説明

フレキシブルプリント基板

【課題】複数のフレキシブルプリント基板が密集して配線される電子機器内部およびモジュール内部において、フレキシブルプリント基板同士が重なった状態で配置されている場合に、基板同士の重なり部分で発生する配線間のクロストークが低減する。
【解決手段】ベースフィルム10の上に、配線パターンが形成された導体層11が積層されており、導体層の上にカバーレイフィルム12が積層されている。フレキシブルプリント基板の形状は、配線方向においてウェーブ形状を持つことを特徴とする。フレキシブルプリント基板が配線方向においてウェーブ形状を持つことにより、他のフレキシブルプリント基板または配線基板が近接し、フレキシブルプリント基板同士またはフレキシブルプリント基板と配線基板とが重なって配置されている場合にも、配線同士が近接する区間が短くなるため、配線間クロストークの影響を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ、デジタルカメラ、および携帯電話などの内部配線に用いられるフレキシブルプリント基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスクドライブ用の光ピックアップ、ならびにデジタルカメラおよび携帯電話などの内部配線において、屈曲可能で引き回しの自由度に優れているフレキシブルプリント基板(「フレキシブル配線板」とも呼ばれる)が用いられている。
【0003】
前述の電子機器内においては、フレキシブルプリント基板で接続する素子および電子基板の小型化および集積化にともない、複数のフレキシブルプリント基板が密集して配線されている。そのため、フレキシブルプリント基板同士が重なった状態で配置されることになり、重なり部分で信号間のクロストークが発生するという問題がある。
【0004】
これを解決するための手段として、例えば、両面フレキシブルプリント基板を採用し、信号が重なりあう面をグランド面(シールド面)とすることによってクロストークを回避する手法が用いられてきた。しかし、両面フレキシブルプリント基板は、片面フレキシブルプリント基板に比べて、コストが割高になる課題を有している。さらに、両面フレキシブルプリント基板は、片面フレキシブルプリント基板と比較してより大きい厚さを有するため、屈曲性が悪くなるという課題を有している。
【0005】
信号間のクロストークを回避するために、例えば、フレキシブル配線板の本体部の表裏面を覆うカバー部を折り曲げ可能に本体部と一体に形成し、各カバー部にパターンを形成するとともにそのパターンを本体部に形成されたアース線用パターンに接続し、前記カバー部を本体部の表裏両面を覆う状態に折り曲げて本体部に接着させるフレキシブル配線板が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この配線板は、配線部分のシールドを確実に行うとともに、強度を高め、かつ作成に余分な工程を設ける必要がないものである。
【0006】
また、同一のフレキシブルプリント基板内における隣接する配線パターンのうち、一方の配線パターンの形状を周期的に変えて、配線同士が近接する区間を短くし、配線パターン間でのクロストークを低減するものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。図9は、前記特許文献2に記載されたフレキシブルプリント基板の構成を示す上面図であり、互いに隣り合う部分を有するふたつの配線90、91を示している。図9に示すように、配線90に対して、それに隣接する配線91は、その形状が周期的に変化し、配線同士が近接する区間を短くするように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−263495号公報
【特許文献2】特開2003−258394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1の構成のフレキシブル配線板は、両面フレキシブルプリント基板と同様、カバー部を折り曲げた後の基板の厚みが増すために、屈曲性が悪くなるという課題を有している。また、前記特許文献2の配線基板は、一方の配線91の形状を周期的に変化させるために、配線91を配置する所定の寸法の領域を確保する必要がある。そのため、フレキシブルプリント基板全体の幅が広くなり、配線性が悪くなる(即ち、フレキシブルプリント基板全体の配線幅が決められている場合に、配置することが可能な配線の本数が少なくなる)という課題を有している。さらに、フレキシブルプリント基板の幅に応じて、これに接続されるコネクタの幅を広くする必要があるため、コネクタがプリント基板上に実装される場合に、部品配置面積が大きくなるという課題を有している。