説明

フルオロポリマー組成物および処理基材

(i)(a)少なくとも1種類のジイソシアネート、ポリイソシアネート又はこれらの混合物と、(b)式(I):
(CH[(CFCF(CHCH(R−XH (I)
(式中、
は、炭素原子数1〜約6のパーフルオロアルキル基であり、
添え字xは1〜約6であり、
添え字y、zおよびmはそれぞれ独立して1、2又は3、又はこれらの組み合わせであり、
添え字rは0又は1であり、
(R−XHを除く前記式(I)中の総炭素数は、約8〜約22であり、
Xは、−O−、−NR−、−S−、−S(CHO−、又は−S(CHNR−であり、
添え字tは1〜約10であり、
RはH又はC1〜4アルキルであり、
は、ある一定の2価の基であり、
nは2〜4であり、
sは1〜約50であり、
、RおよびRは、それぞれ独立して水素又はC〜Cアルキル基である)
から選択される少なくとも1種類のフッ素化化合物を反応させる工程、および
(ii)任意選択的に、(c)水、架橋剤、又はこれらの混合物と反応させる工程、
によって調製される、少なくとも1つのカルバメート結合を有するポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に表面効果を付与するための、カルバメート結合を含有するフルオロポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
基材に表面効果を付与する処理剤として様々な組成物が有用であることが知られている。米国特許第5,411,766号明細書は、処理基材に、ある一定の表面効果を付与するのに有用な窒素含有ポリフルオロ有機化合物を開示している。例示された化合物は、主に炭素数8以上のパーフルオロアルキル基の混合物を含有する。
【0003】
高価なフルオロカーボン部分の幾つかが、比較的安価で且つ比較的容易に生分解する部分で置換された短鎖フルオロケミカルが必要とされている。しかし、フッ素が減少しても、性能は維持されるか又はより優れていなければならない。本発明は、このようなフルオロケミカルを提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、(i)(a)イソシアネート基を有する少なくとも1種類のジイソシアネート、ポリイソシアネート又はこれらの混合物と、(b)式(I):
(CH[(CFCF(CHCH(R−XH (I)
(式中、Rは、炭素原子数1〜約6の直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキル基であり、
添え字xは1〜約6の整数であり、添え字y、zおよびmはそれぞれ独立して1、2又は3、又はこれらの組み合わせであり、添え字rは0又は1であり、
(R−XHを除く前記式(I)中の総炭素数は、約8〜約22であり、
Xは、−O−、−NR−、−S−、−S(CHO−、又は−S(CHNR−であり、添え字tは1〜約10であり、R=H又はC1〜4アルキルであり、
は、−S(CH−、−[OCHCH(R)]−、−[OCHCH(CHCl)]−、および−C(R)(R)(OCHCH[CHCl])−からなる群から選択される2価の基であり、
nは2〜4の整数であり、sは1〜50の整数であり、
、RおよびRは、それぞれ独立して水素又は炭素原子数1〜6のアルキル基である)
から選択される少なくとも1種類のフッ素化化合物を反応させる工程、および
(ii)任意選択的に、(c)水、架橋剤(linking agent)、又はこれらの混合物と反応させる工程、
によって調製される少なくとも1つのカルバメート結合を有するポリマーを含む。
【0005】
本発明は、更に、基材に式(I)のポリマーを接触させる工程を含む、基材に撥水性、撥油性、耐汚性、親水性染み除去性、およびウィッキングを付与する方法を含む。
【0006】
本発明は、更に、式(I)のポリマーが塗布された基材を含む。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、商標は大文字で示す。本発明は、(i)(a)イソシアネート基を有する少なくとも1種類のジイソシアネート、ポリイソシアネート又はこれらの混合物と、(b)上記で定義した式(I)から選択される少なくとも1種類のフッ素化化合物を反応させる工程によって調製される少なくとも1つのカルバメート結合を有するポリマーを含む。
【0008】
好ましい実施形態は、式(I)の反応物について、XがOであり、添え字xが1又は2であり、添え字yが1又は2であり、添え字zが1又は2であり、添え字mが1又は2であり、添え字rが0であるポリマーである。他の好ましい実施形態は、Rが炭素原子数4〜6のパーフルオロアルキルのものである。本発明の様々な実施形態において有用なフッ素化化合物は、テトラフルオロエチレンとエチレンの混合物によりフルオロアルキルアイオダイドをオリゴマー化して、フッ素化オリゴマーエチレン−テトラフルオロエチレンアイオダイドを生成することにより得ることができる。アイオダイドは、アルカノールおよび他の誘導体の調製に使用され、それらは、本発明のポリマーを調製するための式(I)の反応物として有用である。中間体アイオダイドおよび誘導体は、式(II)、
2n+1(CH[(CFCF(CHCH(RG (II)
(式中、Gは、I、OH、SH、NH、NHR、S(CHOH、又はS(CHNHRであり、
添え字nは1〜約6の整数であり、添え字xは1〜約6の整数であり、添え字y、zおよびmはそれぞれ独立して1、2又は3、又はこれらの組み合わせであり、添え字tは、1〜約10であり、
R、Rおよび添え字rは、式(I)で定義した通りであり、
(R−Gを除く前記式(II)中の総炭素数は、約8〜約22である)
によって表される。
【0009】
オリゴマー化反応の初期生成物は、式(II)(式中、Gはアイオダイドである)の類縁のオリゴマーの混合物である。このような反応の性質のため、得られる主オリゴマーに加えて、鎖長が僅かに長い又は短い他のオリゴマーも存在する。また、エチレンとテトラフルオロエチレンが期待される交互配列から逸脱するオリゴマーも少量存在する。上記の式(II)は、オリゴマー化反応からの元のオリゴマー混合物並びにそのアルコール誘導体および(メタ)アクリレート誘導体だけでなく、これらの混合物の精製された又は部分的に精製された形態も、また各混合物の個々の成分も含むことが意図されている。
【0010】
必要に応じて、反応混合物中の主な化学物質を、溶解度、融点、蒸気圧、および他の特徴の差により個々の成分に分離することができる。例えば、アセトニトリルとテトラヒドロフランに対するこのような成分の相対的溶解度は、下記の実施例に示すような精製に有用であることが分かった。当業者によって容易に決定される他の溶媒および方法も使用することができる。実際的な観点から、最も簡単な精製を超えるどのようなものも不要な出費であると思われる。式(II)の中間体が式(I)の化合物に転化されるとき、式(II)のオリゴマーは全て、存在する主オリゴマーに類似の性質を示し、式(I)の生成物の有用な追加成分であると考えられる。
【0011】
式(II)のアイオダイド化合物を調製するためのテロゲン反応物として有用なフルオロアルキルアイオダイドとしては、C2n+1CHCHI、C2n+1CHI、およびC2n+1I(式中、nは1〜約6の整数である)が挙げられる。好ましくは、nは約2〜約4であり、より好ましくはnは2である。最も好ましいフルオロアルキルアイオダイド反応物は、パーフルオロエチルエチルアイオダイドである。
【0012】
式(II)のアイオダイド、C2n+1(CH[(CFCF(CHCHI(式中、m、n、x、yおよびzは上記で定義した通りである)は、好ましくは、エチレン(ET)とテトラフルオロエチレン(TFE)の混合物を使用して、C2n+1I、C2n+1CHI又はC2n+1Iをオリゴマー化することによって調製される。反応は、室温〜約150℃の任意の温度で適したラジカル開始剤を用いて実施することができる。好ましくは、反応は、約40℃〜約100℃の温度でその範囲で約10時間の半減期を有する開始剤を用いて実施される。気相中の出発物質の供給比、即ち、C2n+1I、C2n+1CHI又はC2n+1Iのモル数対エチレンとテトラフルオロエチレンを合わせたモル数を使用して、反応の転化率を制御することができる。このモル比は、約1:3〜約20:1、好ましくは約1:2〜約5:1である。エチレン対テトラフルオロエチレンのモル比は、約1:10〜約10:1、好ましくは約3:7〜約7:3、最も好ましくは約4:6〜約6:4である。
【0013】
式(II)のアルコール、C2n+1(CH[(CFCF(CHCHOH(式中、m、n、x、yおよびzは前述の通りである)は、上記のオリゴマーアイオダイド(C2n+1I、C2n+1CHI又はC2n+1I)から、オレウム処理および加水分解を使用して調製される。例えば、オレウム(15%SO)と約60℃で約1.5時間反応させた後、氷冷した希KSO溶液を使用して加水分解させ、その後、約100℃に約30分間加熱することによって満足な結果が得られることが分かった。しかし、他の反応条件を使用してもよい。周囲室温に冷却した後、固体を沈殿させ、単離し、精製する。例えば、その後、液体をデカントし、固体をエーテルに溶解させ、飽和NaCl水で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、濃縮し、減圧乾燥する。他の従来の精製方法を使用してもよい。
