説明

フルーツプレパレーション中でのフルーツのシュリンク抑制方法

【課題】加工工程や保存中、特には加圧高温殺菌や酸性下といった過酷な条件下においても、フルーツプレパレーション中でのフルーツのシュリンクを抑制することができる、フルーツのシュリンク抑制方法を提供する。更には、フルーツプレパレーション中でのフルーツのシュリンクが抑制されつつも、粘度変化が少なく、取り扱いに優れたフルーツプレパレーションを提供する。
【解決手段】フルーツプレパレーション用シロップに、1.5%濃度のゼリー強度が10〜100g/cmである寒天を0.1〜0.5質量%添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルーツヨーグルトやフルーツアイスクリームなどを製造する際に混合使用されるフルーツプレパレーション中でのフルーツのシュリンクを抑制する方法に関する。詳細には、フルーツを糖やその他固形分を含有する溶液(フルーツプレパレーション用シロップ)中で加熱・殺菌等の加工をする際、特に加圧高温殺菌時において、フルーツからシロップへと水分が移行して果肉が収縮(シュリンク)することを抑制する、シュリンクの抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルーツプレパレーションとは、フルーツを糖やその他固形分を含有する溶液(以下、「シロップ」と言う)中で加熱・殺菌等の加工をしたものであり、ヨーグルトやアイスクリーム、飲料などにフルーツを添加する際、生のフルーツに代えて使用される果肉加工食品である。これらフルーツプレパレーションに用いられるシロップには、フルーツのシロップ中での分散性やヨーグルト、アイスクリームなどの食品との混合性を良好にするために、適度な粘度を付与することが行われてきた。
【0003】
例えば、キサンタンガム、グァーガム等のガム質を含ませるものや、ガム質と低メトキシルペクチンの両者を添加してなるフルーツソース(特許文献1)や、容器に冷凍果肉を充填した後、予め糖液にグァーガム、ローカストビーンガム等の増粘剤等を分散混合しておいた液部を充填し、加熱、冷却するフルーツソース状物質の製造方法(特許文献2)などがある。しかし、粘度付与を目的として上記キサンタンガムやグァーガム、低メトキシルペクチン等を用いてフルーツプレパレーションを調製した場合は、フルーツ中に含まれる水分がシロップへ移行してフルーツが収縮(シュリンク)してしまう。これにより、フルーツ本来のみずみずしい食感が失われたり、フルーツより移行してきた水分によってシロップの粘度が低下するといった問題を抱えていた。
【0004】
一方、寒天を用いたフルーツ加工品としては、フルーツソースなどの流動性食品に寒天を添加して流動性食品の液だれ又は糸曳きを防止すること(特許文献3)、果肉入りゼラチンに用いる果肉を調製する際に増粘安定剤として寒天を添加できること(特許文献4)、果肉を含有する果肉液に寒天溶液を添加し、冷却工程中にマイクロゲルを生成させてプレパレーションを調製すること(特許文献5)。また、低強度寒天を用いた食品としては、メープルシロップ、糖類等と混合してメープルジャム様食品を調製できること(特許文献6)、ヨーグルトやタレ、スプレッド食品に添加できること(特許文献7)が開示されている。
【0005】
しかし、通常のゼリー強度を有する寒天を用いてフルーツプレパレーション用シロップを調製しようとすると、シロップがゲル化してしまう為、フルーツプレパレーションに粘度付与の目的で使用することができない、もしくはゲル化したプレパレーションを冷却工程中に破砕してマイクロゲルを生成させなければならず、製造工程が複雑になり手間がかかる。また、ゲル化しない添加量を添加した場合であっても、フルーツプレパレーション用シロップに必要な粘度を付与することができず、調製されたフルーツプレパレーション中でのフルーツの分散性が低下し、フルーツプレパレーションの製造工程上の取り扱いが困難になるといった問題点があった。
【0006】
また、特許文献6、7には低強度寒天を用いた各種食品が開示されているが、フルーツプレパレーション用シロップに低強度寒天を用いることについて一切記載されておらず、そもそもフルーツのシュリンク抑制といった、フルーツプレパレーション特有の課題について一切記載も示唆もされていない。また、特許文献7には低強度寒天が保水性に優れていることが記載されているが、従来保水性に優れた多糖類を用いてフルーツプレパレーションを調製しようとすると、多糖類の保水性によってフルーツ果肉の水分がシロップに移行しやすく、むしろシュリンクを起こしやすいといった問題点を抱えていた。更には、フルーツプレパレーション用シロップは、その調製工程において殺菌工程を取ることが一般的であり、この殺菌工程により、果肉のシュリンクが進んだり、また、フルーツプレパレーションの風味や保存性の調整の為のpH変化に伴って、フルーツプレパレーション自体の粘度が低下、又は上昇して製造工程上の取り扱いが不便になるなど更なる改良の余地があった。