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、安価な片面フレキシブルプリント基板を用いて、屈曲性および配線性を悪化させることなく、基板同士の重なりによるクロストークの影響を緩和し、安定した信号伝送を可能にするフレキシブルプリント基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明は、ベースフィルムの上に、配線パターンが形成された導体層が積層されており、導体層の上にカバーレイフィルムが積層されたフレキシブルプリント基板であって、フレキシブルプリント基板の配線方向においてウェーブ形状を持つことを特徴とするフレキシブルプリント基板を提供する。ここで、「配線方向」とは、フレキシブルプリント基板において、配線がフレキシブルプリント基板の一つの端部から他の端部に延びる方向を指す。本構成によれば、本発明のフレキシブルプリント基板が、他のフレキシブルプリント基板または配線基板(ここでいう配線基板は、フレキシブルプリント基板ではない配線基板(例えば、リジッド配線基板およびリジッド−フレックス配線基板等)を指す)と重なった状態で配置されている場合にも、本発明のフレキシブルプリント基板の配線と前記他方の基板の配線とが近接する区間(距離)が短くなるため、配線間クロストークの影響を低減することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフレキシブルプリント基板は、複数のフレキシブルプリント基板が密集して配線されている電子機器またはモジュール内において、他のフレキシブルプリント基板または配線基板と重なった状態で配置されている場合にも、ウェーブ形状を持つことによって、配線同士が近接する区間が短くなる。そのため、本発明のフレキシブルプリント基板を用いると、他のフレキシブルプリント基板または配線基板との重なり部分における配線間クロストークの影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1a】本発明の実施の形態1のフレキシブルプリント基板の構成の一例を示す斜視図
【図1b】本発明の実施の形態1のフレキシブルプリント基板と他の配線基板との関係を示す、フレキシブルプリント基板の配線方向の断面図
【図2】本発明の実施の形態1のフレキシブルプリント基板の構成の一例を示す配線方向の側面図
【図3】本発明の実施の形態1のフレキシブルプリント基板の構成の別の一例を示す配線方向の側面図
【図4】本発明の実施の形態1のフレキシブルプリント基板の構成のさらに別の一例を示す配線方向の側面図
【図5】本発明の実施の形態1のフレキシブルプリント基板の製造方法の一例を示す配線方向の側面図
【図6】本発明の実施の形態2のフレキシブルプリント基板の構成を示す配線方向の側面図
【図7a】本発明の実施の形態2のフレキシブルプリント基板の製造方法の一例を示す上面図
【図7b】図7aの線A―A’に沿って切断した幅方向の断面図
【図7c】図7aの線B―B’およびC―C’に沿って切断した配線方向の断面図
【図8】本発明の実施の形態3のフレキシブルプリント基板の構成を示す上面図
【図9】従来のフレキシブルプリント基板であって、隣接するふたつの配線の構成を示す上面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1aは、本発明の実施の形態1のフレキシブルプリント基板の構成を示す斜視図である。図示したフレキシブルプリント基板100は、ベースフィルム10の上に、配線パターンが形成された導体層11が積層されており、導体層11の上にカバーレイフィルム12が積層された構成を有する。フレキシブルプリント基板の形状は、配線方向においてウェーブ形状を持つことを特徴とする。配線方向は、細幅のテープ状のフレキシブルプリント基板の場合、幅に対して垂直であり、かつ主表面に対して平行な方向(即ち、長さ方向)である。フレキシブルプリント基板が配線方向においてウェーブ形状を持つことにより、他のフレキシブルプリント基板または配線基板が近接し、したがって2つの基板の配線同士が近接している場合に、配線同士が近接する区間が短くなるため、配線間クロストークの影響を低減することができる。
【0015】
さらに、フレキシブルプリント基板が複雑に折り曲げられて配置されている場合、および/または可動部品に接続されている場合、フレキシブルプリント基板の一部分のみが、他のフレキシブルプリント基板のシールド部分または筐体の金属部分と接触する、またはこれに近接することが起こりうる。その場合には、接触もしくは近接している一部分のみのインピーダンスが低下するため、それ以外の部分とのインピーダンス不整合が発生し、伝送線路での反射による信号の伝送特性の劣化が発生する。本発明のフレキシブルプリント基板はウェーブ形状を有することによって、前記一部分が、前記他のフレキシブルプリント基板のシールド部分または前記筐体の金属部分と、接触もしくは近接する区間が短くなるため、前記一部分におけるインピーダンスの低下を抑制することができる。