【0014】
或いは、式(II)のアルコールは、上記のオリゴマーアイオダイド(C2n+1I、C2n+1CHI又はC2n+1I)をN−メチルホルムアミドと共に約150℃に加熱し、約19時間維持することによって調製することができる。反応混合物を水で洗浄し、残留物を得る。この残留物と、エタノールおよび濃塩酸の混合物を穏やかに(約85℃の浴温で)約2.5時間還流する。反応混合物を水で洗浄し、ジクロロメタンで希釈し、硫酸ナトリウムで乾燥する。ジクロロメタン溶液を濃縮し、減圧蒸留して、アルコールを得る。任意選択的に、N−メチルホルムアミドの代わりに、N,N−ジメチルホルムアミドを使用してもよい。他の従来の精製方法を使用してもよい。
【0015】
式(II)のアミン、C2n+1(CH[(CFCF(CHCHNH(式中、m、n、x、yおよびzは前述の通りである)は、文献の方法(Trabelsi,H.;Szoenyi,F.;Michelangeli,N.;Cambon,A.,J.Fluorine Chem.,1994,69,115−117)を変更したものに従って、オリゴマーアジド(C2n+1I、後述の又はC2n+1IからのC2n+1CH)から、ヒドラジン水化物およびラネーNiを使用して還元することにより調製される。
【0016】
オリゴマーアジドからアミンへの変換は、1:1の水とエタノールを含む混合溶媒系中でヒドラジン水化物/ラネーNiを使用して60℃で12時間行った。或いは、Pt/Cを使用する触媒による水素化又は他の前述の還元剤を含む様々な条件も、この変換を実施するのに使用することができる。
【0017】
2n+1(CH[(CFCF(CHCH(式中、m、n、x、yおよびzは式(II)で前述した通りである)のアジドは、文献に開示されている方法(Rondestvedt,C.S.,Jr.;Thayer,G.L.,Jr.J.Org.Chem.1977,42,2680)を変更したものに従って、オリゴマーアイオダイド(C2n+1I、C2n+1CHI又はC2n+1I)からアジ化ナトリウムを使用して調製される。アイオダイドのアジドへの置換は、アセトニトリルと水を3:1の比で含む混合溶媒系中でアジ化ナトリウムを使用して90℃で定量的な収率で実施した。或いは、類似の条件で、この反応にジメチルホルムアミド−水又はアセトン−水又はイソプロピルアルコール/水を含む溶媒系又は他の類似の溶媒系を使用してもよい。Cambonらによって記載された相間移動反応をこの転化に使用してもよいが、この方法では、100℃で36時間後にアジドが中程度の収率(20〜30%)でしか得られなかった(Trabelsi,H.,;Szoenyi,F.;Michelangeli,N.;Cambon,A.,J.Flourine Chem.,1994,69,115−117)。
【0018】
式(II)のチオール、C2n+1(CH[(CFCF(CHCHSH(式中、m、n、x、yおよびzは前述の通りである)は、文献の方法(Rondestvedt,C.S.,Jr.;Thayer,G.L.,Jr.J.Org.Chem.1977,42,2680)に従って、オリゴマーアイオダイド(C2n+1I、C2n+1CHI又はC2n+1I)から、チオ尿素と反応させた後、チオウロニウム塩を加水分解することにより調製される。オリゴマーアイオダイドをエタノール中でチオ尿素と共に36時間還流させ、水酸化ナトリウムを使用して加水分解し、対応するオリゴマーチオールを得た。或いは、エタノール中でNaSHを使用する置換反応を使用して、この変換を実施してもよい。
【0019】
本発明の式(I)のイオウ含有アルコール、C2n+1(CH[(CFCF(CHCHS(CHOH(式中、m、n、x、yおよびzは前述の通りであり、rは1〜5である)は、オリゴマーアイオダイド(Gがアイオダイドである式(I))から、文献の方法(Rondestvedt,C.S.,Jr.;Thayer,G.L.,Jr.J.Org.Chem.1977,42,2680)に従って、2−メルカプトエタノールとの置換反応により調製される。オリゴマーアイオダイドをtert−ブタノール中で2−メルカプトエタノールおよび水酸化ナトリウムと共に12時間還流させ、対応するオリゴマーヒドロキシエチルスルフィドを得た。
【0020】
本発明の式(I)のイオウ含有アミン、C2n+1(CH[(CFCF(CHCHS(CHNH(式中、m、n、x、yおよびzは前述の通りであり、rは1〜5である)は、オリゴマーアイオダイド(Gがアイオダイドである式(I))から、文献の方法(Rondestvedt,C.S.,Jr.;Thayer,G.L.,Jr.J.Org.Chem.1977,42,2680)に従って、2−アミノエタンチオールとの置換反応により調製される。オリゴマーアイオダイドをtert−ブタノール中で2−メルカプトエチルアミン塩酸塩および水酸化ナトリウムと共に12時間還流させ、対応するオリゴマーアミノエチルスルフィドを得た。
【0021】
式(I)の反応物を調製するために、式(II)(GはSHである)の特定のフッ素化テロマーチオールも本発明において有用である。式(I)の反応物を調製するために、前述の化合物1〜30(GはOHである)に対応する式(II)(GはNHである)の特定のフッ素化テロマーアミンも本発明において有用である。
【0022】
本発明のポリマーの調製に使用される式(I)の反応物を調製するために、式(II)(GはOH、SH又はNHである)の中間体が使用される。本発明のフルオロポリマーを製造するために、式(I)の化合物をポリイソシアネートと反応させる。ポリイソシアネート反応物はポリマーの分岐性を増加させる。「ポリイソシアネート」の用語は、2量体以上のイソシアネートを意味し、この用語はオリゴマーを含む。主に2つ以上のイソシアネート基を有するどのようなポリイソシアネートも、又は主に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートのどのようなイソシアネート前駆体も本発明に使用するのに適している。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート単独重合体は、本明細書で使用するのに適しており、市販されている。複数のイソシアネート基を有する生成物中に少量のジイソシアネートが残留する可能性があることが分かる。この一例は、少量の残留ヘキサメトレンジイソシアネートを含有するビウレットである。
【0023】
また、炭化水素ジイソシアネートから誘導されたイソシアヌレート3量体もポリイソシアネート反応物として使用するのに適している。DESMODUR N−3300(Bayer Corporation(Pittsburgh,PA)から入手可能なヘキサメチレンジイソシアネートをベースにするイソシアヌレート)が好ましい。本発明の目的に有用な他のトリイソシアネートは、3モルのトルエンジイソシアネートと1,1,1−トリス−(ヒドロキシメチル)エタン又は1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパンと反応させることによって得られるものである。トルエンジイソシアネートのイソシアヌレート3量体および3−イソシアナトメチル−3,4,4−トリメチルシクロヘキシルイソシアネートのイソシアヌレート3量体は、メタン−トリス−(フェニルイソシアネート)と同様に、本発明の目的に有用な他のトリイソシアネートの例である。ジイソシアネートのようなポリイソシアネートの前駆体もまた、ポリイソシアネートの基質として本発明に使用するのに適している。DESMODUR N−3600、DESMODUR Z−4470、およびDESMODUR XP 2410(Bayer Corporation(Pittsburgh,PA)製)並びにビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタンも本発明に適している。
【0024】
好ましいポリイソシアネート反応物は、ビウレット構造を含有する脂肪族および芳香族ポリイソシアネート、又はイソシアネートを含有するポリジメチルシロキサンである。このようなポリイソシアネートはまた、脂肪族置換基と芳香族置換基の両方を含有することもできる。
【0025】
本明細書において本発明の全ての実施形態にポリイソシアネート反応物として特に好ましいのは、例えば、DESMODUR N−100、DESMODUR N−75、およびDESMODUR N−3200(Bayer Corporation(Pittsburgh,PA)製)として市販されているヘキサメチレンジイソシアネート単独重合体;例えば、DESMODUR I(Bayer Corporation)として入手可能な3−イソシアナトメチル−3,4,4−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート;例えば、DESMODUR W(Bayer Corporation)として入手可能なビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン;並びに、式(IIa)、(IIb)、(IIc)および(IId):
【0026】
【化1】

