説明

フレキシブルフラットケーブル用絶縁テープおよびその製法

【課題】高周波化・伝送速度の高速化に伴うフレキシブルフラットケーブルの問題を、フェライトコアチップ等を用いず克服でき、安価でしかも従来の絶縁テープ以上の性能および作業性に優れたフレキシブルフラットケーブル用絶縁テープを提供する。
【解決手段】接着剤層3と、絶縁層1と、必要に応じて、これら両者の間に介在するアンカーコート層2とを備え、上記接着剤層3がポリオレフィン系樹脂接着剤からなり、上記絶縁層1が比重0.6〜1.2のポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂の発泡体からなり、上記各層間が密着して実質的に一体化しているフレキシブルフラットケーブル用絶縁テープである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルフラットケーブル用絶縁テープおよびその製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、マルチメディア対応を始めとした情報通信技術のめざましい進歩とともに、その伝送速度も急激な変化を見せ、これまで数十Mbpsであった伝送速度が、高周波数帯を利用して、数百Mbpsから1Gbpsになろうとしている。このような状況から電気・電子機器内の配線に使用されるケーブルの伝送特性も厳しいものが求められる。
【0003】
高速伝送に対応する伝送ケーブルでは、クロストーク(ノイズ)や、反射減衰等のデジタル信号の波形変動が発生しやすい。そこで、これらを防止するため、特性インピーダンスの整合性・安定性等を図る必要があるが、このような回線としては、一般に、同軸ケーブルが用いられている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、同軸ケーブルは柔軟性に乏しく、断面円形であるため、配線の取り回し上作業性が悪い。そこで、作業性のよいフレキシブルフラットケーブル(FFC)が同軸ケーブルに代わって使用されるが、フレキシブルフラットケーブルにおいては、高周波化に伴うクロストークや反射減衰等の対策が必要になる。そこで、これらの対策としては、フェライトコア等の金属を、フレキシブルフラットケーブルの被覆材に内蔵させたり(特許文献2参照),コネクター部等に部分的に設けたりすることが提案されている。
【特許文献1】特開2003−51220号公報
【特許文献2】特開2002−313146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種のフレキシブルフラットケーブルには、配線の取り回し上等の作業性の良さだけでなく、配線としてのコストパフォーマンスが要求されている。しかしながら、上記のようにフェライトコアチップ等の高価な材料をフレキシブルフラットケーブルに使用すると、コストが高くなる等の問題が発生する。
【0006】
ところで、伝送ケーブルには、1つの信号を1本の回線で伝送するシングルエンド伝送方式と、1つの信号を2本の線で伝送する差動伝送方式の2種類の伝送方法があり、これらに対応して、特性インピーダンスの要求も、一般に、50Ω(シングルエンド伝送方式)と、100Ω(差動伝送方式)の2種類がある。特性インピーダンス値は、機器の設計により50Ωか100Ωかが決まるが、差動伝送方式は、ノイズに強く、高周波数帯を利用する高速伝送への対応が容易であり、低消費電力であるため、今後は、100Ωの差動伝送方式が主流になるものと推量される。差動伝送方式が100Ωの特性インピーダンス値を要求するのは、2本の線で信号を伝送し並列回路となることから、1本50Ωの線が2本セットになるためである。
【0007】
伝送ケーブルは、導体間ピッチ(P:導体からつぎの導体の同部位までの距離)等の仕様によりインピーダンス対応の難易度が異なるが、上記したように、現状では低い特性インピーダンス値を100Ωに向上させることが望まれている。特性インピーダンス(Z0 )を求める式としては、例えば、「Z0 =√(L/C)=1/4√(μ0 /(ε0 ×εr ))×(h/W)、L:インダクタンス、C:キャパシタンス、μ0 :真空の透磁率、ε0 :真空の誘電率、εr :比誘電率、h:誘電体の厚み、W:導体の幅」があげられる。この式より、上記フレキシブルフラットケーブルの絶縁テープにおいては、誘電率は小さいほど、厚みは厚いほど、特性インピーダンス値を上げることができることとなる。
【0008】
なお、フレキシブルフラットケーブルには、片面シールドタイプと両面シールドタイプとがあり、特性インピーダンスを求める式が異なる。上記特性インピーダンス(Z0 )の式は、両面シールドタイプのものであるが、片面シールドタイプであっても、絶縁テープの誘電率は小さいほど、厚みが厚いほど特性インピーダンス値が上がることは、両面シールドタイプと同様である。
