説明

フレキシブルEL素子

本発明に係るフレキシブルEL素子は、高分子合成ゴム、ポリウレタンまたはシリコンゴムからなる基板を使用し、導電層、誘電層、蛍光層、透明導電層及びポリマー保護膜層を含むことを特徴とする。本発明によると、優れた柔軟性を有する基板を使用することで、従来のPETを使用するEL素子より優れた柔軟性を有するので、耐久性が向上し、その結果、EL素子は、数十万回の物理的な衝撃が加えられても損傷しない。また、簡単な構造の変更、物質層の追加だけでも、ノイズを容易に防止できるので、電気的・物理的特性と関連した信頼性が向上する。特に、フレキシブルELシートは、ELドームシート及びELキーパッドなどに有用に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルEL(Electro Luminescence)素子に関するもので、特に、柔軟性基板を使用するフレキシブルEL素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のEL素子は、基板としてITOがコーティングされたPETフィルムを使用する。しかしながら、PETは、柔軟性が良好でないので、製作されたEL素子の柔軟性が低下する。したがって、製作されたEL素子を折るか曲げるとき、ITOの損傷によって発光パターンが損傷し、最悪の場合、斑点(spot)などが発生してしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする技術的課題は、柔軟性の向上したフレキシブルEL素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の技術的課題を達成するための本発明の一例によるフレキシブルEL素子は、 高分子合成ゴム、ポリウレタンまたはシリコンゴムからなる基板と、該基板の上部に形成される導電層と、該導電層の上部に形成される誘電層と、該誘電層の上部に形成される蛍光層と、該蛍光層の上部に形成される透明導電層と、該透明導電層の上部に形成されるポリマー保護膜層と、を含んで構成されることを特徴とする。
【0005】
このとき、前記基板と前記導電層との間には、ポリマー層が介在されることを特徴とする。
さらに、前記導電層と前記誘電層との間には、ポリマー絶縁層及び第2導電層が順次介在されることを特徴とする。
【0006】
上記の技術的課題を達成するための本発明の他の例によるフレキシブルEL素子は、透明または半透明の高分子合成ゴム、ポリウレタンまたはシリコンゴムからなる基板と、該基板の上部に形成される透明導電層と、該透明導電層上に形成される蛍光層と、該蛍光層上に形成される誘電層と、該誘電層上に形成される導電層と、該導電層上に形成されるポリマー保護膜層と、を含んで構成されることを特徴とする。
【0007】
このとき、前記基板と前記透明導電層との間には、ポリマー層が介在されることを特徴とする。
【0008】
さらに、前記誘電層と前記導電層との間には、第2導電層及びポリマー絶縁層が順次介在されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上述した本発明に係るフレキシブルEL素子によると、優れた柔軟性を有する高分子合成ゴム、ポリウレタンまたはシリコンゴムなどからなる基板を使用することで、従来のPETを使用するEL素子より優れた柔軟性を有するので、耐久性が向上し、その結果、本発明に係るフレキシブルEL素子は、数十万回の物理的な衝撃が加えられても損傷しない。
【0010】
また、簡単な構造の変更、物質層の追加だけでも、ノイズを容易に防止できるので、電気的・物理的特性と関連した信頼性が向上する。
【0011】
さらに、フレキシブルELシートは、ELドームシート及びELキーパッドなどに有用に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施例を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図3は、本発明の各実施例に係るフレキシブルEL素子を説明するための概略図である。
【実施例1】
【0013】
図1に示すように、本発明の第1実施例に係るフレキシブルEL素子は、0.05〜2.00mm厚さの基板110と、基板110の上部に形成された5〜50μm厚さのポリマー層120と、ポリマー層120の上部に形成される5〜20μm厚さの導電層130と、導電層130の上部に形成される3〜25μm厚さの誘電層140と、誘電層140の上部に形成される30〜50μm厚さの蛍光層150と、蛍光層150の上部に形成される1〜10μm厚さの透明導電層160と、透明導電層160の上部に形成される5〜50μm厚さのポリマー保護膜層170と、を含んで構成される。このとき、ポリマー層120は、水分の浸透を防止するためのもので、必ず必要なものではなく、基板110の特性に応じて選択的に使用することができる。
【0014】
製造されるフレキシブルEL素子の全体厚さは、柔軟性を維持するように0.08〜1.2mmであることが好ましい。
【0015】
本実施例に係るフレキシブルEL素子に用いられる各物質層は、基板上に1回または数回のスクリーン印刷で形成される。以下、基板及び各物質層に用いられる物質を説明する。
