Chemical(Salt Lake City, UT)製のJEFFAMINE XTJ−580は、エチレンオキサイド/ポリプロピレンオキサイド比約2.5/7.0および分子量約550を有するモノアミン末端ポリオキシアルキレンである。
【0075】
XTJ−502としても知られる、Huntsman Chemical製のJEFFAMINE ED−2003は、主に、約39のポリエチレングリコール(PEG)繰り返し単位に対して約6のプロピレングリコール繰り返し単位を有するポリエチレングリコール主鎖をベースにするポリエーテルジアミンであり、分子量約2000である。
【0076】
XTJ−500としても知られる、Huntsman Chemical製のJEFFAMINE ED−600は、主に、約9のPEG繰り返し単位に対して約3.6のプロピレングリコール繰り返し単位を有するポリエチレングリコール主鎖をベースにするポリエーテルジアミンであり、分子量約600である。
【0077】
A3−アクリレート
613CH2CH2O−C(O)−CH=CH2
A3−アクリレートは、後述の化合物A6−アクリレートのものと類似の手順を使用して、1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−オクタノール(Aldrich Chemical Co.(Milwaukee, WI))から調製された。
【0078】
化合物A6
49CH2CF2CH2CH2OH
49CH2CF2I(217g)およびd−(+)−リモネン(1g)を仕込んだオートクレーブにエチレン(25g)を導入し、反応器を240℃で12時間加熱した。減圧蒸留で生成物を単離し、C49CH2CF2CH2CH2Iを得た。発煙硫酸(70mL)をC49CH2CF2CH2CH2I、50gにゆっくりと添加し、混合物を60℃で1.5時間攪拌した。1.5重量%氷冷Na2SO3水溶液で反応を急冷し、95℃で0.5時間加熱した。下層を分離し、10重量%酢酸ナトリウム水溶液で洗浄し、蒸留して、C49CH2CF2CH2CH2OH(化合物A6):2mmHg(267パスカル)で沸点54〜57℃を得た。
【0079】
化合物A6アクリレート
49CH2CF2CH2CH2O−C(O)−CH=CH2
Dean Starkトラップを備えたフラスコ内でp−トルエンスルホン酸(p−トルエンスルホン酸、2.82g、0.0148mol)、メチルヒドロキノン(メチルヒドロキノン、420mg)、化合物A6(120g)およびシクロヘキサン(121mL)を合わせた。反応混合物を85℃に加熱し、アクリル酸(31.3mL)を添加し、24時間加熱し続けた。Dean Starkトラップをショートパス蒸留塔と取り替え、脱イオン水を反応混合物に添加した後、シクロヘキサンを蒸留した。反応混合物を約50℃に冷却した。下層を分液漏斗に入れ、10%炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させ、減圧下で溶媒を蒸発させ、A6−アクリレート(134g、収率95%):1H NMR(CDCl3,400MHz)6.42(1H,d−d,J1=17.3Hz,J2=1.4Hz)、6.1(1H,d−d,J1=17.3Hz,J2=10.5Hz)、5.87(1H,d−d,J1=10.5Hz,J2=1.4Hz)、4.41(2H,t,J=6.4Hz)、2.86〜2.48(2H,m)、2.42(2H,t−t,J1=16.7Hz,J2=6.0Hz);MS:383(M++1)を得た。
【0080】
化合物B3
37OCF2CF2I(100g、0.24mol)およびベンゾイルパーオキサイド(3g)を窒素下で容器に仕込んだ。次いで、−50℃で真空/窒素置換を3回連続して行い、エチレン(18g、0.64mol)を導入した。容器を110℃で24時間加熱した。オートクレーブを0℃に冷却し、脱ガス後に開放した。次いで、生成物を瓶に捕集した。生成物を蒸留し、C37OCF2CF2CH2CH2I(80g、収率80%):25mmHg(3325Pa)で沸点56〜60℃を得た。C37OCF2CF2CH2CH2I(300g、0.68mol)とN−メチルホルムアミド(300mL)の混合物を150℃に26時間加熱した。次いで、反応を100℃に冷却した後、水を添加して粗エステルを分離した。エチルアルコール(77mL)とp−トルエンスルホン酸(2.59g)を粗エステルに添加し、反応を70℃で15分間攪拌した。次いで、蟻酸エチルとエチルアルコールを留去し、粗生成物を得た。粗生成物をエーテルに溶解させ、亜硫酸ナトリウム水溶液、水、および食塩水で順番に洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。次いで、生成物を蒸留し、C37OCF2CF2CH2CH2OH(B3、199g、収率85%):40mmHg(5320Pa)で沸点71〜73℃を得た。
【0081】
B3−アクリレート
37OCF2CF2CH2CH2O−C(O)−CH=CH2
Dean Starkトラップを備えたフラスコ内でp−トルエンスルホン酸(0.34g)、メチルヒドロキノン(0.026g)、化合物B3(15g)およびシクロヘキサン(15mL)を合わせた。混合物を85℃に加熱した後、アクリル酸(3.86mL)を添加し、24時間加熱し続けた。Dean Starkトラップをショートパス蒸留塔と取り替え、脱イオン水(15mL)を添加した後、シクロヘキサンを蒸留した。反応混合物を約50℃に冷却し、下層を分液漏斗に移し、10%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させ、濃縮してB3−メタクリレート(14.4g、収率83%):1H NMR(CDCl3,400MHz)δ6.43(1H,d−d,J1=17.3Hz,J2=1.4Hz)、6.11(1H,d−d,J1=17.3Hz,J2=10.5Hz)、5.87(1H,d−d,J1=10.5Hz,J2=1.4Hz)、4.43(2H,t,J=6.4Hz)、2.42(2H,t−t,J1=16.7Hz,J2=6.0Hz);MS:385(M++1)を得た。
【0082】
ビス(3,3,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ウンデカフルオロオクチル)マレエート(A6マレエート)
49CH2CF2CH2CH2O−C(O)−CH=CH−(O)C−O−CH2CH2CF2CH249
攪拌棒、Dean Starkトラップ、冷却器および熱電対を備えた250mLの4つ口丸底フラスコに、窒素下で、無水マレイン酸(2.6g、0.027mol)、トルエン(100mL)、C49CH2CF2CH2CH2OH(17.8g、0.054mol、A6)およびp−トルエンスルホン酸(0.5g、0.0027mol)を添加した。Dean Starkトラップにトルエンを充填し、反応を加熱して還流させた。LC/MSおよびGCで反応を監視した。6.5時間還流した後、A6を更に100mg(0.0003mol)添加し、反応を更に3.5時間還流させた。混合物を周囲温度に冷却し、酢酸エチル(50mL)で希釈した後、飽和炭酸水素ナトリウム(1×25mL)および飽和塩化ナトリウム(1×25mL)で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下、40℃で濃縮し、マレエート生成物をオイルとして得た(18.8g、94%)。GCは、マレエートでは15.3分で1つの大きいピーク(92%)を示し、対応するフマレートでは15.9分(4.9%)であった。LC/MS(API−ES+)は、737(M+H)で1つのピークを示した。1H NMR(400MHz,CDCl3,δ):6.26(s,2H,=CH)、4.43(t,4H,3HH=6.4Hz,OCH2)、2.77(t of t,4H,3HF=18.4,14.0Hz,CF2CH2CF2)、2.44(t of t,4H,3HF=16.0Hz,3HH=6.4Hz,CH2CH2CF2)。
【0083】
ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)マレエート(A1マレエート)
49CH2CH2O−C(O)−CH=CH−(O)C−O−CH2CH249