【0009】
しかしながら、絶縁テープの厚みを上げることに関しては、厚くなることによる柔軟性の欠如や端末のコネクターとの嵌合性悪化、また、配線の取り回し上作業性が悪くなる等、多くの副次的問題が発生するため、厚みをできるだけ上げることなく、誘電率の低下を図ることが必要となる。
【0010】
また、特性インピーダンスを安定させるためには、絶縁テープ全体が一体化していることが要求される。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、高周波化・伝送速度の高速化に伴うフレキシブルフラットケーブルの問題を、フェライトコアチップ等を用いず克服でき、安価でしかも従来の絶縁テープ以上の性能および作業性に優れたフレキシブルフラットケーブル用絶縁テープおよびその製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明は、接着剤層と、絶縁層と、必要に応じて、これら両者の間に介在するアンカーコート層とを備え、上記接着剤層がポリオレフィン系樹脂接着剤からなり、上記絶縁層が比重0.6〜1.2のポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂の発泡体からなり、上記各層間が密着して実質的に一体化しているフレキシブルフラットケーブル用絶縁テープを第1の要旨とし、絶縁層となるポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂の発泡体からなるフィルム材を準備するとともに、接着剤層となるポリオレフィン系樹脂のフィルム材を準備し、両者をドライラミネート製法を用い、必要に応じて、アンカーコート層形成材料を介し、貼り合わせる上記フレキシブルフラットケーブル用絶縁テープの製法を第2の要旨とする。
【0013】
すなわち、本発明者らは、高周波化・伝送速度の高速化に伴う問題が生じず、かつ、安価なフレキシブルフラットケーブルを得るため、絶縁テープの材料や構造を中心に鋭意研究を重ねた。そして、まず、低誘電率化を図るため、絶縁テープの絶縁層を発泡体にすることを想起した。これにより低誘電率化はある程度実現できたものの、未だ不充分であり、また、特性インピーダンスも満足できる値でないことから、信号の波形変動等の問題が未だ未解決であった。そこで、さらに研究を重ねた結果、絶縁層を所定の比重のポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂の発泡体にすると、所望の低誘電率化、すなわち特性インピーダンスを向上することができ、また、接着剤層をポリオレフィン系接着剤により形成し、層間を密着させ実質的に一体化すると、両層の密着性不足による特性インピーダンスの不連続が生じなくなることを見出し、本発明に到達した。
【0014】
本発明において、実質的に一体とは、各層の界面が略全体に接着していて、空気溜まり等がなく、全体が1つのものとなっていることをいう。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明のフレキシブルフラットケーブル用絶縁テープは、ポリオレフィン系樹脂接着剤からなる接着剤層と、比重0.6〜1.2のポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂の発泡体からなる絶縁層と、必要に応じて、これら両者の間に介在するアンカーコート層とを備え、上記各層間が密着して実質的に一体化している。したがって、所望の低誘電率化が実現され、また、特性インピーダンスの整合性を図ることができる。
【0016】
また、上記接着剤層が、金属水和物系難燃剤、ハロゲン系難燃剤およびアンチモン系難燃剤からなる群から選ばれた少なくとも1つの難燃剤を含有する場合には、本発明のフレキシブルフラットケーブル用絶縁テープの難燃性が効果的に向上するようになる。
【0017】
さらに、上記フレキシブルフラットケーブル用絶縁テープの厚みが、55〜350μmである場合には、柔軟性や作業性に優れるようになる。
【0018】
そして、絶縁層となるポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂の発泡体からなるフィルム材と、接着剤層となるポリオレフィン系樹脂のフィルム材とを、ドライラミネート製法を用い、アンカーコート層形成材料を介して貼り合わせることにより本発明のフレキシブルフラットケーブル用絶縁テープを作製する場合には、低誘電率であり、特性インピーダンスの整合性に富んだ本発明に係るフレキシブルフラットケーブル用絶縁テープを容易に得ることができるようになる。
【0019】