【0007】
【特許文献1】特公平03−52942号公報
【特許文献2】特開2003−102443号公報
【特許文献3】特開平08−280334号公報
【特許文献4】特開平3−201953号公報
【特許文献5】特開2006−254746号公報
【特許文献6】特開2005−168390号公報
【特許文献7】特開平6−38691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みて開発されたものであり、フルーツプレパレーション中での果肉のシュリンクを抑制する方法を提供することを目的とする。詳細には、加工工程や保存中、特には加圧高温殺菌や酸性下といった過酷な条件下においても、果肉のシュリンク(収縮)を抑制することのできるフルーツのシュリンク抑制方法、更には、該シュリンク抑制方法を用いて果肉のシュリンクが抑制され、果肉本来のみずみずしい食感が維持されたフルーツプレパレーションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み鋭意研究を重ねていたところ、フルーツプレパレーション用シロップに、1.5%濃度のゼリー強度が10〜100g/cmである寒天を0.1〜0.5質量%添加することにより、特には加圧高温殺菌や酸性下といった過酷な条件下においても、フルーツプレパレーション中の果肉のシュリンクを抑制できることを見出して本発明に至った。更には、澱粉と併用することにより、加圧高温殺菌や酸性下といった過酷な条件下においても、フルーツプレパレーション中の果肉のシュリンクを抑制できるとともに、pH変化によっても、粘度変化が少なく、取り扱いが容易なフルーツプレパレーションとなることを見出して本発明に至った。
【0010】
本発明は、以下の態様を有するフルーツプレパレーション中でのフルーツのシュリンク抑制方法、及び該方法によってシュリンクが抑制されたフルーツプレパレーションに関する;
項1.フルーツプレパレーション用シロップに、1.5%濃度のゼリー強度が10〜100g/cmである寒天を0.1〜0.5質量%添加することを特徴とする、フルーツプレパレーション中でのフルーツのシュリンク抑制方法。
項2.更に、澱粉を併用する、項1記載のフルーツのシュリンク抑制方法。
項3.寒天に対し、澱粉を4〜40倍量添加する、項2に記載のフルーツのシュリンク抑制方法。
項4.項1〜3のいずれかに記載の方法により、シュリンクが抑制されたフルーツプレパレーション。
【0011】
なお、本発明のフルーツプレパレーションには、下記態様が含まれる。
(1)フルーツプレパレーションが、加圧高温殺菌工程を経て得られるものである、項4に記載のフルーツプレパレーション。
(2)pHが3.0〜4.0である、項4に記載のフルーツプレパレーション。
【0012】
また、本発明は以下の態様を有するフルーツプレパレーション用シロップの製造方法に関する;
項5.1.5%濃度のゼリー強度が10〜100g/cmである寒天を0.1〜0.5質量%含有することを特徴とする、フルーツプレパレーション用シロップ。
項6.更に、澱粉を含有する、項5記載のフルーツプレパレーション用シロップ。
項7.寒天に対し、澱粉を4〜40倍量含有する、項6に記載のフルーツプレパレーション用シロップ。
【0013】
本発明のフルーツプレパレーション用シロップには下記態様が含まれる。
(1)粘度が2000〜6000mPa・sである、項5〜7のいずれかに記載のフルーツプレパレーション用シロップ。
【0014】
更に、本発明は以下の態様を有するフルーツプレパレーションの製造方法に関する;