49CH2CH2OH(17.4g、0.066mol、A1)を、ビス(3,3,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ウンデカフルオロオクチル)マレエートの合成について記載したのと類似の方法で、無水マレイン酸(3.2g、0.033mol)で処理し、マレエート生成物をオイルとして得た(16.4g、82%)。GCは、11.9分で1つの大きいピーク(98.4%)を示し、対応するフマレートでは12.5分(1.6%)であった。LC/MS(API−ES+)は、608.9(M+H)で1つのピークを示した。
【0084】
化合物A7
49(CH2CF22CH2CH2OH
49(CH2CF22I(714g)およびd−(+)−リモネン(3.2g)を仕込んだオートクレーブにエチレン(56g)を導入し、反応器を240℃で12時間加熱した。減圧蒸留で生成物を単離し、C49(CH2CF22CH2CH2Iを得た。C49(CH2CF22CH2CH2I(10g、0.02mol)とN−メチルホルムアミド(8.9mL、0.15mol)の混合物を150℃に26時間加熱した。混合物を100℃に冷却した後、水を添加して粗エステルを分離した。エチルアルコール(3mL)とp−トルエンスルホン酸(0.09g)を添加し、混合物を70℃で0.25時間攪拌した。蟻酸エチルとエチルアルコールを留去し、粗生成物を得た。粗生成物をエーテルに溶解させ、10重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液、水、および食塩水で順番に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。蒸留して生成物A7(6.5g、収率83%):2mmHg(266パスカル)で沸点94〜95℃を得た。
【0085】
ビス(3,3,5,5,7,7,8,8,9,9,10,10,10−トリデカフルオロデシル)マレエート(A7マレエート)
49(CH2CF22CH2CH2O−C(O)−CH=CH−(O)C−O−CH2CH2(CF2CH2249
49(CH2CF22CH2CH2OH(18.1g、0.046mol、A7)を、ビス(3,3,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ウンデカフルオロオクチル)マレエートの合成について記載したのと類似の方法で、無水マレイン酸(2.3g、0.023mol)で処理し、1−クロロブタン/ヘキサンから再結晶した後、マレエート生成物を白色固体として得た(18.1g、収率90%、融点35〜37℃):LC/MS(API−ES+)は、865(M+H)および887(M+Na)で1つのピークを示した;1H NMR(400MHz,CDCl3,δ):6.27(s,2H,=CH)、4.41(t,4H,3HH=6.0Hz,OCH2)、2.85(bd quintet,4H,3HF=16.0Hz,CF2CH2CF2)、2.72(quintet,4H,3HF=15.6Hz,CF2CH2CF2)、2.39(t of t,4H,3HF=16.0Hz,3HH=6.4Hz,CH2CH2CF2)。
【0086】
ビス[3,3,4,4−テトラフルオロ−4−(パーフルオロプロポキシ)ブチル]マレエート(B3マレエート)
37OCF2CF2CH2CH2O−C(O)−CH=CH−(O)C−O−CH2CH2CF2CF2OC37
37OCF2CF2CH2CH2OH、(17.8g、0.054mol、B3)を、ビス(3,3,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ウンデカフルオロオクチル)マレエートの合成について記載したのと類似の方法で、無水マレイン酸(2.6g、0.027mol)で処理し、マレエート生成物をオイルとして得た(16.5g、82.5%)。GCは、11.8分で1つの大きいピーク(98%)を示し、対応するフマレートでは12.3分(1.4%)であった:1H NMR(400MHz,CDCl3,δ):6.28(s,2H,=CH)、4.47(t,4H,3HH=6.8Hz,OCH2)、2.46(t of t,4H,3HF=17.6Hz,3HH=6.8Hz,CH2CH2CF2)。
【実施例】
【0087】
実施例1〜18
実施例1〜18は、反応スキーム1の経路Aに従って、式(I)(式中、mは2であり、nは0であり、Aは水素である);即ち、一般式(Ia)の組成物の合成を説明する。各実施例について、マグネチックスターラーおよびねじ蓋を備えたバイアル瓶内で、表2Aに記載されているR0−NH2とフッ素化アクリレートを対応する量、およびメチルヒドロキノン(0.10g)を一緒に混合した。表2Aに記載されているように、混合物を55〜60℃で24〜72時間攪拌した。後述のようにガスクロマトグラフィー分析で反応の進行を監視し、反応の完了を確認した。実施例1〜13では、酢酸塩に転化することによって抽出により粗生成物を更に精製した。サンプルをビーカーに移し、ヘキサン(50mL)と混合した。マグネチックスターラーを使用して溶液を10分間攪拌した後、酢酸(2mL)を添加して、ヘキサン層から生成物を分離した。ヘキサン層(上層)を取り除いた。下層に新たにヘキサン分を添加し、混合物を1時間攪拌した後、ヘキサン層を取り除いた。下層を空気乾燥させ、最終生成物を黄色のオイルとして得た。60〜250℃での昇温速度(temperature ramp)15℃/分、流量3.5mL/分、および水素炎イオン化検出器を有するGC分析(Agilent 6850、カラム:HP−1 Methyl Siloxane Capillary 30.0m×320um×0.5um公称)を使用して分析し、表2Aに記載されるように生成物の純度を測定した。全ての場合、最も顕著な不純物は、反応スキーム1、経路Aに示されるようなモノアクリレート付加物であった。実施例14〜18の組成物は、抽出による精製を行わずに、GCおよびNMRで分析した。NMRおよびLC/MSで実施例1〜18の幾つかの生成物の特性を決定した:
【0088】
実施例2:1H NMR(500MHz、d6−THF,):4.34(t,4H,J=6.4Hz)、3.50(t,2H,J=6.0Hz)、2.73(t,4H,J=6.9Hz)、2.56(m,6H)、2.44(t,4H,J=7.16)、1.57(m,2H,J=6.5Hz)。13C NMR(126MHz,d6−THF,):171.3、60.2、55.8、51.1、49.3、32.2、29.9、24.8。LC/MS(API−ES+)=912.1(M+H)。
【0089】
実施例3:1H NMR(500MHz,d6−THF):4.43(t,4H,J=6.4Hz)、3.54(m,1H,J=6.5Hz)、2.85(m,4H)、2.68(m,4H)、2.49(m,4H)、2.38(m,2H)、1.09(d,3H,J=5.7Hz)。13C NMR(126MHz,d6−THF,):171.5、63.9、62.5、55.8、49.6、32.2、30.1、19.8。LC/MS(API−ES+)=912.1(M+H)。
【0090】
実施例12:1H NMR(500MHz,d6−THF,):4.24(t,4H,J=6.5Hz)、2.63(t,4H,J=7.3Hz)、2.48(m,6H)、2.34(m,8H)、2.27(t,4H,J=6.8Hz)、1.42(m,2H,J=7.0Hz)、0.86(t,6H,J=7.9Hz)。13C NMR(126MHz,d6−THF,):171.7、59.6、56.1、52.1、51.2、49.7、47.2、32.7、30.5、25.0。LC/MS(API−ES+)=967.3(M+H)。
【0091】
実施例17:1H NMR(500MHz,d6−THF,):4.32(t,4H,J=5.7Hz)、2.72(t,4H,J=7.3Hz)、2.56(m,4H)、2.43(m,6H)、2.20(t,2H,J=7.0Hz)、1.42(s,6H)、1.53(m,2H,J=6.7Hz)。13C NMR(126MHz,d6−THF,):171.7、57.5、56.2、51.8、49.8、45.1、32.7、30.1、25.8。LC/MS(API−ES+)=871.2(M+H)。
【0092】
【表4】