また、上記接着剤層となるポリオレフィン系樹脂のフィルムが、インフレーション製法により形成されている場合には、本発明のフレキシブルフラットケーブル用絶縁テープを一層効率的に得ることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0021】
本発明のフレキシブルフラットケーブル用絶縁テープ(以下「絶縁テープ」と略す)は、例えば、図1に示すように、ポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂の発泡体からなるフィルム状ないしシート状の絶縁層1の片面に、アンカーコート層2が形成され、さらにこのアンカーコート層2の表面に、ポリオレフィン系樹脂からなる接着剤層3が形成されて構成されている。本発明の絶縁テープは、使用に際して接着剤層のホットメルト接着性等を利用し、目的物に接着される。
【0022】
上記絶縁層は、低誘電率化を主眼とし、かつ、成形体としての強度および経済性の点から、比重0.6〜1.2のポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂の発泡体から形成される。比重が上記下限値未満であると、成形体としての強度が不足して、層形成が困難となり、逆に、上記上限値を超えると、絶縁層としての誘電率を所望の値にすることが困難になるためである。この比重は、上記発泡体の発泡倍率と相関するものであり、比重の測定は、通常、本発明の絶縁テープから、接着剤層、アンカーコート層を除去して絶縁層単体とし、これを水中置換法(JIS K6758)により測定することが行われる。
【0023】
上記絶縁層の発泡体を形成するポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセンなどの各オレフィンの単独重合体やこれらモノマー同士、あるいはこれらモノマーと非オレフィン系モノマーとの共重合体があげられる。ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン、線状ポリエチレン(エチレン−α−オレフィン共重合体)、高密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のプロピレン系樹脂、ポリ(4 −メチルペンテン−1)、ポリ(ブテン−1)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸変性ポリエチレン等の酸変性ポリオレフィン系樹脂、4−フッ化エチレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも好ましくは、耐熱性の点から、ポリプロピレンである。
【0024】
また、上記絶縁層の発泡体を形成するポリエステル系樹脂としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリグリコール酸、ポリ(L−乳酸)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート/ヒドロキシバリレート)、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネート/乳酸、ポリブチレンサクシネート/カーボネート、ポリブチレンサクシネート/テレフタレート、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリテトラメチレナジペート/テレフタレート、ポリブチレンサクシネート/アジペート/テレフタレート等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも好ましくは、コストの点からPETである。
【0025】
また、上記絶縁層は、必要に応じて、フッ素系材料を含有してもよいし、フッ素系材料で被覆してもよい。すなわち、絶縁層のポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂において、上記樹脂を構成する少なくとも1モノマー成分の分子構造中に少なくとも1個のフッ素元素を有していてもよいし、上記ポリオレフィン系等の樹脂にフッ素系樹脂とを併せて用いてもよい。この場合、フッ素系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂100重量部(以下「部」と略す)に対して、1〜20部用いられる。
【0026】
