説明

フレーム、液滴吐出ヘッド、フレームの製造方法及びフレーム基材構造体

【課題】応力吸収を可能とし、フレーム製造時の生産性を良好にする。
【解決手段】本発明のフレーム13は、一端に係止部65g、他端に被係止部64cが形成された展開状態のフレーム基材13’の細肉部65cが曲げられることにより枠形状をなし、その曲げられたフレーム基材13’の曲げ反力により係止部65gが被係止部64cに係止されて枠形状が維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレーム、液滴吐出ヘッド、フレームの製造方法及びフレーム基材構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液滴吐出装置の一例として、インクを吐出するインクジェットヘッドを印刷用紙と対向させて走査することにより、印刷用紙にインクで記録を行うインクジェットプリンタが知られている(例えば、特許文献1参照)。インクジェットヘッドには、インクの流路が形成された流路ユニットと、この流路ユニットの上面に外周部分をあけて島状に接合された圧電アクチュエータとを備えたものがある。流路ユニットの上面の外周部分には、金属などからなる枠状の補強フレームが熱可塑性または熱硬化性接着剤を用いて加熱固着されており、これによりインクジェットヘッド全体の剛性が保たれる。そして、この補強フレームがネジ等でキャリッジの底部に固定されることで、インクジェットヘッドがキャリッジに一体的に固定される。枠状の補強フレームは、圧電アクチュエータを囲むように設けられており、補強フレームと圧電アクチュエータとの隙間には絶縁材料からなるポッティング剤(例えば、シリコーン等)を周状に充填することで、インク漏れによるショートや大気中の水分によるマイグレーションの発生などを防止し、圧電アクチュエータの動作信頼性を向上させている。
【特許文献1】特開2008−183804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、補強フレームを流路ユニットに対して接着剤により接合する場合には、接着剤加熱用のヒータの温度ムラによって各部品に膨張ムラが生じ、その状態で枠形状の補強フレームが流路ユニットに強固に接合されるので、接合後のインクジェットヘッドの内部に残留応力が生じてしまう。また、補強フレームが枠形状であるために、マスプレートから複数のフレームをプレス加工等により取り出す際の割付効率が非効率となり、生産性が悪く、コストが嵩むという問題もある。
【0004】
そこで本発明は、応力吸収を可能とし、フレーム製造時の生産性を良好とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、本発明に係るフレームは、一端に係止部、他端に被係止部が形成された展開状態のフレーム基材の少なくとも一部分が曲げられることにより枠形状をなし、その曲げられたフレーム基材の曲げ反力により前記係止部が前記被係止部に係止されて枠形状が維持されることを特徴とする。
【0006】
これによれば、フレームが枠形状を呈しながらも、係止部と被係止部との係止箇所において分断されているため、何らかの応力(例えば、熱応力等)が加わっても、その分断部分において当該応力を吸収することができる。また、1つのマスプレートに複数のフレーム基材を割り付けて、マスプレートから複数のフレーム基材を取り出す場合、曲げる前のフレーム基材が枠形状ではないため、割付効率が良好となり、生産性を向上させ、コストを少なくすることもできる。
【0007】
前記フレームは、平面視で枠板形状をなし、少なくとも一部分に板厚よりも小さい幅を有する細肉部を有し、前記細肉部が曲げられていてもよい。
【0008】
これによれば、フレームを細肉部で曲げることにより、係止部を被係止部に容易に係止させることができる。しかも、細肉部が板厚よりも小さい幅を有するように形成されているため、係止部が被係止部に係止された状態で生じる細肉部を基点とした曲げ反力は、フレーム板面に沿った方向に規制され、係止部が被係止部から外れることを防止することができる。
【0009】
前記フレームは、平面視で四角枠板形状をなし、前記細肉部は、1箇所に設けられていてもよい。
【0010】
これによれば、曲げ加工が1回で済み、生産効率が良好となる。
【0011】
前記フレームは、平面視で四角枠板形状をなし、前記細肉部は、四隅に設けられていてもよい。
【0012】
これによれば、1つのマスプレートに複数のフレーム形状を割り付けて、マスプレートから複数のフレームを取り出す場合、四隅の細肉部を曲げる前のフレームは略直線状にできるため、割付効率がより良好となり、生産性をより向上させることができる。
【0013】
前記係止部は、前記一端の端面のうち前記枠の外側領域から前記他端に向けて突出し、前記被係止部は、前記他端の端面のうち前記枠の内側領域から前記一端に向けて突出し、前記係止部の内側面が、前記曲げ反力により前記被係止部の外側面に当接し、前記係止部の先端面が、前記他端の端面の外側領域に当接し、前記被係止部の先端面が、前記一端の端面の内側領域に当接し、前記係止部が前記被係止部に係止された状態で、前記フレームの外周縁及び内周縁が夫々連続する構成としてもよい。
【0014】
これによれば、係止構造が簡単であり、かつ、係止後のフレームの外周縁及び内周縁の形状を分断されていない枠形状と同等の外形にすることができる。
【0015】
前記フレームは、平面視で四角枠形状であり、前記係止部が前記被係止部に係止されていない状態では、前記係止部及び前記被係止部のある分断辺の両側の一対の辺の対向距離は、前記分断辺側がその反対側よりも小さくなっており、前記係止部が前記被係止部に係止された状態では、前記一対の辺同士が平行となるように構成されていてもよい。
【0016】
これによれば、完成形状で四角枠形状となるように容易に構成することができる。また、対向辺が元の形状に復帰しようとする力により係止部が被係止部に押し付けられ、係止力も向上する。
【0017】
前記フレームは、平面視で長辺と短辺を有する四角枠形状であり、前記係止部及び前記被係止部は、前記短辺に設けられていてもよい。
【0018】
これによれば、長辺に比べて撓みにくい短辺に分断箇所が設けられるため、フレーム全体の剛性を良好に保つことができる。
【0019】
前述したフレームが設けられた液滴吐出ヘッドあって、液滴を吐出する複数のノズルに夫々対応する複数の圧力室を有する流路ユニットと、前記圧力室内の液体に移送圧力を与えるべく前記流路ユニットに接合されたアクチュエータと、を備え、前記フレームは、前記アクチュエータを囲むように前記流路ユニットに接合されていてもよい。
【0020】
これによれば、枠形状のフレームが係止箇所において分断されており、その分断部分において応力(例えば、熱応力等)を吸収することができるため、液滴吐出ヘッド内部に応力が生じることが抑制され、液滴吐出性能を安定に保つことができる。
