フロアパネル
【課題】棒状の鉄筋を田の字状に配筋した場合にも、メッシュ状鉄筋を埋設したパネル本体部の反りを抑制できるフロアパネルを得る。
【解決手段】エキスパンドメタル12を埋設したパネル本体部15の下面15aから周縁部を囲うように塁条部16を突出させ、その塁条部16に埋設した外周縦鉄筋13aおよび外周横鉄筋13bの対を成すもの同士の中央部間に中央縦鉄筋14aおよび中央横鉄筋14bを配筋し、それら中央縦鉄筋14aおよび中央横鉄筋14bを、パネル本体部15内に位置するようにして外周縦鉄筋13aおよび外周横鉄筋13bよりも高位置に埋設したので、中央縦鉄筋14aおよび中央横鉄筋14bとエキスパンドメタル12との間に存在するコンクリート11の収縮量を小さくし、フロアパネル10の反りを抑制できる。
【解決手段】エキスパンドメタル12を埋設したパネル本体部15の下面15aから周縁部を囲うように塁条部16を突出させ、その塁条部16に埋設した外周縦鉄筋13aおよび外周横鉄筋13bの対を成すもの同士の中央部間に中央縦鉄筋14aおよび中央横鉄筋14bを配筋し、それら中央縦鉄筋14aおよび中央横鉄筋14bを、パネル本体部15内に位置するようにして外周縦鉄筋13aおよび外周横鉄筋13bよりも高位置に埋設したので、中央縦鉄筋14aおよび中央横鉄筋14bとエキスパンドメタル12との間に存在するコンクリート11の収縮量を小さくし、フロアパネル10の反りを抑制できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッシュ状鉄筋および棒状の鉄筋が埋設されたコンクリート製のフロアパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンクリート(モルタル)製のフロアパネルは、コンクリートを矩形状の型枠内に打設して成形されるが、このコンクリートの打設時にエキスパンドメタル等のメッシュ状鉄筋や棒状の鉄筋を埋設して補強するようになっている。
【0003】
そして、このようなフロアパネルでは、所定の厚みを持った矩形状平板に形成されるパネル本体部を備え、そのパネル本体部にメッシュ状鉄筋が埋設されるとともに、そのパネル本体部の下面から突設した塁条部内に棒状の鉄筋を埋設するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記塁条部は、パネル本体部の周縁部分や中央部分に配置され、それぞれの塁条部に棒状の鉄筋が埋設されるようになっており、上記特許文献1では複数の塁条部が所定間隔をもって平行配置されているが、中には、図11,図12に示すように矩形状のパネル本体部1の周縁部を矩形状に囲う塁条部2と、対向した塁条部2の中央部間を結ぶ十字状の塁条部3とを設け、それら各塁条部2,3にそれぞれ棒状の鉄筋4を埋設してフロアパネル5を形成したものもある。
【0005】
ところで、このようなフロアパネルを製造するには、型枠内にメッシュ状補強鉄器や棒状の鉄筋をセットしつつモルタルを打設した後、所定時間蒸気養生して水和反応を促進させ、その後、所定の養生期間放置した後に脱型して製品化される。
【特許文献1】実開昭63−186838号公報(第6−7頁、第1,5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のフロアパネルにあっては、メッシュ状補強筋がパネル本体部の全体に亘って埋設されるのに対し、棒状の鉄筋はパネル本体部から突出する塁条部に埋設されるようになっており、メッシュ状補強筋と棒状の鉄筋との間の間隔が大きくなっている。このため、メッシュ状補強筋と棒状の鉄筋との間のコンクリートの厚さが厚くなり、フロアパネルを製造する過程でコンクリートが硬化される間にフロアパネルに反りが発生されてしまう。これは、鉄筋が殆ど収縮しないのに対してコンクリートが収縮することに起因するものと考えられる。
【0007】
特に、図11,図12に示すように、パネル本体部1の周縁部の塁条部2および中央部の塁条部3に埋設された棒状の鉄筋4が田の字状に配筋された場合は、その中央部の鉄筋4とメッシュ状補強筋6との間のコンクリートが収縮して、フロアパネル5の中央部分に顕著な反りが発生されてしまう。
【0008】
