説明

フルオロシランベースのキセロゲル膜を介するマイクロセンサ

本発明に開示された対象は、サンプル中の気体状化学種の量を測定するためのセンサに関する。このセンサは、アルキルおよびフッ素化アルキル基の両方を含む、気体透過性ポリシロキサン網状構造膜を含む。いくつかの実施形態では、ポリシロキサン網状構造は、アルキルアルコキシシランおよびフルオロシランの混合物の共縮合から形成することができる。本発明に開示された対象は、センサを作製する方法、サンプル中の一酸化窒素などの気体状化学種の量を選択的に測定する方法、およびポリシロキサン網状構造を含む組成物にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2006年8月24日に出願された米国仮特許出願第60/839,870号の利益を主張し、この仮特許出願の開示は、その全体を本明細書中で参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明に開示されている対象は、アルキルおよびフッ素化アルキル基を含む気体透過膜を含んだセンサに関する。センサは、一酸化窒素および酸素を含めた生物学的に関連のある気体状化学種を、検出し測定するためのバイオセンサとして使用することができる。また、センサを作製するための方法と、サンプル中の気体状化学種の量を測定する方法と、アルキルおよびフッ素化アルキル置換基を有するポリシロキサン網状構造を含む組成物も、提供される。
【0003】
(政府の利益)
本発明は、米国国立衛生研究所の助成金番号EB000708から、米国政府の支援により行われた。したがって米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
(背景)
一酸化窒素(NO)は、一酸化窒素シンターゼ(NOS)として知られている種類の酵素によって、L−アルギニンがL−シトルリンに変換されるときに、人体内で内因的に合成された2原子遊離基である。内皮由来弛緩因子としてのNOの動作について述べている最初の報告以来、生物学的環境におけるNOの発生および動作の経路の解明に、多くの研究がなされてきた。特にNOは、神経伝達、血管拡張、免疫応答(抗腫瘍および抗菌活性を含む)、血小板凝集の阻害、および血圧制御に関与する。非特許文献1を参照されたい。
【0005】
小型化電気化学センサは、生理学においてNOの空間的および時間的分布を決定するための、将来有望なデバイスである。しかし、そのようなセンサの使用は、低い感度、比較的遅い反応時間、および/またはその他の容易に酸化可能な生物学的化学種(例えば、亜硝酸塩、アスコルビン酸、尿酸、およびドーパミン)によって制約を受けている。これらの制約に対処しようとする試みにおいて、様々な選択透過性ポリマーが合成され、センサ膜として用いられてきた。例えば、ポリ(テトラフルオロエチレン)(TEFLON(登録商標)、E.I.du Pont de Nemours and Company、Wilmington、Delaware、米国)は、感度が良好な一酸化窒素センサの製作をもたらす選択膜であることが判明した。残念ながら、標準的な有機溶媒へのポリ(テトラフルオロエチレン)の溶解度が不十分であること、またそのようなフィルムを電極に取り付けまたはコーティングするのに複雑なプロセスを要することが、一酸化窒素の検出および測定で使用されるものも含めたマイクロセンサを製作するための、その膜としての用途を妨げてきた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Zhang,X.、Frontiers in Bioscience、9、3434〜3446頁(2004年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、当技術分野では、センサ膜として使用される気体透過性材料が求められている。特に、一般的な溶媒を使用して、また、特定用途の材料の透過性および選択性が調整されるようにかつ様々なセンサ形状および材料が容易にコーティングされるように容易に変更できる方法を介して、合成することができる気体透過性材料が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(要旨)
いくつかの実施形態では、本発明に開示されている対象は、
(a)電極アセンブリと、
(b)電極アセンブリの1つまたは複数の面とサンプルとの間に位置付けられた気体透過膜であって、ポリシロキサン網状構造を含み、このポリシロキサン網状構造中の1個または複数のケイ素原子がアルキル基に共有結合し、ポリシロキサン網状構造中の1個または複数のケイ素原子がフッ素化アルキル基に共有結合している気体透過膜と、
(c)電極アセンブリで電流を測定するための検出器と
を含む、サンプル中の気体状化学種の量を測定するためのセンサを提供する。
【0009】
いくつかの実施形態では、気体状化学種は、一酸化窒素および酸素から選択される。
【0010】
いくつかの実施形態では、電極アセンブリは、
作用電極を含む電極アセンブリと、
作用電極および参照電極を含む電極アセンブリと、
作用電極、参照電極、および対極を含む電極アセンブリと
からなる群から選択される。
【0011】
いくつかの実施形態では、作用電極は、白金、白金黒付き白金、タングステン、金、炭素、炭素繊維、およびこれらの組合せから選択された材料を含む。いくつかの実施形態では、参照電極は、銀/塩化銀を含む。いくつかの実施形態では、対極は白金を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、ポリシラン網状構造は、アルキルアルコキシシランおよびフルオロシランを含むシラン混合物の縮合生成物である。
【0013】
いくつかの実施形態では、フルオロシランは、下式を有する構造を含む
【0014】
【化1】

(式中、
mは、0から15であり、
nは、1から5であり、
pは、1、2、または3であり、
各Xは、独立に、アルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、ヒドロキシル、およびハロからなる群から選択され、
各Yは、独立に、H、アルキル、アリール、およびアラルキルからなる群から選択される)。
【0015】
いくつかの実施形態では、フルオロシランは、
(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン;
ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン;
ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン;
(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリメトキシシラン;
(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン;
(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリクロロシラン;
(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリメトキシシラン;
(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン;
(ペルフルオロアルキル)エチルトリエトキシシラン;
(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリクロロシラン;およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0016】
いくつかの実施形態では、アルキルアルコキシシランは、
メチルトリメトキシシラン(MTMOS)、
エチルトリメトキシシラン、
プロピルトリメトキシシラン、
ブチルトリメトキシシラン(BTMOS)、
ヘキシルトリメトキシシラン(HTMOS)、
オクチルトリメトキシシラン(OTMOS)、および
これらの組合せ
からなる群から選択される。
【0017】
いくつかの実施形態では、シラン混合物は、約1体積%から約99体積%のフルオロシランを含む。いくつかの実施形態では、シラン混合物は、約5体積%から約50体積%のフルオロシランを含む。いくつかの実施形態では、シラン混合物は、約20体積%のフルオロシランを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、シラン混合物は、約20体積%の(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシランおよび約80体積%のメチルトリメトキシシランを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、センサは、内部電解質層を含み、この内部電解質層は、電極アセンブリと気体透過膜との間に位置付けられている。いくつかの実施形態では、内部電解質層がヒドロゲル組成物である。いくつかの実施形態では、ヒドロゲル組成物は、ポリ(ビニルピロリドン)を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、本発明で開示されている対象は、
(a)フルオロシランおよびアルキルアルコキシシランを含むシラン混合物を提供するステップと、
(b)電極アセンブリを提供するステップと、
(c)電極アセンブリの少なくとも一部をシラン混合物でコーティングして、コーティング付き電極を形成するステップと、
(d)コーティング付き電極を乾燥させて、気体透過性ポリシロキサン膜層を、電極アセンブリの少なくとも一部に形成するステップと
を含む、サンプル中の気体状化学種の量を測定するためのセンサを作製する方法を提供する。
【0021】
いくつかの実施形態では、シラン混合物を溶媒に溶解させる。いくつかの実施形態では、溶媒は、アルコールおよび水を含む。いくつかの実施形態では、アルコールはエタノールである。
【0022】
いくつかの実施形態では、溶媒は触媒を含む。いくつかの実施形態では、触媒は塩酸である。
【0023】
いくつかの実施形態では、乾燥は、周囲温度で行われる。いくつかの実施形態では、乾燥は、高温で行われる。いくつかの実施形態では、乾燥ステップはさらに、ある圧力で、一酸化窒素またはアルゴンの1つに膜層を曝すステップを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、コーティングは、電極アセンブリをシラン混合物中に浸漬することによって行われる。
【0025】
いくつかの実施形態では、この方法はさらに、コーティングおよび乾燥ステップを1回または複数回繰り返して、より厚い膜層を提供するステップを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、電極アセンブリの少なくとも一部をシラン混合物でコーティングする前に、電極アセンブリの少なくとも一部をヒドロゲル材料でコーティングする。
【0027】
いくつかの実施形態では、本発明により開示された対象は、
(a)フルオロシランおよびアルキルアルコキシシランを含むシラン混合物を提供するステップと、
(b)電極アセンブリを提供するステップと、
(c)電極アセンブリの少なくとも一部をシラン混合物でコーティングして、コーティング付き電極を形成するステップと、
(d)コーティング付き電極を乾燥させて、電極アセンブリの少なくとも一部に気体透過性ポリシロキサン膜層を形成するステップと
を含む方法によって作製されたセンサを提供する。
【0028】
いくつかの実施形態では、本発明により開示された対象は、サンプルと、ポリシロキサン膜を含むセンサとを接触させるステップを含む、サンプル中の気体状化学種の量を測定する方法を提供し、このポリシロキサン膜は、アルキル基に共有結合した1個または複数のケイ素原子と、フッ素化アルキル基に共有結合した1個または複数のケイ素原子とを含み、さらに、ポリシロキサン膜によって、サンプル中の気体状化学種をセンサが測定することを選択的に可能にする。
【0029】
いくつかの実施形態では、センサは、電流測定センサである。
【0030】
いくつかの実施形態では、ポリシロキサン膜は、サンプルと電極アセンブリとの間に位置決めされる。