【0021】
前記流路ユニットは、前記圧力室に連通する液体供給口を有し、前記フレームは、四角枠形状で、その一辺に前記液体供給口に連通する液体供給孔を有し、前記液体供給孔のある辺が他の辺よりも幅広であり、前記係止部及び前記被係止部は、前記液体供給孔のある辺に対向する辺に設けられていてもよい。
【0022】
これによれば、最も幅広で剛性の高い辺に対向する辺に分断部分が設けられるため、フレーム全体の剛性を良好に保つことができる。
【0023】
前記流路ユニットには、顔料系のブラックインクを吐出するブラックインク用ノズルと、染料系のカラーインクを吐出するカラーインク用ノズルとがそれぞれ列状に形成されており、前記係止部及び前記被係止部は、平面投影視で、前記ブラックインク用ノズルの列と前記カラーインク用ノズルの列との間の仮想境界線上に配置されていてもよい。
【0024】
これによれば、それぞれ特性の異なるインクを吐出するブラックインク用ノズルの列とカラーインク用ノズルの列との間の仮想境界線上にフレームの分断部分が設けられるため、同種のインクの吐出特性に分断部分による影響が及びにくくなり、同種のインクの吐出性能を安定化することができる。
【0025】
前記流路ユニットには、複数の圧力室に連通する共通液室が前記ノズルの列方向に沿って延びるように複数列形成されており、前記係止部及び前記被係止部は、平面投影視で、隣接する前記共通液室の間の距離が最も大きい仕切部分の仮想仕切線上に配置されていてもよい。
【0026】
これによれば、フレームの分断部分が流路ユニットのうち剛性の高い部分に対応する位置に設けられるため、液滴吐出ジェットヘッド全体の剛性を良好に保つことができる。
【0027】
また本発明のフレーム製造方法は、一端に係止部、他端に被係止部が形成された展開状態の複数のフレーム基材をマスプレートに対して入れ子状に割り付け、前記マスプレートから前記フレーム基材を夫々取り出すように前記マスプレートを加工する工程と、前記取り出されたフレーム基材の少なくとも一部分を曲げることにより枠形状とし、その曲げられたフレーム基材の曲げ反力により前記係止部を前記被係止部に係止させて枠形状を維持させる工程と、を備えていることを特徴とする。
【0028】
これによれば、1つのマスプレートに複数のフレーム基材を割り付けて、マスプレートから複数のフレーム基材を取り出す場合に、曲げる前のフレーム基材が枠形状ではないため、割付効率が良好となり、生産性を向上させ、コストが嵩むことを防止することができる。また、枠形状のフレームが、係止部と被係止部との係止箇所において分断されているため、何らかの応力(例えば、熱応力)が加わっても、その分断部分において当該応力を吸収することができる。
【0029】
また本発明のフレーム製造方法は、一端に係止部、他端に被係止部が形成された略直線状の複数のフレーム基材をマスプレートに対して割り付け、前記マスプレートから前記複数のフレーム基材を夫々取り出すように前記マスプレートを加工する工程と、前記取り出されたフレーム基材を複数箇所曲げることにより枠形状とし、その曲げられたフレーム基材の曲げ反力により前記係止部を前記被係止部に係止させて枠形状を維持させる工程と、を備えていることを特徴とする。
【0030】
これによれば、1つのマスプレートに複数のフレーム基材を割り付けて、マスプレートから複数のフレーム基材を取り出す場合に、曲げる前のフレーム基材が枠形状ではないため、割付効率が良好となる。しかも、マスプレートに割り付けられるフレーム基材が一方向に延びる略直線形状を呈しているため、割付効率をかなり高くすることができ、生産性をを大幅に向上させ、コストを少なくすることができる。また、枠形状のフレームが、係止部と被係止部との係止箇所において分断されているため、何らかの応力(例えば、熱応力)が加わっても、その分断部分において当該応力を吸収することができる。
【0031】
前記マスプレートを加工する工程は、エッチングにより行ってもよい。
【0032】
これによれば、曲げる前のフレーム基材の形状が複雑であってもマスプレートから容易に取り出すことができる。
【0033】
対象物に接着して使用するフレームの製造方法であって、前記マスプレートから取り出した状態の前記フレーム基材の接着面に沿う形状にシート状接着剤を加工する工程と、曲げる前の前記フレーム基材の一面に前記加工されたシート状接着剤を貼り付ける工程と、をさらに備えていてもよい。
【0034】
これによれば、フレームを対象物に接着する場合において、シート状接着剤もマスプレートから取り出した状態のフレームと略同一の形状に加工するため、シート状接着剤の歩留まりも向上する。また、フレームは、加工済みのシート状接着剤を貼り付けた後で曲げるため、剛性が十分でないシート状接着剤も所定の枠形状に容易に形成することができる。
【0035】
また本発明のフレーム基材構造体は、マスプレートにフレーム基材群を多面付けしたフレーム基材構造体において、前記フレーム基材は、少なくとも一部分を曲げることで枠形状をなすフレームの展開状態であって、その一端部には係止部、他端には被係止部が形成され、前記マスプレートに入れ子状に割り付けられていることを特徴とする。
【0036】
これによれば、1つのマスプレートに複数のフレーム基材を割り付けて、マスプレートから複数のフレーム基材を取り出す際に、曲げる前のフレーム基材が枠形状ではないため、割付効率が良好となり、生産性を向上させ、コストを少なくすることができる。また、枠形状のフレームが、係止部と被係止部との係止箇所において分断されているため、何らかの応力(例えば、熱応力)が加わっても、その分断部分において当該応力を吸収することができる。
【0037】
また本発明のフレーム基材構造体は、マスプレートにフレーム基材群を多面付けしたフレーム基材構造体において、前記フレーム基材は、複数箇所を曲げることで枠形状をなすフレームの展開状態であって、その一端部には係止部、他端には被係止部が形成された略直線状であって、前記マスプレートに割り付けられていることを特徴とする。
【0038】
これによれば、1つのマスプレートに複数のフレーム基材を割り付けて、マスプレートから複数のフレーム基材を取り出す際に、曲げる前のフレーム基材が枠形状ではないため、割付効率が良好となる。しかも、マスプレートに割り付けられるフレーム基材が一方向に延びる略直線形状を呈しているため、割付効率をかなり高くすることができ、生産性を大幅に向上させ、コストを少なくすることができる。また、枠形状のフレームが、係止部と被係止部との係止箇所において分断されているため、何らかの応力(例えば、熱応力)が加わっても、その分断部分において当該応力を吸収することができる。
【発明の効果】
