説明

フレーバリング成分

本発明は、たとえば緑茶およびクリーミーな/ファッティなタイプのフレーバーノートならびに口当たり効果を付与するためのフレーバリング成分として使用することができる式(I)[式中、R1は、C2〜C7−アルキル基である]の化合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、フレーバーの分野に関する。より具体的には本発明は、特に口当たりのセンセーション、ならびに緑茶の、およびクリーミーな/ファッティなフレーバーノートを付与するための3−ヒドロキシ−3−メチル−2,4−アルカンジオンのフレーバリング成分としての使用に関する。本発明は、フレーバー産業における前記化合物の使用ならびに前記化合物を含有する組成物もしくは物品に関する。
【0002】
従来技術
本発明による化合物の中で、3−ヒドロキシ−3−メチル−2,4−ノナンジオンのみが従来技術において報告されている(I.A.Sigrist等、J.Agric.Food.Chem.、2003年、51、3426を参照のこと)。この論文には、ある化合物が記載されており、これは3−ヒドロキシ−3−メチル−2,4−ノナジオンであると同定され、3−メチル−2,4−ノナンジオンの光分解生成物によって得られている。
該化合物は、組成物の形で記載されているが、該組成物は、該組成物を食品およびフレーバー産業において使用するためには不適切なものとする成分、たとえばヘキサンまたはメソ−テトラフェニルポルフィリンを含んでいるために、フレーバリング組成物ではない。
【0003】
引用された従来技術は、3−ヒドロキシ−3−メチル−2,4−ノナンジオンを、ゴムのような、土臭く、かつプラスチックに似たにおいの記載を有するにおい化合物として記載している。換言すれば、フレーバーの分野における当業者にとって、この化合物は、不所望のにおいのオフ・ノートのみを提供するものとして記載されており、そのため、フレーバー成分として使用すること、特に口当たりおよび/または緑茶およびクリーミーな/ファッティなタイプのフレーバーノートを付与することに対する偏見が生じていた。
【0004】
発明の詳細な説明
我々は意外なことに、式
【化1】

[式中、R1は、C2〜C7の線状アルキル基である]の化合物を、フレーバリング成分として使用することができることを見いだした。
【0005】
従って本発明は、フレーバリング組成物またはフレーバー付けされた物品のフレーバー特性を、付与、増強、改善または変性する方法に関し、該方法は、前記組成物または物品に、少なくとも1の式
【化2】

[式中、R1は、C2〜C7の線状アルキル基である]の化合物を、フレーバーとしての有効量で添加することからなる。特に前記化合物(I)は、フレーバリング組成物またはフレーバー付けされた物品の口当たりおよび/または緑茶の、クリーミーな/ファッティなノートを付与、増強、改善または変性するために使用することができる。
【0006】
本発明の特別な実施態様によれば、前記化合物(I)は、前記フレーバリング組成物またはフレーバー付けされた物品の全質量に対して、5%〜0.0001%の量で、フレーバリング組成物またはフレーバー付けされた物品に添加する。
【0007】
式(I)の化合物はキラルである、つまり、R異性体であってもS異性体であってもよい。上記のいずれの実施態様によっても、本発明の化合物は、RもしくはSの立体配置の純粋な異性体の形またはこれらの混合物であってよい。
【0008】
本発明の特別な実施態様によれば、R1は、C4〜C7の線状アルキル基であり、かつ特にn−ペンチル基である。
【0009】
式(I)の化合物の中で特に、および非限定的な例として、3−ヒドロキシ−3−メチル−2,4−ノナンジオンを挙げることができる。この化合物は、該化合物が添加された調製物の口当たりを付与または改善することができるために極めて歓迎される。この効果は一般に、該化合物が添加される組成物または物品のクリーミーな/ファッティなフレーバーノートを改善または付与する。さらに、本発明による化合物が添加される調製物の種類に依存して、入れ立ての緑茶に似た官能的印象を付与することもできる。
【0010】
3−ヒドロキシ−3−メチル−2,4−ノナンジオンの使用は、良好にバランスのとれた、かつパフォーミングな緑茶、ミント、乳製品またはセイボリーフレーバーの調製物に大いに役立つことが判明した。
【0011】
本発明の化合物のもう1つの例は、3−ヒドロキシ−3−メチル−2,4−オクタンジオンであり、これは上記の高級類似体の一つに極めて類似した官能的特性を有するが、それ自体、若干弱い緑茶のノートを有することによって区別される。
【0012】
式(I)の化合物の中で、3−ヒドロキシ−3−メチル−2,4−ノナンジオンが有利な化合物である。
【0013】
上記のとおり、式(I)の化合物の中で、3−ヒドロキシ−3−メチル−2,4−ノナンジオンのみが公知であり、従って、式中でR1がC2〜C4またはC6〜C7の線状アルキル基である化合物もまた本発明の対象である。
【0014】
上記のとおり本発明は、フレーバリング成分としての式(I)の化合物の使用、特に口当たりのための添加剤としての使用または緑茶の、および/またはクリーミーな/ファッティなフレーバーノートを付与するための使用に関する。「式(I)の化合物の使用」とは、化合物(I)を含有し、かつフレーバー産業においてフレーバリング成分として有利に使用することができる任意の配合された組成物の使用であるとも理解される。「配合されたフレーバリング組成物」という表現は、一般に当業界では、種々の由来(天然または合成)による種々の成分を一緒に混合することによって得られる組成物をいう。
【0015】
上記の配合されたフレーバリング組成物は、本発明のもう1つの対象でもある。前記の配合されたフレーバリング組成物は、以下のものを含有する:
i)式
【化3】