上記フッ素系樹脂としては、例えば、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルパーフルオロビニルエ−テル共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロエチルパーフルオロビニルエ−テル共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロプロピルパーフルオロビニルエ−テル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロメチルパーフルオロビニルエ−テル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロエチルパーフルオロビニルエ−テル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロプロピルパーフルオロビニルエ−テル共重合体等があげられる。これらは単独でもしくは併せて用いられる。
【0027】
本発明の絶縁層を形成するポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂の発泡体は、通常、モノマーを用いて上記樹脂を合成後、所定の粘度域において、物理的ないし化学的発泡剤を所定量添加して、比重を0.6〜1.2の範囲に発泡させ、それを常法に従いシート状ないし薄いフィルム状に形成する。このシート,フィルムは、その外表面に気泡のないスキン層が形成されていてもよい。このような発泡樹脂からなるフィルムとしては、市販のポリプロピレン発泡フィルム(サニパール、三井ファブロ社製)や、ポリエチレンテレフタレート発泡フィルム(レクリスパー、東洋紡社製)等があげられる。
【0028】
上記化学的発泡剤としてアゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、p−トルエンスルホニルヒドラジド等の有機系のもの、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム等の無機系発泡剤があげられる。物理的発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、水、炭酸ガス、窒素等の発泡体樹脂に対して不活性な無機ガスや、メタノール、エタノール、トルエン、キシレン等の低沸点化合物があげられる。
【0029】
また、絶縁層の厚みは、25〜250μmの範囲内が好ましく、特に好ましくは、38〜100μmの範囲内である。
【0030】
上記アンカーコート層の形成材料であるアンカーコート剤としては、特に限定はなく、例えば、汎用のウレタン系アンカーコート剤や、アルコキシチタン化合物(アルキルチタネート),チタンキレート化合物等の有機チタン化合物等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なお、上記アンカーコート層は、絶縁層と接着剤層の接着性を補助的に向上させるために形成されるものであるが、接着剤層の接着性が充分な場合は、上記アンカーコート層は省略しても差し支えない。
【0031】
また、上記アンカーコート層の厚みは、1〜5μmの範囲内が好ましく、特に好ましくは2μm程度である。
【0032】
本発明に係る接着剤層を形成する接着剤としては、ポリオレフィン系接着剤があげられる。上記ポリオレフィン系接着剤としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセンなどの各オレフィンの単独重合体やこれらモノマー同士、あるいはこれらモノマーと非オレフィン系モノマーとの共重合体があげられる。ポリオレフィン系接着剤の具体例としては、低密度ポリエチレン、線状ポリエチレン(エチレン−α−オレフィン共重合体)、高密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のプロピレン系樹脂、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリ(ブテン−1)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、およびこれらに無水マレイン酸変性(処理)を行った酸変性ポリオレフィン系樹脂等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0033】
特に、接着剤層のポリオレフィン系接着剤としては、例えば、酸グラフト変性低密度ポリエチレン等の酸グラフト変性ポリオレフィン系樹脂を主成分とすることが、低誘電率化およびコストの点から好ましい。ここで、主成分とは、接着剤全体の過半を占める成分のことをいい、全体が主成分のみからなる場合を含む趣旨である。
【0034】
また、上接着剤層は、必要に応じて、フッ素系材料を含有してもよいし、フッ素系材料で被覆してもよい。すなわち、接着剤層のポリオレフィン系樹脂において、上記樹脂を構成する少なくとも1モノマー成分の分子構造中に少なくとも1個のフッ素元素を有していてもよいし、上記ポリオレフィン系樹脂にフッ素系樹脂とを併せて用いてもよい。この場合、フッ素系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂100部に対して、1〜20部用いられる。