【0039】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、フレームに応力(例えば、熱応力等)が加わっても、その分断部分において当該応力を吸収することができる。また、1つのマスプレートに複数のフレーム基材を割り付けて、マスプレートから複数のフレーム基材を取り出す場合における割付効率が良好となり、生産性が向上し、コストを少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下の説明では液滴吐出ヘッドの一例として、インクジェットヘッドを用いて説明し、インクジェットヘッドからインクを吐出する方向を下方とし、その反対側を上方とする。
【0041】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ1の要部斜視図である。図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、一対のガイドレール2,3が略平行に配設されており、そのガイドレール2,3にヘッドユニット4が走査方向にスライド可能に支持されている。ヘッドユニット4には、本体側に静置された4つのインクカートリッジ(図示せず)からの4色のインク(例えば、ブラック、シアン、マゼンダ、イエロー)を夫々供給する4本のインク供給チューブ5が接続されている。ヘッドユニット4には、液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッド14(図2参照)が搭載されており、インクジェットヘッド14がその下方で走査方向と直角する方向に搬送される印刷用紙に向けてインクカートリッジから供給されたインクを吐出する構成となっている。
【0042】
ヘッドユニット4は、一対のプーリー6,7に巻き掛けられたタイミングベルト8に取り付けられており、タイミングベルト8はガイドレール3の延在方向と略平行に配設されている。一方のプーリー7には正逆回転駆動するモータ9が設けられており、そのプーリー7が正逆回転駆動されることでタイミングベルト8が往復移動し、ヘッドユニット4がガイドレール2,3に沿って走査される。
【0043】
図2は、図1に示すインクジェットプリンタ1のヘッドユニット4の分解斜視図である。図2に示すように、ヘッドユニット4は、上から順に、バッファタンク11、シール部材16、キャリッジ12、フレーム13、インクジェットヘッド14及びノズル保護カバー15を備えている。キャリッジ12は、上方が開放された略箱形で、バッファタンク11がキャリッジ12内に収容され、キャリッジ12の底壁12aの下面側には、フレーム13及びノズル保護カバー15が接着されたインクジェットヘッド14が固定されている。また、キャリッジ12の上面側にはインクジェットプリンタ1の制御装置(図示せず)と電気的に接続された回路基板4a(図1参照)が設けられている。バッファタンク11は、インクカートリッジからのインクを各色毎に貯留する4つのインク貯留室(図示せず)と4つのインク流出口11cとを有し、各インク貯留室に連通するインク流路(図示せず)を有する板状のアーム部20の上面には、インク供給チューブ5と該インク流路とを連通するジョイント部材21が接続されている。
【0044】
インクジェットヘッド14は、インクを4つのインク流入口39から複数の圧力室41(図5参照)を介して多数のノズル38a(図5参照)まで導く複数の流路40(図5参照)を有する流路ユニット17と、その流路ユニット17の上面に積層されて流路ユニット17内の複数の圧力室41(図5参照)内のインクにノズル38a(図5参照)に向かう吐出圧力を選択的に付与する圧電駆動式のアクチュエータ18とを有している。流路ユニット17には、四角枠板状のフレーム13に接着固定されており、アクチュエータ18がフレーム13の中央の開口部13aに配置されて上方に表出している。また、フレーム13には、流路ユニット17のインク流入口39に連通する4つのインク供給孔13bが走査方向に並んで設けられている。
【0045】
キャリッジ12の底面12aには、貫通穴12bが形成されていて、キャリッジ12内にバッファタンク11が収容された際に、バッファタンク11のインク流出口11cと、フレーム13のインク供給孔13bとは、4つの貫通孔16aを有するシール部材16を介して連通する。このとき、バッファタンク11の走査方向の両側に設けられた取付穴11bに、取付ネジ11aを挿通して、フレーム13のインク供給孔13bの両側に設けられたネジ穴13cにネジ止めすることで、バッファタンク11がフレーム13に対して固定されるとともに、シール部材16が圧縮されてフレーム13のインク供給孔13b周辺に密着して、インク流出口11cとインク供給孔13bとを液密的に接続する。そうすることで、バッファタンク11からのインクを流路ユニット17のインク流入口39に供給できるようになっている。フレーム13は、インク供給孔13bまわりの平坦面において、シール部材16の圧縮に伴う押圧を受け止めている。
【0046】
図3は、図2に示すインクジェットヘッド14を示す分解斜視図である。図3に示すように、インクジェットヘッド14は、複数枚のプレートが積層された流路ユニット17と、流路ユニット17に対して上方から重ねられて接着される圧電駆動式のプレート状のアクチュエータ18とを備えており、アクチュエータ18には外部機器との電気的接続を行うための平坦なFPC19が上方から重ねられて接合されている。FPC19には、インクを吐出するための駆動回路を有するICチップ26が実装されている。アクチュエータ18の上面には複数の表面電極23が形成されており、この表面電極23にFPC19の下面に露出した端子(図示せず)が導電材等により接続されることにより、両者が電気的に導通される。
【0047】
図4は、図2に示す流路ユニット17の構成を示す分解斜視図である。図5は、図2に示すインクジェットヘッド14、FPC19及びフレームが積層接着されたものを紙送り方向に直交する断面で切断したときの一部断面図である。図4及び5に示すように、流路ユニット17は、圧力室プレート31、スペーサプレート32、絞りプレート33、第1マニホールドプレート34、第2マニホールドプレート35、ダンパープレート36、カバープレート37、及びノズルプレート38が、この順に上方から積層して接着された構成となっている。ノズルプレート38はポリイミド等の樹脂シートで、それ以外のプレート31〜37はステンレス等の金属板であり、各々50〜150μm程度の肉厚を有している。各プレート31〜38には、エッチング、レーザ加工、又はプラズマジェット加工等により開孔又は溝が形成されており、各プレート31〜38が積層されることにより、夫々の開孔及び溝が連通し、インクの流路40が形成されるようになっている。
【0048】