このように、フロアパネルに反りが発生すると、施工時に隣接するパネル同士間に段差が発生し、床としての平坦性を確保するのが困難になってしまうとともに、場合によっては仕上げ材カーペットに筋目が発生してしまうという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、棒状の鉄筋を田の字状に配筋した場合にも、メッシュ状鉄筋を埋設したパネル本体部の反りを抑制できるフロアパネルを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明にあっては、メッシュ状鉄筋を埋設したコンクリート製で矩形状のパネル本体部を備え、そのパネル本体部の下面から少なくとも周縁部を囲うように塁条部を突出し、その塁条部内に上記パネル本体部の周縁に沿って縦・横方向に棒状の外周鉄筋を埋設するとともに、縦方向および横方向に対となるそれぞれの外周鉄筋の略中央部間に、縦・横方向に棒状の中央鉄筋が十字状に設けられたフロアパネルであって、上記縦・横方向の中央鉄筋を、上記外周鉄筋よりも高位置に埋設したことを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明にあっては、上記縦・横方向の中央鉄筋を、上記パネル本体部内に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、縦・横方向の中央鉄筋を、外周鉄筋よりも高位置に埋設したので、前記中央鉄筋はパネル本体部に埋設されたメッシュ状鉄筋に近接し、それら中央鉄筋とメッシュ状鉄筋との間に存在するコンクリートの厚さをより小さくできる。このため、フロアパネルの製造過程でコンクリートを養生する際に、中央鉄筋とメッシュ状鉄筋との間のコンクリートの収縮量を極力小さくすることができ、ひいては、フロアパネルの反りを抑制できる。
【0013】
請求項2の発明によれば、縦・横方向の中央鉄筋が突っ張ることでパネル本体部の収縮が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
図1は、本実施形態にかかるフロアパネルの平面図、図2は、フロアパネルの底面図、図3は、図2中A−A線に沿った拡大断面図、図4は、図2中B−B線に沿った拡大断面図であり、図5は、フロアパネルの製造過程をフローチャート形式で示す説明図、図6は、図3中C部の要部拡大断面図、図7は、図4中D部の要部拡大断面図、図8は、図3中E部の要部拡大断面図、図9は、図4中F部の要部拡大断面図であり、図10は、フロアパネルの性能を従来と比較して表形式で示す説明図である。
【0016】
本実施形態にかかるフロアパネル10は、図1,図2に示すように全体的に矩形状を成してコンクリート(モルタル)11で平板状に形成され、そのフロアパネル10内には図3,図4に示すようにメッシュ状鉄筋としてのエキスパンドメタル12や棒状の外周鉄筋13および中央鉄筋14が埋設されている。
【0017】
このとき、フロアパネル10の製造は、図5に示すように、まず、第1工程S1によって所定形状の型枠に、エキスパンドメタル12および外周鉄筋13,中央鉄筋14等の鉄筋類をセットした後、第2工程S2によって型枠にモルタルを充填する。
【0018】
次に、第3工程S3によって充填したモルタルに振動を付加して空気抜きを行いつつ締め固めし、第4工程S4によって締め固めたモルタルの表面をコテ等で表面ならしをする。
【0019】
次に、第5工程S5によって約60゜Cの蒸気を用いて型枠ごと4〜8時間蒸気養生してモルタルの水和反応を促進させた後、第6工程S6によって自然条件下で所定期間、例えば28日間放置養生して硬化させる。
【0020】
そして、第7工程によって型枠からフロアパネル10を脱型した後、第8工程によってそのフロアパネル10を表面削りして、製品としてのフロアパネル10が完成する。
【0021】
このようにして完成されたフロアパネル10は、所定厚さtを持った矩形状のパネル本体部15を備え、そのパネル本体部15の下面15aからパネル本体部15の周縁部を囲うように塁条部16を突出させてある。
【0022】
なお、本実施形態では、図2中縦方向の塁条部16aが幅広に形成されるとともに、横方向の塁条部16bが幅狭に形成されており、これら塁条部16a,16bで囲まれた凹部15bは、二重床とした場合の配線空間として用いられる。また、フロアパネル10の四隅下面には位置合わせ用の凹部15cが設けられる。