【0031】
いくつかの実施形態では、サンプルは、生物学的サンプルまたは環境サンプルである。いくつかの実施形態では、生物学的サンプルが、細胞、組織、生物学的流体、またはこれらの抽出物から選択される。いくつかの実施形態では、サンプルは、脳細胞、マクロファージ、好中球、または血液を含む。いくつかの実施形態では、サンプルは、生きている被験体にある。いくつかの実施形態では、サンプルは、生きている被験体の脳にある。いくつかの実施形態では、サンプルは、単細胞を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、気体状化学種が、一酸化窒素または酸素である。いくつかの実施形態では、気体状化学種は、200pM程度に低い濃度で測定される。
【0033】
いくつかの実施形態では、本発明で開示されている対象は、ポリシロキサン網状構造を含む組成物を提供し、ポリシロキサン網状構造の1個または複数のケイ素原子はアルキル基に共有結合しており、ポリシロキサン網状構造の1個または複数のケイ素原子は、下記の構造を有するフッ素化アルキル基に共有結合している
【0034】
【化2】

(但し、mは0から15であり、nは1から5である)。
【0035】
いくつかの実施形態では、ポリシロキサン網状構造の各ケイ素原子は、アルキル基に、またはフッ素化アルキル基に共有結合している。
【0036】
いくつかの実施形態では、ポリシロキサン網状構造は、生物学的に関連のある気体状化学種を、選択的に透過させることができる。いくつかの実施形態では、生物学的に関連のある気体状化学種は、一酸化窒素および酸素を含む群から選択される。
【0037】
いくつかの実施形態では、ポリシロキサン網状構造は、アルキルアルコキシシランおよびフルオロシランを含む、シラン混合物の縮合生成物である。いくつかの実施形態では、ポリシロキサン網状構造は、ゾルゲル法によって形成される。
【0038】
したがって、本発明で開示されている対象の目的は、サンプル中の気体状化学種の量の測定に関連した、センサ、組成物、および方法を提供することである。
【0039】
本発明で開示されている対象によって全体的にまたは部分的に対処される、上記にて述べられてきた本発明で開示されている対象の目的、その他の目的、および態様は、以下に最も良く記述されている添付の実施例と併せて、記述が進むにつれて明らかにされよう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1Aは、キセロゲル膜コーティング付き感知チップを含む電極アセンブリの、概略的な縦断面図である。図1Bは、いかなる電極アセンブリチップコーティングも存在しない状態で示されている、図1Aに示される電極電極の感知端部の、概略的な平面図である。
【図2A】図2Aは、白金化タングステン−白金ワイヤマイクロ電極の、走査電子顕微鏡写真である。マイクロ電極のテーパ状端部の、約53μmの長さの切片が、白金黒によりコーティングされている。マイクロ電極の先端は、5μmの直径を有する。顕微鏡写真の底部右手の隅に付されているスケールは、50μmを表す。
【図2B】図2Bは、図2Aに記載されているマイクロ電極の、走査電子顕微鏡写真であり、より高い倍率で、マイクロ電極の粗い白金化チップ領域を示している。
【図2C】図2Cは、図2Aおよび2Bに示される、白金化タングステン−白金ワイヤマイクロ電極のチップ領域の、概略図である。マイクロ電極は、白金の層によって覆われた内部タングステンコアを含む。白金層はさらに、白金黒層でコーティングされる(即ち、粗い白金コーティング)。
【図3】図3は、白金マクロ電極にコーティングされた様々な化学組成のキセロゲル膜の、一酸化窒素(NO)の透過性(棒グラフ、左側の軸)および亜硝酸塩(NO)に対する選択性(散布図、右側の軸)を示す複合グラフである。キセロゲル膜は、80体積%のメチルトリメトキシシラン(MTMOS)および20体積%のフルオロシラン(即ち、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン(3FTMS)、ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン(9FTMS)、(トリデカフルオロ−1,1,2,2,−テトラヒドロオクチル)−トリメトキシシラン(13FTMS)、または(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリメトキシシラン(17FTMS))の混合物から調製した。破線は、剥き出しのPt電極の、亜硝酸塩に対する一酸化窒素の選択性を示す。
【図4】図4は、20体積%の(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシランを含む(残りは、メチルトリメトキシシラン(MTMOS))、シラン混合物の共縮合網状構造を含む膜でコーティングされた、白金黒付き白金(Pt)マイクロ電極の、動的応答および較正(挿入図)曲線を示す複合グラフである。曲線は、30nMから1200nMの間の濃度の一酸化窒素(見出しおよび矢印によって示される)に対する、コーティング付きマイクロ電極の応答を示す。動的応答曲線の右手側は、2μMから25μMの間の濃度の亜硝酸塩(NO)(やはり見出しおよび矢印によって示される)に対するコーティング付きマイクロ電極の応答も示す。
【図5】図5は、一酸化窒素濃度が30nMから300nMの間での、図4に示された動的応答および較正(挿入図)曲線を拡大した状態を示す複合グラフである。較正曲線の勾配は、−9.96pA/nM;直線性(r)=0.9987である。
【図6A】図6Aは、一酸化窒素濃度が0.5μMから4.0μMの間での、図4に記載されたコーティング付きマイクロ電極の動的応答曲線である。
【図6B】図6Bは、図6Aに示される動的応答曲線に対応した較正曲線である。勾配は、−7.60nA/μM;直線性(r)=0.9999である。
【図7A】図7Aは、一酸化窒素濃度が0.5μMから4.0μMの間での、コーティングされていない白金黒付き白金マイクロ電極の、動的応答曲線である。
【図7B】図7Bは、図7Aに示される動的応答曲線対応した較正曲線である。勾配は、−11.57nA/μM、直線性は0.9999である。
【図8】図8は、一酸化窒素濃度が200pMから3nMの間での(見出しおよび矢印によって示される)、図4に記載されたコーティング付きマイクロ電極の、動的応答および較正(挿入図)曲線の複合グラフである。動的応答曲線の右手側は、1μMから5μMの間の濃度での(やはり見出しおよび矢印によって示される)、亜硝酸塩(NO)に対するコーティング付きマイクロ電極の応答も示す。
【図9】図9は、20体積%の(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン(残り(即ち80体積%)は、メチルトリメトキシシラン、(MTMOS))を含むシラン混合物の共縮合網状構造を含む膜でコーティングされたマクロ電極の、動的応答(挿入図)および較正曲線の複合グラフである。較正曲線は、コーティング付きマクロ電極が、36から360mmHgの間の濃度の酸素ガス(O)に対して線形応答することを示す(勾配=44.7nA/mmHg;r=0.9908)。動的応答曲線は、36、72、151、および360mmHgの濃度でOに対する(見出しおよび矢印によって示される)コーティング付きマクロ電極の応答も示す。
【図10】図10は、キセロゲルコーティング付きスライドガラスへの、ブタ血小板粘着を示す棒グラフである。17FTMOSによって示される棒は、20体積%の(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン(残り(即ち80体積%)は、メチルトリメトキシシラン(MTMOS))を含むシラン混合物の共縮合網状構造を含むキセロゲルでコーティングされた、スライドガラスを指す。MTMOSによって示される棒は、MTMOSの縮合によって調製されたキセロゲルでコーティングされたスライドガラスを指す。値は、コーティングされていないスライドガラスに関して観察された血小板粘着に対して決定された。
【発明を実施するための形態】
【0041】
(詳細な説明)
次に、本発明で開示される対象について、代表的な実施形態が示されている添付の実施例を参照しながら、以下により完全に記述する。しかし、本発明に開示されている対象は、種々の形で具体化することができ、本明細書に記載されている実施形態に限定されると理解すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が徹底的にかつ完全になるように、また実施形態の範囲を当業者に十分伝えるように提供される。
【0042】
他に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明に記述される対象が属する分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、およびその他の文献は、その全体が参照により組み込まれる。
【0043】
明細書および特許請求の範囲の全体を通して、所与の化学式または名称は、全ての光学および立体異性体、ならびにそのような異性体および混合物が存在するラセミ混合物を、包含するものとする。
【0044】
(略語)
atm=気圧
BTMOS=ブチルトリメトキシシラン
℃=摂氏温度
EtOH=エタノール
g=グラム
h=時
HTMOS=ヘキシルトリメトキシシラン
MeOH=メタノール
mg=ミリグラム
min=分
μL=マイクロリットル
mL=ミリリットル
μm=マイクロメートル
μM=マイクロモル
mm=ミリメートル
MRI=磁気共鳴映像法
MTMOS=メチルトリメトキシシラン
nA=ナノアンペア
nm=ナノメートル
nM=ナノモル
NMR=核磁気共鳴
NO=一酸化窒素
NO=亜硝酸塩
NOS=一酸化窒素シンターゼ
OTMOS=オクチルトリメトキシシラン
pA=ピコアンペア
pM=ピコモル
PBS=リン酸緩衝生理食塩水
Pt=白金。
【0045】
(I.定義)
以前からの特許法の規則に従い、「a」および「an」という用語は、特許請求の範囲も含めた本出願で使用される場合、「1つまたは複数」を意味する。
【0046】
本明細書で使用される「約」という用語は、値または質量、重量、時間、体積、直径、もしくはパーセンテージを指す場合、指定された量から±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、なおより好ましくは±0.1%のばらつきを包含するものとするが、それは、そのようなばらつきが、開示された方法を実施するのに適しているからである。
【0047】
「疎水性」という用語は、所与の範囲まで、水素結合や静電相互作用などの非共有結合力を通して水をはじきまたは水と相互に作用しない、化合物または化学的部分を指す。化合物は、強力な疎水性またはわずかな疎水性にすることができる。化合物または基の、計算された誘電率は、化合物または部分の疎水性のレベルまたは程度を予測するのに使用することができる。より低い誘電率を有する化合物または部分は、より疎水的になる。
【0048】
「多孔質」という用語は、細孔を有する材料を指す。材料は、約20〜500Åの間の範囲にある細孔を含む、メソポーラスにすることができる。材料は、マクロポーラスにすることができ、約50nm超の直径を有する細孔を含むことができる。
【0049】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、C〜C20までの線状(即ち、「直鎖状」)、分岐状、または環状の、飽和または少なくとも部分的また場合によっては完全に不飽和(即ち、アルケニルおよびアルキニル)の炭化水素鎖、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、オクテニル、ブタジエニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、およびアレニル基を含めたものを指す。「分岐状」は、メチル、エチル、またはプロピルなどの低級アルキル基が線状アルキル鎖に結合しているアルキル基を指す。例示的な分岐状アルキル基には、限定するものではないがイソプロピル、イソブチル、t−ブチルが含まれ、「低級アルキル」は、1から約8個の炭素原子、例えば1、2、3、4、5、6、7、または8個の炭素原子を有するアルキル基(即ち、C1〜8アルキル)を指す。「高級アルキル」は、約10から約20個の炭素原子、例えば10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個の炭素原子を有するアルキル基を指す。ある実施形態では、「アルキル」は特に、C1〜8直鎖状アルキルを指す。その他の実施形態では、「アルキル」は特に、C1〜8分岐鎖状アルキルを指す。
