説明

フルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン化合物、その製造方法、及びその用途

【課題】液晶表示素子に利用される液晶材料等として有用な液晶組成物及びフルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン骨格を有する化合物の提供。
【解決手段】
下記式(I)で表されるフルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン骨格を有する化合物の少なくとも一種を含有することを特徴とする液晶組成物、及び下記式(II)で表される化合物である。式中、Yは、水素原子もしくはフッ素原子を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶素子に利用される液晶材料等として有用な、フルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン化合物、その製造方法、及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶性化合物を用いた表示素子(液晶表示素子)は極めて広い範囲で利用されるようになっている。液晶表示素子は液晶化合物の特性である光学(屈折率)異方性(Δn)や誘電率異方性(Δε)を利用したものであり、時計、電卓、各種測定機器、自動車用パネル、ワープロ、電子手帳、携帯電話、プリンター、コンピューター、テレビ等に利用されている。
液晶化合物には固体相と液体相との中間に位置する固有の液晶相があり、その相形態はネマチック相、スメクチック相及びコレステリック相に大別される。これらのうち表示素子用、いわゆる駆動用液晶としてはネマチック相が最も広く利用されている。実際に液晶表示素子として提案されている表示方式としては、散乱型(DS型)、ゲスト・ホスト型(GH型)、ねじれネマチック型(TN型)、超ねじれネマチック型(STN型)、薄膜トランジスター型(TFT型)及び強誘電性液晶(FLC)等が知られている。駆動方式としては、スタティック駆動方式、時分割駆動方式、アクティブマトリックス駆動方式及び2周波駆動方式等が知られている。
現在広く使用されているアクティブマトリックス駆動方式において、TN(Twist Nematic)モードの液晶表示素子は、応答速度及び視野特性に劣るという欠点を有しており、TV等の視覚特性が重要な用途においては問題となっている。これに対して、VA(Vertical alignment)モードやIPS(In−plane switching)モードは、視野角が広く、応答時間が短く、コントラストが高い等の長所を有することが知られている。
【0003】
VAモードは現在大型テレビで最も広く用いられているモードであり、ここで実用されている垂直配向型液晶素子に使用される液晶組成物には、大きな負の誘電異方性を有すること、ネマチック相を発現する温度範囲が広いこと、化学安定性に優れていること等の特徴が要求される。負の誘電異方性を有する化合物としては、例えば、特許文献1に、2,3−ジフルオロフェニル基を有する液晶化合物が開示されている。近年、液晶表示装置の駆動周波数は120Hz以上へと大きくなる傾向があり、電圧の印加に対して高速に応答する液晶材料が要求されるようになっているが、従来の液晶材料は、高速応答実現に必要な誘電率異方性Δεが十分に負に大きいレベルにあるといえず、誘電率異方性Δεがより負に大きい液晶材料の開発が期待されている。
【0004】
一般に、棒状有機化合物の誘電率異方性Δεを負に大きくするためには、長軸方向に対して直交方向に、ダイポールモーメントを有する分子設計が有効であり、具体的には、長軸方向に対して直交方向にダイポールモーメントを有するように、シアノ基、ハロゲン原子で置換する方法が広く用いられている。
【0005】
液晶材料の場合、特許文献1に開示されているように、フッ素原子で置換されたベンゼン環を有する化合物は多く知られているが、ベンゼン以外の環構造を含み、該環構造が部分的に置換された化合物の報告例は少なく、特に、ビシクロ[2.2.2]−2−オクテンのオレフィン部位の水素原子をフッ素原子で置換した化合物は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許DE3906058
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、液晶表示素子に利用される液晶材料等として有用な、新規なフルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン化合物、並びにその製造方法及びその用途を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 下記式(I)で表されるフルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン骨格を有する化合物の少なくとも一種を含有することを特徴とする液晶組成物:
【化1】

式中、Yは、水素原子もしくはフッ素原子を表す。
【0009】
[2] 前記化合物が、環状炭化水素基及び芳香族基から選択される少なくとも1種の環状連結基をさらに有する化合物であることを特徴とする[1]の液晶組成物。
[3] 前記化合物が、下記一般式(II):
【化2】

式中、Yは、水素原子もしくはフッ素原子を表し;R1及びR2は各々独立に、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、又は炭素原子数2〜12のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は酸素原子(O)又は硫黄原子(S)に置換されていてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、フッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく;A1及びA2は互いに独立に、(a)トランス−1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)、(b)1,4−シクロヘキセニレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)、(c)1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上のCH基は、窒素原子(N)に置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)、又は、(d)1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、CN、塩素原子、又は臭素原子に置換されていてもよい)を表し;Z1及びZ2はそれぞれ独立に、−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CF2CF2−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH2CH2−、又は、単結合を表し;m及びnは互いに独立に、0、1又は2を表し、A1、A2、Z1及びZ2が複数存在する場合は、それらは同一であっても異なっていてもよい;
で表される化合物であることを特徴とする[1]の液晶組成物。
【0010】
[4] 互いの吸収軸を直交にして配置された2枚の偏光膜と、
前記2枚の偏光膜の間に、一対の基板、及び前記一対の基板に挟持された液晶層を有する液晶セルと、
を備えた液晶表示装置であって、
前記液晶層が[1]〜[3]のいずれかの液晶組成物を含有することを特徴とする液晶表示装置。
[5] VA方式であることを特徴とする[4]の液晶表示装置。
[6] 下記一般式(II):
【化3】

式中、Yは、水素原子もしくはフッ素原子を表し、R1及びR2は各々独立に、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、又は炭素原子数2〜12のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は、酸素原子(O)又は硫黄原子(S)に置換されていてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、フッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく;A1及びA2は互いに独立に、(a)トランス−1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)、(b)1,4−シクロヘキセニレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)、(c)1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上のCH基は、窒素原子(N)に置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)、又は、(d)1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、CN、塩素原子、又は臭素原子に置換されていてもよい)を表し;Z1及びZ2はそれぞれ独立に、−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CF2CF2−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH2CH2−、又は単結合を表し;m及びnは互いに独立に、0、1又は2を表し、A1、A2、Z1及びZ2が複数存在する場合は、それらは同一であっても異なっていてもよい;
で表されるフルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン化合物。
【0011】
[7] 一般式(II)中、A1及びA2の少なくとも一方が、トランス−1,4−シクロヘキシレン基、又は、1個以上のフッ素原子によって置換されていてもよい1,4−フェニレン基であることを特徴とする[6]の化合物。
[8] 下記一般式(III):
【化4】