【0035】
上記フッ素系樹脂としては、例えば、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルパーフルオロビニルエ−テル共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロエチルパーフルオロビニルエ−テル共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロプロピルパーフルオロビニルエ−テル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロメチルパーフルオロビニルエ−テル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロエチルパーフルオロビニルエ−テル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロプロピルパーフルオロビニルエ−テル共重合体等があげられる。これらは単独でもしくは併せて用いられる。
【0036】
上記接着剤層には、上記ポリオレフィン系樹脂接着剤に加えて、金属水和物系難燃剤、ハロゲン系難燃剤およびアンチモン系難燃剤からなる群から選ばれた少なくとも1つの難燃剤を含有していてもよい。
【0037】
金属水和物系難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム〔Mg(OH)2 〕、水酸化アルミニウム〔Al(OH)3 〕、ハイドロタルサイト等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0038】
ハロゲン系難燃剤としては、例えば、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリフェニル、パークロルペンタシクロデカン、無水ヘット酸、クロルエンド酸などの塩素系化合物、およびテトラブロモエタン、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモビフェニルエーテル、テトラブロモ無水フタール酸、ポリジブロモフェニレンオキサイド、ヘキサブロモシクロデカン、臭化アンモニウムなどの臭素系化合物など、ハロゲン元素を含む有機または無機化合物があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0039】
アンチモン系難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、三塩化アンチモン、五酸化アンチモン、ホウ酸アンチモン、モリブデン酸アンチモン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0040】
上記難燃剤の含有量は、接着剤層の主要成分であるポリオレフィン系樹脂(ベースレジン)100部に対して、50〜200部の範囲内が好ましく、特に好ましくは80〜150部の範囲内である。すなわち、上記難燃剤の含有量が上記下限値未満であると、難燃効果が小さくなる傾向がみられ、逆に、上記上限値を超えると、難燃剤により絶縁層の物性が低下したり、コストが高くなりすぎる傾向にあるからである。
【0041】
接着剤層の厚みは、20〜100μmの範囲内が好ましく、特に好ましくは、30〜60μmの範囲内である。すなわち、上記下限値未満であると、導体埋まり性が悪くなる傾向がみられ、逆に、上記上限値を超えると、作業性に劣る傾向がみられるからである。
【0042】
接着剤層は、例えば、上記各成分材料を配合し、必要に応じて顔料等の添加剤および有機溶剤を加え、これらを2軸混練機、ニーダー等の混練機を用いて混練することにより調製し、それを絶縁層に直接塗布することにより形成することができる。この場合、接着剤層が乾燥してフィルム状ないしシート状になる前に、その粘着力を利用して目的物に接着することができる。また、調製した接着剤層形成材料をインフレーション製法等によりフィルム化することもできる。フィルム化した場合には、絶縁層との密着一体化を図るため、熱融着等を行う、もしくは両者間にアンカーコート層が設けられる。
【0043】
本発明の絶縁テープ(図1参照)は、例えば、つぎのようにして作製することができる。まず、絶縁層形成材料の上記樹脂組成物を、比重0.6〜1.2の範囲に発泡させ、それを用いて、常法によりフィルム状の絶縁層を形成するとともに、接着剤層形成材料の上記樹脂組成物を用いて、インフレーション製法によりフィルム状の接着剤層を形成する。つぎに、絶縁層表面に、ウレタン系アンカーコート剤等のアンカーコート剤を、グラビアコート法等により塗布してアンカーコート層を形成し、その表面にフィルム化した接着剤層を重ね合わせ、アンカーコート層形成材料を介して、絶縁層および接着剤層とをドライラミネート製法により貼り合わせる。このようにして、図1に示したような、絶縁層1の片面に、アンカーコート層2が形成され、さらにこのアンカーコート層2の表面に、接着剤層3が形成されてなるフレキシブルフラットケーブル用絶縁テープを作製することができる。なお、上記絶縁テープは、3層構造であるが、絶縁層のアンカーコート層と接しない面にトップコート層等の他の層を成形したもの等、3層以外の層構造とすることも可能である。
