説明

フレキシブル配線回路基板の接続構造体及びその接続方法

【課題】フレキシブル配線回路基板を配線回路基板に電気的に接続する際に、接続部を簡単な構造で確実に封止する。
【解決手段】フレキシブル配線回路基板12に第1端子部32を形成する。配線回路基板55に第2端子部34を形成する。配線回路基板55の中心から見て第1端子部32よりも外側で、フレキシブル配線回路基板12に第1封止接合部本体61を形成する。第2端子部34よりも外側で、配線回路基板55に第2封止接合部本体62を形成する。第1端子部32と第2端子部34同士、第1封止接合部本体61と第2封止接合部本体62同士を重ね合せて、両者を無機接合部材で接合する。端子部32,34同士の接合の際に、封止接合部63が形成されるため、別途封止部を設ける必要が無くなる。無機材料からなる封止接合部63により、接着剤からなる封止部と異なり、耐久性及び耐薬品性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル配線回路基板の接続構造体及びその接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットプリンタにおいても高機能化が進み、一部の機種では、オフセット印刷に迫る高画質な解像度、例えば1200dpiの出力解像度が要求されている。高解像度を実現するためには、吐出口やインクを吐出するための圧電素子などのアクチュエータを高密度に実装することが求められる。例えば、特許文献1では、半導体処理技法によりノズルやインク流路、ポンプ室、圧電素子などを有する吐出ダイを製造することにより、吐出口の高密度な実装を実現している。
【0003】
吐出ダイ内には、ポンプ室及び吐出口を有するインク流路が形成され、吐出口は吐出ダイの下面に開口する。吐出ダイの上面には、前記ポンプ室に対応する位置で圧電素子などのアクチュエータ、このアクチュエータを駆動する配線回路パターンが形成される他に、アクチュエータを駆動するための集積回路も実装される。このように、吐出口を高密度に実装する場合には、アクチュエータを駆動する電気信号を送るための配線回路パターンも高密度になる。
【0004】
図9に示すように、吐出ダイ100の配線回路基板101には、互いの端子部102,103同士を合せるように半田付けして、フレキシブル配線回路基板104が接続される。フレキシブル配線回路基板104は、例えばポリイミド(PI)製の絶縁層(基材シート)105に銅箔配線107を形成したもので、端子部103を除く領域は、接着層108を介してPI製の保護層109が接着される。また、各端子部102,103には、両者の接合を容易に行うために、半田、金錫などのメッキ層111,112が形成される。
【0005】
フレキシブル配線回路基板104では接続側の端部に端子部103を形成する。このため、吐出ダイ100側の配線回路基板101にフレキシブル配線回路基板104を接合する際に、フレキシブル配線回路基板104の接着層108が外部に露出する。保護層109と銅箔配線107との間の接着界面113は、長期間の環境ストレスによって剥離が生じる事がある。したがって、駆動時に、接着界面113に水分が浸入することにより、配線間にイオンマイグレーションが発生する可能性が高くなる。とくに、接着層108は外側に端面が剥き出しとなるため、イオンマイグレーションが発生する可能性は高い。しかも、接着層108は保護層109への接着に対する要求性能のため、一般的には保護層109と比較するとイオンマイグレーション耐性は高くない。なお、矢印A1は、水分や溶剤などの進入経路を示しており、この矢印A1がある側は外側となる。また、外側とは、水分や溶剤などに触れやすい外部環境に近い側を意味する。
【0006】
イオンマイグレーションとは、電極間に電界が発生している(電位差がある)状態で水分が存在すると、水分が媒体となって金属イオンが移動する現象である。このイオンマイグレーションが発生すると、本来の電気的回路とは異なる部分で短絡を起こす。この短絡は、本来予期しない部分での導通となるため、製品の動作不良や最悪の場合には製品の故障を引き起こす。特に配線間が100μm未満の狭ピッチになるとイオンマイグレーションが起こりやすくなり、絶縁に対する要求性能は高くなる。