【0016】
本発明のフレキシブルプリント基板と、他のフレキシブルプリント基板または配線基板との関係を、図面を使ってさらに説明する。図1bは、図1aに示すフレキシブルプリント基板100の配線方向の断面、および他のフレキシブルプリント基板または配線基板101(以下、「他の基板101」と呼ぶ)の断面を示す。図1bにおいては、理解の容易のため、基板の詳細な層構成は省略している。図において、一点鎖線は、本実施の形態のフレキシブルプリント基板100と他の基板101との間の距離の平均に相当する。この一点鎖線に、ウェーブ形状を有しないフレキシブルプリント基板が位置した場合と比較して、本実施の形態のフレキシブルプリント基板100は、一点鎖線より上に位置する部分では、他の基板101から遠くなる。よって、本実施の形態のフレキシブルプリント基板100の配線と、他の基板101の配線との間でクロストークが生じにくくなる。また、一点鎖線よりも下の部分においても、本実施の形態のフレキシブルプリント基板100と他の基板101との間の距離が、最も短くなる箇所はウェーブの谷部分である。よって、フレキシブルプリント基板100がウェーブ形状を有することによって、前述したように、基板同士の接触または近接による影響が有効に抑制される。
【0017】
フレキシブルプリント基板100のウェーブ形状が図示するように規則的な正弦波である場合、その振幅sおよび波長wは、フレキシブルプリント基板100に設けられた配線の幅d(上側から見たときの幅)、および当該配線を経由して伝達される信号のパルスの幅λ、ならびにフレキシブルプリント基板100と他の基板101との間の平均距離kを考慮して決定される。配線間の距離が広がるとクロストークの影響が低減する。具体的には、振幅sは、kが3d〜5dとなるように設定することが好ましい。また、配線同士が近接する区間が短くなるとクロストークの影響が低減する。具体的には、配線同士が近接する区間の距離は、λの1/4以下であることが好ましい。振幅sをkが3dとなるように設定した場合に、一周期の正弦波において、配線同士が近接する区間の距離(図において、一点鎖線より下に位置する部分が存在する距離)は最大でもwの1/2となる。よって、波長wは、λの1/2以下となるように設定することが好ましい。
【0018】
本実施の形態のフレキシブルプリント基板は、図1bに示すように他の基板と近接して配置されたときに、当該フレキシブルプリント基板の配線により伝送される信号と、当該他の基板の配線により伝送される信号との間で生じるクロストークを有効に減少させる。したがって、本発明は、本発明のフレキシブルプリント基板(以下に説明する実施の形態のものを含む)と、その厚さ方向において本発明のフレキシブルプリント基板と対向するように配置された他のフレキシブルプリント基板または配線基板とを含む、配線基板構造体を提供する。本発明の配線基板構造体は、フレキシブルプリント基板同士またはフレキシブルプリント基板と配線基板との間で生じる信号間のクロストークが生じにくいものとなる。
【0019】
図2は、本発明の実施の形態1のフレキシブルプリント基板の構成の別の一例を示す配線方向の側面図である。図2に示すように、本発明のフレキシブルプリント基板において、ウェーブの周波数を一定ではなく、ランダムにしてもよい。ウェーブにおいて一定の周波数が連続する場合には、その周波数は伝送する信号の共振周波数となることがある。その場合、その周波数における伝送特性の劣化が発生する。ウェーブの周波数をランダムにすることで、共振による伝送特性の劣化を回避することができるため、安定した信号伝送が可能となる。
【0020】
図3は、本発明の実施の形態1のフレキシブルプリント基板の構成のさらに別の一例を示す長さ方向の側面図である。図3に示すように、本発明のフレキシブルプリント基板において、ウェーブの振幅を一定ではなく、ランダムにしてもよい。ウェーブの振幅をランダムにすることで、本発明のフレキシブルプリント基板が他の基板と近接して配置されたときに、配線パターン同士が近接する区間がさらに短くなる。即ち、図3において、最も深い谷の部分(図においてSmで示す部分)が他の配線基板と最も近接し、他の谷の部分はSmよりも他の配線基板から遠くに位置することとなる。したがって、信号間クロストークの影響をさらに低減することができる。同様に、フレキシブルプリント基板の一部分のみが、他のフレキシブルプリント基板のシールド部分または筐体の金属部分と、接触もしくは近接したとしても、シールド部分や筐体の金属部分と接触もしくは近接する部分をさらに減らすことができる。よって、前記一部分におけるインピーダンスの低下をさらに抑制することができる。
【0021】