【0093】
JEFFAMINE XTJ 580を使用して調製された実施例14、16および18は、二重マイケル付加(double Michael Addition)反応による平均分子量の増加を監視するため、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で更に特性を決定した。表2Bは、実施例14、16および18の結果を示す。
【0094】
【表5】

【0095】
試験方法1Aを使用して実施例1〜18の酸性溶液の表面張力を測定した。特定の実施例の生成物1.0g、酢酸1.0g、および脱イオン水98.0gをビーカー内で混合することによって、各界面活性剤の1重量%溶液を調製した。次いで、Biopharm Process Systems, Ltd.(Winchester, UK)から入手可能なVIRSONIC 600型番408912ソニケータを使用して、混合物を4分間最大出力で超音波処理した。脱イオン水を使用して一連の希釈物を調製した。得られた溶液を、マグネチックスターラーバーを使用して十分混合し、表面張力を測定した。結果を表2C、2Dおよび2Eに記載する。
【0096】
比較例A
比較例Aは、炭素数2〜16の範囲、主に炭素数6、8および10のパーフルオロアルキル同族体の混合物を含有するフルオロアルキルエトキシレート界面活性剤(E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)から市販されている)からなった。脱イオン水中で表面張力を測定した。結果を表2Fに記載する。
【0097】
【表6】