【0050】
アルキル基は、任意選択で、同じにまたは異ならせることができる1個または複数のアルキル基置換基で置換することができる(「置換アルキル」)。「アルキル基置換基」という用語には、アルキル、置換アルキル、ハロ、アリールアミノ、アシル、ヒドロキシル、アリールオキシル、アルコキシル、アルキルチオ、アリールチオ、アラルキルオキシル、アラルキルチオ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、オキソ、およびシクロアルキルが含まれるが、これらに限定するものではない。任意選択で、1個または複数の酸素、硫黄、または置換もしくは非置換窒素原子をアルキル鎖に沿って挿入することができる(但し、窒素置換基は水素、低級アルキル(本明細書では「アルキルアミノアルキル」とも呼ぶ)、またはアリールである)。
【0051】
このように、本明細書で使用される「置換アルキル」という用語には、本明細書で定義されたアルキル基が含まれ、即ち、このアルキル基の1個または複数の原子または官能基の代わりに、例えばアルキル、置換アルキル、ハロゲン、アリール、置換アリール、アルコキシル、ヒドロキシル、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、スルフェート、およびメルカプトを含めた別の原子または官能基が用いられている。いくつかの実施形態では、置換アルキル基はフッ素化アルキル基である。
【0052】
「フッ素化アルキル」という用語は、C−H結合の1つまたは複数がC−F結合によって置き換えられているアルキル基(即ち、C〜C20線状、分岐状、または環状アルキル)を指す。いくつかの実施形態では、アルキル基の全長または全長の一部(即ち、いくつかの連続した炭素原子)が全フッ素化されている(即ち、C−H結合のそれぞれが、C−F結合によって置き換えられている)。
【0053】
本明細書で使用される「アリール」という用語は、単一の芳香環、または複数の芳香環であって、1つに融合したもの、共有結合したもの、または限定するものではないがメチレンもしくはエチレン部分などの共通の基に結合したものにすることができる。共通の結合基は、ベンゾフェノンにおけるカルボニル、またはジフェニルエーテルにおける酸素、またはジフェニルアミンにおける窒素にすることもできる。「アリール」という用語は特に、複素環式芳香族化合物を包含する。芳香環は、とりわけフェニル、ナフチル、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルアミン、およびベンゾフェノンを含むことができる。特定の実施形態では、「アリール」という用語は、約5から約10個の炭素原子、例えば5、6、7、8、9、または10個の炭素原子を含む、環状芳香族を意味し、5および6員炭化水素および複素環式芳香環が含まれる。
【0054】
アリール基は、任意選択で、同じにまたは異ならせることができる1個または複数のアリール基置換基により置換することができ(「置換アリール」)、この「アリール基置換基」には、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アリールオキシル、アラルキルオキシル、カルボキシル、アシル、ハロ、ニトロ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、アシルオキシル、アシルアミノ、アロイルアミノ、カルバモイル、アルキルカルバモイル、ジアルキルカルバモイル、アリールチオ、アルキルチオ、アルキレン、および−NR’R”が含まれ,R’およびR”は、それぞれ独立に、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、およびアラルキルにすることができる。
【0055】
したがって、本明細書で使用される「置換アリール」という用語には、本明細書で定義されるアリール基、即ちアリール基の1個または複数の原子または官能基が、例えばアルキル、置換アルキル、ハロゲン、アリール、置換アリール、アルコキシル、ヒドロキシル、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、スルフェート、およびメルカプトを含めた別の原子または官能基で置換されたものが含まれる。
【0056】
アリール基の特定の例には、シクロペンタジエニル、フェニル、フラン、チオフェン、ピロール、ピラン、ピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、イソチアゾール、イソキサゾール、ピラゾール、ピラジン、トリアジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン、インドール、カルバゾール、およびフルオレンなどが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0057】
「アラルキル」は、アリールおよびアルキルが前述の通りであり、かつ置換アリールおよび置換アルキルを含む、アリール−アルキル基を指す。例示的なアラルキル基には、ベンジル、フェニルエチル、およびナフチルメチルが含まれる。
【0058】
「アルコキシル」は、アルキルが前述の通りであるアルキル−O−基を指す。本明細書で使用される「アルコキシル」という用語は、例えば、メトキシル、エトキシル、プロポキシル、イソプロポキシル、ブトキシル、t−ブトキシル、およびフェントキシルを指すことができる。「オキシアルキル」および「アルコキシ」という用語は、「アルコキシル」と同義に使用することができる。
【0059】
「アリールオキシル」および「アリールオキシ」は、アリールが前述の通りであるアリール−O−基を指し、置換アリールが含まれる。本明細書で使用される「アリールオキシル」という用語は、フェニルオキシルまたはヘキシルオキシル、およびアルキル、置換アルキル、ハロ、またはアルコキシル置換フェニルオキシルまたはヘキシルオキシルを指すことができる。
【0060】
「アラルキルオキシル」、「アラルコキシ」、および「アラルキルオキシ」は、アラルキル基が前述の通りであるアラルキル−O−基を指す。例示的なアラルキルオキシ基は、ベンジルオキシルである。
【0061】
本明細書で使用される「ハロ」、「ハロゲン化物」、または「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨード基を指す。
【0062】
「ヒドロキシル」および「ヒドロキシ」という用語は、−OH基を指す。
【0063】
「ヒドロキシアルキル」という用語は、−OH基で置換されたアルキル基を指す。
【0064】
「シリル」および「シラン」という用語は、ケイ素原子(Si)を含む化学基および化合物を指す。
【0065】
本明細書で使用される「アルコキシシラン」という用語は、ケイ素原子に結合された1、2、3、または4個のアルコキシ基を含む化合物を指す。例えばテトラアルコキシシランは、Si(OR)を指し、但しRはアルキルである。各アルキル基は、同じにまたは異ならせることができる。
【0066】
「アルキルアルコキシシラン」は、アルコキシ基の1、2、または3個がアルキル基によって置換されているアルコキシシランを指す(即ち、R’−Si(OR)基、R’−Si(OR)基、またはR’−Si(OR)基)。各アルキル基は、同じにまたは異ならせることができる。このように、アルキルアルコキシシランは、少なくとも1つの炭素−Si結合を含む。
【0067】
「フルオロシラン」という用語は、1個または複数のフッ素原子を含むシランを指す。いくつかの実施形態では、フルオロシランは、少なくとも1個のフッ素化アルキル基に結合したケイ素原子を含む化合物である。いくつかの実施形態では、フルオロシランは、式R”Si(X)(Y)3−pの化合物を含む(但し、pは1〜3の整数であり;R”はフッ素化アルキル基であり、各Xは加水分解性の基であり(例えば、アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシル、またはハロ)、各Yは、H、アルキル、アリール、またはアラルキルである)。いくつかの実施形態では、pが3であり、フルオロシランは式R”Si(X)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、各X基は、アルコキシ、ヒドロキシル、およびハロから選択される。いくつかの実施形態では、各Xは、エトキシ、メトキシ、またはクロロである。
【0068】
「シラノール」という用語は、−Si−OH基を指す。
【0069】
「ポリシロキサン」という用語は、式RSiX(但し、RはH、アルキル、アリール、アラルキル、または置換アルキル基であり、各Xはアルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、ヒドロキシル、またはハロ基である)を有するケイ素−酸素結合の主鎖(即ち、−Si−O−Si−O−Si−)を含むポリマー材料を指す。いくつかの実施形態では、各ケイ素原子が1個のR基に、例えば1個のアルキルまたはフッ素化アルキル基に共有結合している。また各ケイ素原子は、ケイ素−酸素結合を介して1、2、または3個のその他のケイ素原子に架橋しており、エトキシ、メトキシ、ヒドロキシル、またはクロロなどの0、1、または2個のX基に結合している。このように、いくつかの実施形態では、ポリシロキサンにおける架橋レベルが高くなるほど、より少ないX基が存在する。「ポリシロキサン」および「シリコーン」という用語は、同義に使用することができる。
【0070】
本明細書で使用される「酸素」という用語は、気体を指す場合、二酸素、即ちOを指す。
【0071】
「共縮合」および「共縮合した」という用語は、2種の異なる化合物(例えば、フルオロシランおよびアルキルアルコキシシランなど)が互いに反応して、第3の化合物を形成しかつアルコールまたは水の1個または複数の分子を放出した場合に形成される材料を指す。
【0072】
本明細書で使用される「キセロゲル」という用語は、ゾルゲル法を介して形成されたポリマー網状構造を指す。特に、キセロゲルという用語は、シラン混合物を含有する溶液の共縮合から形成されたポリシロキサン網状構造を指すのに使用することができる。
【0073】
「選択透過性」という用語は、例えば、膜などの材料の選択的な透過性を指す。このように、選択透過的なまたは選択的に透過可能な膜によって、いくつかの分子は膜を通過することが可能になり、それと同時にその他の分子は膜を通過することができない。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される「選択透過性」という用語は、小さな無極性気体状分子を透過させ、それと同時により大きなまたはより極性の高い分子を不透過することを、選択的に可能にする膜を指す。
【0074】
したがって、いくつかの実施形態では、選択透過的なまたは選択的に透過可能な材料または膜は、一酸化窒素および酸素を選択的に透過させ、それと同時に、亜硝酸塩(NO)やアスコルビン酸、尿酸、アセトアミノフェン、ドーパミン、水溶液などの化合物を透過させない。
【0075】
(II.ポリシロキサン組成物)
いくつかの実施形態では、本発明に開示された対象は、アルキル基置換基を有する少なくとも1個のケイ素原子と、フッ素化アルキル基置換基を有する少なくとも1個のケイ素原子とを含む、ポリシロキサン網状構造を提供し、このフッ素化アルキル基は、下記の構造を有するものである
【0076】
【化3】

(式中、mは0から15であり、nは1から5である)。いくつかの実施形態では、ポリシロキサン網状構造のケイ素原子のそれぞれが、アルキル基にまたはフッ素化アルキル基に共有結合している。