図4は、本発明の実施の形態1におけるフレキシブルプリント基板の構成のさらにまた別の一例を示す長さ方向の側面図である。図4に示すように、本発明のフレキシブルプリント基板においては、ウェーブ形状を有する部分Waの間に、フレキシブルプリント基板の厚さ方向に対して垂直となる面を有する部分f(この部分を便宜的に「フラット部分」とも呼ぶ)を形成してもよい。ウェーブ形状を有する部分とフラット部分とに分けて、フレキシブルプリント基板におけるウェーブの発生頻度(即ち、山部および谷部の数)を減らすことにより、他の基板の配線と近接する区間がさらに短くなるため、信号間クロストークの影響をさらに低減することができる。同様に、フレキシブルプリント基板の一部分のみが、他のフレキシブルプリント基板のシールド部分や筐体の金属部分と、接触もしくは近接している場合に、前記シールド部分または金属部分と接触もしくは近接する部分をさらに減らすことができる。よって、前記一部分におけるインピーダンスの低下をさらに抑制することができる。
【0022】
また、フラット部分を形成することで、フレキシブルプリント基板内における配線パターンの総線路長も削減することが可能となり、信号伝送品質の改善が可能となる。フラット部分の長さは、期待する信号間クロストークの影響の低減が確保できる限りにおいて、できるだけ長いほうがよい。
【0023】
以上において説明したように、実施の形態1のフレキシブルプリント基板は、単層フレキシブルプリント基板として提供され、基板全体の厚さは従来のウェーブ形状を有しないもののそれと変わらないので、従来の単層フレキシブルプリント基板同等の屈曲性を維持することを可能にする。
【0024】
次に、本発明の実施の形態1のフレキシブルプリント基板の製造方法の一例について説明する。図5は、本発明の実施の形態1のフレキシブルプリント基板の製造方法の一例を示す配線方向の側面図である。まず、ベースフィルム10の一方の表面の上に、配線パターンが形成された導体層11を形成する。ベースフィルムは、例えば、ポリイミド、ポリエステルのような可撓性を有する樹脂であって、一般的に耐熱性を有する樹脂から成る。ベースフィルムの厚さは、通常、10〜30μmである。導体層11は、ベースフィルム10に、銅のような金属からなる箔を接着し、金属箔をエッチング等によりパターン加工することにより形成される。配線パターンを構成する配線の幅dは、フレキシブルプリント基板の用途にもよるが、通常、50〜200μmである。金属箔をベースフィルムに接着する方法およびパターン加工する方法は、常套的に用いられている方法であってよい。
【0025】
次に、フィルム10と導体層11とからなる積層体の導体層11の表面に、カバーフィルム12を積層する。カバーフィルム12は、通常、ベースフィルム10と同質材料のフィルムに接着剤を塗布したもの、または熱硬化性の液状レジストであり、一般に10〜30μmの厚さを有する。カバーフィルム12は、通常、カバーフィルム12を導体層11の表面に配置し、加熱加圧することにより、導体層11に接着させられる。このとき、図5に示すように、フレキシブルプリント基板にウェーブ形状を持たせるために、凹凸形状を持つ金型50を用いて、加熱プレス加工を実施する。金型50の形状を適宜選択することによって、図2〜図4に示す種々の形状のフレキシブルプリント基板を得ることができる。ウェーブ形状を形成した後のベースフィルム10、導体層11およびカバーフィルム12を含む積層体は、フレキシブルプリント配線基板の用途に応じて適切な寸法を有するように、打ち抜き等の機械加工に付される。前記において説明した処理以外に、必要に応じて、フレキシブルプリント配線基板の製造に応じて実施されている他の処理を実施してよい。
【0026】
ウェーブ形状を付与する方法は、金型を用いた加熱プレスに限定されず、所望のウェーブ形状が得られ、かつその形状がフレキシブルプリント基板の使用中にも維持される限りにおいて、他の方法を用いてよい。例えば、機械的な折りたたみ加工によって、ウェーブ形状を付与してもよい。
【0027】
本発明の実施の形態1のフレキシブルプリント基板が有するウェーブ形状は正弦波に限られず、方形波、台形波、もしくは三角波、またはこれらの組み合わせであってよく、特に制限されない。また、一つのフレキシブルプリント基板において配線方向が2以上存在する場合(例えば、端部が3以上存在する場合、または配線方向がフレキシブルプリント基板の形状に応じて屈曲している場合等)には、少なくとも1つの配線方向において、ウェーブ形状を持つことにより、本発明の効果を得ることができる。