【0098】
【表7】

【0099】
【表8】

【0100】
【表9】

【0101】
実施例1〜18と比較例Aの表面張力の比較から、実施例1〜18は、同じ重量%濃度で、市販の製品である比較例Aの表面張力に匹敵する、多くの場合、それより低い表面張力を示すことが分かった。比較例Aが炭素数2〜16のパーフルオロアルキル基を含有したのに対して、実施例1〜18は炭素数3〜6のパーフルオロアルキル基を含有し、従って、実施例1〜5および実施例7〜18は、より低レベルのフッ素を含有した。
【0102】
更に、表2Gは、水の表面張力を20mN/m以下に低下させるのに必要な重量%濃度に関して、実施例1〜13と比較例Aの界面活性剤の性能を比較する。
【0103】
【表10】

【0104】
実施例1〜18は、概ね、より低レベルのフッ素を使用して、比較例Aに匹敵する性能を付与した。
【0105】
実施例2〜5および7〜13は、比較例Aのものより5〜50倍低い重量%濃度で所望の20mN/mの表面張力を示した。実施例1は、比較例Aの性能に匹敵したが、実施例6は、所望の表面張力を達成するのに、より高い濃度を必要とした。従って、本発明の組成物は、著しく低い重量%濃度で、従って著しく低いフッ素重量%で、匹敵する界面活性特性を付与した。
【0106】
僅かに酸性の媒体および中性の媒体中での実施例14、16および18の組成物の表面張力を3週間にわたって周囲温度で測定した。結果を表3A、3Bおよび3Cに記載する。
【0107】
【表11】