【0077】
いくつかの実施形態では、ポリシロキサン網状構造は、生物学的に関連のある気体状化学種、例えば一酸化窒素および/または酸素(O)を選択的に透過させる。
【0078】
いくつかの実施形態では、ポリシロキサン網状構造は、アルキルアルコキシシランおよびフルオロシランを含むシラン混合物の共縮合生成物である。
【0079】
いくつかの実施形態では、フルオロシランは、下式を有する構造を含む
【0080】
【化4】

(式中、
mは0から15であり;
nは1から5であり;
pは1、2、または3であり;
各Xは独立に、アルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、ヒドロキシル、およびハロからなる群から選択され;
各Yは独立に、H、アルキル、アリール、およびアラルキルからなる群から選択される)。
【0081】
したがってフルオロシランは、フッ素化アルキル基と、縮合反応で生ずることのできる少なくとも1個の加水分解性基とを含むことができる。フルオロシランのケイ素原子は、1個または2個のフッ素化されていない非加水分解性基に結合することもできる。いくつかの実施形態では、pが2であり、フルオロシランは2個のX基および1個のY基を含むことができる。いくつかの実施形態では、pが1であり、フルオロシランは1個のX基および2個のY基を含むことができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、フルオロシランのケイ素原子置換基のそれぞれは、フッ素化アルキル基または加水分解性基である。このように、いくつかの実施形態では、pが3であり、フルオロシランは下式を有することができる。
【0083】
【化5】

いくつかの実施形態では、各Xは独立に、アルコキシまたはハロである。例えば各Xは、エトキシ、メトキシ、またはクロロにすることができる。いくつかの実施形態では、各Yがアルキルである。
【0084】
いくつかの実施形態では、フルオロシランは、
(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン;
ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン;
ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン;
(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリメトキシシラン;
(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン;
(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリクロロシラン;
(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリメトキシシラン;
(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン;
(ペルフルオロアルキル)エチルトリエトキシシラン;
(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリクロロシラン;およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0085】
いくつかの実施形態では、アルキルアルコキシシランは、メチルトリメトキシシラン(MTMOS);エチルトリメトキシシラン;プロピルトリメトキシシラン;ブチルトリメトキシシラン(BTMOS);ヘキシルトリメトキシシラン(HTMOS);オクチルトリメトキシシラン(OTMOS);およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0086】
いくつかの実施形態では、シラン混合物は、約1体積%から約99体積%のフルオロシランを含む。いくつかの実施形態では、シラン混合物は、約5体積%から約50体積%のフルオロシランを含む。いくつかの実施形態では、シラン混合物は、約20体積%のフルオロシランを含む。いくつかの実施形態では、シラン混合物は、約20体積%の(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシランと、約80体積%のメチルトリメトキシシランとを含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、ポリシロキサン網状構造は、ゾルゲル重合法を使用して形成されたキセロゲルである。ゾルゲル法では、ポリシロキサン網状構造の前駆体(例えば、アルキルアルコキシシランおよびフルオロシラン)が溶液中に存在する。例えば、前駆体を溶媒に溶解することができる。溶媒は、水と、エタノールやメタノール、プロパノールなどのアルコールとを含むことができる。重合が進むにつれて、前駆体は互いに結合し、高分子(即ち、ゲル)を形成する。
【0088】
ポリシロキサン網状構造を形成する「ゾルゲル」法には、2つのタイプの化学反応がある。第1のステップでは、アルキルアルコキシシランおよび/またはフルオロシランのアルコキシまたはクロロ基が加水分解される加水分解反応が行われ、それによって、シラノール基(即ち、Si原子に結合したヒドロキシ基)が形成される。加水分解反応は、例えば酢酸や塩酸などのブレンステッド酸または塩基(即ち、HまたはOHイオンを発生させる基)で触媒することができる。第2のステップは、2個のシラノールまたは1個のシラノールとアルコキシシランとが反応してシロキサン結合(即ち、Si−O−Si)を形成し、それと同時に水の分子またはアルコールの分子を放出する、縮合反応である。
【0089】
本発明に開示されたフルオロシランをベースにした材料は、固相29Si NMRを使用して、表面湿潤性測定を使用して、また、前駆体組成および処理条件に対するキセロゲルの化学構造の変化をモニタする電気化学的技法を使用して、分析することができる。
【0090】
例えば、ポリマーシランベースの網状構造での共縮合のレベルは、下記のスキーム1に示される、3つの異なるタイプのシリル基に関連したNMRピークの相対量の変化を評価することにより、固相29Si NMRを使用してモニタすることができる。あるタイプのシリル基は、2個のヒドロキシル基(スキーム1の構造A)、1個のR基(即ち、アルキルまたはフッ素化アルキル基)を含み、1つのシロキサン結合(波線により示される)を介して共縮合シリコーン網状構造に結合されている。第2のタイプのシリル基は、1個のヒドロキシル基、1個のR基を含み、網状構造への2個の結合部位を有する(構造B)。第3のタイプのシリル基(構造C)は、網状構造への3つの結合部位と1個のR基とを含む。
【0091】
【化6】

スキーム1.シリル基構造。
【0092】
様々な可能性ある使用条件に対する、キセロゲルの安定性についても、試験をすることができる。例えばキセロゲル膜は、ある期間にわたり所与のpHまたは温度で、溶液中に浸漬することができ、溶液中のSi濃度を測定して(例えば、直流プラズマ発光分光法を使用して)膜断片化の量を決定することができる。キセロゲルは、問題となっている特定の気体状または非気体状化学種に対する選択透過性を決定するためにも、試験をすることができる。ある実施形態では、膜またはこの膜で作製されたデバイスの所望の最終用途に応じて、本発明で開示されたフルオロシランベースのキセロゲル膜の生体適合性を決定することが、望ましくなる可能性がある。このように、いくつかの実施形態では、キセロゲルは、その免疫原性、および/または抗体、タンパク質、および/または哺乳類細胞、組織、または液体中に存在することができるその他の生物学的成分に対するその親和性を決定するために、試験をすることができる。
【0093】
例えば、本発明に開示されているフルオロシランベースのキセロゲル膜を血液に接触させる場合(例えば、静脈内使用)は、膜の血栓抵抗性を評価しかつ/または調整することが望ましいと考えられる。いくつかの実施形態では、血栓抵抗性は、生体外血小板粘着アッセイを使用して、血小板粘着に耐える膜の能力に応じて評価することができる。Marxer,S.M.ら、Analyst、130、206〜212頁(2005年)。湿潤性や表面粗さなど、キセロゲルごとに変化する可能性のある因子は、膜の血栓抵抗性に影響を及ぼす可能性があると考えられる。Marxer,S.M.ら、Analyst、130、206〜212頁(2005年)を参照されたい。膜の表面湿潤性は、例えば、1つまたは複数の時間にわたり水に曝す前および後に、膜の水接触角を測定することによって決定することができる。表面粗さは、原子間力顕微鏡法や任意のその他の適切な顕微鏡法などの顕微鏡法を介して、評価することができる。Marxer,S.M.ら、Analyst、130、206〜212頁(2005年)を参照されたい。
【0094】
(III.センサ)
本発明に開示される対象は、ポリシロキサン網状構造を含んだ気体透過膜を含むセンサを提供する。ポリシロキサン網状構造は、アルキルおよびフッ素化アルキル基の両方を含む。
【0095】
一般に、本発明に開示されたセンサは、ボルタンメトリーまたはクーロメトリー技法などの電気化学的技法を使用して、気体状化学種の存在を検出することができる。いくつかの実施形態では、センサは、電流測定センサである(即ち固定電位で経時的に、気体状化学種の酸化によって生成された酸化還元電流を検出する)。いくつかの実施形態では、検出器がポテンショスタットである。
【0096】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明に開示された対象は、サンプル中の気体状化学種の量を測定するためのセンサを提供し、このセンサは、
(a)電極アセンブリと、
(b)電極アセンブリの1つまたは複数の面とサンプルとの間に位置付けられた気体透過膜であって、ポリシロキサン網状構造を含み、このポリシロキサン網状構造中の1個または複数のケイ素原子がアルキル基に共有結合し、ポリシロキサ網状構造中の1個または複数のケイ素原子がフッ素化アルキル基に共有結合している気体透過膜と、
(c)電極アセンブリで電流を測定するための検出器と
を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、気体状化学種は、一酸化窒素および酸素から選択される。いくつかの実施形態では、膜は、一酸化窒素および酸素の1種または複数に対して選択的に透過性がある。このように、いくつかの実施形態では、本発明に開示されたセンサは、マクロまたはメソポーラスな膜を含み、いくつかの分子を膜の内部に通しまたは通過させることを可能にする。その他の分子は、そのサイズにより、または膜材料との静電反発により、膜を通過することができない。特に、いずれか1つの特定の理論に拘泥するものではないが、本発明に開示されたポリシロキサン網状構造の膜は、非親水性置換基(即ち、アルキルまたはフッ素化アルキル基)を有するシランからなり、いくつかの実施形態では、網状構造は、荷電化学種(例えば、亜硝酸塩(NO))に比べ、中性分子(例えば、NOおよびO)に対して選択的に透過性である。
【0098】
電極アセンブリは、1、2、3、またはそれ以上の電極を含むことができる。いくつかの実施形態では、電極アセンブリは、1個の電極(即ち、作用電極)を含む。いくつかの実施形態では、センサは、2または3電極構成を含む。このように、いくつかの実施形態では、電極アセンブリは、作用電極および参照電極を含む。いくつかの実施形態では、電極アセンブリは、作用電極、対極、および参照電極を含む。
【0099】
電極アセンブリはさらに、電極の少なくとも一部または電極を物理的に含有するように、または電極を互いに絶縁するように、1種または複数の絶縁材料または成分を含むことができる。いくつかの実施形態では、電極アセンブリは、1個または複数の電極を環境から保護するために、かつ/または電極アセンブリの生体適合性を強化するために、コーティングを含むことができる。例えば電極アセンブリは、気体状化学種を検出するセンサの能力を妨げない限り、気体透過膜によって覆われていないアセンブリ部分を覆う生体適合性のポリマーコーティングを含むことができる。
【0100】