圧力室プレート31には、多数の圧力室孔31aとインク流入孔31bとが設けられている。圧力室孔31aは、圧力室プレート31の短辺方向(走査方向の辺)に延びる長孔形状をなし、圧力室プレート31の長辺(紙送り方向の辺)に沿うように並列にし、短辺方向に5列設けられている。これら圧力室孔31aの各列は、ブラックインク用に2列、そしてシアンインク用、マゼンダインク用、及びイエローインク用に各1列が設けられている。圧力室孔31aは、圧力室プレート31に上方からアクチュエータ18が接着され、下方からスペーサプレート32が接着されることにより、内部空間を有する圧力室41を形成する。また、インク流入孔31bは、各色のインク用に夫々1つずつの合計4つ設けられている。なお、4つのインク流入孔31bのうち、図4中手前側の1つのインク流入孔31bは他の3つのインク流入孔31bよりも大きくなっていて、これは使用頻度の高いブラックインクが供給されるようになっている。また、圧力室孔31aの列も図4中手前側の2列がブラックインク用となっている。
【0049】
スペーサプレート32には、圧力室プレート31の圧力室孔31aの一端部に連通する連通孔32aと、圧力室孔31aの他端部に連通する貫通孔32bと、インク流入孔31bと同形状でこれと連通するインク流入孔32cとが設けられている。
【0050】
絞りプレート33には、その上面側に絞り溝33aが形成されている。この絞り溝33aは、絞りプレート33の短辺方向へ延びる長寸溝状を成し、その一端部は、スペーサプレート32の連通孔32aが連通されるようになっており、他端部には下面側へ貫通する孔33bが設けられている。また、絞りプレート33には、スペーサプレート32の貫通孔32b及びインク流入孔32cに夫々連通し、且つ夫々と同形状を成す貫通孔33c及びインク流入孔33dが形成されている。また、インク流入孔31b、32cと同形状でこれと連通するインク流入孔33dとが設けられている。絞り溝33aは、絞りプレート33がスペーサプレート32と第1マニホールドプレート33とで挟まれて接着されることにより、絞り通路42が形成される。
【0051】
第1マニホールドプレート34は、圧力室孔31aに対応してその下方に位置すると共に圧力室孔31aの列方向(紙送り方向)に沿って延設されたマニホールド孔34aを有している。このマニホールド孔34aは、ブラックインク用に2列(図5中の手前側の2列)が設けられているとともに、カラーインク用に3列(シアンインク用、マゼンダインク用及びイエローインク用に各1列)が設けられている。4つのインク流入孔31b、32c、33dは、インク色ごとに各マニホールド孔34aの一端部に連通するようになっていて、ブラックインク用のインク流入孔31b、32c、33dは、2列のブラックインク用のマニホールド孔34aに連通するようになっている。そして、各マニホールド孔34aは絞り通路42を介して圧力室41に連通している。また、第1マニホールドプレート34には、各マニホールド孔34aの長手方向に沿うように、絞りプレート33の貫通孔33cに連通してこれと同形状を成す多数の貫通孔34cが形成されている。
【0052】
第2マニホールドプレート35は、第1マニホールドプレート34と同様の形状を成しており、5つのマニホールド孔35aと貫通孔35cとを有している。そして、絞りプレート33、第1マニホールドプレート34、第2マニホールドプレート35、及び後述するダンパープレート36が積層接着されることで、マニホールド孔34a,35aにより5つの共通液室43が形成される。
【0053】
ダンパープレート36は、各共通液室43に対応する箇所を下方からハーフエッチング等で窪ませて薄肉に形成した5つのダンパー壁36aを有している。またダンパープレート36には、各ダンパー壁36aの長手方向に沿うように、第2マニホールドプレート35の貫通孔35cと連通してこれと同形状を成す貫通孔36bが形成されている。ダンパープレート36がカバープレート37と積層接着されることで、5つのダンパー室が形成される。
【0054】
カバープレート37には、ダンパープレート36の貫通孔36bに連通してこれと同形状を成す貫通孔37aが形成され、ノズルプレート38には、カバープレート37の貫通孔37aに連通する孔であるノズル38aが形成されている。ノズル38aは、長辺方向に沿うように5列設けられ、ブラックインク用に2列(図5中手前側の2列)、カラーインク用に3列(シアンインク用、マゼンダインク用及びイエローインク用に各1列)が設けられている。
【0055】
このような各プレート31〜38を積層接着することにより流路ユニット17が形成される。そして、流路ユニット17内では、各プレート31〜38に形成されたインク流入孔31b,32c,33dが互いに連通してインク流入口39が構成されている。圧力室プレート31の上面には、バッファタンク11から供給されたインクに混入している異物を除去するためのフィルタ25がインク流入口39を覆うように取り付けられている。インク流入口39は、流路ユニット17における紙送り方向の端部に配置され、走査方向に向けて一列に並んでいる。各プレート32〜37に形成された貫通孔32b,33c,34c,35c,36b,37aが互いに連通して流出路44が構成され、その流出路44がノズルプレート38のノズル38aに連通している。よって、バッファタンク11からインク流入口39へ流入したインクは、共通液室43、絞り通路42、圧力室41及び流出路44の順に流れ、ノズル38aから吐出される。つまり、インク流入口39、共通液室43、絞り通路42、圧力室41、及び流出路44により、流路ユニット17内の流路40が構成されている。
【0056】
図5に示すように、アクチュエータ18は、多数枚の圧電シート50〜55と絶縁性を有するトップシート56とが積層されて構成され、その最下層の圧電シート50が流路ユニット17の複数の圧力室孔31aを覆っている。平面視においてアクチュエータ18の外形形状は、流路ユニット17の外形形状よりも小さく形成されている。流路ユニット17の上面の外周部分には、そのアクチュエータ18を囲むように枠状のフレーム13がシート状接着剤59を用いて接着固定されている。圧電シート50〜55は、夫々の厚みが略30μm程度のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のセラミックス材料から構成されている。各圧電シート50〜55のうち、最下層の圧電シート50から上方へ数えて奇数番目の圧電シート50,52,54の上面には、流路ユニット17の圧力室41の全てに対応するよう配置された共通電極57が印刷形成されている。最下層の圧電シート50から上方へ数えて偶数番目の圧電シート51,53の上面には、各圧力室41に対し個別に対応するよう配置された多数の個別電極58が印刷形成されている。また、共通電極57及び個別電極58は、各圧電シート50〜55及びトップシート56の側端面またはスルーホール(図示せず)に設けた中継配線(図示せず)を介し、トップシート56の上面に設けられた表面電極23(図3参照)に導通している。