【0108】
【表12】

【0109】
【表13】

【0110】
表3A、3Bおよび3Cに記載した結果から、実施例14、16および18の組成物の表面張力は、酸性媒体中では、次の順番:16>18>14で安定性を有することが分かった。例えば、実施例14は0.01重量%のとき酸性媒体中で20.3から34.2mN/mまで21日間で増加したが、実施例16は同じ条件で24.5から25.2mN/mまでの増加であった。結果から、式(I)(式中、Rfの構造は様々であってよい)の組成物は、次の順番:(IIb)>(IIc)>(IIa)で安定性を有することが分かった。
【0111】
内装/外装100%アクリル家屋用塗料(Vista Paint Corporation(Fullerton, CA)から入手可能なVista 6400)中でのオープンタイム延長の試験方法3に従って、実施例14、16および18の組成物を試験した。家屋用塗料は、通常2重量%のプロピレングリコールなしで、製造業者によって配合された。各実施例の組成物を0.1重量%のレベルで、2重量%のプロピレングリコールと一緒に家屋用塗料にブレンドした。試験結果を表4Aに記載する。
【0112】
【表14】

【0113】
表4Aのデータから、本発明の組成物を従来の塗料に添加すると、本発明の組成物を添加していない同じ塗料と比較してオープンタイム延長が増加したことが分かる。
【0114】
実施例14、16および18の組成物を、湿潤塗料中の組成物の乾燥重量で0.222重量%の量でVista半光沢ラテックス塗料(Vista Paint Corporation(Fullerton, CA)に添加し、試験方法4を使用して耐ブロッキング性を試験した。得られたデータを表4Bに記載する。
【0115】
【表15】

【0116】
表4Bの結果によれば、実施例14、16および18を含有する製品について、かなりの耐ブロッキング性が証明された。
【0117】
実施例19
ビス(3,3,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ウンデカフルオロオクチル)マレエート(5.7g、0.0078mol、1当量)およびJEFFAMINE XTJ−580(4.3g、0.0078mol、1当量)を混合し、油浴を使用して約50℃の内部温度(浸漬熱電対)に加熱し、窒素雰囲気下で8.5時間攪拌しつつ、LC/MSおよびGCで監視した。混合物を瓶に注ぎ、黄色のオイルを得た(8.8g、88%)。LC/MS(API−ES+)は、マススペクトルで期待される生成物分布を示す1つの広いピークを示した。試験方法1Bに従って、MILLIPOREろ過水(Millipore Corporation(Billerica, MA))中で表面張力を測定したが、その結果を表5Aに記載する。試験方法1Bを使用して比較例Aの表面張力を測定したが、その結果を表5Bに記載する。
【0118】
【表16】

【0119】
【表17】

【0120】
表5Aの実施例19の表面張力と表5Bの比較例Aの表面張力を比較することによって、実施例19の組成物は、0.01重量%で、特に0.001重量%の濃度で比較例Aより著しく低い表面張力を有したことが分かる。
【0121】
実施例20
ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)マレエート(5.3g、0.0086mol、1当量)およびJEFFAMINE XTJ−580(4.7g、0.0086mol、1当量)を混合し、油浴を使用して約50℃の内部温度に加熱し、窒素雰囲気下で26.5時間攪拌しつつ、LC/MSおよびGCで監視した。混合物を瓶に注ぎ、黄色のオイルを得た(8.8g、88%)。LC/MS(API−ES+)は、マススペクトルで期待される生成物分布を示す1つの広いピークを示した。試験方法1Bに従って、実施例20と比較例Aの両方について水中10重量%のイソプロパノール(IPA)中で表面張力を測定したが、その結果を表6Aおよび6Bに記載する。
【0122】
【表18】

【0123】
【表19】

【0124】
表6Aの実施例20の表面張力データと表6Bの比較例Aの表面張力データを比較することによって、実施例20の組成物は、0.01重量%、特に0.001重量%の濃度で比較例Aより著しく低い表面張力を有したことが分かる。
【0125】
実施例21
ビス(3,3,4,4−テトラフルオロ−4−(パーフルオロプロポキシ)ブチル)マレエート(5.7g、0.0078mol、1当量)およびJEFFAMINE XTJ−580(4.3g、0.0078mol、1当量)を混合し、油浴を使用して約50℃の内部温度に加熱し、窒素雰囲気下で21.5時間攪拌しつつ、LC/MSおよびGCで監視した。混合物を瓶に注ぎ、黄色のオイルを得た(8.8g、88%)。LC/MS(API−ES+)は、マススペクトルで期待される生成物分布を示す1つの広いピークを示す。試験方法1Bに従って、MILLIPOREろ過水中で表面張力を測定したが、その結果を表7に記載する。
【0126】
【表20】