のジイソシアネート3量体である。
【0027】
ジイソシアネート3量体(IIa−d)は、例えば、DESMODUR Z4470、DESMODUR IL、DESMODUR N−3300、およびDESMODUR XP2410としてそれぞれBayer Corporationから入手可能である。
【0028】
本発明のフルオロポリマーを製造するために、式(I)の化合物をポリイソシアネートと反応させてフルオロポリマーを生成する。フルオロポリマーは、典型的には、反応容器にポリイソシアネート、上記のフルオロアルコール、フルオロチオール又はフルオロアミン、又はこれらの混合物、および任意選択的に非フッ素化有機化合物を仕込むことによって調製される。試薬を添加する順番は重要ではない。仕込まれるポリイソシアネートと他の反応物の具体的な重量は、それらの当量および反応容器の有効容量に基づき、アルコール、チオール又はアミンが第1の工程で消費されるように調節される。仕込んだものを攪拌し、温度を約40℃〜70℃に調整する。典型的には有機溶媒に溶解したチタンキレートなどの触媒を添加し、温度を約80〜100℃に上げる。数時間維持した後、追加の溶媒および水、架橋剤、又はこれらの組み合わせを添加し、数時間、又はイソシアネートが全て反応するまで、混合物を反応させる。必要に応じて、界面活性剤と一緒に更に水を添加し、完全に混合するまで攪拌してもよい。均質化した後、有機溶媒を減圧下で蒸発させることにより除去し、残留するフルオロポリマーの水溶液をそのまま使用しても、又は更に処理してもよい。
【0029】
好ましい実施形態では、反応させる工程(i)は、更に、(d)式
10−(R11−YH
[式中、
10は、直鎖、分岐鎖又は環状のC〜C18アルキル基、C〜C18ω−アルケニル基、又はC〜C18ω−アルケノイル基であり、
11は、−[OCHCH(R)]−、−[OCHCH(CHCl)]−、又は−C(R)(R)(OCHCH[CHCl])
(式中、R、R、およびRは、独立してH又はC〜Cアルキルであり、
sは、1〜50である)
であり、
kは、0又は1であり、
Yは、−O、−S−、又は−N(R)−(式中、RはH又は炭素原子数1〜6のアルキルである)である]
からなる群から選択される非フッ素化有機化合物を含む。
【0030】
好ましくは、式R10−(R11−YHの非フッ素化化合物は、前記イソシアネート基の約0.1mol%〜約60mol%と反応する。
【0031】
別の好ましい実施形態では、式R10−(R11−YHの化合物は、式(III)の少なくとも1種類のヒドロキシ末端ポリエーテルを含む親水性水和性(water−solvatable)物質を含み:
R−O−(CHCHO)−(CHC[CH]HO)m1−(CHCHO)m2−H (III)
式中、Rは6個以下の脂肪族又は脂環式炭素原子を含有する1価の炭化水素基であり、
それぞれ、添え字mおよびm2は、独立して、繰り返しオキシエチレン基の平均数であり、m1は繰り返しオキシプロピレン基の平均数であるが、但し、mは常に正の整数であり、m1およびm2は正の整数又は0である。m1およびm2が0のとき、式(III)はオキシエチレン単独重合体を示す。m1が正の整数であり、m2が0であるとき、式(III)は、オキシエチレンとオキシプロピレンのブロック又はランダム共重合体を示す。m1およびm2が正の整数であるとき、式(III)は、PEG−PPG−PEG(ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール)と称されるトリブロック共重合体を示す。より好ましくは、親水性水和性成分(3)は、平均分子量約200以上、最も好ましくは350〜2000の市販のメトキシポリエチレングリコール(MPEG’s)、又はこれらの混合物である。また、市販されており、本発明のポリフルオロ有機化合物の調製に適しているのは、等重量のオキシエチレン基とオキシプロピレン基を含有し(Union Carbide Corp.50−HB Series UCON Fluids and Lubricants)、平均分子量が約1000超のブトキシポリオキシアルキレンである。
【0032】
式R10−(R11−X−YHの非フッ素化化合物を、水、架橋剤、又はこれらの混合物と反応させる前に、工程(i)で前述のようにポリイソシアネートおよび式(I)のフッ素化化合物と反応させる。この初期反応は、ポリイソシアネート基が100%未満反応するように行われる。初期反応の後、水、架橋剤、又はこれらの混合物を添加する。水又は架橋剤と残留NCO基との反応によりイソシアネート基は全て完全に反応し、他の反応物がイソシアネート基の100%と反応するのに十分な比で使用された場合には必要となり得る、更なる精製工程が排除される。更に、ポリマー調製の第1の工程で1種類以上の反応物を使用する場合、即ち、水和性成分を添加する場合、この添加はポリマーの分子量を大きく増加させ、適切な混合を確実にし、各ポリマー中に少なくとも1つの単位が存在することになる可能性がある。
【0033】
本発明の有機化合物のポリマーの形成に有用な架橋剤は、2個以上のツェレビチノフ水素原子(Zerewitinov,Th.,Quantitative Determination of the Active Hydrogen in Organic Compounds, Berichte der Deutschen Chemischen Gesellschaft,1908,41,2233−43)を有する。例としては、イソシアネート基と反応することができる少なくとも2つの官能基を有する化合物が挙げられる。このような官能基としては、ヒドロキシル基、アミノ基、およびチオール基が挙げられる。架橋剤として有用な多官能性アルコールの例としては、オキシアルキレン基の炭素原子数が2、3又は4であり、2つ以上のヒドロキシル基を有するポリオキシアルキレン、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体、およびポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルジオール;例えば、アジピン酸又は他の脂肪族二酸と、炭素原子数2〜30の有機脂肪族ジオールとの重合から誘導されるポリエステルジオールなどのポリエステルジオール;アルキレングリコールを含む非ポリマーポリオール、および1,2−エタンジオール、1,2−プロパノールジオール、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,2−、1,5−および1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、およびペンタエリトリトールを含むポリヒドロキシアルカンが挙げられる。
【0034】
架橋剤として有用な好ましい多官能性アミンとしては、例えば、JEFFAMINE D400、JEFFAMINE ED、およびJEFFAMINE EDR−148(全てHuntsman Chemical Company(Salt Lake City,Utah)製)などのアミン末端ポリエーテル;アミノエチルピペラジン、2−メチルピペラジン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,5−ジアミノ−3−メチルペンタン、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリエチレンペンタミン、エタノールアミン、いずれかの立体異性体の形態のリシンおよびその塩、ヘキサンジアミン、およびヒドラジン、ピペラジンを含む脂肪族および脂環式アミン;並びにキシレンジアミンおよびa,a,a’,a’−テトラメチルキシリレンジアミンなどの芳香脂肪族アミンが挙げられる。架橋剤として使用できるモノアルカノールアミンおよびジアルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジエタノールアミン、およびジプロパノールアミン等が挙げられる。
【0035】
本発明のフルオロポリマーは、イソシアネート基と反応する基を含まない適した無水有機溶媒中で調製される。ケトンは好ましい溶媒であり、利便性と入手し易さのため、メチルイソブチルケトン(MIBK)が特に好ましい。アルコールとポリイソシアネートとの反応は、任意選択的に、典型的には約0.01〜約1.0重量%の量のジブチルスズジラウレート又はテトライソプロピルチタネートなどの触媒の存在下で実施される。好ましい触媒は、テトライソプロピルチタネートである。その後、得られる組成物は水で希釈されるか、又は基材に最終的に適用するための溶媒(以下「適用溶媒」)として適している単純なアルコールおよびケトンを含む群から選択される溶媒に更に分散又は溶解される。
【0036】
あるいは、界面活性剤を用いて従来の方法で製造される水性分散体は、蒸発により溶媒を除去すること、および当業者に既知の乳化法又は均質化法を使用することにより調製される。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、又はブレンドが挙げられる。このような溶媒非含有エマルションは、可燃性および揮発性有機化合物(VOC)の問題を最小限にするのに好ましい。基材に適用される最終製品は、フルオロポリマーの分散体(水性の場合)又は溶液(水以外の溶媒を使用する場合)である。
【0037】
本発明の好ましいポリマーは、Rが炭素原子数4〜6であり、xが2であり、yおよびzがそれぞれ1であり、mが1又は2であり、rが0のものである。他の好ましい実施形態は、前記フッ素化化合物が、前記イソシアネート基の約5mol%〜約90mol%、より好ましくは約10mol%〜約70mol%と反応するポリマーである。他の好ましい実施形態は、架橋基がジアミン又はポリアミンであるポリマーである。
【0038】
本発明は、更に、本発明のポリマーを溶液又は分散体として基材と接触させる工程を含む、基材に撥水性、撥油性、耐汚性、親水性染み除去性およびウィッキングを付与する方法を含む。適した基材としては、後述の繊維基材又は硬質表面基材が挙げられる。
【0039】
本発明のポリマーは溶液又は分散体として、任意の適した方法で基材表面に適用される。このような方法は当業者に周知であり、例えば、吸尽、泡、フレックスニップ(flex−nip)、ニップ、パディング、キスロール、ベック(beck)、かせ、ウインス、液体注入、オーバーフローフラッド(overflow flood)、ロール、刷毛、ローラー、スプレー、浸漬(dipping)、および液浸(immersion)等による適用が挙げられる。また、従来のベック染色(beck dyeing)法、連続的染色法、又は紡糸ライン塗布(thread line application)を使用することにより適用することもできる。
【0040】
分散体又は溶液は、適用するため、分散体又は溶液中の全フッ素含有率が、分散体又は溶液の重量に基づいて約0.01重量%〜約20重量%、好ましくは約0.01重量%〜約15重量%、最も好ましくは約0.01重量%〜約10重量%になるまで希釈される。本発明の溶液又は分散体の適用量は、基材の空隙率に応じて約0.5〜約1000g/mの範囲である。
【0041】
本発明の組成物は、基材に、そのようなものとして、又は1種類以上の仕上剤若しくは表面処理剤と組み合わせて塗布される。本発明の組成物は、任意選択的に、追加の表面効果を達成する処理剤若しくは仕上剤、又は一般にこのような処理剤若しくは仕上剤と一緒に使用される添加剤を更に含む。このような追加の成分は、ノーアイロン、簡単なアイロン掛け、収縮制御、皺なし、パーマネントプレス、水分制御、柔らかさ、強度、滑り防止、帯電防止、ほつれ防止(anti−snag)、抗ピリング性、防染み性、染み除去性、耐汚性、汚れ除去性、撥水性、撥油性、防臭、抗菌性、耐染み性、日焼け防止(sun protection)、および類似の効果などの表面効果を付与する化合物又は組成物を含む。
【0042】
また、界面活性剤、pH調整剤、架橋剤、湿潤剤、ワックス増量剤、および既知の他の添加剤などの、一般にこのような処理剤又は仕上剤と一緒に使用される他の添加剤も存在し得る。適した界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、およびこれらの組み合わせが挙げられる。適したアニオン性界面活性剤は、SUPRALATE WAQEとしてWitco Corporation(Greenwich,CT)から入手可能なアルキル硫酸ナトリウムである。このような仕上剤又は処理剤の例としては、加工助剤、発泡剤、潤滑剤、および防汚剤(anti−stain)等が挙げられる。
【0043】
任意選択的に、耐久性を更に促進するブロックイソシアネートを本発明のフルオロポリマーに添加してもよい(即ち、ブレンドされた組成物として)。適したブロックイソシアネートの一例は、Ciba Specialty Chemicals(High Point,NJ)から入手可能なHYDROPHOBAL HYDORPHOBOL XANである。他の市販のブロックイソシアネートも適している。ブレンドされたイソシアネートとして添加されるとき、約20重量%以下の量を添加することができる。任意選択的に、利点の何らかの組み合わせを得るために、塗布組成物中に非フッ素化増量剤組成物を含んでもよい。このような増量剤ポリマー組成物の例は、国際公開第2006/028907号パンフレットに開示されている。
【0044】
本発明のポリマーは、様々な通例の方法で適した基材に適用される。洗濯可能な衣料用布帛に塗布する場合、ポリマーは、例えば、水性分散体又は有機溶媒溶液から刷毛塗り、浸漬、スプレー、パディング、ロールコート、又は発泡等により適用される。それらは、染色されたテキスタイル基材および未染色のテキスタイル基材に適用することができる。テキスタイルの場合、本発明の組成物は、好ましくは約5g/L〜約100g/L、より好ましくは約10g/L〜約50g/Lの量で適用される。
【0045】
カーペット基材の場合、「ウェットピックアップ」は、カーペット表面繊維の乾燥重量に基づいた、カーペットに塗布されるポリマーの分散体又は溶液の重量である。低ウェットピックアップ浴系は、低ウェットピックアップスプレー系又は発泡系と互換的に使用することができ、高ウェットピックアップ浴系は、他の高ウェットピックアップ系、例えば、フレックスニップ系、発泡、パディング又はフラッド(flood)と互換的に使用することができる。使用される方法によって、適切なウェットピックアップと、塗布をカーペットの一面から行う(スプレーおよび発泡塗布)か又は両面から行う(フレックスニップおよびパディング)かが決まる。次の表2に、カーペット基材に塗布するための典型的な工程仕様を記載する。
【0046】
【表1】