項8.フルーツプレパレーション用シロップに、1.5%濃度のゼリー強度が10〜100g/cmである寒天を0.1〜0.5質量%添加した状態で、加熱殺菌を行うことを特徴とする、フルーツプレパレーションの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、加工工程や保存中、特には加圧高温殺菌や酸性下といった過酷な条件下においても、フルーツプレパレーション中の果肉のシュリンク(収縮)を抑制することができる。また、フルーツの分散性に優れつつも、果肉のシュリンクが抑制され、取り扱いが容易なフルーツプレパレーションを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のフルーツプレパレーション中でのフルーツのシュリンク抑制方法は、フルーツプレパレーション用シロップに、1.5%濃度のゼリー強度が10〜100g/cm、好ましくは20〜90g/cm、更に好ましくは30〜80g/cmである寒天(以下、「低強度寒天」という。)を0.1〜0.5質量%添加することを特徴とする。なお、ここで、ゼリー強度とは日寒水式測定法、すなわち寒天の1.5%溶液を調製し20℃で15時間放置凝固せしめたゲルについてその表面1cm当たり20秒間耐えるうる最大荷重〔g〕をいう。
【0017】
一方、通常の寒天は1.5%濃度で400〜900g/cm程度のゼリー強度を示すが、こうしたゼリー強度が、1.5%寒天濃度で100g/cmを大きく越える寒天をフルーツプレパレーション用シロップに添加した場合は、シロップがゲル化してフルーツプレパレーションに粘度付与の目的で使用することができない、もしくはゲル化しない添加量を添加した場合であってもフルーツプレパレーションに適切な粘度を付与することができず、果肉の分散性が低下し、製造工程上の取り扱いが困難となってしまう。
【0018】
また、本発明では、フルーツプレパレーション用シロップに低強度寒天を0.1〜0.5質量%、好ましくは0.1〜0.4質量%、更に好ましくは0.1〜0.3質量%添加することを特徴とする。ここで、低強度寒天の添加量が0.1質量%より少ないとフルーツプレパレーションに適切な粘度を付与することができず、果肉の分散性が低下し、製造工程上の取り扱いが困難となってしまう。一方で添加量が0.5質量%より多くなるとフルーツのシュリンクを充分に抑制することができない、用いる糖などの原料によってはフルーツプレパレーション用シロップ自体がゲル化してしまい、フルーツプレパレーションを調製することができなくなってしまう。そして、特定量の低強度寒天を用いることにより、フルーツプレパレーションとして適した粘度を有し、果肉の分散性に優れつつも、シュリンクが抑制されたフルーツプレパレーションを調製することができる。なお、係るフルーツプレパレーションは、加圧高温殺菌や酸性下といった過酷な条件下においても果肉のシュリンクを抑制することができる。
【0019】
更に本発明では、澱粉を併用することにより、フルーツプレパレーションにおける果肉の分散性を向上することができる。また、澱粉を併用することにより、加圧高温殺菌や酸性下といった過酷な条件下においても、フルーツプレパレーション用シロップ中における果肉のシュリンクを抑制できるとともに、pH変化によっても、粘度変化が少ないフルーツプレパレーションを提供することができる。ここで、澱粉としては、米由来の澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、サツマイモ由来の澱粉、ジャガイモ由来の澱粉、サゴヤシ由来の澱粉等やそれらの加工澱粉があげられ、これらから1種又は2種以上を選択して用いることができるが、好ましくは米由来の米澱粉を用いることができ、米澱粉としては、うるち米、もち米由来の未加工の生澱粉や化学的、物理的処理を施した加工澱粉でも構わないが、好ましくはもち米由来の加工・化工澱粉を用いることができる。
【0020】
加工・化工の程度は特に限定されず、例えば食品業界で広く用いられており、その製造方法も公知の方法(例えば、参考文献1:「加工澱粉の具体的使用方法について」食品技術加工 Vol.18 No3 pp.30-35(1998);参考文献2:Handbook of Water Soluble Gums and Resines,R.L.Davidson(Ed),Mc Grawhill,Inc.,NY,1890;参考文献3:Starch Chemistry and Technology,2nd ed,Whistler et al.(Ed),Academic Press,Inc.,Orlando,1984;参考文献4:Modified Starch:Properties and Uses,Wurzburg,O.B.,CRC Press,Inc.,Florida,1986等を参照のこと)を例示することができる。中でも化学的処理が施された米澱粉を使用するのが好ましい。なお、本発明で使用する米澱粉は商業上入手可能であり、松谷化学工業株式会社製のもみじ、日本NSC株式会社製のNOVATION8300などを挙げることができる。