【0127】
表7の実施例21の表面張力データと表5Bの比較例Aの表面張力データを比較することによって、実施例21の組成物は、0.001重量%および0.01重量%の濃度で比較例Aより著しく低い表面張力を有したことが分かる。
【0128】
実施例22
10mLのREACTI−VIAL反応バイアル瓶(Fisher Scientific(Pittsburgh PA))内で、ビス(3,3,5,5,7,7,8,8,9,9,10,10,10−トリデカフルオロデシル)マレエート(2.4g、0.0028mol、1当量)、JEFFAMINE XTJ−580(1.6g、0.0028mol、1当量)、および無水アセトニトリル(2g)を混合し、70℃の反応器ブロックに入れ、93時間攪拌しつつ、LC/MSおよびGCで監視した。混合物を35℃で濃縮し、瓶に注ぎ、茶色のオイルを得た(3.4g、85%)。LC/MS(API−ES+)は、マススペクトルで期待される生成物分布を示す1つの広いピーク(MS積分で80%)を示した。試験方法1Bに従って、MILLIPOREろ過水中で表面張力を測定したが、その結果を表8に記載する。
【0129】
【表21】

【0130】
表8の実施例22の表面張力データと表5Bの比較例Aの表面張力データを比較することによって、実施例22の組成物は、0.01重量%の濃度で市販の界面活性剤に匹敵する表面張力を有したことが分かる。
【0131】
表9Aは、実施例19〜22と市販の界面活性剤である比較例Aについてのフッ素重量%を比較しており、同じ重量%濃度(0.01重量%)では比較例Aの方が、本発明の実施例より著しく高いフッ素重量%を有したことが分かる。
【0132】
【表22】

【0133】
試験方法2に従って、市販の床磨き剤中における湿潤およびレベリング剤としての性能について、実施例14、16、18および19〜21の組成物を試験した。対照では、レベリング剤を添加していない同じ床磨き剤を使用した。比較のため、2つの市販の界面活性剤、即ち、前述の比較例Aと後述の比較例Bを測定した。サンプルは全て75ppm(マイクログラム/g)の添加量で且つ同時に測定され、起こり得る室内の湿度と温度の変化を無くした。その結果を表9Bに記載する。
【0134】
比較例B
比較例Bは、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington, DE)から入手可能な市販の界面活性剤であった。それは、フルオロアルキルリン酸アンモニウム塩と炭化水素界面活性剤のブレンドである。リン酸塩は、炭素数2〜16、主に炭素数6、8および10のパーフルオロアルキル同族体の混合物を含有する。
【0135】
【表23】

【0136】
結果から、実施例19〜21の組成物は、性能が比較例AおよびBに匹敵する又はそれより優れた湿潤およびレベリング特性を示したことが分かる。実施例19〜21は、存在するパーフルオロアルキル鎖が短いため、存在する全フッ素が少ないが、同じ又はより優れた性能を付与する。
【0137】
実施例23〜27
次の実施例23〜27は、反応スキーム1、経路Bに従って、2当量のマレイン酸エステルをジアミンに添加することによる界面活性剤の形成を説明する。REACTI−VIAL反応バイアル瓶内で、表10に記載されているように1当量のJEFFAMINEジアミンと2当量のマレイン酸エステルを合わせ、反応器ブロック内で、約5日間50℃で、4日間60℃で、および1.5日間70℃で加熱し、1H NMRスペクトルの末端基分析により評価する時、少なくとも80%生成物に転化することを確実にした。実施例26では、反応混合物の粘度が非常に高かったため、数mLのアセトニトリルを添加して攪拌を容易にした。実施例25では、少量の第2の未同定の相が目に見えるようになり、生成物を単離する前にそれをデカントした。
【0138】
【表24】

【0139】
次のことを除いて、試験方法1Bに従って実施例23〜27の表面張力を測定した。最初に実施例の溶液を0.1重量%の濃度で調製し、一連の希釈を行った。滅菌したバイアル瓶に各実施例(0.04g)を添加した後、脱イオン水を添加して、40.0gに調整(balance)し、次いで、完全に溶解した溶液が形成するまでバイアル瓶をゆっくりと攪拌した。次いで、溶液を約2分間超音波処理し、分散を向上させ、泡を取り除いた。各一連の希釈物を同様に調製した。0.1重量%の溶液濃度が得られるように、実施例27を脱イオン水中10%のアセトニトリルに溶解させ、脱イオン水で希釈を行った。その結果を表11に記載する。
【0140】
【表25】