【0023】
パネル本体部15には、エキスパンドメタル12がそのパネル本体部15の略全面に亘って埋設されるとともに、塁条部16には、図6,図7に示すように、外周鉄筋13が埋設されている。
【0024】
なお、本実施形態では、外周鉄筋13に関して、便宜上、縦方向の塁条部16aに埋設されるものを縦方向の外周縦鉄筋13aとし、横方向の塁条部16bに埋設されるものを横方向の外周横鉄筋13bとする。これら外周縦鉄筋13aおよび外周横鉄筋13bは、2本を1組として互いに近接させて平行に配筋されている。
【0025】
また、フロアパネル10には、縦方向および横方向に対となる外周横鉄筋13bおよび外周縦鉄筋13aの略中央部間に、縦・横方向に中央鉄筋14が十字状に設けられる。したがって、それら中央鉄筋14と外周鉄筋13とは略田の字状に配筋されることになる。
【0026】
このとき、十字状の中央鉄筋14は、便宜上、縦方向に配筋されるものを中央縦鉄筋14aとし、横方向に配筋されるものを中央横鉄筋14bとする。また、これら中央縦鉄筋14aおよび中央横鉄筋14bにあっても、2本を1組として互いに近接させて平行に配筋したものを十字状に配置してある。
【0027】
ここで、本実施形態では、縦・横方向の中央鉄筋、つまり、中央縦鉄筋14aおよび中央横鉄筋14bを、パネル本体部15内に位置するようにして外周鉄筋、つまり、外周縦鉄筋13aおよび外周横鉄筋13bよりも高位置に埋設してある。
【0028】
本実施形態では、中央鉄筋14が十字状に配筋される際、中央縦鉄筋14aが中央横鉄筋14bの上側に配置されるようになっており、中央縦鉄筋14aは、図8に示すようにエキスパンドメタル12の下面に接触した状態で配筋されるとともに、中央横鉄筋14bは、中央縦鉄筋14aの下側に接触して配置されている。
【0029】
そして、中央縦鉄筋14aは、図3に示すように、外周縦鉄筋13aに対してh1だけ高位置に配置されているとともに、中央横鉄筋14bは、図4に示すように外周横鉄筋13bに対してh2だけ高位置に配置されている。
【0030】
したがって、上側に配置された中央縦鉄筋14aはもちろんのこと、下側に配置された中央横鉄筋14bもパネル本体部15内に埋設されるが、このとき、下側の中央横鉄筋14bは、パネル本体部15の厚さtの関係上、パネル本体部15の下面近傍に配筋されることになるため、その中央横鉄筋14bの下側を覆うように塁条部17が設けられる。
【0031】
以上の構成により、本実施形態にかかるフロアパネル10は、十字状に配置した中央縦鉄筋14aおよび中央横鉄筋14bを、塁条部16a,16bに埋設した外周縦鉄筋13aおよび外周横鉄筋13bよりも高位置に埋設したので、中央縦鉄筋14aおよび中央横鉄筋14bはパネル本体部15に埋設したエキスパンドメタル12により近接して配筋される。
【0032】
したがって、中央縦鉄筋14aおよび中央横鉄筋14b等の中央鉄筋14とエキスパンドメタル12との間に存在するコンクリート11の厚さをより小さくできるため、フロアパネル10の製造過程でコンクリート11を養生する際に、中央鉄筋14とエキスパンドメタル12との間のコンクリート11の収縮量を極力小さくすることができ、ひいては、フロアパネル10の反りを抑制できる。
【0033】
特に、十字状に配置した中央縦鉄筋14aおよび中央横鉄筋14bをパネル本体部15内に配置したため、それら中央縦鉄筋14aおよび中央横鉄筋14bが突っ張る分だけ、パネル本体部15の収縮を抑制することができる。
【0034】
図10は、本実施形態のフロアパネル10の性能を、従来のフロアパネルと比較して示したものである。なお、双方のフロアパネルは1辺が500mmの正方形状として形成され、その厚さは本実施形態の場合が30mmで従来の場合が29mmとなっている。また、従来のフロアパネルは、図11,図12に示すように棒状の鉄筋を田の字状に配筋したものである。
【0035】
この図10から、フロアパネル10の平坦性、つまり、フロアパネルの周囲と中央部との高低差は、従来のものが0.7〜1.4mmと大きくなるのに対して、本実施形態にかかるフロアパネル10によれば、0〜0.5mmと小さく設定されるとともに、フロアパネルを敷設した際のガタ付きは従来が約2割程度あるのに対して、本実施形態ではフロアパネル10のガタ付きを無くすことができる。