【0021】
澱粉の添加量としては、フルーツプレパレーション用シロップに対して、1.0〜4.0質量%、好ましくは1.5〜3.0質量%、更に好ましくは1.8〜2.5質量%を挙げることができる。また、低強度寒天に対する澱粉の添加量としては、低強度寒天に対し、4〜40倍量、好ましくは5〜20倍量、より好ましくは6〜15倍量となるように併用することにより、フルーツのシュリンクが顕著に抑制されつつも、果肉の分散性が良好であり製造上の取り扱いに優れたフルーツプレパレーションを調製することができる。
【0022】
本発明のフルーツプレパレーション用シロップは、上述の低強度寒天、必要に応じて澱粉と、糖質を用いて調製することができるが、本発明のフルーツプレパレーション用シロップは、水溶性固形分(Brix)が5〜50質量%、好ましくは15〜45質量%、更に好ましくは20〜40質量%になるように任意に調整して使用することが望ましい。水溶性固形分は食用可能な水溶性の固形分の添加量を調整することにより行うことができ、一般的な水溶性固形分の成分として、糖質を挙げることができるが、これに限定されず使用することができる。
【0023】
糖質としては、砂糖、果糖、ブドウ糖、乳糖、水飴、還元水飴、果糖ブドウ糖液糖、はちみつ、異性化糖、転化糖、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、テアンデオリゴ糖、大豆オリゴ糖等)、トレハロース、糖アルコール(マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、パラチニット、キシリトール、ラクチトール等)、砂糖結合水飴(カップリングシュガー)等の糖質を使用することが出来る。なお、糖質のみで甘味が足りない場合は、アルパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ソーマチン、アリテーム、ネオテーム、カンゾウ抽出物(グリチルリチン)、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビア抽出物、ステビア末等の高甘味度甘味料を添加しても良い。
【0024】
そしてフルーツプレパレーション用シロップに、上記低強度寒天、必要に応じて澱粉を添加することにより、例えば、80〜95℃で5〜40分間といった加熱殺菌や、100〜150℃で1〜30秒間といったUHT殺菌、特には100〜130℃で1〜30秒間といった加圧高温殺菌(レトルト殺菌)を行った場合においても、顕著にシロップ中におけるフルーツ果肉のシュリンクを抑制することができる。
【0025】
更には、低強度寒天、必要に応じて澱粉をフルーツプレパレーション用シロップに添加することにより、pH3.0〜4.0といった酸性条件下においても、フルーツプレパレーション中の果肉のシュリンクを抑制することができる。また、pH3.0〜4.0といった酸性条件下では、加熱殺菌などによりフルーツプレパレーションのシロップの粘度が大きく減少若しくは増大するなど、フルーツプレパレーションの粘度が安定せず、取り扱いが不便となる場合が多々見られたが、本発明に係る方法を用いることにより、酸性条件下において加熱工程を経た場合であっても、粘度変化が少なく取り扱いに優れたフルーツプレパレーションを提供することができる。なお、ここでpHは有機酸や有機酸塩など各種pH調整剤を用いて調整することができる。
【0026】
なお、フルーツプレパレーション用シロップは、適用される最終食品や、求められる分散性などによっても適宜調節することができるが、好ましくは2000〜6000mPa・s、更に好ましくは、2500〜5000mPa・sの粘度に調整することが好ましい。また、フルーツと混合後は、2000〜4500mPa・s、更に好ましくは、2500〜3500mPa・sの粘度に調整することが好ましい。
【0027】
そして、フルーツプレパレーション用シロップ調製時における低強度寒天及び澱粉の添加方法としては、特に限定されずに、各種方法を用いることができる。具体的には、低強度寒天、必要に応じて澱粉を粉体混合したものをフルーツプレパレーション用シロップに添加する方法、いったん水に加熱溶解したものをシロップに添加する方法、あらかじめ糖質と混合した後に水に添加、加熱溶解する方法などが挙げられる。
【0028】