[式中、R1はC2〜C7の線状アルキル基である」の少なくとも1の化合物、
ii)フレーバーキャリアおよびフレーバーベースからなる群から選択される少なくとも1の成分、
iii)場合により少なくとも1のフレーバー補助剤。
【0016】
「フレーバリング組成物」という用語は、当業界における通常の意味を有している、つまり心地よい効果を付与する、つまり調製物に心地よい味を付与するか、心地よい味に変性することができ、かつ味を付与するのみではない組成物であることを指摘しておかなくてはならない。
【0017】
本発明による化合物を種々の組成物に配合することができる比率は、広い範囲の値で変化してよい。これらの値は、フレーバー付けされる物品の性質および所望の官能的効果ならびに、本発明による化合物を当業界で通常使用されるフレーバリング補助成分、溶剤または添加剤と混合する場合には、所定のベース中の補助成分の性質にも依存する。前記の特性の典型的な例は、上記のとおりである。
【0018】
「フレーバーキャリア」とはここでは、フレーバーの観点からは実質的に中立的である、つまりフレーバリング成分の官能的特性を著しく変化させることがない材料を意味している。前記のキャリアは液状であっても、固体であってもよい。
【0019】
液状のキャリアとして、非限定的な例として、乳化系、つまり溶剤および界面活性剤系、またはフレーバーにおいて通常使用される溶剤を挙げることができる。フレーバーにおいて通常使用される溶剤の性質および種類の詳細な記載は包括的なものとはなりえない。しかし非限定的な例として、プロピレングリコール、トリアセチン、トリエチルシトレート、ベンジルアルコール、エタノール、植物油またはテルペンのような溶剤を挙げることができる。
【0020】
固体のキャリアとしては、非限定的な例として、吸収性ガムまたはポリマー、または封入材料を挙げることができる。このような材料の例は、壁形成材料および可塑化材料、たとえば単糖類、二糖類または三糖類、天然デンプンまたは変性デンプン、ヒドロコロイド、セルロース誘導体、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、タンパク質またはペクチン、またはH.Scherzの、Hydrokolloids:Stabilisatoren,Dickungs−und Geliermittel in Lebensmittel、食品化学シリーズ第2巻、食品の品質、Behr’s Verlag GmbH&Co.、Hamburg、1996年のような参考文献に挙げられている材料である。封入は当業者に周知の方法であり、たとえば噴霧乾燥、凝集または押出成形のような技術を使用して実施することができるか、またはコアセルベーションまたは複合的なコアセルベーション技術を含む被覆封入からなる。
【0021】
一般に「フレーバーベース」とはここでは、少なくとも1のフレーバリング補助成分を含有する組成物を意味する。
【0022】
前記のフレーバリング補助成分は、式(I)の化合物ではない。さらに、「フレーバリング補助成分」とはここでは、心地よい効果を付与するフレーバリング調製物または組成物中で使用される化合物を意味する。換言すれば、このような補助成分は、フレーバリング成分の1つとしてみなされ、当業者によって組成物のにおいまたは味をポジティブに、または快適に付与または変性することができなくてはならず、単に味を有しているだけではない。
【0023】
ベース中に存在するフレーバリング補助成分の性質および種類は、ここでより詳細な記載を保証するものではないが、いずれにしても包括的ではなく、当業者はこれらの成分を、その一般的な知識および意図される用途または適用、および所望の官能的効果に応じて、選択することができる。一般に、これらのフレーバリング補助成分は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペン炭化水素、窒素もしくは硫黄を有するヘテロ環化合物および精油の種々の化合物群に属し、かつ前記のフレーバリング補助成分は、天然もしくは合成由来のものであってよい。これらの補助成分の多くは、多くの場合、S.Arctanderによる著書の、Perfume and Flavour Chemicals、1969年、Montclair、New Jersey、USA、またはより最近の版、または類似の性質のその他の著書のような参考文献に、ならびにフレーバーの分野における豊富な特許文献にも列挙されている。前記の補助成分は、制御された方法で種々のフレーバリング化合物を放出することで知られている化合物であってよい。
【0024】
一般に、「フレーバー補助剤」とはここでは、付加的に追加の利点、たとえば色、特別な耐光性、化学的安定性等を付与することができる成分を意味する。フレーバリングベース中で一般に使用される補助剤の性質および種類の詳細な記載は包括的なものとはなり得ないが、しかし前記の成分は当業者に周知であることに言及しておかなくてはならない。
【0025】
少なくとも1の式(I)の化合物および少なくとも1のフレーバーキャリアを含有する本発明の組成物、ならびに少なくとも1の式(I)の化合物、少なくとも1のフレーバーキャリア、少なくとも1のフレーバーベースおよび場合により少なくとも1のフレーバー補助剤を含有するフレーバリング組成物は、本発明の特別な実施態様である。
【0026】
3−ヒドロキシ−3−メチル−2,4−ノナンジオンを含有する本発明による組成物が有利である。
【0027】
ここで、上記の組成物において、1より多くの式(I)の化合物を含有する可能性が重要であることに言及するのは有用である。というのもこれは、調香師が、本発明の種々の化合物のフレーバー調性を有するアコード、フレーバーを作ることを可能にし、従って彼らの仕事にとって新たなツールを生み出すからである。
【0028】
化学合成から直接に生じ、たとえば適切な精製を行わない場合に、本発明の化合物が出発物質、中間体または最終生成物として関与する任意の組成物は、本発明によるフレーバリング組成物とみなすことはできない。
【0029】
さらに、本発明による化合物は、フレーバー付けされた物品に有利に配合して該物品の味をポジティブに付与するか、または変性することもできる。従って、
i)フレーバリング成分としての、少なくとも1の式
【化4】