【0141】
試験方法2に従って、市販の床磨き剤中における湿潤およびレベリング剤としての性能について、実施例24および25の組成物を試験した。対照には、レベリング剤を添加しなかった。比較のため、同じ床磨き剤中の比較例Aを測定した。サンプルは全て75ppm(マイクログラム/g)の添加量で且つ同時に測定され、起こり得る室内の湿度と温度の変化を無くした。その結果を表12に記載し、評価が高いほど性能が優れていることを示す。
【0142】
【表26】

【0143】
結果から、実施例24および25の組成物は性能が比較例Aに匹敵する又はそれより優れた湿潤およびレベリング特性を示したことが分かる。実施例は、比較例Aよりパーフルオロアルキル鎖長が短いため、含有するフッ素が少なかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、
mおよびdは、それぞれ独立して1又は2の整数であり;
nは、独立して0又は1であり;
各Rは、独立して水素又はC1〜C4アルキル基であり;
Aは、独立して水素又は−C(O)−O−Bであり;
0は、1〜約50個の親水基で中断又は置換されている、炭素数約2〜約100の直鎖、分岐鎖、若しくは環式の脂肪族基、又はこれらの組み合わせであって、前記親水基がヒドロキシル、アミノ、エーテル、およびこれらの混合物からなる群から選択され、親水基、対、炭素原子の比が約1:1.1〜約1:10であり、各炭素原子に1個以下の親水基が結合しており、親水基間に共有結合がないものであり、
各Bは、独立して式(IIa)、(IIb)又は(IIc)の1価の基であり:
(IIa) Rf1(CH2t(R1r
(IIb) Rf2(CH2CF2p(CH2CH2q(R1r
(IIc) Rf3O(CF2CF2p(CH2CH2q(R1r
(式中、
f1およびRf2はそれぞれ、C1〜C6直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキルであり;
f3は、任意に1個、2個又は3個のエーテル酸素原子で中断されている、C1〜C7直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキル基であり;
tは、1〜約10の整数であり;
pおよびqは、それぞれ独立して1〜約3の整数であり;
rは0又は1であり;
1は、−S(CH2t−から選択される2価の基である)
ここで、
mが1のとき、nは1であり;
mが2のとき、nは0であり、Aは水素であり、dは1であり;
dが2のとき、mは1であり、Aは−C(O)−O−Bであり、R0は炭素数が少なくとも3であり、窒素と親水基は異なる炭素原子に結合していることを条件とする]
の組成物。
【請求項2】
1)mが1であり、nが1であり、Aが−C(O)−O−Rfであるか;又は2)mが2であり、nが0であり、Aが水素である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記窒素が約40mol%〜100mol%塩形態になっている、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
1)R0は、1個のヒドロキシル基、エーテル基又は第三級アミノ基で中断又は置換された炭素数2〜約10の直鎖、分岐鎖、又は環式の脂肪族基、又はこれらの組み合わせであるか;又は2)R0は、約5〜約50個のエーテル酸素原子で中断されている炭素数約10〜約100の直鎖又は分岐鎖の脂肪族基、又はこれらの組み合わせであって、エーテル酸素原子、対、炭素原子の比が約1:2〜約1:3であり、各炭素原子に1個以下のエーテル酸素原子が結合しており、エーテル酸素原子間に共有結合がないものである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
Bが、式(IIa)
(IIa) Rf1(CH2t(R1r−、
(式中、
f1はC4〜C6直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキルであり、
tは2〜4であり、
rは0である)
である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
Bが、式(IIb)
(IIb) Rf2(CH2CF2p(CH2CH2q(R1r−、
(式中、
f2はC4〜C6直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキルであり、
pおよびqはそれぞれ独立して1又は2であり、
rは0である)
である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
Bが、式(IIc)
(IIc) Rf3O(CF2CF2p(CH2CH2q(R1r−、
(式中、
f3は、任意に1個、2個又は3個のエーテル酸素原子で中断されているC3〜C7直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキルであり、
pおよびqはそれぞれ独立して1又は2であり、
rは0である)
である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
媒体を式(I)
【化2】