そして、低強度寒天、必要に応じて澱粉が添加されたプレパレーション用シロップ中にフルーツを添加することにより、シロップ中におけるフルーツの分散性に優れつつも、果肉のシュリンクが抑制され、果肉本来のみずみずしい食感が維持されたフルーツプレパレーションとなる。特には加圧高温殺菌や酸性下といった過酷な条件下においても、フルーツプレパレーション中の果肉のシュリンク(収縮)が抑制され、またpH変化によっても、粘度変化が少ないために取り扱いに優れたフルーツプレパレーションとなる。
【0029】
フルーツプレパレーションに使用するフルーツとしては、適当なサイズにカットされたものを使用することができ、簡便には市販のフルーツ缶詰や冷凍品を使用することも出来る。フルーツの種類としては特に限定されず各種フルーツを使用することができ、具体的にはアロエ、ブドウ、みかん、ブルーベリー、桃、メロン、オレンジ、パイン、いちご、クランベリー、ラズベリー、マンゴー、パパイヤ、すいか、りんご、柿、梨、あんず、スモモ、バナナ、チェリー、キウイフルーツ、アプリコット等の各種フルーツを挙げることができる。中でも、本発明のフルーツプレパレーション用シロップは、アロエ、ブドウ、みかん、ブルーベリーからなる1種以上、特にはアロエといった比較的シュリンクを起こしやすいフルーツであっても加工工程や保存中のプレパレーション中でのフルーツのシュリンクを顕著に抑制することができる。
【0030】
なお、本発明において調製されたフルーツプレパレーション中のシロップとフルーツの配合割合は特に制限されるものではないが、シロップ:フルーツ=10:90〜90:10、好ましくは、15:85〜70:30、更に好ましくは、20:80〜60:40を挙げることができる。
【0031】
そして前記フルーツプレパレーション用シロップとフルーツ、必要に応じて副原料を加え、必要に応じて加熱殺菌工程を経た後、冷却することによってフルーツプレパレーションを製造することができる。加熱殺菌工程としては、特に限定されず、前述の殺菌工程をはじめとした各種殺菌工程を取ることができるが、本発明に係る方法を用いることにより、例えば90〜130℃で0.1〜20分間レトルト殺菌という過酷な条件での殺菌を行った場合においてもシロップ中におけるフルーツ果肉のシュリンクを抑制することができる。
【0032】
本発明で調製するフルーツプレパレーション用シロップは、前述の他は常法により調製することができる。また、本発明のフルーツプレパレーション用シロップの副原料としては、香料、色素、酸味料、風味調整剤、酸化防止剤等などを挙げることができる。必要に応じて鉄、マグネシウム、リン、カリウム等のミネラル類、ビタミン類などを添加してもよい。
【0033】
なお、本発明のフルーツプレパレーション用シロップには、本発明の効果を奏する範囲内において、他の安定剤を添加しても良い。例えば、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム、キサンタンガム、グァーガム、タラガム、ローカストビーンガム、ペクチン、カラギナン、寒天、ゼラチン、乳清タンパク質、アラビアガム、グルコマンナン、サイリウムシードガム、プルラン、タマリンドシードガム、トラガントガム、カラヤガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、マクロホモプシスガム、ガティガム、ラムザンガム、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、微小繊維状セルロース、発酵セルロース、大豆多糖類及びデキストリンなどが挙げられる。
【0034】
このようにして得られたフルーツプレパレーションは、ヨーグルトやヨーグルト飲料、フルーツゼリーなどのゼリー類;アイスクリーム、ラクトアイス、氷菓などの冷菓類;プリン、ババロア、ケーキ、グミキャンディー、チューイングガム、和洋菓子などの菓子類;製パン等に混合されるなど、食品又は飲料の原料として用いられるが、食品の製造時においても果肉のシュリンクが抑制され、また混合性に優れたフルーツプレパレーションとなる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例等を用いて具体的に説明するが、本発明は
これらに何ら限定されるものではない。また、特に記載のない限り「部」とは、「質量%
」を意味するものとする。文中「*」印のものは、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、文中「※」印は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを示す。