【0028】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2のフレキシブルプリント基板の構成を示す長さ方向の側面図である。図6に示すフレキシブルプリント基板600は、ベースフィルム60a、配線パターンが形成された導体層60bおよびカバーレイフィルム60cからなる配線部60と、ベースフィルム61a、配線パターンが形成された導体層61bおよびカバーレイフィルム61cからなる配線部61を有する。配線部60と配線部61は、同一フレキシブルプリント基板内の互いに隣接した配線部であり、互いに隣接した配線部はどちらも配線方向においてウェーブ形状(図においては正弦波)を有する。このフレキシブルプリント基板600は、配線部60のウェーブ形状の位相に対して配線部61のウェーブ形状は、位相が反転した構成を有している。より詳細には、配線部60の形状を、配線方向をx軸、厚さ方向をy軸とする正弦波であるとみなしたときに、配線部61の形状は、y軸を対称軸として配線部60の鏡映となっている。隣接する配線部同士の位相が反転しているということは、隣接する配線同士の位相が反転しているということを意味する。したがって、実施の形態2の構成によれば、隣接する配線が同位相である場合と比べて、配線同士が近接する区間が短くなり、1つの基板内で隣接する配線間のクロストークを低減することが可能となる。
【0029】
さらに、差動伝送を行うペアの配線パターンにおいては、配線同士の位相が反転していることにより、そのペアの配線はツイストペア構造を形成する。ツイストペア構造の形成は、外部および内部からの電磁ノイズが打ち消しあうことを可能にし、したがって、耐電磁ノイズの観点からもフレキシブルプリント基板の特性を改善することが可能となる。また、実施の形態2のフレキシブルプリント基板も、前記実施の形態1のそれと同様に、それぞれの配線がウェーブ形状を有しているため、他のフレキシブルプリント基板または配線基板が近接し、したがって2つの基板の配線同士が近接している場合に、配線同士が近接する区間が短くなるため、配線間クロストークの影響を低減することができる。
【0030】
同一フレキシブルプリント基板内における隣接配線間クロストークを低減する手法としては、配線間隔をフレキシブルプリント基板の幅方向において広げる方法がある。しかし、この手法を採用すると、フレキシブルプリント基板全体の幅が広くなってしまう。本発明の実施の形態2による隣接配線間クロストーク低減手法は、フレキシブルプリント基板の配線方向における配線の位相反転利用するものなので、フレキシブルプリント基板全体の幅は変わらない。
【0031】
次に、本発明の実施の形態2のフレキシブルプリント基板の製造方法の一例について、図7a〜図7cを参照して説明する。図7aは、本発明の実施の形態2のフレキシブルプリント基板の製造方法の一例を示す上面図であり、当該製造方法において使用する、カバーレイフィルムを積層する前のベースフィルム70およびベースフィルム70に積層された配線パターンを有する導体層71からなる積層体73を示している。図7bは、図7aに示す積層体の上下に金型76が配置された状態で、図7aの線A―A’に沿って切断した幅方向の断面図である。図7cは、図7aに示す積層体の上下に金型76が配置された状態で、図7aの線B―B’およびC−C’に沿って切断した配線方向の断面図である。
【0032】
図7aおよび図7bに示すように、積層体73は、ベースフィルム70上に配線パターンが形成された導体層71が積層されてなる。積層体73には、カバーレイフィルム72を積層する前の段階において、配線パターン(図7aにおいては、簡略化して矩形で示している)を含む配線部74間には、一定の長さの切り込み75が配線方向と平行な方向において等間隔に設けられている。配線部74へのウェーブ形状の付与は、実施の形態1の製造方法と同様に、カバーレイフィルム72を接着させるときに、金型76を用いた加熱プレス加工を実施して行う。このとき、図7b、図7cに示すように、隣接する配線部74同士の位相を配線方向において互いに反転させ、ひいては隣接する配線パターン同士の位相を配線方向において反転させるために、金型76は、隣接する2つの配線部74のうち、一方の配線部74にウェーブ形状を付与する部分の形状の位相が、他方の配線部74にウェーブ形状を付与する部分の形状の位相と反転するように形成される。
【0033】
必要に応じて、カバーレイフィルム72にも切り込みを設けてよい。
【0034】
一つの配線部74の幅は、フレキシブルプリント基板の用途に応じて適宜選択され、特に制限されず、例えば、0.1mm〜1.0mmとすることができる。ベースフィルム70、導体層71およびカバーレイフィルム72の材料等については実施の形態1に関連して説明したとおりであるから、ここではそれらの説明を省略する。また、実施の形態2のフレキシブルプリント基板が有するウェーブ形状は正弦波に限られず、方形波、台形波、もしくは三角波またはこれらの組み合わせであってよく、特に制限されない。また、一つのフレキシブルプリント基板において配線方向が2以上存在する場合(例えば、端部が3以上存在する場合、または配線方向がフレキシブルプリント基板の形状に応じて屈曲している場合等)には、少なくとも1つの配線方向において、ウェーブ形状を持つことにより、本発明の効果を得ることができる。
【0035】
(実施の形態3)