【0036】
したがって、反りを無くした本実施形態のフロアパネル10を用いた場合は、施工時に隣接するパネル同士間に発生する段差を略無くして、床としての平坦性を確保できるとともに、フロアパネル10の上面に仕上げ材カーペットを敷設した場合にも、そのカーペットに筋目が発生してしてしまうのを抑制できる。
【0037】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず種々の変形が可能である。
【0038】
例えば、メッシュ状鉄筋としてはエキスパンドメタルに限ることなく、パンチングプレートや金網でもよく、また、外周鉄筋13および中央鉄筋14は、それぞれを2本づつ組とすることなく、1本づつでも良く、また、3本以上をまとめて配筋した場合にも同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態にかかるフロアパネルの平面図。
【図2】本発明の一実施形態にかかるフロアパネルの底面図。
【図3】図2中A−A線に沿った拡大断面図。
【図4】図2中B−B線に沿った拡大断面図。
【図5】本発明の一実施形態にかかるフロアパネルの製造過程をフローチャート形式で示す説明図。
【図6】図3中C部の要部拡大断面図。
【図7】図4中D部の要部拡大断面図。
【図8】図3中E部の要部拡大断面図。
【図9】図4中F部の要部拡大断面図。
【図10】本発明にかかるフロアパネルの性能を従来と比較して表形式で示す説明図。
【図11】従来のフロアパネルの平面図。
【図12】図11中G−G線に沿った断面図。
【符号の説明】
【0040】
10 フロアパネル
11 コンクリート
12 エキスパンドメタル(メッシュ状鉄筋)
13 外周鉄筋
13a 外周縦鉄筋(外周鉄筋)
13b 外周横鉄筋(外周鉄筋)
14 中央鉄筋
14a 中央縦鉄筋(中央鉄筋)
14b 中央横鉄筋(中央鉄筋)
15 パネル本体部
16 塁条部
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッシュ状鉄筋および棒状の鉄筋が埋設されたコンクリート製のフロアパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンクリート(モルタル)製のフロアパネルは、コンクリートを矩形状の型枠内に打設して成形されるが、このコンクリートの打設時にエキスパンドメタル等のメッシュ状鉄筋や棒状の鉄筋を埋設して補強するようになっている。
【0003】
そして、このようなフロアパネルでは、所定の厚みを持った矩形状平板に形成されるパネル本体部を備え、そのパネル本体部にメッシュ状鉄筋が埋設されるとともに、そのパネル本体部の下面から突設した塁条部内に棒状の鉄筋を埋設するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記塁条部は、パネル本体部の周縁部分や中央部分に配置され、それぞれの塁条部に棒状の鉄筋が埋設されるようになっており、上記特許文献1では複数の塁条部が所定間隔をもって平行配置されているが、中には、図11,図12に示すように矩形状のパネル本体部1の周縁部を矩形状に囲う塁条部2と、対向した塁条部2の中央部間を結ぶ十字状の塁条部3とを設け、それら各塁条部2,3にそれぞれ棒状の鉄筋4を埋設してフロアパネル5を形成したものもある。
【0005】
ところで、このようなフロアパネルを製造するには、型枠内にメッシュ状補強鉄器や棒状の鉄筋をセットしつつモルタルを打設した後、所定時間蒸気養生して水和反応を促進させ、その後、所定の養生期間放置した後に脱型して製品化される。
【特許文献1】実開昭63−186838号公報(第6−7頁、第1,5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のフロアパネルにあっては、メッシュ状補強筋がパネル本体部の全体に亘って埋設されるのに対し、棒状の鉄筋はパネル本体部から突出する塁条部に埋設されるようになっており、メッシュ状補強筋と棒状の鉄筋との間の間隔が大きくなっている。このため、メッシュ状補強筋と棒状の鉄筋との間のコンクリートの厚さが厚くなり、フロアパネルを製造する過程でコンクリートが硬化される間にフロアパネルに反りが発生されてしまう。これは、鉄筋が殆ど収縮しないのに対してコンクリートが収縮することに起因するものと考えられる。