式中、Yは、水素原子もしくはフッ素原子を表し;Xは、ハロゲン原子又はOR3(R3は、水素原子もしくは水酸基の保護基、又は、OR3の形で脱離基として作用するものを表す。)を表し;R1は、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、又は炭素原子数2〜12のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は、酸素原子(O)又は硫黄原子(S)に置換されていてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、フッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく;A1は、(a)トランス−1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)、(b)1,4−シクロヘキセニレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)、(c)1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上のCH基は、窒素原子(N)に置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)、又は、(d)1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、CN、塩素原子、又は臭素原子に置換されていてもよい)を表し;Z1は、−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CF2CF2−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH2CH2−、又は、単結合を表し;mは0,1又は2を表す;
で表されるフルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン化合物。
【0012】
[9] Xが、ハロゲン原子、OH、OSO2R、又はOCOR(Rは、炭素原子数1〜12のアルキル基、又はフェニル基を表し、これらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、フッ素原子、塩素原子、又は炭素原子数1〜12のアルキル基に置換されてもよく)である[8]の化合物。
[10] 下記式(I)で表されるフルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン骨格を有する化合物を製造する方法であって、
【化5】

(式中、Yは、水素原子もしくはフッ素原子を表す。)
下記一般式(IV):
【化6】

(式中、Yは、水素原子もしくはフッ素原子を表す。)
で表されるフルオロビシクロ[2.2.2]オクタン骨格を有する化合物を、脱HFさせる工程を備えたフルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン化合物の製造方法。
【0013】
[11] [6]に記載のフルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン化合物を製造する方法であって、
下記一般式(V):
【化7】

(式中、Y、R1、R2、A1、A2、Z1、Z2、m及びnは、式(II)中のそれぞれと同義である)
で表されるビシクロ[2.2.2]オクタン化合物を、脱HFさせる工程を備えたフルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン化合物の製造方法。
【0014】
[12] [8]に記載のフルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン化合物を製造する方法であって、
下記一般式(VI):
【化8】

(式中、Xは、ハロゲン原子又はOR3(R3は、水素原子もしくは水酸基の保護基、又は、OR3の形で脱離基として作用するものを表す。)であり、Y、R1、A1、Z1及びmは、式(III)中のそれぞれと同義である。)
で表されるビシクロ[2.2.2]オクタン化合物を、脱HFさせる工程を備えたフルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、液晶表示素子に利用される液晶材料等として有用な、新規なフルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン化合物、並びに該化合物の製造方法及びその用途を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明は、フルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン骨格、具体的には下式(I)で表される骨格、を有する化合物及びそれを含む液晶組成物に関する。
【0017】
【化9】

式中、Yは、水素原子もしくはフッ素原子を表す。
【0018】
本発明に係わる前記式(I)の骨格を有する化合物(以下、「フルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン化合物」という場合がある)は、単独で液晶性を示す化合物であっても、他の1種以上の化合物と混合した組成物となってはじめて液晶性を示す化合物であってもよい。以下、本明細書において「液晶材料用化合物」の用語は、その化合物自身が液晶性を示し、単独あるいは組成物の状態で、液晶材料として使用できる化合物に対して用いられるのみならず、その化合物自身は液晶性を示さないが、他の材料と混合することにより液晶材料として使用され得る化合物に対しても用いるものとする。
【0019】
・式(II)で表される化合物
本発明は、下記一般式(II)で表される化合物に関する。当該化合物は、種々の用途に用いることができる。当該化合物は、液晶材料用化合物として特に好ましい。
【0020】
【化10】

【0021】
式中、Yは、水素原子もしくはフッ素原子を表し、R1及びR2は各々独立に、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、又は炭素原子数2〜12のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基はO又はSに置換されていてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、フッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく;A1及びA2は互いに独立に、(a)トランス−1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン又はCNに置換されていてもよい)、(b)1,4−シクロヘキセニレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン又はCNに置換されていてもよい)、(c)1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上のCH基は、Nに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン又はCNに置換されていてもよい)、又は、(d)1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、CN、塩素原子、又は、臭素原子に置換されていてもよい)を表し;Z1及びZ2はそれぞれ独立に、−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CF2CF2−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH2CH2−、又は、単結合を表し;m及びnは互いに独立に、0、1又は2を表し;A1、A2、Z1及びZ2が複数存在する場合は、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0022】
一般式(II)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜12(好ましくは炭素原子数1〜8、より好ましくは炭素原子数1〜5)のアルキル基、又は炭素原子数2〜12(好ましくは炭素原子数2〜8、より好ましくは炭素原子数2〜5)のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は、O又はSに置換されていてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、フッ素原子又は塩素原子に置換されてもよい。R1及びR2の具体例には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、ビニル基、トランス−1−プロペニル基、3−ブテニル基、トランス−3−ペンテニル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、アリルオキシ基が含まれる。
【0023】
一般式(II)中、A1及びA2はそれぞれ独立に、(a)トランス−1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)、(b)1,4−シクロヘキセニレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)、(c)1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上のCH基は、窒素原子(N)に置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)、又は、(d)1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、CN、塩素原子、又は臭素原子に置換されていてもよい)を表すが、好ましくは、トランス−1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)、1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上のCH基は、Nに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)を表す。より好ましくは、トランス−1,4−シクロヘキシレン基、又は、1個以上のフッ素原子によって置換されていてもよい1,4−フェニレン基であり、A1及びA2の少なくとも一方(好ましくはA2)が、トランス−1,4−シクロヘキシレン基、又は、1個以上のフッ素原子によって置換されていてもよい1,4−フェニレン基であるのが好ましい。
【0024】
一般式(II)中、Z1及びZ2はそれぞれ独立に、−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CF2CF2−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH2CH2−、又は単結合を表し;好ましくは、−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−C≡C−、−CH2CH2−、又は、単結合を表し、より好ましくは、−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−CH2CH2−、又は単結合を表し;さらに好ましくは、−CH2O−、−OCH2−、−CH2CH2−、又は単結合を表す。
【0025】
一般式(II)中、m及びnは互いに独立に、0、1又は2を表し、好ましくは1又は2を表す。また、一般式(II)で表される化合物の例には、mが0、且つnが1又は2である化合物も含まれる。即ち、下記式(II)’で表される化合物である。
【0026】
【化11】

式中、n1は1又は2を表す。その他の記号については、式(II)中のそれぞれと同義であり、好ましい例も同様である。
【0027】
上記した通り、一般式(II)の化合物は、前記式(I)で表されるフルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン骨格を有する化合物の、液晶材料用化合物としての好ましい形態である。一般式(II)で表される化合物の例には、R1、R2、A1、A2、Z1、Z2、m、nの組み合わせにより種々の化合物が含まれる。好ましい具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0028】
【化12】