図8は本発明の実施の形態3のフレキシブルプリント基板の構成を示す上面図である。図8のフレキシブルプリント基板80は、実施の形態1で説明した構成(特に図1〜図3で示す構成)を有するフレキシブルプリント基板のウェーブ形状を有する部分の一部または全部を一方の側部にて固定し、固定されたていない部分が展開可能なように構成されている。この構成のフレキシブルプリント基板80は、展開可能な部分を展開することによって、ウェーブ形状を有する部分が、ある一定区間もしくはすべての区間において、固定部となっている一方の側部から他方の側部に向かうにつれて、ウェーブの周期間隔が密から粗へ徐々に変化するような構造を与える。このフレキシブルプリント基板に接続された部品は、展開可能な部分を適宜展開させることにより、展開方向にも移動することができる。
【0036】
また、このフレキシブルプリント基板に接続された部品は、一旦、装置内の所定位置に配置された後も、展開可能な部分が装置内で(例えば他の部品の移動に伴って)展開する又は閉じるように構成されることによって、装置内で移動させることができる。よって、実施の形態3のフレキシブルプリント基板は、従来のフラット形状のフレキシブルプリント基板に接続された部品の移動方向が、フレキシブルプリント基板の折り曲げ可能な方向に制限されていたのに対し、より多くの方向における部品の移動を可能にする、即ち、部品の可動方向を多くする。さらに、この形態のフレキシブルプリント配線基板は、立体配線における配線の自由度が増すという利点を有する。また、実施の形態3のフレキシブルプリント配線基板も、前記実施の形態1のそれと同様に、配線がウェーブ形状を有しているため、他のフレキシブルプリント基板または配線基板が近接し、したがって2つの基板の配線同士が近接している場合にも、配線同士が近接する区間が短くなるため、配線間クロストークの影響を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のフレキシブルプリント基板は、他のフレキシブルプリント基板または配線基板との重なりによる配線間クロストークの低減に優れ、複数のフレキシブルプリント基板が密集して配線される電子機器内部およびモジュール内部の配線に利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
10 ベースフィルム
11 導体層
12 カバーレイフィルム
50 金型
60a、61a ベースフィルム
60b、61b 導体層
60c、61c カバーレイフィルム
60、61 配線部
70 ベースフィルム
71 導体層
72 カバーレイフィルム
73 積層体
74 配線部
75 切り込み
76 金型
80 フレキシブルプリント基板
90、91 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルムの上に、配線パターンが形成された導体層が積層されており、前記導体層の上にカバーレイフィルムが積層されたフレキシブルプリント基板であって、前記フレキシブルプリント基板の配線方向においてウェーブ形状を持つことを特徴とするフレキシブルプリント基板。
【請求項2】
前記ウェーブ形状が、ランダムな周波数を持つことを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルプリント基板。
【請求項3】
前記ウェーブ形状が、ランダムな振幅を持つことを特徴とする請求項1または2に記載のフレキシブルプリント基板。
【請求項4】
前記フレキシブルプリント基板が、ウェーブ形状を有する部分と、前記フレキシブルプリント基板の厚さ方向に対して垂直となる面を有する部分とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフレキシブルプリント基板。
【請求項5】
前記配線パターンは、互いに隣接する2つの配線が、互いに反転した位相を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフレキシブルプリント基板。
【請求項6】
前記ウェーブ形状を有する部分の一部または全部が、前記フレキシブルプリント基板の一方の側部にて固定され、固定されていない部分が展開可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフレキシブルプリント基板。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント基板と、前記フレキシブルプリント基板の厚さ方向において、前記フレキシブルプリント基板と対向するように配置された他のフレキシブルプリント基板または配線基板とを含む、配線基板構造体。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8】
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【図9】
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