【0007】
ところで、図10に示すように、特許文献2には、バンプ付きフレキシブル配線回路基板120が記載されている。この配線回路基板120の層構成は図9に示すものと同じであるが、保護層109の表面に開口部122を形成し、この開口部122の底に端子部123を形成し、この端子部123に連通し接続信頼性の高いバンプ(導電の突起)124を形成している。この接続方法では上記のような接着界面113が外部に露出することが無いため、水分の浸入による短絡故障の確率を減らすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許7052117号明細書
【特許文献2】特開平9−232734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2のようにバンプ124を有するフレキシブル配線回路基板120であっても、電気が流れる接続部に未接合界面129が通じているため、未接合界面129から水分が浸入する可能性が残り、絶縁信頼性に懸念が残る。特に吐出口が高密度で実装されるインクジェットヘッドでは配線間が狭ピッチであるため、イオンマイグレーションが発生しやすくなり、絶縁信頼性に懸念がある。
【0010】
また、インクジェットヘッドに用いられるフレキシブル配線回路基板の場合には、インクジェットヘッドの構造上、インクおよびインクを洗浄する溶剤が接続部近傍を通過するため、矢印A1で示すように、溶剤がフレキシブル配線回路基板120の接続部へと浸入すると、駆動時にイオンマイグレーションが発生し、回路間での短絡を引き起こす懸念が高くなる。短絡が発生すると正しく描画することができない他に、画質悪化といった印刷不良や故障が発生するため、保護する方法が必要になる。
【0011】
インクジェットヘッドにおけるイオンマイグレーション対策としては、一般には液体が浸入しないように封止剤を盛ることが行われる。この封止剤には様々な性能が要求される。例えば、封止剤内を湿気が時間を経て浸入することも考えられるので、吸湿性・透湿性が低いものが必要である。更にインクジェットヘッドでは溶剤を使用するため、溶剤耐性も要求される。一般にはエポキシ系接着剤を用いるが、インクジェットヘッドでは構造上の制約から、環境ストレスによる信頼性試験でエポキシ系接着剤が割れる可能性もあり、要求性能を満足する封止剤の選定・開発には長い開発期間が必要である。そのため、フレキシブル配線回路基板自体での耐性が必要となる。
【0012】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、配線間が狭ピッチであるフレキシブル配線回路基板の接続部構造において、水分や溶剤に対して高い耐性を持ち、イオンマイグレーションの発生を防止することできるフレキシブル配線回路基板の接続部構造及びその接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、フレキシブル配線回路基板の第1端子部と、配線回路基板の第2端子部とを接合してなるフレキシブル配線回路基板の接続構造体において、前記フレキシブル配線回路基板と前記配線回路基板との合せ面であって、前記配線回路基板の中心から見て前記第1端子部及び第2端子部よりも外側に、前記両配線回路基板同士を接合する無機材料による封止接合部を有する。
【0014】
なお、前記封止接合部を、前記フレキシブル配線回路基板の全幅領域に形成されるフレキシブル配線回路基板側の第1封止接合部本体と、前記第1封止接合部本体に対応する位置で配線回路基板に形成される第2封止接合部本体と、前記第1封止接合部本体及び前記第2封止接合部本体を接合する第1接合部材とから構成することが好ましい。また、前記第1端子部と前記第2端子部とを前記第1接合部材と同じ接合部材により接合することが好ましい。前記フレキシブル配線回路基板は、絶縁層と配線層と保護層とを順に有し、前記第1封止接合部本体は前記保護層の上に形成されることが好ましい。また、前記配線回路基板は、インク吐出口を有する吐出ダイに形成されることが好ましい。
【0015】