【0029】
【化13】

【0030】
【化14】

【0031】
【化15】

【0032】
【化16】

【0033】
【化17】

【0034】
【化18】

【0035】
【化19】

【0036】
【化20】

【0037】
【化21】

【0038】
【化22】

【0039】
【化23】

【0040】
【化24】

【0041】
【化25】

【0042】
p及びqはそれぞれ、お互いに独立して1〜9である。Cp2p+1及びCq2q+1で表される基は好ましくは直線状であり、それぞれの基の1個もしくは2個以上の水素原子はフッ素原子により置換されていてもよい。化学式中に含まれる略号Acはアセチル基、MOMはメトキシメチル基、Tsはトシル基、THPはテトラヒドロピラニル基、Msはメタンスルホニル基、Tfはトリフルオロメタンスルホニル基、TMSはトリメチルシリル基、Bnはベンジル基、Bzはベンゾイル基、Phはフェニル基をそれぞれ表す。
【0043】
・ 式(III)で表される化合物
本発明は、下記式(III)で表されるフルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン化合物にも関する。当該化合物は、種々の用途に用いることができる。当該化合物は、液晶材料用化合物の中間体として特に好ましい。ここでいう液晶材料用化合物の中間体とは、1工程もしくは2工程以上で、他の液晶材料用化合物に変換できる化合物であることを意味しており、その中間体化合物自身が液晶性を示し、単独あるいは組成物の状態で、液晶材料として使用できてもよいし、その中間体化合物自身は液晶性を示さず、他の材料と混合することにより液晶材料として使用できるものであってもよい。
【0044】
【化26】

【0045】
式中、Yは、水素原子もしくはフッ素原子を表し;Xは、ハロゲン原子又はOR3(R3は、水素原子もしくは水酸基の保護基、又は、OR3の形で脱離基として作用するものを表す。)を表し;R1は、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、又は炭素原子数2〜12のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は、酸素原子(O)又は硫黄原子(S)に置換されていてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、フッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく;A1は、(a)トランス−1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)、(b)1,4−シクロヘキセニレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)、(c)1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上のCH基は、窒素原子(N)に置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)、又は、(d)1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、CN、塩素原子、又は臭素原子に置換されていてもよい)を表し;Z1は、−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CF2CF2−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH2CH2−、又は、単結合を表し;mは0、1又は2を表し;Xは、1価の置換基を表す。
【0046】
一般式(III)中、R1は、水素原子、炭素原子数1〜12(好ましくは炭素原子数1〜8、より好ましくは炭素原子数1〜5)のアルキル基、又は炭素原子数2〜12(好ましくは炭素原子数2〜8、より好ましくは炭素原子数2〜5)のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は、O又はSに置換されていてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、フッ素原子又は塩素原子に置換されてもよい。R1の具体例には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、ビニル基、トランス−1−プロペニル基、3−ブテニル基、トランス−3−ペンテニル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、アリルオキシ基が含まれる。
【0047】
一般式(III)中、A1は、(a)トランス−1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)、(b)1,4−シクロヘキセニレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)、(c)1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上のCH基は、窒素原子(N)に置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)、又は、(d)1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、CN、塩素原子、又は臭素原子に置換されていてもよい)を表すが、好ましくは、トランス−1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)、1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上のCH基は、Nに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン又はCNに置換されていてもよい)を表すが、より好ましくは、トランス−1,4−シクロヘキシレン基、又は、1個以上のフッ素原子によって置換されていてもよい1,4−フェニレン基である。
【0048】
一般式(III)中、Z1は、−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CF2CF2−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH2CH2−、又は、単結合を表し、好ましくは、−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−C≡C−、−CH2CH2−、又は、単結合を表し、より好ましくは、−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−CH2CH2−、又は、単結合を表し、さらに好ましくは、−CH2O−、−OCH2−、−CH2CH2−、又は、単結合を表す。
【0049】
一般式(III)中、Xは、一価の置換基を表すが、好ましくは、臭素原子、塩素原子、OR3である。R3は、水素原子又は一価の置換基を表すが、一価の置換基である場合は、水酸基の保護基、又は、OR3の形で脱離基として作用するものが好ましい。
【0050】
3としては、アルキル基、置換アルキル基(例えばアルコキシアルキル基)、アリル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基、ピコリル基、1,3−ベンゾジチオラン−2−イル基、置換シリル基、ホルミル基、置換ホルミル基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、置換アルキルオキシカルボニル基、フェニルオキシカルボニル基、置換フェニルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、置換ベンジルオキシカルボニル基、置換フェニル基、置換アルカノイルオキシ基、置換ベンゾイルオキシ基、アルコキシカルボキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ホルミル基、置換ホルミル基、及び置換シリル基が挙げられる。これらの基中の炭素原子数については特に制限はないが、水酸基の保護基及びOR3の形で脱離基として作用するものとして公知の種々の基は、炭素原子数1〜4程度である。
【0051】
3で表される一価の基としては、好ましくは、メチル基、メトキシメチル基、メチルチオメチル基、tert−ブチルチオメチル基、(フェニルジメチルシリル)メトキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、p−メトキシベンジルオキシメチル基、(p−メトキシフェノキシ)メチル基、(o−メトキシフェノキシ)メチル基、tert−ブトキシメチル基、4−ペンテニルオキシメチル基、(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)メチル基、(tert−ブチルジフェニルシリルオキシ)メチル基、メトキシエトキシメチル基、2,2,2−トリクロロエトキシメチル基、ビス(2−クロロエトキシ)メチル基、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、3−ブロモテトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、1−メトキシシクロヘキシル基、4−メトキシテトラヒドロピラニル基、4−メトキシテトラヒドロチオピラニル基、1,4−ジオキサン−2−イル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオフラニル基、1−エトシキエチル基、1−(2−クロロエトキシ)エチル基、1−メチル−1−メトキシエチル基、1−メチル−1−ベンジルオキシエチル基、1−メチル−1−ベンジルオキシ−2−フルオロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、2−トリメチルシリルエチル基、tert−ブチル基、アリル基、p−クロロフェニル基、p−メトキシフェニル基、2,4−ジニトロフェニル基、ベンジル基、p−メトシキベンジル基、3,4−ジメトキシベンジル基、o−ニトロベンジル基、p−ニトロベンジル基、p−クロロベンジル基、p−ブロモベンジル基、2,6−ジクロロベンジル基、p−シアノベンジル基、p−フェニルベンジル基、2−ピコリル基、4−ピコリル基、ジフェニルメチル基、ビス(p−ニトロフェニル)メチル基、トリフェニルメチル基、p−メトキシフェニルジフェニルメチル基、ジ(p−メトキシフェニル)フェニルメチル基、トリ(p−メトキシフェニル)メチル基、9−アントリル基、9−(9−フェニル)キサンテニル基、9−(9−フェニル−10−オキソ)アントリル基、1,3−ベンゾジチオラン−2−イル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、(2,3−ジメチル−2−ブチル)ジメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、トリベンジルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、ホルミル基、ベンゾイルホルミル基、アセチル基、クロロアセチル基、ジクロロアセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、メトキシアセチル基、トリフェニルメトシキアセチル基、フェノシキアセチル基、p−クロロフェノシキアセチル基、プロピオニル基、3−フェニルプロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、4−オキソペンタノイル基、4,4−(エチレンジチオ)ペンタノイル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、2−ブテノイル基、4−メトシキ−2−ブテノイル基、ベンゾイル基、p−フェニルベンゾイル基、2,4,6−トリメチルベンゾイル基、メチルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニル基、2−(トリメチルシリル)エチルオキシカルボニル基、2−(フェニルスルフォニル)エチルオキシカルボニル基、2−(トリフェニルフォスフォニオ)エチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、ビニルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、p−ニトロフェニルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基、3,4−ジメトシキベンジルオキシカルボニル基、o−ニトロベンジルオキシカルボニル基、p−ニトロベンジルオキシカルボニル基、メタンスルホニル基、パラトルエンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、及びクロロメタンスルホニル基であり;より好ましくは、メチル基、メトキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、p−メトキシベンジルオキシメチル基、(p−メトキシフェノキシ)メチル基、(o−メトキシフェノキシ)メチル基、tert−ブトキシメチル基、(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)メチル基、(tert−ブチルジフェニルシリルオキシ)メチル基、メトキシエトキシメチル基、1−メトキシシクロヘキシル基、テトラヒドロフラニル基、1−エトシキエチル基、1−(2−クロロエトキシ)エチル基、1−メチル−1−ベンジルオキシエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、2−トリメチルシリルエチル基、tert−ブチル基、アリル基、p−メトキシフェニル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ビス(p−ニトロフェニル)メチル基、トリフェニルメチル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、アセチル基、フェノシキアセチル基、p−クロロフェノシキアセチル基、プロピオニル基、3−フェニルプロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基、メタンスルホニル基、パラトルエンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、及びクロロメタンスルホニル基であり;さらに好ましくは、メチル基、メトキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、1−メトキシシクロヘキシル基、テトラヒドロフラニル基、1−エトシキエチル基、2−トリメチルシリルエチル基、tert−ブチル基、アリル基、p−メトキシフェニル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、アセチル基、フェノシキアセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ベンゾイル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基、メタンスルホニル基、パラトルエンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、及びクロロメタンスルホニル基であり;さらに好ましくは、メチル基、メトキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、tert−ブチル基、アリル基、ベンジル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、メタンスルホニル基、パラトルエンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、及びクロロメタンスルホニル基である。
【0052】
一般式(III)中、mは0、1又は2を表し、好ましくは1又は2を表す。
【0053】
前記一般式(III)で表される化合物の例には、R1、A1、Z1、X、及びmの組み合わせにより種々の化合物が含まれる。好ましい具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0054】
【化27】