【0016】
基板110には、高分子合成ゴム、ポリウレタンまたはシリコンゴムが用いられるが、これらのうち、ポリウレタンまたはシリコンより良好な柔軟性を有する高分子合成ゴムを用いることが好ましい。
【0017】
ポリマー層120としては、乾燥後の防湿特性に優れかつ、高分子合成ゴムなどからなる基板との接着性に優れたものが好ましい。したがって、ポリマー層には、フッ素化合物系列の高分子及びポリウレタンを含むバインダー、または、赤外線(IR)及び紫外線(UV)の照射によって硬化するポリマーなどが用いられる。
【0018】
導電層130は、導電性粉末とバインダーとの混合物、導電性有機ポリマー、または、導電性粉末と導電性有機ポリマーとの混合物からなる。導電性粉末には、例えば、カーボン粉末、銀粉末、銅粉末、または、銀がコーティングされた銅粉末が用いられる。導電性有機ポリマーには、例えば、3,4-エチレンジオキシチオフェン(ethylenedioxythiophene)(PEDOT:PSS)、ポリエチレンチオキシチオフェン (polyethylenedioxythiophene)(PEDOT:PSS)などの物質が用いられる。
【0019】
誘電層140は、誘電体粉末とバインダーとの混合物からなる。誘電体粉末には、BaTiO3などの高誘電常数を有する誘電体粉末が用いられ、その大きさは、約0.1〜10μmである。誘電層のバインダーとしては、シアノエチルプルラン(Cyanoethyl pullulan)またはフッ素樹脂(Fluororesin)などの大きな誘電常数を有するポリマーが用いられる。
【0020】
蛍光層150は、蛍光体粉末及びバインダーからなる。蛍光体粉末には、ZnSなどのII〜IV族化合物が用いられる。蛍光層に用いられるバインダーは、蛍光体粉末より高い誘電常数を有することが好ましい。このような高誘電常数のバインダーとしては、シアノエチルプルランまたはフッ素樹脂などが用いられる。素子の発光色相を変化させるために、ローダミンなどの蛍光染料や蛍光顔料を前記蛍光層のバインダーに混合することができる。
【0021】
透明導電層160は、ITO粉末とバインダーとの混合物、スパッタリング方法で形成されたITO薄膜層、伝導性有機ポリマー、または、伝導性有機ポリマーとITOとの混合物質からなる。伝導性有機ポリマーとしては、例えば、3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT:PSS)、ポリエチレンチオキシチオフェン(PEDOT:PSS)などの物質が用いられる。
【0022】
本発明に係る第1実施例によると、優れた柔軟性を有する高分子合成ゴム、ポリウレタンまたはシリコンゴムなどからなる基板を使用するので、製作されたフレキシブルEL素子は、従来のPETを使用するEL素子より優れた柔軟性を有する。したがって、本発明の第1実施例に係るEL素子は、物理的衝撃に対する優れた耐久性を有するようになる。
【実施例2】
【0023】
本実施例は、第1実施例に基づくもので、フレキシブルEL素子のノイズを減少させるために、図2に示すように3層構造で形成したものである。本実施例において、第1実施例と重複する部分に対する説明は省略する。
【0024】
図2に示すように、本発明の第2実施例に係るフレキシブルEL素子は、0.05〜2.00mm厚さの高分子合成ゴム、ポリウレタンまたはシリコンゴムからなる基板110と、基板110の上部に形成された5〜50μm厚さのポリマー層120と、ポリマー層120の上部に形成される5〜20μm厚さの導電層130(第1実施例の導電層と同一のもので、以下、第1導電層という)と、第1導電層130の上部に形成される5〜50μm厚さのポリマー絶縁層180と、ポリマー絶縁層180の上部に形成される5〜20μm厚さの別途の導電層190(以下、第2導電層という)と、第2導電層190の上部に形成される3〜25μm厚さの誘電層140と、誘電層140の上部に形成される30〜50μm厚さの蛍光層150と、蛍光層150の上部に形成される1〜10μm厚さの透明導電層160と、透明導電層160の上部に形成される5〜50μm厚さのポリマー保護膜層170と、を含んで構成される。すなわち、本実施例は、第1実施例に係るフレキシブルEL素子の導電層130と誘電層140との間に、ポリマー絶縁層180及び第2導電層190が順次介在されることを特徴とする。ここで、第2導電層190はポリマー絶縁層180の上部に形成される。
【0025】
このとき、ポリマー絶縁層180は、硬化後に各種のソルベントに反応せず、赤外線(IR)または紫外線(UV)の照射によって硬化するポリマーを用いて形成するか、フッ素化合物系列の高分子やポリウレタンを含むバインダーなどを用いて形成する。第2導電層190に用いられる物質は、第1実施例の導電層130に用いられる物質と同一である。
【0026】
したがって、簡単な構造の変更及び物質層の追加のみでもノイズを防止できるので、フレキシブルEL素子の電気的・物理的特性が向上する。
【実施例3】
【0027】
本実施例は、高分子合成ゴム、ポリウレタンまたはシリコンゴムなどからなる透明または半透明の基板を使用して実現されるもので、第2実施例に対して逆構造のフレキシブルEL素子に関するものである。本実施例においても、第2実施例と重複する部分に対する説明は省略する。