本発明は、フレキシブル配線回路基板の第1端子部と、配線回路基板の第2端子部とを重ね合せて、前記配線回路基板の外側に前記フレキシブル配線回路基板を位置させた状態で前記両配線回路基板を接続する方法であって、前記第1端子部に対し外側で前記フレキシブル配線回路基板に第1封止接合部本体を形成し、前記第2端子部に対し外側で前記配線回路基板に第2封止接合部本体を形成し、前記第1及び第2端子部同士と前記第1及び第2封止接合部本体同士を重ねた状態で無機接合部材により前記両端子部同士と両封止接合部本体同士を接合する。
【0016】
なお、前記第1及び第2端子部同士及び前記第1及び第2封止接合部本体を同じ無機接合部材により同時に接合することが好ましい。また、前記フレキシブル配線回路基板は、絶縁層と配線層と保護層とを順に有し、前記第1封止接合部本体は前記保護層の上に形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第1端子部及び第2端子部よりも外側に、両配線回路基板同士を接合する無機材料による封止接合部を有することにより、電気を流さない封止接合部によって両配線回路基板同士が接合されるため、回路パターンが形成される配線層との接着界面が封止されて、外部に露出することがなくなり、接着界面から水分が浸入することがない。したがって、水分に起因するイオンマイグレーションの発生を抑えて、電子部品の動作不良や故障などの発生が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】インクジェットヘッドを示す全体斜視図である。
【図2】インクジェットヘッドを分解して示す斜視図である。
【図3】吐出ダイの斜視図である。
【図4】吐出ダイとヘッド本体の一部を示す断面図である。
【図5】吐出ダイとフレキシブル配線回路基板との接続を示す分解斜視図である。
【図6】インクジェットヘッドを切り欠いて示す斜視図である。
【図7】本発明の接続方法を示すフローチャートであるである。
【図8】フレキシブル配線回路基板の接続構造を示すもので、(A)はフレキシブル配線回路基板の底面図、(B)はフレキシブル配線回路基板と吐出ダイの配線回路基板との接合を示す断面図、(C)は吐出ダイの配線回路基板の平面図である。
【図9】従来のフレキシブル配線回路基板の接続構造を示すもので、(A)はフレキシブル配線回路基板の底面図、(B)はフレキシブル配線回路基板と吐出ダイの配線回路基板との接合を示す断面図、(C)は吐出ダイの配線回路基板の平面図である。
【図10】従来の他のフレキシブル配線回路基板の接続構造を示すもので、(A)はフレキシブル配線回路基板の底面図、(B)はフレキシブル配線回路基板と吐出ダイの配線回路基板との接合を示す断面図、(C)は吐出ダイの配線回路基板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように、インクジェットヘッド10は、ヘッド本体11、1対のフレキシブル配線回路基板12、1対の取付枠13から構成される。図2に示すように、ヘッド本体11は矩形体状に形成され、上部にチューブ接続ノズル15が、下部に吐出ダイ17が形成される。チューブ接続ノズル15は供給用と回収用の2本が形成され、不図示のインクジェットプリンタに実装されたときに、インク供給タンク及びインク回収タンクからのインクチューブがそれぞれ接続される。
【0020】
ヘッド本体11の両側部には、フレキシブル配線回路基板12が取り付けられる。また、このフレキシブル配線回路基板12を保護するようにヘッド本体11の両側部に、取付枠13が接合される。フレキシブル配線回路基板12及び取付枠13の接合は、例えば2液タイプの接着剤を用いる。
【0021】
図3に示すように、吐出ダイ17は平行四辺形状の板部材からなる。図4に示すように、内部にはインク流路21が形成され、このインク流路21の一部にポンプ室22が形成される。このポンプ室22に対応する位置で薄膜23を介し上部には、圧電素子24が形成される。圧電素子24は薄膜23を変形させ、ポンプ室22の容量を変化させる。この変形によって、吐出口25からインク滴が吐出する。
【0022】