【0057】
このようなアクチュエータ18の複数の個別電極58に、FPC19から選択的に電圧が印加されると、印加された個別電極28と共通電極27との間に電位差が生じ、圧電シート51〜54の個別電極28と共通電極27とに挟まれた箇所である活性部に電界が作用して積層方向の歪み変形が発生する。そうすると、最下層の圧電シート50が圧力室41内へ突出するため、圧力室41内のインクが流出路44を通じてノズル38aから外部へ吐出される。
【0058】
図6は、図3に示すインクジェットヘッド14にフレーム13が接着された状態を示す斜視図である。図5及び6に示すように、流路ユニット17の上面にフレーム13が熱可塑性接着剤からなるシート状接着剤59により積層接着されている。フレーム13は、金属製(例えばSUS430)で流路ユニット17より厚く剛性を有している。フレーム13は、外形形状が平面視長方形状で流路ユニット17の外形形状よりも大きく、平面視長方形状の開口部13aが中央に形成された略枠形状であり、さらに隣接した4つのインク供給孔13bが走査方向に1列に形成されている。開口部13aは、アクチュエータ18の外形よりも少し大きく、開口部13a内にアクチュエータ18が配置され、インク供給孔13bと流路ユニット17のインク流入口39とを連通させた状態で、流路ユニット17の上面とフレーム13とが積層接合される。なお、シート状接着剤は熱硬化性接着剤であってもよい。
【0059】
アクチュエータ18の上面には、帯状に長くその途中にICチップ26が搭載されたCOFからなるFPC19の一端側が接合され、他端側が開口部13aから上方に引き出されている。アクチュエータ18が配置された開口部13aは、アクチュエータ18とフレーム13との間隙に図示しないポッティング剤(例えば、シリコーン)を注入して、漏出したインクが浸入することを防いでいる。
【0060】
図7は、図6に示すフレーム13を展開状態としたフレーム基材13’の平面図である。 図8は、図7に示すフレーム基材13’を曲げて形成されたフレーム13の平面図である。図9は、図8に示すフレーム13の要部拡大図である。図7に示すように、フレーム基材13’は、平面視で長辺と短辺を有する四角枠板の一部を分断し、その分断された一端を板平面上で開口部13aに向けて屈曲させるように展開した形状となっている。詳しくは、フレーム基材13’は、開口部13aを囲うように前辺部61、左辺部62、右辺部63及び後辺部64,65を有し、前辺部61及び後辺部64,65が短辺であり、左辺部62及び右辺部63が長辺である。 前辺部61には、前述した流路ユニット17の複数のインク流入口39に夫々連通する複数のインク供給孔13bが左右方向に向けて1列に形成されており、このインク供給孔13bのある前辺部61が他の辺部分62〜65よりも幅広となっている。
【0061】
左辺部62及び右辺部63は、前辺部61の左右両端から板平面上で略垂直方向の略同一方向に突出しており、その突出方向に沿って同一幅に形成されている。左辺部62と右辺部63とは、互いに完全平行にはなっておらず、左辺部62及び右辺部63の後辺部64,65側における対向距離W2が、左辺部62及び右辺部63の前辺部61側における対向距離W1よりも若干量小さくなっている。即ち、左辺部62と右辺部63とは、後辺部64,65側が互いに近接するようにテーパ状に形成されている。
【0062】
図7及び9に示すように、後辺部64,65は、左右に分断された分断辺となっている。左側の後辺部64は、左辺部62の後端から板平面上で略垂直方向の右方向に向けて突出した基部64aを有している。基部64aは、その突出方向に沿って同一幅に形成されている。基部64aの突出方向の先端面のうち枠内側(開口部13a側)にある内側領域からは、被係止部64cが右方向(基部64aの突出方向)に向けて突出している。被係止部64cの外側面64d及び内側面64eは、基部64aの突出方向と略平行に形成されている。被係止部64cの内側面64eは、基部64aの内側面と同一直線上に形成されている。被係止部64cの先端面64fは、基部64aの突出方向に対して垂直に形成されている。
【0063】
右側の後辺部65は、右辺部63の後端から板平面上で略垂直方向の左方向に向けて突出した基部65aを有している。基部65aは、その突出方向に沿って同一幅に形成されている。基部65aの突出方向の端面のうち枠外側(開口部13aと反対側)にある外側領域からは、基部65aよりも狭幅である短尺の曲げ支持部65bが左方向(基部65aの突出方向)に向けて突出している。曲げ支持部65bの先端からは、板平面上で略垂直方向の前方向に向けて細肉部65cが突出している。即ち、細肉部65cは、開口部13aに進入するように突出している。この細肉部65cの幅L2は、曲げ支持部65bの幅L1よりも小さく、かつ、フレーム基材13’の板厚よりも小さく設定されている。
【0064】
細肉部65cの先端からは、板平面上で前方向に向けて可動部65dが突出している。この可動部65dは、基部65aと略同一幅に形成されており、可動部65dの右辺部63側にある内側面65eが、細肉部65cの内側面と同一直線上に形成されている。可動部65dの突出方向の先端面のうち枠外側となる外側領域からは、係止部65gが可動部65dの突出方向に向けて突出している。係止部65gの内側面64h及び外側面64iは、可動部65dの突出方向と略平行に形成されている。係止部65gの外側面64iは、可動部65dの外側面と同一直線上に形成されている。係止部65gの先端面65jは、可動部65dの突出方向に対して垂直に形成されている。
【0065】
図8及び9に示すように、フレーム基材13’の細肉部65cを曲げて可動部65dを移動させ、その曲げ反力により係止部65gを被係止部64cに係止することで、四角枠形状が維持されたフレーム13が形成される。具体的には、係止部65gの内側面65hは、曲げ反力により被係止部64cの外側面64dに当接し、フレーム13が枠形状に維持される。その際、細肉部65cの幅L2はフレーム13の板厚よりも小さいので、細肉部65cは、可動部65dがフレーム13の板平面上で移動するように曲がることとなる。よって、係止部65gが被係止部64cに係止された状態で生じる細肉部65cを基点とした曲げ反力は、フレーム13の板平面に沿った方向に規制され、係止部65gが被係止部64cから外れることが防止される。
【0066】