[式中、R1は、C2〜C7の線状アルキル基である]の化合物および
ii)食品ベース
を含有するフレーバー付けされた物品もまた、本発明の1つの対象である。
【0030】
前記のフレーバー付けされた物品において、本発明の化合物は、前記のフレーバー付けされた物品の全質量に対して5%〜0.0001%の量で、または上記でさらに特定された量で存在していてよい。
【0031】
明瞭性のために「食品ベース」とはここでは、食用の製品であり、たとえば食物または飲料を意味する。従って本発明によるフレーバー付けされた物品は、機能性調製物、ならびに所望の食用製品に相応する、場合により付加的な利点を有する薬剤、たとえば茶またはヨーグルト、および少なくとも1の本発明による化合物のフレーバー有効量を含む。
【0032】
食品または飲料の成分の性質および種類は、ここでより詳細な記載を保証するものではないが、いずれにしても包括的ではなく、当業者はその一般的な知識および前記製品の性質に基づいて選択することができる。
【0033】
適切な食品、たとえば食物または飲料は、乳製品、たとえばヨーグルト、アイスクリーム、フレーバー付けされた乳、低脂肪調製物(たとえば通常の製品と比較して70%未満の量の脂肪を含有する)、乳ベースの飲料、クリームベースのデザート、およびホット飲料およびコールド飲料、茶飲料を含む。
【0034】
適切な食品は、セイボリー製品、たとえばスープ、ストックキューブ、スナック、缶詰食品、油および脂肪、冷凍食品、ソース、特に肉の特性を有するものである。この実施態様で、本発明の化合物、特に3−ヒドロキシ−3−メチル−2,4−ノナンジオンもまた意外なことに、該化合物が添加される調製物の塩の認識を変性または改善することができることが判明した。
【0035】
本発明による化合物を種々の前記の物品または組成物に配合することができる比率は、広い値の範囲で変化する。これらの値は、本発明による化合物を、当業界で通常使用されるフレーバリング補助成分、溶剤または添加剤と混合する場合には、フレーバー付けされる物品の性質および所望の官能的効果ならびに所定のベース中の補助成分の性質に依存する。前記の比率または量の典型的な例は、上記のとおりである。
【0036】
しかし非限定的な例として、これらの化合物をフレーバー付けされた物品中に配合する場合には、0.001〜0.3質量%の範囲の濃度も挙げることができ、この場合、パーセントの記載は物品の質量に対するものである。より具体的には、本発明の化合物を、飲料の0.001〜0.1質量%の濃度で含有する茶飲料、本発明の化合物を物品の0.05〜0.3質量%の濃度で含有するミントフレーバーの物品、本発明の化合物を物品の0.01〜0.05質量%の濃度で含有する乳製品、または本発明の化合物を物品の0.01〜0.1質量%の濃度で含有するセイボリー物品を挙げることができる。
【0037】
3−ヒドロキシ−3−メチル−2,4−ノナンジオンを含有する本発明の物品または組成物が有利である。
【0038】
本発明の化合物(I)は、次の工程を有する方法により得られる:
a)2,3−ブタンジオンを、トリ(C1〜C3アルキル)ホスファイト、有利にP(OMe)3と反応させて、2,2,2−トリ(C1〜C3−アルコキシ)−4,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホール、有利に2,2,2−トリ(メトキシ)−4,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホールが得られる工程、
b)工程a)で得られた生成物を、化合物R1COCl[式中、R1は、上記と同じものを表す]と反応させて、1−アセチル−1−メチル−2−オキソアルキルジメチルホスフェート(ここでアルキルは、R1の意味を有する基である)、有利に1−アセチル−1−メチル−2−オキソヘプチルジメチルホスフェートが得られる工程、および
c)工程b)で得られた化合物を、130℃より低い温度で水と反応させ、所望の生成物を130℃より低い温度、有利に35℃より低い温度で精製する工程。
【0039】
詳細に記載されていない実験条件は、標準的な条件であり、当業者には周知である。
【0040】
前記の方法は、本発明の化合物を、該化合物の部分的な分解につながりうる著しい熱処理に曝さないという利点を有する。
【0041】
精製の例は、クロマトグラフィーまたは減圧下での蒸留を含む。
【0042】
実施例
本発明を以下の例に基づいてさらに詳細に記載するが、ここで略号は当業界で通常の意味を有し、温度は摂氏(℃)で示されている。NMRスペクトルのデータは、CDCl3(その他の記載がない限り)で1Hおよび13Cに関して400MHzで記録し、ケミカルシフトδは、TMSを標準液としてppmで記載し、結合定数Jは、Hzで記載されている。31P−スペクトルは、162MHzで得られ、かつ85%のH3PO4に対して測定される。
【0043】
例1
式(I)の化合物の合成
A)2,2,2−トリメトキシ−4,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホールの製造
乾燥したフラスコに、2,3−ブタンジオン(17.20g、0.20モル)を0〜5℃でごくゆっくり、トリメチルホスファイト(27.28g、0.22モル)に添加した。反応混合物を室温で一夜攪拌し、かつ次いでビグロー型カラムを使用して蒸留した(40〜47℃/0.1トル)。純粋な2,2,2−トリ(メトキシ)−4,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホール(35.04g)が回収された(収率:83%)。
B)1−アセチル−1−メチル−2−オキソアルコールジメチルホスフェートの製造、一般的な手順
乾燥したフラスコに、酸塩化物(R1COCl(0.16モル)を室温でA)において得られた化合物(0.16モル)に滴加した。反応混合物を80℃で一夜(19時間)攪拌し、かつ該混合物は褐色になった。揮発性副生物を、ビグロー型カラムを使用して留去し、所望の生成物を含有する残留物を、バルブ・ツー・バルブ蒸留して所望の化合物が得られた。
【0044】