【0047】
本発明の組成物の分散体又は溶液は、適用するために希釈される。カーペットでは、分散体又は溶液中の全フッ素含有率は、好ましくは約0.01重量%〜約20重量%、より好ましくは約0.01重量%〜約5重量%、より好ましくは約0.01重量%〜約2重量%である。
【0048】
スプレー、発泡、フレックスニップ、フラッド、およびパディング塗布の条件の多くの変型が当業者に既知であり、前述の条件は例として記載され、排他的なものではない。本発明の分散体又は溶液は、典型的には約5%〜約500%のウェットピックアップでカーペットに塗布され、好ましくは約220°F(104℃)〜約260(127℃)で硬化される。あるいは、処理されたカーペットを空気乾燥してもよい。任意選択的に、本発明の分散体又は溶液を適用する前にカーペットを予め濡らしてもよい。カーペットを予め濡らすために、カーペットを水に浸漬し、過剰な水を吸引して取り除く。「ウェットピックアップ」は、カーペット表面繊維の乾燥重量に基づいた、カーペットに適用される本発明の分散体又は溶液の重量である。
【0049】
繊維基材では、適用されるポリマーの量は、乾燥基材の重量に基づいて重量で1g当たり少なくとも100μg〜1g当たり約5000μgのフッ素を提供するのに十分な量である。乾燥後のカーペットでは、処理されたカーペットは、好ましくは、乾燥したカーペットの重量に基づいて1g当たり約100μg〜1g当たり約1000μgのフッ素を含有する。
【0050】
皮革基材では、本発明の組成物は、乾燥又は半湿潤状態の皮にスプレーすることによって、又は皮革をフルオロポリマーに液浸することによって適用される。フルオロポリマーは加工中に適用されるか、又は、通常のなめし工程、再なめし工程、若しくは乾燥工程の終了後に適用される。ポリマーの適用を皮革製造の最終段階の製造工程と組み合わせることが好ましい。皮革に塗布されるポリマーの量は、フッ素約0.2〜約20g/m、好ましくはフッ素約0.2〜約2.3g/mを含有する乾燥皮革を提供するのに十分な量である。
【0051】
本発明は、本発明の組成物で処理された基材も含む。適した基材としては、繊維基材が挙げられる。繊維基材としては、織成繊維および不織繊維、ヤーン、布帛、混紡布、紙、皮革、ラグおよびカーペットが挙げられる。これらは、木綿、セルロース、ウール、シルク、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、レーヨン、ナイロン、アラミド、およびアセテートを含む天然又は合成繊維から製造される。「混紡布」とは、2種類以上の繊維からなる布帛を意味する。典型的には、これらの混紡布は少なくとも1種類の天然繊維と少なくとも1種類の合成繊維の組み合わせであるが、2種類以上の天然繊維の混紡又は2種類以上の合成繊維の混紡を含んでもよい。カーペット基材は染色されていても、顔料で着色されていても、捺染されていても、又は染色されていなくてもよい。カーペット基材中の繊維およびヤーンは、染色されていても、顔料で着色されていても、捺染されていても、又は染色されていなくてもよい。カーペット基材は、精練されていても、又は精練されていなくてもよい。耐汚性を付与するために本発明の化合物を塗布することが特に有利な基材としては、ポリアミド繊維(ナイロンなど)、木綿、ポリエステルと木綿の混紡から製造されるもの、特にテーブルクロス、およびユニフォーム等に使用される基材が挙げられる。
【0052】
本発明の組成物は、優れた撥水性、撥油性、耐汚性、親水性染み除去性、およびウィッキングの1つ以上を処理基材に付与するのに有用である。これらの特性は、従来のパーフルオロカーボン表面処理剤と比較して低いフッ素濃度を使用して得られ、処理面の保護における「フッ素効率」が改善される。本発明の組成物は、また、環境影響が最小限である化合物の使用を可能にする。
【0053】
材料および試験方法
本明細書の実施例では、以下の試験方法/材料を使用した。
【0054】
試験方法1−撥水性
AATCC標準試験方法第193−2004、およびTEFLON Global Specifications and Quality Control Tests information packetに概要が記載されているDuPont Technical Laboratory Methodに従って、処理基材の撥水性を測定した。この試験は、水性液体による濡れに対する処理基材の耐性を調べる。
【0055】
【表2】