[式中、
mおよびdは、それぞれ独立して1又は2の整数であり;
nは、独立して0又は1であり;
各Rは、独立して水素又はC1〜C4アルキル基であり;
Aは、独立して水素又は−C(O)−O−Bであり;
0は、1〜約50個の親水基で中断又は置換されている、炭素数約2〜約100の直鎖、分岐鎖、若しくは環式の脂肪族基、又はこれらの組み合わせであって、前記親水基がヒドロキシル、アミノ、エーテル、およびこれらの混合物からなる群から選択され、親水基、対、炭素原子の比が約1:1.1〜約1:10であり、各炭素原子に1個以下の親水基が結合しており、親水基間に共有結合がないものであり、
各Bは、独立して式(IIa)、(IIb)又は(IIc)の1価の基であり:
(IIa) Rf1(CH2t(R1r
(IIb) Rf2(CH2CF2p(CH2CH2q(R1r
(IIc) Rf3O(CF2CF2p(CH2CH2q(R1r
(式中、
f1およびRf2はそれぞれ、C1〜C6直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキルであり;
f3は、任意に1個、2個又は3個のエーテル酸素原子で中断されている、C1〜C7直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキル基であり;
tは、1〜約10の整数であり;
pおよびqは、それぞれ独立して1〜約3の整数であり;
rは0又は1であり;
1は、−S(CH2t−から選択される2価の基である)
ここで、
mが1のとき、nは1であり;
mが2のとき、nは0であり、Aは水素であり、dは1であり;
dが2のとき、mは1であり、Aは−C(O)−O−Bであり、R0は炭素数が少なくとも3であり、窒素と親水基は異なる炭素原子に結合していることを条件とする]
の組成物と接触させる工程を含む、媒体の表面張力を低下させる方法。
【請求項9】
前記媒体が、コーティング組成物、ラテックス、ポリマー、床仕上げ剤、インク、乳化剤、発泡剤、離型剤、撥水撥油剤、流れ調整剤、皮膜蒸発抑制剤、湿潤剤、浸透剤、クリーナー、研削剤、電気めっき剤、腐食防止剤、エッチング液、ハンダ剤、分散助剤、微生物剤、パルプ化助剤、すすぎ助剤、艶出剤、パーソナルケア組成物、乾燥剤、帯電防止剤、床磨き剤、又は結合剤である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記媒体と接触させる前に、前記式(I)の組成物を基材に塗布する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
基材に堆積する前に、式(I)
【化3】

[式中、
mおよびdは、それぞれ独立して1又は2の整数であり;
nは、独立して0又は1であり;
各Rは、独立して水素又はC1〜C4アルキル基であり;
Aは、独立して水素又は−C(O)−O−Bであり;
0は、約5〜約50個のエーテル酸素原子で中断されている、炭素数約2〜約100の直鎖、分岐鎖、若しくは環式の脂肪族基、又はこれらの組み合わせであって、エーテル酸素原子、対、炭素原子の比が約1:2〜約1:3であり、各炭素原子に1個以下のエーテル酸素原子が結合しており、エーテル酸素原子間に共有結合がないものであり、
各Bは、独立して式(IIa)、(IIb)又は(IIc)の1価の基であり:
(IIa) Rf1(CH2t(R1r
(IIb) Rf2(CH2CF2p(CH2CH2q(R1r
(IIc) Rf3O(CF2CF2p(CH2CH2q(R1r
(式中、
f1およびRf2はそれぞれ、C1〜C6直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキルであり;
f3は、任意に1個、2個又は3個のエーテル酸素原子で中断されているC1〜C7直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキル基であり;
tは、1〜約10の整数であり;
pおよびqは、それぞれ独立して1〜約3の整数であり;
rは0又は1であり;
1は、−S(CH2t−から選択される2価の基である)
ここで、
mが1のとき、nは1であり;
mが2のとき、nは0であり、Aは水素であり、dは1であり;
dが2のとき、mは1であり、Aは−C(O)−O−Bであり、R0は炭素数が少なくとも3であり、窒素と親水基は異なる炭素原子に結合していることを条件とする]
の1つ以上の化合物を含む組成物をコーティングベースに添加する工程を含む、コーティングされる基材に耐ブロッキング性、オープンタイム延長、および改善されたレベリングを付与する方法。
【請求項12】
前記コーティング組成物が、水に分散されたコーティング、アルキドコーティング、タイプIウレタンコーティング、不飽和ポリエステルコーティング、又は床磨き剤である、請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2010−522754(P2010−522754A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501008(P2010−501008)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/004080
【国際公開番号】WO2008/118494
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】