また、係止部65gの先端面65jは、左側の後辺部64の基部64aの先端面の外側領域に当接し、かつ、被係止部64cの先端面64fは、右側の後辺部65の可動部65dの先端面の内側領域に当接する。この当接状態では、左側の後辺部64と右側の後辺部65とが互いに左右に押し合うことにより、左辺部62及び右辺部63の後辺部64,65側が押し広げられる。つまり、展開状態のフレーム基材13’では、左辺部62と右辺部63とが後辺部64,65側で互いに近接するようにテーパ状に形成されていたが、左右の後辺部64,65が互いに押し合うことにより、左辺部62と右辺部63とが平行となる。これにより、フレーム13が、対向辺同士が平行である四角枠形状に形成される。しかも、押し広げられた左辺部62及び右辺部63が元の形状に復帰しようとする力により、係止部65gの先端面65j及び被係止部64cの先端面64fに適度な当接圧が掛かって係止力も向上する。
【0067】
また、係止部65gが被係止部64cに係止された状態では、フレーム13の外周縁及び内周縁は夫々連続し、フレーム13は分断されていない枠と同等の外形に形成される。また、長辺に比べて撓みにくい短辺に係止箇所(分断箇所)が設けられているため、フレーム13全体の剛性も良好に保たれる。さらに、最も幅広で剛性の高い前辺部61に対向する辺に係止箇所(分断箇所)が設けられるため、フレーム13全体の剛性がより良好に保たれる。
【0068】
図10は、図8に示すフレーム13の共通液室43との位置関係を説明する平面図である。図10に示すように、流路ユニット17には、ブラックインク用の2列の共通液室43BKと、カラーインク用の3列の共通液室43CLとが、フレーム13の長手方向に沿って延在している。そして、共通液室43同士の列間距離は、ブラックインク用の共通液室43BKとカラーインク用の共通液室43CLとの間が最も大きくなっている。そして、フレーム13の係止部65g及び被係止部64cは、平面投影視で、ブラックインク用の共通液室43BKとカラーインク用の共通液室43CLとの間の仕切部分の仮想仕切線X1上に配置されている。これにより、フレーム13の分断部分が流路ユニット17のうち剛性の高い部分に対応する位置に設けられているため、インクジェットヘッド14(図2参照)全体の剛性を良好に保つことができる。
【0069】
図11は、図8に示すフレーム13のノズル38aとの位置関係を説明する平面図である。図11に示すように、流路ユニット17は、ブラックインク用の2列のノズル38aBKと、カラーインク用の3列のノズル38aCLとが、フレーム13の長手方向に沿って平行に延在している。ブラックインク用ノズル38aBKが吐出するブラックインクは顔料系インクであり、カラーインク用ノズル38aCLが吐出するカラーインクは染料系インクである。そして、フレーム13の係止部65g及び被係止部64cは、平面投影視で、ブラックインク用ノズル38aBKの列とカラーインク用ノズル38aCLの列との間の仮想境界線X2上に配置されている。これにより、それぞれ特性の異なるインクを吐出するノズル38aBK,38aCLの列間の仮想境界線X2上に分断部分が設けられるため、同種のインクの吐出特性に分断部分による影響が及びにくくなり、同種のインクの吐出性能を安定化することができる。
【0070】
なお、インクジェットヘッドは、図5にあるように略矩形箱状のキャップ76のリブ76aがノズル38aを封止するようにノズルプレート38に押し当てられ、ポンプ77により減圧させることで、流路ユニット17におけるノズル38aから気泡が混ざったインクや増粘したインクなどを吸引する、いわゆる吸引パージ動作が行われる。このとき、ブラックインク用のノズル38aBK(図11参照)とカラーインク用のノズル38aCL(図11参照)とから共に吸引パージにより吸引されて、カラーインクとブラックインクとがキャップ76内で混じったときに、混色した廃インクがパージ時の背圧によりノズル内に引き込まれたり、ノズル面に再付着する。また、ブラックインクが顔料系インク、カラーインクが染料系インクであるため、キャップ76内で混濁すると、両者のインクがキャップ76内で混じって凝集がおこり詰まり等を発生する。これを防止するため、ブラックインクのノズル38aBKとカラーインクのノズル38CLとを仕切りリブ76bで仕切ることにより互いに独立した空間にてパージ動作が行われるようになっている。そのため、この仕切りリブ76bがノズルプレート38上に押し当てられる面積を確保するため、ブラックインク用の2列のノズル38aBKと、カラーインク用の3列のノズル38aCLとの列間距離が最も大きくなっている。よって、共通液室43を始め、ノズルまでのインク流路を成す流路ユニット17の他のプレートの各貫通孔も同様にブラックとカラーとの列間距離が最も大きく形成されている。
【0071】
図12は、図7に示すフレーム基材13’のマスプレート69への割付状態を説明する平面図である。図12に示すように、大判の金属板からなるマスプレート69に対して、前述したフレーム基材13’を多数割り付け、フレーム基材構造体68が形成されている。この際、フレーム基材13’の開口部13aに他のフレーム基材13’が入り込むように入れ子状に割り付けられる。そして、そのマスプレート69を割り付け形状に基づいてプレス加工又はエッチング加工することで、マスプレート69から多数のフレーム基材13’を夫々取り出す。この際、エッチングにより加工を行えば、フレーム基材13’が複雑な形状であってもマスプレート69から容易に取り出すことができる。
【0072】
次いで、マスプレート69から取り出した状態のフレーム基材13’の接着面である下面(図5参照)に沿う形状にシート状接着剤59(図5参照)を加工する。その際、シート状接着剤59もフレーム基材13’と略同一の形状に加工するため、シート状接着剤59の歩留まりも向上する。そして、曲げる前の展開状態のフレーム基材13’の下面にその加工されたシート状接着剤59(図5参照)を貼り付ける。次いで、シート状接着剤59が貼り付けられた状態のフレーム基材13’を曲げて、図8に示した枠状のフレーム13を形成する。そうすると、フレーム基材13’は、シート状接着剤59を貼り付けた後で曲げられるため、剛性のないシート状接着剤59も所定の枠形状に容易に形成することができる。そして、そのフレーム13は、シート状接着剤59により流路ユニット17に接着される。
【0073】
以上に説明した構成によれば、枠形状のフレーム13が、係止部65gと被係止部64cとの係止箇所において分断されているため、何らかの応力、例えば、製造工程で生じる熱による応力が加わっても、その分断部分において当該応力を吸収することができ、インク吐出性能を安定に保つことができる。また、1つのマスプレート69に複数のフレーム基材13’を割り付けて、マスプレート69から複数のフレーム基材13’を取り出す場合に、曲げる前のフレーム基材13’は枠形状ではないため、マスプレート69への割付効率が良好となり、生産性を向上させ、コストを少なくすることもできる。
【0074】
(第2実施形態)