【0056】
試験手順:試験液1を3滴、処理基材につける。10秒後、真空吸引を使用して液滴を除去する。液体の浸透又は部分的吸収が観察されない(基材に濡れて色の濃くなった斑点が現れない)場合、試験液2で試験を繰り返す。液体の浸透が観察される(基材に濡れて色の濃くなった斑点が現れる)まで、試験液3および順次それより大きい試験液番号で試験を繰り返す。試験結果は、基材に浸透しない最も大きい試験液番号である。スコアが高いほど撥水撥油性が大きいことを示す。
【0057】
試験方法2−撥油性
次のように実施されるAATCC標準試験方法第118の変更により、処理されたサンプルの撥油性を試験した。前述のポリマーの水性分散体で処理された基材を、23℃、相対湿度20%と、65℃、相対湿度10%で最低2時間調整する。次いで、下記の表4に示す一連の有機液体をサンプルに1滴ずつつける。最も小さい番号の試験液(撥油性評価番号1)で始めて、3つの場所にそれぞれ1滴(直径約5mm又は体積0.05mL)、少なくとも5mm離してつける。液滴を30秒間観察する。この時間の終わりに、3滴のうち2滴がまだ球状の形状であり、液滴の周囲にウィッキングが起こっていない場合、次の最も大きい番号の液体を3滴、隣接する部位につけ、同様に30秒間観察する。試験液の1つで3滴のうち2滴が球状〜半球状を維持できないという結果になるまで、又は濡れ若しくはウィッキングが起こるまで、この手順を続ける。撥油性評価は、3滴のうち2滴が球状〜半球状を維持し、30秒間ウィッキングが起こらない最も大きい番号の試験液である。一般に、評価が5以上の処理されたサンプルは、良好〜優れていると考えられる;評価が1以上のサンプルは、ある一定の用途に使用することができる。
【0058】
【表3】

【0059】
試験方法3−ドラム汚れ促進試験(Accelerated Soiling Drum Test)
ドラムミル(ローラー上の)を使用し、カーペットサンプルに合成汚れを回転付着させた。合成汚れは、AATCC Test Method 123−2000,Section 8に記載のように調製した。汚れでコーティングされたビーズは次のように調製した。合成汚れ3gと清浄なナイロン樹脂ビーズ(SURLYNアイオノマー樹脂ビーズ、直径1/8〜3/16インチ(0.32〜0.48cm))1リットルを清浄な空のキャニスタに入れた。SURLYNは、E.I.du Pont de Nemours and Co.(Wilmington,DE)から入手可能なエチレン/メタクリル酸共重合体である。キャニスタの蓋を閉じ、ダクトテープで密封し、キャニスタをローラー上で5分間回転させた。汚れでコーティングされたビーズをキャニスタから取り出した。
【0060】
ドラムに挿入するカーペットサンプルは、次のように調製した。これらの試験では、全カーペットサンプルサイズは8×25インチ(20.3×63.5cm)であった。全てのサンプルのカーペットパイルを同じ方向になるように置いた。各カーペットサンプルの短辺を機械方向に(タフト列に関して)切断した。強力接着テープをカーペット片の裏側に付け、それらを一緒に保持した。カーペットサンプルを、タフトがドラムの中心を向くようにして清浄な空のドラムミルに入れた。カーペットを剛性のワイヤでドラムミル内の所定の位置に保持した。汚れでコーティングされた樹脂ビーズ250ccとボールベアリング(直径5/16インチ、0.79cm)250ccをドラムミルに入れた。ドラムミルの蓋を閉じ、ダクトテープで密封した。ドラムをローラー上で2分半、105rpmで回転させた。ローラーを停止させ、ドラムミルの方向を逆にした。ドラムをローラー上で更に2分半、105rpmで回転させた。カーペットサンプルを取り出し、余分な汚れを取り除くため真空吸引した。汚れでコーティングされたビーズを廃棄した。
【0061】
元の汚れていないカーペットと比較した、汚れたカーペットのΔE色差を試験品と対照品について測定した。各カーペットの色測定を、汚れ促進試験の後のカーペットで行った。各対照サンプルおよび試験サンプルについて、カーペットの色を測定し、サンプルを汚し、汚れたカーペットの色を測定した。ΔEは、汚れたサンプルと汚れていないサンプルの色の差であり、正の数として表される。Minolta Chroma Meter CR−410を使用して、各品で色差を測定した。カーペットサンプルの5つの異なる領域で色を読み取り、平均ΔEを記録した。各試験品の対照カーペットは、試験品と同じ色および構造であった。ΔEが低いほど、汚れが少なく、耐汚性が優れていることを示す。
【0062】
試験方法4−ウィッキング試験
ウィッキング試験では、脱イオン水を5滴木綿サンプル上の生地の異なる領域に付けた。木綿に完全に吸収されるのにかかった時間(単位、秒)を記録した。ウィッキングは親水性の指標であり、試験結果は、ここではウィッキング又は親水性染み除去性を指す。撥水性が重要な衣類では、ウィッキング数値が高い方が望ましい。
【0063】
試験方法5−染み除去性評価
染み除去性試験は、AATCC Test Method 130−1995に準拠した。鉱油又はコーン油を5滴、1枚の吸取紙上の処理された木綿サンプルの中心に付けた。1枚のグラシン紙(秤量紙)をその染みの上に被せ、5ポンドの重りをグラシン紙の上に載せた。60秒後、重りとグラシン紙を取り除いた。油染みの周囲に4つの赤い点が付いた。木綿生地を、多量(Large load)、温水(Warm)(100°F)/冷水(Cold)、すすぎ1回(One rinse)、念入り(Ultra Clean)(設定12)、および普通(Normal)(速/遅)の設定のKenmore洗濯機に入れた。次いで、AATCC WOB洗剤100gと、バラスト布を含む生地4lbs.を洗濯機に加えた。洗濯後、サンプルを高設定のKenmore乾燥機に45分間入れた。染み除去性複製(Stain Release Replica)に基づいてサンプルを評価した。等級5は最良の除去であり、等級1は最低の除去である。
【0064】
【表4】