【0028】
図3に示すように、本発明の第3実施例に係る逆構造フレキシブルEL素子は、0.05〜2.00mm厚さの高分子合成ゴム、ポリウレタンまたはシリコンゴムからなる基板110と、基板110の上部に形成された5〜50μm厚さのポリマー層120と、ポリマー層120の上部に形成される1〜10μm厚さの透明導電層160と、透明導電層160の上部に形成される30〜50μm厚さの蛍光層150と、蛍光層150の上部に形成される3〜25μm厚さの誘電層140と、誘電層140の上部に形成される5〜20μm厚さの第2導電層190と、第2導電層190の上部に形成される5〜50μm厚さのポリマー絶縁層180と、ポリマー絶縁層180の上部に形成される5〜20μm厚さの第1導電層130と、第1導電層130の上部に形成される5〜50μm厚さのポリマー保護膜層170と、を含んで構成される。
【0029】
本実施例によると、基板を透過して発光するようになる。
【0030】
一方、第2実施例に対して逆構造のフレキシブルEL素子を説明した本実施例には、ポリマー層と、ポリマー絶縁層と、二つの導電層とが含まれる。しかし、本実施例の基本構造が、第1実施例のようにポリマー層、ポリマー絶縁層及び第2導電層を省略することができる。上述したように、ポリマー層は、水分浸透を防止するためのもので、ポリマー絶縁層及び第2導電層は、ノイズを防止するためのものであり、必要に応じて、これら構成要素のない構造で実現されることもある。
【0031】
本発明は、上述した各実施例によって限定されるものではなく、本発明の技術的思想内であれば、当分野で通常の知識を有する者によって多様に変形可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の各実施例に係るフレキシブルEL素子を説明するための概略図である。
【図2】本発明の各実施例に係るフレキシブルEL素子を説明するための概略図である。
【図3】本発明の各実施例に係るフレキシブルEL素子を説明するための概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子合成ゴム、ポリウレタンまたはシリコンゴムからなる基板と、
該基板の上部に形成される導電層と、
該導電層の上部に形成される誘電層と、
該誘電層の上部に形成される蛍光層と、
該蛍光層の上部に形成される透明導電層と、
該透明導電層の上部に形成されるポリマー保護膜層と、を含んで構成されることを特徴とするフレキシブルEL素子。
【請求項2】
前記基板と前記導電層との間には、ポリマー層が介在されることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルEL素子。
【請求項3】
前記導電層と前記誘電層との間には、ポリマー絶縁層及び第2導電層が順次介在されることを特徴とする請求項1または2に記載のフレキシブルEL素子。
【請求項4】
透明または半透明の高分子合成ゴム、ポリウレタンまたはシリコンゴムからなる基板と、
該基板の上部に形成される透明導電層と、
該透明導電層上に形成される蛍光層と、
該蛍光層上に形成される誘電層と、
該誘電層上に形成される導電層と、
該導電層上に形成されるポリマー保護膜層と、を含んで構成されることを特徴とするフレキシブルEL素子。
【請求項5】
前記基板と前記透明導電層との間には、ポリマー層が介在されることを特徴とする請求項4に記載のフレキシブルEL素子。
【請求項6】
前記誘電層と前記導電層との間には、第2導電層及びポリマー絶縁層が順次介在されることを特徴とする請求項4または5に記載のフレキシブルEL素子。
【請求項7】
前記基板の厚さは0.05〜2.00mmで、前記導電層の厚さは5〜20μmで、前記誘電層の厚さは3〜25μmで、前記蛍光層の厚さは30〜50μmで、前記透明導電層の厚さは1〜10μmで、前記ポリマー保護膜層の厚さは5〜50μmであることを特徴とする請求項1または4に記載のフレキシブルEL素子。
【請求項8】
前記ポリマー層の厚さは、5〜50μmであることを特徴とする請求項2または5に記載のフレキシブルEL素子。
【請求項9】
前記ポリマー絶縁層の厚さは5〜50μmで、前記第2導電層の厚さは5〜20μmであることを特徴とする請求項3に記載のフレキシブルEL素子。
【請求項10】
前記第2導電層の厚さは5〜20μmで、前記ポリマー絶縁層の厚さは5〜50μmであることを特徴とする請求項6に記載のフレキシブルEL素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−503065(P2008−503065A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526970(P2007−526970)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000721
【国際公開番号】WO2005/122643
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(506365647)エル コリア コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】