【0044】
また、本発明の絶縁テープは、上記のドライラミネート製法に限定されるものではなく、例えば、溶液コーティング製法、Tダイスを用いたTダイス押出しラミネーション製法、共押出し製法等があげられる。
【0045】
上記のようにして得られた本発明の絶縁テープの厚みは、55〜350μmの範囲内が好ましく、特に好ましくは、55〜170μmの範囲内である。すなわち、上記下限値未満であると、所望の低誘電率化に劣る傾向がみられ、逆に、上記上限値を超えると、柔軟性や作業性に劣る傾向がみられるからである。
【0046】
本発明の絶縁テープでは、1MHz(25℃±10℃)の誘電率は2.8以下であることが好ましく、さらに好ましくは2.7以下であり、特に好ましくは1.8〜2.4の範囲である。すなわち、上記上限値を超えると、所望の特性インピーダンス値が得られない傾向にあるからである。
【0047】
また、本発明の絶縁テープでは、1MHz(25℃±10℃)の誘電正接は、0.010以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.009〜0.004の範囲である。すなわち、上記上限値を超えると、所望の特性インピーダンス値が得られない傾向にあるからである。
【0048】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0049】
(I)まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0050】
《接着剤層形成材料》
〔ポリオレフィン系接着剤〕
マレイン酸変性ポリエチレン、アドマーNF550(三井化学社製)
【0051】
〔ポリエステル系接着剤(比較例用)〕
共重合ポリエステル、パイロンGM440(東洋紡社製)
【0052】
〔臭素系難燃剤〕
ファイヤマスター2100(グレート・レイクス・ケミカル社製)
【0053】
〔塩素系難燃剤〕
デクロランプラス25(オキシデンタル・ケミ社製)
【0054】
〔その他の難燃剤〕
三酸化アンチモン
【0055】
〔顔料〕
二酸化チタン
【0056】
《絶縁層形成材料》
〔発泡ポリオレフィン系樹脂〕
ポリプロピレン、サニパール(三井ファブロ社製)
【0057】
〔発泡ポリエステル系樹脂〕
ポリエチレンテレフタレート、レクリスパー(東洋紡社製)
【0058】
〔非発泡ポリエステル系樹脂(比較例用)〕
ポリエチレンテレフタレート、ルミラー(東レ社製)
【0059】
そして、上記に示す各成分および材料を、下記の表1に示す割合で配合し、混練機を用いて混練することにより接着剤層形成材料を調製した。そして、調製した接着剤層成形材料をインフレーション製法によりフィルム化した。この接着剤フィルムの厚み,およびそれを試料とし、下記に示す方法にしたがって誘電率および誘電正接を求め、下記の表1に併せて示した。
【0060】
【表1】

【0061】
また、上記に示す材料を用いて、下記の表2に示す絶縁層(フィルム)を準備した。このフィルムの比重,厚み,およびそれを試料とし、下記に示す方法にしたがって誘電率および誘電正接を求め、下記の表2に併せて示した。表2において、「○」印はその材料を用いたことを示し、「−」印は用いなかったことを示す。
【0062】
【表2】

【0063】
〔誘電率の測定〕
測定装置:インピーダンス・マテリアルアナライザーHP−4291B(アジレントテクノロジー社製)
測定条件:絶縁テープ厚みが、上記装置における測定精度厚み(0.5mm以上必要)より薄いため、得られたテープを重ねて0.5mmの厚みとして、室温(25℃)下において1MHzにおける誘電率を測定した。
【0064】
〔誘電正接の測定〕
誘電正接は、上記測定装置および測定条件において、誘電率と同時に測定した。
【0065】
(II)つぎに、上記絶縁層フィルム、接着剤層フィルムを用い、絶縁テープを作製した。
【0066】
〔実施例1〕
まず、絶縁フィルムとして、上記絶縁層a(厚み50μm)を準備し、この絶縁層aの表面にアンカーコート剤(ウレタン系アンカーコート剤、TM260(主剤)/CAT−10L(硬化剤)、東洋インキ社製)を、グラビアコート法により塗布し、アンカーコート層(厚み2μm)を形成した。つぎに、このアンカーコート層の表面にインフレーション製法によりフィルム化した接着剤層A(厚み30μm)を重ね合わせ、アンカーコート層を介して、絶縁層aおよび接着剤層Aとをドライラミネート製法により貼り合わせた。このようにして、絶縁層a(厚み50μm)の表面にアンカーコート層(厚み2μm)、接着剤層A(厚み30μm)が順次形成されてなる絶縁テープを作製した。