【0007】
特に、図11,図12に示すように、パネル本体部1の周縁部の塁条部2および中央部の塁条部3に埋設された棒状の鉄筋4が田の字状に配筋された場合は、その中央部の鉄筋4とメッシュ状補強筋6との間のコンクリートが収縮して、フロアパネル5の中央部分に顕著な反りが発生されてしまう。
【0008】
このように、フロアパネルに反りが発生すると、施工時に隣接するパネル同士間に段差が発生し、床としての平坦性を確保するのが困難になってしまうとともに、場合によっては仕上げ材カーペットに筋目が発生してしまうという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、棒状の鉄筋を田の字状に配筋した場合にも、メッシュ状鉄筋を埋設したパネル本体部の反りを抑制できるフロアパネルを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明にあっては、メッシュ状鉄筋を埋設したコンクリート製で矩形状のパネル本体部を備え、そのパネル本体部の下面から少なくとも周縁部を囲うように塁条部を突出し、その塁条部内に上記パネル本体部の周縁に沿って縦・横方向に棒状の外周鉄筋を埋設するとともに、縦方向および横方向に対となるそれぞれの外周鉄筋の略中央部間に、縦・横方向に棒状の中央鉄筋が十字状に設けられたフロアパネルであって、上記縦・横方向の中央鉄筋を、上記外周鉄筋よりも高位置に埋設したことを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明にあっては、上記縦・横方向の中央鉄筋を、上記パネル本体部内に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、縦・横方向の中央鉄筋を、外周鉄筋よりも高位置に埋設したので、前記中央鉄筋はパネル本体部に埋設されたメッシュ状鉄筋に近接し、それら中央鉄筋とメッシュ状鉄筋との間に存在するコンクリートの厚さをより小さくできる。このため、フロアパネルの製造過程でコンクリートを養生する際に、中央鉄筋とメッシュ状鉄筋との間のコンクリートの収縮量を極力小さくすることができ、ひいては、フロアパネルの反りを抑制できる。
【0013】
請求項2の発明によれば、縦・横方向の中央鉄筋が突っ張ることでパネル本体部の収縮が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
図1は、本実施形態にかかるフロアパネルの平面図、図2は、フロアパネルの底面図、図3は、図2中A−A線に沿った拡大断面図、図4は、図2中B−B線に沿った拡大断面図であり、図5は、フロアパネルの製造過程をフローチャート形式で示す説明図、図6は、図3中C部の要部拡大断面図、図7は、図4中D部の要部拡大断面図、図8は、図3中E部の要部拡大断面図、図9は、図4中F部の要部拡大断面図であり、図10は、フロアパネルの性能を従来と比較して表形式で示す説明図である。
【0016】
本実施形態にかかるフロアパネル10は、図1,図2に示すように全体的に矩形状を成してコンクリート(モルタル)11で平板状に形成され、そのフロアパネル10内には図3,図4に示すようにメッシュ状鉄筋としてのエキスパンドメタル12や棒状の外周鉄筋13および中央鉄筋14が埋設されている。
【0017】
このとき、フロアパネル10の製造は、図5に示すように、まず、第1工程S1によって所定形状の型枠に、エキスパンドメタル12および外周鉄筋13,中央鉄筋14等の鉄筋類をセットした後、第2工程S2によって型枠にモルタルを充填する。
【0018】
次に、第3工程S3によって充填したモルタルに振動を付加して空気抜きを行いつつ締め固めし、第4工程S4によって締め固めたモルタルの表面をコテ等で表面ならしをする。
【0019】
次に、第5工程S5によって約60゜Cの蒸気を用いて型枠ごと4〜8時間蒸気養生してモルタルの水和反応を促進させた後、第6工程S6によって自然条件下で所定期間、例えば28日間放置養生して硬化させる。
【0020】
そして、第7工程によって型枠からフロアパネル10を脱型した後、第8工程によってそのフロアパネル10を表面削りして、製品としてのフロアパネル10が完成する。
【0021】