図13は、本発明の第2実施形態のフレーム基材113’を示す平面図である。図14は、図13に示すフレーム基材113’を曲げてなるフレーム113の平面図である。図13に示すように、本実施形態のフレーム基材113’は、略直線状となっており、4箇所を曲げることにより枠形状のフレーム113(図14参照)が形成されるものである。詳しくは、フレーム基材113’は、略直線状に配置された、前辺部161、左辺部162、右辺部163及び後辺部164,165を有している。前辺部161には、流路ユニット17の複数のインク流入口39に夫々連通する複数のインク供給孔113bが形成されており、このインク供給孔113bのある前辺部161が他の辺部162〜165よりも幅広となっている。
【0075】
左辺部162及び右辺部163は、前辺部161の左右両端に細肉部171,172を介して接続され、その長手方向に沿って同一幅に形成されている。細肉部171,172の幅は、左辺部162及び右辺部163の幅よりも小さく、かつ、フレーム基材113’の板厚よりも小さく設定されている。
【0076】
左側の後辺部164は、左辺部162の左端に細肉部173を介して接続されている。細肉部173の幅は、左辺部162及び後辺部164の幅よりも小さく、かつ、フレーム基材113’の板厚よりも小さく設定されている。左側の後辺部164は、その長手方向に沿って同一幅に形成された基部164aを有している。基部164aの左端164bからは、被係止部164cが基部164aの長手方向に向けて突出している。なお、被係止部164cの構成は、第1実施形態の被係止部64cと同様である。
【0077】
右側の後辺部165は、右辺部163の右端に細肉部174を介して接続されている。細肉部174の幅は、右辺部163及び後辺部165の幅よりも小さく、かつ、フレーム基材113’の板厚よりも小さく設定されている。右側の後辺部165は、その長手方向に沿って同一幅に形成された基部165aを有している。基部165aの右端165bからは、係止部165cが基部165aの長手方向に向けて突出している。なお、係止部165cの構成は、第1実施形態の係止部65gと同様である。
【0078】
そして、図14に示すように、フレーム基材113’の細肉部171〜174を略直角に曲げ、係止部165cを被係止部164cに係止することで、四隅に細肉部171〜174が位置し、中央に開口部113aを有する四角枠板形状のフレーム113が形成される。
【0079】
図15は、図13に示すフレーム基材113’のマスプレート169への割付状態を説明する平面図である。図15に示すように、大判の金属板からなるマスプレート169に対して、複数の略直線状のフレーム基材113’を並列配置するように割り付け、フレーム基材構造体168が形成されている。そして、そのマスプレート169をプレス加工又はエッチング加工することで、マスプレート169からフレーム基材113’を夫々取り出す。
【0080】
次いで、マスプレート169から取り出した状態のフレーム基材113’の接着面である下面に沿う形状にシート状接着剤(図示せず)を加工する。その際、シート状接着剤もフレーム基材113’と同じ略直線状に加工するため、シート状接着剤の歩留まりも向上する。そして、展開状態のフレーム基材113’の下面にその加工されたシート状接着剤を貼り付ける。次いで、シート状接着剤が貼り付けられた状態のフレーム基材113’を曲げて、図14に示した枠状のフレーム113を形成する。そうすると、フレーム基材113’は、シート状接着剤を貼り付けた後で曲げられるため、剛性のないシート状接着剤も所定の枠形状に容易に形成することができる。そして、そのフレーム113がシート状接着剤により流路ユニット17に接着される。
【0081】
以上の構成によれば、1つのマスプレート169に複数のフレーム基材113’を割り付けて、マスプレート169から複数のフレーム基材113’を取り出す場合に、フレーム基材113’を曲げる前は枠形状ではないため、マスプレート169への割付効率が良好となる。しかも、マスプレート169に割り付けられるフレーム基材113’が一方向に延びる略直線形状を呈しているため、割付効率をかなり高くすることができ、生産性を大幅に向上させ、コストを少なくすることができる。また、枠形状のフレーム113が、係止部165cと被係止部164cとの係止箇所において分断されているため、何らかの応力、例えば、熱応力が加わっても、その分断部分において当該応力を吸収することができる。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上のように、本発明に係るフレーム、液滴吐出ヘッド、フレームの製造方法及びフレーム基材構造体は、応力を吸収することができるとともに生産性が向上し、コストを少なくする優れた効果を有し、インクジェットプリンタ等の分野に広く適用すると有益である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェットプリンタの要部斜視図である。
【図2】図1に示すインクジェットプリンタのヘッドユニットの分解斜視図である。
【図3】図2に示すヘッドユニットのインクジェットヘッドを示す分解斜視図である。
【図4】図2に示すインクジェットヘッドの流路ユニットの構成を示す分解斜視図である。
【図5】図2に示すインクジェットヘッド、FPC及びフレームを紙送り方向に直交する断面で切断したときの一部断面図である。
【図6】図3に示すインクジェットヘッドにフレームが接着された状態を示す斜視図である。
【図7】図6に示すフレームを展開状態としたフレーム基材の平面図である。
【図8】図7に示すフレーム基材を曲げて形成されたフレームの平面図である。
【図9】図8に示すフレームの要部拡大図である。
【図10】図8に示すフレームの共通液室との位置関係を説明する平面図である。
【図11】図8に示すフレームのノズルとの位置関係を説明する平面図である。
【図12】図7に示すフレーム基材のマスプレートへの割付状態を説明する平面図である。
【図13】本発明の第2実施形態のフレーム基材を示す平面図である。
【図14】図13に示すフレーム基材を曲げて形成されたフレームの平面図である。
【図15】図13に示すフレーム基材のマスプレートへの割付状態を説明する平面図である。
【符号の説明】
【0084】
13,113 フレーム
13’,113’ フレーム基材
13a,113a 開口部
13b,113b インク供給孔
14 インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)
17 流路ユニット
18 アクチュエータ
43 共通液室
59 シート状接着剤
64,65,164,165 後辺部(分断辺)
64c,164c 被係止部
65c,171〜174 細肉部
65g,165c 係止部
68,168 フレーム基材構造体
69,169 マスプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に係止部、他端に被係止部が形成された展開状態のフレーム基材の少なくとも一部分が曲げられることにより枠形状をなし、その曲げられたフレーム基材の曲げ反力により前記係止部が前記被係止部に係止されて枠形状が維持されることを特徴とするフレーム。