図5に示すように、吐出ダイ17の上部には、圧電素子24の他に、流体通路開口30、駆動IC31、フレキシブル配線回路基板接続用の第2端子部34が形成される。圧電素子24はプリント配線パターン33を介し駆動IC31に接続される。駆動IC31は第2端子部34に接続される。この第2端子部34には、フレキシブル配線回路基板12の第1端子部32が電気的に接続される。
【0023】
図6に示すように、フレキシブル配線回路基板12の取り付け後に、吐出ダイ17の上面を覆うように、支持体35やハウジング36、仕切り板37などが被せられて、これらが接着剤にて固着され、ヘッド本体11が形成される。
【0024】
ヘッド本体11は、仕切り板37を挟むようにハウジング36を両側から取り付けて構成される。この仕切り板37によってヘッド本体11内にはインク入口室40及びインク出口室41が形成される。さらに、各室40,41には、各室40,41の対角線方向にステンレス製のフィルタ42,43が収納される。
【0025】
図4に示すように、フレキシブル配線回路基板12は支持体35の両側の湾曲部35aに沿って密着し、90°に折り曲げられて、ヘッド本体11の両側面に沿うように配置される。なお、図4は、微小な圧電素子24や駆動IC31を図示するために、高さ方向に誇張して記載しており、図6に切り欠いて示す全体の断面図とは寸法的には対応していない。
【0026】
次ぎに、図2に示すように、ヘッド本体11の両側から取付枠13によりヘッド本体11を挟むようにし、例えば2液混合タイプの接着剤を用いて、ヘッド本体11、フレキシブル配線回路基板12、取付枠13が固着され一体化される。
【0027】
図4に示すように、一体化されたヘッド本体11の吐出ダイ17と取付枠13との隙間45には、封止用の接着剤46が充填され、封止が行われる。接着剤46としては、エポキシ接着剤、ウレタン接着剤、シリコン系接着剤、フッ素ゲル系接着剤などの重合の進行に温度依存性がある2液タイプ(主剤と可塑剤(硬化剤))のものを用いる。本実施形態では、耐薬品性及び耐久性に優れる信越化学工業製のSIFELというフッ素ゲル系の接着剤46を用いる。
【0028】
フレキシブル配線回路基板12は、図示しない制御回路に接続される。そして制御回路からの駆動信号がフレキシブル配線回路基板12、駆動IC31に送られる。駆動IC31では、制御信号に基づき圧電素子24の駆動信号を生成して、各圧電素子24を個別に駆動する。これにより各吐出口25から駆動信号に応じたインク滴が吐出される。インク滴は不図示の記録材料に主走査方向に記録され、インク滴の吐出に応じて記録材料が主走査方向に交差する副走査方向に移動するため、記録材料には画像が記録される。
【0029】
吐出ダイ17において各吐出口25は、主走査方向に沿う行方向と、主走査方向に対して直交せずに一定の交差角度を有する斜めの列方向とに沿って千鳥状に隣接するもの同士をずらしてマトリックスに配置される。これにより、吐出口25の高密度実装が可能になり、複数の吐出口列によって例えば1200dpiでの出力解像度で画像が記録される。
【0030】
図5に示すように、吐出ダイ17にはヘッド本体11(図4参照)を組み立てる前に、吐出ダイ17の第2端子部34に、フレキシブル配線回路基板12の第1端子部32を重ね合わせて、両者が加熱圧着されることにより、半田付けされる。
【0031】
図7に示すように、フレキシブル配線回路基板12の接続方法では、封止接合部形成工程S1、接合する配線回路基板同士を位置合せする位置合せ工程S2、位置合せした後に圧着加熱する圧着加熱工程S3により、フレキシブル配線回路基板12と配線回路基板55とを接合する。これらの各工程S1〜S3により、図8に示すように、第1端子部32及び第2端子部34の他に、第1封止接合部本体61、第2封止接合部本体62も同時に加熱圧着されて半田付けされる。これにより、フレキシブル配線回路基板12の第1端子部32の外側に、この端子部34を封止する封止接合部63が形成される。
【0032】