【0045】

C)本発明の化合物の製造
フラスコ中に、B)で得られた化合物(20ミリモル)、H2O(6.25ml)およびトルエン(30ml)を2時間環流させた。反応混合物を室温に冷却した後、水相を分離し、NaClで飽和させ、かつトルエンで抽出した(3回)。合した有機抽出物をMgSO4により乾燥させた。回転蒸発器を使用して溶剤を除去し、かつ残留物を失活させたシリカゲル上でペンタン:エーテル=9:1を溶剤として使用して精製した(Silice60A C.C.35〜70μm 550mg、(SDS、フランス)+水200ml)。本発明の化合物が回収された。
【0046】

【0047】

【0048】
例2
本発明の化合物を含有する、フレーバリング組成物およびフレーバー付けされた物品の製造
「クリーミーな特性」を有する2つのフレーバリング組成物を、以下の成分を混合することによって製造した:
【表1】

【0049】
化合物A)またはB)0.1質量部を、「低脂肪」ヨーグルトに添加することによって、2つのヨーグルトをそれぞれA′)およびB′)として提供した。
【0050】
ヨーグルトA′)のフレーバーは、心地よく甘いクリーミーな味により最も良く記載され、本物の乳またはクリーム脂肪のセンセーションに類似した口当たりのセンセーションを有していた。
【0051】
ヨーグルトB′)のフレーバーは、ミルキーでバター風味の味により最も良く記載されるが、乳またはクリーム脂肪の口当たりのセンセーションは有していなかった。
【0052】
従って、本発明の化合物は、歓迎されるクリーミーなノートを付与することができるのみでなく、従来技術の化合物または教示に反して、クリーム、乳および脂肪に似た口当たりのセンセーションも生じる。
【0053】
例3
本発明の化合物を含有するフレーバリング組成物およびフレーバー付けされた物品
「茶の特性」を有するフレーバリング組成物を、以下の成分を混合することによって製造した:
【表2】

【0054】
組成物A)またはB)を茶に0.14質量部添加することによって、2つの新規な茶がそれぞれA′)およびB′)として提供された。
【0055】
茶A′)のフレーバーは、茶フレーバーに加えて、甘くてクリーミーな味も示し、ミルククリームのセンセーションを喚起する口当たりの効果を有していた。
【0056】
茶B′)のフレーバーは、茶のフレーバーに加えて、クリーミーな味も示したが、本発明の化合物により与えられる口当たりのセンセーションを有していなかった。
【0057】
従って本発明の化合物は、歓迎されるクリーミーなノートを付与することができるのみでなく、従来技術の化合物または教示に反して、クリーム、乳および脂肪に似た口当たりのセンセーションを生じる。
【0058】
例4
本発明の化合物を含有するフレーバリング組成物およびフレーバー付けされた物品の製造
「肉の特性」を有する2つのフレーバリング組成物を、以下の成分を混合することによって製造した:
【表3】

【0059】
次いで乾燥した低脂肪および低塩スープベースから2つのスープA′)およびB′)を、以下の成分を混合することによって製造した:
【表4】

【0060】
スープA′およびB′の食味検査により、A′は口当たりが増大されており、かつ肉脂肪の特性が一段と知覚可能であり、かつ心地よいことが明らかに示された。さらに、スープの塩気のノートの知覚は、A′の塩含有率をさらに低減することができることを明らかに示唆していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーバリング組成物またはフレーバー付けされた物品のフレーバー特性または口当たりを付与、増強、改善または変性する方法であって、該方法は、式
【化1】