【請求項2】
前記フレームは、平面視で枠板形状をなし、
少なくとも一部分に板厚よりも小さい幅を有する細肉部を有し、前記細肉部が曲げられていることを特徴とする請求項1に記載のフレーム。
【請求項3】
前記フレームは、平面視で四角枠板形状をなし、
前記細肉部は、1箇所に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のフレーム。
【請求項4】
前記フレームは、平面視で四角枠板形状をなし、
前記細肉部は、四隅に設けられていることを特徴とする請求項2のいずれかに記載のフレーム。
【請求項5】
前記係止部は、前記一端の端面のうち前記枠の外側領域から前記他端に向けて突出し、
前記被係止部は、前記他端の端面のうち前記枠の内側領域から前記一端に向けて突出し、
前記係止部の内側面が、前記曲げ反力により前記被係止部の外側面に当接し、
前記係止部の先端面が、前記他端の端面の外側領域に当接し、
前記被係止部の先端面が、前記一端の端面の内側領域に当接し、
前記係止部が前記被係止部に係止された状態で、前記フレームの外周縁及び内周縁が夫々連続することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のフレーム。
【請求項6】
前記フレームは、平面視で四角枠形状であり、
前記係止部が前記被係止部に係止されていない状態では、前記係止部及び前記被係止部のある分断辺の両側の一対の辺の対向距離は、前記分断辺側がその反対側よりも小さくなっており、
前記係止部が前記被係止部に係止された状態では、前記一対の辺同士が平行となるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のフレーム。
【請求項7】
前記フレームは、平面視で長辺と短辺を有する四角枠形状であり、
前記係止部及び前記被係止部は、前記短辺に設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のフレーム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のフレームが設けられた液滴吐出ヘッドあって、
液滴を吐出する複数のノズルに夫々対応する複数の圧力室を有する流路ユニットと、
前記圧力室内の液体に移送圧力を与えるべく前記流路ユニットに接合されたアクチュエータと、を備え、
前記フレームは、前記アクチュエータを囲むように前記流路ユニットに接合されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項9】
前記流路ユニットは、前記圧力室に連通する液体供給口を有し、
前記フレームは、四角枠形状で、その一辺に前記液体供給口に連通する液体供給孔を有し、前記液体供給孔のある辺が他の辺よりも幅広であり、
前記係止部及び前記被係止部は、前記液体供給孔のある辺に対向する辺に設けられている請求項8に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項10】
前記流路ユニットには、顔料系のブラックインクを吐出するブラックインク用ノズルと、染料系のカラーインクを吐出するカラーインク用ノズルとがそれぞれ列状に形成されており、
前記係止部及び前記被係止部は、平面投影視で、前記ブラックインク用ノズルの列と前記カラーインク用ノズルの列との間の仮想境界線上に配置されていることを特徴とする請求項8又は9に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項11】
前記流路ユニットには、複数の圧力室に連通する共通液室が前記ノズルの列方向に沿って延びるように複数列形成されており、
前記係止部及び前記被係止部は、平面投影視で、隣接する前記共通液室の間の距離が最も大きい仕切部分の仮想仕切線上に配置されていることを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項12】
一端に係止部、他端に被係止部が形成された展開状態の複数のフレーム基材をマスプレートに対して入れ子状に割り付け、前記マスプレートから前記フレーム基材を夫々取り出すように前記マスプレートを加工する工程と、
前記取り出されたフレーム基材の少なくとも一部分を曲げることにより枠形状とし、その曲げられたフレーム基材の曲げ反力により前記係止部を前記被係止部に係止させて枠形状を維持させる工程と、
を備えていることを特徴とするフレーム製造方法。
【請求項13】
一端に係止部、他端に被係止部が形成された略直線状の複数のフレーム基材をマスプレートに対して割り付け、前記マスプレートから前記複数のフレーム基材を夫々取り出すように前記マスプレートを加工する工程と、
前記取り出されたフレーム基材を複数箇所曲げることにより枠形状とし、その曲げられたフレーム基材の曲げ反力により前記係止部を前記被係止部に係止させて枠形状を維持させる工程と、
を備えていることを特徴とするフレーム製造方法。
【請求項14】
前記マスプレートを加工する工程は、エッチングにより行うことを特徴する請求項12又は13に記載のフレーム製造方法。
【請求項15】
対象物に接着して使用するフレームの製造方法であって、
前記マスプレートから取り出した状態の前記フレーム基材の接着面に沿う形状にシート状接着剤を加工する工程と、
曲げる前の前記フレーム基材の一面に前記加工されたシート状接着剤を貼り付ける工程と、
をさらに備えていることを特徴する請求項12乃至14のいずれかに記載のフレーム製造方法。
【請求項16】
マスプレートにフレーム基材群を多面付けしたフレーム基材構造体において、前記フレーム基材は、少なくとも一部分を曲げることで枠形状をなすフレームの展開状態であって、その一端部には係止部、他端には被係止部が形成され、前記マスプレートに入れ子状に割り付けられていることを特徴とするフレーム基材構造体。
【請求項17】
マスプレートにフレーム基材群を多面付けしたフレーム基材構造体において、前記フレーム基材は、複数箇所を曲げることで枠形状をなすフレームの展開状態であって、その一端部には係止部、他端には被係止部が形成された略直線状であって、前記マスプレートに割り付けられていることを特徴とするフレーム基材構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−125658(P2010−125658A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301339(P2008−301339)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】