【0036】
実験例1 アロエプレパレーションの調製
下記表1に示す処方に従って、フルーツプレパレーション用シロップを調製した。詳細には、水に砂糖、低強度寒天、寒天、米澱粉、キサンタンガム、グァーガム、タピオカ澱粉を適宜添加し、90℃にて10分間攪拌溶解した。50%(w/w)クエン酸溶液を用いてpHを3.5に調整し、水にて全量を補正し、フルーツプレパレーション用シロップを調製した。
【0037】
調製した各々のフルーツプレパレーション用シロップ50部にアロエ葉肉50部を加え、混合し、100℃にて5分間レトルト殺菌してフルーツプレパレーションを調製した。調製したフルーツプレパレーションを常温(25℃)にて1週間保存し、フルーツプレパレーション中のフルーツ果肉のシュリンク抑制率について評価した。なお、果肉のシュリンク抑制率については、シュリンク抑制率(%)=(プレパレーション中のフルーツ果肉重量(g)/プレパレーションに添加した初発フルーツ果肉重量(g))×100により計算した。結果をアロエの分散性と併せて表1に示す。アロエの分散性については、分散能がないものを1、完全に分散しているものを5として5段階で評価した。また、調製したフルーツプレパレーション中の果肉の食感について表2に示した。
【0038】
【表1】

【0039】
注1)1.5%濃度のゼリー強度が65g/cmの寒天(伊那食品工業(株)製、ウルトラ寒天「イーナ」)を用いた。
注2)1.5%濃度のゼリー強度が698g/cmの寒天を用いた。(伊那食品工業(株)製、伊那寒天UP−37)
【0040】
【表2】

【0041】
表1、表2より、特定量の低強度寒天を用いることにより、100℃、5分間のレトルト殺菌という過酷な殺菌条件においても、果肉のシュリンクを抑制することができ、みずみずしい食感で適度な弾力のあるアロエ入りプレパレーションを調製することができた(実施例1〜4)。一方で、同じ低強度寒天を用いた場合であっても、1質量%の低強度寒天を用いた場合(比較例2)は、果肉のシュリンクを抑制することができず、調製されたアロエプレパレーション中のアロエが柔らかくなり、果肉本来の味や食感を維持することができなかった。また比較例2のフルーツプレパレーションは、シロップの粘度が高くなりすぎ、プレパレーション自体がゲルのようになってしまった。また、シロップに適度な分散性を付与させるためにキサンタンガム、グァーガムを用いた場合は、アロエの分散性を維持することができるものの、アロエのシュリンクを十分に抑制することはできなかった。また、低強度寒天の代わりに通常の寒天を用いて調製したフルーツプレパレーション(比較例1)も、寒天単独で果肉の分散性を向上させるために、寒天の添加量を高くすると、ゲルが形成されてしまい、プレパレーション用シロップ自体を調製することができなかった。また、ゲル化しない添加量として、通常の寒天を0.03質量%、砂糖25.0質量%用いた以外は実施例1と同様にしてフルーツプレパレーション用シロップを調製したが、得られたフルーツプレパレーションは、アロエが沈殿し、その後ヨーグルトやアイス、飲料といった食品に充填する際の、均一充填適性に欠ける、食品との混合性が悪いなど製造工程上の取り扱いが困難となるフルーツプレパレーションとなってしまった。一方、低強度寒天に加え、澱粉を併用してフルーツプレパレーションを調製した実施例5〜7、特には低強度寒天と米澱粉を併用した実施例6、7は、果肉のシュリンク抑制効果に加え、レトルト殺菌という加圧高温殺菌・酸性条件下においてもシロップの粘度が低下することなく、果肉の分散性に優れ、取り扱いに優れたフルーツプレパレーションとなった。
【0042】
実験例2 フルーツプレパレーション用シロップの安定性試験
フルーツプレパレーション用シロップの安定性について、その最終粘度へのpHの影響について実験した。詳細には、表3に示す処方に従って、水に砂糖、米澱粉、低強度寒天、キサンタンガム、グァーガムを適宜添加し、90℃にて10分間攪拌溶解した。50%(w/w)クエン酸溶液を用いてpHを3.5及び、3.2に調整し、水にて全量を補正し、フルーツプレパレーション用シロップを調製した(実施例8、比較例4)。調製したフルーツプレパレーション用シロップをそれぞれ容器に充填し、100℃にて5分間レトルト殺菌した後、24時間4℃にて保存後、10℃にて2時間保存し、粘度を測定した。なお、粘度はB型回転粘度計(30rpm、1min、10℃)にて測定した。結果を表3に示す。
【0043】
【表3】

【0044】