適切な電極材料には、任意の導電性金属と、限定するものではないが白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、タングステン、ニッケル、銅、金、銀、および炭素、および炭素繊維、ならびに酸化物、二酸化物、これらの組合せまたは合金などのその他の材料とが含まれる。いくつかの実施形態では、導電性材料は、炭素(ガラス状炭素を含む)、炭素繊維、白金(白金黒付き白金を含む)、タングステン、銀、銀/塩化銀、金、銅、インジウムスズ酸化物、酸化イリジウム、ニッケル、およびこれらの組合せから選択される。いくつかの実施形態では、作用電極は、白金、白金黒付き白金、タングステン、金、炭素、炭素繊維、およびこれらの組合せから選択された材料を含む。いくつかの実施形態では、参照電極は、銀/塩化銀を含む。いくつかの実施形態では、対極は白金を含む。
【0101】
センサの寸法は、特定の用途に適するように様々に代えることができる。本発明に開示されたセンサは、直径が約1μmから約1mmの間であるセンサチップ(即ち、膜でコーティングされた電極アセンブリがサンプルに曝される領域)を有するマイクロセンサを含む。いくつかの実施形態では、マイクロセンサは、1μm以下のセンサチップ直径を有する。約10μmのセンサチップ直径を有するマイクロセンサは、「超マイクロセンサ」と呼ぶこともできる。本発明で開示されているセンサは、約1〜10mmのセンサチップ直径を有するマクロセンサも含む。
【0102】
センサは、柔軟にまたは剛性にすることができる。いくつかの実施形態では、センサは、剛性および柔軟な成分の両方を含むことができる。柔軟な成分を含むことは、センサの所望の最終使用を基にすることができる。例えば柔軟な成分は、生体内でのセンサの位置決め、検索、および/または使用に役立てることができる。
【0103】
いくつかの実施形態では、ポリシロキサン網状構造は、アルキルアルコキシシランおよびフルオロシランを含むシラン混合物の縮合生成物である。シラン混合物中のシランの化学構造および相対量は、意図されるセンサの使用に応じて、ポリシロキサン網状構造の生体適合性、表面湿潤性、および多孔率特性を変化させるために変えることができる。
【0104】
いくつかの実施形態では、センサはさらに、電極アセンブリまたは電極アセンブリの一部と気体透過膜との間に位置付けられた内部電解質層を含むことができる。いくつかの実施形態では、内部電解質層がヒドロゲル組成物である。適切なヒドロゲルには、限定するものではないがポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリルアミド、ポリ(2−アリールアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)(ポリAMPS)、およびポリビニルピロリドンを含めたヒドロゲル組成物など、医療用電極に使用されるヒドロゲルが含まれる。いくつかの実施形態では、ヒドロゲル組成物がポリビニルピロリドンを含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、センサは、それぞれがガラス毛細管の分離バレル内に挿入された作用電極および参照電極を含む、クラーク型センサにすることができる。適切なガラス毛細管は、例えば、World Precision Instruments、Sarasota、Florida、米国から入手可能である。毛細管の終わりでは、ガラスから電極の末端が露出し、気体透過膜によって覆われている。
【0106】
図1Aは、代表的なクラーク型センサ100の縦断面図を概略的に示し、フルオロシランをベースにしたキセロゲルのコーティングを含んでいる。センサ100のシャフトは、作用電極104と参照電極106と含む電極アセンブリ102を含む。電極は、任意の適切な電極材料のものにすることができ、電極アセンブリおよび/またはセンサの全体としての所望の寸法に対応した任意の適切な寸法を有することができる。いくつかの実施形態では、電極は、数mmから1マイクロメートルの十分のいくつかの間に及ぶ外径を有することができる。作用電極104は、例えば、127μmの外径を有する白金化Ptを含むことができる。参照電極106は、250μmの外径を有するAg/AgClを含むことができる。このように、電極アセンブリ102は、例えば1.5mmの外径を有することができる。電極104および106は、電極104および106を互いに絶縁する絶縁材料108(例えば、ホウケイ酸ガラス)によって取り囲まれている。電極アセンブリ102の端部110は、フルオロシランベースのキセロゲル112の層によって覆われている。このように、電極104および106に到達するには、センサ100に接触するサンプルからの任意の化学種を、最初にキセロゲル112内に拡散させなければならない。電極アセンブリ102の他方の端部(図示せず)は、検出器に取着することができる。電極104および106とキセロゲル112との間には、任意選択でヒドロゲル114が挟まれている。
【0107】
図1Bは、電極アセンブリ端部110の表面から電極アセンブリ102を見下ろした状態を示す概略図である。作用電極104の端部104’と作用電極106の端部106’は、端部110の表面で絶縁材料108によって覆われていない。
【0108】
図2A〜2Cは、本発明で開示した対象によるフルオロシランベースのキセロゲルで覆うことができる、単一のマイクロ電極の例を示す。より詳細には、図2Aは、白金化端部を含むテーパ状タングステン−白金ワイヤマイクロ電極の、顕微鏡写真画像を示す。図2Aに示されるように、テーパ状のより粗い白金化領域の直径は、白金化領域がより滑らかなマイクロ電極の非白金化領域に接合する約17μmから、マイクロワイヤの先端の約5μmに及ぶ。白金化領域の長さは、約53μmである。図2Bは、より高い倍率での、マイクロワイヤの白金化領域を示し、白金化プロセスから生ずる白金黒コーティングの粗さをさらに例示している。図2Cは、マイクロワイヤが、滑らかな白金(Pt)層でコーティングされたタングステン(W)コアを含むことを示す、白金化領域の概略図である。マイクロワイヤ電極の白金化領域では、滑らかな白金層がさらに、白金の粗い層(即ち、白金黒)でコーティングされている。白金黒層の粗さは、白金化領域の表面積を増大させる働きをすることができる。
【0109】
(III.A センサ形成)
いくつかの実施形態では、本発明により開示された対象は、
(a)フルオロシランおよびアルキルアルコキシシランを含むシラン混合物を提供するステップと、
(b)電極アセンブリを提供するステップと、
(c)電極アセンブリの少なくとも一部をシラン混合物でコーティングして、コーティング付き電極を形成するステップと、
(d)コーティング付き電極を乾燥して、電極アセンブリの少なくとも一部の上に気体透過性ポリシロキサン膜層を形成するステップと
を含む、サンプル中の気体状化学種の量を測定するためのセンサを作製する方法を提供する。
【0110】
いくつかの実施形態では、シラン混合物を溶媒に溶解する。いくつかの実施形態では、溶媒は、アルコールおよび水を含む。いくつかの実施形態では、溶媒は、ブレンステッド酸または塩基などの触媒を含む。いくつかの実施形態では、触媒は、塩酸である。このように、いくつかの実施形態では、上記にて記述されたようなゾルゲル化学技法によって、マクロおよびマイクロセンサを製作するための容易に使用可能な方法、ならびにセンサの分析的応答特性を最適化する際の柔軟性が提供される。
【0111】
電極アセンブリは、1、2、3個、またそれ以上の電極を含むことができる。いくつかの実施形態では、電極アセンブリは、1個の電極(即ち、作用電極)を含む。いくつかの実施形態では、センサは、2または3電極構成を含む。このように、いくつかの実施形態では、電極アセンブリは、作用電極および参照電極を含む。いくつかの実施形態では、電極アセンブリは、作用電極、対極、および参照電極を含む。電極アセンブリはさらに、電極(複数可)の少なくとも一部を物理的に含有するように、または電極を互いに絶縁するように、1種または複数の絶縁材料または成分を含むことができる。
【0112】
いくつかの実施形態では、電極アセンブリは、クラーク型電極アセンブリである。いくつかの実施形態では、電極アセンブリが、単一の金属ワイヤマイクロ電極または超マイクロ電極である。いくつかの実施形態では、単一金属ワイヤマイクロ電極または超マイクロ電極は、白金黒付き白金または白金黒付き白金/タングステンワイヤを含む。
【0113】
乾燥プロセス中、溶媒を蒸発させることができる。いくつかの乾燥条件は、網状構造内で任意の残されたアルコキシおよび/またはヒドロキシ基の付加縮合をもたらすことによって、膜の多孔率を低下させるのにも使用することができる。このように、ポリシロキサンの組成(例えば、アルキルアルコキシシランおよびフルオロシランの化学組成比)を変化させることに加え、コーティング付き電極アセンブリを乾燥する方法(例えば、硬化条件)は、センサの感度および選択性を最適化するのに使用することができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、コーティング付き電極アセンブリは、周囲条件にある時間にわたり曝すことによって、乾燥することができる。周囲条件下での乾燥を、経年劣化と呼ぶことができる。周囲条件には、大気圧で室温(即ち、約20℃から25℃の間)の空気または乾燥空気(即ち、デシケートされた空気)に曝すことが含まれる。コーティング付き電極アセンブリは、数分(即ち、5分)から1または2時間、あるいは1日から複数日に及ぶ時間にわたって経年劣化する可能性がある。
【0115】
いくつかの実施形態では、コーティング付き電極アセンブリは、高温で乾燥することにより(即ち、アニールによって)、硬化することができる。例えば、コーティング付き電極アセンブリは、数分から数時間などの期間にわたって約80℃で硬化することができる。
【0116】
さらに、いくつかの実施形態では、コーティング付き電極アセンブリは、所与の圧力の気体に曝すことによって、硬化することができる。例えば、コーティング付き電極アセンブリは、ある期間にわたって約1気圧から約5気圧の間の圧力で、NOやアルゴンガスなどの気体に曝すことによって硬化することができる。
【0117】
本発明により開示された方法の硬化または乾燥ステップは、経年劣化、アニール、またはある圧力の気体への曝露の任意の組合せを含むことができる。
【0118】
シラン混合物は、任意の好都合な方法により、電極アセンブリにコーティングすることができる。例えば、シラン混合物の一定分量を、ピペット、マイクロピペット、シリンジ、またはマイクロシリンジを使用して、電極アセンブリの一部に置くことができる。あるいは電極アセンブリを、シラン混合物中またはシラン混合物を含む溶液中に浸漬することができる。コーティングは、手作業で、またはロボットもしくはその他の機械化デバイスを使用して、行うことができる。コーティングされた電極アセンブリの一部は、一般に、作用電極の少なくとも一部を含むことになる。
【0119】
電極アセンブリは、0.02μL/mm程度に少ないシランコーティング混合物でコーティングすることができる。いくつかの実施形態では、膜は、約0.1μmから約10μmの間の厚さを有する。
【0120】
いくつかの実施形態では、膜層の厚さは、所望の透過性または選択性の特性のために最適化することができる。このように、いくつかの実施形態では、コーティングまたはコーティングおよび乾燥ステップを、1回または複数回繰り返して、より厚い膜層を実現することができる。
【0121】
いくつかの実施形態では、電極アセンブリは、シラン混合物でコーティングされる前に、内部電解質層でコーティングされる。いくつかの実施形態では、電解質層は、例えばポリ(ビニルピロリドン)などのヒドロゲル組成物である。ヒドロゲル内部電解質層は、30mMの塩化ナトリウムと、0.3mMの塩酸と、1%のポリ(ビニルピロリドン)とを水(pH=3.5)中に含む混合物で、電極アセンブリを処理することによって形成することができる。例えば電極アセンブリは、ポリ(ビニルピロリドン)混合物に浸漬し、周囲条件下で10分間乾燥し、その後、シラン混合物でコーティングすることができる。そのような内部電解質層の厚さは、例えば約1.5μMにすることができる。
【0122】
(III.B.センサの使用)