[式中、R1は、C2〜C7の線状アルキル基である]の化合物をフレーバーとしての有効量で前記組成物または物品に添加することを含む、フレーバリング組成物またはフレーバー付けされた物品のフレーバー特性または口当たりを付与、増強、改善または変性する方法。
【請求項2】
フレーバリング組成物またはフレーバー付けされた物品の口当たりおよび/または緑茶の、クリーミーな/ファッティなノートを付与、増強、改善または変性することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記化合物(I)を、5%〜0.0001%の量でフレーバリング組成物またはフレーバー付けされた物品に添加することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
化合物(I)が、3−ヒドロキシ−3−メチル−2,4−ノナンジオンであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
フレーバリング組成物またはフレーバー付けされた物品の塩味の印象を増強、改善または変性することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
式(I)の化合物が、以下の工程:
a)2,3−ブタンジオンを、トリ(C1〜C3アルキル)ホスファイト、有利にP(OMe)3と反応させて、2,2,2−トリ(C1〜C3−アルコキシ)−4,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホール、有利に2,2,2−トリ(メトキシ)−4,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホールが得られる工程、
b)工程a)で得られた生成物を、化合物R1COCl[式中、R1は、上記と同じものを表す]と反応させて、1−アセチル−1−メチル−2−オキソアルキルジメチルホスフェート(ここでアルキルは、R1の意味を有する基である)、有利に1−アセチル−1−メチル−2−オキソヘプチルジメチルホスフェートが得られる工程、および
c)工程b)で得られた化合物を、130℃より低い温度で水と反応させ、所望の生成物を130℃より低い温度、有利に35℃より低い温度で精製する工程
を含む方法により得られることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】

【化2】

[式中、R1が、C2〜C4もしくはC6〜C7の線状アルキル基である]の化合物。
【請求項8】
3−ヒドロキシ−3−メチル−2,4−ノナンジオンまたは3−ヒドロキシ−3−メチル−2,4−オクタンジオンである、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
i)フレーバリング成分としての少なくとも1の式
【化3】

[式中、R1は、C2〜C7の線状アルキル基である]の化合物、
ii)フレーバーキャリアおよびフレーバーベースからなる群から選択される少なくとも1の成分、
iii)場合により少なくとも1のフレーバー補助剤
を含有する、配合されたフレーバリング組成物。
【請求項10】
前記化合物(I)が、3−ヒドロキシ−3−メチル−2,4−ノナンジオンであることを特徴とする、請求項9記載のフレーバリング組成物。
【請求項11】
前記化合物(I)が、組成物の全質量に対して5%〜0.0001%の量で存在していることを特徴とする、請求項9記載のフレーバリング組成物。
【請求項12】
i)フレーバリング成分としての、少なくとも1の式
【化4】

[式中、R1は、C2〜C7の線状アルキル基である]の化合物、
ii)食品ベース
を含有する、フレーバー付けされた物品。
【請求項13】
化合物(I)が、3−ヒドロキシ−3−メチル−2,4−ノナンジオンであることを特徴とする、請求項10記載のフレーバー付けされた物品。
【請求項14】
化合物(I)が、フレーバー付けされた物品の全質量に対して5%〜0.0001%の量で存在していることを特徴とする、請求項12記載のフレーバー付けされた物品。
【請求項15】
食品が、乳製品、ヨーグルト、アイスクリーム、フレーバー付けされた乳、低脂肪調製物、乳ベースの飲料、クリームベースのデザート、ホット飲料もしくはコールド飲料、茶飲料、セイボリー製品、スープ、ストックキューブ、スナック、缶詰食品、油および脂肪、冷凍食品、ソースであることを特徴とする、請求項12記載のフレーバー付けされた物品。

【公表番号】特表2008−532948(P2008−532948A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557639(P2007−557639)
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【国際出願番号】PCT/IB2006/050543
【国際公開番号】WO2006/092749
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1,route des Jeunes, CH−1211 Geneve 8, Switzerland
【Fターム(参考)】