封止接合部形成工程S1では、フレキシブル配線回路基板12の第1端子部32に隣接させて第1封止接合部本体61を保護層75上に形成する。また、配線回路基板55の第2端子部34に隣接させてその外側位置に第2封止接合部本体62を形成する。これら封止接合部本体61,62は、各配線回路基板12,55の配線パターン形成の際に形成する。封止接合部本体61,62は、配線パターンと同じ材料、例えば銅箔や、その他の金属材料、無機材料が用いられる。
【0033】
封止接合部本体61,62は、両方が半田で構成される半田/半田の組み合わせの他に、一方がAu、他方がSnとなるAu/Sn、Sn/Auの組み合わせがある。また、上記材質を含有し、実際の電気接続が半田もしくはAuSn共晶である構成でもよい。第1封止接合部本体61のPI製保護層75への形成は、保護層75と無機材料からなる封止接合部本体61との密着性を確保する必要がある。このため、保護層75の表面を予め粗化した状態で封止接合部本体61を形成することにより、アンカー効果によって密着性を確保する。
【0034】
第1封止接合部本体61の保護層75への形成は、無電解メッキにより銅の薄膜を形成した後に、電解メッキによって銅を厚付けし、その上に半田ペーストを印刷することで充分な厚さとすることができる。また、第2封止接合部本体62は、一般的な半導体プロセスにより配線回路基板に形成する。
【0035】
図8に示すように、フレキシブル配線回路基板12は、PI製の絶縁層71に銅箔配線73を形成したもので、第1端子部32を除く領域は、接着層74を介してPI製の保護層75が接着される。絶縁層71は例えば25μmの厚みであり、銅箔配線73は12μm、接着層74は17.5μm、保護層75は12.5μmの厚みである。なお、第1端子部32の上には、保護層75の表面と同じ高さとなるように高さ調整膜77が第1端子部32と同じ材料で形成される。この高さ調整膜77は、第1端子部32の接合を容易にするために、例えば半田や金錫などのメッキ処理により形成する。また、銅箔配線73の表面と保護層75の表面との高低差がフレキシブル配線回路基板12で吸収可能な場合には、この高さ調整膜77は省略してよい。さらに、端子部32,34や封止接合部本体61,62の表面には、これらの接合を容易に行うために、半田、金錫などのメッキ層(図示省略)が形成される。これらメッキ層は、加熱圧着による接合時に溶けて端子部32,34や、封止接合部本体61,62と一体化される。
【0036】
吐出ダイ17の配線回路基板55は、シリコン基板上に銅配線パターンを形成し、配線の最表面に金がメッキされたものを用いるが、これに限るものではない。
【0037】
位置合せ工程S2では、治具を用いて吐出ダイ17の配線回路基板55とフレキシブル配線回路基板12とを位置合せする。
【0038】
圧着加熱工程S3では、位置合せされた状態で両者を圧着・加熱し、第1及び第2端子部32,34同士と、第1封止接合部本体61及び第2封止接合部本体62同士とを半田付けする。これら第1及び第2端子部32,34同士と、第1封止接合部本体61及び第2封止接合部本体62同士とを同じ無機材料を用いて同時に接合することで、接合工程を効率よく1回の操作で行うことができる。圧着加熱では、半田溶融やAuSn共晶といった金属による接合の他に、NCP(Non Conductive Paste)、ACP(Anisotropic Conductive Paste)、ACF(Anisotropic Conductive Film)といった端子部の電気接続が可能な樹脂系接着剤により接合してもよい。NCPは、アンダーフィルの機能を兼ね、接着・絶縁の機能を同時に持つ接続材料である。また、ACP、ACFは、異方性導電フィルムまたはペーストである。また、第1及び第2端子部32,34による電気接続部には、接続信頼性を向上させるために、各端子の間に樹脂を充填してもよい。樹脂の充填は電気接続前でも後でもよい。
【0039】
本実施形態では、フレキシブル配線回路基板12を吐出ダイ17の配線回路基板55に接合することで、封止接合部63が同時に形成されるため、別途に封止処理を行う必要がなく、製造が容易になる。しかも、半田や金錫、その他の無機材料により封止接合部63が接合されるため、接着剤などによる封止と異なり、耐久性・耐薬品性に優れる。したがって、水分などの侵入を阻止することができ、イオンマイグレーションの発生を抑えることができる。しかも、インクジェットヘッド10に本発明を適用することにより、インク吐出口25(図4参照)を高密度に実装してもイオンマイグレーションの発生を確実に抑えることができる。