【0065】
試験方法6−洗濯耐久性
テキスタイル試験の国際規格の洗濯方法に従って、布帛サンプルを洗濯した。布帛サンプルを水平ドラム、フロントロードタイプ(タイプA、WASCATOR Fom 71MP−Lab)の自動洗濯機にバラスト布と一緒に投入し、全乾燥投入量を4ポンドとした。市販の洗剤(AATCC 1993標準洗剤WOB)を加え、温水(105°F、41℃)を高水量で、15分の通常の洗濯サイクルを行った後、13分のすすぎを2回行い、その後、2分脱水するように洗濯機をプログラムした。サンプルとバラスト布を指定された回数、洗濯した(5HWは5回洗濯、20HWは20回洗濯など)。洗濯後、サンプルを高設定のKenmore乾燥機に45分間入れた。次いで、これらの特性の耐久性を示すため、試験方法4および5を使用して、再度、サンプルの染み除去性およびウィッキングを試験した。
【0066】
材料
A)住宅用カーペット 淡黄色に染色され、E.I.duPont de Nemours and Company(Wilmington,DE)から入手可能な耐染みSR−500(固形分100%ベース)、1.2%の耐染み処理剤で処理されたナイロン6,6表面繊維を有する住宅用ループカーペット構造(30oz/yd)からなる住宅用カーペットを実施例で試験に使用した。
B)業務用カーペット 実施例1および2の試験に使用した業務用カーペットは、黄色に染色されたナイロン6,6表面繊維を有する業務用ループカーペット構造(28oz/yd)からなった。カーペットは、Invista,Inc.(Wilmington,DE)から入手した。
【0067】
試験に用いる住宅用カーペットおよび業務用カーペットに、25%のウェットピックアップで水を予めスプレー塗布した。次いで、実施例および比較例のフルオロポリマーを25%のウェットピックアップでスプレー塗布してカーペットを処理した。25%のウェットピックアップを使用してカーペットに所望のフッ素含有量(実施例の表に示す)を供給するのに必要な程度まで、分散体を水で希釈した。次いで、カーペット繊維表面温度が250°F(121℃)になるまで、処置されたカーペットを乾燥した。
C)テキスタイル 実施例の試験に、100%Avondale木綿(Avondale Mills(Warrenville,SC)から入手可能な白色の綿織物)を使用した。分散された実施例のフルオロポリマーをそれぞれ、別々の200gの水浴に、実施例の表に示す量で添加した。次いで、フルオロポリマーをパディング法により塗布するため、木綿を浴に通し、その後、パッダーに通した。次いで、木綿を330°F(166℃)で3分間硬化させ、周囲温度に冷却した。
【実施例】
【0068】
実施例1
400mLの振盪機チューブにパーフルオロエチルエチルアイオダイド(PFEEI)(45g)と、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)から入手可能な重合開始剤であるVAZO64(1g)を仕込んだ。低温真空排気した後、エチレン(6g)とテトラフルオロエチレン(25g)を添加した。得られた混合物を80℃に20時間加熱した。未反応のパーフルオロエチルエチルアイオダイドを室温で減圧蒸留により回収した。残存する固体をCHCN(3×100mL)で抽出した。CHCN抽出物を濃縮し、減圧蒸留して、純粋なアイオダイド1,1,2,2,5,5,6,6−オクタヒドロパーフルオロ−1−ヨードオクタンを得た。CHCNで抽出した後に残存する固体を温テトラヒドロフランで抽出した。テトラヒドロフラン抽出物を濃縮し、乾燥して、純粋な1,1,2,2,5,5,6,6,9,9,10,10−ドデカヒドロパーフルオロ−1−ヨードドデカンを得た。テトラヒドロフランで抽出した後に残存する固体は、主に、式C(CHCHCFCFCHCHI(式中、n=3以上のオリゴマー)のアイオダイドであったが、これは一般的な溶媒に対する溶解度が非常に低い。H NMRおよびF NMRにより、生成物1,1,2,2,5,5,6,6−オクタヒドロパーフルオロ−1−ヨードオクタンと1,1,2,2,5,5,6,6,9,9,10,10−ドデカヒドロパーフルオロ−1−ヨードドデカンのキャラクタリゼーションを行った。
【0069】
上記のように調製した1,1,2,2,5,5,6,6−オクタヒドロパーフルオロ−1−ヨードオクタン(136.91g、248.88mmol)とN−メチルホルムアミド(NMF)(273mL)の混合物を約150℃に19時間加熱した。反応混合物を水(4×500mL)で洗浄し、残留物を得た。この残留物、エタノール(200mL)および濃塩酸(1mL)の混合物を2.5時間穏やかに(浴温約85℃)還流した。反応混合物を水(200mL×2)で洗浄し、ジクロロメタン(200mL)で希釈し、硫酸ナトリウムで終夜乾燥した。ジクロロメタン溶液を濃縮し、減圧蒸留して、1,1,2,2,5,5,6,6−オクタヒドロパーフルオロ−1−オクタノール、50.8gを得た。
【0070】
乾燥した250mLのフラスコに、DESMODUR N3300イソシアネート(5g、Bayer Company(Pittsburgh,PA)から入手可能)を仕込んだ。フラスコに窒素ガス下で還流冷却器、熱電対を取り付けた。この後、1,1,2,2,5,5,6,6−オクタヒドロパーフルオロ−1−オクタノール(5.7g)およびMIBK(メチルイソブチルケトン)(20g)を添加した。混合物を50℃に加熱した。MIBKに溶解したジブチルスズジラウレート(0.4%溶液、2.4g)を添加した。反応温度を85℃に調節し、4時間維持した。水(6g)をゆっくりと徐々に添加し、混合物を75℃で8時間維持した。イソシアネート試験片(Aliphatic Isocyanate Surface SWYPE、Colormetric Technologies,Inc(Des Plaines,IL))を用いた試験により、もはやイソシアネートは存在しないことが分かった。Witco C−6094(1.57g、Akzo Nobel Surface Chemistry,LLC(Houston,TX)から入手可能))を熱脱イオン水(30g)と混合し、反応混合物に添加した。反応混合物を75℃で約2時間撹拌した後、2分間超音波処理した。MIBKを減圧蒸留により留去し、分散体をミルクフィルターでろ過した。脱イオン水を加えることにより、固形分率を24%に調節した。得られたフルオロポリマーを材料の項で前述したように業務用カーペットに塗布した。試験方法1を使用してカーペットの撥水性を、試験方法2を使用して撥油性を、試験方法3を使用して促進耐汚性を試験したが、その結果を下記の表6に示す。
【0071】
比較例A
比較例Aは、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)から入手可能な市販のカーペット用製品であった。フルオロポリマーは、RCHCHOH(Rは、炭素原子数2〜18のパーフルオロアルキル同族体の混合物である)およびDESMODURE N100イソシアネートから調製された。フルオロポリマーをカーペットに塗布し、実施例1および2におけるように試験した。結果をそれぞれ表6および表7に示す。
【0072】
【表5】

【0073】
表6のデータから、実施例1は同じフッ素濃度で、および比較的低い濃度でも、比較例Aと比較して良好な耐汚性を有したことが分かる。同じフッ素濃度では、撥油性および撥水性は比較例Aのものと同等であった。
【0074】
実施例2
実施例1のように調製した1,1,2,2,5,5,6,6,9,9,10,10−ドデカヒドロパーフルオロ−1−ヨードドデカン(65.62g)とN−メチルホルムアミド(135mL)の混合物を150℃に4時間加熱した。反応混合物を水(1L)で洗浄し、固体生成物を得た。この固体生成物にエタノール(150mL)および濃塩酸(1mL)を添加し、19時間加熱還流(85℃)した。反応混合物を水(500mL)に注ぎ、得られた固体を水(3×300mL)で洗浄し、減圧乾燥して、1,1,2,2,5,5,6,6,9,9,10,10−ドデカヒドロパーフルオロ−1−ドデカノール(50.8g)、収率98%、融点112〜115℃を得た。
【0075】
乾燥した250mlのフラスコに、DESMODUR N3300イソシアネート(2.0g、Bayer Company(Pittsburgh,PA)から入手可能)を仕込んだ。フラスコに窒素ガス下で還流冷却器、熱電対を取り付けた。この後、シクロヘキサノール(0.26g、Aldrich Company(St.Louis,MO))、前述のように調製した1,1,2,2,5,5,6,6,9,9,10,10−ドデカヒドロパーフルオロ−1−ドデカノール(3.15g)およびMIBK(メチルイソブチルケトン)(30g)を添加した。混合物を50℃に加熱した。MIBKに溶解したジブチルスズジラウレート(0.4%溶液、2g)を添加した。反応温度を85℃に調節し、4時間維持した。イソシアネート試験片(Aliphatic Isocyanate Surface SWYPE、Colormetric Technologies,Inc(Des Plaines,IL))を用いた試験により、もはやイソシアネートは存在しないことが分かった。Witco C−6094(1.17g)(Akzo Nobel Surface Chemistry,LLC(Houston,TX)から入手可能))を熱脱イオン水(60g)と混合し、反応混合物に添加した。熱トルエン55gを添加した。反応混合物を70℃で約1時間撹拌した後、4分間超音波処理した。水との最終反応は行わなかった。溶媒を減圧蒸留により留去し、生成物をミルクフィルターでろ過した。固形分10.4%の分散体が得られた。得られたフルオロポリマーを材料の項で前述したように業務用カーペットに塗布した。試験方法1を使用してカーペットの撥水性を、試験方法2を使用して撥油性を、試験方法3を使用して促進耐汚性を試験した。得られたデータを表7に記載する。
【0076】
【表6】