【0055】
【化28】

【0056】
【化29】

【0057】
【化30】

【0058】
【化31】

【0059】
【化32】

【0060】
上記式中、p及びqはそれぞれ独立して、1〜9である。Cp2p+1及びCq2q+1で表される基は直線状であるのが好ましく、それぞれの基の1個又は2個以上の水素原子が、フッ素原子により置換されていてもよい。なお、上記式中に含まれる略号Acはアセチル基、MOMはメトキシメチル基、Tsはトシル基、THPはテトラヒドロピラニル基、Msはメタンスルホニル基、Tfはトリフルオロメタンスルホニル基、TMSはトリメチルシリル基、Bnはベンジル基、Bzはベンゾイル基、Phはフェニル基をそれぞれ表す。
【0061】
前記一般式(I)で表されるフルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン骨格を有する化合物の製造方法の一例は、下記式(IV)で表されるフルオロビシクロ[2.2.2]オクタン骨格を有する化合物を、脱HFさせる工程を含む方法である。
【0062】
【化33】

(式中、Yは、水素原子もしくはフッ素原子を表す。)
【0063】
・一般式(II)で表される化合物の製造法
前記一般式(II)で表される化合物の製造方法の一例は、下記式(V)で表されるフルオロビシクロ[2.2.2]オクタン化合物を、脱HFさせる工程を含む方法である。
【0064】
【化34】

式中、Y、R1、R2、A1、A2、Z1、Z2、m及びnは、前記式(II)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0065】
前記一般式(V)でそれぞれ表される化合物の例には、Y、R1、R2、A1、A2、Z1、Z2、m、n及びXの組み合わせにより種々の化合物が含まれる。好ましい具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0066】
【化35】

【0067】
【化36】

【0068】
【化37】

【0069】
【化38】

【0070】
【化39】

【0071】
【化40】

【0072】
【化41】

【0073】
【化42】

【0074】
【化43】

【0075】
【化44】

【0076】
【化45】

【0077】
【化46】

【0078】
【化47】

【0079】
【化48】

【0080】
・一般式(III)で表される化合物の製造法
前記一般式(III)で表される化合物の製造方法の一例は、下記式(VI)で表されるフルオロビシクロ[2.2.2]オクタン化合物を、脱HFさせる工程を含む方法である。
【0081】
【化49】

【0082】
式中、Xは、ハロゲン原子又はOR3(R3は、水素原子もしくは水酸基の保護基、又は、OR3の形で脱離基として作用するものを表す。Y、R1、A1、Z1及びmは、前記式(III)中のそれぞれと同義である。
【0083】
前記一般式(VI)でそれぞれ表される化合物の例には、Y、R1、R2、A1、A2、Z1、Z2、m、n及びXの組み合わせにより種々の化合物が含まれる。好ましい具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0084】
【化50】

【0085】
【化51】

【0086】
【化52】

【0087】
【化53】

【0088】
【化54】

【0089】
【化55】

【0090】
前記式中、p及びqはそれぞれ、お互いに独立して1〜9である。Cp2p+1及びCq2q+1で表される基は好ましくは直線状であり、それぞれの基の1個もしくは2個以上の水素原子はフッ素原子により置換されていてもよい。化学式中に含まれる略号Acはアセチル基、MOMはメトキシメチル基、Tsはトシル基、THPはテトラヒドロピラニル基、Msはメタンスルホニル基、Tfはトリフルオロメタンスルホニル基、TMSはトリメチルシリル基、Bnはベンジル基、Bzはベンゾイル基、Phはフェニル基をそれぞれ表す。
【0091】
本発明の製造方法に用いられる上記式(V)で表される化合物のうち、Yが水素原子である化合物は、例えば、下記工程(1)又は(2)を含む方法により製造することができる。
(1)下記一般式(Va)で表されるビシクロ[2.2.2]オクタン化合物とフッ素化剤とを反応させる工程。
(2)前記一般式(Va)で表されるビシクロ[2.2.2]オクタン化合物と下記一般式(VII)で表される化合物とを反応させ、次いで、得られた反応物をフッ素化剤と反応させる工程。
【0092】
【化56】