【0067】
〔実施例2〜8、比較例1〜7〕
接着剤の種類および絶縁層の種類を、後記の表3〜5に示す組み合わせに変更する以外は、実施例1と同様にして、絶縁テープを作製した。
【0068】
このようにして得られた実施例品および比較例品の絶縁テープを用いて、上記に示す測定方法にしたがって誘電率および誘電正接を測定し、その測定結果を後記の表3〜5に示すとともに、下記に示す評価方法にしたがって誘電率および誘電正接を評価し、その評価を後記の表3〜5に併せて示した。
【0069】
〔誘電率〕
上記各絶縁テープを用いて、前記に示す条件にしたがって、誘電率の評価を行った。評価は、1MHzの誘電率が2.8以下のものを合格「○」、2.8を超えるものを不合格「×」とした。
【0070】
〔誘電正接〕
上記各絶縁テープを用いて、前記に示す条件にしたがって、誘電正接の評価を行った。評価は、1MHzの誘電正接が0.010以下のものを合格「○」、0.010を超えるものを不合格「×」とした。
【0071】
【表3】

【0072】
【表4】

【0073】
【表5】

【0074】
上記結果から、実施例品は、いずれも低誘電率および誘電正接に優れていることがわかる。このように実施例品は、低誘電率であり、誘電正接が小さいものであることから、この絶縁テープをフレキシブルフラットケーブルに用いた場合には、特性インピーダンスを向上させることができ、絶縁破壊等の障害が生じにくく、高周波を利用する際の材料に適するものである。
【0075】
これに対して、比較例品は、いずれも誘電率および誘電正接に劣ることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明のフレキシブルフラットケーブル用絶縁テープの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0077】
1 絶縁層
2 アンカーコート層
3 接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤層と、絶縁層と、必要に応じて、これら両者の間に介在するアンカーコート層とを備え、上記接着剤層がポリオレフィン系樹脂接着剤からなり、上記絶縁層が比重0.6〜1.2のポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂の発泡体からなり、上記各層間が密着して実質的に一体化していることを特徴とするフレキシブルフラットケーブル用絶縁テープ。
【請求項2】
上記フレキシブルフラットケーブル用絶縁テープの1MHzの誘電率が、2.8以下である請求項1記載のフレキシブルフラットケーブル用絶縁テープ。
【請求項3】
上記接着剤層のポリオレフィン系樹脂接着剤が、酸グラフト変性ポリオレフィン系樹脂を主成分とする請求項1または2記載のフレキシブルフラットケーブル用絶縁テープ。
【請求項4】
上記接着剤層が、金属水和物系難燃剤、ハロゲン系難燃剤およびアンチモン系難燃剤からなる群から選ばれた少なくとも1つの難燃剤を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のフレキシブルフラットケーブル用絶縁テープ。
【請求項5】
その厚みが、55〜350μmである請求項1〜4のいずれか一項に記載のフレキシブルフラットケーブル用絶縁テープ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のフレキシブルフラットケーブル用絶縁テープの製法であって、絶縁層となるポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂の発泡体からなるフィルム材を準備するとともに、接着剤層となるポリオレフィン系樹脂のフィルム材を準備し、両者をドライラミネート製法を用い、必要に応じて、アンカーコート層形成材料を介し、貼り合わせることを特徴とするフレキシブルフラットケーブル用絶縁テープの製法。
【請求項7】
上記接着剤層となるポリオレフィン系樹脂のフィルムが、インフレーション製法により形成されている請求項6記載のフレキシブルフラットケーブル用絶縁テープの製法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−251261(P2008−251261A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88933(P2007−88933)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】