いくつかの実施形態では、本発明により開示された対象は、サンプル中の気体状化学種の量を測定する方法を提供する。サンプルは、生物学的サンプルまたは環境サンプルにすることができる。特に、本発明に開示されたセンサは、生体外または生体内で生物学的媒体の水溶液などの溶液中に溶解する気体状化学種を、特別にかつ定量的に検出するのに使用することができる。このように、いくつかの実施形態では、センサがバイオセンサである。いくつかの実施形態では、気体が酸素または一酸化窒素である。特定の実施形態では、本発明により開示された対象によって提供されたセンサは、一酸化窒素を検出することができる。
【0123】
いくつかの実施形態では、センサは、低レベルで存在する、例えば約10nM程度の低いレベルで存在する、一酸化窒素または別の気体状化学種を検出し定量することができる。いくつかの実施形態では、気体状化学種は、約200pM程度に低い濃度で存在する。例えばセンサは、約200pMから約4μMの間のレベルの濃度の気体状化学種を、選択的に測定することができる。いくつかの実施形態では、気体状化学種は、約200pMから約300nMの間の濃度である。いくつかの実施形態では、気体状化学種は、約200pMから約3nMの間の濃度である。
【0124】
したがって、本発明に開示されたセンサには、NOの生物学的動作を調査し、NOで調節されたプロセスに関連する医学的状態をモニタし、分解、治療薬、もしくは様々な治療薬の副作用、ニトログリセリンや亜硝酸アミルなどのNO関連治療薬の動作を含めたものをモニタする、研究ツールとして使用することができる一酸化窒素センサが含まれる。NO関連治療薬には、NO自体を放出するもの、ならびに身体によってNOの放出を引き起こすものが含まれる。いくつかの実施形態では、本発明によって開示されたセンサは、神経化学的研究または医学的診断ツールとして使用することができる。
【0125】
いくつかの実施形態では、気体が測定される生物学的サンプルは、細胞、組織、器官、または生物学的流体の1つである。細胞には、例えば、心臓細胞、脳細胞、マクロファージ細胞、好中球、単球細胞、および内皮細胞を含めることができる。生物学的流体には、血液、血漿、胃液、乳、唾液、および脳脊髄液(CSF)などを含めることができる。生物学的サンプルには、細胞培養物、組織培養物、および細胞または組織抽出物も含めることができる。
【0126】
いくつかの実施形態では、センサは、脳または脳細胞または脳組織中のNOを測定するのに使用することができる。いくつかの実施形態では、センサは、血液中、例えば血管中のNOレベルを測定するのに使用することができる。いくつかの実施形態では、センサは、マクロファージ細胞、好中球中、またはマクロファージおよび/または好中球を含みあるいは含むと考えられている組織中のNOを測定することによって、免疫応答を決定するのに使用することができる。いくつかの実施形態では、センサは、単細胞中のNO濃度を測定するのに使用することができる。
【0127】
いくつかの実施形態では、本発明に開示された対象の方法は、被験体から得られまたは被験体中に存在する生物学的サンプル中の、一酸化窒素(または別の生物学的に関連のある気体状化学種)の濃度を測定するのに役立てることができる。いくつかの実施形態では、被験体は、ヒト被験体であるが、被験体は、微生物、植物、および動物を含めた任意の生体にすることができることを理解すべきである。
【0128】
したがって、本明細書で使用される「被験体」という用語は、任意の無脊椎動物種または脊椎動物種を指す。本発明に開示された対象の方法およびセンサは、温血脊椎動物からのサンプルで使用される診断および研究ツールとして、特に有用である。このように、本発明に開示された対象は、哺乳類および鳥類に関する。より具体的には、本明細書には、ヒトなどの哺乳類、ならびに絶滅の危機に瀕しているために重要であり(シベリアトラなど)、経済学的に重要であり(ヒトによる消費のために農場で成育させた動物)、かつ/またはヒトのために社会的に重要な(ペットとしてまたは動物園で飼育されている動物)哺乳類、例えば、ヒト以外の肉食動物(ネコやイヌなど)、ブタ類(ブタ、雄ブタ、およびイノシシなど)、反芻動物(ウシ、雄ウシ、ヒツジ、キリン、シカ、ヤギ、バイソン、およびラクダなど)、およびウマの研究および/または診断のための方法が提供されている。絶滅の危機に瀕しており、動物園で飼育されている種類の鳥類、ならびに家禽、より具体的には飼い慣らされた家禽、例えば七面鳥やニワトリ、アヒル、ガチョウ、ホロホロ鳥などの家禽を含めた鳥類であって、やはりヒトにとって経済的に重要な鳥類の、研究および診断も提供される。このように、被験体には、飼い慣らされたブタ類(ブタ、雄ブタ)、反芻動物、ウマ、および家禽などを含むがこれらに限定するものではない家畜が含まれる。被験体には、げっ歯類(例えば、ラット、マウス、およびハムスター)や霊長類など、生物学的または医学的研究で一般に使用される動物も含まれる。
【0129】
いくつかの実施形態では、サンプルは、生きている被験体から得られるが、これはもはや生きている被験体中に存在しない。このように、いくつかの実施形態では、NOは、生体外でサンプル中で測定することができる。いくつかの実施形態では、サンプルは、生きている被験体中に存在し、NO濃度は、生体内でサンンプル中で測定することができる。いくつかの実施形態では、サンプルは、例えば湖、川、小川、池、または任意のその他の野外水源から採取された、空気サンプルや水サンプルなどの環境サンプルである。このように例えば、本発明により開示されたセンサは、例えば燃焼機関または発電所からの廃棄物として生成された、空気中のNOのレベルを測定するのに使用することができる。センサは、水域環境中で溶解したNOまたはOのレベルを定量し、そのような環境が動物または植物の生命を維持する能力を評価するのにも使用することができる。
【実施例】
【0130】
(実施例)
下記の実施例は、本発明に開示された対象の代表的な実施形態を実施するために、当業者に指針が示されるように含めた。本発明の開示および当業者の一般的レベルに照らし、当業者なら、下記の実施例が単なる例示を目的としたものであり、本発明に開示された対象の範囲から逸脱することなく、数多くの変更例、修正例、および代替例を用いることができることを、理解することができる。
【0131】
本発明に開示された網状構造、膜、およびセンサの調製および特徴付けは、先に記述された方法と同様に行うことができる。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるShin,J.H.ら、Anal.Chem.、77、3494〜3501頁(2005年)を参照されたい。シランは、Aldrich(Milwaykee、Wisconsin、米国)またはGelest(Tullytown、Pennsylvania、米国)から得られた。
【0132】
(実施例1)
(フルオロシランベースのキセロゲルの透過性および選択性)
キセロゲル流延溶液を、MTMOS(Aldrich、Milwaykee、Wisconsin、米国)40μLおよびフルオロシラン((3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン(3FTMS)、ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン(9FTMS)、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロ−オクチル)−トリメトキシシラン(13FTMS)、または(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリメトキシシラン(17FTMS))10μLと、200μLのエタノール(EtOH)および100μLの水とを10分間混合することによって調製した。キセロゲルの合成は、0.5M HCl 10μLを添加することによって、触媒された。次いで溶液を、白金黒付き白金作用マイクロ電極の表面に堆積した(3%の塩化白金酸および0.1%の酢酸鉛を水に溶かした白金化溶液で、白金化した)。
【0133】
NOおよび亜硝酸塩(NO)に対する硬化したキセロゲルの透過性は、10μMのNOおよび100μMの亜硝酸塩溶液中で、キセロゲルでコーティングされたPt電極と剥き出しのPt電極とのピーク電流の比を測定することにより、先に述べた手順に従って電気化学的に評価した。Shin,J.H.ら、Anal.Chem.、77、3494〜3501頁(2005年)を参照されたい。亜硝酸塩の存在下でNOに対する、キセロゲルで変更を加えたセンサの選択性は、やはり先に述べた手順にしたがって、分離溶液法を使用して決定した。Shin,J.H.ら、Anal.Chem.、77、3494〜3501頁(2005年)を参照されたい。
【0134】
透過性および選択性試験の結果を、図3に示す。図3の棒(中間灰色)グラフ部分によって示されるように、3FTMSおよび17FTMSを含むキセロゲルは、最も高いNO透過率を有していた。図3の散布グラフ(明るい色の四角形)によって示されるように、17FTMSを含むキセロゲルは、記述された条件下でNO上のNOを区別するのに、最も有効であった。
【0135】
(実施例2)
(フルオロシランベースのキセロゲル膜マイクロセンサ)
流延溶液を、MTMOS(Aldrich、Milwaykee、Wisconsin、米国)40μLおよび10μLの(ヘプタデカ−フルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン(Gelest、Tullytown、Pennsylvania、米国)と、200μLのエタノール(EtOH)および100μLの水とを10分間混合することによって調製した。キセロゲルの合成は、0.5M HCl 10μLを添加することによって、触媒された。次いで溶液を、白金黒付き白金作用マイクロ電極の表面に堆積した(3%の塩化白金酸および0.1%の酢酸鉛を水に溶かした白金化溶液で、白金化した)。
【0136】
硬化後、キセロゲル修飾マイクロ電極に関するNO応答および較正曲線を、標準NO溶液(1.9mM)の一定分量を室温で常に撹拌しながら100mLのリン酸緩衝整理食塩水(PBS、pH7.4)に注入することによって得た。電流測定は、CH Instruments 660Aポテンショスタット(CH Instruments,Inc.、Austin、Texas、米国)を使用して行った。電流は、加電圧+0.8V(Ag/AgCl参照電極に対して)で記録した。キセロゲル修飾マイクロ電極を、使用前に少なくとも30分間、事前に分極させた。
【0137】
図4は、30nMから1200nMのNO濃度範囲全体を通した、修飾マイクロ電極に関する応答および較正曲線(挿入図)を示す。動的応答曲線中のそれぞれの落込みは、NO溶液を一定分量添加したことを示す。修飾マイクロ電圧の応答は、潜在的に妨害する分子種、亜硝酸塩(NO)に関しても評価した。動的応答曲線に示されるように、約450秒後には、亜硝酸溶液の一定分量がPBS溶液に添加され、それによって、2μMから25μMの間の濃度の亜硝酸塩に対する修飾マイクロ電圧の応答を決定した。亜硝酸塩溶液は、亜硝酸ナトリウムから調製した(Sigma Chemical Co.、St.Louis、Missouri、米国)。図4に示されるように(実施例1に記載されたデータに基づいて予測されるように)、コーティング付きマイクロ電極は、NOよりも、亜硝酸塩に対する感度が著しく低いように見えた。
【0138】
図5は、30nMから300nMの間のNO濃度で、図4からの応答曲線および較正曲線(挿入図)を拡大したものを示す。較正曲線は、コーティング付きマイクロ電極が、30nMから300nMの間のNO濃度で線形応答を有することを示す(勾配 −9.96pA/nM;r=0.9987)。較正曲線の勾配は、コーティング付きマイクロ電極の応答感度に対応する。
【0139】
図6Aは、0.5μMから4.0μMの間のNO濃度に対する、コーティング付きマイクロ電極に関する動的応答曲線を示す。対応する較正曲線(図6Bに示す)の勾配は、−7.60nA/mM(r=0.9999)である。相対的に、同じ濃度範囲のNOに対する、コーティングされていないマイクロ電極(即ち、剥き出しの白金黒付き白金)の動的応答曲線および較正曲線を、図7Aおよび7Bに示す。剥き出しの白金黒付き白金電極の較正曲線の勾配は、−11.57nA/mM(r=9999)である。