式中、R1、R2、A1、A2、Z1、Z2、m及びnは、前記式(II)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0093】
【化57】

前記式(VII)中、tは2〜4の整数である。
【0094】
また、前記一般式(VI)で表される化合物のうち、Yが水素原子である化合物は、例えば、下記工程(3)又は(4)を含む方法により製造することができる。
(3) 下記一般式(VIa)で表されるビシクロ[2.2.2]オクタン化合物とフッ素化剤とを反応させる工程。
(4) 前記一般式(VIa)で表されるビシクロ[2.2.2]オクタン化合物と下記一般式(VII)で表される化合物とを反応させ、次いで、得られた反応物をフッ素化剤と反応させる工程。
【0095】
【化58】

【0096】
式中、R1、A1、X、Z1及びmは、前記式(III)中のそれぞれと同義である。
【0097】
【化59】

式中、tは2〜4の整数である。
【0098】
前記工程(1)〜(4)において、出発物質として用いられる一般式(Va)及び(VIa)で表される化合物は、ヒドロキシアルキルビシクロ[2.2.2]オクタノンを、適切な試薬により、修飾することで製造することができる。なお、ヒドロキシアルキルビシクロ[2.2.2]オクタノンは、Journal of the Chemical Society, Perkin Transactions 2: Physical Organic Chemistry 1981,1,26-31に記載の方法等で合成することができる。また、特願2009−047780号明細書の式(Xa)を出発原料とするヒドロキシビシクロオクタノン化合物の製造方法により製造すると、高収率で製造できるので好ましい。
【0099】
前記工程(1)〜(4)に用いられるフッ素化剤の例には、ジエチルアミノスルホトリフルオライド(DAST)、2,2−ジフルオロ−1,3−ジメチルイミダゾリジン(DFI),ビス(2−メトキシエチル)アミノサルファートリフルオリド、ピリジニウムポリ(ヒドロゲンフルオリド)等が含まれる。
一般式(Va)又は(VIa)で表される化合物と、フッ素化剤との反応は、大気中の水分等の影響を受けないように、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気に置換した密閉容器内で進行させるのが好ましい。当該反応の反応温度は25〜60℃程度、反応時間は24〜48時間程度が好ましいが、この範囲に限定されるものではない。
【0100】
また、前記工程(2)及び(4)では、一般式(Va)又は(VIa)で表される化合物と、前記式(VII)で表される化合物との反応によって、チオアセタール誘導体が得られる。この反応において、反応温度は−10〜0℃程度、反応時間は1〜12時間程度であるのが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。また、溶媒はジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒が望ましく、脱水剤として三フッ化ホウ素エーテラートを共存させることが望ましい。
前記工程(2)及び(4)における、一般式(Va)又は(VIa)で表される化合物と前記式(VII)で表される化合物との反応物と、フッ素化剤との反応の好ましい条件については、Journal of Fluorine Chemistry 1994, 69, 127-128.; Jornal of Organic Chemistry 1986, 51, 3508-3513 に記載の方法に従う。
【0101】
また、出発物質として用いられる一般式(V)及び(VI)で表される化合物のうち,Yがフッ素原子である化合物については、Yが水素原子である一般式(II)及び(III)で表される化合物を一旦得た後、フッ素ガスと反応させることにより合成することができる。フッ素ガスと反応させる工程における温度条件は、副反応を抑制するために、低温条件下で行ってもよい。反応温度は−120〜0℃が好ましいが、この範囲に限定されるものではない。
【0102】
本発明の方法では、上記の方法等で得られた前記式(V)又は(VI)で表される化合物を、脱HFすることで、式(II)又は(III)で表される化合物を得る。脱HF工程は、液相で進行させるのが好ましい。前記工程の反応系のpH条件は、特に限定されるものではないが、脱HFを促進するために、塩基性条件下で行ってもよい。反応系を塩基性条件にするため、反応系中にアルカリ性物質を添加してもよく、添加可能なアルカリ性物質の例には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどの一般的な無機化合物;トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミンなどの脂肪族アミン、ピリジン、アニリンなどの芳香族アミン;などが含まれる。
【0103】
また、前記脱HF工程は、脱HFを促進するために、酸性条件下で行ってもよい。酸性条件にするために、反応系中に酸を添加してもよく、添加可能な酸の例には、硫酸、塩酸などの一般的なブレンステッド酸;三フッ化ホウ素エーテル錯体、三塩化アルミニウムなどのルイス酸;が含まれる。
【0104】
前記脱HF工程の温度条件は、脱HFを促進するために、高温条件下で行ってもよい。反応温度は100〜200℃が好ましいが、この範囲に限定されるものではない。
【0105】
前記一般式(III)で表される化合物の合成法の一例は、下記スキーム1で示される方法である。
【0106】
【化60】

【0107】
前記一般式(II)で表される化合物の合成法の一例は、下記スキーム2で示される方法である。
【0108】
【化61】

【0109】
また、前記一般式(II)で表される化合物は、下記スキーム3で示される方法に従って、即ち、式(III)の化合物を経て合成することもできる。
【0110】
【化62】