表3より、フルーツプレパレーション用シロップとしてキサンタンガム、グァーガムを用いてシロップを調製した場合は(比較例4)、調整pHの違いにより、レトルト殺菌工程によってシロップの粘度が大きく低下し、加圧高温殺菌下において安定な粘度を維持することができなかった。一方、シロップ中に低強度寒天及び米澱粉を用いた場合は(実施例8)、調整pHが異なる場合においてもシロップの大きな粘度変化は少なく、加圧高温殺菌においても粘度安定であり、果肉の分散性に優れたシロップを調製することができた。
【0045】
実験例3 フルーツプレパレーションの調製
表4に示す各種フルーツを用いて実施例9〜11のフルーツプレパレーションを調製した。詳細には、水に砂糖、低強度寒天、寒天、米澱粉、キサンタンガム、グァーガムを適宜添加し、90℃にて10分間攪拌溶解した。50%(w/w)クエン酸溶液を用いてpHを3.5に調整し、水にて全量を補正し、フルーツプレパレーション用シロップを調製した。
【0046】
調製した各々のフルーツプレパレーション用シロップ50部に表4に示すフルーツ各50部を加え、混合し、100℃にて5分間レトルト殺菌してフルーツプレパレーションを調製した。調製したフルーツプレパレーションを常温(25℃)にて1週間保存し、フルーツプレパレーション中のフルーツ果肉のシュリンク抑制率及び食感について評価した(表4、表5)。
【0047】
【表4】

【0048】
【表5】

【0049】
フルーツプレパレーション用シロップに低強度寒天及び澱粉を含有することにより(実施例9〜11)、比較例5〜7に比べ、酸性下・レトルト殺菌といった過酷な条件下においても、フルーツのシュリンクが抑制され、かつフルーツの分散性に優れたフルーツプレパレーションを調製することができた。特に、みかんやブドウといった果実はシュリンクしやすい傾向を示す果実であるが、これらみかんやブドウを用いた場合であっても、低強度寒天及び澱粉を用いることにより(実施例9、11)、シュリンク抑制率が77.1%、74.5%と顕著にシュリンクを抑制することができた。一方、比較例5〜7のフルーツプレパレーションは果肉のシュリンクを十分に抑制することができず、果肉自身の食感が果肉本来の食感とは異なり、みずみずしさに欠けるものとなってしまった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明により、加工工程や保存中、特には加圧高温殺菌や酸性下といった過酷な条件下においても、フルーツプレパレーション中での果肉のシュリンクが抑制され、果肉本来のみずみずしい食感が維持されたフルーツプレパレーションを提供することができる。更には、加圧高温殺菌や酸性下といった過酷な条件下においても、粘度変化が少なく、取り扱いに優れたフルーツプレパレーションを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルーツプレパレーション用シロップに、1.5%濃度のゼリー強度が10〜100g/cmである寒天を0.1〜0.5質量%添加することを特徴とする、フルーツプレパレーション中でのフルーツのシュリンク抑制方法。
【請求項2】
更に、澱粉を併用する、請求項1記載のフルーツのシュリンク抑制方法。
【請求項3】
寒天に対し、澱粉を4〜40倍量添加する、請求項2に記載のフルーツのシュリンク抑制方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法により、シュリンクが抑制されたフルーツプレパレーション。
【請求項5】
1.5%濃度のゼリー強度が10〜100g/cmである寒天を0.1〜0.5質量%含有することを特徴とする、フルーツプレパレーション用シロップ。
【請求項6】
更に、澱粉を含有する、請求項5記載のフルーツプレパレーション用シロップ。
【請求項7】
寒天に対し、澱粉を4〜40倍量含有する、請求項6に記載のフルーツプレパレーション用シロップ。
【請求項8】
フルーツプレパレーション用シロップに、1.5%濃度のゼリー強度が10〜100g/cmである寒天を0.1〜0.5質量%添加した状態で、加熱殺菌を行うことを特徴とする、フルーツプレパレーションの製造方法。

【公開番号】特開2008−173074(P2008−173074A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10693(P2007−10693)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】