【0077】
表7のデータから、実施例2は、比較例Aと比較した場合、ずっと低いフッ素濃度を含有したが、同等の耐汚性を有したことが分かる。撥水性は同様のままであったが、撥油性は同様ではなかった。カーペット上でフッ素濃度が非常に低い(約300ppm)とき、撥油性が低いのは珍しいことではない。
【0078】
比較例B
1mLの4つ口丸底フラスコに滴下漏斗、熱電対、撹拌機、窒素導入管、冷却器およびガス排出管を取り付けた。このフラスコに、Bayer Company(Pittsburgh,PA)から入手可能なDESMODUR N3300イソシアネート(156.9g))、MIBK(メチルイソブチルケトン)(92g)、およびMIBKに溶解したFeCl(0.4%溶液、2.8g)を仕込んだ。反応混合物を60℃に加熱した。ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(MPEG750、16.45g、Aldrich Company(St.Louis,MO)から入手可能)を滴下漏斗で滴下した。反応混合物を60℃で30分間加熱した後、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)から入手可能な1H,1H,2H,2Hパーフルオロオクタノール(120g)を滴下漏斗で添加した。反応温度を95℃に上昇させ、4時間維持した。温度を85℃に低下させた後、溶液にMIBK115g、続いて水46gを添加し、85℃で終夜加熱した。試験片(Aliphatic Isocyanate Surface SWYPE、Colormetric Technologies,Inc(Des Plaines,IL))を使用したイソシアネートの試験が陰性であった場合、溶液を75℃に冷却した。次いで、熱水(75〜80℃)1000gを撹拌せずに溶液に加えた。これを30分間78℃で撹拌した。MIBKを減圧蒸留により留去し、分散体をミルクフィルターでろ過した。脱イオン水で標準化して、固形分25%の分散体を得た。得られたフルオロポリマーを材料の項で前述したようにAvondale Mills(Warrenville,SC)製の100%白色Avondale木綿に、フッ素0.3重量%の添加濃度の浴を使用して塗布した。試験方法4、5および6を使用して布帛のウィッキングおよび親水性染み除去性を試験した。その結果を表8および9に記載する。
【0079】
比較例C
比較例Cは、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)から入手可能な市販のテキスタイル処理剤であった。フルオロポリマーは、RCHCHOH(式中、Rは炭素原子数2〜18のパーフルオロアルキル同族体の混合物である)、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(MPEG750、Aldrich Company(St.Louis,MO)から入手可能)、およびBayer Company(Pittsburgh,PA)から入手可能なDESMODURE N100イソシアネートから調製された。フルオロポリマーを材料の項で前述したようにAvondale Mills(Warrenville,SC)製の白色の100%Avondale木綿に、フッ素0.3重量%の添加濃度の浴を使用して塗布した。試験方法4、5および6を使用して布帛のウィッキングおよび親水性染み除去性を試験した。その結果を表8および9に記載する。
【0080】
実施例3
乾燥した250mlのフラスコに、DESMODUR N3300イソシアネート(3.5g、Bayer Company(Pittsburgh,PA)から入手可能)を仕込んだ。フラスコに窒素ガス下で還流冷却器、熱電対を取り付けた。この後、実施例1のように調製した1,1,2,2,5,5,6,6−オクタヒドロパーフルオロ−1−オクタノール(3.18g)、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(MPEG750、3.5g、Aldrich Company(St.Louis,MO)から入手可能)およびMIBK(メチルイソブチルケトン)(26g)を添加した。MIBKに溶解したジブチルスズジラウレート(0.4%溶液、0.8g)を添加した。反応温度を85℃に調節し、約3時間維持した。熱脱イオン水(63g)を添加し、混合物を85℃で1時間維持した。混合物を2分間超音波処理した。MIBKを減圧蒸留により留去し、混合物をミルクフィルターでろ過した。分散体を得た(固形分17.9%)。得られたフルオロポリマーを材料の項で前述したように布帛(Avondale Mills(Warrenville,SC)から入手可能なAvondale100%白色木綿)に、フッ素0.3重量%の添加濃度の浴を使用して塗布した。試験方法4、5および6を使用して布帛のウィッキングおよび親水性染み除去性を試験した。その結果を表8に記載する。
【0081】
【表7】

【0082】
表8のデータから、実施例3は、フッ素濃度が比較的低かったが、比較例BおよびCのものと同等の染み除去性を有したことが分かる。また、ウィッキング時間は類似していた。5回洗浄した後のウィッキング時間の低下は、ウィッキングの耐久性のレベルの指標である。
【0083】
実施例4
実施例1のように調製した1,1,2,2,5,5,6,6,9,9,10,10−ドデカヒドロパーフルオロ−1−ヨードドデカン(65.62g)とN−メチルホルムアミド(135mL)の混合物を150℃に4時間加熱した。反応混合物を水(1L)で洗浄し、固体生成物を得た。この固体生成物にエタノール(150mL)および濃塩酸(1mL)を添加し、19時間加熱還流(85℃)した。反応混合物を水(500mL)に注ぎ、得られた固体を水(3×300mL)で洗浄し、減圧乾燥して、1,1,2,2,5,5,6,6,9,9,10,10−ドデカヒドロパーフルオロ−1−ドデカノール(50.8g)、収率98%、融点112〜115℃を得た。
【0084】
上記のように調製した1,1,2,2,5,5,6,6,9,9,10,10−ドデカヒドロパーフルオロ−1−ヨードドデカン(65.62g)とN−メチルホルムアミド(135mL)の混合物を150℃に4時間加熱した。反応混合物を水(1L)で洗浄し、固体生成物を得た。この固体生成物にエタノール(150mL)および濃塩酸(1mL)を添加し、19時間加熱還流(85℃)した。反応混合物を水(500mL)に注ぎ、得られた固体を水(3×300mL)で洗浄し、減圧乾燥して、1,1,2,2,5,5,6,6,9,9,10,10−ドデカヒドロパーフルオロ−1−ドデカノール(50.8g)、収率98%、融点112〜115℃を得た。
【0085】
乾燥した250mlのフラスコに、DESMODUR N3300イソシアネート(3.0g、Bayer Company(Pittsburgh,PA)から入手可能)を仕込んだ。フラスコに窒素ガス下で還流冷却器、熱電対を取り付けた。この後、前述のように調製した1,1,2,2,5,5,6,6,9,9,10,10−ドデカヒドロパーフルオロ−1−ドデカノール(2.54g)、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(MPEG750、2.96g、Aldrich Company(St.Louis,MO)から入手可能)、およびメチルイソブチルケトン(MIBK)(30g)を添加した。MIBKに溶解したジブチルスズジラウレート(0.4%溶液、1.6g)を添加した。反応温度を85℃に調節し、約6時間維持した。熱脱イオン水(47g)を添加し、混合物を75℃で終夜維持した。MIBKを減圧蒸留により留去し、混合物をミルクフィルターでろ過した。分散体を得た(固形分16.5%)。得られたフルオロポリマーを材料の項で前述したように布帛(Avondale Mills(Warrenville,SC)製の100%Avondale木綿)に、0.3重量%の添加濃度の浴を使用して塗布した。試験方法4、5および6を使用して布帛のウィッキングおよび親水性染み除去性を試験した。その結果を表9に記載する。
【0086】
【表8】