【0111】
式中R4は一価の置換基を表す。式(III)の化合物から式(II)の化合物への変換は、1工程であってもよいし、脱保護及び/又は脱離基への変換を含む2工程以上であってもよい。)
【0112】
・液晶組成物
本発明は、前記式(I)で表される骨格、即ちフルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン骨格、を有する化合物の少なくとも1種を含有する液晶組成物にも関する。
本発明の液晶組成物、特に前記式(II)で表される化合物を含有する態様は、誘電率異方性Δεが、無置換のビシクロ[2.2.2]オクタン骨格を有する化合物と比較して、負に大きいという特徴がある。例えば、後述する実施例で示されている通り、フルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン化合物の例(特に前記式(II)で表される化合物)には、Δεが−4以下である種々の化合物が含まれる。VAモード液晶素子の液晶材料には、Δεが−2以下で、Δnが0.07以上である液晶材料が好ましいとされているが、前記式(I)で表される骨格を有する化合物の例(特に前記式(II)で表される化合物)には、これらの特性を満足する化合物が種々含まれる。それらの化合物は、特にVAモード液晶表示素子の液晶材料として利用するのが好ましい。また、前記式(II)又は(III)で表される本発明の化合物は、位相差板等の光学異方性材料等の主原料又は添加剤、並びにそれらの製造に用いられ液晶材料用化合物の中間体としても有用である。
【0113】
・液晶表示装置
本発明は、互いの吸収軸を直交にして配置された2枚の偏光膜と、該2枚の偏光膜の間に、一対の基板、及び該一対の基板に挟持された液晶層を有する液晶セルとを備えた液晶表示装置であって、該液晶層が、本発明の液晶組成物を含有することを特徴とする液晶表示装置にも関する。本発明の液晶組成物は、上記した通り、負に大きい誘電率異方性を示すという特徴があるので、特にVAモード液晶表示装置に適している。
【実施例】
【0114】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
なお、実施例中の各測定は、以下の方法で行った。
【0115】
<化合物の誘電率異方性Δεの測定>
化合物の誘電率異方性Δεの測定方法は、以下の通りである。ネマチック液晶組成物Aに、5〜20質量%になるように、検体である化合物を溶解し、ネマチック液晶組成物を調製した。得られたネマチック液晶組成物の誘電率異方性Δεを周波数応答アナライザ(東陽テクニカ社製、1255B、商品名)を用いて測定した。分子長軸に平行な誘電率ε//の測定に用いた液晶セルの基板は、ITO透明電極層が形成されたガラス基板(厚み1.1mm)であり、セルギャップ8μmで、エポキシ樹脂シール付きであり、一対の基板の対向面には、JSR製ポリイミド配向膜JALS−2021(商品名、垂直配向)が形成されたものである。分子長軸に垂直な誘電率ε⊥の測定に用いた液晶セルの基板は、ITO透明電極層が形成されたガラス基板(厚み1.1mm)であり、セルギャップ8μmで、エポキシ樹脂シール付きであり、一対の基板の対向面には、日産化学製配向膜SE−130(商品名、水平配向)が形成されたものである。誘電率異方性Δεは、ε//−ε⊥と定義した。誘電率異方性Δεは、温度25℃、周波数100〜1000Hzの範囲で測定し、100、400、1000Hzにおける測定結果の平均値を測定値とした。ネマチック液晶組成物Aの25℃におけるΔεが、−1.33であることより、検体である化合物の誘電率異方性Δεを外挿法によって算出した。液晶組成物Aの重量組成比を下記に示す。
【0116】
【化63】

【0117】
[実施例1:一般式(II)及び一般式(III)で表される化合物の合成]
3,3−ジフルオロ−1−ヒドロキシ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]オクタン(1)の合成:
下記のスキームに従って、3,3−ジフルオロ−1−ヒドロキシ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]オクタン(1)を合成した。
【0118】
【化64】

【0119】
1−ヒドロキシ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]オクタン−3−オン(6.14g)、クロロメチルメチルエーテル(3.8 mL)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(8.8 mL)を塩化メチレン(100 mL)に加え還流温度に加熱した。この温度で6時間攪拌した後、反応温度を室温にまで冷却し、水(100 mL)を加えて反応を停止した。酢酸エチルで三回抽出し、有機層をあわせた後、0.5M塩酸、飽和食塩水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル = 8:2)によって精製し、1−メトキシメチルオキシ−4-n−プロピルビシクロ[2.2.2]オクタン−3−オン(収量7.54 g、収率99%)を無色透明の油状物質として得た。
1H−NMR(CDCl3,300MHz):0.91(t,3H,J=6.9 Hz),1.23‐1.36(m,4H),1.59−1.83(m,8H),2.51(s,2H),3.36(s,3H)4,74(s,2H)。
【0120】
テフロン(登録商標)内筒型密閉容器(耐圧硝子工業株式会社製)に、1−メトキシメチルオキシ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]オクタン−3−オン(2.49 g)及び三フッ化N,N−ジエチルアミノ硫黄(15 mL)を加え密栓した。反応容器を60 ℃に加熱し、48時間攪拌した。反応液を塩化メチレン(100 mL)で希釈した後、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液に0℃で滴下し反応を停止した。塩化メチレンで三回抽出し、有機層をあわせた後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル = 95:5)によって精製し、1−メトキシメチルオキシ−3,3−ジフルオロ4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]オクタン(収量1.80 g、収率66%)を無色透明の油状物質として得た。
1H−NMR(CDCl3,300MHz):0.90(t,3H, J = 6.9 Hz),1.14−1.41(m,4H),1.50−1.75(m,8H),2.11(t,2H,JH-F = 17.1Hz),3.36(s,3H),4.70(s,2H)。
【0121】
1−メトキシメチルオキシ−3,3−ジフルオロ4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]オクタン及び6mol/Lの塩酸(10 mL)をTHF(100 mL)に溶解し、50℃で2時間攪拌した。水(100 mL)を加えて反応を停止した後、有機相を酢酸エチルで三回抽出し、有機層をあわせた後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル = 7:3)によって精製し、3,3−ジフルオロ−1−ヒドロキシ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]オクタン(収量1.8g、収率99%)を無色透明の結晶として得た。
1H−NMR(CDCl3,300MHz):0.90(t,3H,J=6.9 Hz),1.15−1.41(m,4H),1.50−1.75(m,8H),2.21(t,2H,J=17.1Hz),3.32(s,3H),4.70(s,2H)。
【0122】
上記で得られた3,3−ジフルオロ−1−ヒドロキシ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]オクタン(1)を出発原料として、下記スキームに従って、一般式(III)で表される化合物の例示化合物(2)および一般式(II)で表される化合物の例示化合物(4)を製造した。下記スキーム中、試薬として用いた4−ブロモメチル−1−エトキシ−2,3−ジフルオロベンゼン(3)は、Synlett, 1999, 4, 389に記載の方法及び公知の方法を組み合わせて合成した。また、下記スキーム中、各種溶媒、及び、試薬は、市販のものをそのまま用いた。
【0123】
【化65】

【0124】
3−フルオロ−1−ヒドロキシ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]−2−オクテン(2)の合成:
3,3−ジフルオロ−1−ヒドロキシ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]オクタン(1)(0.58g)、水酸化カリウム(0.60g)及びShellsolTK(2.0g、商品名、シェルケミカルズジャパン(株)社製)を180℃で2.5時間攪拌した。塩酸を加えて酸性にした後、有機相を酢酸エチルで三回抽出し、有機層をあわせた後、純水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル = 3:1)によって精製し、3−フルオロ−1−ヒドロキシ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]−2−オクテン(2)(収量0.39g、収率75%)を無色透明の結晶として得た。
1H−NMR(CDCl3,300MHz):0.94(t,3H,J=6.9Hz),1.30−1.60(m,10H),1.60−1.72(m,2H),1.72(s,1H),5.38(d,1H,J=8.7Hz)。
19F−NMR(CDCl3,300MHz):−115.75(d,1F,J=8.7Hz)。
【0125】
1−(4’−エトキシ−2’,3’−ジフルオロフェニル)メチルオキシ−3−フルオロ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]−2−オクテン(4)の合成:
水素化ナトリウム(72mg)のDMF(1.0 mL)懸濁液に、3−フルオロ−1−ヒドロキシ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]−2−オクテン(2)(250 mg)、4−ブロモメチル−1−エトキシ−2,3−ジフルオロベンゼン(3)(650mg)を加えた。混合物を室温で24時間攪拌した後、塩化メチレン(50mL)、メタノール(1mL)、水(1mL)を順に加えて反応を停止した。有機層を純水で洗浄後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=20:1)によって精製し、1−(4’−エトキシ−2’,3’−ジフルオロフェニル)メチルオキシ−3−フルオロ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]−2−オクテン(4)(収量390 mg、収率81%)を無色透明の結晶として得た。
1H−NMR(CDCl3,300MHz):0.95(t,3H,J=7.2Hz),1.30−1.75(m,15H),4.11(q,2H,J=6.9Hz),4.57(s,2H),5.58(d,1H,J=9.3Hz),6.71(ddd,1H,J=2.1,7.5,9.0Hz),7.08(dt,1H,J=2.1,8.4Hz)。
19F−NMR(CDCl3,300MHz):−159.60(ddd,1F,J=2.5、7.1、19.7Hz)、−142.53(ddd,1F,J=1.1、7.9、19.7 Hz)、−113.76(d,1F,J=8.7Hz)。
相転移温度: Cr 64℃ Iso。
【0126】
[実施例2:一般式(II)及び一般式(III)で表される化合物の合成]
2,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]オクタン(5)の合成:
以下のスキームに従って、実施例1と同様にして、3−フルオロ−1−ヒドロキシ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]−2−オクテン(2)を合成し、これを出発原料として、2,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]オクタン(5)を合成した。
【0127】
【化66】