【0040】
上記実施形態では、インクジェットヘッド10を例にとって説明したが、本発明はインクジェットヘッド10以外の例えば半導体やMEMSなどの各種電子部品におけるフレキシブル配線回路基板の接続方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
10 インクジェットヘッド
11 ヘッド本体
12 フレキシブル配線回路基板
13 ハウジング
17 吐出ダイ
21 インク流路
22 ポンプ室
24 圧電素子
32 第1端子部
34 第2端子部
55 配線回路基板
61 第1封止接合部本体
62 第2封止接合部本体
63 封止接合部
75 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル配線回路基板の第1端子部と、配線回路基板の第2端子部とを接合してなるフレキシブル配線回路基板の接続構造体において、
前記フレキシブル配線回路基板と前記配線回路基板との合せ面であって、前記配線回路基板の中心から見て前記第1端子部及び第2端子部よりも外側に、前記両配線回路基板同士を接合する無機材料による封止接合部を有することを特徴とするフレキシブル配線回路基板の接続構造体。
【請求項2】
前記封止接合部を、前記フレキシブル配線回路基板の全幅領域に形成されるフレキシブル配線回路基板側の第1封止接合部本体と、前記第1封止接合部本体に対応する位置で配線回路基板に形成される第2封止接合部本体と、前記第1封止接合部本体及び前記第2封止接合部本体を接合する第1接合部材とから構成することを特徴とする請求項1記載のフレキシブル配線回路基板の接続構造体。
【請求項3】
前記第1端子部と前記第2端子部とを前記第1接合部材と同じ接合部材により接合することを特徴とする請求項2記載のフレキシブル配線回路基板の接続構造体。
【請求項4】
前記フレキシブル配線回路基板は、絶縁層と配線層と保護層とを順に有し、前記第1封止接合部本体は前記保護層の上に形成されることを特徴とする請求項3記載のフレキシブル配線回路基板の接続構造体。
【請求項5】
前記配線回路基板は、インク吐出口を有する吐出ダイに形成されることを特徴とする請求項4記載のフレキシブル配線回路基板の接続構造体。
【請求項6】
フレキシブル配線回路基板の第1端子部と、配線回路基板の第2端子部とを重ね合せて、前記配線回路基板の外側に前記フレキシブル配線回路基板を位置させた状態で前記両配線回路基板を接続する方法であって、
前記第1端子部に対し前記配線回路基板の中心から見て外側で前記フレキシブル配線回路基板に第1封止接合部本体を形成し、
前記第2端子部に対し外側で前記配線回路基板に第2封止接合部本体を形成し、
前記第1及び第2端子部同士と前記第1及び第2封止接合部本体同士を重ねた状態で無機接合部材により前記両端子部同士と両封止接合部本体同士を接合することを特徴とするフレキシブル配線回路基板の接続方法。
【請求項7】
前記第1及び第2端子部同士及び前記第1及び第2封止接合部本体同士を同じ無機接合部材により同時に接合することを特徴とする請求項6記載のフレキシブル配線回路基板の接続方法。
【請求項8】
前記フレキシブル配線回路基板は、絶縁層と配線層と保護層とを順に有し、前記第1封止接合部本体を前記保護層の上に形成することを特徴とする請求項7記載のフレキシブル配線回路基板の接続方法。
【請求項9】
前記配線回路基板は、インク吐出口を有する吐出ダイに形成されることを特徴とする請求項8記載のフレキシブル配線回路基板の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−209436(P2012−209436A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74275(P2011−74275)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】