【0140】
図8は、200pMから3nMの間の一酸化窒素濃度での、コーティング付きマイクロ電極に関する動的応答曲線および較正曲線(挿入図)を示す。動的応答曲線の右手側は、1μMから5μMの間の濃度のNOに対する、コーティング付きマイクロ電極の応答も示す。
【0141】
(実施例3)
(フルオロシランベースのキセロゲルコーティング付きセンサの酸素応答)
膜コーティング付きマクロ電極センサは、20体積%の(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシランと、80体積%のメチルトリメトキシシラン(MTMOS)とを含む膜流延溶液を使用して作製した。流延溶液は、上記実施例2で述べたように調製した。センサは、Pt作用電極(2mm)、Ptワイヤ対極(0.6mm)、およびAg/AgCl(3.0M KCl)参照電極を有する、3電極アセンブリ構成を含んでいた。
【0142】
酸素応答および構成曲線は、先に述べた方法によって得られた。Marxer,S.M.ら、Analyst、130、206〜212頁(2005年)を参照されたい。より詳細には、膜コーティング付き電極アセンブリを、0、36、72、151、または360mmHgのOで飽和したリン酸緩衝生理食塩(PBS)溶液中に配置した。PBS溶液は室温であり、常に撹拌した。電流測定を、CH Instruments 660A(CH Instruments,Inc,、Austin、Texas、米国)を使用して行った。電流を、−0.65Vの加電圧(Ag/AgCl参照電極に対して)で記録した。
【0143】
酸素応答および較正曲線を、図9に示す。較正曲線によって示されるように、膜コーティング付きマクロ電極は、36mmHgから360mmHgの間の濃度で、Oに対して線形応答を有していた。
【0144】
(実施例4)
(フルオロシランベースのキセロゲル膜の生体適合性)
本発明により開示されたフルオロシランベースのキセロゲル膜の生体適合性を、血小板粘着に抵抗する膜の能力を評価することによって決定した。血小板粘着抵抗性は、先に開示された方法に従って決定した。Marxer,S.M.ら、Analyst、130、206〜212頁(2005年)を参照されたい。
【0145】
より具体的には、酸性クエン酸デキストロース(ACD)−抗凝固ブタ血(20部の全血に対して3部のACD)を、200×gで30分間、室温で遠心分離して、多血小板血漿(PRP)を得た。塩化カルシウムをPRPに添加して、0.25〜0.50mM Ca2+の最終濃度にし、それによって正常な血小板活性を維持した。フルオロシランベースのキセロゲル膜でコーティングされたスライドガラスを、湿潤環境で、37℃のPRP中に1時間浸漬した。スライドを、タイロード緩衝液(pH7.4)で濯いで、弱く粘着した血小板を除去した。次いで結合した血小板を、1%グルタルアルデヒド溶液(v/v、タイロード緩衝液)で30分間固定した。スライドをタイロード緩衝液および水で濯ぎ、50%、75%、および95%のエタノール(v/v、水)に浸漬することによって、それぞれ5分間、化学的に乾燥させ、その後、100%のエタノールに10分間浸漬し、最後にヘキサメチルジシラザンに約12時間浸漬した。
【0146】
スライドの位相コントラスト画像は、Zeiss Axiovert 200倒立顕微鏡(Carl Zeiss MicroImaging,Inc.、Chester、Virginia、米国)を使用して得た。キセロゲル膜コーティング付きスライド上への血小板粘着の量を、コーティングされていないスライドガラスの場合と比較した。20体積%の(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシランと80体積%のMTMOSとのシラン混合物を含む流延溶液から作製された、フルオロシランベースのキセロゲル膜コーティング付きスライドガラスの相対的な血小板粘着を、図10に示す(右手の棒、17FTMSによって示される)。単一のシラン、MTMOSを含む流延溶液から作製された、キセロゲル膜コーティング付きスライドガラスに対する相対的な血小板粘着も、図10に示す(左手の棒、MTMOSによって示される)。
【0147】
(参考文献)
以下に列挙される参考文献ならびに本明細書中で示されるすべての参考文献は、本明細書中で使用される方法論、技術および/または組成物のための背景を補い、説明し、提供する、または方法論、技術および/または組成物を教示する程度まで、本明細書中に参考として援用される。本願中で言及されるすべての示された特許および刊行物は、本明細書中で特に参考として援用される。
【0148】
Marxer,S.M.,ら、Analyst,130,206−212(2005)
Shin,J.H.ら、Anal.Chem.,77,3494−3501(2005)
Zhang,X.,Frontiers in Bioscience,9,3434−3446(2004)。
【0149】
現在開示されている主題の種々の詳細は、現在開示されている主題の範囲から逸脱することなく改変され得る、ということは理解される。さらに、前述の説明は、例示の目的のためのみであり、限定の目的のためではない。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)電極アセンブリと、
(b)電極アセンブリの1つまたは複数の面とサンプルとの間に位置付けられた気体透過膜であって、ポリシロキサン網状構造を含み、該ポリシロキサン網状構造中の1個または複数のケイ素原子がアルキル基に共有結合し、該ポリシロキサン網状構造中の1個または複数のケイ素原子がフッ素化アルキル基に共有結合している気体透過膜と、
(c)電極アセンブリで電流を測定するための検出器と
を含む、サンプル中の気体状化学種の量を測定するためのセンサ。
【請求項2】
気体状化学種が、一酸化窒素および酸素から選択される、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
電極アセンブリが、
作用電極を含む電極アセンブリと、
作用電極および参照電極を含む電極アセンブリと、
作用電極、参照電極、および対極を含む電極アセンブリと
からなる群から選択される、請求項1に記載のセンサ。
【請求項4】
作用電極が、白金、白金黒付き白金、タングステン、金、炭素、炭素繊維、およびこれらの組合せから選択される、請求項3に記載のセンサ。
【請求項5】
参照電極が、銀/塩化銀を含む、請求項3に記載のセンサ。
【請求項6】
対極が白金を含む、請求項3に記載のセンサ。
【請求項7】
ポリシロキサン網状構造が、アルキルアルコキシシランおよびフルオロシランを含むシラン混合物の縮合生成物である、請求項1に記載のセンサ。
【請求項8】
フルオロシランが、下式を有する構造を含む、請求項7に記載のセンサ
【化7】

(式中、
mは0から15であり、
nは1から5であり、
pは1、2、または3であり、
各Xは独立に、アルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、ヒドロキシル、およびハロからなる群から選択され、
各Yは独立に、H、アルキル、アリール、およびアラルキルからなる群から選択される)。
【請求項9】
フルオロシランが、
(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン;
ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン;
ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン;
(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリメトキシシラン;
(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン;
(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリクロロシラン;
(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリメトキシシラン;
(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン;
(ペルフルオロアルキル)エチルトリエトキシシラン;
(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリクロロシラン;およびこれらの組合せ
からなる群から選択される、請求項8に記載のセンサ。
【請求項10】
アルキルアルコキシシランが、
メチルトリメトキシシラン(MTMOS)、
エチルトリメトキシシラン、
プロピルトリメトキシシラン、
ブチルトリメトキシシラン(BTMOS)、
ヘキシルトリメトキシシラン(HTMOS)、
オクチルトリメトキシシラン(OTMOS)、および
これらの組合せ
からなる群から選択される、請求項7に記載のセンサ。
【請求項11】
シラン混合物が、約1体積%から約99体積%のフルオロシランを含む、請求項7に記載のセンサ。
【請求項12】
シラン混合物が、約5体積%から約50体積%のフルオロシランを含む、請求項11に記載のセンサ。
【請求項13】
シラン混合物が、約20体積%のフルオロシランを含む、請求項12に記載のセンサ。
【請求項14】
シラン混合物が、約20体積%の(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシランおよび約80体積%のメチルトリメトキシシランを含む、請求項13に記載のセンサ。
【請求項15】
内部電解質層をさらに含み、該内部電解質層が、電極アセンブリと気体透過膜との間に位置付けられている、請求項1に記載のセンサ。
【請求項16】
内部電解質層がヒドロゲル組成物である、請求項15に記載のセンサ。
【請求項17】
ヒドロゲル組成物がポリ(ビニルピロリドン)を含む、請求項16に記載のセンサ。
【請求項18】
(a)フルオロシランおよびアルキルアルコキシシランを含むシラン混合物を提供するステップと、
(b)電極アセンブリを提供するステップと、
(c)電極アセンブリの少なくとも一部をシラン混合物でコーティングして、コーティング付き電極を形成するステップと、
(d)コーティング付き電極を乾燥させて、気体透過性ポリシロキサン膜層を、電極アセンブリの少なくとも一部上に形成するステップと
を含む、サンプル中の気体状化学種の量を測定するためのセンサを作製する方法。
【請求項19】
フルオロシランが、下式を有する構造を含む、請求項18に記載の方法
【化8】

(式中、
mは0から15であり、
nは1から5であり、
pは1、2、または3であり、
各Xは、独立に、アルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、ヒドロキシル、およびハロからなる群から選択され、
各Yは、独立に、H、アルキル、アリール、およびアラルキルからなる群から選択される)。
【請求項20】
フルオロシランが、
(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン;
ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン;
ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン;
(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリメトキシシラン;
(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン;
(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリクロロシラン;
(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリメトキシシラン;
(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン;