このようにして完成されたフロアパネル10は、所定厚さtを持った矩形状のパネル本体部15を備え、そのパネル本体部15の下面15aからパネル本体部15の周縁部を囲うように塁条部16を突出させてある。
【0022】
なお、本実施形態では、図2中縦方向の塁条部16aが幅広に形成されるとともに、横方向の塁条部16bが幅狭に形成されており、これら塁条部16a,16bで囲まれた凹部15bは、二重床とした場合の配線空間として用いられる。また、フロアパネル10の四隅下面には位置合わせ用の凹部15cが設けられる。
【0023】
パネル本体部15には、エキスパンドメタル12がそのパネル本体部15の略全面に亘って埋設されるとともに、塁条部16には、図6,図7に示すように、外周鉄筋13が埋設されている。
【0024】
なお、本実施形態では、外周鉄筋13に関して、便宜上、縦方向の塁条部16aに埋設されるものを縦方向の外周縦鉄筋13aとし、横方向の塁条部16bに埋設されるものを横方向の外周横鉄筋13bとする。これら外周縦鉄筋13aおよび外周横鉄筋13bは、2本を1組として互いに近接させて平行に配筋されている。
【0025】
また、フロアパネル10には、縦方向および横方向に対となる外周横鉄筋13bおよび外周縦鉄筋13aの略中央部間に、縦・横方向に中央鉄筋14が十字状に設けられる。したがって、それら中央鉄筋14と外周鉄筋13とは略田の字状に配筋されることになる。
【0026】
このとき、十字状の中央鉄筋14は、便宜上、縦方向に配筋されるものを中央縦鉄筋14aとし、横方向に配筋されるものを中央横鉄筋14bとする。また、これら中央縦鉄筋14aおよび中央横鉄筋14bにあっても、2本を1組として互いに近接させて平行に配筋したものを十字状に配置してある。
【0027】
ここで、本実施形態では、縦・横方向の中央鉄筋、つまり、中央縦鉄筋14aおよび中央横鉄筋14bを、パネル本体部15内に位置するようにして外周鉄筋、つまり、外周縦鉄筋13aおよび外周横鉄筋13bよりも高位置に埋設してある。
【0028】
本実施形態では、中央鉄筋14が十字状に配筋される際、中央縦鉄筋14aが中央横鉄筋14bの上側に配置されるようになっており、中央縦鉄筋14aは、図8に示すようにエキスパンドメタル12の下面に接触した状態で配筋されるとともに、中央横鉄筋14bは、中央縦鉄筋14aの下側に接触して配置されている。
【0029】
そして、中央縦鉄筋14aは、図3に示すように、外周縦鉄筋13aに対してh1だけ高位置に配置されているとともに、中央横鉄筋14bは、図4に示すように外周横鉄筋13bに対してh2だけ高位置に配置されている。
【0030】
したがって、上側に配置された中央縦鉄筋14aはもちろんのこと、下側に配置された中央横鉄筋14bもパネル本体部15内に埋設されるが、このとき、下側の中央横鉄筋14bは、パネル本体部15の厚さtの関係上、パネル本体部15の下面近傍に配筋されることになるため、その中央横鉄筋14bの下側を覆うように塁条部17が設けられる。
【0031】
以上の構成により、本実施形態にかかるフロアパネル10は、十字状に配置した中央縦鉄筋14aおよび中央横鉄筋14bを、塁条部16a,16bに埋設した外周縦鉄筋13aおよび外周横鉄筋13bよりも高位置に埋設したので、中央縦鉄筋14aおよび中央横鉄筋14bはパネル本体部15に埋設したエキスパンドメタル12により近接して配筋される。
【0032】
したがって、中央縦鉄筋14aおよび中央横鉄筋14b等の中央鉄筋14とエキスパンドメタル12との間に存在するコンクリート11の厚さをより小さくできるため、フロアパネル10の製造過程でコンクリート11を養生する際に、中央鉄筋14とエキスパンドメタル12との間のコンクリート11の収縮量を極力小さくすることができ、ひいては、フロアパネル10の反りを抑制できる。
【0033】
特に、十字状に配置した中央縦鉄筋14aおよび中央横鉄筋14bをパネル本体部15内に配置したため、それら中央縦鉄筋14aおよび中央横鉄筋14bが突っ張る分だけ、パネル本体部15の収縮を抑制することができる。
【0034】
図10は、本実施形態のフロアパネル10の性能を、従来のフロアパネルと比較して示したものである。なお、双方のフロアパネルは1辺が500mmの正方形状として形成され、その厚さは本実施形態の場合が30mmで従来の場合が29mmとなっている。また、従来のフロアパネルは、図11,図12に示すように棒状の鉄筋を田の字状に配筋したものである。