【0128】
3−フルオロ−1−ペンチルカルボニルオキシ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]−2−オクテンの合成:
3−フルオロ−1−ヒドロキシ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]−2−オクテン(2)(0.41g)、ヘキサノイルクロリド(0.45g)、THF(2mL)の混合物に、ジメチルアミノピリジン(27mg)、ピリジン(0.35g)を添加し、70℃、2時間攪拌した。水(10 mL)、酢酸エチル(50mL)を加えた後、有機層を純水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=40:1)によって精製し、3−フルオロ−1−ペンチルカルボニルオキシ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]−2−オクテン(収量0.40 g、収率64%)を無色透明の油状物質として得た。
1H−NMR(CDCl3,300MHz):0.90(t,3H,J=6.9Hz),0.94(t,3H,J=7.2Hz),1.30−1.70(m,14H),1.75−1.95(m,4H),2.29(t,2H,J=7.5Hz),5.61(d,1H,J=9.0Hz)。
19F−NMR(CDCl3,300MHz):−116.47(d,1F,J=8.2 Hz)。
【0129】
2,3,3−トリフルオロ−1−ペンチルカルボニルオキシ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]オクタンの合成:
3−フルオロ−1−ペンチルカルボニルオキシ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]−2−オクテン(0.4g)、フッ化ナトリウム(0.59g)、AK225(715g、商品名、旭硝子(株)社製)の混合物を−77℃に冷却し、フッ素/窒素(モル比1:4)の混合気体を流速10mL/分で、24分吹き込んだ後、ヘリウムガスを流速100mL/分で、30分吹き込んだ。室温にした後、反応混合物を炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒溜去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル = 40:1)によって精製し、2,3,3−トリフルオロ−1−ペンチルカルボニルオキシ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]オクタン(収量0.12g、収率27%)を無色透明の油状物質として得た。
1H−NMR(CDCl3,300MHz):0.82−0.98(m,6H),1.22−2.50(m,20H),5.09(ddd,1H,J=1.5、19.5、51.6Hz)。
19F−NMR(CDCl3,300MHz):−208.84(dt,1F,J=9.0、52.5Hz)、−126.11(ddd,1F,J=5.6、10.2、247.9Hz)、−104.35(ddd,1F,J=7.3、19.5、248.4Hz)。
【0130】
2,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]オクタン(5)の合成:
2,3,3−トリフルオロ−1−ペンチルカルボニルオキシ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]オクタン(0.12g)、水酸化カリウム(0.11g)、水(0.5mL)、エタノール(2.0mL)の混合物を、70℃で20分間攪拌した。塩酸で中性にした後、酢酸エチル(30mL)を加え、有機層を炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル = 3:1)によって精製し、2,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]オクタン(5)(収量82mg、収率98%)を無色透明の固体として得た。
1H−NMR(CDCl3,300MHz):0.91(t,3H,J=6.9Hz),1.22−2.00(m,13H),4.40(ddd,1H,J=0.9、19.8、51.9Hz)。
19F−NMR(CDCl3,300MHz):−210.14(dt,1F,J=9.6、51.6Hz)、−126.09(ddd,1F,J=5.1、10.7、248.2 Hz)、−104.45(ddd,1F,J=3.5、19.5、249.0Hz)。
【0131】
2,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]オクタン(5)を出発原料として、下記スキームに従って、一般式(III)で表される化合物の例示化合物(6)及び一般式(II)で表される化合物の例示化合物(7)を合成した。下記スキーム中、試薬として用いた4−ブロモメチル−1−エトキシ−2,3−ジフルオロベンゼン(3)は、Synlett, 1999, 4, 389に記載の方法及び公知の方法を組み合わせて合成した。また、下記スキーム中、各種溶媒、及び、試薬は、市販のものをそのまま用いた。
【0132】
【化67】

【0133】
2,3−ジフルオロ−1−ヒドロキシ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]−2−オクテン(6)の合成:
2,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]オクタン(5)(0.80g)、水酸化カリウム(0.60g)及びShellsolTK(2.0g、商品名、シェルケミカルズジャパン(株)社製)を150℃で2時間攪拌した。塩酸を加えて中性にした後、有機相を酢酸エチルで三回抽出し、有機層をあわせた後、純水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。これを塩基性アルミナカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル/ピリジン = 400:100:1)によって精製し、2,3−ジフルオロ−1−ヒドロキシ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]−2−オクテン(6)(収量0.51g、収率70%)を無色透明の結晶として得た。
1H−NMR(CDCl3,300MHz):0.94(t,3H,J=6.9Hz),1.30−1.72(m,12H),1.72(s,1H)。
【0134】
1−(4’−エトキシ−2’,3’−ジフルオロフェニル)メチルオキシ−2,3−ジフルオロ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]−2−オクテン(7)の合成:
水素化ナトリウム(60mg)のDMF(1.0 mL)懸濁液に、2,3−ジフルオロ−1−ヒドロキシ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]−2−オクテン(6)(400 mg)、4−ブロモメチル−1−エトキシ−2,3−ジフルオロベンゼン(3)(650mg)を加えた。混合物を室温で24時間攪拌した後、塩化メチレン(50mL)、メタノール(1mL)、水(1mL)を順に加えて反応を停止した。有機層を純水で洗浄後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。これを塩基性アルミナカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル/ピリジン = 200:10:1)によって精製し、1−(4’−エトキシ−2’,3’−ジフルオロフェニル)メチルオキシ−2,3−ジフルオロ−4−n−プロピルビシクロ[2.2.2]−2−オクテン(7)(収量590 mg、収率80%)を無色透明の結晶として得た。
1H−NMR(CDCl3,300MHz):0.94(t,3H,J=7.2Hz),1.30−1.75(m,15H),4.12(q,2H,J=6.9Hz),4.56(s,2H),6.72(ddd,1H,J=2.1,7.4,8.9Hz),7.07(dt,1H,J=2.1,8.6Hz)。
【0135】
[実施例3:誘電率異方性Δεの測定]
実施例1で製造した例示化合物(4)、実施例2で製造した例示化合物(7)及び、比較化合物である独国特許DE3906058(特許文献1)に開示されている、下記のビシクロオクタン化合物(8)の誘電率異方性Δεを測定した。結果を下記表に示す。
【0136】
【化68】