(ペルフルオロアルキル)エチルトリエトキシシラン;
(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリクロロシラン;およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
アルキルアルコキシシランが、
メチルトリメトキシシラン(MTMOS)、
エチルトリメトキシシラン、
プロピルトリメトキシシラン、
ブチルトリメトキシシラン(BTMOS)、
ヘキシルトリメトキシシラン(HTMOS)、
オクチルトリメトキシシラン(OTMOS)、および
これらの組合せ
からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
シラン混合物が、約1体積%から約99体積%のフルオロシランを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
シラン混合物が、約5体積%から約50体積%のフルオロシランを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
シラン混合物が、約20体積%のフルオロシランを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
シラン混合物が、約20体積%の(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシランおよび約80体積%のメチルトリメトキシヒシランを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
シラン混合物を溶媒に溶解する、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
溶媒が、アルコールおよび水を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
アルコールがエタノールである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
溶媒が、触媒をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
触媒が塩酸である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
電極アセンブリが、
作用電極を含む電極アセンブリと、
作用電極および参照電極を含む電極アセンブリと、
作用電極、参照電極、および対極を含む電極アセンブリと
からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項32】
作用電極が、白金、白金黒付き白金、タングステン、金、炭素、炭素繊維、およびこれらの組合せから選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
参照電極が、銀/塩化銀を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
対極が白金を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
乾燥が周囲温度で生じる、請求項18に記載の方法。
【請求項36】
乾燥が高温で生じる、請求項18に記載の方法。
【請求項37】
乾燥ステップが、膜層を、ある圧力で一酸化窒素またはアルゴンの一方に曝すステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項38】
コーティングが、電極アセンブリをシラン混合物中に浸漬することによって行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項39】
コーティングおよび乾燥ステップを1回または複数回繰り返して、より厚い膜層を提供するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項40】
電極アセンブリの少なくとも一部をシラン混合物でコーティングする前に、電極アセンブリの少なくとも一部をヒドロゲル材料でコーティングする、請求項18に記載の方法。
【請求項41】
請求項18に記載の方法によって作製されたセンサ。
【請求項42】
サンプルと、ポリシロキサン膜を含むセンサとを接触させるステップを含む、サンプル中の気体状化学種の量を測定する方法であって、
ポリシロキサン膜が、アルキル基に共有結合した1個または複数のケイ素原子と、フッ素化アルキル基に共有結合した1個または複数のケイ素原子とを含み、
ポリシロキサン膜によって、サンプル中の気体状化学種をセンサで測定することを選択的に可能にする方法。
【請求項43】
ポリシロキサン膜が、アルキルアルコキシシランおよびフルオロシランを含むシラン混合物の縮合生成物である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
センサが、電流測定センサである、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
ポリシロキサン膜が、サンプルと電極アセンブリとの間に位置決めされている、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
電極アセンブリが、
作用電極を含む電極アセンブリと、
作用電極および参照電極を含む電極アセンブリと、
作用電極、参照電極、および対極を含む電極アセンブリと
からなる群から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
サンプルが、生物学的サンプルまたは環境サンプルである、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
サンプルが、細胞、組織、生物学的流体、およびこれらの抽出物からなる群から選択された生物学的サンプルである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
サンプルが、脳組織、脳細胞、または血液から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
サンプルが、生きている被験体中にある、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
サンプルが、生きている被験体の脳内にある、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
気体状化学種が、一酸化窒素および酸素からなる群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項53】
気体状化学種が、約200pM程度に低い濃度でサンプル中に存在する、請求項42に記載の方法。
【請求項54】
ポリシロキサン網状構造を含み、該ポリシロキサン網状構造内の1個または複数のケイ素原子がアルキル基に共有結合し、該ポリシロキサン網状構造内の1個または複数のケイ素原子が、下記の構造を有するフッ素化アルキル基に共有結合している組成物
【化9】

(式中、mは0から15であり、nは1から5である)。
【請求項55】
ポリシロキサン網状構造内の各ケイ素原子が、アルキル基にまたはフッ素化アルキル基に共有結合している、請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
ポリシロキサン網状構造が、生物学的に関連のある気体状化学種に対して選択的に透過性である、請求項54に記載の組成物。
【請求項57】
生物学的に関連のある気体状化学種が、一酸化窒素および酸素からなる群から選択される、請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
ポリシロキサン網状構造が、アルキルアルコキシシランおよびフルオロシランを含むシラン混合物の縮合生成物である、請求項54に記載の組成物。
【請求項59】
フルオロシランが、下式を有する構造を含む、請求項58に記載の組成物
【化10】

(式中、
mは0から15であり、
nは1から5であり、
pは1、2、または3であり、
各Xは、独立に、アルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、ヒドロキシル、およびハロからなる群から選択され、
各Yは、独立に、H、アルキル、アリール、およびアラルキルからなる群から選択される)。
【請求項60】
フルオロシランが、
(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン;
ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン;
ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン;
(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリメトキシシラン;
(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン;
(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリクロロシラン;
(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリメトキシシラン;
(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン;
(ペルフルオロアルキル)エチルトリエトキシシラン;
(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリクロロシラン;およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
アルキルアルコキシシランが、
メチルトリメトキシシラン(MTMOS)、
エチルトリメトキシシラン、
プロピルトリメトキシシラン、
ブチルトリメトキシシラン(BTMOS)、
ヘキシルトリメトキシシラン(HTMOS)、
オクチルトリメトキシシラン(OTMOS)、および
これらの組合せ
からなる群から選択される、請求項58に記載の組成物。
【請求項62】
シラン混合物が、約1体積%から約99体積%のフルオロシランを含む、請求項58に記載の組成物。
【請求項63】
シラン混合物が、約5体積%から約50体積%のフルオロシランを含む、請求項62に記載の組成物。
【請求項64】
シラン混合物が、約20体積%のフルオロシランを含む、請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
シラン混合物が、約20体積%の(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)−トリエトキシシランおよび約80体積%のメチルトリメトキシシランを含む、請求項64に記載の組成物。
【請求項66】
シラン混合物が、アルコールおよび水を含む溶媒中に溶解されている、請求項58に記載の組成物。
【請求項67】
溶媒が、触媒をさらに含む、請求項66に記載の組成物。
【請求項68】
触媒が塩酸である、請求項67に記載の組成物。
【請求項69】
ポリシロキサン網状構造が、ゾルゲル法によって形成される、請求項66に記載の組成物。

【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−501259(P2010−501259A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525640(P2009−525640)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/018718
【国際公開番号】WO2008/073167
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(501378929)ザ ユニバーシティー オブ ノースカロライナ アット チャペル ヒル (4)
【Fターム(参考)】