【0035】
この図10から、フロアパネル10の平坦性、つまり、フロアパネルの周囲と中央部との高低差は、従来のものが0.7〜1.4mmと大きくなるのに対して、本実施形態にかかるフロアパネル10によれば、0〜0.5mmと小さく設定されるとともに、フロアパネルを敷設した際のガタ付きは従来が約2割程度あるのに対して、本実施形態ではフロアパネル10のガタ付きを無くすことができる。
【0036】
したがって、反りを無くした本実施形態のフロアパネル10を用いた場合は、施工時に隣接するパネル同士間に発生する段差を略無くして、床としての平坦性を確保できるとともに、フロアパネル10の上面に仕上げ材カーペットを敷設した場合にも、そのカーペットに筋目が発生してしてしまうのを抑制できる。
【0037】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず種々の変形が可能である。
【0038】
例えば、メッシュ状鉄筋としてはエキスパンドメタルに限ることなく、パンチングプレートや金網でもよく、また、外周鉄筋13および中央鉄筋14は、それぞれを2本づつ組とすることなく、1本づつでも良く、また、3本以上をまとめて配筋した場合にも同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態にかかるフロアパネルの平面図。
【図2】本発明の一実施形態にかかるフロアパネルの底面図。
【図3】図2中A−A線に沿った拡大断面図。
【図4】図2中B−B線に沿った拡大断面図。
【図5】本発明の一実施形態にかかるフロアパネルの製造過程をフローチャート形式で示す説明図。
【図6】図3中C部の要部拡大断面図。
【図7】図4中D部の要部拡大断面図。
【図8】図3中E部の要部拡大断面図。
【図9】図4中F部の要部拡大断面図。
【図10】本発明にかかるフロアパネルの性能を従来と比較して表形式で示す説明図。
【図11】従来のフロアパネルの平面図。
【図12】図11中G−G線に沿った断面図。
【符号の説明】
【0040】
10 フロアパネル
11 コンクリート
12 エキスパンドメタル(メッシュ状鉄筋)
13 外周鉄筋
13a 外周縦鉄筋(外周鉄筋)
13b 外周横鉄筋(外周鉄筋)
14 中央鉄筋
14a 中央縦鉄筋(中央鉄筋)
14b 中央横鉄筋(中央鉄筋)
15 パネル本体部
16 塁条部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッシュ状鉄筋を埋設したコンクリート製で矩形状のパネル本体部を備え、そのパネル本体部の下面から少なくとも周縁部を囲うように塁条部を突出し、その塁条部内に前記パネル本体部の周縁に沿って縦・横方向に棒状の外周鉄筋を埋設するとともに、縦方向および横方向に対となるそれぞれの外周鉄筋の略中央部間に、縦・横方向に棒状の中央鉄筋が十字状に設けられたフロアパネルであって、
前記縦・横方向の中央鉄筋を、前記外周鉄筋よりも高位置に埋設したことを特徴とするフロアパネル。
【請求項2】
前記縦・横方向の中央鉄筋を、前記パネル本体部内に配置したことを特徴とする請求項1に記載のフロアパネル。
【請求項1】
メッシュ状鉄筋を埋設したコンクリート製で矩形状のパネル本体部を備え、そのパネル本体部の下面から少なくとも周縁部を囲うように塁条部を突出し、その塁条部内に前記パネル本体部の周縁に沿って縦・横方向に棒状の外周鉄筋を埋設するとともに、縦方向および横方向に対となるそれぞれの外周鉄筋の略中央部間に、縦・横方向に棒状の中央鉄筋が十字状に設けられたフロアパネルであって、
前記縦・横方向の中央鉄筋を、前記外周鉄筋よりも高位置に埋設したことを特徴とするフロアパネル。
【請求項2】
前記縦・横方向の中央鉄筋を、前記パネル本体部内に配置したことを特徴とする請求項1に記載のフロアパネル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−82100(P2008−82100A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265352(P2006−265352)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]