【0137】
【表1】

【0138】
上記表中に示す結果より、本発明の化合物である、一般式(II)で表されるジフルオロビシクロ[2.2.2]オクタンの例示化合物(4)及び(7)は、公知のビシクロ[2.2.2]オクタン化合物である比較化合物(8)と比較して、十分に負に大きい誘電率異方性Δε値を有することが理解できる。
即ち、本発明の化合物である一般式(II)で表されるフルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン化合物は、従来のビシクロオクタン化合物(ビシクロ[2.2.2]オクタン骨格を含んではいるものの当該骨格がフッ素原子で置換されていない従来のビシクロオクタン化合物)と比較して、負に大きい誘電異方性を示し、高速応答が要求される液晶表示素子に好適に使用できることが理解できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されるフルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン骨格を有する化合物の少なくとも一種を含有することを特徴とする液晶組成物:
【化1】

式中、Yは、水素原子もしくはフッ素原子を表す。
【請求項2】
前記化合物が、環状炭化水素基及び芳香族基から選択される少なくとも1種の環状連結基をさらに有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
前記化合物が、下記一般式(II):
【化2】

式中、Yは、水素原子もしくはフッ素原子を表し;R1及びR2は各々独立に、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、又は炭素原子数2〜12のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は酸素原子(O)又は硫黄原子(S)に置換されていてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、フッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく;A1及びA2は互いに独立に、(a)トランス−1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)、(b)1,4−シクロヘキセニレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)、(c)1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上のCH基は、窒素原子(N)に置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)、又は、(d)1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、CN、塩素原子、又は臭素原子に置換されていてもよい)を表し;Z1及びZ2はそれぞれ独立に、−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CF2CF2−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH2CH2−、又は、単結合を表し;m及びnは互いに独立に、0、1又は2を表し、A1、A2、Z1及びZ2が複数存在する場合は、それらは同一であっても異なっていてもよい;
で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項4】
互いの吸収軸を直交にして配置された2枚の偏光膜と、
前記2枚の偏光膜の間に、一対の基板、及び前記一対の基板に挟持された液晶層を有する液晶セルと、
を備えた液晶表示装置であって、
前記液晶層が請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項5】
VA方式であることを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
下記一般式(II):
【化3】

式中、Yは、水素原子もしくはフッ素原子を表し、R1及びR2は各々独立に、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、又は炭素原子数2〜12のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は、酸素原子(O)又は硫黄原子(S)に置換されていてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、フッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく;A1及びA2は互いに独立に、(a)トランス−1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)、(b)1,4−シクロヘキセニレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)、(c)1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上のCH基は、窒素原子(N)に置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)、又は、(d)1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、CN、塩素原子、又は臭素原子に置換されていてもよい)を表し;Z1及びZ2はそれぞれ独立に、−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CF2CF2−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH2CH2−、又は単結合を表し;m及びnは互いに独立に、0、1又は2を表し、A1、A2、Z1及びZ2が複数存在する場合は、それらは同一であっても異なっていてもよい;
で表されるフルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン化合物。
【請求項7】
一般式(II)中、A1及びA2の少なくとも一方が、トランス−1,4−シクロヘキシレン基、又は、1個以上のフッ素原子によって置換されていてもよい1,4−フェニレン基であることを特徴とする請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
下記一般式(III):
【化4】

式中、Yは、水素原子もしくはフッ素原子を表し;Xは、ハロゲン原子又はOR3(R3は、水素原子もしくは水酸基の保護基、又は、OR3の形で脱離基として作用するものを表す。)を表し;R1は、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、又は炭素原子数2〜12のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は、酸素原子(O)又は硫黄原子(S)に置換されていてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、フッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく;A1は、(a)トランス−1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)、(b)1,4−シクロヘキセニレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)、(c)1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上のCH基は、窒素原子(N)に置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子又はCNに置換されていてもよい)、又は、(d)1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は、O又はSに置換されてもよく、また、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、CN、塩素原子、又は臭素原子に置換されていてもよい)を表し;Z1は、−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CF2CF2−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH2CH2−、又は、単結合を表し;mは0,1又は2を表す;
で表されるフルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン化合物。
【請求項9】
Xが、ハロゲン原子、OH、OSO2R、又はOCOR(Rは、炭素原子数1〜12のアルキル基、又はフェニル基を表し、これらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、フッ素原子、塩素原子、又は炭素原子数1〜12のアルキル基に置換されてもよく)である請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
下記式(I)で表されるフルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン骨格を有する化合物を製造する方法であって、
【化5】

(式中、Yは、水素原子もしくはフッ素原子を表す。)
下記一般式(IV):
【化6】

(式中、Yは、水素原子もしくはフッ素原子を表す。)
で表されるフルオロビシクロ[2.2.2]オクタン骨格を有する化合物を、脱HFさせる工程を備えたフルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン化合物の製造方法。
【請求項11】
請求項6に記載のフルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン化合物を製造する方法であって、
下記一般式(V):
【化7】

(式中、Y、R1、R2、A1、A2、Z1、Z2、m及びnは、請求項6中に記載の式(II)中のそれぞれと同義である)
で表されるビシクロ[2.2.2]オクタン化合物を、脱HFさせる工程を備えたフルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン化合物の製造方法。
【請求項12】
請求項8に記載のフルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン化合物を製造する方法であって、
下記一般式(VI):
【化8】

(式中、Xは、ハロゲン原子又はOR3(R3は、水素原子もしくは水酸基の保護基、又は、OR3の形で脱離基として作用するものを表す。)であり、Y、R1、A1、Z1及びmは、請求項8中に記載の式(III)中のそれぞれと同義である。)
で表されるビシクロ[2.2.2]オクタン化合物を、脱HFさせる工程を備えたフルオロビシクロ[2.2.2]−2−オクテン化合物の製造方法。

【公開番号】特開2010−215523(P2010−215523A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60947(P2009−60947)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】