【0087】
表9のデータから、実施例4は、フッ素濃度が比較的低かったが、比較例BおよびCのものと同等の染み除去性を有したことが分かる。実施例4のウィッキング時間は、比較例BおよびCより長く、同等の耐久性を有した。
【0088】
実施例5
乾燥した500mlのフラスコに、DESMODUR N3300イソシアネート(60.0g、Bayer Company(Pittsburgh,PA)から入手可能)を仕込んだ。フラスコに窒素ガス下で還流冷却器、熱電対を取り付けた。この後、メチルイソブチルケトン(35.24g)と、メチルイソブチルケトンに溶解したジブチルスズジラウレート(0.4%溶液、6.0g)を添加した。混合物を60℃に加熱した。メチルイソブチルケトン(109.57g)に溶解した1,1,2,2,5,5,6,6−オクタヒドロパーフルオロ−1−オクタノール(84.81g)を添加した。反応温度を100℃に調節し、72時間維持した。水(1.78g)をゆっくりと徐々に添加し、混合物を100℃で12時間維持した。イソシアネート試験片(Aliphatic Isocyanate Surface SWYPE、Colormetric Technologies,Inc(Des Plaines,IL))を用いた試験により、もはやイソシアネートは存在しないことが分かった。上記混合物20.0gに、熱脱イオン水(28.0g)と混合したDOWFAX 2A1(1.6g、Dow Chemical Company(Midland,MI)から入手可能)を添加し、反応混合物に添加した。反応混合物を75℃で約2時間撹拌した後、4分間超音波処理し、ミルクフィルターでろ過した。メチルイソブチルケトンを減圧蒸留により留去し、分散体をミルクフィルターでろ過した。脱イオン水を加えることにより、固形分率を15.57%に調節した。得られたフルオロポリマーを材料の項で前述したように業務用カーペットに塗布した。試験方法1を使用してカーペットの撥水性を、試験方法2を使用して撥油性を、試験方法3を使用して促進耐汚性を試験したが、その結果を下記の表10に示す。
【0089】
【表9】

【0090】
表10のデータから、実施例5は同じフッ素濃度で、比較例Aにものと同等の耐汚性を有したことが分かる。同じフッ素濃度では、撥油性および撥水性は比較例Aのものと同等であった。
【0091】
実施例6
乾燥した500mlのフラスコに、DESMODUR N100イソシアネート(60.0g、Bayer Company(Pittsburgh,PA)から入手可能)を仕込んだ。フラスコに窒素ガス下で還流冷却器、熱電対を取り付けた。この後、メチルイソブチルケトン(35.24g)と、メチルイソブチルケトンに溶解したジブチルスズジラウレート(0.4%溶液、6.0g)を添加した。混合物を60℃に加熱した。メチルイソブチルケトン(110.35g)に溶解した1,1,2,2,5,5,6,6−オクタヒドロパーフルオロ−1−オクタノール(85.59g)を添加した。反応温度を100℃に調節し、72時間維持した。水(1.78g)をゆっくりと徐々に添加し、混合物を100℃で12時間維持した。イソシアネート試験片(Aliphatic Isocyanate Surface SWYPE、Colormetric Technologies,Inc(Des Plaines,IL))を用いた試験により、もはやイソシアネートは存在しないことが分かった。上記混合物20.0gに、熱脱イオン水(28.0g)と混合したWITCO C−6094(1.6g、Akzo Nobel Surface Chemistry,LLC(Houston,TX)から入手可能))を添加し、反応混合物に添加した。反応混合物を75℃で約2時間撹拌した後、4分間超音波処理し、ミルクフィルターでろ過した。メチルイソブチルケトンを減圧蒸留により留去し、分散体をミルクフィルターでろ過した。脱イオン水を加えることにより、固形分率を15.52%に調節した。得られたフルオロポリマーを材料の項で前述したように業務用カーペットに塗布した。試験方法1を使用してカーペットの撥水性を、試験方法2を使用して撥油性を、試験方法3を使用して促進耐汚性を試験したが、その結果を下記の表11に示す。
【0092】
【表10】

【0093】
表11のデータから、実施例6は同じフッ素濃度で、比較例Aと比較して良好な耐汚性を有したことが分かる。撥油性および撥水性は同等であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)(a)イソシアネート基を有する少なくとも1種類のジイソシアネート、ポリイソシアネート又はこれらの混合物と、(b)式(I):
(CH[(CFCF(CHCH(R−XH (I)
(式中、Rは、炭素原子数1〜約6の直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキル基であり、
添え字xは1〜約6の整数であり、
添え字y、zおよびmはそれぞれ独立して1、2又は3、又はこれらの組み合わせであり、
添え字rは0又は1であり、
(R−XHを除く前記式(I)中の総炭素数は、約8〜約22であり、
Xは、−O−、−NR−、−S−、−S(CHO−、又は−S(CHNR−であり、
添え字tは1〜約10であり、
RはH又はC1〜4アルキルであり、
は、−S(CH−、−[OCHCH(R)]−、−[OCHCH(CHCl)]−、および−C(R)(R)(OCHCH[CHCl])−からなる群から選択される2価の基であり、
nは2〜4の整数であり、sは1〜50の整数であり、
、RおよびRは、それぞれ独立して水素又は炭素原子数1〜6のアルキル基である)
から選択される少なくとも1種類のフッ素化化合物を反応させる工程、および
(ii)任意選択的に、(c)水、架橋剤、又はこれらの混合物と反応させる工程、
によって調製される、少なくとも1つのカルバメート結合を有するポリマー。
【請求項2】
式(I)の反応物に関して、XがOであり、添え字x、y、zおよびmがそれぞれ独立して1又は2であり、添え字rが0である、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
は炭素原子数4〜6である、請求項1に記載のポリマー。
【請求項4】
前記ジイソシアネート又はポリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネート単独重合体、3−イソシアナトメチル−3,4,4−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、並びに、式(IIa)、(IIb)、(IIc)および(IId):
【化1】

のジイソシアネート3量体からなる群から選択される、請求項1に記載のポリマー。
【請求項5】
反応させる工程(i)は、更に、(d)式
10−(R11−YH
[式中、
10は、C〜C18アルキル、C〜C18ω−アルケニル基、又はC〜C18ω−アルケノイルであり、
11は、−[OCHCH(R)]−、−[OCHCH(CHCl)]−、および−C(R)(R)(OCHCH[CHCl])
(式中、R、RおよびRは、それぞれ独立してH又はC〜Cアルキルであり、sは、1〜50の整数である)
からなる群から選択され、
kは、0又は1であり、
Yは、−O、−S−、又は−NR−(式中、RはH又は炭素原子数1〜6のアルキルである)である]
からなる群から選択される非フッ素化有機化合物を含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項6】
前記式R10−(R11−YHの化合物が、式(III)
R−O−(CHCHO)−(CHC[CH]HO)m1−(CHCHO)m2−H (III)
(式中、Rは、約1〜約6個の脂肪族又は脂環式炭素原子を含有する1価の炭化水素基であり、
mは正の整数であり、m1およびm2はそれぞれ独立して正の整数又は0である)
の少なくとも1種類のヒドロキシ末端ポリエーテルを含む親水性水和性物質を含み、前記ポリエーテルの重量平均分子量が約2000以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項7】
A)ノーアイロン、簡単なアイロン掛け、収縮制御、皺なし、パーマネントプレス、水分制御、柔らかさ、強度、滑り防止、帯電防止、ほつれ防止、抗ピリング性、防染み性、染み除去性、耐汚性、汚れ除去性、撥水性、撥油性、耐染み性、防臭、抗菌性、および日焼け防止からなる群から選択される少なくとも1つの表面効果を付与する1種類以上の薬剤、並びに、B)界面活性剤、pH調整剤、架橋剤、湿潤剤、ブロックイソシアネート、ワックス増量剤、又は炭化水素増量剤を更に含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項8】
基材を請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリマーと接触させる工程を含む、基材に撥水性、撥油性、耐汚性、親水性染み除去性、およびウィッキングを付与する方法。
【請求項9】
ノーアイロン、簡単なアイロン掛け、収縮制御、皺なし、パーマネントプレス、水分制御、柔らかさ、強度、滑り防止、帯電防止、ほつれ防止、抗ピリング性、防染み性、染み除去性、耐汚性、汚れ除去性、撥水性、撥油性、耐染み性、防臭、抗菌性、および日焼け防止からなる群から選択される少なくとも1つの表面効果を付与する薬剤の存在下で、前記ポリマーを前記基材と接触させる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリマーが適用された基材。

【公表番号】特表2011−524427(P2011−524427A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509725(P2011−509725)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/044053
【国際公開番号】WO2009/140561
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】